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納品書の不備で起きるリスクと機会損失|請求・受領・保存の観点で最低限整える範囲

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 納品書の不備は、受領日・数量の争い、請求と支払の遅れ、証憑と保存の不備の三つに分かれて表れる
  • 納品書は自社が渡した内容を示す書類で、相手の受領や検収は受領サインや返信など相手が関与する記録で補う
  • 取適法の対象取引では受領日が発注側の支払期日の起点になるため、受領日を自社と取引先で一致させる意味がある
  • 渡し方を紙・PDF・システム連携のどれにしても、相手の受領日を残すには受領確認を足す必要がある
  • 最低ラインは検収の有無、継続か単発か、取適法の対象になりうるかで決め、一件を選んで双方の記録を突き合わせて確かめる

50代後半の日本人男性が玄関先での受け取りと押印をしている場面

納品書が無い・誤っている・届かないとき、請求と支払の現場で何が起きるか

納品は済んだはずなのに、取引先から「その日は受け取っていない」「数量が足りない」と言われたとき、手元に何が残っていれば話を戻せるでしょうか。
納品書が無い、記載が誤っている、相手に届いていない。
こうした不備は、受領日や数量の食い違い、請求と入金の遅れ、税務上の書類や保存の不備につながりえます。
ただし納品書は自社が作る書類なので、それだけでは相手が受け取ったことまでは示せません。
納品書の記載を整え、受領確認の取り方を組み合わせることが中心になります。
どこまで整えるかは、検収の有無、継続取引か単発か、取適法の対象かどうかで変わります。

受領日・数量をめぐる争い

納品書の不備が引き起こす結果は、大きく三つに分けられます。
受領日や数量をめぐる食い違い、請求と支払の遅れ、税務上の書類と保存の不備です。
出発点はどれも同じで、「いつ、何を、いくつ渡したか」が、自社と取引先の両方に同じ形で残っていないことにあります。

たとえば、継続取引の取引先へ月末に部品を納めた場面を考えてみます。
出荷のとき納品書を同梱し忘れ、取引先の倉庫担当者は箱を受け取ったものの、何の荷物か分からず入庫登録を翌月に回したとします。
自社は今月の売上として請求書を出し、取引先の経理は翌月の入庫として処理しようとします。
同じ荷物について、両社が別々の月を記録したことになります。

箱を開けたら数量が注文と合わなかった、という連絡が後から来ることもあります。
そのとき自社の手元に出荷指示書や社内の売上伝票しかなければ、相手の記録と突き合わせる材料は自社側の一方的なものになります。
納品書の控えがあれば、少なくとも自社がどの日付で、どの品目を、いくつ渡したと認識していたかは示せます。
ただしそれは、相手が受け取ったことの証明とは別の話です。

こうした争いがどのくらいの頻度で起きるかは、取引の内容や相手の受入体制によって大きく変わり、一律には言えません。
確かなのは、記録が片側にしか残らない運用では、食い違いが起きたときにそれを解く手がかりが乏しくなるという点です。

請求・支払の遅れ(取適法の起算点を例に)

受領日の食い違いは、そのまま請求と支払の日程に響きます。
取引先が締め日までに受領を確認できなければ、請求書が届いていても支払処理に回せません。
照会のやり取りが続くあいだに締め日を過ぎれば、入金は次の支払サイクルへずれていきます。

受領日が制度の上で意味を持つ例として、取適法(中小受託取引適正化法。
下請法を改正した法律)があります。
取適法は2026年1月から施行されています5。
取適法の対象となる製造委託等では、発注する側の委託事業者が、代金の支払期日を物品等を受領した日から起算して60日以内で、できる限り短い期間に定めることになっています1。
期日までに支払わなかった場合、委託事業者は受領日から60日を経過した日から支払日までの期間について、年率14.6%の遅延利息を支払うことになります1。
あわせて、委託事業者には取引の書類を作成して2年間保存する義務があります1。

ここで立場を整理しておきます。
これらの義務を負うのは発注する側で、納品する側ではありません。
取適法が受託する側に納品書の作成を求めているわけでもありません。
それでも受託する側にとって受領日の記録が大切なのは、それが相手側の支払期日を数える起点として扱われるからです。
自社が記録した納品日と、取引先が記録した受領日が一致していれば、支払期日の計算をめぐる行き違いは起きにくくなります。
逆に両者の日付がずれていれば、どちらの日付から数えるのかという議論が入金の前に挟まります。

自社の取引が取適法の対象になるかどうかは、取引の種類と当事者の規模に関する基準で決まります。
この記事で一律に判断できるものではないため、対象の見極め方はFAQで扱います。

証憑・保存の不備

三つ目は、税務上の書類としての不備です。
納品書を適格請求書(インボイス。
消費税の仕入税額控除に使う、所定の事項を記載した書類)として使っている場合、記載が欠けていたり誤っていたりすると、取引先は控除の手続きにその書類を使えません。
相手の経理が締め処理の中で不備に気づけば、再交付の依頼が自社に届きます。
その対応は、自社の側でも月次の締めと重なりがちです。

自社の中の保存にも同じ種類の問題があります。
納品書の控えを、紙は営業事務の棚、PDFは担当者のメールボックス、というように人ごとにばらばらに置いていると、後から取引の内容を確かめたいときに探し出せません。
担当者が異動すれば、どこにあるかを知る人もいなくなります。

三つの結果を並べると、共通する点が見えてきます。
受領日と数量の記録は、支払の起算点、請求の根拠、税務上の保存という三つの方向で同時に必要になります。
一枚の記録が欠けると、影響も三方向に同時に出るということです。

納品書の不備が表れる三つの結果
納品書が無い・誤っている・届かないという不備が、受領日と数量の争い、請求と支払の遅れ、証憑と保存の不備の三つに分かれて表れることを示す図1受領日・数量の争い2自社の出荷記録と相手の入庫記録が食い違い、突き合わせる材料が片側にしかない3請求・支払の遅れ4相手が受領を確認できず、請求書が届いても支払処理に回らない5証憑・保存の不備

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 受領日・数量の争い
  2. 自社の出荷記録と相手の入庫記録が食い違い、突き合わせる材料が片側にしかない
  3. 請求・支払の遅れ
  4. 相手が受領を確認できず、請求書が届いても支払処理に回らない
  5. 証憑・保存の不備
取適法の対象取引で受領日が起点になる期間
物品等を受領した日を起点に、60日以内に支払期日を定め、60日を経過した日から支払日までは年率14.6%の遅延利息が生じる流れを示す図物品等を受領した日を起点に、60日以内に支払期日を定め、60日を経過した日から支払日までは年率14.6%の遅延利息が生じる流れを示す図物品等を受領した日支払期日を数える起点受領日から60日以内この範囲でできる限り短く支払期日を定める60日を経過した日から支払日まで年率14.6%の遅延利息の対象期間

▼ 図の内容を文字で読む
  • 物品等を受領した日:支払期日を数える起点
  • 受領日から60日以内:この範囲でできる限り短く支払期日を定める
  • 60日を経過した日から支払日まで:年率14.6%の遅延利息の対象期間

出典:公正取引委員会「取適法 委託事業者の義務」(2026年)。対象は委託事業者と中小受託事業者の製造委託等の取引

納品書の不備が機会損失にどうつながるか:回収の遅れ、確認の手間、再注文への影響

回収の遅れ

前の節で見た三つの結果は、それぞれ別の形の機会損失につながります。
ここで言う機会損失とは、帳簿に赤字として出る損ではありません。
本来なら使えたはずの資金や時間、得られたはずの次の注文が失われることを指します。
納品書の不備によってどれだけの損失が生じるかを一律の金額で示すことはできないため、どの条件のときに影響が大きくなるかで考えていきます。

まず回収の遅れです。
入金が一つの支払サイクル分ずれると、そのあいだ売上は計上されていても、手元の資金としては使えません。
仕入先への支払や給与の支払日が先に来る会社では、その差を手元資金の取り崩しや借入れで埋めることになります。

影響が大きくなりやすいのは、一件の取引額が大きい場合、売上が少数の取引先に集中している場合、もともとの支払サイトが長い場合です。
反対に、少額の取引が多数の取引先に分散していれば、一件の入金がずれても資金繰り全体への影響は小さく収まります。
同じ納品書の不備でも、どの取引で起きたかによって重さがまるで違うということです。

確認・訂正にかかる対応時間

次に時間です。
取引先から「受け取った数量が違う」と照会が来たとき、営業事務の担当者がすることを順に追ってみます。
出荷指示の記録を探し、倉庫に実際の出荷数を確かめ、納品書を作り直して再送し、経理に請求額の修正を伝える。
インボイスとして使っていた納品書なら、再交付の書類も整えます。

一件ずつ見れば大きな作業ではないかもしれません。
しかし継続取引で同じ取引先に毎月同じような照会が来れば、それは例外対応ではなく定常業務になります。
その時間は本来、新しい受注の処理や取引先からの相談への対応に使えた時間です。

訂正の手順が社内で決まっていないと、照会のたびに担当者が手探りで関係部署を回ることになります。
誰に何を確認すれば済むのかが決まっているかどうかで、同じ照会一件にかかる手間が変わってきます。

再注文への影響(条件つき)

三つ目は、取引先からの見え方です。
取引先の購買担当者や経理担当者にとって、納品書の誤りは検収や支払処理のやり直しを意味します。
それが一度きりなら大きな問題にはなりにくいでしょう。
繰り返されると、発注先を見直す時期に判断材料の一つになりえます。

ただし、再注文するかどうかは価格、品質、納期など多くの要因で決まります。
納品書の不備だけで取引が切り替わるとは言えません。
また単発の取引では次の注文がそもそも予定されていないため、この面の影響は小さくなります。
少数の取引先と長く付き合う事業ほど、見過ごしにくい論点です。

三つの機会損失を通して見ると、影響の大きさを分けるのは、継続取引か単発か、検収があるか、一件の取引額が大きいかという条件でした。
この条件は、どこまで運用を整えれば足りるかを決めるときにも、そのまま使えます。

納品書の不備から機会損失へのつながり
受領日や数量の食い違いが回収の遅れに、訂正や照会が対応時間に、繰り返される誤りが再注文への影響につながる関係を示す図1請求・支払の遅れ回収が次の支払サイクルへずれ、その間の資金余力が減る2照会・訂正・再交付出荷記録の確認や書類の作り直しに担当者の時間が取られる3誤りの繰り返し取引先の手戻りが重なり、継続取引では発注先を見直す材料の一つになりうる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 請求・支払の遅れ:回収が次の支払サイクルへずれ、その間の資金余力が減る
  2. 照会・訂正・再交付:出荷記録の確認や書類の作り直しに担当者の時間が取られる
  3. 誤りの繰り返し:取引先の手戻りが重なり、継続取引では発注先を見直す材料の一つになりうる

納品書・請求書・受領書・検収書は何が違い、納品書はどこまで補えるか

四つの書類は、誰が作り何を示すか

ここまでで、受領の事実と請求の根拠の両方が要ることが見えてきました。
では、納品書一枚でどこまで足りるのでしょうか。
書類ごとに、誰が作り、何を示すのかを並べてみます。
次の役割分担は法令上の定義ではなく、実務での一般的な整理です。

・納品書:売り手が作り、何をいつ、いくつ納めたかを相手に伝える
・請求書:売り手が作り、代金の支払を求める
・受領書:買い手が作るか、売り手の控えに買い手が受領の印やサインをして、受け取ったことを示す
・検収書:買い手が作り、納品物を検査して合格したことを示す

違いの核心は、誰の手で作られたかにあります。
納品書と請求書は自社が作る書類なので、自社が何を渡したと認識しているかを示すには十分です。
一方、受領書と検収書には相手が関与しているので、相手がそれを認めたことを示せます。
前の節で見た受領日の食い違いを解くには、この相手側の記録が必要になります。

納品書をインボイスとして使える条件

納品書は、名称に関係なく、所定の事項が記載されていればインボイスになります3。
交付できるのは、税務署長の登録を受けた適格請求書発行事業者だけです4。
登録を受けた売り手は、課税事業者である買い手から求められたときにインボイスを交付しなければなりません3。
つまり、登録している売り手にとって、納品書は請求書と並んでインボイスの役目を担いうる書類です。

インボイスは、請求書や納品書など、さまざまな書類の形で交付できます4。
納品書と請求書の両方を出している会社では、どちらにインボイスの記載を持たせるかを社内で決めておくと、取引先が控除に使う書類を迷わずに済みます。
納品のたびに出す納品書をインボイスにするのか、月末の請求書にまとめるのかで、記載を確認する頻度も変わります。
複数の書類を組み合わせて記載事項を満たす形を考えている場合は、その条件を自社の様式に当てはめて、国税庁の資料で確かめておく必要があります。

納品書をインボイスにしているなら、前の節で触れた訂正の手間は、税務の面でも起きることになります。
記載が一つ欠けるだけで相手の控除に響くため、納品書の様式を変えたときや担当者が替わったときは、記載事項がそろっているかを見直す価値があります。
反対に、登録を受けていない売り手が出す納品書は、記載をどれだけ整えてもインボイスにはなりません。

納品書で残せないもの

どれだけ記載を整えても、納品書は相手が受け取ったこと、検収に合格したことまでは示せません。
自社が「渡した」と書いた書類だからです。
月末に部品を納めた先ほどの例で言えば、納品日は納品書に書けても、取引先の倉庫がその日に受け取ったかどうかは、相手の受領サインや受領の連絡がなければ確かめようがありません。

検収がある取引では、もう一段階が加わります。
受け取った後に検査し、合格して初めて請求の対象になる契約なら、納品日、受領日、検収日という三つの日付が別々に存在することになります。
どの日付が請求や支払の基準になるかは契約で決まるので、取引基本契約書や注文書の条件を見ておくことが欠かせません。

取適法の対象取引では、発注する側は発注内容を書面または電磁的方法で直ちに明示し、その中に受領期日や検査完了期日、支払期日などを含めることになっています1。
受託する側の自社から見れば、受け取った発注内容の明示に、どの日付が基準になるかが書かれているわけです。
それを自社の納品記録と並べておけば、納品書だけでは埋まらない部分がどこかがはっきりします。

四つの書類の作り手と示せること
納品書と請求書は売り手が作り自社の認識を示す一方、受領書と検収書は買い手が関与して受け取りや合格を示すことを対比した図1納品書2売り手が作成。何をいつ、いくつ納めたかという自社の認識を示す3請求書4売り手が作成。代金の支払を求める根拠を示す5受領書

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 納品書
  2. 売り手が作成。何をいつ、いくつ納めたかという自社の認識を示す
  3. 請求書
  4. 売り手が作成。代金の支払を求める根拠を示す
  5. 受領書

紙・PDF・システム連携と受領確認の取り方で、防げるリスクと残るリスクはどう変わるか

同じ五つの項目で比べる

納品書だけでは相手の受領を示せないと分かったところで、渡し方の違いを見ていきます。
比べる対象は、紙、メールなどで送るPDF、システム連携(自社と取引先のシステムの間で納品データをやり取りする形)、そしてこれらに受領サインや電子上の受領確認を足した形です。
次の表は各方式の一般的な性質から組み立てた整理で、効果の大きさは取引先の対応状況と自社の運用によって変わります。

表で判断が分かれるのは、二行目の「相手の受領日の記録」です。
紙とPDFは、どちらも自社から送り出す方式なので、相手がいつ受け取ったかは残りません。
紙は荷物と一緒に届く利点がありますが、箱の中で紛れたり、受け取った人から経理まで回らなかったりすることがあります。
PDFは送信日時が残る代わりに、受信者が開いたかどうかは分からず、迷惑メールのフォルダに入ったまま気づかれないこともあります。

紙とPDFの差がはっきり出るのは、保存と訂正です。
PDFは再発行が早い反面、訂正版と元の版が両方のメールボックスに残るため、どれが最新かを相手と共有する工夫が要ります。
紙は版の混乱は少ないものの、作り直して届け直す手間がかかり、控えの保管場所も物理的に必要です。

システム連携は、自社の出荷データがそのまま相手のシステムに入るため、手作業の転記と渡し漏れが減ります。
その代わり、取引先の側にも同じ仕組みへの対応が要ります。
すべての取引先で同じ方式にできるとは限らず、取引先ごとに紙、PDF、連携が混在すれば、自社の担当者は複数の手順を並行して扱うことになります。
相手のシステムが受領日まで記録して返してくれるかどうかも、連携の作り方次第です。

受領確認を足した形は、渡し方を変える話ではありません。
どの渡し方を選んでいても、相手の手を一度だけ借りて、受領日と数量を相手の側から返してもらう仕組みです。
表の二行目が埋まるのはこの形だけなので、受領日の争いを防ぎたいなら、渡し方を変えるより先に受領確認を足すほうが直接的です。

受領確認の取り方

受領確認は、大がかりな仕組みでなくても始められます。
要は、自社の納品書と相手の受領記録が同じ番号でつながり、受領日と数量が相手の側から書き込まれることです。

紙で納品しているなら、納品書の控えに受領日と受領数量の欄を設け、受け取った人に記入と押印をしてもらう形が素直です。
PDFで送っているなら、送信メールに「受領日と数量をご返信ください」と一文添え、返ってきたメールを納品書と同じフォルダに保存します。
どちらも、相手が書き込んだ日付が残るという点で同じ役割を果たします。

宅配便の配達記録で代えられないか、と考える方もいるでしょう。
配達記録が示すのは荷物が相手先に届いたことで、中身の品目や数量を相手が確認したことではありません。
受領日の目安としては使えても、数量の争いには別の記録が必要になります。

受領確認には相手の手間がかかるため、取引先によっては応じてもらえないことがあります。
その場合の考え方はFAQにまとめています。

項目 紙 PDF(メール等) システム連携 受領確認を足した形
渡し漏れ・不達 同梱忘れや紛失が起きうる 送信記録は残るが未読はありうる 出荷データと連動すれば漏れにくい 相手の返答が無ければ不達に気づける
相手の受領日の記録 残らない 残らない 相手の取り込み方による 相手が記入・返信した日付が残る
訂正のしやすさ 作り直して再送が要る 再発行は早いが版の管理が要る 元データの修正で反映しやすい 訂正後の受領も取り直す
保存と検索の負担 紙の保管と探す手間 ファイル名と保存場所の決め方次第 システム内で検索しやすい 受領記録も一緒に保存が要る
相手側の対応 ほぼ不要 メールの受信のみ 同じ仕組みへの対応が要る サインや返信の手間が要る
受領確認を納品書につなげる手順
納品書に番号と受領欄を設け、相手が受領日と数量を記入または返信し、差異をその場で記録し、控えを納品書と同じ場所に保存する手順を示す図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 納品書に番号と受領欄を設ける:発注番号と納品書番号を記載し、受領日と受領数量の欄を用意する
  2. 相手が受領日と数量を返す:控えへの受領印、または返信メールで受領日と数量を伝えてもらう
  3. 差異をその場で記録する:数量違いや破損があれば受領時点の内容として残す
  4. 控えを同じ場所に保存する:納品書と受領記録を同じ番号で並べて保存する

取引形態別に、最低限どこまで整えれば足りるか

判断の分かれ目と、共通の確かめ方

比較で見た仕組みを、自社の取引にどこまで入れるかを考えます。
機会損失の節で見たとおり、影響の大きさを分けるのは、検収があるか、継続取引か、取適法の対象になりうるかでした。
この順に取引を振り分けると、四つの形態になります。
以下に示す最低ラインは、法令上の義務ではなく編集上の提案です。

どの形態でも、整えた後の確かめ方は共通です。
直近の取引を一件選び、自社の納品書の控えと取引先の受領記録を並べて、受領日と数量が両方の記録で一致するかを突き合わせます。
一致を確かめられなければ、どこで記録が途切れているかが分かります。
一件で途切れが見つかったら、同じ取引先の別の月も見てみると、偶然の漏れか運用の穴かを区別できます。

検収のある継続取引

納品、受領、検収の三つの日付が別々に存在する形態です。
最低ラインとして、納品書に相手の発注番号を記載すること、受領の確認と検収結果の連絡の両方を受け取ること、請求は検収が済んだ分に限ることを提案します。

理由は、請求の根拠になるのが検収日である契約が多いと考えられる一方、その前段の受領日が分からないと、検収が遅れているのか、そもそも届いていないのかを区別できないからです。
二つの日付を受け取っておけば、入金が遅れたときにどの段階で止まっているかを相手に具体的に尋ねられます。
請求の基準日がどれかは、取引基本契約の条件で確かめておくことが前提です。

検収のない継続取引

受け取った時点で請求の対象になる取引です。
最低ラインは、納品書を物と一緒に、または同じ日に届けること、そして請求書を出す前に、その月の受領数量を相手と照合することです。

毎回の受領サインを求めるのが難しい取引先でも、月に一度、請求前に「今月はこの納品書番号の分をこの数量で受領いただいた認識です」と確認するだけで、請求後の差し戻しは起きにくくなります。
一回ごとの受領記録の代わりに、月次の突き合わせで食い違いを請求前に見つける考え方です。
照合で差が出た納品書は、その場で訂正版を出すか、翌月の請求で調整するかを取引先と決めておくと、毎月の判断がぶれません。

単発・少額取引

次の注文が予定されておらず、一件の金額も小さい取引です。
ここで受領確認の仕組みを一から作るのは、得られるものに比べて手間が大きくなりがちです。
最低ラインは、納品書の控えを残し、配送を使った場合はその記録を納品書の番号とひもづけて保存することにとどめてよいでしょう。

ただし、相手が課税事業者で、インボイスの交付を求められた場合は別です。
登録を受けた売り手には交付の義務があるので3、納品書をインボイスとして使うなら、記載事項を満たした様式を用意しておく必要があります。
取引が小さいことは、記載事項を省いてよい理由にはなりません。

取適法の対象になりうる取引

自社が中小受託事業者として製造委託等を受けている可能性がある取引です。
この場合、受領日は発注側の支払期日を数える起点になります1。
最低ラインとして、受領日を自社と取引先の双方で一致させる運用を他の形態より優先することを提案します。

具体的には、発注側から受け取る発注内容の明示を保管し、そこに書かれた受領期日や支払期日と、自社の納品記録、相手から返ってきた受領日を一か所に並べておく形です。
受領日が一致していれば、支払期日が受領日から60日以内に収まっているかを、自社の側でも数えられます1。
支払が遅れた場合の遅延利息も受領日を基準に数えるので1、相手と話をするときにも同じ日付を出発点にできます。

ここでの運用は、支払期日を相手と確かめ合うための準備であって、相手を責めるための記録ではありません。
また、取引が実際に取適法の対象かどうかは、取引の種類と当事者の規模に関する基準を確かめてから判断することになります。
対象でなかったとしても、受領日をそろえておく運用は、検収の有無に応じた前の三つの形態の最低ラインとしてそのまま役立ちます。

取引の条件から最低ラインの形態を選ぶ
取適法の対象になりうるか、検収があるか、継続取引かを順に確かめ、四つの取引形態のどれに当たるかを判断する流れを示す図1取適法の対象になりうるかなりうるなら、受領日を双方で一致させる運用を優先する2検収があるかあるなら、受領と検収の二つの日付を受け取る3継続取引か継続なら、請求前に受領数量を照合する4単発・少額取引納品書の控えと配送の記録を残す

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取適法の対象になりうるか:なりうるなら、受領日を双方で一致させる運用を優先する
  2. 検収があるか:あるなら、受領と検収の二つの日付を受け取る
  3. 継続取引か:継続なら、請求前に受領数量を照合する
  4. 単発・少額取引:納品書の控えと配送の記録を残す

納品書の保存と記載事項で自社が確認すべき点

保存期間の一覧

運用を整えた後に残るのは、残した記録をいつまで、どの形で保存するかです。
納品書まわりに関係する保存の定めを、誰が保存するのかと合わせて並べます。

法人は、帳簿と取引に関して作成・受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します2。
保存の対象として注文書、契約書、領収書などが例示されています2。
納品書がこの取引関連書類に当たるかどうかは、自社の書類の使い方とあわせて顧問税理士や税務署に確かめておくのが確実です。
実務上は、納品書を他の取引関連書類と同じ期間だけ残しておけば、後から必要になって探す事態は避けられます。

納品書をインボイスとして交付しているなら、その写しの保存も必要です4。
写しの保存期間と起算点は国税庁のNo.6625に定めがあるので、自社がどの書類をインボイスにしているかと合わせて確かめておきます。
取適法の2年間の保存義務は発注する側の委託事業者に課されるもので1、受託する側の自社が負う義務ではありません。
一覧に並べたのは、取引先がどの記録をどの期間持っているかを知っておくと、照会のときに話が早くなるからです。

個人事業者の場合は、保存期間の扱いが法人と異なります。
この一覧は法人を前提にしているため、個人で事業をしている場合は別に確かめてください。

電子データで授受した場合の確認先

メールで送ったPDFや、システム連携でやり取りしたデータのように、電子データで授受した納品書には、電子帳簿保存法による保存方法の定めが関わります。
受け取ったPDFを印刷して紙で保存すれば足りるのか、データのまま保存する必要があるのかは、この法律の扱いで変わる部分です。
自社の授受方法がどの扱いに当たるかは、国税庁が公表している電子帳簿保存法の一問一答(電子取引関係)で確かめるのが確実です。

送る側の自社にとっても、この点は無関係ではありません。
自社が送ったPDFの控えをどこに、どの形で残すかは、受領確認の返信メールとあわせて決めておく事柄です。
受領確認の手順で控えと受領記録を同じ番号で並べて保存しておけば、保存方法の要件を確かめた後で、置き場所を一括して見直すこともできます。

書類・記録 保存する者 期間 確認しておきたい点
帳簿と取引関連書類 法人 確定申告書の提出期限の翌日から7年 例示は注文書・契約書・領収書など。納品書の扱いは税理士・税務署へ
交付したインボイスの写し 適格請求書発行事業者 国税庁No.6625の定めによる 納品書をインボイスにしている場合はその写しが対象
取適法の取引記録 委託事業者(発注側) 2年 受託する側の自社に課される義務ではない

取引先ごとに渡し方や検収の有無が違うと、どの取引に受領確認を足すべきかを社内の視点だけで決めにくいためです。

現在の取引先と納品書の流れを並べ、受領日と数量の記録が途切れている取引がどこかを一緒に洗い出せます。無料相談で要件を整理する

納品書まわりの運用を点検する五つの問い

納品書を作成し、送り、受領を確かめ、請求し、保存するという取引の流れの順に並べた

  • 納品書に相手の発注番号、品目、数量、納品日が漏れなく入っているか
  • 納品書が相手に届いたことを、送信記録や配達記録以外の方法で確かめているか
  • 相手の受領日と数量を、請求書を出す前に自社の記録と照合しているか
  • インボイスの記載を持たせる書類を納品書か請求書かで決め、記載事項を満たしているか
  • 納品書の控えと受領記録を、同じ番号で同じ場所に保存しているか

要点の整理

軸 基準
納品書の役割 自社が渡した内容を示す書類。相手の受領や検収は受領書・検収書・受領の返信で補う
受領日の扱い 取適法の対象取引では発注側の支払期日の起点になる。双方の記録で一致させる
渡し方の選び方 紙・PDF・システム連携のどれでも、受領日を残すには受領確認を足す
最低ラインの決め方 検収の有無、継続か単発か、取適法の対象になりうるかで振り分ける
保存の確認先 法人の取引関連書類は7年。納品書の扱いと電子データの保存方法は税理士・税務署や国税庁の資料で確かめる

最低ラインを決めても、受注から請求までのどこで記録を残すかは、自社の業務の手順と使っている仕組みの組み合わせで変わるためです。 受注から請求までの流れのうち、納品書と受領記録を同じ番号でつなげられる箇所と、手作業の転記が残る箇所を整理できます。

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よくある質問

納品書は必ず発行しなければならないのですか

納品書の交付そのものを一律に義務づける定めを、この記事で根拠として示すことはできません。
一方で、適格請求書発行事業者は、課税事業者の買い手から求められたときにインボイスを交付しなければならず、納品書をインボイスとして使うことができます3。
義務の有無とは別に、受領日や数量の食い違いを防ぐ記録として、継続取引では発行しておくほうが後の照会に答えやすくなります。

納品書をインボイス(適格請求書)として使うには、何を記載すればよいですか

所定の事項が記載されていれば、納品書という名称のままでインボイスになります3。
主な記載事項は、売り手の名称と登録番号、取引年月日、取引の内容、税率ごとに区分した対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等、交付を受ける事業者の名称などです3。
交付できるのは登録を受けた適格請求書発行事業者だけなので4、登録の有無も合わせて確かめてください。
自社の様式が要件を満たすかどうかの細かな判断は、国税庁の資料で確認するのが確実です。

納品書と請求書を兼ねてもよいですか

インボイスは請求書や納品書など、さまざまな書類の形で交付できます4。
実務上は、納品書と請求書の両方を出す場合に、どちらにインボイスの記載を持たせるかを決めておくと、取引先が控除に使う書類を迷いません。
一枚に兼ねる場合でも、その書類は自社が作るものなので、相手の受領や検収を示すには受領確認を別に取る必要があります。

メールで送った納品書のPDFは、印刷して保存すれば足りますか

電子データで授受した書類には電子帳簿保存法による保存方法の定めが関わるため、印刷すれば足りるとは一律に言えません。
自社の授受方法がどの扱いに当たるかは、国税庁の電子帳簿保存法の一問一答(電子取引関係)で確かめてください。
判断がつかない場合は、顧問税理士や税務署に相談するのが確実です。

受領サインをもらえない取引先には、どう対応すればよいですか

毎回のサインが難しいなら、確認の頻度と方法を変える手があります。
たとえば請求書を出す前に、その月の納品書番号と数量を一覧にして送り、受領の認識が合っているかを返信してもらう方法です。
相手の手間は月に一度で済み、食い違いがあれば請求前に見つけられます。
配達記録は荷物が届いた目安にはなりますが、中身の数量を相手が確認した記録ではない点に注意が必要です。

取適法の対象になる取引かどうかは、どう確かめればよいですか

取適法の対象かどうかは、取引の種類と、発注する側と受託する側それぞれの規模に関する基準で決まります。
取適法は2026年1月から施行されている法律で5、公正取引委員会の取適法のページで基準と対象取引を確かめられます。
判断に迷う場合は、取引先との契約内容を手元に置いたうえで、公正取引委員会の相談窓口や弁護士に確認してください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:公正取引委員会「取適法 委託事業者の義務」(2026年)
  2. 2 出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間(法人税)」(2026年)
  3. 3 出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要」(2026年)
  4. 4 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2026年)
  5. 5 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)」(2026年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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