◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取適法の手形払い禁止は2026年1月1日に施行済みで、同日以降に発注した取引に適用される。確認した公正取引委員会の資料に、支払期日を猶予する経過措置の記載はない
- 手形の代わりは現金・振込か、満期が支払期日以前の電子記録債権。満期が後なら、割引料を発注側が負担しても認められない
- 支払期日は受領日から60日以内でできる限り短く、具体的な日付として示す。請求書が遅れても期限は延びない
- 切り替えに伴う割引料・手数料の差引きや、一定率での一方的な単価引き下げは、減額や買いたたき等にあたるおそれがある
- 紙の手形・小切手は2027年3月末までに交換が廃止され、取適法の対象外の取引にも影響する
目次

取適法の手形払い禁止はいつから?2026年1月1日施行で、猶予ではなく発注日で分かれる
受発注システムの支払条件にまだ手形が残っていて、取適法の手形払い禁止にいつまでに合わせればよいのか決めきれない。
そうした場面で最初に押さえたいのは、禁止がすでに2026年の初めに施行されており、施行後に発注した取引から適用されていることです2。
確認できた公正取引委員会の資料に、支払期日を猶予する経過措置の記載は見当たりません。
まず発注日で新旧の取引を分けます。
次に、現金・振込か、満期が支払期日以前の電子記録債権へ切り替えます。
そのうえで、受領から60日以内の期日計算と、発注時に示す支払条件の項目を直していきます。
施行日と「発注日」基準
取適法は、旧下請法を改正した法律です。
正式には「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」といいます。
令和8年、つまり2026年の1月1日に施行され、支払手段としての手形払いが禁止されました1。
受発注システムの設定変更をいつまでに終えるか、という問いへの答えは、期限はすでに来ている、ということになります。
では、施行日より前から続いている取引はどうなるのでしょうか。
公正取引委員会は、令和8年1月1日以降に発注する取引に取適法の規定が適用されると説明しています2。
区切りになるのは、納品日でも請求日でも支払日でもなく、発注日です。
同じ取引先・同じ品目でも、2025年12月に発注して2026年2月に支払う取引と、2026年1月に発注した取引とでは、適用される法律が異なります。
経過措置として支払期日や支払手段の切り替えを猶予する規定があるのか、という点も見ておきます。
公正取引委員会の施行に当たっての留意事項や改正の概要を確認した範囲では、その記載は見当たりませんでした2。
「猶予期間のうちに直せばよい」と考えて設定変更を先送りする根拠は、公表資料からは得られません。
猶予の有無を探し続けるより、発注日で新旧の取引を分け、2026年以降の発注に手形が残っていないかを確かめるほうが、いま必要な判断に直結します。
2025年までに発注した取引は、旧下請法の側で扱われます。
旧法の下で手形をどう扱うかは取適法の資料とは別の確認になります。
該当する取引が残っている場合は、旧下請法の資料を当たる必要があります。
既存契約・自動更新契約の扱い
迷いやすいのは、基本契約を結んだうえで個別の発注を繰り返している取引です。
基本契約が2025年以前に結ばれていても、2026年の施行後に出す個別の発注は、発注日で見れば取適法の対象になります。
基本契約の支払条件に手形と書かれ、システムの取引先マスタもそれを引き継いでいるとします。
この場合、新しい発注データにも手形の条件が自動で載ってしまいます。
公正取引委員会のQ&Aでは、自動更新される年間契約について、条件が同じであれば改めて書面等を発行し直す必要はないとしています4。
裏返すと、支払手段が手形から振込に変わるなど条件が変わる場合は、同じ条件の継続とはいえません。
自動更新だから何もしなくてよい、とは考えないことです。
支払条件に手形を含む契約は、見直しの対象に入れておくのが安全です。
支払条件の見直しに合わせて単価も改定する場合は、適用の始点に注意が要ります。
Q&Aでは、新しい単価は合意した後の発注分から適用するものとし、さかのぼって適用すると減額にあたるとしています4。
単価マスタに適用開始日を持たせ、合意日より前の発注に新単価が当たらないようにしておくと、改定時の誤適用を見つけやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 2026年1月1日以降の発注
- 取適法の規定が適用される
- 手形払いは禁止
- 2025年までの発注
- 旧下請法の側で扱われる
- 手形の扱いは別に確認する
- 区切りにならない日
- 納品日
- 請求日
- 支払日
自社の取引は対象か:従業員基準の追加と立場の確認
従業員基準の追加
期限がすでに過ぎていると分かったら、次は自社の取引がそもそも取適法の対象かを切り分けます。
対象かどうかは、発注する側と受注する側の規模の組み合わせで決まります。
取適法では、発注側を「委託事業者」、受注側を「中小受託事業者」と呼びます。
手形払いの禁止を守る義務を負うのは、委託事業者の側です。
取適法では、資本金の基準に加えて従業員数の基準が設けられました1。
運用基準では、従業員数の基準は、資本金の基準が適用されない場合に適用されると整理されています3。
資本金だけを見て「この取引先は対象外」と判断していた取引でも、従業員数で見ると対象に入る可能性があります。
従業員数の基準となる人数は、製造委託等と役務提供委託等とで異なります1。
あわせて、運送の委託のうち特定運送委託が新たに対象取引に加わりました1。
資本金の区分も人数の基準も、取引類型ごとに決まっています。
そのため、自社の取引をどの類型に当てはめるかを先に決め、そのうえで公正取引委員会の改正の概要に示された基準と照らし合わせる順序になります。
従業員数の判定時点と数え方
人数をいつの時点で数えるかについて、Q&Aは、製造委託等をした時点で判定すると示しています4。
パートタイムの従業員などは人数に含み、グループ会社の従業員は含みません4。
運用基準では、常時使用する従業員の数を、賃金台帳の対象となっている人数で算定するとしています3。
判定が発注の時点で決まるということは、一度判定すれば終わり、ではないということです。
たとえば、取引開始時には基準を上回っていた取引先が、その後に人員を減らしていれば、ある時点からの発注は対象に変わることがあります。
逆の動きもありえます。
受発注システムの側では、取引先マスタに「取適法の対象区分」と「その判定を確認した日」を持たせておく方法があります。
そうすれば、発注データを出すたびに区分を確かめやすくなります。
取引先の従業員数は相手方の情報なので、発注側の社内データだけでは分かりません。
取引先から書面などで申告を受け、その日付とともに記録しておけば、後から判定の根拠をたどれます。
これは法令が定める形式ではなく、判定の時点が発注ごとにあることを踏まえた運用上の工夫です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 判定の時点
- 製造委託等をした時点で判定する
- 人数に含む
- パートタイムの従業員など
- 人数に含まない
- グループ会社の従業員
- 算定の方法
- 常時使用する従業員の数
- 賃金台帳の対象となっている人数
手形をやめたあと使える支払手段:現金・振込と電子記録債権の条件
現金・振込
対象になると分かった取引では、手形に代わる支払手段を選びます。
選択肢を比べるときの軸は二つです。
一つは、受注側が支払期日までに代金を満額で受け取れるか。
もう一つは、手数料を誰が負担するかです。
そもそも、なぜ手形がだめなのでしょうか。
運用基準は、手形を交付することを支払遅延にあたると位置づけています3。
Q&Aでも、遅延利息を考える際には手形の満期日を支払日として扱うとしています4。
手形を支払期日に渡しても、受注側が現金を手にできるのは満期日です。
満期まで待てなければ割引に出し、割引料の分だけ目減りした金額を受け取ることになります。
支払期日に満額が届かないこの構造が、禁止の背景にあると読み取れます。
現金や銀行振込なら、支払期日に満額を払えば、この問題は生じません。
手形の代わりとして最も単純で、支払条件を振込に一本化すれば、満期の管理も不要になります。
一方で、発注側の資金繰りから見ると、これまで満期まで待っていた分だけ資金の流出が早まります。
支払条件の変更は、経理部門の資金計画と合わせて進める必要があります。
満期が支払期日以前の電子記録債権
電子記録債権は、債権の発生や譲渡を電子的に記録して扱う債権で、全国銀行協会が手形の代替として案内する「でんさい」もその一つです5。
運用基準では、電子記録債権や一括決済方式について、満期日や決済日が支払期日以前であれば支払に使えるとしています3。
満期日や決済日が支払期日より後で、受注側が期日に受け取るには割引が必要になるものは、金銭と同等には扱われません3。
判断を分けるのは、割引料を誰が払うかではなく、満期が支払期日の前か後かです。
Q&Aは、支払期日より後に満期が来る電子記録債権について、割引料を委託事業者が負担したとしても違反になるとしています4。
「割引料はこちらで持つから、満期は従来どおり」という調整では解決しません。
改正の概要でも、電子記録債権やファクタリングのうち、支払期日までに満額を得ることが難しいものは禁止の対象とされています1。
表で判断が分かれるのは、同じ電子記録債権でも満期の置き方で扱いが逆になる点です。
手形から電子記録債権へ切り替えるときに、手形と同じ満期の感覚で設定すると、名前だけ変わって中身は禁止されたままになりかねません。
電子記録債権を支払方法に選んだ発注では、満期日が支払期日を超えていないかを発注ごとに比べられるようにしておくと、設定の誤りに気づけます。
手数料の負担
二つ目の軸である手数料についても、取適法の立場ははっきりしています。
改正の概要では、振込手数料を中小受託事業者に負担させることが禁止されています1。
運用基準も、受け取りにかかる手数料を受注側へ転嫁することを問題としています3。
Q&Aでは、電子記録債権などの手数料を代金から差し引くことは、受注側と合意していても認められないとしています4。
受発注システムや会計システムに、「支払額=請求額−振込手数料」のように手数料を差し引いて支払額を出す設定が残っている場合があります。
取引先ごとに「手数料先方負担」の区分を持たせている場合も同じです。
対象取引では、こうした差引きが働かないよう、区分と計算式の両方を見直します。
| 支払手段 | 支払期日までに満額を得られるか | 手数料・割引料の扱い | 取適法の下での扱い |
|---|---|---|---|
| 現金・振込 | 得られる | 振込手数料を受注側に負担させない | 使える |
| 電子記録債権(満期が支払期日以前) | 得られる | 手数料を代金から差し引かない | 使える |
| 電子記録債権(満期が支払期日より後) | 割引が必要で得られない | 割引料を発注側が負担しても解消しない | 金銭と同等と扱われない |
| 手形 | 満期まで現金化できない | 割引料が受注側に生じる | 禁止 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 支払期日に満額を得られる
- 現金・振込
- 満期が支払期日以前の電子記録債権
- 満額を得にくい
- 満期が支払期日より後の電子記録債権
- 手形(満期日が支払日として扱われる)
- 手数料の扱い
- 振込手数料を受注側に負担させない
- 電子記録債権などの手数料を代金から差し引かない
支払期日の数え方:受領から60日以内で、具体的な日を決める
起算日と60日
支払手段を決めても、支払期日の定め方が誤っていれば、設定変更は終わりません。
運用基準は、支払期日について「給付を受領した日から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」としています3。
60日は上限であって、標準ではありません。
起算日は、物品の製造委託などでは給付を受領した日です。
役務提供委託や特定運送委託では、役務の提供を受けた日が起算日になります3。
システムで支払予定日を計算するとき、どの日付項目を起点にしているかがここで問題になります。
受発注システムには、納品日、受入日、検収完了日のように、複数の日付項目を持つものがあります。
法律の起算日は「受領した日」であり、社内で検収を終えた日と同じとは限りません。
たとえば、物品が倉庫に届いてから検収の完了入力まで数日かかる運用で、検収完了日を起点に期日を計算しているとします。
この場合、法律上の起算日より後ろにずれた分だけ、60日の枠を超えるおそれが生じます。
自社の検収日と法律上の受領日がどの関係にあるかは、運用ごとに確かめる必要があります。
具体的な日の特定
期日の書き方にも決まりがあります。
Q&Aでは、支払期日は具体的な日が特定できるように定めるものとし、「納品日から何日後」といった書き方は認められないとしています4。
システムの内部で受領日から日数を数えるのは管理の手段にすぎません。
受注側に示す支払期日は、特定した日付にしておく必要があります。
支払条件マスタに「納品後N日」というパターンを持たせている場合は、どちらかに置き換えます。
一つは締め日と支払日の組み合わせ、もう一つは発注データに確定した支払期日を持たせる方法です。
締め日と支払日で定める方式では、締め日の直後に受領した分ほど、期日までの日数が長くなります。
締め日と支払日の組み合わせによっては、受領日から数えて60日を超える分が出ます。
最も日数が長くなる受領日で上限に収まるかを確かめておくと、マスタの組み合わせの誤りを事前に見つけられます。
検収日と請求書の遅れ
受注側からの請求書が遅れて届くと、期日を後ろへずらしたくなるかもしれません。
Q&Aは、請求書の提出が遅れても、支払期日の期限は延びないとしています4。
また、支払が遅れた場合の遅延利息は、受領した日から60日を経過した日から発生します4。
システムで請求書の受付日を支払予定日の起点にしていると、請求書が遅れるたびに期日も後ろへずれます。
その結果、気づかないうちに上限を超えることがあります。
起点は受領日に固定し、請求書の受付は支払処理の起点ではなく、照合のための情報として扱うと、期日の計算と請求書の到着を切り離せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領した日が起算日
- 60日の期間内でできる限り短く具体的な日に定める
- 請求書が遅れても期限は延びない
- 受領した日から60日を経過した日から遅延利息
現金払いへ切り替えるときの落とし穴:割引料・手数料・単価の一方的な引き下げ
割引料の差引き
手形をやめて振込に変えると、受注側は割引料を払わずに済むようになります。
このとき「これまで受注側が負担していた割引料の分を、代金から差し引いて精算しよう」と考えると、違反になります。
公正取引委員会の留意事項では、手形から現金払いへ変える際に割引料を代金から差し引くことは、減額にあたるとしています2。
同じ留意事項では、振込手数料の負担を受注側に変える場合も同様に扱っています2。
手形の交付では生じなかった振込手数料が、振込に切り替えたことで新たに発生しても、それを受注側に回すことはできません。
支払方法を振込に変えるとき、取引先マスタの手数料区分が「先方負担」のまま残っていないかを同時に見ておくと、切り替え直後の差引きを防げます。
単価の一方的な引き下げ
差し引くのではなく、単価そのものを下げる形でも問題は起きます。
留意事項では、現金払いへの変更に合わせて従来の単価から一定の率を一方的に引き下げることは、買いたたきや一方的な代金の決定にあたるおそれがあるとしています2。
取適法は、価格の協議に応じずに一方的に価格を決める行為を禁止しています1。
単価の改定そのものが禁止されているわけではありません。
問題になるのは、支払方法の変更を理由に、受注側との協議を経ずに率で一律に下げることです。
単価マスタを一括で更新できる仕組みがあれば、全取引先の単価を同じ率で下げる操作は短時間でできてしまいます。
だからこそ、改定の前に取引先ごとの協議の経過を残し、合意日以降の発注から新単価を当てるという順序を守ることが大切です4。
違反にあたるかどうかは、個々の取引の事情で判断されます。
ここで挙げたのは、公正取引委員会が留意点として示した例です。
自社の改定案がそれに近いかどうか迷う場合は、公正取引委員会の資料と照らして個別に検討してください。
▼ 図の内容を文字で読む
- 割引料の差引き
- 割引料を代金から差し引く
- 減額にあたる
- 振込手数料の転嫁
- 振込手数料を受注側に回す
- 割引料の差引きと同様に扱われる
- 単価の一方的な引き下げ
- 協議なしに一定の率で下げる
- 買いたたきや一方的な代金の決定にあたるおそれ
受発注システムで見直す項目:必須の対応と運用上の選択
支払条件マスタ
ここまでの内容を、受発注システムのどの項目に当てはめるかを整理します。
項目の対応づけは、法令の要請を設定に落とすための考え方で、特定の製品の機能を説明するものではありません。
最初に手を入れるのは支払条件マスタです。
支払方法の選択肢に手形が残っていると、担当者が意図せず選べてしまいます。
2026年以降に発注する対象取引では、手形を選べないようにするか、選んだときに警告を出すようにします。
電子記録債権を残す場合は、満期が支払期日以前になるよう、満期の決め方もマスタに持たせます。
対象外の取引や2025年以前の発注をまだ処理しているなら、マスタから手形を一律に消すと、過去分の処理まで止まりかねません。
発注日と取引先の対象区分で、使える支払方法を絞り込む形にしておくほうが、新旧の取引を並行して扱えます。
支払期日の計算
支払期日の計算では、起点の日付項目、計算方法、上限の三つを見ます。
起点は、物品なら受領日、役務提供委託や特定運送委託なら役務の提供を受けた日に合わせます3。
計算方法は、締め日と支払日による方式か、発注ごとに確定日を持つ方式かを決め、結果を具体的な日付として出します4。
上限については、受領日から60日を超える期日が計算されたときに警告を出すと、マスタの組み合わせの誤りに気づけます。
明示の記載項目と電磁的方法
発注時に取引条件を受注側へ示すことを、取適法では4条の明示と呼びます。
運用基準では、明示は書面の交付か、電磁的方法による提供で行うとしています3。
電磁的方法とは電子メールなどの送信や記録媒体の交付を指し、受注側の画面に内容が明確に表示されることが求められます3。
受注側から書面を求められた場合は、原則として遅滞なく書面を交付します3。
発注書をメールやWeb画面で送っている場合は、その画面や添付ファイルに、支払期日と支払方法がはっきり表示されているかを見直します。
電子記録債権や一括決済方式を使う場合は、4条の明示と、取引の内容を記録する7条の記録に、新たな事項を加える必要があります2。
発注書の様式と社内に残す取引記録の様式の両方に、その欄を用意しておくことになります。
法令上必須か運用上の選択か
見直す項目を、法令の要請に直接対応するものと、それを確実に守るための運用上の工夫とに分けると、次のようになります。
この区分は編集部による整理で、運用上の工夫の側は、自社の業務の流れに合わせて取捨選択できます。
表で運用上の工夫とした項目は、なくても直ちに違反になるわけではありません。
ただ、発注日による判定や取引先の区分を人の記憶に頼ると、発注のたびに担当者が判断することになります。
その判断の揺れが、そのまま設定の誤りにつながります。
システムに判定の材料を持たせておけば、担当者が確かめるのは区分の更新と警告の内容に絞られます。
| 見直す項目 | 直す内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 支払方法 | 対象取引で手形を選べないようにする | 法令の要請への対応 |
| 電子記録債権の満期 | 満期を支払期日以前に設定する | 法令の要請への対応 |
| 支払期日の起算日 | 受領日(役務は提供を受けた日)から数える | 法令の要請への対応 |
| 支払期日の表示 | 具体的な日付で示す | 法令の要請への対応 |
| 手数料の差引き | 振込や電子記録債権の手数料を代金から引かない | 法令の要請への対応 |
| 電子記録債権利用時の明示と記録 | 発注書と取引記録に新たな事項の欄を設ける | 法令の要請への対応 |
| 発注日による判定 | 2026年以降の発注かで使える支払方法を絞る | 運用上の工夫 |
| 取引先の対象区分 | 区分と確認日を取引先マスタに持たせる | 運用上の工夫 |
| 60日超過の警告 | 期日計算時に上限超過を知らせる | 運用上の工夫 |
| 単価改定の協議記録 | 合意日と協議の経過を残す | 運用上の工夫 |
紙の手形そのものも終わる:銀行側の期限と着手の順番
全銀協の交換廃止
取適法とは別の動きとして、紙の手形そのものの利用も終わりに向かっています。
全国銀行協会は、2027年3月末までに紙の手形・小切手の交換を廃止するとしています5。
電子交換所での交換枚数をゼロにすることを目標とし、金融機関ごとに紙の手形の最終振出期限が設けられています5。
代わりの手段として案内されているのは、でんさいなどの電子記録債権と、インターネットバンキングによる振込です5。
これは法令による禁止ではなく、銀行側の取組です。
そのため、取適法の対象外の取引、たとえば発注側の規模が基準に当たらない取引でも、紙の手形は使いにくくなっていきます。
最終振出期限は金融機関ごとに異なるので、取引している金融機関への確認が欠かせません。
受注側にとっても、手形で受け取っていた取引を、でんさいの受取や振込の受入へ切り替える準備が要ります。
発注側と受注側の着手順
取適法の禁止と銀行側の廃止は、根拠も時期も主体も異なります。
法律の禁止は2026年の施行後の発注にすでに適用されており、銀行側の廃止は2027年度末を区切りに進んでいます。
発注側にとっては、取適法の対象取引を先に、対象外の取引をその後に、という順序で考えると整理しやすくなります。
発注側(委託事業者)の着手順は、次のとおりです。
<ol><li>2026年以降に発注した対象取引のうち、支払方法が手形になっているものを洗い出す</li><li>現金・振込か、満期が支払期日以前の電子記録債権かを、取引先と協議して決める</li><li>支払条件マスタ、支払期日の計算、発注書の明示内容を直す</li><li>対象外の取引に残る手形も、取引金融機関の最終振出期限に合わせて切り替える</li></ol>
受注側(中小受託事業者)は、受け取っている手形を発注日で分けることから始めます。
2026年以降に発注を受けた対象取引で手形が届いているなら、取適法の下では認められない支払方法です。
発注側に支払方法の変更を求める際は、公正取引委員会の資料やQ&Aを手元に置くと、どの点が問題かを具体的に示せます。
あわせて、でんさいの受取や振込の受入について取引金融機関に手続を確かめておくと、銀行側の廃止の時期にも慌てずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 対象取引の手形を洗い出す
- 支払手段を取引先と協議して決める
- 支払条件マスタ・期日計算・発注書を直す
- 対象外の取引の手形も最終振出期限に合わせて切り替える
発注日による新旧の区分、取引先ごとの対象判定、支払条件マスタの組み合わせは、自社のデータを並べてみないと、どこに手形や手数料差引きの前提が残っているかが見えにくいためです。
現在の支払条件マスタと支払期日の計算の起点を一緒に洗い出し、手形や手数料差引きが残る設定と、検収日と受領日のずれが生じうる箇所を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| いつから | 2026年の施行後に発注した取引に適用 |
| 経過措置 | 確認した公正取引委員会の資料に、支払期日を猶予する記載はない |
| 対象判定 | 資本金基準に当たらなくても従業員数基準で対象になりうる。判定は委託をした時点 |
| 支払手段 | 現金・振込、または満期が支払期日以前の電子記録債権 |
| 支払期日 | 受領日から60日以内でできる限り短く、具体的な日付で示す |
| 手数料・単価 | 手数料の転嫁、割引料の差引き、一定率での一方的な単価引き下げを避ける |
| 紙の手形 | 2027年3月末までに交換廃止。最終振出期限は金融機関ごと |
法令の要請への対応と運用上の工夫の線引きは、発注・検収・支払の流れが会社ごとに違うため、一般的な整理だけでは決めきれないためです。 自社の発注書の明示内容と支払期日の出し方を照らし合わせ、どの項目から直すかの順番を整理できます。
よくある質問
2025年12月以前に発注した取引の支払いが2026年に入ってから来る場合、手形で払ってよいのですか。
取適法の規定は2026年1月1日以降に発注した取引に適用されるため2、それより前の発注は旧下請法の側で扱いを確認することになります。
旧法の下での手形の扱いは、取適法の資料とは別に確かめてください。
いずれにしても紙の手形は2027年3月末までに交換が廃止されるため5、振込などへの切り替えを並行して準備しておくのが現実的です。
電子記録債権(でんさい)は、満期が支払期日より後でも、割引料を発注側が負担すれば使えますか。
使えません。
公正取引委員会のQ&Aは、支払期日より後に満期が来る電子記録債権について、割引料を委託事業者が負担しても違反になるとしています4。
判断の基準は、受注側が支払期日までに満額を得られるかどうかです。
満期を支払期日以前に設定してください。
手形から振込に変えるとき、振込手数料を受注側に負担してもらってよいですか。
できません。
取適法では振込手数料を中小受託事業者に負担させることが禁止されており1、手形からの切り替えに伴って手数料の負担を変えることも、割引料の差引きと同様に問題とされています2。
受注側として手形で支払われた場合、どこへ相談できますか。
取適法を所管しているのは公正取引委員会です。
取適法のページに制度の概要やQ&Aがまとまっており、相談の窓口もそこから確認できます。
まず発注日が2026年1月1日以降の取引かを確かめておくと、相談の際に状況を伝えやすくなります。
従業員数の基準は、いつの時点の人数で判定するのですか。
製造委託等をした時点で判定します。
パートタイムの従業員などは人数に含み、グループ会社の従業員は含みません4。
常時使用する従業員の数は、賃金台帳の対象となっている人数で算定します3。
発注ごとに判定の時点があるため、取引先の人数が変われば対象かどうかも変わりえます。
取引が取適法の対象外のとき、手形払いは違反にならないのですか。
取適法の手形払い禁止は、対象取引に適用されるものです。
ただし、全国銀行協会の取組として紙の手形・小切手の交換は2027年3月末までに廃止され、金融機関ごとに最終振出期限も設けられています5。
対象外の取引でも、紙の手形を使い続けることは難しくなります。
- 1 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(改正の概要)」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
- 4 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 5 出典:全国銀行協会「紙の手形・小切手利用廃止について」(2026年)
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