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Web受発注システムの帳票出力:様式・出力形式・必須項目を契約前にどう確認するか

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 帳票の判断は「見た目が同じか」ではなく、帳票の範囲・外せない記載項目・様式の自由度・渡し方の4つに分けて行う
  • 適格請求書は名称を問わないため、どの帳票に記載事項を載せるかを決め、その帳票の出力を確かめる
  • 下請取引で電子データを渡すには事前承諾と、受け手が保存・出力できる方法が必要で、紙で出力できる状態も残す
  • 様式は標準様式で足りるかから確かめ、導入後に変更するときの担当・費用・期間まで比べる
  • 出力形式は取引先が受け取った後の処理から逆算し、契約前に実データで試し出力する

Close-up of hands reviewing business documents and strategy papers on an office desk.
▽ 写真の出典元

「今の様式が出せないと取引先に使ってもらえない」迷いは、何を分けて考えれば解けるか

取引先に出している注文書や請求書の見本を手に、Web受発注システムのデモ画面と見比べてみると、罫線の位置も項目の並びも違っていて、「これで取引先に受け入れてもらえるのか」と判断に迷うことがあります。
ただ、帳票出力で確かめるべきなのは、見た目が今と同じかどうかではありません。
どの場面でどの帳票が要るか、法的に外せない記載項目を載せられるか、標準様式・項目の調整・独自様式のどれで足りるか、取引先がどう受け取れるかの4点です。
請求書の記載事項と、下請取引で電子データを渡す条件は公的資料で確かめられます。
様式の変更範囲や費用は製品ごとに異なるため、契約前に製品側へ確認します。

見た目の違いが、そのまま取引上の問題になるわけではない

デモで違和感を覚えるのは、たいてい帳票の見た目です。
会社ロゴの位置、品名欄の幅、備考欄の有無、合計金額を上と下のどちらに置くかといった違いは、長く同じ様式を使ってきた担当者ほど気になります。
一方、帳票を受け取る取引先の立場で考えると、困るのは見た目の変化よりも、照合に使っていた項目が消えることや、受け取り方が変わって社内の処理に乗らなくなることです。

仮に、取引先の担当者が注文書の「注文番号」を自社の仕入伝票に書き写し、納品時の照合に使っているとします。
システムの標準様式にも注文番号が載るなら、罫線の位置が変わっても照合はこれまでどおり続けられます。
反対に、見た目が今の様式とそっくりでも注文番号の欄がなければ、取引先は照合の手がかりを失います。
つまり「今の様式が出せるか」という問いの中には、性質の違う問いがいくつも混ざっています。

4つの問いに分けて判断する

迷いを解くために、帳票の問題を次の4つに分けて考えます。
<ul><li>必要な帳票の範囲:見積から請求までのどの場面で、自社がどの帳票を出す必要があるか</li><li>外せない記載項目:様式に関係なく、制度上載せなければならない項目は何か</li><li>様式の自由度:それ以外の体裁や独自項目を、標準のまま使うか、調整するか、作り込むか</li><li>渡し方:取引先が紙・PDF・データのどれで受け取り、受け取った後にどう処理するか</li></ul>

この順番には理由があります。
最初に帳票の範囲を決めておかないと、製品資料の「対応帳票」を見ても、それが自社に必要かどうかを判断できません。
記載項目は交渉の余地がない部分で、様式の自由度を考える前提になります。
渡し方は取引先の事情で決まるため、自社だけでは決めきれず、最後に取引先との確認が必要です。

なお、この4分類は制度上の区分ではなく、判断を進めるための整理です。
以下の節では、この順に一つずつ答えていきます。

分けて考える問い 決めること 決める手がかり
必要な帳票の範囲 出力する帳票と受け取る帳票 自社の実際の取引
外せない記載項目 必ず載せる項目 国税庁・公正取引委員会の資料
様式の自由度 標準・調整・独自様式のどれで足りるか 製品の仕様と見積
渡し方 紙・PDF・データのどれで渡すか 取引先への聞き取り
帳票の判断を進める4つの問いの順序(判断を進めるための整理)
必要な帳票の範囲、外せない記載項目、様式の自由度、渡し方の順に考える流れ1必要な帳票の範囲2外せない記載項目3様式の自由度4渡し方

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 必要な帳票の範囲
  2. 外せない記載項目
  3. 様式の自由度
  4. 渡し方

受発注の流れのどの場面で、どの帳票が必要になるか

見積から請求までの場面別チェック

受発注の取引では、一般に見積書、注文書(発注書)、注文請書、納品書、検収書や受領書、請求書といった帳票が、取引の進み具合に応じてやり取りされます。
ただし、すべての取引でこれらがそろうわけではありません。
注文請書を交わさない取引もあれば、納品書と請求書を一枚にまとめている会社もあります。
帳票の役割は業種や取引慣行で違うため、一般論から必要な帳票を決めるより、自社の実際の取引から洗い出すほうが確実です。

洗い出しでは、直近の取引を何件か選び、実際に紙やPDFでやり取りした帳票を場面順に並べます。
このとき、自社が出す帳票と、取引先から受け取る帳票を分けて書き出します。
発注側の担当者なら、注文書を出し、納品書や請求書を受け取ることが多いでしょう。
受注側の担当者なら、注文請書・納品書・請求書を出す側に回ります。
システムの帳票出力として見るべきなのは、主に自社が出す帳票です。
受け取る帳票については、出力機能ではなく、受け取ったデータを取り込めるか、閲覧や保存ができるかという別の観点で確認します。

並べてみると、取引先によって出す帳票が違うことに気づく場合もあります。
ある取引先には都度の納品書だけを出し、別の取引先には月末にまとめた請求書を出している、といった違いです。
こうした違いは、後で取り上げる様式の数や出力形式の確認にそのまま関わるため、取引先名と一緒に記録しておくと後の作業で使えます。

名称より記載内容が問われる帳票

場面を洗い出すと、「この帳票の名前がシステムの対応一覧にない」と気になることがあります。
ここで押さえておきたいのは、インボイス制度の適格請求書は、所定の事項を記載した書類やデータを指し、請求書・領収書・納品書といった名称は問わないという点です1。
たとえば納品書に必要な事項がそろっていれば、その納品書を適格請求書として扱えます。

このため、システムの対応帳票に「適格請求書」という名前があるかどうかより、どの帳票にどの項目が載るかのほうが判断を左右します。
納品のたびに納品書を出し、請求書は月末にまとめて出している会社なら、記載事項をどちらの帳票で満たすのかを先に決めておく必要があります。
その帳票を出力したときに必要な項目がすべて載るかが、製品で確かめるべき点になります。
また、適格請求書は紙の書類に限らずデータでもよいとされています1。
出力形式の選び方は後の節で扱いますが、紙で出せるかどうかだけで判断する必要はありません。

出す帳票と受け取る帳票で変わる確認の観点(模式図)
自社が出す帳票は出力機能、受け取る帳票は取り込みや保存、取引先ごとの違いは記録して確認することを分けた図自社が出す帳票は出力機能、受け取る帳票は取り込みや保存、取引先ごとの違いは記録して確認することを分けた図自社が出す帳票システムの帳票出力として確認する受注側は注文請書・納品書・請求書を出す受け取る帳票受け取ったデータを取り込めるか閲覧や保存ができるか取引先ごとの違い都度の納品書か月末の請求書かを記録する様式の数と出力形式の確認に使う

▼ 図の内容を文字で読む
  • 自社が出す帳票
    • システムの帳票出力として確認する
    • 受注側は注文請書・納品書・請求書を出す
  • 受け取る帳票
    • 受け取ったデータを取り込めるか
    • 閲覧や保存ができるか
  • 取引先ごとの違い
    • 都度の納品書か月末の請求書かを記録する
    • 様式の数と出力形式の確認に使う

様式が違っても満たすべき記載事項:インボイスと下請取引の書面

請求書に必要な記載事項

前節で決めた帳票のうち、適格請求書として交付するものには、次の事項を記載します1。
<ul><li>書類の交付を受ける相手方の氏名または名称</li><li>売手の氏名または名称と登録番号</li><li>取引年月日</li><li>取引内容(軽減税率の対象品目である場合はその旨)</li><li>税率ごとに区分した合計額と適用税率</li><li>税率ごとに区分した消費税額</li></ul>

これらは、どの様式を選んでも外せない項目です。
逆に言えば、標準様式がこれらを正しく出力できるなら、罫線や配置が今の様式と違っていても制度上の問題にはなりません。
システムで確かめたいのは、自社の登録番号を設定して帳票に表示できるか、同じ請求の中で標準税率と軽減税率の品目が混在したときに税率ごとの合計額と税額を分けて出せるか、軽減税率の対象品目を区別して表示できるか、といった点です。

この記載事項が関係するのは、適格請求書発行事業者として請求書を交付する場合です。
小売・飲食・タクシーなど不特定多数を相手にする事業では、記載の一部を省略できる簡易インボイスが認められています1。
受発注システムで扱う事業者間の取引に当てはまる場面は限られますが、自社の事業が該当するかは別に確かめてください。

保存も帳票出力と切り離せません。
売手は交付した適格請求書の写しを保存し、買手は仕入税額控除のために受け取った請求書を原則として保存します1。
受注側としてシステムから請求書を出すなら、出力した内容の写しがシステム内に残るのか、別途保存する必要があるのかを把握しておく必要があります。

下請取引で電子データとして渡す条件

発注書面を紙ではなく電子データで渡したいと考えている場合、下請法が適用される取引では条件があります。
下請法の対象になるかどうかは、発注側と受注側の資本金の区分と取引の内容で決まります。
そのため、まず自社の取引が対象かを確かめるところから始めます。

公正取引委員会の留意事項によると、書面に代えて電磁的記録で提供するには、事前に下請事業者の承諾を得る必要があります2。
承諾を求める際には、費用負担の内容と、電磁的な提供を受けない旨の申出ができることを示します2。
一括して承諾を得ていれば、発注のたびに承諾を取り直す必要はありません2。

提供の方法にも条件があります。
受け手が自分のファイルに記録し、出力して書面を作成できる方法に限られます2。
電子メール、EDIなどによる一括送信、ウェブサイトからのダウンロード、電磁的記録媒体の交付が該当し、ホームページで閲覧させるだけの方法や、携帯電話へのメール送信では足りません2。
さらに、システムの故障などで電磁的な提供ができないときは、書面を交付します2。

これを帳票出力の選定に置き換えると、見るべき点がはっきりします。
発注側がシステムを導入する場合、取引先が画面で注文内容を見られるだけでは足りず、PDFなどのファイルとして保存できる仕組みが必要です。
また、承諾を得られなかった取引先や故障時のために、同じ注文書を紙に印刷して渡せる状態も残しておく必要があります。
受注側の担当者にとっては、取引先から承諾を求められたときに、費用負担の内容と、受け取らない選択肢が示されているかを確かめる場面になります。

費用の扱いにも注意が要ります。
システム開発費など親事業者が負担すべき費用を下請事業者に負担させることは、問題となるおそれがあります2。
ただし、取引先の利用に応じて追加で生じる費用を、取引先が得る利益の範囲内で求めることは除かれています2。
取引先側にも利用料が発生する仕組みの製品を検討している場合は、その費用を誰が負担するかを契約前に整理しておく必要があります。

なお、ここで紹介した公正取引委員会のページは、令和5年12月25日までの改定を反映した内容です。
下請法は2026年に改正され、法律の名称や条番号が変わったと解説されています。
改正後の承諾要件や書面の扱いは、公正取引委員会の最新の資料で確かめてください。

電子の保存要件は別に確認する点

帳票をデータで出力し、データのまま渡すようになると、電子取引のデータをどう保存するかという別の問題が生じます。
これは帳票を出力できるかどうかとは別の確認事項です。
先に挙げた国税庁のインボイス制度の概要ページは、写しを保存する義務には触れていますが、電子データでの保存方法までは説明していません1。

PDFを出力してメールで送れるシステムでも、送った内容を後から検索できる形で残す仕組みがあるとは限りません。
システム内に保存されるのか、別の保存先へ移す必要があるのかで、導入後の作業が変わります。
保存の要件そのものは国税庁の電子帳簿保存法の資料で確かめ、システムの機能でどこまで対応し、どこを社内の運用で補うかを分けて考えます。

記載事項 システムで確かめる点
相手方の氏名・名称 取引先マスタの名称が帳票に出るか
売手の氏名・名称と登録番号 自社の登録番号を設定・表示できるか
取引年月日 帳票上の日付が取引日を示すか
取引内容と軽減税率対象の旨 対象品目を区別して表示できるか
税率ごとの合計額と適用税率 税率が混在しても分けて集計できるか
税率ごとの消費税額 税率ごとに税額を出せるか
下請取引で発注書面を電子データで渡すまでの流れ(令和5年12月25日までの改定を反映した内容)
下請法の適用確認、事前承諾、保存と出力ができる方法での提供、故障時の書面交付の順を示した縦の流れ1下請法の対象か確かめる資本金の区分と取引の内容で決まる2事前に承諾を得る費用負担の内容と、受けない旨の申出ができることを示す3保存・出力できる方法で渡すメール、EDIなどの一括送信、ダウンロード、記録媒体。閲覧のみは不可4故障時は書面を交付する紙で出力できる状態を残す

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 下請法の対象か確かめる:資本金の区分と取引の内容で決まる
  2. 事前に承諾を得る:費用負担の内容と、受けない旨の申出ができることを示す
  3. 保存・出力できる方法で渡す:メール、EDIなどの一括送信、ダウンロード、記録媒体。閲覧のみは不可
  4. 故障時は書面を交付する:紙で出力できる状態を残す

標準様式・項目調整・独自様式:どれを選ぶと現実的か

3つの選択肢を同じ軸で比べる

必須項目が決まると、残る問題は体裁と独自項目の扱いです。
選択肢は大きく3つあります。
製品が用意した様式をそのまま使う標準様式、製品が用意する設定の範囲で表示項目やロゴなどを変える項目調整、自社の様式に合わせて帳票を作る独自様式です。
どこまでを設定で変えられ、どこからが個別対応になるかは製品ごとに違うため、この区切りはあくまで比べるための目安です。

判断の順序は、軽い選択肢から確かめていくのが現実的です。
まず、標準様式に前節の必須項目と、自社や取引先が照合に使っている項目が載るかを見ます。
載るなら、様式は変えずに社内の運用と取引先への案内で合わせる道が、作業も費用も最も少なく済みます。
足りない項目がある場合に限って項目調整を検討し、それでも取引先から指定された様式に合わせられない場合に独自様式へ進みます。

ここで迷いやすいのが、「足りない」の中身です。
取引先が照合に使う注文番号や品番が欠けているなら、調整や作り込みに進む理由になります。
一方、社内で長く使ってきた配置と違うという理由だけなら、慣れの問題として運用で吸収できる余地があります。
洗い出した項目ごとに、制度上必要か、取引先が使っているか、社内の慣れか、のどれに当たるかを書き添えておくと、調整を依頼する範囲を絞り込めます。

比べるときは、導入時の作業と費用だけでなく、導入後に様式を変えるときの手間も同じ表に並べます。
社名や所在地の変更、記載事項の見直し、取引先からの項目追加の依頼などで、様式は導入後にも変わる可能性があるからです。
標準様式なら製品側の更新に任せられる部分が多い一方、独自様式では変更のたびに誰かに直してもらう必要が出てきます。
各欄は製品によって答えが違うため、下の表は自社で埋める確認欄として使ってください。

費用は提供元ごとに確認する

費用について一般的な相場を示すことはできません。
受発注システムを提供する竹田印刷の解説記事は、SaaS型ではオプションや独自のカスタマイズに別途コストがかかり、ハーフスクラッチ型では追加開発する機能が増えるほどコストが高くなる可能性があると述べています3。
これは同社の分類に基づく説明で、帳票や様式に限った話でも、市場全体の相場でもありません。
それでも、標準から外れるほど追加費用が生じうるという構造は、帳票の判断にも当てはめて考えられます。

見積を受け取ったら、帳票に関わる費用を次の3つに分けて書いてもらうと比べやすくなります。
基本料金の範囲で使える部分、オプションとして加算される部分、個別の開発として見積られる部分です。
あわせて、導入後に様式を変える場合の費用の扱いも聞いておきます。
導入時の見積だけを比べると、独自様式の変更費用が後から積み重なることを見落としやすいからです。

比べる軸 標準様式 項目調整 独自様式
必要な作業 運用と取引先への案内を合わせる 設定範囲を確かめて変更する 様式を設計・作成する
費用 基本料金に含まれるか確認 設定の範囲内かオプションか確認 個別見積を確認
納期 導入日程に含まれるか確認 設定作業の期間を確認 作成と試験の期間を確認
変更時の手間 製品の更新で対応されるか確認 自社で直せるか確認 依頼先・費用・期間を確認
「足りない」の中身ごとの扱い方(模式図)
制度上必要な項目、取引先が使っている項目、社内の慣れの3つに分け、それぞれの対応を示した図制度上必要な項目、取引先が使っている項目、社内の慣れの3つに分け、それぞれの対応を示した図制度上必要な項目交渉の余地がなく、載せる必要がある取引先が使っている項目注文番号や品番など照合に使う項目欠けていれば調整や作り込みを検討する社内の慣れ配置が違うだけの場合運用で吸収できる余地がある

▼ 図の内容を文字で読む
  • 制度上必要な項目
    • 交渉の余地がなく、載せる必要がある
  • 取引先が使っている項目
    • 注文番号や品番など照合に使う項目
    • 欠けていれば調整や作り込みを検討する
  • 社内の慣れ
    • 配置が違うだけの場合
    • 運用で吸収できる余地がある

PDF・紙・CSV・データ連携:取引先の受け取り方に合わせた出力形式の選び方

取引先の受け取り方から逆算する

出力形式は、自社が出しやすい形式ではなく、取引先が受け取ってからどう処理するかから決めると失敗が減ります。
同じ注文書でも、受け取った後の扱いは取引先によって違います。
紙で受け取って押印して返す取引先、PDFをメールで受け取って印刷・保存する取引先、データを自社の販売管理の仕組みに取り込みたい取引先などです。

PDFと、CSVのようなデータ形式とでは役割が異なります。
PDFは人が読んで確認し、保存するための形式です。
CSVは項目ごとに区切られたデータで、相手の仕組みに取り込むための形式です。
受注側の担当者が、届いたPDFの注文内容を自社の受注画面に手で打ち直しているなら、CSVで受け取れればその転記を減らせる可能性があります。
ただし、項目の並びや品番のコードが相手の仕組みと合わなければ、取り込んだ後に手で直す作業が残ります。
データで渡す場合は、出力できるかに加えて、項目の並びを取引先に合わせて変えられるかも確かめる必要があります。

取引先の傾向を一般論で決めることはできないため、自社の取引先に聞いて確かめます。
前の節で作った帳票の一覧に、取引先ごとの受け取り方の列を足し、紙・PDF・CSV・その他のデータ連携のどれを使っているか、受け取った後に何をしているかを書き込みます。
その一覧をシステムの出力形式と突き合わせれば、どの取引先が新しい形式に移れ、どの取引先には従来の形式を残す必要があるかが見えてきます。

閲覧だけの方式と紙の併用

Web受発注システムの中には、取引先がログインして注文内容を画面で確認する仕組みのものがあります。
手軽ですが、下請法が適用される取引の発注書面としては、ホームページの閲覧だけでは足りません2。
取引先が自分の手元にファイルとして保存し、出力できる方法が必要で、ダウンロードや電子メールでの送付は該当します2。
画面で確認できる仕組みであっても、同じ内容をPDFなどでダウンロードできるかを確かめます。

電子データでの提供を主にする場合でも、紙の出力は残ります。
承諾を得られなかった取引先や、電磁的な提供を受けない旨を申し出た取引先には書面で渡す必要があり、システムが故障したときも書面を交付します2。
そのため、電子化を前提に選ぶ場合でも、同じ帳票を必要なときに紙で印刷できるかは外せない確認点です。
取引先ごとに渡し方を切り替えられるか、電子と紙の両方で同じ内容が出るかを見ておくと、移行の途中で取引先によって対応が分かれても混乱を防ぎやすくなります。

取引先の受け取り方別にみた出力形式の見方(模式図)
紙、PDF、CSVなどのデータの3つの受け取り方ごとに、受け取った後の処理と確認点を並べた図紙、PDF、CSVなどのデータの3つの受け取り方ごとに、受け取った後の処理と確認点を並べた図紙で受け取る押印して返す同じ帳票を紙で印刷できるかPDFで受け取るメールで受け取り印刷・保存する人が読んで確認し保存する形式データで受け取る販売管理の仕組みに取り込む項目の並びを取引先に合わせて変えられるか品番のコードが合わないと手直しが残る

▼ 図の内容を文字で読む
  • 紙で受け取る
    • 押印して返す
    • 同じ帳票を紙で印刷できるか
  • PDFで受け取る
    • メールで受け取り印刷・保存する
    • 人が読んで確認し保存する形式
  • データで受け取る
    • 販売管理の仕組みに取り込む
    • 項目の並びを取引先に合わせて変えられるか
    • 品番のコードが合わないと手直しが残る

導入前に製品側へ確認する項目と、変更・試験の進め方

確認項目チェックリスト

ここまでの判断を、契約前に製品側へ確かめる項目にまとめます。
<ul><li>必須項目の出力:適格請求書の記載事項を、自社が適格請求書として使う帳票に出力できるか。
税率が混在する取引でも税率ごとに集計できるか</li><li>様式変更の範囲と費用:設定で変えられる範囲はどこまでか。
それを超える変更は、オプションと個別開発のどちらになるか</li><li>導入後の変更手順と担当:様式を変えたいとき、自社の担当者が設定画面で直せるのか、提供元に依頼するのか。
依頼する場合の費用と期間はどうなるか</li><li>出力形式と取引先側の受け取り:PDF・紙・CSVなど、取引先ごとに必要な形式で出せるか。
取引先がファイルとして保存・出力できるか</li><li>電子提供の承諾と費用負担:下請取引に当たる場合、承諾の取得や、取引先に生じる費用をどう扱うか</li><li>実データでの試し出力:自社の実際の取引データで帳票を出し、内容を確かめられるか</li></ul>

とくに導入後の変更手順は、デモでは見えにくい部分です。
独自様式を作った場合、製品のバージョンアップの後も同じ様式が使えるのか、取引先が増えて様式を追加したいときに誰が作業するのかを聞いておくと、導入後の負担を見積もりやすくなります。
これらの答えは、前の節で作った比較表の各欄を埋める材料にもなります。

最後の試し出力は、資料で確かめたことを実物で確認する手順です。
見本データではなく、自社の実際の取引から、税率が混在する注文や品目の多い注文など、出力が崩れやすい例を選んで出力します。
出した帳票を必須項目と照合項目の一覧と照らし合わせ、そのうえで取引先にも見本を見せて受け取り方を確かめると、導入後に様式の問題が見つかる事態を減らせます。

状況別の選び方

確認の結果は、おおむね次の3つの状況に分かれます。

標準様式で足りる場合は、必須項目と取引先の照合項目が標準様式に載り、取引先の受け取り方にも対応できている状況です。
この場合、様式を作り込む理由はあまりありません。
社内で慣れた配置との違いは運用で吸収し、取引先には切り替え前に新しい様式の見本を送って、照合に使う項目の位置を伝えておきます。
導入後の変更も製品側の更新に任せられる範囲が広く、長期的な手間を抑えやすい選択です。

項目の調整が要る場合は、注文番号や取引先独自の品番など、一部の項目が標準様式に出ない状況です。
まず、その項目を設定の範囲で追加できるかを確かめます。
設定で対応できるなら、導入後に自社の担当者が直せるかも確かめておきます。
オプションになる場合は、その費用と、将来ほかの項目を足したくなったときの扱いを見積に含めてもらいます。

独自様式が必須の場合は、取引先から指定の様式を求められているなど、標準様式や調整では合わせられない状況です。
このときは個別の作成費用に加えて、変更のたびに誰に依頼し、どれだけの期間と費用がかかるかが判断の中心になります。
独自様式を求める取引先が一部に限られるなら、その取引先だけ別の様式や従来の方法を残し、残りの取引先は標準様式に移すという分け方も検討できます。
すべての取引先に一つの判断を当てはめず、取引先ごとに合う方法を選べるかどうかも、製品を比べる観点の一つです。

確認結果の3つの状況と、それぞれで行うこと(模式図)
標準様式で足りる場合、項目の調整が要る場合、独自様式が必須の場合ごとの対応を並べた図標準様式で足りる場合、項目の調整が要る場合、独自様式が必須の場合ごとの対応を並べた図標準様式で足りる必須項目と照合項目が標準様式に載る運用で吸収し、切り替え前に見本を送る項目の調整が要る注文番号や独自の品番が標準様式に出ない設定で追加できるかを確かめるオプションなら費用と将来の扱いを見積に含める独自様式が必須取引先から指定の様式を求められている変更のたびの依頼先・期間・費用を確かめる一部の取引先だけ別の様式や従来の方法を残す方法もある

▼ 図の内容を文字で読む
  • 標準様式で足りる
    • 必須項目と照合項目が標準様式に載る
    • 運用で吸収し、切り替え前に見本を送る
  • 項目の調整が要る
    • 注文番号や独自の品番が標準様式に出ない
    • 設定で追加できるかを確かめる
    • オプションなら費用と将来の扱いを見積に含める
  • 独自様式が必須
    • 取引先から指定の様式を求められている
    • 変更のたびの依頼先・期間・費用を確かめる
    • 一部の取引先だけ別の様式や従来の方法を残す方法もある

必須項目や渡し方の条件は資料で確かめられても、自社の帳票のどの項目が取引先の照合に使われているか、どこまでを標準様式に任せられるかは、手元の帳票と取引先の事情を並べてみないと判断しにくいものです。

手元の帳票と取引先の一覧をもとに、制度上必要な項目、取引先が使う項目、社内の慣れを分け、製品側へ確認すべき点を整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

帳票の範囲 自社が出す帳票と受け取る帳票を、実際の取引から場面順に洗い出す
記載事項 適格請求書として使う帳票に、登録番号や税率ごとの合計額・税額などが出力されるか
電子での提供 下請取引では事前承諾と、受け手が保存・出力できる方法が必要。紙の出力も残す
様式の選択 標準様式で足りるかから確かめ、不足する場合に項目調整、独自様式の順に進む
費用と変更 導入時の費用に加えて、導入後に様式を変えるときの担当・費用・期間を確認する
出力形式 取引先が受け取った後の処理から逆算し、取引先ごとに必要な形式を一覧にする

様式の変更範囲や導入後の変更費用は製品ごとに違い、見積や仕様書の書き方もそろっていないため、比べる段階で判断が止まりやすくなります。 検討中の製品について、標準様式・項目調整・独自様式の確認表をどう埋めるか、取引先ごとの渡し方をどう決めるかを一緒に確かめられます。

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よくある質問

注文書や納品書にも、インボイスと同じ記載事項が必要ですか。

インボイス制度の記載事項が求められるのは、適格請求書として交付する書類やデータです。
名称は請求書・納品書などを問わないため、納品書を適格請求書として使うなら、その納品書に記載事項を載せます1。
すべての帳票に同じ項目が必要という意味ではないので、どの帳票を適格請求書として使うかを先に決め、その帳票の出力を確かめてください。
下請取引の発注書面に必要な記載事項は下請法側の決まりなので、公正取引委員会の資料で確認します。

取引先がPDFではなく紙での受け取りを希望した場合、システムでどう対応しますか。

下請法が適用される取引では、電子データで渡すには事前の承諾が必要で、取引先は電磁的な提供を受けない旨を申し出ることもできます2。
そのため、紙で渡す取引先が残ることを前提に、同じ帳票を印刷して出力できるか、取引先ごとに渡し方を切り替えられるかを製品で確かめておきます。
FAX送信などの機能の有無は製品によって違うため、個別に確認が必要です。

既存の様式のレイアウトは、導入後に変更できますか。変更は誰が行いますか。

製品によって異なります。
設定画面で自社の担当者が直せる範囲と、提供元に依頼する範囲の区切りを、契約前に確かめてください。
独自のカスタマイズには別途費用がかかりうると説明する提供元もあるため3、導入後の変更にかかる費用と期間も見積に含めておくと安心です。

電子で発注書面を渡す場合、取引先の承諾はどう取りますか。

公正取引委員会の留意事項では、事前に承諾を得ることとし、その際に費用負担の内容と、電磁的な提供を受けない旨の申出ができることを示すとしています2。
一括して承諾を得ていれば、発注のたびに取り直す必要はありません2。
この資料は令和5年12月25日までの改定を反映した内容のため、2026年の改正後の要件は公正取引委員会の最新の資料で確かめてください。

電子取引データの保存要件は、帳票出力の選定とどう関係しますか。

帳票を出力できることと、電子データを要件どおり保存できることは別の確認事項です。
売手は交付した適格請求書の写しを保存しますが1、電子データでの保存方法は国税庁の電子帳簿保存法の資料で確かめる必要があります。
システム内に出力履歴が残るのか、別の保存先へ移す必要があるのかを確かめ、システムの機能と社内の運用で分担を決めておきます。

取引先ごとに様式が違う場合、システムがいくつの様式を持てるかを確認すべきですか。

確認しておくべき点です。
持てる様式の数のほか、取引先ごとに様式を割り当てられるか、様式を追加するときに誰が作業し費用がどうなるかも聞いておきます。
独自様式を求める取引先が一部に限られるなら、その取引先だけ別扱いにする運用が成り立つかも合わせて検討できます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)の概要」(2026年閲覧)
  2. 2 出典:公正取引委員会「下請法 書面の電磁的方法による提供に関する留意事項」(令和5年改定)
  3. 3 出典:株式会社竹田印刷「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2026年)

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  1. Close-up of hands reviewing business documents and strategy papers on an office desk./Photo by Kindel Media on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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