◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 納品書の発行を一律に義務づける規定は、税の保存ルール・インボイス・取適法の義務には見当たらず、要否は契約・取引先の求め・インボイスの運用で決まる。
- 不備の影響は、請求と入金の根拠、取引先の検収と社内処理、保存の三つに分けると、どこまで手当てが要るかを見極めやすい。
- 個人事業者は作成・受領した納品書などを5年保存し、法人は申告期限の翌日から7年が基本で、法人の納品書の扱いは税理士に確認する。
- 取適法の2年保存は委託事業者の義務で、税の保存期間とは別の物差しとして扱い、重なるときは長い方に合わせる。
- 納品書がインボイスを兼ねる場合は、請求書との突合を発行前の手順に組み込むと、食い違いを問い合わせの前に拾える。
目次

納品書を出し忘れた・なくしたとき、まず確かめる三つのこと
月末に請求書を作ろうとしたら、先月の納品書の控えが見当たらない。
取引先から「納品書と請求書の金額が合わない」と連絡が来た。
そんなときに気になるのは、請求や入金が止まらないか、税や法律の面で問題にならないかでしょう。
国税庁や公正取引委員会の資料には、納品書の発行そのものを一律に義務づける規定は見当たりません。
困りごとが起きるのは、相手の検収、請求の根拠、保存、インボイス、取適法の取引記録のどこかが欠けたときです。
自社の取引をこの五つに当てはめれば、控えの保存と請求書との突合をどこまで整えるかを決められます。
不備がどこに響くかを三つに分ける
納品書の不備と一口にいっても、出し忘れ、控えの紛失、記載の誤りでは、困る相手も困る時期も違います。
まず、その不備が「自社の請求と入金」「取引先の検収と社内処理」「書類の保存」のどこに響くのかを分けてください。
分けてみると、慌てて全部を作り直す必要があるのかどうかが見えてきます。
一つ目は、請求と入金の根拠です。
月末に請求書を作るとき、納品書の控えを見ながら品目や数量を拾っているなら、控えをなくすと請求書の材料が欠けます。
この場合の分かれ目は、注文書やメール、配送伝票、出荷の記録など、納めた事実を示す別の記録から内容を組み立て直せるかどうかです。
別の記録で日付・品目・数量・金額がそろうなら、請求そのものは止まりません。
二つ目は、取引先の検収と社内処理です。
検収とは、届いた品物や成果物が注文どおりかを、受け取った側が確かめる作業のことです。
取引先が納品書と現品を照らして受け取りを記録し、その記録を支払の手続きに回しているなら、納品書が届かないことは相手の手続きの停滞につながりえます。
反対に、取引先が自社の発注データと請求書だけで処理しているなら、納品書の出し忘れが入金に響く場面は限られます。
三つ目は、保存です。
取引先に渡した納品書の控えや、仕入先から受け取った納品書は、税務上の保存の対象になりうる書類です。
出し忘れであれば、今から作成して渡し、控えを残すことで追いつけます。
一方、控えの紛失はあとから完全には取り戻せないため、どこまで再現できるかを早めに見極めておく意味があります。
取引先が納品書を何に使っているかで重さが変わる
三つのうちどれが重いかは、自社の側だけでは決まりません。
同じ出し忘れでも、納品書の到着を検収の条件にしている取引先と、受け取っても保管するだけの取引先とでは、影響の出方が違います。
これは制度で一律に決まる話ではなく、取引先の業務の組み立て方によるものです。
たとえば、毎月決まった取引先に商品を届けている場合を考えます。
取引先の担当者が納品書を受け取って経理へ回し、経理が納品書と請求書を並べて支払額を確かめているなら、納品書の不足は経理からの問い合わせになって自社に戻ってきます。
一方、取引先が自社の発注システムで受け取りを記録しているなら、紙の納品書は確認の補助にとどまるかもしれません。
どちらに当たるかは、取引先の購買や経理の担当者に「納品書を何に使っているか」を一度尋ねれば分かります。
次に気になるのは、そもそも納品書を出さないこと自体が法律違反にならないかという点でしょう。
納品書は法律で出さなければならないのか
発行義務を定めた規定は見つからなかった
国税庁が示す帳簿書類の保存のルールや、適格請求書(インボイス)の記載事項を見ても、納品書という書類の発行を一律に義務づける記述はありません。
これらの資料が扱っているのは、作成・受領した書類をどう保存するか、請求書や納品書などに何を書けばインボイスとして扱われるかであり、「納品のたびに納品書を出さなければならない」という定めではありません24。
取適法についても同じです。
取適法は、事業者が他の事業者に製造や役務などを委託する取引について、発注する側(委託事業者)の義務を定めた法律で、公正取引委員会が運用しています。
委託事業者の義務として挙げられているのは、支払期日を定めること、発注内容を明示すること、遅延利息を支払うこと、取引の書類を作成して保存することの四つで、納品書の発行は含まれていません3。
ただし、商法や民法を含むすべての法令を照らした結論ではないため、「どの法律にも義務がない」とまでは言い切れません。
言えるのは、税の保存ルール、インボイス、取適法の義務のいずれにも、納品書を出すこと自体を求める規定はないということです。
取引慣行・契約・相手の要請で決まる場面
法律で一律に決まっていないなら、何が納品書の要否を決めるのか。
実務上は、取引の契約、取引先からの求め、自社がインボイスとしてどの書類を使っているかの三つです。
契約から見ていきます。
取引基本契約書や発注書に「納品時に納品書を添付すること」と書かれていれば、それは当事者間の約束です。
法令上の義務がなくても、約束である以上、取引先から書類の再提出や受け取り確認の保留を求められたときに断りにくくなります。
契約書に書いていなくても、取引先の受け入れ手順として納品書を求められることもあります。
この場合は、取引先が必要としている項目が何かを聞いておくと、毎回の書類に何を載せればよいかがはっきりします。
求められていない項目まで細かく書き込む必要はなく、逆に相手が検収で使う項目が抜けていれば、それが問い合わせの原因になります。
もう一つが、インボイスとの関係です。
自社が適格請求書発行事業者として登録していて、請求書ではなく納品書の側に登録番号や税額を載せているなら、その納品書はインボイスとして相手に交付する書類になります4。
この場合は「出さなくてもよい書類」ではなくなり、記載の正確さも含めて扱いが変わります。
この点は、請求書との食い違いを扱うところで詳しく見ていきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 請求と入金の根拠
- 請求書の材料を控えから拾っているか
- 注文書・メール・配送伝票から内容を組み立て直せるか
- 取引先の検収と社内処理
- 取引先が納品書と現品を照らして受け取りを記録しているか
- その記録が支払の手続きに回っているか
- 保存
- 渡した納品書の控えが残っているか
- 受け取った納品書を保存しているか
取適法の対象になる場合に、納品に関わる記録で何が必要か
委託事業者が作って残す取引の記録
取適法の対象となる取引では、発注する側の委託事業者に、給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務があります3。
給付とは、委託された製品や成果物、役務の提供のことで、納品はその給付を受け取る場面にあたります。
ここで押さえておきたいのは、この記録を作る義務を負うのが発注する側だという点です。
また、公正取引委員会の義務の説明には納品書という語は出てきません3。
そのため、受け取った納品書をそのまま第7条の記録として扱えるのか、別に記録を作る必要があるのかは、この説明だけでは判断できません。
記録に何を載せるべきかの具体は、公正取引委員会の解説資料で確かめる必要があります。
自社が納品する側なら、どの立場かで読み方が変わる
納品書を出す側にいると、取適法は相手の義務の話に見えますが、立場は取引ごとに決まります。
取引先から製造や加工を委託されて納品しているなら、自社は中小受託事業者の側にあたる可能性があり、記録の作成・保存の義務を負うのは取引先です。
一方で、自社が別の事業者に部品の加工や作業を委託し、その事業者から納品を受けているなら、自社が委託事業者として記録を残す側になりえます。
どちらにも当たらない取引もあります。
取適法が適用されるかどうかは、委託事業者と中小受託事業者それぞれの資本金や従業員数と、取引の内容の組み合わせで決まります。
基準は公正取引委員会や中小企業庁の資料に示されているので、自社と相手の資本金・従業員数、委託している内容を手元にそろえて照らすのが確実です。
受託側として納品している場合、自社に第7条の保存義務はありません。
それでも、いつ何を納めたかの記録を自社でも残しておけば、取引先の記録と食い違ったときに、どちらが正しいかを後から確かめる材料になります。
納品書の控えに、納品日と相手の受領を示す記録(受領印、受け取りの連絡メールなど)をひもづけておくのは、そのための一つのやり方です。
義務を果たすためではなく、食い違いを確かめやすくするための備えとして考えてください。
| 取引での立場 | 取適法の記録の義務 | 納品書の控えとの関わり |
|---|---|---|
| 取引先から委託を受けて納品する側(中小受託事業者にあたる場合) | 作成・保存の義務は取引先側 | 自社の納品日・受領の記録を残すと照合に使える |
| 他の事業者に委託して納品を受ける側(委託事業者にあたる場合) | 給付の内容・代金の額等の記録を作成し2年間保存 | 受け取った納品書の扱いは公正取引委員会の資料で確認 |
| 適用基準に当たらない取引 | 取適法の義務はかからない | 契約・取引先の求め・税の保存ルールで判断 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 委託を受けて納品する側
- 中小受託事業者にあたる可能性がある
- 記録の作成・保存の義務を負うのは取引先
- 納品日と受領の記録を自社でも残すと照合に使える
- 委託して納品を受ける側
- 委託事業者にあたりうる
- 給付の内容や代金の額などの記録を作成し2年間保存する
- 適用基準に当たらない取引
- 資本金や従業員数と取引の内容の組み合わせで決まる
- 自社と相手の資本金・従業員数、委託内容を手元にそろえて照らす
帳簿・証憑としての保存:何を何年残すか
個人事業者の場合
個人事業者は、業務に関して作成したり受け取ったりした請求書、納品書、送り状、領収書などの書類を5年間保存し、法定帳簿は7年間保存することとされています2。
証憑(しょうひょう)とは、取引があったことを示す書類のことで、納品書はその一つです。
ここで「作成した」書類が含まれている点が、納品する側には大事です。
取引先に渡した納品書そのものは手元に残りませんが、控えを作っていれば、それは自社が作成した書類として保存の対象になります。
逆に、控えを取らずに渡しているなら、保存すべきものが最初から手元にないことになり、あとで取引内容を示すときに困ります。
申告の区分ごとの扱いは国税庁の説明にまとまっているので、自社に当てはまる部分を一度読んでおくと迷いが減ります。
法人の場合
法人は、帳簿書類をその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません1。
欠損金(赤字)が生じた事業年度については、保存期間が10年になります1。
数え始めが書類を作った日ではなく申告書の提出期限の翌日である点は、廃棄の時期を決めるときに見落としやすいところです。
一方で、国税庁の法人向けの説明には、保存する書類の例として注文書や契約書、領収書などは挙がっていますが、納品書という語は出てきません1。
取引に関して作成・受領した書類として納品書も一緒に残す運用が自然に思えますが、法人の場合の位置づけはこの説明だけでは確定できません。
法人の担当者は、納品書を含む取引関係の書類を何年残すかを、顧問の税理士に確認しておくのが確実です。
取適法の記録と重なるとき
前の節で見た取適法の2年は、委託事業者が取引の記録を残す義務の期間で、税の保存期間とは根拠も対象も違います3。
二つの期間を足したり、短い方に合わせたりする関係にはありません。
同じ書類が両方の対象になりうる場合は、長い方の期間に合わせて残しておけば、どちらの求めにも応じられます。
これは制度が定めた計算ではなく、二つのルールを同時に満たすための運用の考え方です。
電子データで受け取った納品書の扱い
納品書をPDFにしてメールで送ったり、取引先のシステムから受け取ったりしている場合は、紙の場合とは別の確認が要ります。
電子データでやり取りした取引の書類には電子帳簿保存法の保存のルールがあり、紙に印刷して綴じておけば足りるとは限らないためです。
どのデータを、どの形式で、どう探せる状態で残すかには細かな要件と例外があり、ここで細部まで判断することはできません。
少なくとも、メールで送受信した納品書を印刷だけして元のデータを消す運用は、始める前に国税庁の電子帳簿保存法の案内か税理士で確かめてください。
判断がつくまでは、送ったPDFや受け取ったPDFを月ごとのフォルダに残しておくだけでも、後から保存の方法を選び直す余地が残ります。
| ルール | 対象 | 保存期間 | 数え始め・条件 |
|---|---|---|---|
| 所得税(個人事業者) | 作成・受領した請求書・納品書・送り状・領収書など | 5年 | 法定帳簿は7年 |
| 法人税(法人) | 帳簿書類(説明に納品書の語はない) | 7年 | 確定申告書の提出期限の翌日から。欠損金等が生じた事業年度は10年 |
| 取適法 第7条 | 委託事業者が作成する給付の内容・代金の額等の記録 | 2年 | 取適法の対象取引に限る |
▼ 図の内容を文字で読む
- 個人事業者
- 作成・受領した請求書、納品書などは5年
- 法定帳簿は7年
- 法人
- 確定申告書の提出期限の翌日から7年
- 欠損金が生じた事業年度は10年
- 取適法の記録
- 委託事業者が給付の内容・代金の額等の記録を2年間保存
- 取適法の対象取引に限る
納品書と請求書が食い違うとき、インボイスで何が起きるか
納品書もインボイスになりうる
インボイス(適格請求書)は、請求書という名前の書類だけを指すわけではありません。
国税庁の説明では、取引の相手に交付する請求書や納品書などが適格請求書等にあたり、記載事項として次のものが挙がっています4。
・発行事業者の氏名または名称と登録番号
・取引年月日
・税率ごとに区分した対価の額と適用税率
・税率ごとの消費税額等
・交付を受ける事業者の氏名または名称
自社が適格請求書発行事業者で、これらを請求書に載せているなら、納品書は従来どおり納品の明細として働きます。
しかし、納品書の側に登録番号や税率ごとの金額を載せ、取引先がそれをインボイスとして受け取っているなら、納品書の記載の誤りはそのまま税に関わる書類の誤りになります。
どちらの運用かは、自社の書式を見ればすぐに分かります。
適格請求書発行事業者として登録していない場合は、インボイスを交付する立場にないため、ここでの論点は当てはまりません。
その場合の食い違いは税の書類の問題ではなく、取引の金額をどちらの書類で確定させるかという、取引先との確認の問題になります。
また、請求書と納品書に記載事項を分けて載せる運用を考えている場合は、組み合わせ方の要件を国税庁のインボイスQ&Aの原文で確かめてから書式を決めるのが確実です。
食い違いが生まれる場面と、発行前の突合
食い違いは、二つの書類を別々に作っているところで生まれます。
たとえば、納品後に数量の変更や一部返品があり、請求書は直したのに納品書の控えは元のまま、という場合です。
値引きを請求書だけに反映した、軽減税率の品目を納品書と請求書で別の区分にした、といったずれも起こりえます。
取引先の経理が納品書と請求書を並べて確認しているなら、金額が合わない時点で問い合わせが来て、確認が済むまで支払の手続きが進まないことも考えられます。
ただ、そうなるかどうかは取引先の処理の仕方次第で、食い違いが必ず入金の遅れになるとまでは言えません。
食い違いに気づいたとき、差額の大きさだけで原因を決めないことも大切です。
差額が一品分の単価と同じに見えても、実際には税率の区分違いや値引きの反映漏れが重なっていることがあります。
納品書と請求書を一行ずつ並べ、品目・数量・単価・税率を照らしてから、どちらを訂正するかを決めると、訂正のやり直しを避けられます。
これを毎月の作業にするなら、請求書を発行する前に、その月の納品書の控えと決まった順で突き合わせるのが一つの方法です。
取引年月日、品目と数量、単価と金額、税率の区分と税額、宛名と登録番号の順に見ていけば、変更や返品の反映漏れを、取引先から指摘される前に拾えます。
突合で減るのは、問い合わせを受けてから原因を探す手間です。
変更の連絡そのものを受け漏らした場合までは防げないため、数量変更や返品の連絡を受けた時点で控えに書き込んでおく習慣と組み合わせると効果が上がります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引年月日:納品日と請求書の日付がそろっているか
- 品目と数量:数量変更や一部返品が両方に反映されているか
- 単価と金額:値引きが片方だけに入っていないか
- 税率の区分と税額:品目ごとの税率の区分が同じか
- 宛名と登録番号:インボイスの記載事項が欠けていないか
機会損失はどこで起きるのか:確かめられる範囲と確かめられない範囲
損失につながりうる三つの場面
納品書の不備が取引の継続や信用に響くのではないか、という不安はもっともです。
ただ、納品書の不備がどれほど取引を失うことにつながるのかを示す公的な統計は確認できず、程度を数字で語ることはできません。
代わりに、損失が起こりうる場面を条件付きで整理すると、次の三つになります。
一つ目は、取引先が納品書で検収している場面です。
納品書が届かない、内容が現品と合わないとなれば、受け取りの確認が止まり、確認後に始まる支払の手続きも後ろへずれる可能性があります。
二つ目は、取引先が納品書を支払の根拠にしている場面です。
請求書と納品書の両方がそろって初めて支払を承認する手順なら、片方の不備がもう片方の処理まで止めます。
自社から見ると請求は済んでいるのに入金がない、という形で表に出るため、原因に気づくのが遅れやすいところです。
三つ目は、取引先が監査や税務調査で取引の書類を示す場面です。
取引先の手元に必要な書類がそろっていなければ、取引先は後から自社に再発行や確認を求めることになります。
一度で済む話でも、こうした対応が重なれば、取引先にとって書類の手間がかかる相手という印象につながることは考えられます。
確かめられることと、確かめられないこと
この三つのうち、自社の取引先がどれに当たるかは確かめられます。
取引先の購買や経理に、納品書を検収に使っているか、支払の承認に必要か、どの項目を見ているかを尋ねれば、どの不備が実害になるのかが分かります。
過去に納品書や請求書の差し戻し、問い合わせを受けたことがあるなら、そのメールを見返すと、取引先がどこを確認しているかの手がかりにもなります。
一方で、不備がきっかけで取引量が減ったり、次の発注先の選定で不利になったりしたかどうかは、外から確かめる方法がほとんどありません。
取引先がそうした理由を伝えてくれるとは限らず、因果を推測で埋めることもできないからです。
確かめられない損失を心配して運用を重くするより、三つの場面に当てはまる取引先から整えていくほうが、手間に見合った手当てになります。
| 場面 | 取引先の手元で起こりうること | 自社で確かめる方法 |
|---|---|---|
| 納品書で検収している | 受け取りの確認が止まり支払の手続きが後ろへずれる | 納品書を検収に使っているかを購買担当に尋ねる |
| 納品書を支払の根拠にしている | 請求書がそろっていても支払の承認が進まない | 支払の承認に納品書が必要かを経理に尋ねる |
| 監査や税務調査で書類を示す | 書類が欠けると自社に再発行や確認を求める | 過去の再発行依頼や問い合わせのメールを見返す |
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品書で検収している
- 受け取りの確認が止まり、支払の手続きが後ろへずれる可能性
- 購買担当に納品書を検収に使っているかを尋ねる
- 納品書を支払の根拠にしている
- 請求書がそろっていても支払の承認が進まない可能性
- 経理に支払の承認に納品書が必要かを尋ねる
- 監査や税務調査で書類を示す
- 書類が欠けると自社に再発行や確認を求める
- 過去の差し戻しや問い合わせのメールを見返す
手作業・テンプレート・システム化のどれを選ぶか
今の運用を見直す四つの軸
ここまでの話を、自社の運用を決める軸にまとめると四つになります。
・取引先の要求:納品書を検収や支払に使う取引先があるか、決まった項目や書式を求められているか
・制度への該当:自社が適格請求書発行事業者で納品書にインボイスの記載事項を載せているか、取適法の対象取引があるか
・電子でのやり取り:納品書をPDFや取引先のシステムで送受信しているか
・発行の数:毎月どれくらいの納品書を作り、請求書と突き合わせているか
最初の二つは、書類に何を載せ、どこまで正確さを求められるかを決めます。
後の二つは、それをどの道具で回すかを決めます。
道具を先に選ぶと、取引先が求めていない項目まで管理する重い運用になったり、逆に必要な記載が抜けたまま効率だけが上がったりします。
手作業で足りる場合
取引先が少なく、決まった書式を指定する取引先もない。
インボイスの記載事項は請求書に載せていて、納品書は明細の役割だけ。
このような場合は、手書きや都度の作成でも大きな支障は出にくいでしょう。
手作業のまま続けるときに外せないのは、控えを必ず残すことと、控えの置き場所を一つに決めることです。
複写式の伝票で控えを手元に残し、月ごとに綴じておけば、紛失したときに注文書やメールから組み立て直す手間を減らせます。
テンプレートを整える場合
取引先によって求める項目が違う、請求書との食い違いが何度か起きている、という段階なら、Excelなどで納品書の雛形を整える効果が出やすくなります。
雛形に取引年月日、品目、数量、単価、税率の区分、宛名、通し番号の欄を固定しておけば、書き忘れが欄の空白として目に見えます。
通し番号があれば、控えの抜けにも気づけます。
請求書も同じ品目名と税率の区分で作るようにそろえれば、先に見た突合の手間も軽くなります。
ただし、雛形は入力する人の転記まで代わってくれるわけではなく、変更や返品を反映し忘れるずれは残ります。
システム化を考える場合
発行の数が増え、受注の情報を納品書に写し、さらに請求書へ写す、という転記が負担になってきたら、受注から納品書・請求書までを同じデータから作る仕組みを検討する段階です。
同じデータから両方の書類を作れば、納品書と請求書で品目や金額を別々に打ち直すことがなくなり、食い違いの原因の一つが消えます。
電子で納品書をやり取りしている場合は、保存のルールに沿ってデータを残せるかも、仕組みを選ぶときの確認点になります。
それでも、商品や単価、税率の登録を誤れば、誤った内容が両方の書類にそろって載ります。
仕組みにすると転記の確認は減りますが、元になる登録内容の確認は残ります。
どの段階でも、取引先が何を求めているか、自社がどの制度に当たるかを先に確かめてから道具を選ぶと、必要以上に重い運用を抱えずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の要求:納品書を検収や支払に使う取引先があるか、決まった項目や書式を求められているか
- 制度への該当:納品書にインボイスの記載事項を載せているか、取適法の対象取引があるか
- 電子でのやり取り:納品書をPDFや取引先のシステムで送受信しているか
- 発行の数:毎月の発行数と請求書との突合の手間から、手作業・テンプレート・システム化を選ぶ
取引先ごとに納品書の使われ方や求められる項目が違うと、どこまで整えれば足りるかを自社だけで見極めるのは難しくなります。
相談では、今の納品書の発行と控えの残し方を取引先ごとに整理し、請求書との突合をどこに組み込むかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 発行の要否 | 税・インボイス・取適法の資料に一律の発行義務はない。契約・取引先の求め・インボイスの運用で決まる |
| 控えの保存 | 個人事業者は作成・受領した納品書等を5年。法人は申告期限の翌日から7年(欠損金等は10年)で、納品書の扱いは税理士に確認 |
| 取適法 | 委託事業者が取引記録を2年保存。自社の立場と適用基準を先に確認 |
| 請求書との食い違い | 発行前に日付・品目と数量・単価と金額・税率と税額・宛名と登録番号の順で突合 |
| 運用の選び方 | 取引先の要求と制度への該当で載せる項目を決め、電子のやり取りと発行の数で道具を選ぶ |
受注から納品書・請求書への転記が増えてきた段階では、手作業・テンプレート・システム化のどれが合うかを外の目で見直す意味があります。 相談では、今どこで転記しているかを洗い出し、同じデータから書類を作った場合に減る作業と残る確認を整理できます。
よくある質問
納品書を紛失した場合、再発行して控えにしてよいですか。
注文書や配送伝票、送付したメールなど元の記録から納品書を作り直し、自社の控えとして残すことはできます。
ただ、取引先に渡した原本と内容が一致しているかは確かめられないため、再作成したものであることと作成日を控えに書き添えておくと、後で見たときに区別できます。
取引先に、受け取った納品書の写しを送ってもらえるか頼むのも一つの方法です。
取引先が納品書を求めない場合も、発行した納品書の控えは保存すべきですか。
個人事業者の場合、保存の対象には自社が作成した書類も含まれるため、取引先に求められていなくても、発行した納品書の控えは残しておくのが基本です2。
法人の場合は、国税庁の説明に納品書という語がなく位置づけを確定できないため、取引関係の書類としてどう扱うかを税理士に確認してください1。
電子メールで送った納品書の控えは、紙に印刷して保存してよいですか。
電子データでやり取りした取引の書類には電子帳簿保存法の保存のルールがあり、紙に印刷すれば足りるとは限りません。
元のデータを消す前に、国税庁の電子帳簿保存法の案内か税理士で扱いを確かめてください。
判断がつくまでは、送ったPDFを月ごとのフォルダに残しておくと、後から保存の方法を選び直せます。
納品書と請求書を一つにまとめてもよいですか。
適格請求書等には請求書だけでなく納品書なども含まれるため、一枚にまとめた書類でも、記載事項を満たしていればインボイスとして交付する書類になりえます4。
書類が一枚になれば、納品書と請求書の食い違いそのものは起きなくなります。
ただし、取引先が納品時と月末で別々の書類を受け取る手順を取っている場合は、まとめる前に先方の経理に確認しておくと手戻りを防げます。
自社が取適法の対象かどうかは、どこで確かめればよいですか。
公正取引委員会や中小企業庁が示している適用基準の資料で確かめます。
適用は、委託事業者と中小受託事業者それぞれの資本金や従業員数と、取引の内容の組み合わせで決まるため、自社と相手の資本金・従業員数、委託している内容を手元にそろえて照らしてください。
同じ事業者でも、委託を受ける取引と委託する取引で立場が変わる点にも注意が必要です。
- 1 出典:国税庁「No.5930 帳簿書類等の保存期間(法人税)」(2026年)
- 2 出典:国税庁「No.2080 帳簿書類等の保存(個人事業者)」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「取適法 委託事業者の義務」(2026年)
- 4 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年)