◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- アプリと端末の順序に公的な基準はなく、品目と場面を先に書き出すと、機能の条件と端末の条件を同じ表から読み取れる
- 包装にバーコードがあることと、アプリが品目マスタにひも付けて使えることは、別々に確かめる
- タブレットの消毒への耐性と電波の扱いは、確認する資料も相談する相手も異なる
- 仕入先の受付形式や受注確認の返し方によっては、アプリ導入後もFAXや照合の作業が残る
- 費用は6項目を同じ前提で見積もり、品目マスタの登録など院内に残る作業も表に書き込む
目次

FAXや手書きの発注をアプリにしたいとき、アプリと端末のどちらから決めるか
薬品や診療材料の発注を、電話やFAX、手書きの伝票で回していると、品名の書き間違いや在庫の数え直し、送ったかどうかの確認に手間がかかります。
発注アプリとタブレットに置き換えようとしても、アプリは動く端末を選び、端末は使う場所で選ばれるため、どちらから決めればよいか分からなくなりがちです。
順序を定めた公的な基準は見当たりません。
そこで一つの進め方として、発注する品目と場面を先に書き出し、必要な機能を決め、消毒・電波・端末管理の条件で端末を絞る流れを提案します。
契約前には、厚生労働省のガイドライン第7.0版を手がかりに確認事項を洗い出します。
まず品目と場面を書き出す
発注アプリを選ぼうとすると、対応するOSや画面の大きさといった端末の条件がついてきます。
反対にタブレットから選ぼうとすると、処置室で消毒できるか、薬品庫まで電波が届くかといった置き場所の条件が先に気になります。
どちらを先に固定しても、もう一方の候補が狭まるため、順番が決められずに止まってしまうわけです。
アプリと端末の順序を定めた公的な基準は、確認できた範囲では見当たりません。
そこで本記事では、アプリでも端末でもなく、「誰が、どこで、何を発注しているか」を先に書き出す進め方を提案します。
発注の中身と場面が分かれば、アプリに求める機能と、端末を置く環境の両方を同じ表から読み取れるからです。
品目は、医薬品、診療材料、備品、検査や給食などの外部委託に分けて考えると整理しやすくなります。
品目が違えば、誰が数量を確認するのか、どのコードで品物を特定するのか、注文をどこへ送るのかが変わります。
医薬品は薬剤師の確認を通す、備品は事務部門がまとめて発注する、というように施設の中で分担が決まっているなら、その分担もそのまま書き出します。
場面は、端末をどう使うかに直結します。
薬品庫や倉庫での棚卸しなら、棚の前で片手に持って数を入れることになります。
スタッフステーションで補充依頼をまとめるなら、決まった場所に置いておく使い方もできます。
処置室では手袋のまま触れる場面や拭き取りの頻度を考える必要があり、訪問先では院外の通信と持ち運びが加わります。
たとえば、処置室の看護師が診療材料の残りをメモに書き、事務の担当者がそのメモを見て月末に発注書を作り、卸へFAXしているとします。
この流れでは、メモから発注書へ、発注書からFAX用紙へと、同じ品名と数量を二度書き写しています。
書き出しの段階でこうした転記の箇所に印を付けておくと、アプリでどの転記をなくしたいのかがはっきりし、後で候補を比べるときの物差しになります。
アプリ要件と端末要件を突き合わせて絞る
品目と場面の書き出しが終わると、二つのリストが手元に残ります。
一つはアプリに求めること、たとえば品物をバーコードで特定したい、薬剤師の確認を通したい、卸へそのまま送りたい、といった機能の条件です。
もう一つは端末が置かれる環境、つまり消毒の頻度、電波の届き方、共用か個人用か、といった端末の条件です。
候補は、この二つを両方満たすものに絞ります。
実際には一度で決まらず、往復することがあります。
処置室で頻繁に拭き取るため業務用の端末を使いたいと考えたのに、希望するアプリがその端末のOSに対応していない、という場面です。
そのときは機能の条件に戻り、どの機能なら譲れるのか、別のアプリで同じ転記を減らせるのかを見直します。
往復は失敗ではなく、条件の優先度を決める作業だと考えると進めやすくなります。
どの条件を重く見るかは、施設の形によって変わります。
部署が多い病院なら承認の段階や院内ネットワークとの関係が、少人数で兼務の多い診療所なら操作の分かりやすさが、訪問系なら院外での通信と持ち運びが、検討の中心になりやすいでしょう。
薬局のように医薬品が発注の大半を占める場合は、品目の特定と仕入先への送り方が主な論点になります。
契約前の確認は最後に置いていますが、軽く扱ってよいという意味ではありません。
候補が絞れていないうちは、委託先に何を尋ねればよいかが具体的にならないため、候補が見えた段階でまとめて確認するほうが質問を絞り込めます。
| 書き出す項目 | 書き出す内容の例 |
|---|---|
| 品目 | 医薬品・診療材料・備品・外部委託(検査・給食など) |
| 場面 | 薬品庫での棚卸し・スタッフステーションでの補充依頼・処置室・訪問先 |
| 発注する人と承認する人 | 誰が数え・誰が確認し・誰が送るか |
| いまの送り方 | 電話・FAX・手書き伝票・仕入先のWeb画面など |
| 書き写している箇所 | 在庫メモから発注書へ・発注書からFAX用紙へなど |
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注する品目と場面を書き出す
- 必要なアプリの機能を決める
- 消毒・電波・端末管理の条件で端末を絞る(合わなければ機能の条件へ戻る)
- 契約前の確認事項を洗い出す
品目と場面で変わるアプリの必要機能
医薬品と診療材料のバーコード運用
手書きやFAXの発注で起こりやすい行き違いの一つは、品物の特定です。
名前の似た品目、規格や容量の違い、箱単位か個数単位かといった包装の違いは、書き写すたびに取り違えの余地を生みます。
バーコードを読み取って品目を特定できれば、品名を手で書き写す工程そのものが減ります。
まず、発注している品目の包装に実際にバーコードが印字されているかを、薬品庫や材料棚の現物で確かめます。
印字されている品目が多ければ読み取り機能の優先度は上がり、院内で小分けした物品や備品が中心なら、一覧から選ぶ画面の使いやすさのほうが効いてきます。
注意したいのは、包装にコードが付いていることと、アプリがそれを使えることは別だという点です。
読み取ったコードがアプリの品目マスタ(品名・規格・仕入先などを登録した基本の一覧)にひも付いていなければ、読み取っても品目は特定できません。
候補のアプリには、どの種類のバーコードを読めるか、端末のカメラで読むのか専用のスキャナが要るのか、コードと品目マスタの登録を誰が行うのかを尋ねておくと、導入後の作業量が見えてきます。
承認フローと履歴管理
発注は、数を数えた人がそのまま送るとは限りません。
医薬品は薬剤師が確認する、高額な材料は事務部門の責任者が承認する、といった手順を紙の回覧で回しているなら、アプリでも同じ段階を設定できるかが必要条件になります。
差し戻しができるか、承認待ちの発注が誰の手元で止まっているかを画面で追えるかも、紙の回覧から置き換えるときに差が出るところです。
履歴も比べておきたい機能です。
FAXでの発注なら、送信票の束やファイルをめくって「先月いつ、何を何個頼んだか」を探すことになります。
アプリで品目や日付から過去の発注を引けるなら、欠品の問い合わせや重複発注の確認がその場で済みます。
ただし、誰が発注したかを履歴に残すには、利用者ごとにログインする仕組みが前提です。
一台の端末を何人かで使う場合の考え方は、次の節の端末管理でもう一度触れます。
在庫連動と仕入先への送信
在庫との連動は、発注の判断と入荷後の作業の両方にかかわります。
発注の画面で現在の在庫数が見えれば、棚まで数えに行かずに必要数を決められる場面が増えます。
入荷した数がそのまま在庫に反映されれば、入荷後に在庫表を書き直す手間も減ります。
院内にすでに在庫管理の仕組みがある場合、発注アプリ側でも在庫を持つと二重入力になるため、どちらで在庫を持つかを決めておく必要があります。
仕入先への送信方式は、見落としやすい比較軸です。
現場がタブレットで入力しても、注文が仕入先にどんな形で届くかはアプリによって違います。
考えられる方式としては、FAXとして送る、メールで送る、仕入先の受注画面やEDI(企業間で注文データを決まった形式で電子的にやりとりする仕組み)につなぐ、といったものがあります。
どの方式に対応しているかで、院内に紙やFAXの作業が残るかどうかが決まります。
| 機能 | 必要性が高まる品目・場面の例 | 候補ごとに尋ねること |
|---|---|---|
| バーコード読み取り | 包装にコードが印字された医薬品・診療材料 | 読めるコードの種類・カメラか専用スキャナか・品目マスタの登録者 |
| 承認フロー | 薬剤師の確認や責任者の承認を通す発注 | 承認段階の設定・差し戻し・承認待ちの表示 |
| 履歴 | 欠品の問い合わせや重複発注の確認 | 品目や日付での検索・利用者ごとのログイン |
| 在庫連動 | 棚卸しと補充依頼を同じ品目で回す場面 | 在庫をどちらのシステムで持つか・入荷の反映 |
| 仕入先への送信 | 仕入先ごとに受け付ける形式が違う場合 | FAX・メール・受注画面・EDIのどれに対応するか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 品物の特定
- 包装にバーコードが印字されているか現物で確かめる
- 読めるコードの種類とカメラか専用スキャナか
- 品目マスタの登録を誰が行うか
- 承認と履歴
- 承認の段階と差し戻しを設定できるか
- 品目や日付で過去の発注を引けるか
- 利用者ごとにログインできるか
- 在庫と仕入先への送信
- 在庫をどちらの仕組みで持つか
- FAX・メール・受注画面・EDIのどれに対応するか
医療現場で使うタブレットに求める端末の条件
消毒に耐える筐体と確認の仕方
アプリに求める機能が見えたら、端末の側の条件を当てていきます。
医療現場のタブレット選びで分けて考えたいのは、消毒への耐性と電波の扱いです。
どちらも「医療向け」という一言でまとめられがちですが、確認する資料も相談する相手も違います。
処置室やスタッフステーションで使う端末は、手袋のまま触れたり、使うたびに拭き取ったりします。
医療向けをうたうタブレットの中には、筐体を消毒の前提で設計したと説明している製品があります。
例としてZebraのET40-HC/ET45-HCの製品ページは、日常的な消毒が可能な医療用グレードのプラスチックを使っていると述べています3。
ただし、同じページには、どの消毒薬に対応するのか、防水・防塵の等級、バッテリーの交換方式は書かれていません3。
「消毒できる」という説明だけでは、院内で実際に使っている消毒薬や清拭の方法で劣化しないかまでは分かりません。
これは特定の製品のページの記載であり、医療用タブレットに共通する基準ではない点にも注意が必要です。
候補の端末については、仕様書や取扱説明書の手入れの項目を読み、院内で使っている消毒薬の名前を挙げてメーカーや販売店に尋ねるのが確実です。
一般向けのタブレットを候補にする場合も、確かめることは同じです。
取扱説明書に書かれた手入れの方法と、院内の清拭の手順が合っているかを照らし合わせます。
保護ケースを付けて使う考え方もありますが、その場合は端末本体ではなくケースの素材が消毒に耐えるかを確認することになります。
院内の感染対策の担当者に、端末をどの頻度で、何で拭く想定かを先に聞いておくと、メーカーへの質問がぶれません。
院内の電波管理と無線LAN
電波については、総務省が医療機関での無線LAN、携帯電話、タブレット端末などの電波利用に関する手引きを示しており、令和3年3月に公表され、同年7月に改定されたと案内されています2。
医療機関の中では、医療機器や既存の無線LANと同じ空間で電波を使うことになるため、発注用の端末を増やすことも院内の電波利用を変えることになります。
ここで、消毒の話と電波の話が別の確認になる理由が見えてきます。
たとえば先ほどのZebraの製品ページは、Wi-Fi 6と5Gに対応すると記載しています3。
端末がその方式に対応していることと、院内でその方式の電波を使ってよいか、どのネットワークにつなぐかは別の問題です。
後者は製品ページでは分からず、院内のネットワークや電波の管理を担う部門のルールで決まります。
実務では、発注の場面として書き出した場所で電波が届くかも確かめます。
地下の薬品庫や倉庫の奥は、スタッフステーションと同じようにつながるとは限りません。
候補の端末とアプリを借りられるなら、実際に棚卸しをする場所で操作してみると、電波が途切れたときにアプリがどう振る舞うか(入力が消えるのか、つながった時点で送られるのか)も含めて確認できます。
この振る舞いは、アプリ事業者に事前に尋ねておきたい点でもあります。
共用運用での端末管理
スタッフステーションや薬品庫に置いて何人かで使う共用の端末は、個人に一台ずつ配る端末とは管理の手間が違います。
誰が使ったかを残すには、アプリ側で利用者ごとにログインする必要があります。
置き場所と充電の場所を決めておかないと、必要なときに電池が切れている、どこにあるか分からない、ということが起こります。
消毒を使用後ごとにするのか、勤務の区切りでするのかも、共用なら決めておくことになります。
台数が増えると、アプリの更新や設定の変更、紛失したときの対応を一台ずつ手作業で行うのは負担になります。
こうした作業をまとめて行うのが端末管理ツール(一般にMDMとも呼ばれ、複数の端末の設定やアプリの配布、紛失時の遠隔ロックなどを一括で扱う仕組み)です。
Zebraの例では、製品ページにZebra DNA Professionalが標準搭載で無料と記載されています3。
製品によっては管理の仕組みを別に用意する必要があるため、その有無は後で費用を比べるときの項目にも関わってきます。
| 観点 | 製品資料で確かめること | 院内で確かめること |
|---|---|---|
| 消毒 | 対応する消毒薬・防水防塵の等級・手入れの方法 | 院内で使う消毒薬と拭き取りの頻度 |
| 電波 | 対応する無線LANや携帯回線の方式 | 接続してよいネットワークと電波利用のルール・発注する場所での電波の届き方 |
| 端末管理 | 端末管理ツールの有無と費用 | 共用か個人用か・置き場所と充電・利用者ごとのログイン |
▼ 図の内容を文字で読む
- 消毒
- 製品資料:対応する消毒薬と手入れの方法
- 院内:使っている消毒薬と拭き取りの頻度
- 電波
- 製品資料:対応する無線LANや携帯回線の方式
- 院内:つなぐネットワークと発注する場所での電波の届き方
- 端末管理
- 製品資料:端末管理ツールの有無
- 院内:共用か個人用か、置き場所と充電、利用者ごとのログイン
院内ネットワーク・既存システム・仕入先との連携で導入可否を確認する
電子カルテ・在庫管理との連携
アプリと端末の候補が絞れたら、院内の既存の仕組みとつながるかを確かめます。
端末を院内の無線LANに登録できるかは前の節で触れたとおりなので、ここでは電子カルテや在庫管理の仕組みとの関係と、仕入先の受け付け方の二つを見ていきます。
在庫管理の仕組みがすでにある施設では、発注アプリとの間で何を受け渡すかが問題になります。
連携がない場合、アプリで発注し、入荷したら在庫管理の画面にも同じ数を入れる、という二重入力が残ります。
データを自動でやりとりできる、あるいはファイルとして書き出して取り込めるなら、この転記は減らせます。
どの方式が使えるかは、アプリと既存システムの両方の事業者に聞かないと分かりません。
連携できても、すべての確認がなくなるわけではありません。
届いた品物と注文の数量が合っているかを確かめる検品は、品物を見る人の作業として残ります。
連携で減るのは、その結果を別の画面へ書き写す作業だと考えておくと、期待と実際のずれが小さくなります。
電子カルテについては、発注アプリが患者の情報を扱わない設計であっても、同じ端末や同じネットワークで電子カルテを使うのかどうかで、院内の扱いが変わることがあります。
発注用の端末をどのネットワークにつなぐかは、院内の情報システム担当者や電子カルテの保守事業者と相談して決める事柄です。
仕入先の受注方式の確認
発注する側の画面がデジタルになっても、仕入先がFAXでしか受け付けていなければ、どこかで紙に戻ります。
そこで、医薬品の卸、診療材料の取引先、備品の業者、検査や給食の委託先など、いま取引している仕入先を一覧にし、それぞれがどの形で注文を受け付けているかを書き添えます。
その一覧を候補のアプリの送信方式と重ねると、アプリから直接送れる仕入先と、院内で別の作業が残る仕入先が分かれます。
すべての仕入先がそろわなくても、発注の回数が多い取引先に直接送れるなら導入する意味はある、という判断もあり得ます。
注文を送った後の返事も見ておきます。
納期の回答や欠品の連絡がFAXや電話で返ってくるなら、その内容をアプリの発注と照らし合わせる作業が残ります。
仕入先に尋ねるときは、受け付ける形式だけでなく、受注の確認をどう返しているかも聞いておくと、置き換えた後の流れが具体的に描けます。
関係者に渡す質問は、相手ごとに次のようにまとめられます。
<ul><li>院内の情報システム担当者へ:発注用の端末を登録できるか、どのネットワークにつなぐか</li><li>在庫管理・電子カルテの事業者へ:発注アプリとの間でデータを受け渡す方法があるか</li><li>アプリ事業者へ:既存システムとの連携方式と、仕入先への送信方式</li><li>仕入先へ:注文を受け付ける形式と、受注確認や納期回答の返し方</li></ul>
▼ 図の内容を文字で読む
- タブレットで発注を入力
- 承認者が確認
- 仕入先へ送信(FAX・メール・受注画面・EDIなど)
- 受注確認・納期回答を受ける
- 入荷・検品のあと在庫へ反映
厚労省ガイドライン第7.0版などで契約前に確認すること
ガイドラインの構成と最新版
医療機関が情報システムを導入するときの公的な指針として、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」があります。
所管ページでは、最新版が第7.0版で、令和8年(2026年)6月に見直されたとされ、概説編、経営管理編、企画管理編、システム運用編に加えて、保守委託機関編が掲載されています1。
まず押さえたいのは版です。
アプリ事業者や販売店の説明資料、院内の既存のチェックリストが前の版を前提に作られていることもあるため、どの版を基準にした説明なのかを確かめておくと、話がかみ合わないまま契約に進むことを避けられます。
迷いやすいのは、患者情報を扱わない発注アプリがこのガイドラインの対象になるのかという点です。
これはガイドラインの各編の記述に照らして判断する事柄で、本記事で一律に答えることはできません。
判断の材料として、発注データがどこまで患者情報に近いかを整理しておくことは役立ちます。
品目と数量だけを扱うのか、患者ごとの使用材料とひも付けるのか、同じ端末で電子カルテを開くのか、院内のどのネットワークにつなぐのか。
これを書き出したうえで、院内の情報システム担当者や委託先と、ガイドライン上の扱いを確認します。
委託先に確認する項目
発注アプリを外部の事業者のサービスとして利用する場合、発注データの保管や保守を事業者に任せることになります。
契約の前に、次のような点を尋ねておくと、導入後に誰が何を担うのかが明確になります。
<ul><li>発注データをどこに保存し、誰がアクセスできるか</li><li>誰がいつ何を発注・承認したかの記録を残し、施設側で確認できるか</li><li>障害や通信の停止で発注できないときの連絡体制と、復旧までの代わりの手段</li><li>保守や設定を別の事業者へ再委託しているか</li><li>契約を終えるときに発注データを受け取れるか、事業者側のデータをどう消去するか</li><li>ガイドライン第7.0版への対応について、説明資料を出せるか</li></ul>
このうち障害時の代わりの手段は、現場の運用と直接つながる項目です。
発注が止まると、診療や処置に必要な物品の補充が遅れます。
アプリに切り替えた後も、どういう状態になったらFAXや電話の発注に戻すのか、そのときの発注書の様式をどこに置いておくのかを決めておくと、止まったときに現場が迷いません。
▼ 図の内容を文字で読む
- データの保管と記録
- 発注データの保存先と、アクセスできる人
- 誰がいつ何を発注・承認したかの記録
- 発注が止まったとき
- 障害時の連絡体制と復旧までの代わりの手段
- FAXや電話に戻す状態と発注書の様式の置き場所
- 再委託と契約終了
- 保守や設定の再委託の有無
- 契約終了時のデータの受け取りと消去
- ガイドライン第7.0版
- 対応について説明資料を出せるか
費用と運用負担を比べる項目
比較表に入れる6項目
候補が二つ、三つと残ったら、費用と運用の負担を同じ軸に並べて比べます。
項目は、アプリの料金体系、端末、通信、初期設定、保守、教育の6つです。
金額は施設の規模や台数、仕入先の数で大きく変わるため、表は見積もりを書き込む形で用意し、各社から同じ前提で見積もりを取ります。
アプリの料金体系で気を付けたいのは、何を単位に数えるかです。
利用者の人数で数えるのか、端末の台数か、施設単位かによって、共用端末を多く置く施設と個人に配る施設とで負担の出方が変わります。
見積もりを依頼するときは、利用者数と端末数の両方を伝え、どちらで課金されるのかを明記してもらうと比べやすくなります。
端末は、購入かレンタルかで故障したときの代わりの端末の扱いが変わります。
共用端末が一台止まると、その場所の発注が止まるため、予備機をどうするかも費用に含めて考えます。
通信は、院内の無線LANだけで足りるのか、訪問先で使うために携帯回線の契約が要るのかで変わります。
初期設定は、見積もりの中で差が見えにくい項目です。
端末をすぐ使える状態にする設定作業に加えて、品目マスタに品名・規格・仕入先を登録する作業があります。
扱う品目が多い施設ほど、この登録を事業者が代行するのか、院内の担当者が行うのかで負担が大きく変わります。
見積もりに含まれていない作業は、院内の誰かの時間として表に書き込んでおくと、候補の間の差が正しく見えます。
保守には、アプリの更新や問い合わせ窓口のほか、端末の故障対応や端末管理ツールの費用が含まれます。
先に触れたように、端末管理ツールが標準で付く製品もあれば3、別に用意する製品もあるため、端末の価格だけを並べると比較がずれます。
教育は、交代勤務の職員に操作を伝える回数や、手順書を作る手間として現れます。
ここに書き込むのは説明会や手順書づくりにかかる費用と時間であり、導入後に発注の手間が減ったかどうかは、最初に印を付けた転記の箇所が実際になくなったかで確かめていきます。
6つの項目を並べても、金額の合計だけで決める必要はありません。
合計が近い候補なら、FAXが残る仕入先の数や、品目マスタの登録を誰が担うかといった、現場に残る作業の違いが決め手になります。
| 項目 | 費用や負担が生じるところ | 候補A | 候補B |
|---|---|---|---|
| アプリの料金体系 | 利用者数・端末数・施設単位など何で数えるか | (見積額) | (見積額) |
| 端末 | 購入かレンタルか・予備機 | (見積額) | (見積額) |
| 通信 | 院内の無線LANのみか・訪問用の携帯回線 | (見積額) | (見積額) |
| 初期設定 | 端末の設定・品目マスタの登録を誰が行うか | (見積額) | (見積額) |
| 保守 | アプリの更新と問い合わせ・端末の故障対応・端末管理ツール | (見積額) | (見積額) |
| 教育 | 交代勤務の職員への説明・手順書づくり | (見積額) | (見積額) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 料金の数え方
- 利用者数・端末数・施設単位のどれで課金されるか
- 利用者数と端末数の両方を伝えて見積もりを取る
- 端末と通信
- 購入かレンタルか、予備機をどうするか
- 院内の無線LANのみか、訪問用の携帯回線が要るか
- 院内に残る作業
- 品目マスタの登録を事業者が代行するか院内の担当者が行うか
- 端末管理ツールが標準で付くか別に必要か
- 交代勤務の職員への説明と手順書づくり
品目と場面の書き出しや仕入先ごとの受付形式の一覧は、日々の業務と並行して施設の中だけでまとめきるのが難しく、候補の比較に進めないまま止まりやすい部分です。
相談では、いまの発注の流れのどこで転記が起きているかを一緒に整理し、アプリと端末の候補を比べるための条件を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 決める順序 | 品目と場面を書き出し、必要な機能を決めてから端末を絞る(編集上の提案) |
| アプリの機能 | バーコード読み取り・承認フロー・履歴・在庫連動・仕入先への送信方式 |
| 端末の条件 | 消毒への耐性と電波の扱いを別々に確認し、共用なら端末管理も見る |
| 連携 | 在庫管理・電子カルテとの受け渡し方と、仕入先の受付形式・受注確認の返し方 |
| 契約前 | ガイドライン第7.0版を基準にした説明か確かめ、データ保存・記録・障害時の代替・契約終了時の扱いを委託先に聞く |
| 費用 | アプリの料金体系・端末・通信・初期設定・保守・教育の6項目を同じ前提で見積もる |
契約前の確認事項は、院内の担当者、アプリ事業者、仕入先と相手が分かれ、どの質問を誰に向けるかで迷いやすい部分です。 相談では、本記事の確認項目をもとに自施設の条件で質問を並べ直し、見積もりをそろえるための前提を確かめられます。
よくある質問
発注する情報だけで患者情報を扱わない場合も、厚労省のガイドラインの確認が必要か。
対象になるかどうかは、ガイドラインの各編の記述に照らして判断する事柄で、一律には言えません。
所管ページで確認できるのは、最新版が第7.0版であることと、概説編から保守委託機関編までの構成です1。
発注データが患者ごとの使用材料とひも付くか、同じ端末やネットワークで電子カルテを使うかによって、患者情報との距離は変わります。
その整理を持って、院内の情報システム担当者や委託先に扱いを確認するのが確実です。
一般向けのタブレットを医療現場の発注に使ってよいか。
一般向けか業務用かで一律に可否を決める基準は、確認できた資料にはありません。
判断は、院内の消毒の方法に端末やケースが耐えられるか、院内ネットワークに接続してよいか、台数に応じた端末管理ができるかで分かれます。
医療向けの製品でも、対応する消毒薬の名前までは製品ページに書かれていない例があるため3、どちらを選ぶ場合も仕様書や取扱説明書で手入れの方法を確かめます。
共用の端末と個人持ちの端末では、確認すべきことがどう違うか。
共用の端末では、利用者ごとのログインで誰が発注したかを残せるか、置き場所と充電場所、消毒のタイミングを決められるかが中心になります。
個人に配る端末では、紛失したときの対応や異動・退職時の端末の回収と設定の消去など、一台ごとの管理が中心になります。
どちらも台数が増えるほど手作業での管理は負担になるため、端末管理ツールの有無と費用を比較表の保守の欄に入れておきます。
仕入先がFAXしか受け付けない場合でも、発注アプリは使えるか。
使える場合はありますが、仕入先への送り方によって院内に残る作業が変わります。
アプリがFAXとして送る方式に対応していれば、現場の入力から送信までをアプリの中で済ませられます。
対応していなければ、アプリで作った発注を印刷してFAXする作業が残り、承認や履歴の機能だけを使う形になります。
仕入先ごとの受付形式を一覧にし、候補のアプリの送信方式と重ねて判断します。
院内の無線LANに新しいタブレットをつなぐとき、誰に何を確認すればよいか。
院内のネットワークや電波の管理を担う部門に、端末を登録できるか、どのネットワークにつなぐか、院内の電波利用のルールに沿う使い方かを尋ねます。
総務省は医療機関での無線LANやタブレット端末などの電波利用に関する手引きを示しています2。
あわせて、棚卸しをする薬品庫や倉庫など、発注に使う場所で実際に電波が届くかを候補の端末で試しておくと、導入後のつまずきを減らせます。
- 1 出典:厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」(2026年)
- 2 出典:総務省 東北総合通信局「『医療分野における電波の安全性に関する説明会』を開催」(2021年)
- 3 出典:Zebra Technologies「ET40-HC / ET45-HC 医療向けタブレット製品ページ」(2026年)
画像の出典元
- A medical professional organizes laboratory supplies on a shelf in a clinical setting./Photo by RDNE Stock project on Pexels