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仕入先が止まるリスクの見方|代替が効かない品目から優先順位をつける

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 仕入先が止まるリスクは、発生しやすさより、止まったときに代替が効かず自社の出荷が止まる品目から見る。
  • 品目ごとに代替の有無・切替えに要する期間・在庫で持つ期間・影響が及ぶ顧客を並べ、切替え期間が在庫で持つ期間を上回る品目を優先する。
  • 停止の原因は経営悪化・倒産、災害・事故、サイバー攻撃、品質問題・物流停止で兆候の見え方が違い、倒産件数や脅威の順位は個々の仕入先の確率には使えない。
  • 複数社購買・安全在庫・代替先の事前確認・取引先モニタリングは働き方が違い、在庫で持つ期間と切替え期間の差を埋める組み合わせで選ぶ。
  • 止まったときは欠品日を出して判断の期限とし、仕入先・代替先・顧客への確認と連絡を並行して進め、判断者を平時に決めておく。

Female warehouse worker organizing inventory on blue industrial shelves. Efficient logistics management.
▽ 写真の出典元

仕入先が止まると自社の何が止まるか:代替が効かない品目から見る

主要な仕入先から「納期が遅れそうだ」と連絡が来たとき、まず知りたいのは、自社のどの出荷がいつ止まるかではないでしょうか。
仕入先が止まるリスクは、どの会社が倒れそうかという発生しやすさより、止まったときに代替が効かず自社の出荷まで止まる品目から見ると、手を打つ順番が決まります。
品目ごとに代替の有無と切替えにかかる期間を並べれば、複数社購買・安全在庫・代替先の事前確認・取引先の状況把握のどれをどこに使うかも、同じ表の上で選べるようになります。

品目ごとに代替の有無と切替え期間を並べる

仕入先のリスクを考え始めると、「この会社は経営が厳しそうだ」「この地域は地震が心配だ」と、止まる確率の話から入りたくなります。
ただ、個々の仕入先がいつ止まるかを見積もる材料は、発注側の手元にはほとんどありません。
見積もった確率が外れれば、手間をかけた対策が空振りになり、手薄な仕入先で止まることもあります。

一方で、止まったときに何が起きるかは、自社の部品表や受注の記録、在庫の数字から自分で確かめられます。
だから順番を逆にして、影響の側から品目を絞ります。
どの仕入先が止まっても大きな問題にならない品目と、一日止まるだけで出荷が止まる品目とを分けられれば、限られた手間をどこに使うかが見えてきます。

具体的には、品目ごとに次のような欄を持つ一覧を作ります。
これは公的な様式ではなく、判断に必要な情報を一か所に集めるための編集部の整理です。

いちばん判断が分かれるのは「代替の有無」の欄です。
同じ規格品を別の会社から買えるなら代替は効きます。
しかし、図面を渡して作ってもらっている部品や、仕入先が金型や専用設備を持っている部品は、別の会社に頼んでも同じ物がすぐには出てきません。
また、物としては代わりが手に入っても、自社の顧客が仕様書で材料や製造元を指定していれば、切り替える前に顧客の承認が要ります。
この場合は「代替あり」ではなく、「承認が要る」として分けておくと、後の対策の選び方が変わります。

次に、「切替えに要する期間」と「手元在庫で持つ期間」を並べて見ます。
たとえば、ある成形部品を1社だけから買っていて、在庫は出荷の数週間分あるとします。
代わりの成形会社を探し、型を用意し、試作品の品質を確かめ、顧客の承認を取るまでに数か月かかるなら、在庫が尽きてから切替えが終わるまでの間、出荷が止まります。
この空白の期間が長い品目ほど、止まったときの影響が大きい品目です。
反対に、在庫で持つ期間のうちに切替えが終わる品目は、仕入先が止まっても出荷までは止まりません。

期間の欄に正確な日数を入れられなくても構いません。
購買担当と品質担当、場合によっては設計担当に「この部品を別の会社に切り替えるとしたら、何がいちばん時間を食うか」を聞くだけで、おおよその長さと、時間がかかる理由が分かります。
理由が分かれば、その手続きを平時に前倒しできるかどうかも判断できます。

止まったときに影響が及ぶ出荷・顧客を確認する

代替の有無と期間だけでは、まだ優先順位は決まりません。
同じように代替が効かない品目でも、売上の小さい一製品にしか使っていない部材と、主力製品の多くに共通して使っている部材とでは、止まったときの重さが違います。
部品表をさかのぼり、その品目がどの製品に入り、その製品がどの顧客へ、どの納期で出ているかをつなげて書き込みます。

この流れを書き出すと、仕入先の停止が自社だけの問題で終わらないことが見えてきます。
内閣府の防災白書は、大規模災害で企業活動が止まると、サプライチェーンの途絶などによって関係取引先や地域経済に多大な影響を与えると述べています2。
白書は災害を想定した説明ですが、自社の出荷が止まれば納品先の顧客の側でも生産や販売が止まるという構図は、仕入先が止まる原因が何であっても変わりません。

影響が及ぶ顧客を書き込むときは、顧客の側にどれだけ在庫があるか、契約で納期遅延にどんな取り決めがあるかも分かる範囲で添えておきます。
顧客が在庫を厚く持っている製品なら、自社の出荷が少し止まっても顧客の生産はすぐには止まりません。
逆に、顧客が在庫を持たずに納品の都度使う形であれば、自社の数日の遅れがそのまま顧客の停止になります。
この差は、後で顧客へ連絡する順番を決めるときにも使えます。

ここまでで、品目は「代替が効かず、切替え期間が在庫で持つ期間より長く、主要な出荷や顧客につながるもの」から順に並びます。
以降の節では、この上位の品目について、何が原因で止まりうるのか、どの対策を当てるのかを考えていきます。

欄 書き込む内容
品目 部材・商品の名称と自社の品番
仕入先 現在の購入先。上流の仕入先が分かれば併記
代替の有無 そのまま他社から買える/仕様変更や顧客の承認が要る/代替がない
切替えに要する期間 見積もり・試作・品質確認・承認・口座開設を終えるまでの見込み
手元在庫で持つ期間 自社在庫と輸送中の量で何日分の出荷をまかなえるか
影響が及ぶ出荷・顧客 その品目を使う製品と、納品先の顧客・契約上の納期
仕入先の停止が自社の出荷と顧客に及ぶまで
仕入先の停止から顧客の生産・販売への影響までの流れ1仕入先の停止2在庫が尽きる3自社の工程が止まる4出荷・納品が止まる5顧客の生産・販売に及ぶ

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 仕入先の停止
  2. 在庫が尽きる
  3. 自社の工程が止まる
  4. 出荷・納品が止まる
  5. 顧客の生産・販売に及ぶ

仕入先が止まる原因と、事前に拾える兆候

取引先の経営悪化・倒産

優先する品目が決まったら、次はその仕入先が何によって止まりうるかを見ます。
原因によって、前もって気付ける兆候の有無も、止まったときに最初に確かめることも違うからです。

まず経営悪化と倒産です。
帝国データバンクの集計では、2025年度の倒産は前年度を上回り、物価高を要因とする「物価高倒産」が963件、人手不足を要因とする「人手不足倒産」が441件と、いずれも過去最多を更新しました1。
この集計は全国・全業種の法的整理を数えたもので、特定の仕入先が倒産する確率を示すものでも、取引先への連鎖を数えたものでもありません1。
自社の仕入先がどれだけ危ないかを、この数字から割り出すことはできません。

それでも、物価高と人手不足が倒産の要因として目立っていることは、兆候の見方を考える手掛かりになります。
原材料や人件費の上昇を販売価格に転嫁しにくい仕入先や、少ない人数で製造を回している仕入先は、こうした要因の影響を受けやすい立場にあると考えられます。
これは編集部の見方であり、規模や業種で一律に危険度が決まるという意味ではありません。

経営の悪化は、多くの場合、取引のなかに何らかの変化として現れます。
納期遅延の連絡が以前より増えた、値上げの要請が短い間隔で続く、支払条件の短縮や前払いを求められた、担当者の退職や交代が続く、品質のばらつきが増えた、といった変化です。
どれも一つだけでは経営悪化とは言えず、繁忙期や原材料の一時的な不足でも起きます。
判断を難しくしているのは、これらの変化を営業、購買、品質、経理と別々の担当者が見ていて、一つにつながらないことです。
品目表の仕入先ごとに気付いた変化を書き足していく場所を作っておくと、複数の変化が重なったときに気付きやすくなります。

災害・事故

地震や水害、工場の火災や設備事故は、経営悪化と違って前もって兆候を拾うことがほとんどできません。
前もってできるのは、起きたときにどこが同時に止まるかを把握しておくことです。

見落としやすいのは、仕入先が複数あっても、工場が同じ地域に集まっている場合です。
二社から買っているつもりでも、両社の工場が近くにあれば、一度の災害で両方が止まります。
また、仕入先の本社と製造拠点が別の場所にあることも珍しくないため、品目表には取引先の住所ではなく、実際にその品目を作っている拠点の所在地を書き込みます。
さらに上流の材料の仕入先まで分かれば、同じ材料メーカーに依存していないかも確かめられます。

止まったときに最初に確かめるのは、拠点の被害の程度と、再開の見込み、仕入先の手元にある完成品の在庫を出荷できるかどうかです。
災害時は電話がつながりにくくなるため、平時に複数の連絡手段を確認しておくことが、この確認の速さを左右します。
防災白書が指摘するように、企業活動の停止は取引先へ広がります2。
自社が受け手として困るのと同時に、自社の顧客に対しては自社が止まる側になることも頭に置いておきます。

サイバー攻撃

工場も人も無事なのに、仕入先が出荷できなくなることがあります。
受発注や生産管理のシステムがサイバー攻撃で止まり、どの注文をいつ作って出すのかが分からなくなる場合です。

情報処理推進機構(IPA)の「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向けの脅威として「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が2位に挙げられています4。
この順位は、IPAの選考会が社会的な影響などを踏まえて選んだ結果で、発生件数の多い順ではありません4。
それでも、取引先や委託先を経由する攻撃が、組織にとって重い脅威と位置付けられていることは読み取れます。

発注側から見て厄介なのは、攻撃の兆候が外からはほとんど見えないことです。
代わりに確かめられるのは、仕入先のシステムが止まったときに、紙や表計算で受注を受けて出荷を続ける手段があるかどうかです。
また、自社と仕入先が受発注のシステムでつながっている場合は、相手のシステムが止まったときに自社側の発注や入荷の処理がどう滞るかも、品目表の上位の仕入先について確認しておくと、止まった後の混乱が減ります。

品質問題・物流停止

仕入先の経営や設備に問題がなくても、供給が止まることがあります。
一つは品質問題です。
納品された部材に不良が見つかれば、受入れを止めて原因を調べる間、良品が手に入らなくなります。
不良の原因が仕入先の工程にあるのか、材料にあるのかで、再開までの時間も変わります。
受入検査での不良の出方や、納品ごとのばらつきの増え方は、前もって拾える兆候です。

もう一つは物流の停止です。
仕入先が作り終えていても、運送会社や港、道路が止まれば部材は届きません。
この場合、仕入先に問い合わせても再開時期は分からないことが多く、輸送経路を変えられるか、自社で引き取りに行けるかを考えることになります。
品目表に、どの経路で届いているかを一言書いておくと、こうした場面で判断が速くなります。

ここまでの原因ごとの違いを並べると、次のようになります。
二つの統計は調査の主体も対象も違うため、数字を足し合わせたり比べたりはせず、原因ごとに見方を変える必要がある、という点だけを受け取ってください。

原因 前もって拾える兆候 止まったときに最初に確かめること
経営悪化・倒産 納期遅延の増加、値上げや支払条件変更の要請、担当者の交代が重なる 供給継続の見込みと、仕掛品・完成品の引き取り可否
災害・事故 ほぼない。拠点の所在地と集中を把握しておく 拠点の被害の程度、再開見込み、出荷できる完成品在庫
サイバー攻撃 外からはほぼ見えない。手作業で受注を続ける手段の有無 出荷を手作業で続けられるか、自社の発注処理への影響
品質問題 受入検査での不良やばらつきの増加 不良の原因の所在と、良品の供給再開の見込み
物流停止 輸送経路の偏り 輸送経路の変更や自社引き取りの可否
停止の原因ごとに、兆候の拾い方と平時の確認が違う(模式図)
原因を三つに分け、それぞれ平時に見るものを示した図原因を三つに分け、それぞれ平時に見るものを示した図前もって兆候を拾える原因経営悪化・倒産:納期遅延の増加、値上げや支払条件の変更要請品質問題:受入検査での不良やばらつきの増加兆候は拾えず備えを確かめる原因災害・事故:実際に作っている拠点の所在地と集中サイバー攻撃:手作業で受注を続ける手段の有無経路を確かめる原因物流停止:品目ごとの輸送経路の偏り

▼ 図の内容を文字で読む
  • 前もって兆候を拾える原因
    • 経営悪化・倒産:納期遅延の増加、値上げや支払条件の変更要請
    • 品質問題:受入検査での不良やばらつきの増加
  • 兆候は拾えず備えを確かめる原因
    • 災害・事故:実際に作っている拠点の所在地と集中
    • サイバー攻撃:手作業で受注を続ける手段の有無
  • 経路を確かめる原因
    • 物流停止:品目ごとの輸送経路の偏り

複数社購買・安全在庫・代替先の事前確認・取引先モニタリングの選び方

同じ軸での比較

品目と原因が見えてきたら、対策を選びます。
よく挙がるのは、複数社購買、安全在庫、代替先の事前確認、取引先モニタリングの四つです。
これらはどれが優れているという並びではなく、手間や費用がどこにかかるか、どの原因の停止に効くか、どんな条件では効かないかがそれぞれ違います。
同じ軸で並べると次のようになります。
効果や費用の大きさは品目と契約で大きく変わるため、ここでは数字を置かず、性質の違いだけを整理しています。

表を見比べると、四つの対策は働き方が違うことが分かります。
複数社購買は、一社が止まっても残りの会社から買い続けられる状態を作るので、停止の影響そのものを薄めます。
安全在庫は、止まった後の時間を買う対策です。
代替先の事前確認は、切り替えにかかる期間を短くする対策で、在庫が持つ間に切替えを終えるための準備にあたります。
取引先モニタリングは、止まる前に気付くための対策で、それだけでは供給を守れません。

この違いを、前の節で見た「在庫で持つ期間」と「切替えに要する期間」の差に当てはめると、選び方の筋が見えます。
差がある品目では、在庫を積んで持つ期間を延ばすか、代替先を事前に確かめて切替え期間を縮めるか、その両方で差を埋めることになります。
差を埋めきれないほど切替え期間が長いなら、平時から二社目に発注を分けておく複数社購買が候補になります。
モニタリングは、兆候に気付いた時点で切替えの準備に入れるようにして、実質的な切替え期間を前に倒す役割を持ちます。

向かない条件と注意点

複数社購買で見落としやすいのは、二社の上流が同じという状態です。
二社が同じ材料メーカーから材料を買っていれば、その材料メーカーが止まったときに二社とも止まります。
工場が同じ地域にある場合も同じです。
発注を分ける前に、二社目がどこで作り、何を使っているかまで確かめておかないと、手間をかけたのに同時に止まるということが起こりえます。

安全在庫は、持つ量を増やすほど安心に見えますが、保管場所と資金を使い、時間がたつと劣化や仕様変更で使えなくなる在庫も出ます。
また、在庫で稼げるのはあくまで時間であり、停止が長引けば尽きます。
在庫を積むときは、その間に何をするのか、つまり代替先への切替えや仕入先の再開を待つ判断とセットで考えると、積みすぎや積み足りなさに気付きやすくなります。

代替先の事前確認は、平時に候補を調べ、見積もりや試作品の評価まで済ませておくものですが、実際に発注していない相手が、いざというときにすぐ受けてくれるとは限りません。
相手の設備に空きがあるか、少量でも受けてくれるかは、そのときの状況で変わります。
確認した内容がいつの時点のものかを品目表に残し、一定の間隔で見直すことで、古い情報を頼りに動いてしまうことを防げます。

取引先モニタリングは、情報を集めること自体が目的になりやすい対策です。
経営の変化に気付いても、何をするか決まっていなければ、気付いたまま時間が過ぎます。
「納期遅延と支払条件の変更要請が重なったら、代替先に見積もりを依頼する」のように、兆候と次の行動の組み合わせを先に決めておくと、集めた情報が判断に使えるようになります。

対策 主にかかる手間・費用 効きやすい停止の原因 向かない条件
複数社購買 二社目の選定と品質確認、発注量が分かれることによる単価や管理の負担 一社に固有の停止(倒産、工場事故、品質問題) 仕様が特殊な品目、型や設備を仕入先が持つ品目、二社が同じ地域や同じ上流に依存する場合
安全在庫 保管場所、在庫に寝る資金、劣化や陳腐化 原因を問わず短い停止 使用期限のある品目、設計変更が多い品目、長く続く停止
代替先の事前確認 候補の調査、見積もり、試作評価を平時に行う手間 長く続く停止 確認した候補が実際に受けてくれるとは限らない、時間がたつと情報が古くなる
取引先モニタリング 定期的な情報収集や面談、信用調査の利用料 兆候が先に出る経営悪化 災害やサイバー攻撃のように突然起きる停止
四つの対策の働き方と、効かなくなる条件(模式図)
四つの対策それぞれの働きと注意点を分けて示した図四つの対策それぞれの働きと注意点を分けて示した図複数社購買一社が止まっても残りから買い続け、影響を薄める二社の上流や地域が同じだと同時に止まる安全在庫止まった後の時間を買う停止が長引けば尽きる代替先の事前確認切替えにかかる期間を短くする確認した内容は古くなるため時点を残す取引先モニタリング止まる前に気付くための対策兆候と次の行動の組み合わせを先に決める

▼ 図の内容を文字で読む
  • 複数社購買
    • 一社が止まっても残りから買い続け、影響を薄める
    • 二社の上流や地域が同じだと同時に止まる
  • 安全在庫
    • 止まった後の時間を買う
    • 停止が長引けば尽きる
  • 代替先の事前確認
    • 切替えにかかる期間を短くする
    • 確認した内容は古くなるため時点を残す
  • 取引先モニタリング
    • 止まる前に気付くための対策
    • 兆候と次の行動の組み合わせを先に決める

自社の状況別に、どの対策から着手するか

代替が効かず切替えに時間がかかる品目

四つの対策の性質が分かっても、すべての品目に全部を当てることはできません。
品目表の分類に戻り、状況ごとに最初の一手を決めます。
ここで示す順番は編集部の提案で、効果を測った結果ではありません。

もっとも手厚くするのは、代替が効かず、切替えに時間がかかる品目です。
この品目では、別の会社を探すよりも先に、いまの仕入先と止まったときの備えを話し合うことが現実的な一手になります。
仕入先に別の製造拠点があるか、金型や図面の予備をどこに置いているか、止まったときに完成品在庫をどう扱うかなどを聞くと、自社の側で埋めるべき空白の大きさが分かります。

仕入先の側に事業継続計画(BCP、災害や事故のときに事業をどう続けるかを定めた計画)があるかどうかも、話し合いの材料になります。
防災白書によると、令和3年度の調査でBCPを策定していた企業は、大企業で70.8%、中堅企業で40.2%でした2。
この数字は大企業と中堅企業を対象にした調査で、小規模な仕入先の実態を示すものではありません。
相手の規模から推し量るより、品目表の上位の仕入先には直接尋ねるほうが確かです。

そのうえで、在庫で持つ期間を延ばし、並行して代替先の候補を調べ始めます。
候補が見つからない、あるいは評価に長い時間がかかる品目は、設計を見直して汎用の部材に置き換えられないかを、設計担当と検討する対象にもなります。
これはすぐに終わる対策ではありませんが、品目表で空白の期間が最も長い品目に絞れば、検討する範囲は限られます。

代替は効くが切替え手続きが重い品目

別の会社から同じ物を買えるのに、切替えに時間がかかる品目もあります。
新しい取引先との契約や口座の開設、受入れ前の品質確認、顧客からの承認など、物の調達ではなく手続きが時間を食っている場合です。

この品目では、手続きを平時に済ませておくことが最初の一手になります。
止まってから契約書を交わし、品質評価を始めるのでは、在庫が持つ間に終わらないことがあります。
品質確認と承認だけを先に終え、代替先を正式な購入先として登録しておけば、止まったときに残るのは発注だけです。
登録した代替先に少量でも定期的に発注しておくと、相手の側でもすぐに対応できる状態が保たれやすくなります。
これは複数社購買に近い形ですが、発注量を大きく分けないので、単価や管理への影響を抑えながら、切替えの手続きを前倒しできます。

代替が効きやすい品目

規格品のように、複数の会社から同じ物をすぐに買える品目は、手厚い対策の対象から外して構いません。
購入できる先の候補と連絡先を品目表に控えておけば、仕入先が止まっても切替えにかかる時間は短く済みます。

大切なのは、ここで浮いた手間を上の二つの分類の品目へ回すことです。
全品目に同じ深さで取り組もうとすると、代替が効く品目の整理に時間を取られ、本当に出荷を止める品目への対策が後回しになります。
品目表で分類を付けることは、何をしないかを決めるための作業でもあります。

品目の状況ごとに最初に手を付ける対策(編集部の提案・模式図)
品目の三つの状況ごとに、最初に取る対策を示した図品目の三つの状況ごとに、最初に取る対策を示した図代替が効かず切替えに時間がかかる品目仕入先と止まったときの備えを話し合う在庫で持つ期間を延ばす代替先の候補を調べ始める代替は効くが切替え手続きが重い品目品質確認と承認を平時に済ませる代替先に少量でも定期的に発注する代替が効きやすい品目購入先の候補と連絡先を控える浮いた手間を上の品目へ回す

▼ 図の内容を文字で読む
  • 代替が効かず切替えに時間がかかる品目
    • 仕入先と止まったときの備えを話し合う
    • 在庫で持つ期間を延ばす
    • 代替先の候補を調べ始める
  • 代替は効くが切替え手続きが重い品目
    • 品質確認と承認を平時に済ませる
    • 代替先に少量でも定期的に発注する
  • 代替が効きやすい品目
    • 購入先の候補と連絡先を控える
    • 浮いた手間を上の品目へ回す

実際に止まった最初の数日:確認・連絡・判断の手順

最初に確認すること

準備が途中のまま、仕入先から供給停止の連絡が来ることもあります。
そのときも、ここまでに作った品目表が出発点になります。
最初の数日で何を順に行うかを、編集部の提案として整理すると次のようになります。
実際には一人ですべてを順に行うのではなく、担当を分けて並行して進めます。

最初に確かめるのは、いつ欠品するかです。
自社の倉庫にある在庫だけでなく、輸送中のもの、仕入先の手元にある完成品で出荷してもらえるものも合わせて、何日分の出荷をまかなえるかを出します。
この日数が、以降のすべての判断の期限になります。
品目表に「手元在庫で持つ期間」を書いてあれば、その時点の在庫量で数字を更新するだけで済みます。

同時に、停止の原因と再開の見込みを仕入先に確かめます。
前の節で見たように、原因によって再開までの見通しが大きく違うためです。
工場の設備故障なら修理の見込みが立つことがありますが、経営の問題であれば、再開の見込みそのものが不確かです。
見込みが「分からない」という回答も、それ自体が判断の材料になります。

連絡先と判断者

仕入先に聞くことは、原因と再開の見込みのほかに、仕掛品や完成品を引き取れるか、別の拠点で作れるか、金型や図面を一時的に別の会社に預けられるかです。
特に代替が効かない品目では、型や図面を動かせるかどうかで、切替えにかかる期間が大きく変わります。

仕入先への確認と並行して、代替先へ打診します。
事前に候補を確かめていれば、その候補に、いつからどれだけ供給できるかを問い合わせます。
候補がない場合は、この時点から探すことになり、欠品日までに間に合うかどうかが判断の焦点になります。

自社の顧客への連絡は、遅らせるほど顧客の側の選択肢が減ります。
再開の見込みが確定していなくても、影響が出うる製品と、分かっている範囲の見込みを伝えておけば、顧客も自社の在庫や代わりの手段を考え始められます。
品目表で顧客の側の在庫や契約上の納期を書いておけば、影響が早く出る顧客から連絡する順番を決められます。

そして、仕入先の再開を待つか、代替先へ切り替えるかを決める人を、あらかじめ決めておきます。
代替先への切替えには、単価の上昇や品質確認の手間、顧客への説明が伴うため、購買担当だけでは決めきれないことがあります。
誰が判断し、費用の増加を誰が承認するかが決まっていないと、確認と連絡は進んでいるのに、切替えの決定だけが遅れるという状態になります。

平時に準備しておく項目

止まった最初の数日で手間取るのは、多くの場合、必要な情報を探すことです。
次の項目を品目表の上位の品目について揃えておくと、確認と連絡にかかる時間が減ります。

一つ目は、仕入先と代替先の連絡先です。
担当者だけでなく、不在のときや夜間・休日に連絡がつく先も控えておきます。
二つ目は、在庫日数をすぐに出せる状態です。
在庫の数字が複数の場所に分かれているなら、どこを見れば合計が出るかを決めておきます。
三つ目は、代替先の候補と、確認した内容がいつの時点のものかの記録です。
四つ目は、再開を待つか切り替えるかの判断者と、判断に使う基準です。

内閣府は平成17年に事業継続ガイドラインを策定し3、その後改定版も公表したうえで、ガイドラインに沿ったBCPの策定を推奨しています2。
仕入先が止まったときの手順は、自社のBCPのうち、取引先に関わる部分として位置付けると、災害時の対応や情報システムの停止への備えと同じ場所で見直せます。
BCPをまだ持っていない場合でも、品目表と上の四つの項目があれば、仕入先が止まったときに何を確かめ、誰に連絡し、誰が決めるかは整理できます。
そこから、取引先以外の備えへ広げていくこともできます。

供給が止まった最初の数日に行う確認・連絡・判断(編集部の提案)
欠品日を出してから、確認・打診・連絡を経て、再開待ちか切替えかを判断する手順1在庫を確かめ、欠品する日を出す2仕入先に原因と再開の見込みを確認する3代替先に供給の可否を打診する4影響が及ぶ顧客へ見込みを連絡する5再開を待つか、代替へ切り替えるかを判断する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 在庫を確かめ、欠品する日を出す
  2. 仕入先に原因と再開の見込みを確認する
  3. 代替先に供給の可否を打診する
  4. 影響が及ぶ顧客へ見込みを連絡する
  5. 再開を待つか、代替へ切り替えるかを判断する

品目表の欄は作れても、代替の可否や切替え期間をどう見積もるかは、購買・品質・設計の見方が分かれて社内だけでは決めきれないことがあります。

相談の場では、自社の品目のうちどれを優先して見るべきか、表の分類と並べ方を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
優先して見る品目 代替が効かず、切替え期間が在庫で持つ期間より長く、主要な出荷や顧客につながる品目
原因の見方 経営悪化・倒産、災害・事故、サイバー攻撃、品質問題・物流停止で、兆候の有無と最初に確かめることが違う
統計の使い方 倒産件数や脅威の順位は全体の傾向として扱い、個々の仕入先の確率にはしない
対策の選び方 在庫で持つ期間と切替え期間の差を、在庫・代替先の事前確認・複数社購買の組み合わせで埋める
モニタリング 兆候と次の行動の組み合わせを先に決めておく
初動 欠品日を出し、仕入先・代替先・顧客への確認と連絡を並行し、判断者を決めておく
仕入先が止まるリスクを見るときの三つの軸(模式図)
優先して見る品目、対策の選び方、初動の基準を三つに分けた図優先して見る品目、対策の選び方、初動の基準を三つに分けた図優先して見る品目代替が効かず、切替え期間が在庫で持つ期間より長い主要な出荷や顧客につながる対策の選び方在庫で持つ期間と切替え期間の差を埋めるモニタリングは兆候と次の行動を組にする初動欠品日を出す仕入先・代替先・顧客への確認と連絡を並行する判断者を決めておく

▼ 図の内容を文字で読む
  • 優先して見る品目
    • 代替が効かず、切替え期間が在庫で持つ期間より長い
    • 主要な出荷や顧客につながる
  • 対策の選び方
    • 在庫で持つ期間と切替え期間の差を埋める
    • モニタリングは兆候と次の行動を組にする
  • 初動
    • 欠品日を出す
    • 仕入先・代替先・顧客への確認と連絡を並行する
    • 判断者を決めておく

四つの対策の組み合わせや、止まったときの判断者と基準は、取引の実情によって答えが変わり、一般的な整理だけでは決めにくい部分が残ります。 相談では、上位の品目について在庫と切替え期間の差をどの対策で埋めるか、初動で誰が何を決めるかを整理できます。

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よくある質問

仕入先の財務状況は、どこまで確認してよいのですか。

公開されている情報と、取引の中で相手が提供してくれる情報が基本になります。
決算を公告している会社であればその内容を見られますし、信用調査会社の情報を利用する方法もあります。
一方で、相手に決算書の提出を求めるかどうかは、取引関係や契約の内容によって受け止め方が変わります。
一方的に求めるより、止まったときの備えを一緒に考えるための話し合いとして、拠点や在庫の持ち方と合わせて尋ねるほうが、相手の協力を得やすくなります。
財務の数字だけでなく、納期遅延や支払条件の変更要請といった取引の中での変化も、経営の状況を知る手掛かりになります。

仕入先が1社しかなく、複数社購買が難しいときはどうすればよいですか。

まず、いまの仕入先と、止まったときの備えを話し合うことから始めます。
別の製造拠点の有無、金型や図面の予備の置き場所、止まったときの完成品在庫の扱いが分かれば、自社の側で埋めるべき空白の期間が見えます。
そのうえで在庫で持つ期間を延ばし、並行して代替先の候補を調べます。
候補が見つからない品目は、汎用の部材に置き換えられないかを設計担当と検討する対象になります。

安全在庫は何日分を目安にすればよいですか。

一律の日数の目安はありません。
考え方としては、その品目を別の仕入先に切り替えるまでにかかる期間と、在庫で出荷をまかなえる期間を比べ、差を在庫でどこまで埋めるかを決めます。
ただし在庫を増やすほど、保管場所や資金、劣化や仕様変更で使えなくなるおそれも増えます。
代替先を事前に確かめて切替え期間を縮められるなら、在庫を積み増す量は少なくて済みます。

仕入先から納期遅延の連絡が来たとき、最初に確認することは何ですか。

いつ欠品するかです。
自社の在庫、輸送中の量、仕入先の手元にある完成品を合わせて、何日分の出荷をまかなえるかを出し、その日数を判断の期限にします。
同時に、遅延の原因と再開の見込みを仕入先に確かめます。
原因によって見通しが大きく違うため、見込みが立たないという回答も、代替先への打診を始めるかどうかの判断材料になります。

自社が仕入先として止まる側になった場合に備えて、何を準備しておけばよいですか。

自社の顧客から見れば、自社も仕入先の一つです。
本文で整理した品目表を、自社が出荷している製品と顧客の側から見直すと、止まったときにどの顧客へ、何を、どの順で伝えるべきかが分かります。
顧客が確認したいのは、原因、再開の見込み、手元の完成品で出荷できる量、別の拠点や代替の手段の有無です。
これらに答えられるよう、連絡先と在庫の数字、判断者を決めておくことが、自社の仕入先に求めている備えと同じ準備になります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:帝国データバンク「【帝国データバンクが解説】2025年度の倒産、2年連続の1万件超え」(2025年度)
  2. 2 出典:内閣府(防災担当)「令和5年版 防災白書 第1部第1章第1節 事業継続体制の構築」(2023年)
  3. 3 出典:内閣府(防災担当)「令和8年版 防災白書(事業継続に関する節)」(2026年)
  4. 4 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威 2026[組織]」(2026年)

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  1. Female warehouse worker organizing inventory on blue industrial shelves. Efficient logistics management./Photo by EqualStock IN on Pexels

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※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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