◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 「EDIで」と言われたら、方式を選ぶ前に、依頼元の業界・方式・対象帳票・期限を取引先に確かめる。
- 受け取るだけか、出荷の連絡や請求まで返すのかで、社内で変わる業務と準備の量が大きく変わる。
- 取引先ごとの画面に合わせると対応先が増えるほど負担が増える。共通化された標準は、取引先が対応している場合に限り使える。
- 取引先と方式を一覧にし、共通化できる部分と個別対応が残る部分に分けて、進める順番を決める。
- 期限や方式が合わないときは、方式の相談、段階的な移行、期限の相談を、理由と見通しを添えて取引先と調整する。
目次

取引先から「EDIで」と言われたとき、まず何を確認するか
取引先から「今後の発注はEDIで」と連絡が来ても、方式も期限も対象の帳票も書かれていなければ、何を用意すればよいか決められません。
最初に手を付けるべきなのは、方式やサービスを選ぶことではありません。
依頼の中身を取引先に確かめることです。
EDIは取引先ごとに形式がばらばらになりやすく、対応先が増えるほど受注側の負担が膨らみます。
共通化された標準に対応したサービスなら受注側の費用は大きくないとされています。
ただし、使えるかどうかは取引先がその標準に対応しているかで決まります1。
そのため、取引先に聞くこと、社内で変わる業務、準備の順序を先に固めるのが近道です。
依頼文のEDIが指すもの
EDI(Electronic Data Interchange)は、注文書や出荷の連絡、請求書といった企業間の取引データを、あらかじめ決めた形式で電子的にやり取りする仕組みです。
取引先が「EDIで」と言うとき、その一語には別々の話が含まれています。
データをどんな通信の決まりで送るのか、どんな形式で書くのか、どの帳票をやり取りするのか、いつから始めるのか、です。
依頼文にこれらが書かれていなければ、受注側は何を用意すればよいかを決められません。
通信の決まりだけを見ても、選択肢は一つではありません。
流通業界を取材した記事は、小売店と卸・メーカーのどちらでも、JCA手順や全銀手順、全銀TCP/IP手順といった旧来の通信手順がまだ多く使われていると述べています2。
通信手順とは、データを送受信するときの取り決めのことです。
同じ記事は、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移る取引先が出てきていることにも触れています2。
Web-EDIは、一般に取引先が用意したWeb画面にブラウザから入り、注文を見たり回答したりする形を指します。
つまり同じ「EDI」という言葉が、昔からある手順を指すこともあれば、新しい方式や取引先の画面を指すこともあります。
ただし、この記事が対象にしているのは流通業界、つまり小売・卸とその取引先のメーカーです。
自動車や電機など、ほかの製造業の取引でどの方式が一般的かを示すものではありません。
依頼元が小売や卸なのか、自社と同じ製造業の完成品メーカーなのかで、想定される標準は変わり得ます。
方式の名前を調べる前に、依頼元がどの業界の、どの決まりに沿ってデータを送ってくるのかを聞く。
これが最初の確認になります。
一方で、取引先ごとに形式がばらばらな状態を減らそうとする動きもあります。
中小企業庁の紹介記事によると、中小企業共通EDI標準は、取引先ごとに異なっていたデータの形式を国際標準に準拠して共通化し、導入の手間と費用を減らすことを目指したものです1。
2018年の実証事業は、自動車、水インフラ、農林水産など6業界・5地域の12プロジェクトで行われました1。
製造業に近い業界でも試されている標準です。
それでも、自社の取引先がこれを使っているかどうかは別の話で、依頼元に聞かなければ分かりません。
受け取る帳票と返す帳票
業界と方式の次に、受注側の作業量を大きく左右するのが、やり取りする帳票の範囲です。
まず受け取る側から考えます。
受注側にとって最初の対象は、取引先が送ってくる注文のデータです。
そのデータに何が入っているかは方式によって違います。
中小企業共通EDIの標準仕様書を例に取ると、データを中継するプロバイダー向けには注文メッセージとして135項目が定められています。
一方、業務アプリケーションに求められる最低限の対応は、注文書番号や発行日など13項目です1。
この差は受注側にとって意味があります。
送られてくるデータに多くの項目があっても、自社の受注処理で実際に読み取って使うのは、注文番号、品番、数量、納期といった一部に絞れることがあります。
どの項目を自社の受注台帳へ取り込み、どの項目は参照するだけにするのか。
これを決めると、システムに求める対応の範囲が見えてきます。
なお、135項目と13項目という数字は共通EDI標準の場合です。
取引先が独自の形式や別の業界標準を使うなら、項目の数も名前も変わります。
次に、返す帳票です。
注文を受け取るだけであれば、変わるのは主に受注の入口です。
ところが、出荷の連絡や請求書もEDIで返してほしいと言われている場合、自社の出荷や請求の記録から、取引先の形式に合わせたデータを作って送る必要が出てきます。
受け取りは取引先が作ったデータを読む作業ですが、返すほうは自社が作ったデータを相手のシステムに読ませる作業です。
品番の書き方、日付の形式、数量の単位を相手の決まりに合わせる手間が加わります。
たとえば、これまでFAXで届く注文書を見て受注を入力し、納品書と請求書を紙で送っていた会社が、「注文はEDIで送るので、出荷の連絡もEDIで返してください」と言われたとします。
注文の受け取りがデータになれば、FAXを読み取って打ち込む作業は減らせる可能性があります。
その一方で、出荷のたびに誰がどの画面で出荷の連絡を作り、いつ送るのかという新しい作業が生まれます。
同じ「EDI対応」でも、受け取るだけなのか返す帳票まで含むのかで、社内で関わる人も準備の量も変わります。
この切り分けが、後の見積もりの前提になります。
| 確かめる点 | 分かれる内容 |
|---|---|
| 依頼元の業界 | 小売・卸などの流通系か、自社と同じ製造業か |
| 方式・通信の決まり | 旧来の通信手順か、IP網対応の方式やWeb-EDIか、共通化された標準か |
| 対象の帳票 | 注文を受け取るだけか、出荷の連絡や請求も返すのか |
| 期限 | いつ切り替えるのか、従来の受け方とどのくらい並行できるのか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 依頼元の業界
- 小売や卸などの流通系か
- 自社と同じ製造業か
- 方式・通信の決まり
- 旧来の通信手順か
- IP網対応の方式やWeb-EDIか
- 共通化された標準か
- 対象の帳票
- 注文を受け取るだけか
- 出荷の連絡や請求も返すか
- 期限
- いつ切り替えるのか
- 従来の受け方と並行できるか
取引先指定の方式に合わせる場合と、共通化された仕組みを使う場合で、受注側の負担はどう違うか
取引先ごとの画面に対応する場合
受注側の負担を考えるときにまず見るべきなのは、取引先が増えたときに作業がどう増えるかです。
取引先がそれぞれ自前の画面や形式を指定する場合、受注側はその取引先専用のやり方に合わせることになります。
中小企業庁の紹介記事も、取引先ごとにデータの形式がばらばらであることを、共通化が必要な理由として挙げています1。
取引先が1社だけなら、指定されたWeb画面に毎朝ログインして注文を確認し、自社の受注台帳へ書き写す運用でも回るかもしれません。
しかし2社目、3社目が別の画面や別のファイル形式を指定してくると、ログインする先、注文を確認する時刻、項目の並び、品番の書き方がそれぞれ違ってきます。
担当者は画面ごとの操作を覚え、どの画面の注文をどこまで書き写したかを管理しなければなりません。
受注の件数が同じでも、確認する場所が増えるほど見落としや二重入力の機会が増えます。
これがこの方式の負担の中心です。
費用の見方も取引先ごとに分かれます。
取引先指定の方式で、受注側に利用料や接続のための費用が発生するのか、発生するなら誰が負担するのかは、方式と契約次第です。
一般的な相場として示せる金額はありません。
取引先ごとに費用の有無と負担者を聞き取り、積み上げるのが現実的な見積もり方です。
費用とは別に、担当者が毎日どれだけの時間を画面の確認と転記に使うかも負担として数えておくと、判断を誤りにくくなります。
共通標準に対応する場合
これに対して共通化された標準を使う場合は、取引先が違っても同じ形式でデータを受け取れることが前提になります。
中小企業庁の紹介記事では、受注側企業は共通EDI標準に対応したプロバイダーと業務アプリケーションを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています1。
ここでいうプロバイダーは、企業間のデータを中継するサービスの提供者のことです。
ただし同じページに具体的な金額は示されておらず、実際の料金は選ぶサービスによって異なります。
効果についての数字もあります。
2018年の12の実証プロジェクトでは、受発注業務の時間の削減率が平均51.4%となり、大企業より中小企業のほうが削減率が高かったと紹介されています1。
ただ、調査期間、対象社数、算出方法は同じページに書かれていません。
これは取引先が共通EDIに対応し、実証事業と似た条件で使えた場合の参考値です。
自社でも業務時間が半分になると見込む根拠にはしないほうが安全です。
何が減るのかを具体的に考えると、効いてくるのは主に転記の部分です。
複数の取引先から同じ形式で注文が届けば、取引先ごとに画面を開いて書き写す作業をまとめやすくなります。
一方で、残る作業もあります。
注文の内容を自社の在庫や生産の予定で受けられるかの判断や、単価や納期が取り決めどおりかの確認は、形式が共通になってもなくなりません。
そして最も大きな条件は、取引先がその標準に対応していることです。
受注側だけが共通標準に対応しても、取引先が独自の形式で送ってくるなら、その取引先との間では使えません。
二つの場合の違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比べる点 | 取引先ごとの画面・形式に合わせる場合 | 共通化された標準を使う場合 |
|---|---|---|
| 対応先が増えたとき | 画面や形式ごとに操作と転記が増える | 同じ形式で受け取れるため取引先ごとの作業をまとめやすい |
| 費用の見方 | 取引先ごとに費用の有無と負担者を確かめて積み上げる | 対応サービスの利用で大きな費用はかからないとされるが金額は示されていない |
| 残る作業 | 画面の確認、転記、内容の照合 | 内容の照合と受注できるかの判断 |
| 使える条件 | 取引先の指定に従う | 取引先が同じ標準に対応していること |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が1社だけの場合
- 指定されたWeb画面で注文を確認し、受注台帳へ書き写す運用でも回る
- 2社目、3社目が別の画面を指定する場合
- ログインする先、確認する時刻、項目の並び、品番の書き方が取引先ごとに違う
- 見落としや二重入力の機会が増える
- 共通標準に対応する場合
- 取引先が違っても同じ形式で受け取れる
- 条件は、取引先がその標準に対応していること
どの方式にするかは何で決まるか
取引先の数と方式の一覧
ここまでで分かるように、方式は受注側だけで選べるものではありません。
相手が送ってくる形式に受け取る側が合わせる関係にあるからです。
そのため「どの方式が一番よいか」を先に考えるより、取引先それぞれがどの方式を使っているか、あるいは受け付けているかを並べてみるほうが、判断の材料になります。
EDIを使う企業でも、すべての取引先を一度に同じ方式へそろえているとは限りません。
流通業界の2016年の取材では、約500弱の小売店とEDIでやり取りしている1社で、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行済みの取引先は10%強だったと紹介されています2。
これは流通業界の1社の当時の状況で、製造業の受注側に一般的な割合ではありません。
それでも、一つの会社の中で古い方式と新しい方式が並んで使われる時期があることは読み取れます。
依頼してきた取引先も複数の受け方を用意している可能性があります。
「指定はこの方式か、ほかに選べる方式はあるか」と聞く意味はここにあります。
そこで、取引先を一覧にし、それぞれの方式を書き込んで、共通化できる部分と個別対応が残る部分に分けてみる方法があります。
仮に主要な取引先が3社あり、A社は共通EDI標準に対応したサービスでの受け取りを求め、B社は自社のWeb画面での確認を指定し、C社は当面これまでどおりFAXで発注するとします。
この場合、A社の分は共通標準に対応した仕組みで受け、B社の分は画面操作として個別に残り、C社の分は従来の受注入力が続きます。
一覧にすると、新しく用意するものがA社向けの仕組みとB社の画面操作の手順であり、社内の受注入力は当面なくならない、という見通しが立ちます。
一覧には、いま取引のある先だけでなく、今後EDIを求めてきそうな先も分かる範囲で書き込んでおきます。
そうすると、最初に選ぶ仕組みが次の取引先にも使えるかを考えやすくなります。
今回の依頼が1社だけでも、仕組みを選ぶときには2社目以降のことが判断に入ってくるからです。
既存システムとの関係
方式の一覧ができたら、届いたデータを自社の受注処理へどう渡すかを考えます。
判断が分かれるのは二点です。
受注・出荷・請求をすでに何かのシステムで管理しているかどうか、そしてそのシステムが外からデータを取り込めるかどうかです。
受け取った注文を自社の記録へ移す方法は、おおまかに三つの段階で考えられます。
一つ目は、EDIで届いた注文を画面で確認し、自社の受注台帳や販売管理システムへ手で入力する形です。
二つ目は、届いたデータをファイルとして保存し、自社のシステムへ取り込む形です。
三つ目は、受け取ったデータが自社の基幹システムへ直接渡るようにつなぐ形です。
段階が進むほど転記は減りますが、取り込みやつなぎ込みの準備と、項目の対応づけの手間が増えます。
一つ目の形では、EDIの受け取りが始まっても社内の転記が残ります。
FAXが画面に変わっただけと感じられることもあるでしょう。
それでも、手書きの読み取りがなくなり、注文番号や品番が文字として届くことで、読み違いは減らせます。
件数が少ない取引先から始めるなら、この形でも足りる場合があります。
取り込みや連携を選ぶ場合は、取引先が使う品番と自社の品番が違うときに、その対応表をどこで持つかも決めておく必要があります。
自社に基幹システムがない場合でも、対応の道がないわけではありません。
中小企業庁の紹介記事は、受注側は共通EDI標準に対応したプロバイダーと業務アプリケーションを使えばよいと説明しています1。
ただし、使おうとする業務アプリケーションが取引先の形式のデータを実際に読み込めるのか、出荷や請求のデータを相手の形式で出せるのかは、製品ごとに確かめる必要があります。
データの形式が標準として決まっていることと、手元のソフトがそれを処理できることは、別の事柄だからです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 画面で確認して手入力
- 転記は残る
- 手書きの読み取りがなくなり、読み違いは減る
- ファイルで取り込む
- 届いたデータを自社のシステムへ取り込む
- 取引先と自社の品番の対応表をどこで持つか決める
- 基幹システムへ連携
- 受け取ったデータが基幹システムへ直接渡る
- つなぎ込みの準備と項目の対応づけが要る
対応を決める前に取引先へ確認することと、社内で変わる業務
取引先への確認事項
ここまでの整理で、聞くべきことの輪郭は見えてきました。
依頼文に書かれていない点は推測で埋めず、取引先に問い合わせ、回答を書面やメールで残しておきます。
後で認識の違いが出たときに立ち返れるからです。
問い合わせる項目は、次のように分けると漏れにくくなります。
<ul><li>受け取る帳票とデータ形式:どの業界標準や方式で、どの項目が入った注文データが届くのか</li><li>返す帳票:出荷の連絡、納期の回答、請求などをEDIで返す必要があるか</li><li>テスト:本番の前に送受信のテストをするか、その時期と相手の担当者</li><li>サポート窓口:問い合わせ先と、手順書やマニュアルがあるか</li><li>期限と切替:いつ切り替えるか、従来の受け方とどのくらい並行できるか</li><li>費用負担:受注側に利用料などがかかるか、誰が負担するか</li></ul>
テストとサポートを聞いておくのは、取引先によって支援の厚みが違うからです。
小売の発注側がEDIを移行した事例では、発注側が取引先の移行・テスト・切替を支援し、ヘルプデスクとサポートマニュアルを用意したと紹介されています3。
これは小売企業がITベンダーと進めた事例で、どの取引先も同じ支援をしてくれるわけではありません。
ただ、支援が用意される例もあると知っていれば、「テストの相手をしてもらえるか」「困ったときの窓口はどこか」を遠慮なく聞けます。
期限については、日付だけでなく、切替後に従来の受け方がすぐ止まるのか、しばらく並行できるのかも聞いておきます。
並行期間があれば、EDIで届いた注文とFAXで届いた注文を突き合わせながら慣れていけます。
切替日に一斉に止まるなら、それまでにテストを終えておかなければなりません。
受注入力・納期回答・出荷・請求の変更点
取引先の回答がそろったら、社内の業務を受注から請求までの順にたどり、どこが変わるかを見ていきます。
変わり方は、前の節で決めた受け取り方と、返す帳票の範囲で決まります。
受注入力では、FAXや電話の内容を読み取って打ち込む作業が、届いたデータを確認する作業か、取り込む作業に置き換わります。
画面で確認して手入力する形なら、転記は残りますが読み違いは減ります。
取り込む形なら転記そのものが減る代わりに、取引先の品番と自社の品番の対応表を保守する仕事が新しく生まれます。
注文に新しい品番が出てきたとき、対応表になければ取り込みが止まります。
誰が対応表を更新するかを決めておく必要があります。
納期の回答をEDIで返すよう求められている場合は、回答する人と時刻が問題になります。
これまで電話やFAXで個別に返していた回答をデータで返すには、生産や在庫の状況を見て回答を入れる役割を営業と生産管理のどちらが持つのか、決めなければなりません。
回答の期限が取引先の側で決まっていることもあるため、確認事項の段階で聞いておくと、社内の役割分担を決めやすくなります。
出荷の連絡を返す場合は、出荷の作業と同時にデータを作る流れが必要です。
注文と違う数量で分納した、品番を代替品に変えた、といった場面では、出荷の記録と注文のデータが食い違います。
その食い違いをどの画面で直し、取引先にどう伝えるかを決めておかないと、受け取った側で照合が合わず、問い合わせが戻ってくることになります。
請求をEDIで返す場合は、締め日と請求データの作り方を取引先の決まりに合わせます。
出荷の連絡も返していれば、そのデータと請求が一致していることが前提になります。
出荷の段階で直した内容が請求まで正しく流れるかを、テストで確かめておくと安心です。
受け取りだけを先にEDIにして、請求は当面これまでどおりにする、といった分け方ができるかどうかは、取引先との取り決め次第です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の受け取り:FAXや電話からデータの受け取りに変わる
- 受注入力:画面で確認するか、取り込む。取り込む場合は品番の対応表を保守する
- 納期の回答:回答する人と時刻を営業と生産管理のどちらが持つか決める
- 出荷の連絡:分納や代替品で注文と食い違う内容の直し方を決める
- 請求:締め日と作り方を取引先の決まりに合わせ、出荷の連絡と一致させる
準備の進め方と、期限に間に合わない・方式が合わない場合の調整
準備の順序
準備は、取引先への確認から始まり、本番の切替で終わる一続きの作業です。
順に並べると、依頼内容の確認、取引先と方式の一覧づくり、受け取り方と社内の役割の決定、仕組みの用意、テスト、切替という流れになります。
期間の目安として参考になる数字は多くありません。
流通業界の2016年の取材では、EDIの移行について、取引先1社ごとに事前調整から利用開始まで1か月ほどかかると紹介されています2。
これはある企業が取引先を移行させる側から見た当時の事例で、製造業の受注側が準備にかける標準的な期間ではありません。
それでも、相手との調整とテストを含めると、仕組みを契約した翌日から使えるわけではない、という感覚をつかむ材料にはなります。
受注側の準備期間を見積もるときは、取引先からの回答の時期、仕組みの契約や設定、テストの日程が、それぞれ相手の都合に左右されることを考えに入れます。
返す帳票がある場合は、社内の出荷や請求の担当者がテストに参加する時間も必要です。
取引先が複数あるなら、全社を同時に進めるより、注文件数の多い先や期限の早い先から順に進め、1社目で分かった手順を次に生かすほうが、担当者の負担を見通しやすくなります。
調整できる余地
期限までに準備が終わりそうにない、あるいは指定された方式が自社の業務に合わない、ということもあります。
そのときに取引先と相談できる点は、主に三つ考えられます。
一つ目は方式の相談です。
取引先が複数の受け方を用意しているなら、指定された方式とは別の方式で受けられないかを聞けます。
たとえば、共通化された標準に対応しているかを尋ね、対応していれば、ほかの取引先とまとめて受けられる形を選べる可能性があります。
二つ目は段階的な移行です。
注文の受け取りだけを先にEDIへ切り替え、出荷の連絡や請求はあとから加える分け方なら、社内で同時に変える業務が減ります。
先に見たように、EDIを使う企業の側でも取引先の移行が一斉ではなく少しずつ進んでいた例があります2。
段階を踏む進め方は、相談の候補として持ち出しやすい案です。
三つ目は期限の相談です。
単に「間に合わない」と伝えるより、どこまで進んでいて、何が理由で止まっているのか、いつなら切り替えられるのかを具体的に示すほうが、取引先も社内で調整しやすくなります。
テストの日程が合わない、品番の対応表づくりに時間がかかる、といった理由が分かれば、取引先の側でも支援の手を考えられます。
いずれの案も、受け入れられるかどうかは取引先の方針や契約、相手の切替計画によって変わります。
調整案は相手に約束を迫るものではなく、双方の準備を合わせるための材料として出すものです。
そう考えると、相談の切り出し方も決めやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 依頼内容の確認:業界・方式・対象帳票・期限を取引先に問い合わせる
- 取引先と方式の一覧づくり:共通化できる部分と個別対応が残る部分に分ける
- 受け取り方と社内の役割の決定:画面確認・取り込み・連携のどれにするか、誰が何をするか
- 仕組みの用意:サービスや業務アプリの契約・設定、品番の対応表
- テスト:取引先と送受信を確かめ、返す帳票があれば内容も照合する
- 切替:並行できるかどうかに合わせて従来の受け方を止める
▼ 図の内容を文字で読む
- 方式の相談
- 指定された方式とは別の方式で受けられないか聞く
- 共通化された標準に対応しているか尋ねる
- 段階的な移行
- 注文の受け取りだけを先にEDIへ切り替える
- 出荷の連絡や請求はあとから加える
- 期限の相談
- どこまで進んでいて何が理由で止まっているかを示す
- いつなら切り替えられるかを伝える
取引先ごとの方式や返す帳票の範囲は依頼文だけでは読み取りにくく、社内の受注・出荷・請求のどこが変わるかを一人で見通すのは難しいためです。
取引先から届いた依頼内容と現在の受注の流れを並べ、取引先に確認すべき点と、社内で先に決めておくことを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に確認すること | 依頼元の業界、方式、対象帳票、期限 |
| 方式の負担 | 対応先が増えたときに画面操作と転記がどれだけ増えるか |
| 共通標準を使えるか | 取引先が同じ標準に対応しているか |
| 社内の変化 | 受け取るだけか、返す帳票まで含むか |
| 期間の見積もり | 取引先の回答、テスト日程、並行期間を含めて考える |
取引先が複数あると、共通化できる部分と個別対応が残る部分の線引きや、準備の順番づけで判断が分かれやすいためです。 取引先と方式の一覧をもとに、どの取引先から進めるか、期限の相談で何を伝えるかを確かめられます。
よくある質問
取引先がEDIの方式を指定してきたとき、自社で別の方式を選べるのか
受注側は相手が送ってくる形式に合わせる関係にあるため、自社だけでは決められません。
ただ、EDIを使う企業でも古い方式と新しい方式が並んで使われる時期があり、取引先が複数の受け方を用意していることもあります。
指定の方式のほかに受け付けている方式はあるか、共通化された標準に対応しているかを聞けば、選べる余地があるかが分かります。
EDIを導入すると、受注入力や出荷・請求業務はどう変わるのか
受け取るだけなら、FAXや電話の読み取りが、データの確認や取り込みに置き換わるのが中心です。
出荷の連絡や請求も返す場合は、自社の記録から相手の形式のデータを作る作業が加わります。
分納や代替品で注文と食い違ったときの直し方も決めておく必要があります。
取り込む形を選ぶなら、取引先の品番と自社の品番の対応表を保守する仕事も生まれます。
取引先が複数あるとき、すべて同じ方式に統一できるのか
取引先がすべて同じ標準に対応していれば、同じ形式で受け取れます。
実際には、ある取引先は共通化された標準、別の取引先は自前の画面、さらに別の取引先は従来のFAXというように、方式が混在することがあります。
取引先と方式を一覧にし、共通化できる部分と個別対応が残る部分に分けると、何を新しく用意し、何が当面残るのかが見えてきます。
期限に間に合わないときは、取引先にどう相談すればよいのか
どこまで進んでいるか、何が理由で止まっているか、いつなら切り替えられるかを具体的に伝えます。
受け取りだけを先に切り替える段階的な移行や、別の方式で受けられないかの相談も、あわせて持ち出せます。
受け入れられるかは取引先の方針や契約によって変わります。
自社に基幹システムがない場合でも、EDIに対応できるのか
対応の道はあります。
中小企業庁の紹介記事は、受注側は共通EDI標準に対応したプロバイダーと業務アプリケーションを使えばよいと説明しています。
ただし、これは取引先がその標準に対応している場合の話です。
また、使おうとするソフトが取引先の形式のデータを読み込めるか、出荷や請求のデータを相手の形式で出せるかは、製品ごとに確かめる必要があります。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 3 出典:株式会社日立製作所「ダイエー様 流通BMS/EDI移行事例」(2012年頃)