◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- WEB受発注の費用対効果は、費用の総額・減る手間と損失・取引先が使う見込みの3つを並べて説明する。
- 費用は初期費用・月額・オプションに分け、アカウント数での加算、基幹システム連携、取引先側の負担を見積りで確認する。
- 効果は他社の削減率を借りず、自社の注文件数・転記時間・聞き直しと訂正の時間・時間単価から月間の削減額を出す。
- WEB経由の注文比率で削減額を割り引くと、回収できるかどうかの結論が変わるため、注文件数の多い前向きな取引先から試行するのが基本となる。
- 導入後は同じ取引先・同じ期間で3つの指標を比べ、届かなければ働きかけ、社内の流れの見直し、見送りのいずれかを選ぶ。
目次

FAX・メールの転記に追われる状況から、WEB受発注が費用に見合うかを判断する比べ方
FAXやメールで届く注文書を販売管理に打ち直し、読みにくい品番は電話で聞き直す。
WEB受発注に変えれば楽になりそうでも、上司に「費用に見合うのか」と問われると、見積書の金額だけでは答えられません。
費用は初期費用・月額・オプションに分けて整理します。
効果は、自社の注文件数、1件あたりの転記時間、聞き直し・訂正の対応時間から金額に置き換えます。
こうすると、回収期間として説明できます。
取引先がWEBで発注しなければ転記は残るため、試算はWEB経由の注文比率で割り引き、注文件数の多い取引先から試すのが基本です。
数字が合わなければ見送る判断も、同じ試算で説明できます。
転記・聞き直し・訂正で何が起きているか
取引先から届く注文の形はそろっていません。
FAXの手書き注文書もあれば、メール添付のPDFやExcel、電話での口頭注文もあります。
受け取った担当者は、品番・数量・納期・届け先を読み取り、販売管理や生産管理のシステム、あるいは社内の受注台帳へ打ち直します。
この打ち直しが、本記事でいう転記です。
転記には、入力そのもの以外の時間も付いてきます。
手書きの数字が読めない、品番が旧番号のまま、納期の書き方が取引先ごとに違うといった場合は、電話やメールで聞き直します。
入力した後で誤りが見つかれば、受注データの訂正や出荷前の差し替えが必要になり、取引先へのおわびと再手配が続くこともあります。
費用対効果を考えるとき、削れる可能性があるのは「打ち直し」と「聞き直し・訂正」の部分です。
一方で、注文が在庫や生産計画に照らして受けられるかを判断する確認は、注文がWEBで届いても残ります。
減る作業と残る作業を分けておくと、後の試算で効果を大きく見積もりすぎずに済みます。
システム費用だけで決められない理由
見積書の初期費用と月額だけを見ても、「月に十数万円を払う価値があるのか」という問いには答えられません。
比べる相手がないからです。
同じ月額でも、注文件数が多く転記に人手を取られている会社と、注文が少なく担当者が片手間で処理できている会社とでは、意味がまったく違います。
もう一つの理由は、WEB受発注の効果が自社だけでは決まらないことです。
受注側がシステムを用意しても、取引先が画面から発注してくれなければ、FAXは届き続け、転記はなくなりません。
その場合、これまでの手作業にシステムの費用が上乗せされるだけになります。
費用の大きさと同じくらい、取引先がどれだけ使うかが結果を左右します。
稟議で問われる3つの比較軸
社内稟議では、まず費用対効果をはっきり示すことが求められます。
2026年の調査では、BtoB商材導入の稟議に関わった国内BtoB企業の勤務者540人に、稟議が承認される際のポイントを尋ねました。
その結果、「明確な費用対効果」が43.7%で1位でした3。
WEB受発注に限った調査ではありませんが、上司や経営層が「いくら払って、何がいくら減るのか」を知りたがる傾向は読み取れます。
そこで、次の3つを並べて示す形をおすすめします。
<ul><li>費用の総額:初期費用、月額、オプションやカスタマイズ、連携にかかる費用を合わせたもの</li><li>減る手間と損失:転記、聞き直し、訂正にかけている時間を金額にしたもの</li><li>取引先が使う見込み:注文のうちWEB経由になりそうな割合</li></ul>
1つ目と2つ目だけでも回収期間は計算できます。
ただし3つ目を入れないと、その試算は「全取引先がWEBで発注してくれた場合」の上限値になります。
上司に説明するときは、3つ目の見込みを低めに置いても試算が成り立つかを示すと、判断の材料がそろいます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 減る可能性がある作業
- 打ち直し(転記)
- 減る可能性がある作業(ミスの対応)
- 聞き直し・訂正
- 注文がWEBで届いても残る作業
- 在庫や生産計画に照らして注文を受けられるかの判断
WEB受発注の費用は何で構成され、提供元やプランでどれだけ幅が出るか
初期費用と月額の目安と読み方
WEB受発注の費用は、大きく分けて2つです。
導入時に一度払う初期費用と、利用中に毎月払う月額(ランニングコスト)です。
ただし、初期費用に何が含まれるかは提供元によって違います。
そのため、金額だけでなく内訳まで見ないと比べられません。
公開されている目安の一例として、受発注システムを提供する竹田印刷は、SaaS型(インターネット経由で利用するサービス型)の受発注システムについて、初期費用30〜50万円、月額10〜20万円という目安を示しています1。
ただし同じページの本文には「導入までに50万円程度、毎月の運用に20万円程度」とも書かれており、表の幅とは一致しません1。
目安は1つの値として受け取らず、幅として見るのが安全です。
同社の料金ページには、自社製品の料金例が6件載っています。
初期費用は50万〜150万円、月額は14万〜40万円で、同じ製品の中でも3倍ほどの開きがあります2。
差が生まれるのは、プランとオプションの違いです。
プランには受注だけを扱うもの、受注と出荷まで扱うものなどがあります2。
どちらも1社の資料で、市場全体の相場を示すものではありません。
読み取れるのは、一つの提供元の中でも、何を選ぶかで初期費用・月額ともに数倍変わるということです。
複数の提供元の見積りを比べるときも、総額の大小より先に、どの機能が含まれた金額なのかをそろえる必要があります。
アカウント数・オプション・カスタマイズで増える費用
同社の解説によると、オプションの追加や独自のカスタマイズには別途費用がかかり、月額はアカウント数に応じて加算される従量課金制が一般的です1。
受注側にとっては、取引先や社内の利用者を増やすほど、月額が上がる可能性があるということです。
まず数社で試し、うまくいけば取引先を広げる進め方なら、広げた後の月額も最初に聞いておく必要があります。
そうしないと、試行時の費用だけで判断してしまいます。
オプションの例として、同社の料金ページには次のようなものが並んでいます2。
注文設定(承認機能、ファイル一括注文)、データ管理(仕入先マスタ、仕入先自動発注)、外部連携(出荷状況の一括更新、仕入先FAX連携)です。
名前や区分は製品ごとに違います。
それでも、「標準の画面で注文を受け付ける」部分と「自社の業務に合わせて周辺の作業までつなぐ」部分が、別の料金になっている場合がある、という読み方はできます。
冒頭の悩みに引きつけて考えます。
たとえば、Excelの注文書をまとめて送ってくる取引先が多いとします。
その場合、ファイルを一括で取り込めるかどうかで、転記の残り方が変わります。
その機能が標準なのか、オプションなのか、そもそもないのかで、効果も費用も変わります。
見積りで必ず確認する項目
見積りを取るときは、次の点を書面でそろえておくと、提供元どうしを比べやすくなります。
<ul><li>選んだプランで、受注だけでなく出荷までどこまで扱えるか</li><li>月額がアカウント数で変わる場合、取引先や社内利用者の数え方と、増やしたときの金額</li><li>自社の注文の形(FAX、Excelの注文書、繰り返し注文など)に必要な機能が、標準かオプションか</li><li>販売管理・生産管理などの基幹システムとデータをやりとりする方法と、その費用</li><li>取引先側に費用の負担や専用の設定が発生するか</li><li>カスタマイズが必要な場合の費用と、標準機能で代わりにできることがあるか</li></ul>
基幹システムとの連携費用と取引先側の負担は、先の2つの資料には記載がありません。
後から追加費用として出てくると、試算がずれてしまいます。
最初の見積りの段階で、「費用はゼロなのか、別料金なのか」をはっきりさせておきましょう。
| 費用の区分 | 内容 | 資料で確認できたこと |
|---|---|---|
| 初期費用 | 導入時に一度払う費用 | 目安は30〜50万円(本文では50万円程度)。同社製品の料金例6件では50万〜150万円 |
| 月額 | 利用中に毎月払う費用 | 目安は10〜20万円(本文では20万円程度)。料金例6件では14万〜40万円 |
| アカウント数による加算 | 利用者の数に応じて月額が増える | アカウント数に応じた従量課金が一般的とされる |
| オプション・カスタマイズ | 機能の追加や独自の作り込み | 別途費用。料金例ではプランとオプションで金額が変わる |
| 基幹システム連携 | 販売管理などとのデータのやりとり | 2つの資料に記載なし。見積りで確認 |
| 取引先側の負担 | 発注する取引先が払う費用や設定 | 2つの資料に記載なし。見積りで確認 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 初期費用
- 目安は30〜50万円(本文では50万円程度)
- 料金例6件では50万〜150万円
- 月額
- 目安は10〜20万円(本文では20万円程度)
- 料金例6件では14万〜40万円
- 加算される費用
- アカウント数に応じた従量課金
- オプション・カスタマイズは別途費用
注文件数・取引先数から、削減できる作業とミスの対応を金額に置き換える手順
自社で測る4つの数字
費用の側が見えてきたら、次は「それで何がいくら減るのか」という効果の側です。
他社の事例にある削減率を借りたくなるかもしれません。
しかし、注文の形も件数も取引先の数も違う会社の数字は、自社の説明には使えません。
自社の数字を測っておけば、上司から「その数字の根拠は」と聞かれても答えられます。
測るのは次の4つで、直近1〜2か月の実績から取ります。
<ul><li>注文件数:月あたりの注文の件数。
取引先別、届き方(FAX・メール・電話)別に分けておく</li><li>1件あたりの転記時間:注文を読み取り、システムや台帳へ入力し終えるまでの時間</li><li>聞き直し・訂正の件数と対応時間:取引先への問い合わせ、入力ミスの修正、出荷の差し替えなどにかかった時間</li><li>人件費の時間単価:転記を担当する人の給与や社会保険料などを、労働時間で割ったもの</li></ul>
転記時間の測り方は、何件かを時間を計って処理する方法でも、担当者に1週間ほど記録してもらう方法でもかまいません。
大切なのは、注文を受けられるかを判断する時間を転記時間に混ぜないことです。
この判断はWEB受発注にしても残るため、混ぜると効果を大きく見積もってしまいます。
取引先別に分けておくのは、次の節以降で使うためです。
注文の大半が数社に集中しているのか、多くの取引先から少しずつ届くのかで、試し方が変わります。
月間の削減額と回収期間の出し方
4つの数字がそろったら、月間の削減額は次の式で出せます。
月間の削減額 =(注文件数 × 1件あたりの転記時間 + 聞き直し・訂正の対応時間)× 時間単価
回収期間は、初期費用を「月間の削減額から月額を引いた残り」で割って求めます。
月間の削減額が月額を下回るなら、何か月たっても初期費用は回収できません。
稟議で最初に確かめられるのはこの点なので、式のまま示しておくと話が早く進みます。
仮の例で計算してみます。
以下は実績ではなく、計算の流れを示すための数字です。
月600件の注文があり、1件の転記に5分かかるとすると、月50時間になります。
聞き直し・訂正が月20件、1件あたり30分なら10時間で、合わせて60時間です。
時間単価を仮に3,500円とすると、月間の削減額は21万円になります。
これを、先の料金ページにある料金例の一つ(初期費用50万円・月額14万円)2と比べます。
月に残るのは7万円で、初期費用の回収には約7か月かかる計算です。
ただし、この計算は「すべての注文がWEB経由になり、転記と聞き直しがなくなる」前提に立っています。
この前提が崩れたときに結論がどう変わるかを、次に確かめます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 直近1〜2か月の注文件数と1件あたりの転記時間を測る
- 聞き直し・訂正の件数と対応時間を加える
- 時間単価を掛けて月間の削減額を出す
- 月間の削減額から月額を引く
- 初期費用をその残りで割り、回収期間を出す
取引先が使ってくれない場合・基幹システムと連携できない場合に効果はどう変わるか
WEB経由の注文比率で試算を割り引く
WEB受発注に切り替えても、取引先が画面から発注してくれなければ、その注文はこれまでどおりFAXやメールで届きます。
受け取った担当者はやはり転記し、聞き直しもなくなりません。
そこで、前の節で出した月間の削減額に、WEB経由の注文比率を掛けて割り引きます。
先の仮の例で、WEB経由の比率が80%なら、月間の削減額は16.8万円です。
月額14万円を引いた残りは2.8万円で、回収には約18か月かかります。
比率が60%なら削減額は12.6万円となり、月額を下回るため回収できない計算になります。
費用も注文件数も同じなのに、取引先がどれだけ使うかで結論が逆になります。
比率の見込みは、自社で想像して置くより、主な取引先に聞いて置くほうが確かです。
注文件数の多い取引先から順に、次のようなことを尋ねます。
WEBの画面で発注できそうか。
社内でFAXを使い続ける事情(発注書を紙で回覧して承認している、など)があるか。
切り替えるならいつ頃になりそうか。
取引先側に費用負担や設定作業が発生するかで答えが変わることもあります。
見積りで確認した内容を手元に置いて聞くと、話が具体的になります。
併用期間の手間も試算に入れます。
FAXとWEBの両方で注文が届く間は、担当者は2つの入り口を見なければなりません。
同じ注文がFAXとWEBの両方から届いていないかを見分ける確認も、新しく増える作業です。
基幹システム連携の要否の確認
もう一つ効果を左右するのが、WEB受発注で受けた注文データがその後どこへ行くかです。
受注を販売管理や生産管理のシステムに登録し、そこから出荷指示や生産計画へつなげている場合を考えます。
WEB受発注の画面で受けた注文を、担当者がもう一度販売管理へ打ち込むなら、転記の元がFAXから画面に変わっただけです。
読み取りの手間や聞き直しは減りますが、入力の時間は残ります。
試算では、この残る入力時間を削減額から差し引く必要があります。
連携が必要かどうかは、いまの受注の流れを1件追いかけると見分けられます。
注文を受けてから出荷するまでに、同じ品番・数量を何回、どのシステムや帳票に書き写しているかを数えます。
2回以上あるなら、WEB受発注を入れるだけでは減らない転記が残ります。
そのデータをファイルで取り出して基幹システムに取り込めるのか、専用の連携が必要なのか、それぞれの費用はいくらかを、見積りの段階で提供元に尋ねます。
連携まわりの機能を別メニューにしている提供元もあります。
先の料金ページでも、出荷状況の一括更新や仕入先FAX連携が、外部連携のオプションとして並んでいます2。
これは同社製品の例です。
ただ、「連携は標準に含まれているはず」と思い込まず、含まれる範囲を確かめる理由にはなります。
| 状況 | 残る作業 | 試算での扱い |
|---|---|---|
| ほとんどの注文がWEB経由で、基幹システムへ取り込める | 注文を受けられるか判断する確認 | 転記と聞き直しの時間をそのまま削減額に入れる |
| 一部の取引先がFAX・メールを続ける | その取引先分の転記と聞き直し、2つの入り口の確認 | 削減額にWEB経由の注文比率を掛ける |
| WEBで受けた注文を基幹システムへ手入力する | 基幹システムへの入力時間 | 削減額から残る入力時間を差し引く |
▼ 図の内容を文字で読む
- 全注文がWEB経由
- 月間の削減額21万円
- 月額を引いた残り7万円
- 回収は約7か月
- WEB経由の比率80%
- 月間の削減額16.8万円
- 月額を引いた残り2.8万円
- 回収は約18か月
- WEB経由の比率60%
- 月間の削減額12.6万円
- 月額を下回る
- 回収できない
全面導入・一部取引先から試行・見送りを選び分ける条件
3案の判断表
ここまでの試算と取引先への聞き取りがそろうと、導入の範囲を選べるようになります。
選択肢は3つあります。
すべての取引先を一度に切り替える全面導入、注文件数の多い一部の取引先から試す試行、そして今回は見送る選択です。
判断表の境目は会社ごとに違います。
何か月で回収できれば合格とするかは、社内の投資判断の基準に合わせて決めるものです。
受注の形の行には、少し説明が必要です。
品番・数量・納期を選べば済む定番品の注文は、画面の入力欄に収まりやすい注文です。
一方、個別受注は図面の版や仕様の確認、見積りのやりとりを経て決まるため、注文の前後にメールや電話の打合せが残ります。
WEB受発注に切り替えても減るのは最後の注文書の転記だけになりやすく、効果は小さく出ます。
試行を基本の案とするのは、取引先の利用比率という最も読みにくい数字を、実際に確かめられるからです。
全面導入した後で比率が伸びなければ、費用だけが全取引先分かかります。
見送りは、比率を低めに置くと試算が合わず、主な取引先の利用見込みも立たない場合の選択です。
見送った場合でも、測った数字は残ります。
注文件数が増えたときや取引先の状況が変わったときに、同じ式で計算し直せます。
一部取引先から試す場合の選び方
試行の相手は、注文件数が多く、切り替えに前向きな取引先から選びます。
件数の多い取引先ほど、試行の結果が削減額にはっきり表れ、上司にも説明しやすくなります。
その中でも、優先したい取引先があります。
手書きのFAXで聞き直しが多い取引先や、毎回同じ品番を繰り返し注文してくる取引先です。
こうした相手から始めると、転記と聞き直しがどう減るかを短い期間で確かめられます。
反対に、注文のたびに仕様の打合せが要る取引先は、試行の効果を測りにくいため後回しにします。
試行の間も費用はかかります。
アカウント数で月額が変わる契約なら、試行する数社分の月額で始めます。
あわせて、広げたときの月額も見積りでそろえておきます。
そうすれば、試行の結果から全面導入の試算をそのまま作れます。
| 条件 | 全面導入が合う | 一部取引先から試行が合う | 見送りが合う |
|---|---|---|---|
| WEB経由比率の見込み | 主な取引先の多くが切り替えに前向き | 前向きな取引先と慎重な取引先が混在 | 主な取引先の利用見込みが立たない |
| 注文の集中度 | 取引先ごとの差が小さく、一斉に切り替えやすい | 注文件数の多い少数の取引先に偏っている | 件数が少なく転記の負担が小さい |
| 受注の形 | 定番品・リピート品の注文が中心 | 定番品と個別仕様の注文が混在 | 図面や仕様の打合せを伴う個別受注が中心 |
| 基幹システム連携 | 連携の方法と費用が見積りで確定している | 連携は後から検討できる | 連携しないと転記が減らず費用が合わない |
| 回収期間 | 比率を低めに置いても回収できる | 比率次第で回収できる | 比率を高く置いても回収できない |
導入費用を抑える補助制度は使えるか
通常枠の補助率・補助額・対象経費
中小企業・小規模事業者がソフトウェアやクラウドサービスを導入する際の補助制度に、「デジタル化・AI導入補助金」があります。
中小機構が事務局サイトを運営しています。
その通常枠では、補助率は経費の1/2以内です。
最低賃金に近い水準で働く従業員が一定割合以上いるなどの条件を満たすと、2/3以内になります4。
補助額は、ソフトウェアが持つ業務プロセスの数で区分されています。
1プロセス以上なら5万円以上150万円未満、4プロセス以上なら150万円以上450万円以下です4。
上限の450万円は4プロセス以上の場合に限られます。
導入する製品がいくつのプロセスに当たるかで、使える区分が変わります。
対象経費には、ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)が含まれます。
機能拡張、データ連携ツール、セキュリティ、導入時のコンサルティング・設定・研修・保守なども挙がっています4。
WEB受発注をクラウドで使う場合、初期費用だけでなく月額の一部も対象になりうるため、回収期間の計算に関わります。
対象になるのは1種類以上の業務プロセスを持つソフトウェアで、汎用的なプロセスだけのものは対象外です4。
申請前に確認すること
補助金は、使える前提で試算を組まないほうが安全です。
まず補助なしで回収期間を出し、補助を受けられた場合にどこまで短くなるかを別に示します。
こうしておけば、採択されなかったときにも判断が崩れません。
補助金を使う場合は、導入を予定している製品が補助の対象になるか、どの区分に当たるかを、導入前に確かめておきます。
確認先は、申請を支援する事業者や事務局の案内です。
公募の時期や締切、交付が決まる前に契約・発注したものの扱いも、公募回ごとの案内で確認が必要です。
申請の時期と試行の開始時期が合うかも、あわせて考えておく必要があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 補助率
- 経費の1/2以内
- 条件を満たすと2/3以内
- 補助額(業務プロセス数で区分)
- 1プロセス以上は5万円以上150万円未満
- 4プロセス以上は150万円以上450万円以下
- 対象経費
- ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)
- 機能拡張、データ連携ツール、導入時のコンサルティング・設定・研修・保守
導入後に効果が出ているかをどの指標でいつ確認するか
導入前後で比べる3つの指標
試行を始めたら、導入前に測った数字を同じ方法でもう一度測ります。
比べるのは次の3つです。
<ul><li>1件あたりの転記時間:WEB経由の注文について、基幹システムへの入力を含めて何分かかっているか</li><li>聞き直し・訂正の件数:取引先への問い合わせと、入力ミスの修正が何件あったか</li><li>WEB経由の注文比率:試行の相手先からの注文のうち、WEBで届いた割合</li></ul>
導入前と比べるときは、同じ取引先、同じ長さの期間でそろえます。
繁忙期と閑散期を比べたり、試行していない取引先の数字を混ぜたりすると、変化がシステムによるものか分からなくなります。
確認の時期は一例です。
試行開始から1か月後にWEB経由の比率と使い方のつまずきを見て、3か月後に3つの指標すべてを試算の前提と比べる形が考えられます。
最初の1か月は取引先も自社の担当者も操作に慣れていない時期を含むため、転記時間だけで判断すると効果を小さく見誤るおそれがあります。
基準に届かなかった場合の判断
3か月後に試算と比べて届かなかったときは、どの数字が届いていないかで次の手が変わります。
WEB経由の比率が低いなら、原因は取引先の側にあります。
操作が分かりにくいのか、社内の承認の流れが紙のままなのか、FAXのほうが早いと感じているのかを聞きます。
そのうえで、説明の場を設けるなどの働きかけで変わるかを見ます。
働きかけても比率が上がらない取引先は、無理に移しません。
FAXを残したままで試算が成り立つかを計算し直します。
比率は上がっているのに転記時間が減っていないなら、原因は社内の流れにあります。
WEBで受けた注文を基幹システムへ打ち直していないか、確認の手順が以前のまま二重になっていないかを見直します。
連携やオプションで解消できるなら、その費用を加えて回収期間を出し直します。
どちらの手を打っても試算が合わない場合は、試行の範囲で止める、あるいは見送るのも一つの結論です。
導入前と同じ式で数字を示せば、続けない理由も上司に説明できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 導入前:直近1〜2か月の4つの数字を測る
- 試行開始:注文件数の多い前向きな取引先から
- 1か月後:WEB経由の比率と使い方のつまずきを確認
- 3か月後:3つの指標を試算の前提と比べ、続けるか見直すかを判断
注文の届き方や受注後の書き写しは、毎日の作業として慣れてしまうと、どこに時間がかかっているかが社内からは見えにくくなります。
相談では、自社の注文の流れを一緒にたどり、試算に入れるべき作業と、見積りで確認しておくべき項目を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 費用 | 初期費用・月額・オプション・連携・取引先側の負担を見積りでそろえる |
| 効果 | (注文件数×転記時間+聞き直し・訂正時間)×時間単価で月間の削減額を出す |
| 割引 | WEB経由の注文比率を掛け、基幹システムへの手入力が残るなら差し引く |
| 回収期間 | 初期費用÷(月間の削減額−月額)。削減額が月額未満なら回収できない |
| 導入範囲 | 注文件数が多く前向きな取引先から試行するのが基本 |
| 補助金 | 補助なしで試算が成り立つかを先に確かめる |
| 導入後 | 同じ取引先・同じ期間で3つの指標を比べる |
試行の結果が出た後は、取引先への働きかけを続けるか、連携を加えるか、範囲を広げるかの判断が重なり、数字の読み方で結論が変わります。 相談では、試行で測った数字をもとに、次に広げる取引先の候補と、出し直した回収期間の前提を確かめられます。
よくある質問
WEB受発注の月額費用は、取引先が増えると上がるのですか。
上がる場合があります。
竹田印刷の解説では、アカウント数に応じて月額が加算される従量課金制が一般的とされています1。
ただし、これは1社の解説で、すべての製品に当てはまるわけではありません。
取引先1社を1アカウントと数えるのか、社内の利用者を数えるのかも契約によって違います。
試行の段階で、取引先を広げたときの月額まで見積りに入れておくと、後から試算がずれません。
取引先が昔ながらのFAXをやめない場合、どこまで併用してよいですか。
何社まで、何割までという決まった基準はありません。
判断の目安になるのは、FAXを続ける取引先の分の転記が残る前提でも回収期間が成り立つかどうかです。
その取引先の注文件数が多く、試算が合わなくなるなら、操作の説明や切り替え時期の相談といった働きかけを優先します。
併用している間は、同じ注文がFAXとWEBの両方から届いていないかの確認も必要になります。
基幹システムとの連携が必要かどうかは、導入前にどう見分けますか。
注文を受けてから出荷するまでに、同じ品番・数量を何回、どのシステムや帳票に書き写しているかを数えます。
2回以上あるなら、WEB受発注を入れても基幹システムへの入力が残ります。
その場合は、データをファイルで取り込めるのか、専用の連携が必要なのか、その費用はいくらかを見積りで確認し、残る入力時間を試算から差し引きます。
導入費用に補助制度を使う場合、いつまでに何を確認しておくべきですか。
導入前に、予定している製品が補助の対象になるか、どの区分に当たるかを確かめます。
デジタル化・AI導入補助金の通常枠は、補助率が1/2以内(条件により2/3以内)で、補助額はプロセス数で区分されています4。
公募の時期や締切、交付が決まる前に発注したものの扱いは、公募回ごとの案内で確認が必要です。
試算は補助なしで成り立つかを先に見ておきます。
発注側(自社が発注する立場)と受注側(自社が注文を受ける立場)で、見積りの観点はどう変わりますか。
本記事は、注文を受けて転記する受注側を中心に説明しました。
自社が発注する立場なら、減らしたい作業は、発注書の作成・送付や納期回答の確認になります。
また、WEB経由の比率に当たるのは「仕入先がその仕組みで受け付けてくれるか」です。
立場が変わっても、作業時間を測って金額に置き換え、相手が使う割合で割り引くという考え方は同じです。
- 1 出典:株式会社竹田印刷「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2026年)
- 2 出典:株式会社竹田印刷「TS-BASE 受発注 料金ページ」(2026年)
- 3 出典:株式会社ネオマーケティング「BtoB企業の社内稟議・承認プロセス実態調査2026」(2026年)
- 4 出典:中小機構「デジタル化・AI導入補助金 通常枠」(2026年度)
画像の出典元
- A business professional organizing documents at a busy office desk, emphasizing productivity./Photo by Mikhail Nilov on Pexels