◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 流通BMSで変わるのは受信の経路とデータ形式で、注文を確認して受注入力し出荷を連絡する業務の流れは残る
- 基本形は発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務・8種のメッセージで、受注側が準備する範囲は取引先と協定シートで合意する
- 通信手順はS-S型(ebMS・AS2)とC-S型(JX手順)があり、取引先の手順と合わせて決める
- 協定と通信環境の準備は並行でき、項目対応の整理と接続テストを経て取引先1社ずつ切り替える
- 混在期間は取引先ごとの受信経路を台帳で管理し、受注入力以降を共通にする運用を提案する
目次

電話回線のJCA手順から流通BMSへ、受注の受け方は何が変わるのか
取引先から「今後は流通BMSで注文を送る」と言われても、今のJCA手順やFAXでの受注が何に置き換わるのかは見えにくいものです。
変わるのは主に通信とデータの持ち方です。
電話回線でやり取りしていた文字データが、インターネット上のXMLになります。
受注側が扱う範囲は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務・8種のメッセージが基本形です。
まず取引先と協定シートで扱う範囲と通信手順を決め、接続テストを経て取引先1社ずつ切り替えます。
旧手順の取引先が残る期間は、受信経路ごとに分けて管理する方法をおすすめします。
通信手段と送受信方式の違い
JCA手順は、1982年に通商産業省が流通業界の標準通信手順(J手順)として制定したものです3。
電話回線を使い、送信と受信を交互に切り替える半二重通信で、注文などのデータをやり取りしてきました6。
流通BMSはインターネット回線を使い、送信と受信を同時に行えます6。
GS1 Japanも、流通BMSをインターネットを利用する新しいEDI(企業間の電子データ交換)と位置づけています3。
受注側にとって、この違いはまず「注文がどの線を通って届くか」が変わることを意味します。
電話回線で接続していた受信の仕組みは、そのままではインターネット経由のやり取りに使えません。
受信に使う機器や通信ソフト、取引先との接続設定は、流通BMSに合わせて見直すことになります。
TISIのコラムは、流通BMSで使う回線を「遅くても1Mbps」のブロードバンド回線と説明しています6。
公開時期が分からないベンダーの説明なので回線選びの基準にはできません。
それでも、電話回線とは前提がまったく違う通信だという点は分かります。
データ形式の違い
届くデータの形も変わります。
JCA手順で扱うのは英数字とカナのテキストで、流通BMSではXMLという形式になります6。
XMLは、データの項目ごとに名前の付いたタグで値を囲む書式です。
どの値が何を表すのかを、データ自体が持っています。
この違いが表に出るのは、受け取ったデータを自社の受注システムへ取り込む場面です。
旧手順のテキストを前提に作った取り込み処理は、XMLのデータをそのまま読めるとは限りません。
流通BMSのメッセージの項目と、自社の受注データの項目(取引先コード、商品コード、数量、納品日など)を対応させる作業が必要です。
この対応づけを誤っても、受信自体は成功します。
そのため問題は、受注データの一部が空欄になる、別の欄に値が入るといった形で、後工程で初めて見つかります。
切替前の準備で最も丁寧に確かめたいのはこの部分です。
変わらない受注業務の流れ
一方で、業務の流れそのものは流通BMSに移っても変わりません。
注文を受け取り、内容を確かめて受注として入力し、出荷を準備して取引先へ知らせる、という流れです。
流通BMSが標準として定めているのはメッセージと通信の決まりです1。
在庫の引き当て方や出荷の判断のしかたまで置き換えるものではありません。
たとえば、毎朝JCA手順で届く注文を基幹システムへ取り込み、在庫を引き当てて出荷指示を出している担当者がいるとします。
流通BMSに切り替わっても、在庫を見て出荷を決める作業はこれまでどおりです。
変わるのは次の3か所です。
注文が届く入口、届いたデータを取り込む処理、そして出荷などの連絡をデータで返す場合の出口です。
切替の準備は「受注業務の作り直し」ではなく「入口と出口の付け替え」と捉えるとよいでしょう。
そうすると、社内のどこを誰が担当するかを分けやすくなります。
FAXや電話で受けて手で入力している注文は、事情が少し違います。
紙や口頭の内容を人が読み取って入力していた工程が、データの取り込みに置き換わります。
入口の付け替えだけでは済まず、入力担当者の作業そのものが変わります。
どの注文が流通BMSに移るかは、発注側がどの経路で送るか次第です。
取引先がFAXや電話の注文も流通BMSへ寄せるつもりなのかを聞いておくと、自社で変わる範囲を見積もりやすくなります。
| 比べる点 | JCA手順 | 流通BMS |
|---|---|---|
| 通信手段 | 電話回線 | インターネット回線 |
| データ形式 | 英数字とカナのテキスト | XML |
| 送受信方式 | 半二重通信(送受信を交互に行う) | 送信と受信を同時に行える |
▼ 図の内容を文字で読む
- 変わる入口
- 注文が届く入口
- 変わる処理と出口
- 届いたデータを取り込む処理
- 出荷などの連絡をデータで返す場合の出口
- 変わらない判断
- 在庫を見て出荷を決める作業
取引先の要請はなぜ今届くのか:INSネット終了と導入の広がり
INSネット(ディジタル通信モード)の終了
取引先が切り替えを持ちかけてくる背景には、電話回線側の事情があります。
NTT東日本・西日本のINSネット(ISDN)のディジタル通信モードは、2024年から地域ごとに段階的にサービスを終了しました7。
ISDNを前提に旧来の手順でEDIを続けてきた企業にとって、この終了は通信手順そのものを見直すきっかけになっています。
受注側の負担の大きさは、2016年の時点ですでに語られていました。
日経クロステックの記事で、約500弱の小売店とEDIを利用するピップグループは、ISDN終了に向けて通信手順を変えるのは大変だと述べています5。
同じ記事は、流通BMSの導入実態調査(2015年度)をもとに、旧来のJCA手順や全銀手順が多く使われていると伝えています5。
発注側が切り替えを決めると、その発注側とつながる受注側に順番に要請が届きます。
受注側から見ると、取引先の数だけ要請を受ける構図です。
では、自社の旧手順はいつまで使えるのでしょうか。
終了後の補完策の期間や内容は、NTTの移行案内のページには記載がありません7。
はっきりしない期限から逆算して計画を立てるより、取引先ごとに次の2点を聞くほうが確実です。
旧手順での受注をいつまで続けられるのか、流通BMSへいつ切り替えたいのか、です。
流通BMSへの移行が必須かどうかも取引先との取り決めで変わり、一律には言えません。
導入企業数から見る広がり
GS1 Japanなどによる2025年の推計では、流通BMSを導入した卸・メーカーは21,600社以上で、直近の半年間に700社以上増えました1。
推計値であり、自社の取引先が要請してくるかどうかを示す数字ではありません。
ただ、要請が一部の取引先に限った例外ではないことは読み取れます。
この広がりを踏まえると、1社目の要請に応えるときに、2社目以降も同じ仕組みで受けられる形を意識しておく意味があります。
流通BMSは、消費財流通業界で唯一の標準となることを目標に策定されている仕様です1。
標準に沿って一度整えた受信と取り込みの仕組みは、同じ標準で送ってくる別の取引先にも活かせる余地があります。
要請のたびに準備をやり直す事態を避けやすくなります。
受注側が受け取るメッセージと返すメッセージはどこまでか
基本形の6業務・8種メッセージ
流通BMSの基本形が対象とする業務は、発注、出荷、受領、返品、請求、支払の6つで、標準メッセージは8種です2。
百貨店業界向けには別に26種のメッセージがあり2、業界によって扱う範囲は大きく違います。
受注側から見ると、起点は取引先から届く発注です。
受けた注文に応じて商品を出荷し、取引先が受け取ります。
場合によっては返品が発生し、請求と支払で取引が締めくくられます。
6つの業務は、ひとつの注文から代金の決済までをデータでつなぐために並んでいると捉えると、全体像をつかみやすくなります。
ただし、受注側が必ず対応すべき範囲は、標準仕様だけでは決まりません。
8種の内訳や、業務ごとにどちらが送り手になるのかは、取引先と扱う範囲を詰める段階で、標準仕様書の本体とあわせて確かめることになります。
ここを推測で決めてしまうと、準備する取り込み処理や返信の範囲を読み違えます。
範囲は、次に述べる取引先との合意で確定させます。
取引先ごとの範囲を協定シートで決める
取引先ごとの範囲を決める場になるのが、協定シートです。
流通BMS協議会は、導入企業同士が導入の前提となる事項を書き込む協定シートを提供しています4。
受注側としては、このシートを使って次の2点を一つずつ合意しておくことをおすすめします。
取引先がどのメッセージを流通BMSで送ってくるのか、自社から何を返すことを求めているのか、です。
たとえば、取引先Aは当面は発注だけを流通BMSで送り、請求はこれまでの方法で続けたいと考えているとします。
取引先Bは、最初から出荷や請求の連絡までデータで受け取りたいと考えているとします。
同じ「流通BMSでお願いします」という要請でも、受注側が準備する範囲はまったく違います。
範囲を確かめないまま作業を始めるとどうなるでしょうか。
Aのためには使われない返信の仕組みを作り込み、Bが求める返信は本番直前まで用意できない、ということが起こります。
業務をどの順で流通BMSへ移すかについても、決まった順番を前提にしないほうがよいでしょう。
取引先の求める範囲に合わせて、協定の中で決めていくのが現実的です。
受注側の準備は、合意した範囲の分だけで足ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注を受ける
- 商品を出荷する
- 取引先が受け取る
- 返品(場合による)
- 請求と支払
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先A
- 当面は発注だけを流通BMSで送る
- 請求はこれまでの方法で続ける
- 取引先B
- 最初から出荷の連絡までデータで受け取りたい
- 請求の連絡までデータで受け取りたい
- 受注側の準備
- 協定で合意した範囲の分だけ用意する
自社の条件で対応方法を選ぶ:通信手順とシステムの持ち方
ebMS・AS2・JX手順の違い
流通BMSは、メッセージだけでなく、通信プロトコルとセキュリティも合わせて定めたEDIの標準仕様です1。
通信の方式は大きく2つに分かれます。
1つは、サーバ同士が直接やり取りするサーバ間(S-S)型で、ebMSとAS2という国際標準の手順が採用されています3。
もう1つは、クライアントがサーバに接続するクライアント・サーバ(C-S)型で、SOAP-RPCという仕組みを使ったJX手順が開発・公開されています3。
受注側の担当者にとって大切なのは、この選択を自社だけでは決められないことです。
通信は双方が同じ手順でつながって初めて成り立ちます。
そのため、取引先がどの手順で受注側とつないでいるかが、自社の選択肢を大きく左右します。
S-S型なら、自社側にも相手からの接続を常に受けられるサーバ環境が要ります。
C-S型なら、どちらがサーバ側を受け持つのかを含めて取引先と合わせることになります。
複数の取引先が別々の手順を採っている場合は、受注側が複数の手順に対応する必要も出てきます。
自社対応か外部サービスかを選ぶ4つの軸
通信手順の見当がついたら、次は流通BMSでの送受信を自社のシステムで持つか、外部のEDIサービスを利用するかです。
TISIのコラムは、流通BMSへの移行にはシステムの大掛かりな入れ替えが必要になるとして、EDIサービスのベンダーへの依頼を勧めています6。
これはEDIサービスを提供する側の見解です。
受注側一社一社の事情を踏まえた結論ではないため、自社の条件に当てはめて考える必要があります。
判断の手掛かりとして、取引先数、既存システム、メッセージ範囲、運用体制の4つの軸で、それぞれの選択肢を検討する場面を整理しました。
編集部による整理で、費用や優劣を比べた結果ではありません。
判断が難しくなるのは、軸どうしが逆の方向を指すときです。
たとえば、流通BMSで接続する取引先はまだ1社だが、基幹システムには改修の余地があり、社内にシステム担当者もいる、という場合です。
取引先数だけ見れば外部サービスで始めたくなります。
既存システムと体制を見れば、自社で持つこともできそうです。
このときは、要請してきた取引先の切替希望時期と、ほかの取引先からも要請が続きそうかを比べて決めることをおすすめします。
切替を急ぐなら、まず外部サービスで受注を止めないことを優先し、接続先が増えた段階で持ち方を見直す、という順序もとれます。
どちらを選んでも、自社に残る仕事があります。
外部サービスに何を任せられるかはサービスごとの条件次第です。
ただ、少なくとも取引先との協定と、受け取った注文をどう処理するかの判断は自社が担います。
これを最初から前提にしておくと、外部サービスを選んだ場合でも社内の準備を見落としにくくなります。
| 型 | 手順 | 接続の形 |
|---|---|---|
| サーバ間(S-S)型 | ebMS・AS2(国際標準) | サーバ同士が直接やり取りする |
| クライアント・サーバ(C-S)型 | JX手順(SOAP-RPCを使用) | クライアントがサーバへ接続する |
| 軸 | 自社システム改修を検討する場面 | 外部のEDIサービス利用を検討する場面 |
|---|---|---|
| 取引先数 | 流通BMSでつなぐ取引先が多く今後も増える見込みがある | 接続する取引先が当面は限られる |
| 既存システム | 受注システムに改修の余地がある | 基幹システムの改修が難しい |
| メッセージ範囲 | 発注に加えて出荷や請求など返す範囲が広い | まず発注の受信から始める |
| 運用体制 | 通信と受注データの両方を見られる担当者が社内にいる | 社内の担当者が限られ通信の運用を任せたい |
▼ 図の内容を文字で読む
- サーバ間(S-S)型
- ebMS
- AS2
- 自社にも常に接続を受けられるサーバ環境が要る
- クライアント・サーバ(C-S)型
- JX手順(SOAP-RPCを使用)
- どちらがサーバ側を受け持つのかを取引先と合わせる
- 選び方の前提
- 取引先の採る手順が自社の選択肢を左右する
- 複数の手順に対応する場合もある
要請から切替まで:取引先との協定・接続テスト・本番の進め方
導入ガイドラインと協定シート
進め方の公式な手引きとして、流通BMS協議会は導入ガイドラインを公開しています。
概要編・業界編・システム編の3つで構成され、導入にあたって準備すべき内容や手順などを説明する資料です4。
業務担当者とシステム担当者が分担して読み、自社に関係する準備を洗い出す出発点にできます。
受注側の作業は、次の順で進めることを提案します。
公式資料の構成と、取引先1社ずつ日程を合わせる必要があるという受注側の発言を踏まえた、編集部の整理です。
この順序で押さえておきたいのは、最初に通信手順を確かめる理由です。
手順によって自社に要る環境が変わるため、ここが決まらないと、協定の場で自社が何に対応できるのかを答えられません。
並行して進められる作業
工程をすべて一列に並べる必要はありません。
取引先との協定と、社内の通信環境の準備は並行して進められます。
通信手順が決まった時点で、環境づくりに取りかかれるからです。
逆に、項目対応の整理は、協定で範囲が決まってから取りかかるほうが手戻りが少なくなります。
どのメッセージを扱うかが決まらないうちに項目を突き合わせると、使わないメッセージの分まで作業することになるためです。
接続テストは、協定と環境の両方がそろって初めて意味を持ちます。
テストでは、通信がつながるかだけを見て終わらせないことが大切です。
受け取った注文が自社の受注データとして正しく入るか、返すメッセージが協定で合意した内容になっているかまで確かめます。
そうしておけば、本番後に取引先との間で食い違いを探す手間を減らせます。
取引先1社ずつの日程調整
取引先が複数あると、切替の日程が最も悩ましい問題になります。
先のピップグループは、EDIの切り替えは小売店1社ずつ日程を合わせて取り組む必要があり、残りの移行が期限直前に集中すると間に合わない取引先が出ると述べています5。
2016年の発言です。
ただ、受注側が相手の数だけ日程調整を抱える構造は、取引先ごとに切り替える限り同じです。
要請を受けた段階で、取引先の一覧に切替希望時期を書き込んでおくと、時期が重なる取引先を早めに見つけられます。
見つかれば、接続テストの時期をずらしてもらう相談も持ちかけやすくなります。
先に切り替えた取引先で整理した項目対応は、同じ範囲のメッセージを扱う次の取引先にも活かせます。
最初の1社にかける手間は、2社目以降の準備にもつながります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 通信手順の確認(取引先が採る手順と自社の対応可否)
- 取引先との協定(協定シートで範囲と前提を合意)
- 項目対応の整理(メッセージの項目と自社の受注データを突き合わせる)
- 通信環境の準備(選んだ手順で接続できる環境を整える)
- 接続テスト(受信から受注入力・返信まで確かめる)
- 本番切替(取引先と日程を合わせて1社ずつ)
移行期間中、従来手順の取引先と流通BMSの取引先が混在するときの運用
取引先ごとの受信経路の台帳
切替が取引先ごとに進む以上、旧手順で注文を送ってくる取引先と、流通BMSで送ってくる取引先が並ぶ期間は避けられません。
2016年の記事では、ピップグループの取引先のうち、IP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行していたのは10%強でした5。
当時の1社の状況で、いまの業界全体の割合ではありません。
それでも、取引先は一斉には切り替わらないことがよく分かります。
この期間に起きやすいのは、ある取引先の注文がどこから届くはずなのかが、担当者によってあいまいになることです。
注文が見当たらないとき、旧手順と流通BMSのどちらの受信を調べるべきかが分からなければ、確認に時間がかかります。
そこで、取引先ごとに受信経路を一覧にした台帳を持つことを提案します。
台帳には、たとえば次の項目を置きます。
・取引先名と現在の受信経路(旧手順か流通BMSか)
・切替予定時期と、切替日をまたぐ注文をどちらの経路で受けるか
・協定で合意したメッセージの範囲
・旧手順での受注をいつまで続けられるかの確認結果
最後の項目は、とくに重要です。
INSネットのディジタル通信モードは2024年から段階的に終了しており7、旧手順での受信をいつまで続けられるかは取引先や通信環境ごとに異なります。
台帳で混在を管理する方法は、旧手順での受信がまだ続けられることが前提です。
継続できない取引先が出てきたら、その取引先の切替を優先する判断につなげます。
受注入力以降の共通化
台帳と組み合わせたいのが、受注入力以降の処理を経路にかかわらず共通にする考え方です。
旧手順で届いた注文も流通BMSで届いた注文も、受信の段階で自社の受注データの形にそろえます。
そのうえで、同じ受注入力・在庫引当・出荷指示へ流します。
経路の違いを受信部分に閉じ込めておけば、受注担当者は取引先ごとに別の画面や手順を使い分けずに済みます。
この形で減るのは、経路ごとに異なる受注処理を担当者が使い分ける手間と、そこで起きやすい転記や判断のずれです。
一方で、経路ごとに受信できているかの確認は残ります。
注文が受信の手前で止まっていれば、受注入力以降をいくら共通にしても気づけません。
そのため、旧手順と流通BMSのそれぞれで、その日に届くはずの取引先から受信があったかを台帳と照らして確かめる運用を組み合わせます。
旧手順の取引先がすべて切り替われば、受信部分の旧手順側を外すだけで移行を終えられます。
受注入力以降には手を入れずに済む点も、この考え方の利点です。
なお、台帳も共通化も編集部の提案であり、混在期間の運用として標準で定められた方法ではありません。
自社の受注システムの作りに合わせて、どこで受注データの形をそろえるかを決めてください。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受信(経路ごと)
- 旧手順での受信
- 流通BMSでの受信
- 受注データへそろえる
- 取引先ごとの台帳で経路を照合
- 自社の受注データの形に変換
- 共通の処理
- 受注入力
- 在庫引当・出荷指示
取引先ごとに扱うメッセージの範囲や通信手順が異なります。そのため、自社の受注システムのどこを付け替えるかを社内だけで見積もるのは難しい作業です。
今の受注手順と取引先からの要請内容を並べて、受信の入口・取り込み・返信のうち変える必要がある箇所と、取引先と協定で決めておくべき事項を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 変わる部分 | 受信の経路とデータ形式(電話回線のテキスト→インターネット上のXML)。受注業務の流れは残る |
| 扱う範囲 | 基本形は6業務・8種。取引先ごとに協定シートで合意した範囲を準備する |
| 通信手順 | S-S型(ebMS・AS2)とC-S型(JX手順)。取引先の手順と合わせて決める |
| システムの持ち方 | 取引先数・既存システム・メッセージ範囲・運用体制の4軸で検討する |
| 切替の進め方 | 協定と通信環境の準備を並行し、項目対応の整理・接続テストを経て1社ずつ切り替える |
| 混在期間 | 取引先ごとの受信経路を台帳で管理し、受注入力以降を共通にする |
切替が取引先1社ずつ進むと、旧手順と流通BMSの受信が並ぶ期間の運用を、自社の体制に合わせて設計する必要があります。 取引先ごとの受信経路の台帳の作り方と、受注入力以降を共通にする場合にどこで受注データの形をそろえるかを、自社の条件に沿って検討できます。
よくある質問
取引先が流通BMSのうち発注メッセージしか使わない場合、受注側も出荷や請求のメッセージまで対応が必要ですか。
受注側が必ず対応すべき範囲は、標準仕様だけで一律には決まりません。
その取引先と協定シートで合意した範囲が、準備の対象です。
発注だけで合意したなら、まず発注の受信と自社の受注データへの取り込みを整えます。
あわせて、出荷や請求まで広げる予定があるかを聞いておくと、後から範囲が広がったときの手戻りを抑えられます。
FAXや電話で受けている注文も、流通BMSに置き換えられますか。
流通BMSで受けられるのは、発注側が流通BMSで送ってくる注文です。
FAXや電話の注文が置き換わるかどうかは、取引先がその注文を流通BMSへ移すかどうかで決まります。
置き換わる場合は、人が読み取って入力していた工程がデータの取り込みに変わります。
受信経路だけでなく、入力担当者の作業も見直す必要があります。
ebMS・AS2とJX手順は、受注側がどちらかを自分で選べますか。
自社だけでは決められません。
通信は双方が同じ手順でつながって初めて成り立つため、取引先が採っている手順と合わせる必要があります。
S-S型(ebMS・AS2)とC-S型(JX手順)のどれを使うかは、取引先と協定で合意します。
取引先が複数ある場合、通信手順は取引先ごとに別々に用意するのですか。
取引先が同じ手順を採っていれば、同じ手順への対応で受けられる余地があります。
流通BMSが標準仕様であるためです。
ただし、接続の設定や協定の内容は取引先ごとに決めます。
また、取引先によって採る手順が異なれば、受注側は複数の手順に対応する必要が出てきます。
旧手順(JCA手順など)の取引先が残るあいだ、受注入力の担当はどう分ければよいですか。
受信の確認は経路ごとに分け、受注入力以降は分けない形をおすすめします。
取引先ごとの受信経路を台帳で管理し、受信の段階で受注データの形をそろえれば、入力担当者は経路を意識せずに同じ手順で処理できます。
経路ごとに受信があったかの確認は、台帳と照らして別に行います。
これは編集部の提案で、標準として定められた分け方ではありません。
自社の基幹システムの改修が難しい場合、外部サービスの利用で済ませられますか。
外部のEDIサービスの利用は選択肢の一つで、ベンダーのコラムでも勧められています。
改修が難しいことは外部サービスを検討する理由になります。
ただ、取引先数・メッセージ範囲・運用体制もあわせて考える必要があります。
また、外部サービスを使っても、取引先との協定と受注の判断は自社に残ります。
何をサービスに任せられるかは、サービスごとの条件で確かめてください。
- 1 出典:一般財団法人流通システム開発センター(GS1 Japan)/流通システム標準普及推進協議会「流通BMS トップページ(第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計)」(2025年)
- 2 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様(基本形・百貨店版)」(2025年)
- 3 出典:GS1 Japan(一般財団法人流通システム開発センター)「通信制御手順」(記載年不明)
- 4 出典:GS1 Japan(流通BMS協議会)「導入ガイドライン」(記載年不明)
- 5 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 6 出典:TISI株式会社(TISインテックグループ)「JCA手順とは?流通BMSへの移行が迫られる流通業界の実情」(公開年不明)
- 7 出典:NTT東日本・NTT西日本(フレッツ)「固定電話(加入電話・INSネット)のIP網移行」(2024年)
画像の出典元
- Businessman focused on data analysis on a dual monitor setup in a modern office setting./Photo by Alfredo Lau-Tam on Pexels