◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- オンライン受発注で減りうるのは、注文の転記と、そこから生じる確認電話・訂正で、発注量の判断や例外的な連絡の時間は残る。
- 平均51.4%減は企業間データ連携の実証に参加した中小企業の平均で、拠点別や発注側・受注側別の削減幅を示す数字ではない。
- 効果の上限は取引先の対応で決まるため、電子化できる取引先への注文の分だけで、作業ごと・拠点別に削減見込みを概算する。
- 削減見込みと導入の負担を拠点別に並べ、取引先の対応状況、注文件数、手順の違いの3条件で、一括か一部から始めるかを選ぶ。
目次

拠点ごとの注文業務を作業に分けると、オンライン化で減る作業と残る作業が見える
拠点ごとに仕入先へ電話やFAXで注文を出し、本部では各拠点の控えをExcelへ打ち直す。
届いたかを確かめる電話や、数量違いの訂正にも、毎日少しずつ時間が取られていきます。
オンライン受発注にすると、こうした転記や訂正は減る可能性があります。
ただし、公的な実証で示された中小企業の業務時間の平均51.4%減は、企業間でデータをつないだ場合の値です。
取引先が対応しなければ、この効果は出ません1。
自社の削減見込みは、注文の流れを作業に分け、件数と所要時間を拠点別に測ったうえで、電子化できる取引先の分だけを数えて概算します。
そのうえで展開の負担と並べ、一部の拠点から試すか、全拠点で一括に進めるかを選びます。
注文の流れを6つの作業に分ける
「注文業務に時間がかかる」と感じていても、ひとまとめのままでは、オンライン受発注でどこが減るのかが見えません。
拠点の担当者が仕入先へ注文を出してから、本部が請求書を確かめるまでを順に追うと、注文の作成、送信、受領確認、訂正、集計、請求照合の6つの作業に分けられます。
たとえば、ある営業所の担当者が在庫を見て発注書を作り、仕入先へFAXで送るとします。
届いたかどうか不安なので、夕方に仕入先へ電話を入れます。
翌日、仕入先から数量の問い合わせが来て、訂正した発注書を送り直します。
月末には本部の担当者が各拠点から集めた注文の控えをExcelへ打ち込み、仕入先から届いた請求書と一件ずつ突き合わせます。
この流れを見ると、同じ品名や数量が何度も書き写されていることが分かります。
拠点で発注書に書き、本部でExcelへ打ち直し、仕入先の側でも自社のシステムへ打ち込み直しているかもしれません。
オンライン化で変わるのは、主にこの書き写しと、書き写しから生まれる確認や訂正の部分です。
この6つの分け方は、公的資料が定めた区分ではなく、削減の見込みを考えるための整理です。
電話・FAXが中心の拠点を想定しているので、すでに受発注システムで注文している拠点では、そこに残っている手作業だけを同じ考え方で拾い出すことになります。
減りうる作業:転記・確認電話・訂正
中小企業庁のミラサポplusの記事は、多層の取引構造をもつ業界の下位の取引(Tier3以下)では電話やFAXでのやり取りが多く、手入力による転記でミスや書類紛失のリスクがあると指摘しています1。
これは多層構造の業界についての記述で、すべての多拠点企業にそのまま当てはまるわけではありません。
それでも、書き写す回数が多いほどミスの入り口が増えるという構図は、拠点ごとに電話・FAXで注文を出している会社でも変わりません。
転記が減るのは、注文を最初からデータとして作り、そのデータを取引先と共有できる場合です。
拠点の担当者が画面で入力した注文がそのまま仕入先に届けば、仕入先がFAXを見ながら打ち直す工程がなくなります。
本部の集計も、拠点が入力したデータを使えれば、控えをExcelへ打ち直す必要がなくなります。
確認電話が減るのは、送った注文が相手に届いたか、受け付けられたかを画面で確かめられる場合です。
FAXでは送信できたことまでしか分からないので、念のための電話が習慣になりがちです。
ただし、受け付けた状態が画面に表れるかどうかは、使う仕組みと取引先側の使い方の両方で決まります。
訂正のうち減るのは、書き写しの段階で生じたミスに由来するものです。
品番の読み違いや数量の桁の写し間違いは、書き写す工程そのものがなくなれば起きる場面も減ります。
一方、発注量の判断を誤った、仕入先の在庫が足りなかったといった訂正は、転記と関係がないので残ります。
請求照合も、注文がデータで残っていれば拠点ごとの紙の控えを探す手間は減りますが、金額や数量の食い違いを確かめる作業そのものは残ります。
残りやすい作業:取引先対応待ち・例外処理
まず残るのは、オンラインで受け付けられない取引先への注文です。
拠点が画面で注文を作っても、仕入先がFAXでしか受けられなければ、その取引先の分は送信も確認も従来どおりになります。
この点が効果の大きさを左右するので、後の節で詳しく扱います。
次に、例外的な連絡が残ります。
急ぎの追加注文、欠品したときの代替品の相談、納期の調整などは、相手と話して決める必要があり、画面の入力だけでは片付きません。
こうした連絡の頻度は拠点や取引先によって違うので、残る時間として別に数えておくと、後の概算がずれにくくなります。
作成や集計の中にも、残る時間があります。
何をいくつ頼むかを決める判断、月末の数字を見て次の発注量を考える作業は、書き写しがなくなっても担当者の時間として残ります。
減るのは書き写しとそこから生じる確認・訂正で、判断に使う時間は別だと分けておくことが、次に見る公的な数字を読むときにも役立ちます。
「平均51.4%削減」は何の数字か:読めること、読めないこと
実証の対象と条件
オンライン受発注の効果としてよく引き合いに出されるのが、平均51.4%の削減という数字です。
出所は、中小企業庁のミラサポplusが紹介している、平成28年度補正の事業で行われた企業間データ連携の実証です1。
実証は12のプロジェクトで、自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界、5つの地域にまたがっています1。
ここでいうデータ連携は、EDI(企業間で注文や請求の情報を、決まった形式のデータでやり取りする仕組み)を使い、発注する会社と受注する会社の間で受発注のデータをつなぐものです。
記事は、大企業と比べて中小企業のほうが業務時間の削減率が高く、「平均して51.4%もの削減効果が得られました」と述べています1。
つまりこの数字は、取引の相手方とデータをつないだうえで、受発注にかかる業務時間がどれだけ減ったかを、実証に参加した中小企業について平均したものです。
一つの会社の中で、複数の拠点の注文をまとめた効果を測った数字ではありません。
中小企業の削減率が高かった理由
記事は、中小企業の削減率が高かった要因として、限られた期間でも既存の業務フローを変えやすく、データ連携に取り組みやすかったことを挙げています1。
この説明から読み取れるのは、削減がシステムを入れたことだけで生じたのではなく、業務の流れを変えた結果も含んでいるということです。
多拠点の会社にとって、この点は軽くありません。
拠点ごとに注文の出し方、締め時間、控えの残し方が違えば、流れを変える対象が拠点の数だけあります。
本部で新しい手順を決めても、ある拠点では従来の書式を使い続ける、別の拠点では電話での注文が残るといったことが起きれば、その拠点の削減は小さくなると考えられます。
逆にいえば、拠点間で手順をそろえやすい会社ほど、実証の中小企業と同じ条件に近づきます。
導入の判断では、ソフトウェアの比較と同じくらい、拠点の手順を変えられるかどうかが効いてきます。
自社に当てはめるときの注意
この記事の中では、拠点別の内訳も、発注側と受注側を分けた削減率も示されていません。
どのような方法で業務時間を測ったのか、どこまでの業務を範囲に含めたのか、参加企業の拠点数がどうだったのかも書かれていません。
そのため、自社の現状の業務時間に51.4%を掛けて削減見込みとし、稟議に書く使い方は勧められません。
この数字が支えられるのは、取引先とデータをつなげば受発注の業務時間が大きく減った実例がある、というところまでです。
自社の削減幅は自社の件数と取引先の状況から出し、この数字は、その概算が極端にずれていないかを点検する参考として使うのが妥当です。
| 観点 | 資料から読めること | 資料からは読めないこと |
|---|---|---|
| 対象 | 企業間で受発注データをつないだ実証に参加した中小企業 | 一社内の複数拠点をまとめた効果 |
| 数字の意味 | 業務時間の平均削減率が51.4%で大企業より高い | 拠点別や発注側・受注側別の削減率 |
| 理由 | 中小企業は既存の業務フローを変えやすかった | 自社の各拠点で同じように変えられるか |
| 条件 | 取引先と連携しなければ効果は得られない | 測定方法や対象業務の範囲 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 作成
- 送信
- 受領確認
- 訂正
- 集計
- 請求照合
取引先が対応するかどうかで、効果の上限が決まる
1社だけの導入では効果が出ない
同じ記事は、「1社だけが導入しても効果を得ることはできません」と、取引先との連携の重要性を述べています1。
日本総合研究所も、企業間取引のデジタル化は取引先も対応しないと進まず、様子見が続く懸念があると指摘しています2。
対象も書かれた時期も異なる資料ですが、効果が取引先の対応に左右されるという点では、同じことを別の角度から述べています。
発注する側に置き換えると、次のようになります。
拠点の担当者がオンラインで注文を作っても、仕入先がFAXでしか受けられなければ、印刷してFAXするか、別の手段で送り直すことになります。
仕入先はそのFAXを打ち直し、拠点は届いたかを電話で確かめます。
社内の作成と集計は多少楽になっても、前の節で減りうるとした転記・確認電話・訂正の多くは、相手との間で残ったままです。
つまり、自社がどれだけ準備しても、減らせる時間の上限は取引先がどこまで対応するかで決まります。
導入を検討する段階で、主な取引先がデータでの受発注に応じられるかを知っておく必要があるのはこのためです。
拠点数・件数・取引先数で見る効果の出方
効果の上限が取引先で決まるなら、削減の大きさは拠点の数そのものより、電子化できる取引先に向けた注文の件数に集まると考えられます。
拠点が多いほど自動的に効果が大きくなるわけではありません。
仮に、二つの拠点を比べてみます。
拠点Aは主要な仕入先数社に注文が集中していて、その仕入先がデータでの受注に応じられるとします。
この場合、拠点Aの注文の大半が転記・確認電話・訂正を減らせる対象になります。
拠点Bは地元の業者に少しずつ注文を出していて、その多くがFAXでしか受けられないとします。
こちらは、同じ仕組みを入れても減らせる対象は一部にとどまります。
多拠点ならではの点もあります。
複数の拠点が同じ仕入先に発注している場合、その仕入先1社が対応すれば、全拠点の分がまとめて対象になります。
反対に、拠点ごとに独自の取引先を多く抱えている会社では、拠点によって効果に大きな差が出ます。
どれくらいの差になるかを一般的に示す数字はないので、次の節で自社の件数から見積もります。
取引先が対応しない場合に残る業務
FAXや電話でしか受けられない取引先への注文は、送信・受領確認・訂正が今のまま残ります。
ここまでは分かりやすいところです。
見落とされやすいのは、画面での注文とFAXでの注文が並ぶことで生じる手間です。
拠点の担当者は取引先によって注文の出し方を使い分け、本部の集計は画面のデータとFAXの控えの二つから拾うことになります。
どちらで出した注文かを取り違えたり、FAX分を集計から漏らしたりしないよう、新しい確認作業が加わる場合があります。
そこで、取引先を対応の状況で仕分けてから効果を考えます。
すぐに電子化できる取引先、依頼すれば対応しうる取引先、当面はFAX・電話が残る取引先の三つに分けると、どの注文が減る側に入り、どの注文が残る側に入るかがはっきりします。
依頼すれば対応しうる取引先は、対応の時期が見えるまでは残る側に置いておくほうが、見込みを大きく見積もりすぎずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 減りうる作業
- 転記
- 確認電話
- 書き写しから生じた訂正
- 取引先対応待ち
- オンラインで受け付けられない取引先への注文
- 例外処理・判断
- 急ぎの追加注文・代替品の相談・納期の調整
- 何をいくつ頼むかの判断
自社の削減時間を概算し、効果を測る
現状の件数と所要時間を拠点別に記録する
ここからは、自社の数字で削減見込みを出す方法です。
公的資料が定めた手順ではなく一つの提案ですが、稟議で前提を説明しやすい形を意識しています。
出発点は、最初の節で分けた作業ごとに、拠点別の現状を「月の件数×1件あたりの所要時間」で記録することです。
件数は、数えやすいものから押さえます。
月の注文件数、届いたかを確かめる電話の回数、訂正の件数、本部で控えを打ち直した件数などです。
所要時間は、一定の期間、担当者に作業ごとの時間を書き留めてもらうのが確実です。
厳密に測れなくても、作業ごとの目安が分かれば概算には十分使えます。
拠点別に取るのは、拠点ごとに締め時間や注文の出し方が違えば、同じ作業でもかかる時間が違うからです。
全社の合計だけで見ると、効果が出やすい拠点と出にくい拠点の差が埋もれてしまいます。
この拠点別の記録は、最後に一部の拠点から試すかどうかを決めるときにも、そのまま使えます。
あわせて、拠点ごとに取引先別の注文件数も控えておきます。
前の節の仕分けは、この件数がないとできません。
電子化できる取引先分だけで概算する
記録がそろったら、次の順で削減見込みを出します。
まず、取引先を前の節の三つに仕分けます。
次に、すぐに電子化できる取引先への注文について、転記・確認電話・訂正の現状の時間を拾い出します。
そのうえで、それぞれがどこまで減るかの前提を置き、減る時間を合計します。
当面FAXが残る取引先の分と、例外的な連絡や判断に使う時間は、残る時間として現状のまま置いておきます。
前提を書き残しておくのは、稟議で問われるのが数字そのものより、その数字がどこから来たかだからです。
転記がなくなる前提を置いたのか、確認電話は半分残る前提にしたのかが書かれていれば、読み手は自社の事情に照らして妥当かどうかを判断できます。
前提が見えない削減見込みは、大きくても小さくても議論が進みません。
実証の平均51.4%は、ここで使います。
概算した削減見込みが現状の総時間に占める割合を出し、実証の平均を大きく上回るようなら、減る側に判断の時間を混ぜていないか、電子化できる取引先を多く見積もっていないかを見直します。
下回ること自体は異常ではありません。
実証は企業間連携の参加企業の平均で、自社の作業の内訳や取引先の状況とは前提が違うからです。
導入後に測る指標
導入後は、導入前と同じ項目を、同じ方法、同じ長さの期間で測り直します。
方法や期間が変わると、時間が減ったのか測り方が変わったのかを区別できなくなります。
指標の中心は、転記の件数、確認電話の回数、訂正の件数です。
オンライン化で減りうるとした作業そのものなので、どこが減り、どこが残っているかが直接分かります。
あわせて、全注文のうち画面で受け渡しできた注文の件数を見ておくと、取引先の対応がどこまで進んだかも追えます。
時間より件数を中心にするのは、所要時間の記録は担当者や日によって揺れやすい一方、件数は数えやすく、比べやすいからです。
件数が減っているのに時間が減っていなければ、新しい手間がどこかで生じていると分かります。
その新しい手間が何かは、次の節で見る導入の負担と照らし合わせると見当がつきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- すぐに電子化できる取引先
- 減る側に数える
- 依頼すれば対応しうる取引先
- 対応の時期が見えるまでは残る側に置く
- 当面はFAX・電話が残る取引先
- 送信・受領確認・訂正が今のまま残る
導入で生じる負担:多画面問題、独自規格、標準規格とクラウドの現状
多画面問題と独自規格の負担
ミラサポplusの記事は、多層の取引構造をもつ業界の上位の取引(Tier1・Tier2)では、取引先の系列ごとに別々のシステムがあり、それぞれの画面を操作しなければならない多画面問題が、コスト面で大きな負担になっていると述べています1。
これも多層構造の業界についての記述で、すべての多拠点企業に起きるとは限りません。
発注する側の多拠点企業に置き換えると、仕入先ごとに別々の発注画面を使うよう求められた場合が近い状況です。
拠点の担当者は、仕入先の数だけ画面の使い方を覚え、ログインし分けることになります。
担当者が替わるたびにその説明を繰り返すことになれば、転記が減った分の時間を別の手間が食うことになりかねません。
日本総合研究所は、大企業独自規格のEDIが中小企業にとって非効率だったり導入コストが高かったりして、普及が限定的だったとしています2。
相手の規格に合わせるたびに負担が増える仕組みは、取引先にとっても対応をためらう理由になります。
前の節で見た取引先の様子見は、こうした負担とも無関係ではないと考えられます。
標準規格・クラウドの追い風
一方で、日本総合研究所は、中小企業共通EDIや電子インボイスの標準規格、安価なクラウドサービスの普及を追い風として挙げています2。
取引先ごとに独自の仕組みを用意するのではなく、共通の形式でやり取りできる環境が広がりつつある、という見方です。
読者にとっての意味は、取引先に対応をお願いするときの負担の大きさにあります。
相手が新たに何を用意する必要があるのか、すでに使っている仕組みのままで受けられるのかによって、取引先の応じやすさは変わります。
比較検討の場では、自社側の機能だけでなく、取引先側に何を求める仕組みなのかを各社に尋ねておくと、前の節で行った取引先の仕分けの精度も上がります。
なお、この資料は個々の製品の費用を示していません。
費用は見積もりで確かめる必要があり、追い風があるからといって自社の負担が小さくなると決まるわけではありません。
負担の項目を拠点別に洗い出す
拠点への展開で生じる負担は、誰に生じるかで分けると洗い出しやすくなります。
拠点の担当者には操作を覚える時間が、本部の導入担当者には取引先と品目の登録が生じます。
本部と取引先の間では、対応の依頼と切り替え時期の調整が必要です。
既存の集計や会計の仕組みとつなぐ場合は、その連携の作業もあります。
そして移行の期間は、画面とFAXが並ぶ二重運用が拠点と本部の両方に生じます。
拠点別に見るのは、手順の違いが大きい拠点ほど、変更点の説明や移行の調整が増えると考えられるからです。
担当者の入れ替わりが多い拠点では、操作の説明を一度で終えられないことも想定しておく必要があります。
教育や連携にかかる時間について一般的な目安が示されているわけではないので、項目ごとに社内の担当者や導入先の候補に確かめながら見積もります。
| 負担の項目 | 主に生じる相手 | 拠点別に見るところ |
|---|---|---|
| 操作を覚える時間 | 拠点の担当者 | 担当者の人数と入れ替わりの多さ |
| 取引先と品目の登録 | 本部の導入担当者 | 拠点ごとに異なる取引先や品目の数 |
| 取引先への依頼と切り替えの調整 | 本部と取引先 | 拠点独自の取引先の数 |
| 既存システムとの連携 | 本部・情報システム担当 | 拠点ごとの集計や会計の仕組みの違い |
| 移行期間の二重運用 | 拠点と本部 | 画面とFAXが並ぶ期間の長さ |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先を三つに仕分ける
- 転記・確認電話・訂正の現状の時間を拾い出す
- どこまで減るかの前提を置いて合計する
- FAXが残る分と例外・判断の時間は現状のまま置く
- 実証の平均51.4%と比べて見直す
全拠点一括か、一部の拠点・取引先から始めるか
削減見込みと負担を並べて見る
ここまでで、拠点別の削減見込みと、拠点別の負担の項目が手元にそろいました。
判断の入口は、この二つを拠点ごとに横に並べることです。
削減見込みが大きく負担が小さい拠点、削減見込みは小さいのに負担が大きい拠点が、並べると見えてきます。
並べるときに気をつけたいのは、両者の時間の性質の違いです。
削減は、導入後に毎月続いていくものです。
負担のうち、操作を覚える時間や登録・切り替えの調整は導入の時期に集中し、二重運用や利用料のように続くものもあります。
導入直後の数か月だけを見ると負担が目立ち、続けた場合の差は見えにくくなるので、時期ごとに分けて並べると判断を誤りにくくなります。
判断の3条件
一括か、一部から始めるかは、取引先の対応状況、拠点ごとの注文件数、既存の手順の違いの3条件で考えるのが一つの方法です。
取引先の対応状況は、効果の上限を決める条件でした。
主要な取引先がすでにデータでの受発注に応じられるなら、どの拠点に広げても減る対象が多く、一括に向いています。
対応が取引先ごとにまちまちなら、対応済みの取引先に注文が集まる拠点から始めるほうが、効果を確かめやすくなります。
拠点ごとの注文件数は、負担に見合う削減が得られるかに関わります。
件数の多い拠点ほど、操作を覚える時間などの導入時の負担に対して、減る時間の総量が大きくなりやすいからです。
既存の手順の違いは、中小企業の削減率が高かった理由として挙げられていた、業務フローの変えやすさにつながります。
拠点間で注文の出し方や締め時間がそろっていれば、設定や説明を共通にでき、一括でも進めやすくなります。
違いが大きければ、拠点ごとに手順をそろえる調整が必要になります。
3条件がいずれも整っているなら、一括で進める選択肢があります。
どれかが欠けているなら、一部の拠点と取引先から始めて測るほうが、見込み違いを小さくできます。
一部から始める場合の選び方
一部から始めるなら、対応できる取引先への注文が多い拠点と、その取引先の組み合わせを最初に選びます。
効果が出る条件が最もそろった場所で試すことで、仕組みそのものの効果と、拠点や取引先の事情による差を分けて見やすくなります。
試す期間には、導入前と同じ方法で、転記の件数、確認電話の回数、訂正の件数を測ります。
概算で置いた前提と実測を比べ、あわせて実際に生じた負担を記録します。
そのうえで、次に広げる拠点と取引先を選びます。
一部から始める間は、会社全体で旧来の方法と新しい方法が並びます。
本部の集計が二系統になるので、どの拠点をいつまでに切り替えるかの目安を最初に決めておくと、二重運用が長引くのを防ぎやすくなります。
一部から始めるほうが一括より成果が出るという実証があるわけではありません。
この進め方の利点は、概算の前提を早い段階で自社の実測に置き換えられることにあります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の対応状況
- 主要な取引先が対応済みなら一括に向く
- まちまちなら対応済みの取引先に注文が集まる拠点から
- 拠点ごとの注文件数
- 件数の多い拠点ほど負担に見合う削減が出やすい
- 既存の手順の違い
- 注文の出し方や締め時間がそろっていれば一括でも進めやすい
- 違いが大きければ手順をそろえる調整が要る
拠点ごとに取引先と作業を仕分けると、どこまでを電子化の対象に数えるかで概算が大きく変わり、社内だけでは前提の置き方に迷いやすいためです。
現状の注文の流れを作業と取引先に分けた整理をもとに、削減見込みに数える範囲と前提の置き方を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 51.4%の読み方 | 企業間データ連携の実証に参加した中小企業の平均。自社の削減幅ではなく、概算の点検に使う |
| 減りうる作業 | 転記と、そこから生じる確認電話・訂正 |
| 効果の上限 | 電子化できる取引先に向けた注文件数で決まる |
| 概算の単位 | 作業ごと・拠点別に、月の件数×1件あたりの所要時間 |
| 導入後の指標 | 転記・確認電話・訂正の件数を、導入前と同じ方法と期間で測る |
| 負担の見方 | 拠点の担当者・本部・取引先・既存システムに分け、拠点別に洗い出す |
| 進め方の判断 | 取引先の対応状況、拠点ごとの注文件数、既存の手順の違いの3条件 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 対応できる取引先への注文が多い拠点と取引先を選ぶ
- 導入前と同じ方法で転記・確認電話・訂正の件数を測る
- 概算の前提と実測を比べ、生じた負担を記録する
- 次に広げる拠点と取引先を選ぶ
削減見込みと負担を拠点別に並べる段階では、どの拠点と取引先から試すかの判断に複数の条件が絡むためです。 試す拠点と取引先の候補、導入前後で測る項目の決め方を確かめられます。
よくある質問
拠点ごとに注文の締め時間が違う場合でも、オンライン受発注にまとめられるのか
まとめられるかは、締め時間の違いが何に由来するかで判断が分かれます。
取引先の配送や納品の条件で決まっている締め時間なら、拠点や取引先ごとの違いは導入後も残るので、拠点・取引先ごとに締め時間を設定できる仕組みかを比較検討の場で確かめる必要があります。
一方、拠点の慣習で違っているだけなら、導入を機に手順をそろえる余地があり、そろえられれば設定や説明を共通にできます。
取引先がFAXしか使えない場合、どの作業が残るのか
その取引先への注文は、送信・受領確認・訂正が今のまま残ります。
社内で注文をデータとして作る運用にすれば、本部の集計で控えを打ち直す手間は減らせる可能性がありますが、画面の注文とFAXの注文が並ぶため、集計で漏れや取り違えがないかを確かめる作業が加わることがあります。
削減時間を稟議用に概算するとき、最低限どの数字を拠点別に取ればよいか
作業ごとの月の件数と1件あたりの所要時間、取引先ごとの注文件数と電子化できるかどうか、確認電話の回数と訂正の件数です。
これがあれば、電子化できる取引先の分だけで削減見込みを出し、どの作業がどこまで減る前提かを稟議に添えられます。
導入後、効果が出ているかを確かめる指標は何を選べばよいか
転記の件数、確認電話の回数、訂正の件数を中心にし、全注文のうち画面で受け渡しできた注文の件数もあわせて見ます。
導入前と同じ方法、同じ長さの期間で測ることが前提です。
件数が減っているのに時間が減っていなければ、二重運用など新しい手間がどこかで生じていないかを見直します。
発注側と受注側で、効果の出方や見分け方はどう違うのか
公的な実証の削減率は、発注側と受注側を分けて示していません。
作業で考えると、発注側では注文の作成時の書き写し、届いたかの確認電話、本部の集計が主な対象になり、受注側では届いたFAXを自社のシステムへ打ち直す転記が主な対象になります。
どちらの立場でも、相手方がデータでやり取りできなければ効果が出ない点は同じで、受注側の場合は顧客がどこまで対応するかで上限が決まります。