◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 従来EDIとWeb-EDIの違いは、旧来の回線・通信手順を使うか、インターネットとブラウザーで受発注するかにある
- 発注側に重く残るのは、取引先1社ずつの切替調整と、画面と基幹システムの間に残る転記
- INSネット経由のEDIは、2028年12月31日の提供終了までに取引先ごとの切替を終える必要がある
- 効果は公的実証の平均値ではなく、自社の作業ごとの時間と移行後に残る転記から見積もる
- 方式は、取引先からの指定の有無、基幹システム連携の要否、取引先数の順に整理して決める
目次

発注を電話・FAXからEDIに移す前に、従来EDIとWeb-EDIの違いを押さえる
電話やFAXでの発注を減らしたいのに、従来EDIとWeb-EDIのどちらにするか決めきれない。
あるいは取引先からWeb-EDIでのやり取りを求められ、自社の発注業務がどう変わるのか見通せない。
両者の違いは、旧来の回線と通信手順を使うか、インターネットとブラウザーで受発注するかにあります。
発注側に重く残るのは、取引先1社ずつの切替調整と、受け取ったデータを基幹システムへどう取り込むかです。
取引先数、システム連携の要否、取引先からの指定の有無の3点で状況を整理すると、次に何を決めるべきかが見えてきます。
従来EDIの通信手順
EDI(電子データ交換)は、注文や納期回答、請求といった取引の情報を、紙やFAXの代わりに決められた形式の電子データで企業間に受け渡す仕組みです。
従来EDIと呼ばれる方式では、アナログ回線やISDN回線を使い、JCA手順などの旧来の通信手順でデータを送受信するものが多く使われてきました1。
JCA手順は、電話回線を通じて取引データをやり取りするための通信の取り決めの一つです。
発注側から見ると、この方式の要点は「回線と手順を取引先とそろえて初めてつながる」ことにあります。
注文データを送る側と受け取る側で通信の取り決めが一致していなければデータは届かないため、自社だけが方式を変えることはできません。
回線の契約が変わる、取引先が新しい方式に移るといった変化が起きるたびに、相手との打ち合わせが必要になるのはこのためです。
Web-EDIの操作と接続
Web-EDIは、インターネットとWebブラウザーの操作で受発注するEDIです1。
回線や通信手順を相手と合わせる代わりに、ブラウザーで受発注の画面を開き、注文を入力したり、取引先からの回答を確認したりします。
ブラウザーが使えるパソコンがあれば画面にたどり着けるため、電話やFAXで発注している会社にとっては、始めるまでの距離が近く感じられるはずです。
一方で、画面で操作できることと、そのデータが自社の基幹システムに入ることは別の話です。
発注内容を基幹システムで管理している会社なら、画面に入力した注文や、画面に表示された納期回答を、基幹システム側にも反映させなければなりません。
この反映を人が転記で行うのか、データとして取り込めるのかによって、Web-EDIに移した後の手間は大きく変わります。
この点は後の節で、発注業務の流れに沿って詳しく見ていきます。
迷いを整理するときは、気になっているのが「通信の経路」の違いなのか、「日々の操作と社内への反映」の違いなのかを分けて考えると見通しがよくなります。
前者は回線の期限や取引先との手順合わせにかかわり、後者は誰が何をどの画面に入力し、どこへ写すかにかかわります。
同じ「EDIを変える」という話でも、どちらの悩みかによって相談すべき相手も、決めるべきことも変わります。
流通BMSなどインターネット系の標準との関係
選択肢は、従来EDIとWeb-EDIの二つだけではありません。
2016年の記事では、IP網に対応した方式として、流通BMSとWeb-EDIが並べて挙げられています1。
流通BMSは、流通業界向けに定められた、インターネットを使うEDIの標準です。
通信の経路はWeb-EDIと同じくインターネットですが、標準として定められたデータの形式に沿ってやり取りする点で、画面操作を中心に考えるWeb-EDIとは見るべきところが異なります。
つまり、旧来の回線から離れるという意味では、Web-EDIだけが移行先ではありません。
取引先がどの方式に対応しているか、あるいはどの方式を指定してくるかによって、発注側が取れる選択肢も変わります。
この三つの方式の位置づけを頭に置いておくと、取引先から方式の話を持ちかけられたときに、それがどの種類の話なのかを判断しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 旧来の通信手順のEDI
- アナログ回線やISDN回線とJCA手順などで送受信する。回線と手順を取引先とそろえる
- インターネット系のEDI標準
- 流通BMSなど。インターネットを使い、定められたデータ形式でやり取りする
- Web-EDI
- インターネットとWebブラウザーの操作で受発注する。社内システムへの反映は別に考える
出典:日経クロステック「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)の定義に基づく
取引先ごとの切替調整が、発注側に最も重く残る負担になる
取引先1社ずつの調整が必要になる
方式の違いが分かったところで、次に気になるのは「移すときに何が大変なのか」です。
参考になるのが、2016年に報じられた、医薬品や健康食品の製造・販売や卸事業を手掛けるピップグループの事例です。
同社はISDNの終了に向けて通信手順を変える必要があり、約500弱の小売店とのEDIを、1社ずつスケジュールを合わせて切り替えていました1。
事前調整から利用開始までは、1社あたり1カ月ほどかかるとされています1。
この企業は小売店から注文を受ける立場とみられ、数字も2016年時点の1社の事例です。
発注側にとっての標準的な所要期間として使うことはできません。
それでもこの事例は、方式の変更が自社の中だけで完結せず、相手ごとに日程と手順を合わせる仕事になるという構造をよく示しています。
通信の取り決めが両者でそろわないとデータが届かない以上、この構造は注文を出す側でも変わりません。
発注側に置き換えると、たとえば20社の仕入先に発注している会社なら、20社それぞれと「どの方式で、いつから注文を送るか」を決めることになります。
切替日より前に送った注文の納期回答はどちらの方式で返ってくるのか、試しに送る注文はどれにするのか、といった細かな取り決めも相手ごとに発生します。
新しい方式の設定そのものよりも、この相手ごとの段取りの積み重ねが、担当者の時間を多く使う部分になりやすいのです。
移行が一斉には進まない点も押さえておきたいところです。
先の事例では、2016年の時点でIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行していた取引先は10%強でした1。
現在の市場の水準を示す数字ではありませんが、移行の途中では、新しい方式でつながった相手と、旧来の方式のままの相手が長く並ぶことが読み取れます。
発注側も、切替が終わるまでは複数の方式で注文を出す期間がある前提で計画を立てる必要があります。
取引先数から必要な期間を見積もる
1社ずつの調整が必要なら、取引先の数が多いほど、全体にかかる期間は積み上がります。
ただし、1社あたりの期間は自社と取引先の体制、方式の違い、試しの送受信の回数によって変わります。
先の事例の1カ月を自社にそのまま当てはめるのではなく、自社の取引先を並べ、どの相手にどれだけ手間がかかりそうかを見積もるほうが確かです。
見積もりの土台になるのは、取引先ごとの接続方式の一覧です。
少なくとも次の項目を一つの表にまとめておくと、どの相手から手を付けるかを決めやすくなります。
- 取引先名と、発注の頻度・件数
- 現在の発注手段(電話、FAX、メール、従来EDI、取引先のWeb-EDIなど)
- 従来EDIの場合、INSネットの回線を使っているかどうか
- 取引先から方式の指定があるかどうか
- 納期回答や請求をどの形で受け取っているか
一覧ができたら、同じ方式に移せる相手をまとめ、期限の近い相手や発注件数の多い相手から順番を付けます。
担当者が並行して進められる社数には限りがあるため、同時に進める社数を決めれば、終わりまでのおおよその期間が見えてきます。
この見積もりが、次に見る期限との距離を測る物差しになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 接続方式を確かめる:取引先がどの方式に対応し、何を指定しているか
- 日程を合わせる:切替の時期を相手の予定とそろえる
- 事前調整:送り方・受け取り方と、切替前後の注文の扱いを決める
- 利用開始:新しい方式で注文を送り、回答を受け取る
出典:日経クロステック(2016年)のピップグループの事例(約500弱の小売店との取引)で示された、1社ずつ日程を合わせる切替の流れを一般化したもの
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先を一覧にする:発注件数・現在の手段・回線・指定の有無を記録する
- 方式ごとにまとめる:同じ方式に移せる相手を束ねる
- 順番を付ける:期限の近い相手、発注件数の多い相手を先にする
- 同時に進める社数を決める:担当者の体制から並行数を決め、終わりまでの期間を見積もる
切替の期限:INSネット終了の日付は変わっている
2016年の見通しと現在の公式日付
2016年の記事は、移行が切替の直前に集中すると、間に合わない取引先が出ることを懸念していました1。
ただし、その記事が前提にしていた時期をそのまま現在の期限として読むことはできません。
現在の基準になるのは、NTT西日本の公式案内です。
INSネット(INSネット64、INSネット64・ライト、INSネット1500)は、2028年末をもってサービス提供を終了するとされています3。
終了の対象には、切替後のINSネット上で提供されているデータ通信の補完策も含まれます3。
この期限が関係するのは、INSネットの回線を経由してEDIを行っている場合です。
取引先から指定されたWeb-EDIをインターネット経由で使っているだけなら、この日付が切替の期限になるわけではありません。
反対に、自社か取引先のどちらかがINSネット経由の従来EDIを使っているなら、その相手とのやり取りは、遅くとも提供終了までに別の方式へ移す必要があります。
期限まで時間があるように見えても、前の節で見たとおり、切替は相手ごとの段取りの積み重ねです。
2016年の記事が心配していた直前の集中は、期限の日付が変わっても起こり得ます。
多くの企業が終了間際に動けば、取引先やEDIの事業者の側も調整の予定が埋まりやすくなるからです。
取引先の一覧から逆算して、着手の時期を決めておくことが大切です。
なお、NTT西日本の同じ案内ページには、ディジタル通信モードの終了時期や補完策の提供期間は記載されていません。
補完策を利用している場合は、その提供期間を契約している通信事業者に直接確かめる必要があります。
自社の回線種別の確認方法
自社のEDIがINSネットを経由しているかどうかは、日々の発注操作をしているだけでは分かりにくい部分です。
確かめるときは、回線を契約している通信事業者との契約内容、EDIの導入や保守を任せている事業者、社内でシステムを管理している担当者のいずれかに、どの回線と通信手順で送受信しているかを尋ねるのが近道です。
あわせて、取引先の側の事情も確かめておくと安心です。
自社がすでにインターネット経由に移っていても、取引先がINSネット経由で受け取っている場合、その取引先が方式を変える時期に合わせて、自社にも調整の依頼が来ることがあります。
取引先一覧に回線の欄を設けておけば、どの相手と期限の話をすべきかがすぐに分かります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 2016年:記事が、移行の直前集中による遅れを懸念
- 現在:自社と取引先の回線を確かめ、取引先ごとの切替を順に進める
- 2028年12月31日:INSネット(64/64・ライト/1500)の提供終了。補完策のデータ通信も対象
出典:日経クロステック「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)、NTT西日本「INSネットの提供終了について」。INSネット回線を経由するEDIが対象
Web-EDIで楽になる作業と、手作業として残る作業
発注の流れのどこで転記が減り、どこで残るか
期限と段取りの次に知りたいのは、移した後に日々の仕事がどう変わるかでしょう。
電話やFAXで発注している会社の流れを思い浮かべてみます。
担当者は基幹システムで発注内容を決め、それを注文書に写してFAXで送ります。
仕入先から届いた納期回答の紙を見て基幹システムの入荷予定を直し、月末には届いた請求書と発注の記録を一行ずつ突き合わせます。
この流れの中で、同じ内容を人の手で写している場面が何度もあります。
Web-EDIに移すと、注文を送る、回答を受け取るというやり取りは画面の上で行われます。
注文書の印刷やFAXの送信、読みにくいFAXの読み取りといった作業は、画面への入力と表示に置き換わります。
送った注文と受け取った回答が画面に記録として残るため、電話で伝えた内容の行き違いを後から確かめる手間も減らせます。
ただし、基幹システムと画面の間をつなぐ仕組みがなければ、転記はなくならず場所を変えるだけです。
基幹システムで作った注文をWeb-EDIの画面にもう一度入力し、画面に表示された納期回答を基幹システムに打ち直す。
取引先ごとに別のWeb-EDIを使うなら、この作業が画面の数だけ繰り返されます。
Web-EDIで楽になるかどうかは、どの作業が画面とシステムの間の転記として残るかで決まります。
公的実証の削減率の読み方
効果の大きさを知る手掛かりとして、中小企業庁のミラサポplusが紹介する中小企業共通EDIの取り組みがあります。
中小企業共通EDI標準は、取引先ごとにばらばらだったデータの形式を国際標準に準拠して共通化し、導入の手間とコストを減らすことを目的としています2。
12のプロジェクトで行われた実証では、中小企業の受発注業務の時間が平均で51.4%削減されたと報告されています2。
この数字を読むときは、対象に注意が必要です。
これは共通のデータ形式を使う取り組みの実証結果で、Web-EDIそのものの効果ではありません。
また中小企業全体の平均で、発注側か受注側かは示されていないため、発注側の自社がどれだけ時間を減らせるかの見込みとしては使えません。
それでも、効果がどこから生まれるかを考える材料にはなります。
取引先ごとに異なる形式を合わせる手間を減らすことが、この標準の狙いでした。
先に見た「切替は相手ごとの調整になる」という事例と重ねると、相手が共通の形式に対応しているほど、相手ごとの取り決めや取り込みの設定が少なくて済む方向に働くと考えられます。
ただし、2つの資料は発行元も時期も違い、どれだけ減るかまでは言えません。
自社の効果を見積もるなら、いまの業務時間を作業ごとに分けて測るのが確実です。
注文書の作成と送信、納期回答の転記、請求の照合に、それぞれ月にどれだけ時間を使っているか。
そのうち、移行後も画面とシステムの間の転記として残る作業はどれか。
この差が、自社にとっての削減の見込みになります。
基幹システム連携で取引先に確認する項目
画面とシステムの間の転記がどれだけ残るかは、取引先が使っている仕組みや設定によって異なり、一律には言えません。
Web-EDIを使い始める前や、取引先から利用を求められたときは、次の点を相手に尋ねておくと、移行後の手間を具体的に描けます。
とくに表の上から二つ、注文の登録方法と回答データの取り出しは、発注側の手間を大きく左右します。
どちらもできない場合、Web-EDIは「取引先の画面に入力して、画面を見て写す」仕組みになります。
発注件数が少なければそれでも十分なことがありますが、件数が多い相手ほど、データの取り出しについて話し合う価値が高くなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文を作る:基幹システムで発注内容を決める
- 注文を送る:FAX送信が画面入力に変わる。取り込み手段がなければ基幹システムからの写しが残る
- 納期回答を受け取る:紙の回答が画面表示に変わる。基幹システムの入荷予定への反映が残る場合がある
- 請求と照合する:発注の記録と請求を突き合わせる。データで受け取れるかで手間が変わる
| 尋ねること | 答えで変わること |
|---|---|
| 注文を基幹システムのデータから登録できるか、画面入力だけか | 画面入力だけなら、基幹システムとの二重入力が残る |
| 納期回答・出荷・請求のデータを取り出せるか、どんな形式か | 取り出せれば、入荷予定や請求照合への転記を減らせる |
| 商品コードや単位など、データの項目の定義 | 自社のコードと違えば、変換の対応表を保守し続ける必要がある |
| 他の取引先と同じデータ形式か | 形式が相手ごとに違うと、取り込みの設定が社数分必要になる |
| 利用開始までの手順と日程 | 切替期間の見積もりと順番づけに使う |
取引先数・連携の要否・指定の有無で選び方を分ける
判断は「指定の有無」から始める
ここまでの話を、どの方式を選ぶかの判断に当てはめます。
発注側の判断を分ける条件は、取引先から方式を指定されているか、基幹システムとの連携が必要か、取引先がどれだけあるか、の三つです。
考える順番は、指定の有無からが合理的です。
指定があれば、その相手との方式はほぼ決まり、残る判断は運用の負担をどう抑えるかに移るからです。
取引先から指定された場合
取引先が自社のWeb-EDIを使うよう求めてきた場合、発注側が方式を選ぶ余地は小さくなります。
このときの判断は、使うかどうかより、使ったときに社内のどこに手間が残るかを把握することが中心になります。
見積もるのは、その取引先に出す注文の件数と、先の表で確かめた取り込みの可否です。
件数が少なく画面入力で済むなら、まずは画面で運用を始め、基幹システムへの反映は既存の手順で行う方法も現実的です。
件数が多いのに取り込みができない場合は、転記の時間と誤りの確認が積み上がるため、データの取り出しの可否や時期について取引先と話し合う価値があります。
注意したいのは、複数の取引先からそれぞれ別のWeb-EDIを指定される場合です。
指定された仕組みが相手ごとに違えば、ログインする画面も操作の手順も社数分に増えます。
担当者が一人で受け持つなら、どの画面をどの頻度で見るのか、回答の見落としをどう防ぐのかを取引先一覧の中に書き込んでおくと、引き継ぎもしやすくなります。
自社で選ぶ場合
自社が主導して方式を決められる場合は、基幹システムとの連携が必要かどうかで考え方が分かれます。
発注の件数が多く、入荷予定や請求の照合を基幹システムで管理しているなら、データとして受け渡せる方式を優先したほうが、転記の残りを抑えられます。
反対に、発注件数が少なく、基幹システムとの照合も手作業で困っていないなら、ブラウザーで操作できる仕組みで足りる場合もあります。
データとして受け渡す方式を考えるときの手掛かりが、先に触れた中小企業共通EDI標準です。
ミラサポplusでは、発注側企業は標準に対応したプロバイダーと契約すれば独自に作ったシステムを使い続けられ、受注側は対応したプロバイダーや業務アプリを使うだけで大きな費用はかからないと説明されています2。
具体的な金額は示されておらず、あくまで同じ標準に対応した場合の話です。
それでも、発注側が既存のシステムを活かしながら、取引先に過大な準備を求めずにつながる道があることは、選択肢を考えるうえで知っておきたい点です。
費用の比較は、方式の名前だけでは決まりません。
取引先の数、連携させる業務の範囲、移行後も残る転記の時間を前提にして、見積もりを並べて比べるのが確実です。
比べるときの共通の軸を、次の表にまとめます。
表のうち判断が分かれやすいのは、取引先ごとの調整と基幹システムとの連携の行です。
通信の経路の違いは、INSネットの期限を抱える相手にとっては重要です。
しかし日々の手間を左右するのは、相手ごとの段取りと、画面とシステムの間に転記が残るかどうかのほうです。
併用・段階移行で先に決めること
取引先が多い会社では、すべての相手を一度に同じ方式へ移すことは現実的ではありません。
一定の期間、旧来の方式、Web-EDI、電話やFAXが並ぶことを前提に、次の順で決めておくと混乱を抑えられます。
- 取引先一覧で、相手ごとの現在の方式と移行先の方式を決める
- INSネット経由の相手、発注件数の多い相手から順番を付ける
- 切替日をまたぐ注文を、旧方式と新方式のどちらで扱うかを相手ごとに決める
- 切替後に、旧方式で同じ注文を送っていないかを確かめる担当を決める
3番目と4番目は、方式の選択とは別に決めておかないと混乱のもとになります。
切替の前後で同じ注文が二つの経路から届くと、取引先の側で二重に出荷される恐れがあるからです。
切替の日付と扱いを相手ごとに取り決めて一覧に記録しておけば、担当者が替わっても判断がぶれません。
どの方式を選ぶにしても、出発点は自社の取引先一覧です。
相手ごとの方式、回線、指定の有無、件数が一枚にそろえば、期限から逆算した順番と、移行後に残る転記が見えてきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先から方式の指定はあるか:あれば、その方式を前提に運用の負担を見積もる
- 基幹システムとの連携は必要か:必要なら、データの取り込みや共通の形式への対応を優先する
- 取引先は何社あるか:多いほど、相手ごとの調整期間と同時に進める社数が計画の前提になる
- 方式ごとの順番を決める:期限の近い相手、件数の多い相手から段階的に移す
| 比べる点 | 旧来の通信手順のEDI | Web-EDI |
|---|---|---|
| 通信の経路と手順 | アナログ回線・ISDN回線とJCA手順など | インターネットとWebブラウザー |
| 日々の操作 | 取引先とそろえた手順でデータを送受信する | ブラウザーで画面を開き注文の入力や回答の確認をする |
| 取引先ごとの調整 | 手順の変更は相手ごとに日程を合わせて行う | 利用開始の段取りは相手ごとに必要。指定された場合は相手の画面に合わせる |
| 基幹システムとの連携 | 自社と取引先の仕組みによって異なる | データの取り込みや取り出しの可否を仕組みごとに確かめる |
| INSネット提供終了の影響 | INSネット経由なら2028年12月31日までに切替が必要 | インターネット経由なら直接の対象外 |
| 方式だけでは決まらないこと | 費用・削減できる業務時間 | 費用・削減できる業務時間 |
取引先ごとの方式や回線、連携の要否を並べても、どこから着手し、どの転記が残るかを社内だけで判断しきるのは難しいことがあります。
取引先一覧をもとに、切替の順番と、移行後に画面とシステムの間で残る作業を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 方式の違い | 旧来の回線・通信手順で送受信するか、インターネットとブラウザーで受発注するか |
| 発注側の重い負担 | 取引先1社ずつの切替調整と、画面と基幹システムの間に残る転記 |
| 期限 | INSネット経由のEDIは2028年末の提供終了までに切替 |
| 効果の見積もり | 公的実証の平均値ではなく、自社の作業ごとの時間と残る転記で測る |
| 選ぶ順番 | 指定の有無、基幹システム連携の要否、取引先数の順に整理する |
取引先から方式を指定されている場合や、複数の方式を併用する期間が長くなりそうな場合は、運用の取り決めを早めに固める必要があります。 指定されたWeb-EDIを使うときに社内でどの作業が増えるか、切替日をまたぐ注文をどう扱うかを確かめられます。
よくある質問
Web-EDIを使うと、発注側の費用は従来EDIより安くなるのか
方式の名前だけで、どちらが安いとは言えません。
費用は、取引先の数、基幹システムと連携させる範囲、移行後も残る転記の時間によって変わります。
同じ前提で見積もりを並べ、転記にかかる社内の時間も含めて比べるのが確実です。
取引先がWeb-EDIを指定してきた場合、発注側は何を先に確認すればよいか
まず、注文を基幹システムのデータから登録できるか、納期回答や請求のデータを取り出せるかを尋ねます。
どちらもできない場合は、画面への入力と基幹システムへの転記が残ります。
あわせて利用開始までの手順と日程を聞いておくと、切替の順番を決めやすくなります。
従来EDIとWeb-EDIを同時に使い続けても問題ないか
取引先ごとに方式が異なる状態は、移行の途中では珍しくありません。
ただし、INSネットを経由する従来EDIは、2028年12月31日のINSネット提供終了までに別の方式へ移す必要があります3。
併用する間は、切替日をまたぐ注文の扱いと、同じ注文を二つの経路で送らない仕組みを相手ごとに決めておくことが大切です。
自社の回線がINSネットかどうかは、どこで確認できるか
回線を契約している通信事業者との契約内容、EDIの導入や保守を任せている事業者、社内のシステム担当者のいずれかに、どの回線と通信手順で送受信しているかを尋ねるのが近道です。
取引先の側がINSネット経由で受け取っている場合も調整が生じるため、取引先の回線もあわせて確かめておくと安心です。
基幹システムとWeb-EDIをつなぐには、取引先と何を決める必要があるか
データをどの形式で受け渡すか、商品コードや単位などの項目をどう対応させるか、利用開始の日程と試しの送受信の進め方を決める必要があります。
自社のコードと取引先のコードが違う場合は、変換の対応表を誰が保守するかも取り決めておくと、運用が始まってから迷いません。
- 1 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 2 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 3 出典:NTT西日本「INSネットの提供終了について」(2026年確認)
画像の出典元
- Businesswoman typing on laptop with notes and coffee on wooden desk./Photo by Startup Stock Photos on Pexels