◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取引先を選ぶ前に、食材を使用量・使う頻度・日持ち・代替のしやすさで分け、止まると製造が止まる食材だけ分散を考える。
- バターは業務用を中心に需要が堅調で、国は欠品に至るとは評価していないものの需給を注視しており、毎日使う店では代わりの規格を平時に決めておく理由になる。
- 取引先には最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性を同じ言葉で聞き、答えを横に並べて自店の量に合うかを判断する。
- 発注は取引先が受け付ける方法のうち控えが残るものを選び、納品時に注文控え・納品書・現物を照らすと、月末の請求書の確認が軽くなる。
- インボイスの扱いは自店の消費税の計算方法で変わるが、納品書と請求書を保存できる形で受け取ることはどの店にも関わる。
目次

菓子の食材発注で発注先がバラバラなとき、最初に食材を4つの目で分ける
粉は問屋、バターは別の業者、果物は生産者というように、注文先ごとに電話・LINE・FAXが入り混じっていないでしょうか。
そうなると、締め時間を逃したり、数量を書き違えたりしやすくなります。
全部を一度に整える必要はありません。
菓子の食材を使用量・使う頻度・日持ち・代替のしやすさで分け、止まると製造が止まる食材から取引先の備えを決めます。
そのうえで、取引先ごとに最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性を同じ質問で確かめます。
発注と納品確認は、相手が受け付ける方法の範囲で揃えていきます。
使用量・使う頻度・日持ち・代替のしやすさで分ける
取引先を見直そうとすると、まず「どこに頼むか」に目が向きます。
けれども、発注の手間が同じでも、困り方は食材によってまるで違います。
強力粉の注文が一日遅れても、在庫でしのげることがあります。
一方、明日の仕込みに使う生クリームが届かなければ、その日の商品が作れません。
取引先を選ぶ前に食材ごとの重さの違いを並べておくと、手間をかけるべき食材と、簡単に済ませてよい食材が分かれてきます。
分けるときに使うのは、次の4つの目です。
1つ目は使用量で、1回の注文でどれだけ買うかを見ます。
量が多い食材ほど、単価や送料の条件の差が月の支払いに効いてきます。
2つ目は使う頻度です。
毎日の仕込みに使う食材と、季節の商品にだけ使う食材とでは、締め時間や配送曜日が段取りに響く度合いが違います。
3つ目は日持ちです。
常温で保管しやすい粉や砂糖は、多めに買っておけば一回の遅れを在庫で吸収できます。
冷蔵の乳製品や生の果物は、在庫を厚くすると今度は使い切れない心配が出てきます。
4つ目は代替のしやすさで、同じ規格のものを別の取引先からも買えるか、配合を変えずに置き換えられるかを見ます。
たとえば、焼き菓子と生ケーキを並べ、2人で店を回している場合を考えてみます。
薄力粉とグラニュー糖は、量は多いものの日持ちがし、同じ規格を扱う取引先も見つけやすい食材です。
発酵バターは毎日使い、特定の銘柄で風味を決めているなら、置き換えはしにくくなります。
いちごは季節の商品に使い、日持ちが短く、産地や粒の大きさで仕上がりが変わります。
このように並べると、同じ「食材の発注」でも、備えを考えるべき食材がいくつかに絞られてきます。
止まると製造が止まる食材から分散を考える
4つの目で見て、毎日使い、日持ちが短く、置き換えにくいという条件が重なる食材は、届かなかった日にその商品の製造が止まります。
取引先の分散や代わりの規格を先に考えるのは、こうした食材です。
先ほどの例でいえば、指定銘柄の発酵バターがこれにあたります。
反対に、日持ちがして同じ規格を他でも買える食材は、1社にまとめても困りにくい側です。
まとめておけば、注文の回数も請求書の枚数も減ります。
仮にその取引先からの納品が止まっても、在庫でしのぐ間に別の取引先から同じものを手配できる見込みがあるからです。
分散には手間が伴います。
取引先が1社増えれば、締め時間も、配送曜日も、請求書の締め日も1つずつ増えます。
すべての食材を2社に分けると、欠品への備えは厚くなる代わりに、いまの困りごとである発注の手間がさらに膨らみます。
そこで、止まると製造が止まる食材だけに分散を絞り、残りはまとめる方向で考えると、備えと手間の釣り合いを取りやすくなります。
どこまでを1社にまとめてよいかという迷いは、食材を分けた結果からおおむね答えが出ます。
バターの需給判断から見える、食材ごとの備えの濃さ
食材ごとに備えの濃さが違うことは、国の需給の見方からもうかがえます。
農林水産省は2026年に示した令和8年度のバター・脱脂粉乳の輸入枠の検証で、バターの需要は業務用を中心に堅調だとしています1。
そのうえで、現時点で欠品に至るとは積極的に評価できないとしつつ、生産動向の見通しが難しく上振れ・下振れの両方があり得るため、需給を注視するとしています1。
この判断は「足りなくなる」という警告ではありません。
ただ、先行きの幅が読みにくい食材であることは示しています。
毎日バターを使い、銘柄や規格を決めている店にとっては、平時のうちに代わりの規格や二つ目の取引先を考えておく理由になります。
一方で、これは国全体の需給についての判断です。
個々の店がいつ、いくらで買えるかを示すものではありません。
卵・小麦粉・砂糖・果物については、ここでは需給の見通しを扱っていません。
これらの食材の入りやすさは、いま取引している先に、規格ごとの入荷の見込みを聞いて判断することになります。
| 見る目 | 確かめること | 備えを厚くしたい側 |
|---|---|---|
| 使用量 | 1回の注文でどれだけ買うか | 量が多く条件の差が支払いに効く食材 |
| 使う頻度 | 毎日使うか・季節や特定の商品だけか | 毎日の仕込みに使う食材 |
| 日持ち | 在庫で数日しのげるか | 冷蔵品や生の果物など在庫で吸収しにくい食材 |
| 代替のしやすさ | 同じ規格を他の取引先から買えるか | 銘柄や産地を指定していて置き換えにくい食材 |
取引先の種類ごとに、同じ5項目で小さな量に合うかを見分ける
卸・問屋、メーカー直販、業務用スーパー・通販、生産者を同じ軸で並べる
食材を分けたら、次はそれぞれをどの取引先に頼むかです。
候補になる取引先は、大きく4つの種類に分けられます。
複数のメーカーの食材を扱う卸・問屋、特定の製品をつくり手から直接買うメーカー直販、店頭で買ったりWebで注文して配送で受け取ったりする業務用スーパー・通販、果物などを産地から買う生産者です。
種類ごとに、発注の形と、先に聞いておきたいことが変わります。
卸・問屋は、いくつかの食材をまとめて頼める場合があります。
まとめて頼めるかどうかで、取引先の数を減らせるかが決まります。
メーカー直販は、銘柄を決めている食材を確実に押さえたいときの候補です。
小口の注文を直接受けているかどうかは、メーカーによって違います。
業務用スーパーや通販は、注文の手続きが軽い反面、欲しい規格がいつも並んでいるか、届く日が仕込みに間に合うかで使い勝手が分かれます。
生産者からの仕入れは、収穫の時期や量が天候で動くことを前提に、変わるときの連絡の仕方を決めておく必要があります。
この表に金額や数量を入れていないのには理由があります。
最低注文数量や送料、締め時間は取引先ごとに決められていて、同じ種類の取引先でも同じとは限りません。
他店から聞いた条件や一社の例を、自店の目安に置き換えることはできません。
だからこそ、候補の取引先に同じ質問をして、答えを横に並べるやり方が役に立ちます。
最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性を聞く
質問は5項目に絞ります。
最低注文、配送頻度、締め時間、支払条件、規格の安定性です。
どの取引先にも同じ言葉で聞くのがこつです。
聞き方が取引先ごとに違うと、返ってきた答えを比べられなくなります。
小さな量で判断が分かれやすいのは、最低注文と締め時間の組み合わせです。
最低注文が自店の1回分より多くても、配送が週に何回あるかによって受け止め方は変わります。
配送の回数が少ないなら、1回にまとめて頼むことで下限を超えられる場合があります。
ただし、それができるのは日持ちのする食材に限られます。
生クリームのような冷蔵品で下限に合わせて量を増やせば、欠品は防げても、使い切れずに捨てる分が出てきます。
前の節で分けた日持ちの目が、ここで効いてきます。
締め時間は、仕込みの段取りと照らして見ます。
前日の夕方に仕込みを終えてから翌日分を発注している店なら、昼に締める取引先では間に合いません。
朝の注文で当日中に届くのか、翌日になるのかによっても、どの食材を任せられるかは変わります。
支払条件は、取引先の数が増えるほど効いてきます。
締め日と支払日が取引先ごとにばらばらだと、月の中で支払いが散らばり、請求書の確認も何度にも分かれます。
規格の安定性は見落とされがちですが、包装の容量や原材料の配合が変わると、計量の手間が増えたり表示を直す必要が出たりします。
変わるときに事前に知らせてもらえるかまで聞いておくと、後の対応が楽になります。
答えは、取引先ごとに1行ずつ、同じ表に書き留めます。
空欄が残った項目は、まだ聞けていないか、相手がはっきり答えなかった項目です。
その空欄自体が、取引を始める前にもう一度確かめる点になります。
小口に応じてもらえないときの選択肢
聞いてみた結果、最低注文が自店の量に合わないこともあります。
その場合でも、すぐに候補から外す前に考えられることがいくつかあります。
まず、注文の組み立てを変える方法です。
日持ちのする食材なら、注文の回数を減らして1回の量を増やせば、下限に届くことがあります。
卸・問屋であれば、他の食材も一緒に頼んで合計で条件を見てもらえるかを聞いてみる価値があります。
取引先を1社減らせることにもつながります。
次に、つくり手に相談する方法です。
銘柄を決めている食材でメーカーが小口の直販を受けていない場合でも、その製品を扱う卸を教えてもらえることがあります。
欲しい製品の取扱い先を、メーカー側から辿るやり方です。
業務用スーパーや通販を、補いとして使う方法もあります。
主な取引先が止まったときの急ぎの手配や、季節の商品にだけ使う少量の食材には向いています。
一方で、自分で買いに行く時間がかかること、欲しい規格がいつも手に入るとは限らないことは、止まると困る食材の主な取引先としては弱みになります。
最後に、大きな包装でしか買えないときは、使い切れるかどうかで判断します。
日持ちの範囲で使い切れるなら、単位あたりの条件が良くなることもあります。
使い切れない量を抱えるなら、多少割高でも小さな単位で買えるほうが、捨てる分を含めた負担は軽くなります。
| 取引先の種類 | 発注の形 | 先に聞いておきたいこと |
|---|---|---|
| 卸・問屋 | 複数メーカーの食材をまとめて頼める場合がある | どの品目まで一緒に頼めるか・合計で条件を見てもらえるか |
| メーカー直販 | 特定の製品をつくり手から直接買う | 小口の注文を受けているか・取扱いのある卸があるか |
| 業務用スーパー・通販 | 店頭で買うかWebなどで注文して配送で受け取る | 欲しい規格が続けて手に入るか・届く日が仕込みに間に合うか |
| 生産者 | 果物などを産地から直接買う | 収穫の時期と量の幅・変わるときの連絡の仕方 |
| 項目 | 聞き方の例 | 答えから分かること |
|---|---|---|
| 最低注文 | 「1回の注文に下限の数量や金額はありますか」 | 自店の1回分の量で頼めるか |
| 配送頻度 | 「この地域へは何曜日に届けてもらえますか」 | 仕込みの曜日に間に合うか |
| 締め時間 | 「何時までの注文で、いつ届きますか」 | 仕込みを終えてから発注しても間に合うか |
| 支払条件 | 「締め日と支払日、支払い方法を教えてください」 | 月の資金の出入りに無理がないか |
| 規格の安定性 | 「この規格は通年で同じものが入りますか。変わるときはいつ知らせてもらえますか」 | 配合や表示を変えずに使い続けられるか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 分散を考える食材
- 毎日使う
- 日持ちが短い
- 置き換えにくい
- 1社にまとめる食材
- 日持ちがする
- 同じ規格を他でも買える
- 注文の回数と請求書の枚数が減る
- 分散で増える手間
- 締め時間が1つ増える
- 配送曜日が1つ増える
- 請求書の締め日が1つ増える
取引先を決める前に確かめる、衛生管理・表示・請求書の3つの確認
菓子の製造販売と、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の手引書
5項目で条件が合う取引先が見えてきたら、取引を始める前に確かめておきたいことが3つあります。
衛生管理、表示、請求書です。
どれも価格や配送ほど取引先選びを左右するものではありません。
ただ、後から気づくと手間が大きくなるため、決める前に一度聞いておきます。
衛生管理について、厚生労働省は、製造・加工する施設に併設または隣接した店舗で、製造品の全部または大部分を小売りする営業者を、小規模事業者の例に挙げています2。
菓子の製造販売もこの例に含まれます2。
こうした事業者は、業界団体が作成し厚生労働省が確認した手引書に沿って衛生管理を進めることができます2。
手引書に沿って、危害要因を理解し、衛生管理計画と手順書を準備し、関係者に周知し、記録して保存し、見直しを行えば、基準に従っているとみなされます2。
該当する手引書がない場合は似た業種の手引書を参考にし、必要に応じて保健所の助言を受けるよう案内されています2。
取引先選びとのつながりは、食材を受け取る場面にあります。
原材料を受け入れるときに何を見るかは、自店が沿う手引書と自店の衛生管理計画で決まります。
その具体的な項目は、手引書の側で確かめることになります。
受入れで見ることが決まれば、取引先には、冷蔵品をどう運んでくるか、納品が何時ごろか、受け取る人が店にいる時間に届くかを聞けます。
受入れの手順を守れない時間帯に届く取引先は、条件が良くても日々の運用で困ることになります。
なお、ここでいう「小規模事業者」は、店の形態で示された例です。
中小企業基盤整備機構が示す小規模企業者の定義とは別のものです。
こちらの定義では、常時使用する従業員が、商業(卸売業・小売業)と宿泊業・娯楽業を除くサービス業で5人以下、工業などで20人以下とされています4。
製造した菓子を店頭で売る形態がどちらの区分にあたるかは、事業の実態によって変わります。
5人以下または20人以下はあくまで目安として見てください。
この定義は制度上の区分で、補助金など他の制度の対象要件は制度ごとに別に定められています4。
どちらの「小規模」も、取引先が小口に応じるかどうかを決めるものではありません。
表示に使う原材料の情報を、取引先から受け取れるか
包装した焼き菓子に原材料やアレルゲンを表示する場合、使っている食材の中身を自店で把握している必要があります。
バターや粉のように単一の食材に見えても、加工品であれば原材料の内訳や、製造工程で混ざる可能性のある物質の情報が関わってきます。
そこで、取引を始める前に、原材料の内訳やアレルゲンの情報を書面で受け取れるかを聞いておきます。
あわせて、規格や配合が変わるときに知らせてもらえるかも確かめます。
前の節の「規格の安定性」の質問と重なりますが、ここでは表示を作り直す必要があるかどうかを判断する材料として聞く点が違います。
どの情報が表示に必要になるかは、自店がどんな表示を作るかによって変わります。
手元の表示に必要な項目を先に洗い出してから聞くと、やり取りが一度で済みやすくなります。
インボイス発行事業者かどうかと、納品書・請求書の保存
請求書については、取引先がインボイス発行事業者かどうかを把握しておきます。
国税庁は、買手が仕入税額控除を受けるには、原則としてインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要だとしています3。
インボイスの記載事項には、売手の名称と登録番号、取引の日付、税率ごとに区分した対価の額の合計と適用税率、税率ごとの消費税額等が含まれます3。
ただし、どこまで気にするかは自店の消費税の扱いによって変わります。
簡易課税制度、2割特例、3割特例を使う場合は、消費税の計算上インボイスの保存は不要とされています3。
それでも、所得税などの観点から、領収書や請求書等の保存は引き続き必要です3。
つまり、インボイスかどうかに関わらず、納品書と請求書を保存できる形で受け取ることは、どの店にも関わります。
取引先が免税事業者の場合は、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があります3。
国税庁のページは、その期限を令和13年(2031年)9月末と示しています3。
控除できる割合や自店への影響は、自店が課税事業者か、どの計算方法を使っているかで変わります。
判断に迷う場合は、顧問の税理士や税務署に、自店の計算方法を前提に確かめてください。
実務では、候補の取引先に「登録番号はありますか」と聞き、5項目の表の横に書き留めておくと便利です。
最初の請求書が届いたときに、その番号が載っているかを見れば、確認は一度で済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の組み立てを変える
- 日持ちのする食材は回数を減らして1回の量を増やす
- 卸・問屋に他の食材も頼み、合計で条件を見てもらう
- つくり手に相談する
- 小口の直販がなければ、扱う卸を教えてもらう
- 業務用スーパーや通販を補いに使う
- 主な取引先が止まったときの急ぎの手配
- 季節の商品にだけ使う少量の食材
- 大きな包装でしか買えないとき
- 日持ちの範囲で使い切れるなら、条件が良くなることもある
- 使い切れないなら、小さな単位のほうが負担は軽い
複数の取引先への発注と納品確認を、小さな体制で漏れなく回す
取引先が受け付ける方法に自店を合わせる
取引先が決まっても、電話・LINE・FAX・口頭の注文が混ざったままでは、発注漏れや数量の間違いはなかなか減りません。
とはいえ、発注方法を自店の都合だけで一つに揃えることはできません。
注文をどの方法で受け付けるかは、取引先の側が決めているからです。
そこで、まず取引先ごとに、受け付けている発注方法を書き出します。
そのなかから、送った内容が後に残る方法を選びます。
FAXやLINE、メール、Webの注文画面は、送った内容が手元に残ります。
電話や口頭は、何をいくつ頼んだかが記録に残りません。
電話でしか受け付けない取引先なら、電話を切った直後に、頼んだ品目と数量を自分で書き留めることで、控えの代わりにします。
発注方法を変えたいときは、取引先に相談することになります。
Webの注文画面を用意している取引先でも、締め時間が電話と違ったり、注文を受けた返事の出し方が違ったりする場合があります。
変える前に、その方法での締め時間と、注文を受けた知らせが来るかどうかを聞いておくと、切り替えた直後の行き違いを避けやすくなります。
発注リストと発注の控えの残し方
取引先が増えて困る原因の一つは、締め時間や配送曜日を頭の中で覚えていることです。
これを1枚の発注リストにまとめます。
列は、取引先、品目と規格、注文の単位、締め時間、配送曜日、発注方法とし、その横に、その回の発注数量と発注した日を書く欄を作ります。
第2節で書き留めた5項目の答えのうち、締め時間と配送曜日をここに移すことになります。
1〜2人で回している店なら、紙1枚でも表計算のシート1枚でも構いません。
発注する人が一人なら、その人が見る場所に1つあれば足ります。
大事なのは、どの取引先に何時までに頼むかを、毎回リストを見て確かめる流れを作ることです。
記憶に頼る部分が減るぶん、締め時間を逃す場面が減っていきます。
数人で回している店では、別の問題が出てきます。
誰が発注するかが決まっていないと、同じ食材を二人が頼んでしまったり、互いに相手が頼んだと思って誰も頼まなかったりします。
この場合は、品目ごとに発注する人を決めるか、発注は一人に集めるかを決めます。
そのうえで、リストを全員が見られる場所に置き、頼んだら「発注済み」と書き込みます。
書き込みが残っていれば、他の人も同じ食材を重ねて頼まずに済みます。
発注の控えは、リストの発注数量の欄そのものを控えにするか、FAXの送信票やLINEの画面をそのまま残すかのどちらかにします。
控えの置き場所が取引先ごとにばらばらだと、納品のときに探す手間が生まれます。
次の納品確認で使うことを考えて、一か所にまとめておきます。
この仕組みが自店で効いているかは、数で確かめられます。
1か月のあいだに起きた発注漏れ、数量の間違い、締め時間の遅れを数えておき、リストを使い始めてからの1か月と比べます。
減らなかった種類の間違いがあれば、そこにまだ記憶や口頭に頼っている部分が残っていると読めます。
納品時に注文控えと納品書を照らす
発注で控えを残しておくと、納品のときに確かめられることが増えます。
食材が届いたら、注文控えと納品書、それに届いた現物を見比べます。
見るのは、品目、規格、数量の3点です。
違いがあれば、その場で納品書に書き留め、取引先に連絡します。
ここで違いを書き留めておくと、月末の請求書の確認が軽くなります。
請求書が届いたとき、書き留めた違いが反映されているかだけを見ればよくなるからです。
反対に、納品のときに見ていないと、請求書の1行ずつについて、本当に届いたのか、数量は合っていたのかを思い出しながら確かめることになります。
取引先が多いほど、この差は大きくなります。
請求書との突き合わせで、規格の変更や締め時間の変更に気づくこともあります。
そうした変更は、その場で発注リストに反映しておきます。
次の発注のときにリストが古いままだと、同じ行き違いを繰り返すことになります。
受入れのときに衛生管理の記録をつけている店なら、納品書を見るこの場面にあわせて行うと、手順が一つにまとまります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 衛生管理
- 自店の手引書で受入れ時に見ることを決める
- 冷蔵品の運び方と納品の時間帯を聞く
- 表示
- 原材料の内訳やアレルゲンの情報を書面で受け取れるか
- 規格や配合が変わるときに知らせてもらえるか
- 請求書
- インボイス発行事業者かどうかと登録番号
- 納品書と請求書を保存できる形で受け取れるか
欠品・値上げ・取引先の事情変更が起きたときの動き方
平時に決めておく代替の規格と取引先
欠品の連絡は、たいてい急に来ます。
その場で代わりを探し始めると、締め時間までに間に合わなかったり、配合に合わない規格を慌てて買ったりしがちです。
そこで、最初に分けた食材の区分をここで使います。
止まると製造が止まる食材は、平時のうちに代わりの規格と取引先を決めておきます。
先の例の指定銘柄の発酵バターなら、別の銘柄を少量取り寄せて実際に焼いてみます。
風味や焼き上がりがどう変わるかを確かめ、使える銘柄とそれを扱う取引先を発注リストの横に書いておきます。
こうしておけば、連絡を受けた日に迷うのは「切り替えるかどうか」だけになります。
代替の効く食材は、別の取引先を新たに決めるより、在庫の量と発注の頻度で調整するほうが手間がかかりません。
日持ちのする食材は少し多めに持っておき、冷蔵品は注文の頻度を上げて一回の量を抑える、といった具合です。
取引先の事情が変わることもあります。
配送曜日が変わる、締め時間が早まる、取引自体が終わる、といった場合です。
このとき発注リストがあれば、その取引先に頼んでいる品目がすぐに分かります。
そのうち止まると困る食材から順に、代わりの手配を考えられます。
価格改定の連絡を受けたときの聞き方と比べ方
値上げの連絡を受けたら、まず中身を聞きます。
いつから、どの品目が、どのような理由で変わるのかです。
あわせて、包装の容量や規格が変わるかどうかも確かめます。
単価が同じでも容量が減っていれば、実際には値上げと同じことになるからです。
比べるときは、単価だけを並べないようにします。
第2節の5項目で、同じ規格を扱う他の取引先の条件と並べます。
単価が安くても、最低注文が自店の量より多ければ使い切れない分が出ますし、締め時間が仕込みに合わなければ段取りが崩れます。
送料を含めて1か月に払う額で比べると、条件の違いが見えやすくなります。
差額が小さく見えても大きく見えても、それだけで切り替えを決めないことです。
実際の請求書の明細と、他の取引先から聞いた条件を同じ単位に揃えて見比べてから判断します。
長く取引している取引先なら、配送や連絡の融通など、表に書きにくい部分も含めて考える余地があります。
代替品に変えるときの表示の見直し
代わりの食材に切り替えると、原材料やアレルゲンが変わることがあります。
同じバターでも銘柄が変われば原材料の内訳が違う場合がありますし、加工品であればなおさらです。
原材料やアレルゲンの表示をしている商品では、切り替える前に表示を直す必要があるかを確かめます。
このとき役に立つのが、第3節で取引先に頼んでおいた原材料の情報です。
代わりの食材を扱う取引先からも、同じように書面で情報を受け取っておけば、切り替えの日に慌てずに済みます。
平時に代わりの規格を試すときに、あわせて情報も取り寄せておくと、欠品の連絡から切り替えまでの間に残る作業は、表示の書き換えと発注リストの更新だけになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 原則
- 仕入税額控除にはインボイス発行事業者のインボイスの保存が必要
- 記載事項に売手の名称と登録番号が含まれる
- 簡易課税制度、2割特例、3割特例
- 消費税の計算上、インボイスの保存は不要
- 領収書や請求書等の保存は引き続き必要
- 取引先が免税事業者
- 仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置がある
- 期限は令和13年(2031年)9月末
食材の分け方や5項目の質問は自店で始められますが、いまの取引先と発注方法が入り組んでいると、どこから手を付けるかを一人で決めにくいことがあります。
現在の取引先・発注方法・締め時間を一緒に書き出し、まとめてよい食材と備えを厚くしたい食材の分かれ目、最初に見直す取引先を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 食材の分け方 | 使用量・使う頻度・日持ち・代替のしやすさ |
| 分散を考える食材 | 毎日使い、日持ちが短く、置き換えにくい食材 |
| 取引先に聞く5項目 | 最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性 |
| 決める前の確認 | 衛生管理の受入れ・表示に使う原材料情報・インボイスと請求書の保存 |
| 発注の揃え方 | 取引先が受け付ける方法のうち、控えが残る方法を選ぶ |
| 納品時の照合 | 注文控え・納品書・現物の品目・規格・数量 |
| 価格改定時の比べ方 | 単価だけでなく5項目と1か月の支払額で比べる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注リストを見る:取引先・品目と規格・締め時間を1枚で確かめる
- 発注して控えを残す:取引先が受け付ける方法で送り、送った内容を残す
- 納品時に照らす:注文控えと納品書・現物の品目、規格、数量を見比べ、違いを書き留める
- 請求書と突き合わせる:書き留めた違いが反映されているかを見る
- リストを直す:規格や締め時間の変更を次の発注に反映する
▼ 図の内容を文字で読む
- 連絡の中身を聞く:いつから、どの品目が、どのような理由で変わるか。包装の容量や規格も確かめる
- 5項目で他の取引先と並べる:同じ規格を扱う取引先の条件と比べる
- 同じ単位で見比べる:送料を含めた1か月の支払額で、請求書の明細と他の取引先の条件を揃える
- 表示への影響を確かめる:切り替える場合に、表示を直す必要があるか
- 発注リストを直す:取引先・規格・締め時間を書き換える
発注リストや納品時の照合を始めても、数人で回す店では担当の決め方や控えの置き場所で迷いが残りやすくなります。 自店の人数と取引先の数に合わせて、誰がどの食材を発注し、控えと納品書をどこで照らすかの流れを整理できます。
よくある質問
取引先は何社に分けるのがよいですか。1社に集約するのと分散するのとでは何が違いますか
何社が正解という数はありません。
1社にまとめれば、注文の回数も請求書の枚数も減りますが、その取引先が止まるとまとめた食材がすべて止まります。
分散すれば止まったときの備えは厚くなりますが、締め時間や支払日が取引先の数だけ増えます。
日持ちがして同じ規格を他でも買える食材はまとめ、毎日使い、日持ちが短く、置き換えにくい食材だけ二つ目の取引先を考えると、手間と備えの釣り合いを取りやすくなります。
小口でも取引してくれる卸や問屋を探すには、どこに相談すればよいですか
使いたい製品が決まっているなら、その製品のメーカーに、取扱いのある卸を教えてもらう方法があります。
いま取引している卸に、他の食材も一緒に頼んで合計で条件を見てもらえるかを聞くのも一つの手です。
どの相手にも、最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性を同じ言葉で聞くと、答えを比べやすくなります。
取引先が免税事業者の場合、インボイスの扱いで気を付けることは何ですか
買手が仕入税額控除を受けるには、原則としてインボイス発行事業者から交付されたインボイスの保存が必要です。
免税事業者等からの仕入れには、仕入税額相当額の一部を控除できる経過措置があり、国税庁は期限を令和13年(2031年)9月末と示しています。
簡易課税制度・2割特例・3割特例を使う場合は、消費税の計算上インボイスの保存は不要ですが、所得税などの観点から請求書等の保存は必要です。
自店への影響は計算方法によって変わるため、税理士や税務署に確かめてください。
発注方法を電話やLINEからWeb発注へ変えたいとき、取引先に何を確認しますか
まず、その取引先がWebでの注文を受け付けているかを聞きます。
受け付けている場合は、Webでの締め時間が電話と同じか、注文を受けた知らせが届くか、注文の変更や取消しをどうするかを確かめます。
あわせて、送った注文の内容が手元に控えとして残るかも見ておくと、納品時の照合に使えます。
バターや卵が値上がり・欠品したとき、代替品に変える前に確認することは何ですか
代わりの規格で配合や焼き上がりが変わらないかを、少量で試して確かめます。
次に、その規格を扱う取引先の条件を、最低注文・配送頻度・締め時間・支払条件・規格の安定性の5項目で今の取引先と並べます。
原材料やアレルゲンの表示をしている商品では、切り替える前に表示を直す必要があるかも確かめます。
そのために、代わりの食材の原材料の情報を取引先から書面で受け取っておきます。
- 1 出典:農林水産省「バター及び脱脂粉乳の輸入枠数量の検証(令和8年度)」(2026年)
- 2 出典:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」(2026年)
- 3 出典:国税庁「インボイス制度の概要(適格請求書等保存方式)」(2026年)
- 4 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業・小規模企業者の定義」(2026年)
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