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FAX-OCRの導入前に確認すること:帳票別の読み取り条件と試験の進め方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • FAX-OCRで変わるのは手入力から確認への移行で、読み取り結果の校正・修正は人の作業として残る
  • 読み取りの精度は帳票の型・手書き・FAXの画質で変わり、提供元が示す約98%は自社帳票の精度を保証しない
  • 紙に出さずに受信データをOCRへ渡せるか、出力したCSVを取り込み先でそのまま使えるかを試験で確かめる
  • 項目別の一致率と確認・修正時間を測り、現行の手入力時間との差を料金と並べて導入を判断する
  • 取引先への電子化の相談とFAX-OCRは二択ではなく、取引先ごとに組み合わせられる

40代前半の日本人女性が窓際での書類確認をしている場面

FAX帳票の手入力が重い理由と、FAX-OCRが肩代わりする範囲

取引先から届くFAX注文書を一枚ずつ見ながら受注システムへ打ち込み、打ち終えてからまた数量や品番を見直す。
その作業をFAX-OCRで減らせないかと考えているなら、最初に押さえたいのは、変わるのは「打つ作業」が「確かめる作業」に置き換わる部分だという点です。
項目の読み取りとCSVなどへの出力は機械に任せられますが、読み取り結果の校正・修正は人に残ります。
どこまで読めるかは帳票の型とFAXの画質で変わるため、提供元が示す認識率で決めず、自社に届く実際の帳票で試してから導入を判断するのが確かな進め方です。

受注現場で手入力が負担になっている実態

FAX注文書の入力は、文字を打つだけの作業ではありません。
届いた紙や画像から取引先名・品番・数量・納期を拾い出し、受注システムの入力欄へ移し、打ち終えたら元の注文書と見比べて誤りがないかを確かめます。
一枚に書かれた品目が多いほど、転記と照合の往復は増えます。
取引先ごとに注文書の様式が違えば、欄の位置を探し直す手間も加わります。

食品の小売・卸売業で受注業務を担当する人を対象にした2023年のインターネット調査では、FAX・メール・電話で受注している担当者(n=90)のうち60%が「注文書の手入力に手間がかかる」と答えています5。
食品業に限った調査で、実施したのは受注業務向けの製品を扱う企業なので、全業種の実態としては読めません。
それでも少なくともこの調査の対象では、手入力の手間を感じている担当者が半数を超えていました。
入力ミスを防ぐための見直しまで含めると、負担は打鍵の時間だけでは測れないことも想像しやすいはずです。

OCRが担う工程と、人に残る校正・修正

OCR(光学文字認識)は、画像の中の文字を読み取ってテキストデータに変える技術です。
FAX-OCRでは、受信したFAX画像を読み取りソフトへ渡し、注文書の決まった欄から品番や数量などの項目を取り出して、他のシステムへ取り込める形で出力します。
2023年に発表されたクラウドFAXとAI-OCRの連携では、受信したFAX画像を指定フォルダーへ自動保存し、OCRへ自動で登録して項目をテキスト化し、CSVで出力して基幹システムへ取り込める流れが示されています6。

一方で、読み取った結果がそのまま正しいとは限りません。
FAX-OCRの製品を提供するPFU自身も、OCRの後に認識結果の校正・修正の手間が発生することを課題として挙げています1。
なくなるのは「空の入力欄に一から打ち込む作業」で、「読み取り結果が注文書と合っているかを確かめ、違っていれば直す作業」は残ります。

この違いは、導入後の働き方を見通すうえで大事です。
入力が丸ごと不要になると期待して導入すると、確認画面で修正に追われたときに「思ったほど楽にならない」と感じやすくなります。
反対に、確認と修正の作業がどれだけ軽くなるかを最初から測る対象にしておけば、試験の段階で効果を判断できます。
どこまでが見比べるだけで済み、どこから打ち直しになるかは、次に見る帳票の型と画質で大きく変わります。

FAX注文書の入力作業で、機械に任せられる部分と人に残る部分(模式図)
現行の手入力、OCRが担う読み取りと出力、人に残る校正・修正の三つに分けた図現行の手入力、OCRが担う読み取りと出力、人に残る校正・修正の三つに分けた図今の手入力取引先名・品番・数量・納期を注文書から拾い出して入力欄へ移す打ち終えて元の注文書と見比べるOCRが担う部分項目の読み取りCSVなどへの出力人に残る部分読み取り結果の校正・修正

▼ 図の内容を文字で読む
  • 今の手入力
    • 取引先名・品番・数量・納期を注文書から拾い出して入力欄へ移す
    • 打ち終えて元の注文書と見比べる
  • OCRが担う部分
    • 項目の読み取り
    • CSVなどへの出力
  • 人に残る部分
    • 読み取り結果の校正・修正

自社のFAX帳票は読み取れるか:帳票の型・手書き・画質で仕分ける

定型か、取引先ごとの様式か

最初の分かれ目は、注文書の様式がそろっているかどうかです。
定型帳票とは、項目の位置と書式が決まっている帳票のことで、自社で配った注文書のフォーマットに取引先が記入して送り返してくる場合が代表的です。
一方、取引先がそれぞれ自社の書式で送ってくる注文書は、同じ「品番」でも欄の位置や呼び方が帳票ごとに違います。
読み取る位置の設定を帳票ごとに用意する必要がある製品では、様式の種類が増えるほど準備と確認の手間も膨らみます。

扱える帳票の範囲は製品やサービスによって違います。
たとえばPFUの無償事前検証サービスは定型帳票だけを対象にしており、位置が多少ずれる準定型の帳票は60日間の無償評価版を使って自社で検証する扱いです2。
手元の注文書を「自社様式に記入してもらうもの」と「取引先の様式で届くもの」に分け、それぞれ月に何枚届くかを数えておくと、どの帳票から試すか、どの試し方が使えるかを絞り込めます。

手書きの扱い

同じ定型の注文書でも、品番や数量が印字されているか、手書きで記入されているかで読み取りの難しさは変わります。
手書きの帳票については、NTTデータが6自治体の実帳票73種を使い、くせ字などを含む手書きサンプルでAI-OCRを検証した結果を2019年に公表しており、正読率は約93%でした4。

ただし、これは自治体の帳票を対象にした検証で、FAXで届いた帳票ではありません。
正読率の定義や、人による補正があったかどうかも示されていません。
この値から、FAXで届く手書きの注文書が何%読めるかを見積もることはできません。
言えるのは、手書きを含む帳票では条件を整えた検証でも全件が正しく読めたわけではない、という範囲までです。

実務で役立つのは、手書きの注文書を印字のものと混ぜずに分けて試すことです。
手書きの欄だけ読み違いが目立つなら、その欄だけ確認を手厚くする、あるいは手書きの多い帳票は当面OCRの対象から外す、といった判断を試験結果から下せます。
混ぜて試すと、全体の結果が平均されて、どの帳票が足を引っ張っているのかが見えにくくなります。

FAX特有の画質劣化

FAXならではの難しさが画質です。
PFUのコラムは、FAXは受信した時点ですでに低解像度で圧縮された画像になっており、それを紙に出してスキャンし直すとさらに劣化すると説明しています1。
そのうえで、紙をスキャンするより、複合機が受信したデータをそのまま使う方がよいと述べています1。

画質の問題には、受け手の側だけでは解決できない部分もあります。
原稿の傾きやかすれた印字は、取引先が送信した時点で画像に含まれているからです。
PFUは、取引先に送信方法の変更を頼むのは現実的でないとして、画像を補正する機能があるかを選定時に確かめるよう勧めています1。
同社が2025年に発売したDynaEye 11 Entry AI-OCRは、FAXやドットプリンター印字の読み取りに対応し、かすれや欠けに対する精度を高めたとしています3。

無償検証の受け付け条件も目安になります。
PFUの無償事前検証では、傾き5°未満、拡大縮小±10%未満、解像度200〜400dpi(300dpi推奨)の画像であることが条件です2。
受け付け条件に画質の範囲が定められていること自体、画像の状態が結果を左右することの表れといえます。
手元のFAX画像がこの範囲に収まるかを見るだけでも、そのまま試験に使える帳票と、受信経路から見直した方がよい帳票を分けられます。

提供元の認識率(98%・80%)の読み方

製品を調べると、認識率の数字が目に入ります。
PFUは、同社の基準帳票を用いたFAX注文書の認識精度として、AI-OCR(DynaEye 11)で約98%、従来OCRで約80%という結果を示しています1。
AI-OCRは、AI(機械学習)の技術を取り入れたOCRを指す呼び方です。

ただし、基準帳票がどのような様式か、何枚で測ったか、比べた従来OCRがどの製品かは記事に書かれていません。
文字単位の割合なのか、項目単位の割合なのかも示されていません。
提供元が自社製品と自社の基準帳票で測った値なので、他社製品との比較や、FAX注文書一般の認識率として読むことはできません。
読み取れるのは「条件の整った定型のFAX注文書であれば、この製品はこの程度まで読める」という提供元の主張の範囲です。

もう一つ気をつけたいのは、認識率が高くても確認の作業がなくなるわけではない点です。
誤りがどの項目に出るかを前もって知ることはできないので、誤りが少なくても全項目を元の画像と見比べる運用にすれば、確認にかかる時間はそれほど縮みません。
効果を左右するのは割合そのものより、どの項目で誤りが出やすく、どの項目なら見比べを軽くできるかという中身です。
それを知るには、自社の帳票で試すしかありません。

仕分けの軸 分け方 試験で見ること
帳票の型 自社様式に記入する定型/取引先ごとの様式 様式ごとに読み取り設定が要るか・検証サービスの対象になるか
記入方法 印字/手書き/混在 手書きの欄の読み取り結果を印字の欄と分けて記録
画質 傾き・拡大縮小・解像度・かすれ 傾き5°未満・拡大縮小±10%未満・200〜400dpiに収まるか
自社のFAX帳票を仕分ける三つの軸(模式図。画質の数値は一つの無償検証の受け付け条件の例)
帳票の型、手書き、画質の三つの軸ごとに、仕分けの分け方と試験で見ることを並べた図帳票の型、手書き、画質の三つの軸ごとに、仕分けの分け方と試験で見ることを並べた図帳票の型自社様式に記入してもらう定型の注文書取引先の様式で届く注文書月に何枚届くかを数える手書き印字のものと混ぜずに分けて試す手書きの欄だけ読み違いが目立つかを見るFAXの画質無償検証の条件の例は傾き5°未満・拡大縮小±10%未満解像度は200〜400dpi(300dpi推奨)手元のFAX画像が範囲に収まるかを見る

▼ 図の内容を文字で読む
  • 帳票の型
    • 自社様式に記入してもらう定型の注文書
    • 取引先の様式で届く注文書
    • 月に何枚届くかを数える
  • 手書き
    • 印字のものと混ぜずに分けて試す
    • 手書きの欄だけ読み違いが目立つかを見る
  • FAXの画質
    • 無償検証の条件の例は傾き5°未満・拡大縮小±10%未満
    • 解像度は200〜400dpi(300dpi推奨)
    • 手元のFAX画像が範囲に収まるかを見る

受信から登録までの組み方:複合機・クラウドFAX・オンプレミスの違い

受信画像の渡し方

読み取れそうな帳票が見えてきたら、次は届いたFAXをどうやってOCRへ渡すかです。
前の節で見たとおり、紙に出してスキャンし直すと画像はさらに劣化するので、受信した画像データをそのまま読み取りへ回せる経路があるかどうかが、精度に関わる最初の分かれ目になります1。

今、複合機でFAXを受けて紙で印刷している現場なら、まず確かめたいのは、受信したデータを紙に出さずにファイルとして保存し、そこからOCRへ渡せるかどうかです。
保存や転送の方法は複合機の機種や設定によって違うため、複合機の保守窓口や販売元に、受信データをファイルとして取り出せるか、どの形式・解像度で保存されるかを聞いておく必要があります。
ここが分からないまま試験に進むと、試験ではきれいな画像を使い、本番では紙からスキャンした画像を使う、という食い違いが起きやすくなります。

インターネット経由でFAXを受けるクラウドFAXを使う組み方もあります。
2023年に発表された連携では、クラウドFAXの「まいと~く Cloud」が受信したFAX画像を指定フォルダーへ自動保存し、登録ツールがAI-OCRの「WisOCR」へ自動で登録する流れでした6。
紙を介さずに画像が読み取りへ届くため、画質の面ではPFUが勧める「受信データをそのまま使う」形に近い組み方です。
ただし発表時点の内容で、現在の仕様や提供条件、料金はこの発表からは分かりません。

出力形式と連携先

読み取った項目は、受注システムや販売管理などへ取り込まれて初めて手入力の代わりになります。
まいと~く CloudとWisOCRの連携では、項目をテキスト化してCSVで出力し、基幹システムへ取り込める形でした6。
PFUのDynaEye 11 Entry AI-OCRは、出力データ変換によって連携先に合わせた形で出力できるとしています3。
同製品は年額のライセンスで自社環境に導入する形で、生成AIオプションを使う場合はインターネット接続が必要とされています3。

ここで迷いやすいのは、「CSVで出せる」ことと「自社のシステムがそのCSVをそのまま受け取れる」ことが別の話だという点です。
受注システムの取り込み機能が求める列の並び、日付や金額の書き方、取引先コードや商品コードがそろっていなければ、出力されたCSVを人が手で整える作業が新たに生まれます。
取引先が注文書に書く品名と、自社システムの商品コードが一致しない場合も同じです。
試験の段階で、出力されたCSVを実際に取り込み先へ入れてみるところまで確かめると、この手直しが発生するかどうかが分かります。

導入担当と現場担当で見るべき点

導入を決める人と、毎日FAXを受けて確認画面に向かう人が別の場合、同じ試験結果を見ても気にする点が違います。
導入を決める人は、費用、試験で得た読み取り結果、取り込み先との接続にかかる手間を見て、続ける価値があるかを判断します。
現場で確認する人は、読み取り結果と元のFAX画像を見比べやすいか、どの項目で修正が多いか、一枚の修正にどれだけ時間がかかるかを見ます。

試験の結果を認識率という一つの数字だけで共有すると、現場が感じている修正の手間が判断の場に伝わりにくくなります。
確認する人が修正した項目とかかった時間を記録し、判断する人がそれを費用と並べて見る、という分担にしておけば、両者が同じ結果をもとに話し合えます。
次の節で扱う試験の指標は、この記録を取りやすくするための考え方です。

確認する軸 クラウドFAX+AI-OCRの連携例 PFU DynaEye 11 Entry AI-OCR
受信画像の渡し方 クラウドFAXが受信画像を指定フォルダーへ自動保存しOCRへ自動登録 FAXの読み取りに対応・受信データの渡し方は自社の受信環境で確認
出力 項目をテキスト化しCSVで出力 出力データ変換で連携先に合わせて出力
提供と料金 発表時点で料金・提供条件の記載なし 年額ライセンス・自社環境に導入
導入前に確かめること 現行の仕様と自社システムへのCSV取り込み 自社帳票での試用結果と取り込み先の形式
受信画像の渡し方の違いと導入前に確かめること(模式図。クラウドFAXは発表時点の例)
複合機、クラウドFAX、自社環境に導入するOCRの三つの組み方について、確かめる点を比べた図複合機、クラウドFAX、自社環境に導入するOCRの三つの組み方について、確かめる点を比べた図複合機で受ける受信データをファイルとして取り出せるかどの形式・解像度で保存されるかクラウドFAXで受ける受信画像を指定フォルダーへ自動保存しOCRへ自動登録する連携例がある現在の仕様や料金は発表からは分からない自社環境に導入する年額のライセンスで導入する生成AIオプションはインターネット接続が必要出力したCSVが取り込み先にそのまま入るかを確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 複合機で受ける
    • 受信データをファイルとして取り出せるか
    • どの形式・解像度で保存されるか
  • クラウドFAXで受ける
    • 受信画像を指定フォルダーへ自動保存しOCRへ自動登録する連携例がある
    • 現在の仕様や料金は発表からは分からない
  • 自社環境に導入する
    • 年額のライセンスで導入する
    • 生成AIオプションはインターネット接続が必要
    • 出力したCSVが取り込み先にそのまま入るかを確かめる

導入前に自社帳票で試す:無償検証と指標の設計

無償検証・無料試用の条件

提供元が用意している無償の試し方は、試験の入口として使えます。
PFUの無償事前検証サービスでは、帳票は2種類まで、1種類につき未記入の帳票1枚、記入済みのサンプル最大10枚、読み取りたい項目の情報(1帳票あたり最大20項目)を用意すると、約10営業日で評価結果のPDFと読み取り結果のCSVが届きます2。
対象は定型帳票のみで、個人情報や秘密情報を含む帳票は受け付けていません2。
また、DynaEye 11 Entryの無料試用は100ページまでとされています3。

二つの試し方は、分かることが違います。
無償検証は提供元が読み取りを行って結果を返す形なので、自社の帳票が読めそうかどうかの手掛かりを、手間をかけずに得られます。
ただし、送れるのは個人情報を含まない帳票に限られ、送った画像が本番と同じ受信経路で得たものになるとは限りません。
無料試用や、PFUが準定型の帳票向けに用意している60日間の無償評価版では、自社で受信したFAXを自分たちで読み取らせて結果を確かめられます23。
確認や修正にかかる時間は、こうして自社の環境で試す段階で測ることになります。
他社製品の試用条件はそれぞれ違うので、比べる製品ごとに提供元へ確かめてください。

試験に使う帳票の選び方

前の節で行った仕分けを、ここで使います。
試験の帳票は、届く枚数の多い定型の注文書を中心にしつつ、手書きが混じるものや画質の悪いものもあえて入れておくと、本番で起きる読み違いを試験の段階で見られます。
きれいな帳票だけで試すと結果は良く見えますが、導入後に届くFAXがすべてそうとは限りません。

画像の取り方も本番に合わせます。
試験に使うのは、実際の運用と同じ経路で受け取ったFAX画像です。
紙のFAXを丁寧にスキャンし直した画像や、送信前の原本をスキャンした画像で試すと、本番とは画質の条件が変わり、結果をそのまま当てはめられません。
無償検証に出す画像と自社で試す画像の取り方が違う場合は、その違いを結果と一緒に記録しておくと、後で読み違えずに済みます。

測る指標の案

何を測るかを決めずに試験を始めると、「だいたい読めた」という印象しか残りません。
判断に使える指標として、次の表のようなものが考えられます。
これは事例の実測値ではなく、試験を設計するための提案です。

項目別に分けるのは、全体の一致率が高くても、数量や品番のように誤りがそのまま誤った受注につながる項目に読み違いが集中していれば、そこだけは全件を見比べる確認が残るからです。
項目ごとの結果があれば、重点的に見る欄と、目を通すだけで済む欄を分けて確認の手順を組めます。

確認時間を測るのは、導入の効果が読み取りの正確さそのものより、今の手入力にかかっている時間と、導入後の確認・修正にかかる時間の差に表れるからです。
試験の前に、同じ帳票で今の手入力に一枚どれだけかかっているかを測っておくと、比べる土台ができます。
打ち直しの枚数は、読み取りがほとんど役に立たなかった帳票を見つけるための指標です。
同じ取引先の帳票で打ち直しが続くなら、その帳票はOCRの対象から外すか、次の節以降で触れる別の手段を考える材料になります。

指標 測り方 判断に使う場面
項目別の読み取り一致率 品番・数量・納期など項目ごとに元の注文書と一致した割合を数える どの欄を重点的に確認するかを決める
一枚あたりの確認・修正時間 現行の手入力と同じ帳票・同じ測り方で時間を計る 手入力との差から効果を見積もる
打ち直しになった枚数 読み取りを使わず一から入力し直した枚数を数える OCRの対象から外す帳票を決める
取り込み時の手直し CSVを取り込み先へ入れる前後に人が整えた件数を数える 出力形式や連携の設定を見直す
自社帳票でFAX-OCRを試して判断するまでの手順
帳票の仕分けから、現行の手入力時間の計測、本番と同じ経路での試用、記録、取り込み確認、費用と並べた判断までの六段階1帳票を型・手書き・画質で仕分ける2同じ帳票で今の手入力にかかる時間を測る3本番と同じ経路で受け取ったFAX画像で試す4項目別の一致率・確認・修正時間・打ち直しの枚数を記録する5出力したCSVを取り込み先へ入れて手直しの有無を見る6費用と並べて導入を判断する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 帳票を型・手書き・画質で仕分ける
  2. 同じ帳票で今の手入力にかかる時間を測る
  3. 本番と同じ経路で受け取ったFAX画像で試す
  4. 項目別の一致率・確認・修正時間・打ち直しの枚数を記録する
  5. 出力したCSVを取り込み先へ入れて手直しの有無を見る
  6. 費用と並べて導入を判断する

費用は何で決まるか:定額ライセンスの例と見積もりの軸

確認できた公式料金の例

料金を公表している例として、PFUのDynaEye 11 Entry AI-OCRがあります。
ライセンスは初年度2,016,000円、2年目以降は年336,000円(いずれも税抜)で、サポートを含み、読み取り枚数の制限はありません3。
これは2025年の発売時に公表された、この製品の料金です。
FAX-OCRの相場を示す値ではなく、この料金だけで費用に見合うかどうかも決められません。

枚数の制限がない定額の料金は、読み取る枚数が多いほど一枚あたりの費用が下がる形です。
逆に、月に届くFAXの枚数が少ない現場では、同じ料金が一枚あたりでは重くなります。
料金が枚数で変わるのか、帳票の種類数やサポートの範囲で変わるのかは提供元ごとに確かめる必要があり、複数の製品を比べるときは、数え方をそろえて自社の枚数で見積もりを取ると比べやすくなります。

自社の見積もり軸

費用に見合うかは、ライセンス料金だけでは決まりません。
読み取りの後には校正・修正の作業が残るので1、その作業にかかる時間も費用の一部として見積もる必要があります。
見積もりで並べる材料は、月にOCRへ回すFAXの枚数、帳票の種類とそれぞれに読み取りの設定が要るかどうか、試験で測った一枚あたりの確認・修正時間、CSVを取り込み先へ合わせる作業の四つです。

比べ方の筋道はこうなります。
現行の手入力で一枚にかかる時間と、試験で測った確認・修正の時間の差に、月の枚数を掛ければ、毎月浮く作業時間の見込みが出ます。
それを年に直し、ライセンス料金や取り込みの手直しにかかる時間と並べれば、導入する価値があるかを自社の数字で話し合えます。
どの数字も試験で測ったものなので、提供元の認識率から逆算するより、自社の実情に近い見積もりになります。

差が小さかったり、確認・修正の方が手入力より時間がかかったりした場合、それは製品の良し悪しより、試した帳票の型や画質がOCRに向いていないことを示している場合があります。
手書きの多い帳票を対象から外す、紙に出さずに受信データを渡す経路へ変えるなど、対象と組み方を絞り直して試す余地があります。
どの帳票で差が出なかったのかは、前の節で記録した項目別の結果と打ち直しの枚数を見れば突き止めやすくなります。

自社の数字で費用に見合うかを見積もる筋道
一枚あたりの時間の差に月の枚数を掛け、年に直して料金や取り込みの手直しと並べ、判断する五段階1手入力と確認・修正の一枚あたりの時間の差を出す2差に月の枚数を掛けて毎月浮く作業時間を出す3年に直す4ライセンス料金や取り込みの手直しと並べる5導入するか、対象を絞り直すかを判断する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 手入力と確認・修正の一枚あたりの時間の差を出す
  2. 差に月の枚数を掛けて毎月浮く作業時間を出す
  3. 年に直す
  4. ライセンス料金や取り込みの手直しと並べる
  5. 導入するか、対象を絞り直すかを判断する

FAX-OCRを続けるか、取引先に電子データを依頼するか

取引先を変えられるか

FAX-OCRの強みは、取引先に何も変えてもらわずに、受け手の側だけで始められることです。
PFUも、取引先に送信方法の変更を頼むのは現実的でないという前提で、受け手の側での補正を勧めています1。
先に触れた食品業の調査でも、受注業務の担当者(n=106)のうちFAXを受注方法に使っている人は67%でした5。
少なくともこの調査の対象では、FAXは多くの担当者が使う受注手段であり、相手を巻き込まずに入力を効率化できる点は、FAX-OCRを選ぶ理由になります。

一方、取引先が受発注システムやメールで電子データを送れるなら、画像から文字を読み取る工程そのものが要らなくなり、読み違いを確かめる作業も減る可能性があります。
ただし、取引先ごとに送り方やデータの形が違えば、受け取る形式の数だけ取り込みの手間が増えることもあります。

実際には、全取引先を一度に切り替えるか、FAX-OCRにすべてを任せるかの二択ではありません。
注文の件数が多い取引先や、すでに電子データで出せる取引先には電子化を相談し、残るFAXをOCRで受ける、という組み合わせも考えられます。
どちらを優先するかは、取引先ごとの注文件数と、試験で打ち直しが多かった帳票がどの取引先のものかを見比べると決めやすくなります。
読み取りが難しい帳票を送ってくる取引先ほど、電子化を相談したときの効果が大きいからです。

INSネット終了の確認事項

取引先のFAX環境について話題にのぼりやすいのが、INSネットの終了です。
NTT西日本は、INSネットの新規・移転の受け付けを2024年に終え、サービスの提供を2028年の年末で終了すると案内しています7。

ただ、この案内にはFAXの扱いについての記載がなく、INSネットの終了によって取引先からのFAXが届かなくなるかどうかは、ここからは分かりません。
INSネットの回線でFAXを送っている取引先がいる場合は、終了後の送信方法をどうする予定かを、通常のやり取りの中で聞いておくと受信側の準備に役立ちます。
電子データへの切り替えを相談する場合も、この終了を期限として持ち出すより、注文の受け渡しを双方で楽にする話として進める方が実情に合います。

取引先の状況に応じたFAX-OCRと電子化の使い分け(模式図)
取引先に変更を頼まない場合、電子データで送れる場合、両者を組み合わせる場合の三つに分けた図取引先に変更を頼まない場合、電子データで送れる場合、両者を組み合わせる場合の三つに分けた図取引先に変更を頼まない受け手の側だけでFAX-OCRを始められる電子データで送れる取引先画像から文字を読み取る工程が要らなくなる受け取る形式の数だけ取り込みの手間が増えることもある組み合わせる注文件数が多い取引先と電子データで出せる取引先には電子化を相談する残るFAXをOCRで受ける打ち直しが多かった帳票の取引先ほど電子化の効果が大きい

▼ 図の内容を文字で読む
  • 取引先に変更を頼まない
    • 受け手の側だけでFAX-OCRを始められる
  • 電子データで送れる取引先
    • 画像から文字を読み取る工程が要らなくなる
    • 受け取る形式の数だけ取り込みの手間が増えることもある
  • 組み合わせる
    • 注文件数が多い取引先と電子データで出せる取引先には電子化を相談する
    • 残るFAXをOCRで受ける
    • 打ち直しが多かった帳票の取引先ほど電子化の効果が大きい

どの帳票から試し、何を測れば判断できるかは、届いている注文書の様式や枚数、受信の方法、取り込み先のシステムを並べて見ないと決めにくいからです。

自社のFAX帳票を型・記入方法・画質で仕分け、試験に使う帳票と測る指標を整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

人に残る作業 読み取り結果の校正・修正は自動化されず、確認作業として残る
帳票の仕分け 定型か取引先ごとの様式か、印字か手書きか、画質が検証条件に収まるか
提供元の認識率 PFUの約98%は同社基準帳票での値で、自社帳票の精度の保証ではない
画像の渡し方 紙に出さず、受信データをそのままOCRへ渡せる経路を確かめる
試験で測るもの 項目別の一致率、確認・修正時間、打ち直し枚数、取り込み時の手直し
費用の比べ方 手入力時間と確認時間の差に枚数を掛けた見込みを、料金と並べる
取引先との関係 件数の多い先や電子データを出せる先から電子化を相談し、残りをOCRで受ける

試験の結果が出た後は、確認時間の差と費用、取り込み先との接続、取引先への電子化の相談をどう組み合わせるかという、社内だけでは比べにくい判断が残るからです。 試験で記録した結果をもとに、OCRの対象とする帳票の範囲と、取引先ごとの進め方を整理できます。

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よくある質問

手書きの注文書や欄外メモはFAX-OCRで読めるのか

手書きの欄は、印字に比べて読み違いが出やすい前提で試すのが安全です。
自治体の手書き帳票をAI-OCRで検証した例では正読率が約93%と公表されていますが、FAXで届いた帳票ではなく、FAX注文書の精度の目安にはなりません4。
また、PFUの無償検証では読み取りたい項目をあらかじめ指定します2。
欄外のメモのように位置が決まっていない書き込みは項目として扱いにくいため、確認のときにFAX画像を見て拾う運用を前提にしておくと見落としを防げます。

複合機で受信したFAXと、紙をスキャンしたFAXで精度は変わるか

PFUは、FAXは受信した時点で低解像度・圧縮済みの画像になっており、紙に出してスキャンし直すとさらに劣化するとして、複合機が受信したデータをそのまま使う方がよいと説明しています1。
受信データをファイルとして取り出せるかは複合機の機種や設定によるため、保守窓口などに確かめてから試験の画像を用意してください。

導入を決める人と実際に確認する現場担当者は、何を分担して見るべきか

現場の担当者は、項目ごとの修正の多さと一枚あたりの確認・修正時間を記録し、導入を決める人はその記録を費用や取り込み先との接続の手間と並べて判断する、という分け方が考えられます。
認識率だけで結果を共有すると、現場の修正の手間が判断に反映されにくくなります。

個人情報を含む帳票は無償検証に出せるか

PFUの無償事前検証サービスは、個人情報や秘密情報を含む帳票を受け付けていません2。
実際の注文書で試したい場合は、無料試用や無償評価版を使って自社の環境で読み取らせる方法があります23。
無償検証用に記入内容を置き換えた帳票を作る場合は、本番と同じ受信経路の画質にならない点を結果の読み方に含めておく必要があります。

取引先ごとにレイアウトが違う注文書はどう扱うか

PFUの無償事前検証は定型帳票のみが対象で、準定型の帳票は60日間の無償評価版で自社検証する扱いです2。
様式ごとに読み取りの設定が必要な製品では、様式の数だけ準備と確認の手間が増えます。
まずは枚数の多い取引先の様式から試し、打ち直しが多い様式は対象から外すか、その取引先に電子データでの送付を相談するといった組み合わせで考えると進めやすくなります。

INSネットを使う取引先からのFAXは影響を受けるのか

NTT西日本はINSネットのサービス提供を2028年の年末で終了すると案内していますが、FAXの扱いについての記載はありません7。
影響の有無はこの案内からは判断できないため、該当する取引先には終了後の送信方法の予定を聞いておくと、受信側の準備に役立ちます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
  2. 2 出典:株式会社ピーエフユー「DynaEye 11 無償事前検証サービス」(2025年)
  3. 3 出典:株式会社ピーエフユー「DynaEye 11 Entry AI-OCR 発売ニュースリリース」(2025年)
  4. 4 出典:株式会社NTTデータ「町田市、郡山市、市川市、つくば市、横浜市、福岡市におけるAI-OCR実用性の検証結果について」(2019年)
  5. 5 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
  6. 6 出典:株式会社インプレス クラウド Watch「パナソニックとインターコム、AI-OCRとクラウドFAXの連携を発表」(2023年)
  7. 7 出典:NTT西日本「INSネットのサービス終了について」(2026年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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