◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 会計業務は証憑→帳簿→決算書→申告の順で進み、決算前に慌てる原因は証憑から帳簿への記録の遅れにある。
- 記録の水準は、法人は帳簿を備え付けて記録、個人の青色は原則正規の簿記(簡易簿記も可)、個人の白色は年月日・相手方・金額・日々の合計と、区分で異なる。
- 個人の青色申告特別控除は、55万円が正規の簿記・決算書の添付・期限内提出、65万円はさらにe-Tax送信か優良な電子帳簿保存が条件になる。
- 表計算・会計ソフト・委託は、狙う控除に必要な帳簿・送信・保存の条件を満たせるかで比べる。
- 保存期間は帳簿と書類で分かれ、法人は欠損金等が生じた事業年度を10年残すため、年度と種類ごとに分けて保管する。
目次

書類がたまったとき、まず何を渡し、何を受け取る流れか
請求書や領収書、注文書、通帳の明細がたまり、どこまで記録すれば決算や申告に間に合うのか見通せなくなることがあります。
会計業務は、取引の根拠となる書類を帳簿に記録し、決算書にまとめて申告する流れで進みます。
求められる記録の水準は、法人か、個人の青色申告か、個人の白色申告かで変わります。
個人の青色申告では、記帳の方法と、e-Taxによる送信や電子帳簿の保存によって、控除額が10万円・55万円・65万円に分かれます。
先に自分の区分と狙う控除を決め、それを満たせる手段を選び、月ごとに帳簿と書類を突き合わせておくと、決算前に1年分をさかのぼる手間を減らせます。
会計業務の流れ:取引→証憑→帳簿→決算書→申告
商品を売る、仕入れる、家賃を払うといった取引があるたびに、注文書・契約書・請求書・領収書のような書類が残ります。
会計では、取引があったことを示すこれらの書類を「証憑(しょうひょう)」と呼びます。
証憑の内容を帳簿に記録し、1年分(法人なら1事業年度分)の帳簿を集計して貸借対照表や損益計算書といった決算書にまとめ、それをもとに申告します。
会計業務はこの順番で進みます。
書類がたまって先が見えなくなっているとき、流れの中で止まっているのは、証憑から帳簿への記録です。
決算書は帳簿を集計した結果なので、帳簿が埋まっていなければ作り始められません。
決算の時期に慌てるかどうかは、決算そのものの作業より、その手前の記録がどこまで進んでいるかで大きく変わります。
このとき、自分が流れのどこにいるかを整理しておくと、何を揃えればよいかがはっきりします。
取引先からは請求書や領収書を受け取り、自分が発行した請求書は控えを残します。
それらを帳簿に記録し、決算書を作り、申告書にまとめて提出するまでが、記録する側の仕事です。
税理士などに確認や作成を頼む場合も、帳簿と、その根拠になる証憑を揃えて渡すのは記録する側になります。
帳簿と書類の違い
国税庁は、法人が保存する帳簿の例として総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳などを、書類の例として棚卸表・貸借対照表・損益計算書・注文書・契約書・領収書などを挙げています1。
帳簿は自分が取引を書き込んでいく記録で、書類は取引の根拠や決算の結果として残る紙やデータです。
帳簿の名前は似ていて紛らわしいので、役割だけ押さえておきます。
仕訳帳は取引を日付順に記録する帳簿、総勘定元帳はその記録を現金・売上・仕入といった勘定科目ごとに集め直した帳簿です。
現金出納帳は現金の出入り、売掛金元帳はまだ受け取っていない売上代金、買掛金元帳はまだ払っていない仕入代金、固定資産台帳は長く使う設備などを、それぞれ追いかけるための帳簿です。
この区別が効くのは、たまった書類を前にしたときです。
領収書を受け取ってファイルに綴じても、それだけでは帳簿に記録したことになりません。
反対に、帳簿へ記録し終えたからといって、根拠の領収書を捨ててよいわけでもありません。
帳簿と書類は対になって保存されるもので、どちらかが欠けると、後から取引の中身を説明しにくくなります。
なお、ここに挙げた帳簿と書類は法人税法上の例示です。
個人事業の場合に必要な帳簿は、青色申告か白色申告かで変わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引(売上・仕入・経費の支払いなど)
- 証憑(注文書・契約書・請求書・領収書など)
- 帳簿(仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳など)
- 決算書(貸借対照表・損益計算書)
- 申告
法人・個人の青色・個人の白色で、記録の水準はどう違うか
法人
法人は、帳簿を備え付けて取引を記録し、関連する書類とあわせて保存することが法人税法で求められています1。
例示されている帳簿には仕訳帳と総勘定元帳が含まれ、現金・売掛金・買掛金・固定資産ごとの帳簿まで並んでいます。
取引を日付順に記録し、勘定科目ごとに集計して決算書を作れる状態を、日々の記帳で保つことが前提になります。
後で触れる10万円・55万円・65万円の青色申告特別控除は、個人の不動産所得・事業所得に関する制度で、法人には当てはまりません4。
法人の担当者は、控除額から記帳の水準を選ぶのではなく、帳簿を備え付けて記録するという前提から手段を考えることになります。
個人の青色申告
不動産所得・事業所得・山林所得がある個人で青色申告をする人は、日々の取引を記録し、関連する書類を保存します2。
記帳の方法は原則として正規の簿記で、簡易簿記も認められています2。
正規の簿記は一般に複式簿記による記帳を指し、一つの取引を「何が増えて何が減ったか」の両面から仕訳帳に記録し、総勘定元帳を経て貸借対照表と損益計算書まで作れる形にする方法です。
簡易簿記は、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などを使い、取引の種類ごとに帳簿を分けて記録する方法です2。
どちらを選ぶかは、記帳の手間だけの話ではありません。
個人の青色申告では、記帳の方法によって受けられる控除額が変わるため、この選択がそのまま控除の判断につながります。
個人の白色申告
不動産所得・事業所得・山林所得がある個人で白色申告をする人にも記帳は求められ、取引の年月日・相手方・金額と日々の合計を記録します3。
記録の方法は簡易なものでも認められています3。
白色申告は青色申告の承認を受けずに行う申告で、記録の項目は3区分の中でもっとも絞られています。
ただし「白色なら記録しなくてよい」わけではなく、年月日・相手方・金額という項目は、領収書や請求書から帳簿へ移しておく必要があります。
白色のまま進めるか、承認申請をして青色に移るかは、控除の差と記帳の負担を比べて決めることになります。
3区分の比較表
3区分を、対象・記録すること・使う帳簿・保存期間という同じ軸で並べると、次のようになります。
表の中で判断が分かれるのは、個人の場合に青色の承認を受けているかどうかと、青色なら正規の簿記と簡易簿記のどちらで記帳するかの2点です。
法人であれば区分の迷いはなく、帳簿を備え付けて記録する前提から始まります。
個人で、いまの記帳が日付・相手・金額を並べた一覧にとどまっているなら、白色の項目は満たしていても、青色の簡易簿記で使う帳簿の形にはまだなっていません。
| 区分 | 対象 | 記録すること | 使う帳簿の例 | 保存期間 |
|---|---|---|---|---|
| 法人 | 法人 | 帳簿を備え付けて取引を記録し関連書類を保存 | 総勘定元帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳など | 7年(青色繰越欠損金が生じた事業年度などは10年) |
| 個人の青色申告 | 不動産・事業・山林所得がある青色申告者 | 日々の取引(原則は正規の簿記・簡易簿記も可) | 簡易簿記なら現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳など | 帳簿書類は原則7年(請求書・見積書・納品書・送り状などは5年) |
| 個人の白色申告 | 不動産・事業・山林所得がある白色申告者 | 取引の年月日・相手方・金額・日々の合計(簡易な方法も可) | 上記の項目を記録できる帳簿 | 記帳制度に基づく帳簿は7年(多くの書類は5年) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 法人か個人か(法人なら帳簿を備え付けて取引を記録)
- 個人で不動産・事業・山林所得があるか
- 青色申告の承認を受けているか(受けていなければ白色:年月日・相手方・金額・日々の合計)
- 青色なら正規の簿記か簡易簿記か
青色申告にするか、控除は10万・55万・65万のどれを狙うか
承認申請の期限と開業年の例外
青色申告をするには、事前に青色申告承認申請書を提出します。
提出期限は原則として、青色申告をしようとする年の3月15日までです5。
その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合や不動産の貸付けを始めた場合は、事業開始等の日から2か月以内が期限になります5。
開業した年の期限は、暦の日付ではなく開業日を起点に考えます。
たとえば仮に6月10日に開業したなら、その日から2か月以内が期限です。
一方、すでに事業をしていて翌年から青色に切り替えたい場合は、切り替える年の3月15日が期限です。
記帳の準備と申請の期限は別々に進むため、帳簿を整え始める前に期限を確かめておくと、後から申請が間に合っていなかったと気づく事態を避けやすくなります。
控除額別の要件表
青色申告特別控除の額は、記帳の方法と申告の仕方で3段階に分かれます4。
55万円控除の条件は、不動産所得や事業所得を生む事業を営み、正規の簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して翌年3月15日までに提出することです4。
65万円控除は、これに加えて、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿として保存するか、e-Taxで申告書と決算書を送信するかのどちらかが必要です4。
e-Taxで送る場合、紙の決算書をスキャンしたようなイメージデータでの送信は条件に当たりません4。
優良な電子帳簿で受ける場合は、令和4年分以後は届出が必要で、すでに要件を満たして継続している人は不要とされています4。
見落としやすいのは2点です。
一つは、現金主義の特例を選んでいると55万円控除は受けられないことです4。
もう一つは、期限内の提出が要件に含まれていることです。
帳簿を正規の簿記で整えていても、提出が翌年3月15日を過ぎれば55万円・65万円の要件を満たさなくなり、その場合は10万円控除の対象になるかどうかの問題になります4。
10万円控除は、55万円・65万円の要件に当たらない青色申告者が対象で、控除の上限は黒字の所得の合計額、赤字の所得は0として計算します4。
仮に事業所得だけがあり、その黒字が6万円なら、控除も6万円までです。
どれを狙うかは、続けられる記帳の水準で決まります。
日々の取引を正規の簿記で記録し、年が明けたら貸借対照表と損益計算書を作って期限内に出せるなら、55万円の要件はそろいます。
そこから65万円までの差は、e-Taxで送るか、優良な電子帳簿として保存するかという申告・保存の方法です。
反対に、帳簿をつける習慣を作るところから始める段階なら、簡易簿記で10万円控除を受けながら、翌年以降に正規の簿記へ移る進め方も考えられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 原則:青色申告をしようとする年の3月15日まで
- その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合:事業開始等の日から2か月以内
出典:国税庁「タックスアンサー No.2090 青色申告承認申請」(個人の青色申告承認申請書。確認時点の現行制度)
| 控除額 | 記帳 | 決算書の添付と提出 | 追加の条件 |
|---|---|---|---|
| 65万円 | 正規の簿記 | 貸借対照表・損益計算書などを添付し翌年3月15日までに提出 | e-Taxで申告書・決算書を送信(イメージデータ不可)または仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿で保存(令和4年分以後は届出が必要) |
| 55万円 | 正規の簿記 | 貸借対照表・損益計算書などを添付し翌年3月15日までに提出 | なし(現金主義の特例を選ぶと不可) |
| 10万円 | 55万円・65万円の要件に当たらない青色申告者 | ― | 上限は黒字の所得の合計額(赤字は0として計算) |
▼ 図の内容を文字で読む
- 青色申告の承認を受けている → 10万円控除の対象(上限は黒字の所得の合計額)
- 正規の簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して翌年3月15日までに提出 → 55万円控除
- さらにe-Taxで送信(イメージデータ不可)、または仕訳帳・総勘定元帳を優良な電子帳簿で保存 → 65万円控除
出典:国税庁「タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除」(個人の不動産所得・事業所得)
表計算・会計ソフト・委託は、何を基準に選ぶか
決まった水準から逆算する
手段を比べるときの基準は、使いやすさや慣れより先に、すでに決めた記録の水準を満たせるかどうかです。
個人の青色申告で55万円以上を狙うなら、仕訳帳と総勘定元帳をつけ、そこから貸借対照表と損益計算書を作れることが必要になります4。
65万円を狙うなら、その決算書をe-Taxで送信できる形で用意できるか、仕訳帳と総勘定元帳を優良な電子帳簿の要件に沿って保存できるかが加わります4。
簡易簿記で10万円控除を受けるなら、現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などを種類ごとにつけられることが中心になります2。
表計算は、帳簿の形を自分で設計できる反面、仕訳帳から総勘定元帳への集計や、決算書を作るまでの計算の仕組みも自分で組むことになります。
簡易簿記のように帳簿を種類ごとに分けて記録する方法なら、表計算の一覧と形が近く、取りかかりやすい面があります。
会計ソフトは、仕訳の入力から帳簿・決算書の作成までをまとめて扱うための道具ですが、どの帳簿を出力できるか、e-Taxで送る形式に対応しているか、優良な電子帳簿の要件を満たすかは製品ごとに異なります。
そのため、機能の多さではなく、狙う控除の条件に必要な項目を提供元の資料で一つずつ照らす比べ方になります。
委託は作業の一部を外へ出す方法で、何を自分に残すかによって負担が変わります。
優良な電子帳簿の要件で確認する項目
65万円控除はe-Taxでの送信でも受けられるため、優良な電子帳簿は必須の条件ではありません4。
それでも電子帳簿の道を選ぶ場合や、会計ソフトがこの要件に対応しているかを比べたい場合は、国税庁が示す要件がそのまま確認項目になります。
主な要件は次の5つです6。
・訂正や削除をしたときに、その履歴が残ること
・関連する帳簿どうしの記録が互いにたどれること
・日付・勘定科目・金額で記録を検索できること
・ディスプレイ・プリンタ・システム関係書類を備え付けていること
・データのダウンロードの求めに応じられること
訂正削除の履歴は、後から金額を直したときに、直す前と直した後の両方を追えるようにしておくという考え方です。
帳簿どうしの関連性は、仕訳帳の一行が総勘定元帳のどこに反映されたかをたどれることにあたります。
検索については、範囲を指定したり条件を組み合わせたりする検索は、ダウンロードの求めに応じられる場合には不要とされています6。
要件を満たして事前に届出をしておくと、過少申告加算税が5%軽減される扱いも示されています6。
ただし、対象となる税目や届出の手続の細かな条件は、選ぶ前に国税庁の案内で確かめておく必要があります。
委託する場合に分ける範囲
税理士などに会計の一部を頼む場合も、取引を起こし、証憑を受け取るのは事業者自身です。
委託できるのはその先の記帳や決算書の作成といった作業の一部で、どこまでを頼み、どこを相手が確認するかは、依頼先との取り決めによって決まります。
分け方の目安として、作業を三つに区切ると整理しやすくなります。
・証憑を集めて月ごとにまとめる作業
・証憑を帳簿に記録する作業
・帳簿から決算書を作り、申告書にまとめる作業
一つ目は、委託しても自分の手元に残ります。
二つ目を自分で行って三つ目を頼むのか、二つ目から頼むのかで、自分が用意して渡すものが変わります。
記帳まで自分で行うなら帳簿と証憑の両方を、記帳から頼むなら証憑と通帳の明細を、抜けのない状態で渡すことが中心になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 表計算
- 帳簿の形を自分で設計する
- 総勘定元帳への集計と決算書の計算も自分で組む
- 会計ソフト
- 必要な帳簿と決算書を出力できるか
- e-Tax送信や優良な電子帳簿の要件への対応は製品ごとに確認
- 委託
- 自分に残す作業と頼む作業を分ける
- 証憑の収集と受け渡しは自分の側に残る
月次で何を確認しておけば決算で慌てないか
月次の確認項目
決算書は1年分の帳簿を集計して作るため、帳簿の抜けや誤りに決算の時期になって気づくと、さかのぼって確かめる範囲が1年分に広がります。
個人の青色申告で55万円・65万円を狙う場合は、貸借対照表と損益計算書を添えて翌年3月15日までに出すことが要件なので4、年明けの作業時間は限られています。
月ごとに区切って確認しておけば、決算の時期に見直す範囲は直近の月に絞られます。
月末に確かめる項目は、次の4つを目安にできます。
・その月の領収書・請求書が、すべて帳簿に記録されているか
・通帳の残高と現金の手持ちが、帳簿上の残高と合っているか
・まだ入金されていない売上、まだ支払っていない仕入や経費を把握しているか
・内容が分からない入出金や、帳簿に入れられずに残っている書類がないか
これらは制度で定められた手順ではなく、保存する帳簿・書類の種類と控除の期限から考えた運用の一例です。
現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳といった帳簿と、領収書などの書類が対になって保存されること1を踏まえると、帳簿と書類、帳簿と口座を月ごとに突き合わせておく意味が見えてきます。
たとえば、口座から引き落とされた支払いの領収書が見当たらない場合を考えます。
月末の確認で気づけば、支払先に問い合わせたり、手元のメールを探したりする手掛かりがまだ新しいうちに対応できます。
同じことに翌年の決算で気づくと、どの月の何の支払いかを思い出すところから始めることになります。
月次の確認で減るのは、こうした後からの調べ直しです。
つまずきやすい点
通帳残高と帳簿残高が合わないとき、差額がちょうど一件分の支払い額と同じだと、その一件の記録漏れだと決めつけたくなります。
ただ、記録漏れと二重記録が重なって偶然その金額になっていることもあります。
差額の大きさだけで原因を決めず、明細と帳簿を一行ずつ照らして確かめるほうが、結果として早く片付きます。
事業の支払いと私的な支払いが同じ口座やカードで混ざっていると、月次の照合のたびに一件ずつ仕分ける手間がかかります。
どの支払いが事業のものかを判断するのは記録する側なので、迷った取引に印を付けておくだけでも、確認を頼む相手に渡すときの説明が短くなります。
メールや取引先のWebサービスで受け取った請求書・領収書は、紙の書類と違って机の上にたまらないぶん、目に入りにくくなります。
月次の確認で、紙の書類だけでなく電子で受け取った書類の置き場所も見ておくと、帳簿との突き合わせが紙と電子で分かれずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 証憑を集める
- 帳簿に記録する
- 通帳・現金の残高と照合する
- 未処理の書類と入出金を洗い出す
- 翌月の作業へ
帳簿・書類は何年保存するか、電子で受け取った書類はどうするか
形態別の保存期間表
保存期間は区分によって違い、同じ区分の中でも帳簿と書類の種類で期間が分かれます123。
法人は、帳簿書類を事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年保存します1。
ただし、青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じた場合や、災害損失金が生じた場合は、その事業年度は10年になります(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年)1。
全部の年度を一律に7年で廃棄する運用にしていると、10年残すべき年度の帳簿書類まで早く手放してしまうおそれがあります。
決算のたびに、その年度に欠損金が生じたかどうかを保存箱やフォルダの表書きに書いておくと、廃棄のときに見分けられます。
個人の青色申告者は、帳簿書類を原則7年保存し、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年です2。
個人の白色申告者は、多くの書類が5年、記帳制度に基づく帳簿は7年です3。
どちらも帳簿と取引先とやりとりした書類で期間が違うため、両方を同じ箱に入れて5年で整理すると、7年残すべき帳簿まで手放してしまうことがあります。
年ごとに箱やフォルダを分け、その中で帳簿と書類を別にまとめ、それぞれの保存期限を書いておくと、捨てる時期の判断を毎回やり直さずに済みます。
電子取引データの扱い
メールに添付されたPDFの請求書や、取引先のWebサービスからダウンロードした領収書のように、取引の情報を電子データでやりとりすることを電子取引と呼びます。
国税庁は法人の帳簿書類の保存期間の案内で、電子取引の取引情報に係る電磁的記録(データ)の保存は電子帳簿保存法の対象になると示しています1。
電子で受け取った書類は、紙の書類と同じ保存の考え方だけでは整理しきれず、データとしてどう保存するかが論点になります。
保存方法の具体的な要件は、電子帳簿保存法に関する国税庁の案内で確かめる必要があり、個人事業で電子の書類を受け取っている場合も、同じ案内で自分に当てはまる扱いを確かめておくことになります。
要件を確かめる前に紙へ印刷して元のデータを消してしまうと、後から保存方法を見直そうとしても元に戻せません。
要件を確かめるのと並行して手元でできるのは、電子で書類が届く経路を洗い出すことです。
取引先からのメール、利用しているサービスの管理画面、ネットで確認する明細など、どこに何が届くかが分かれば、月次の確認でその置き場所も見るようにできます。
| 区分 | 7年保存のもの | 期間が異なるもの |
|---|---|---|
| 法人 | 帳簿書類(確定申告書の提出期限の翌日から) | 青色申告書を提出した事業年度の欠損金や災害損失金が生じた事業年度は10年(平成30年4月1日前開始の事業年度は9年) |
| 個人の青色申告 | 帳簿書類(原則) | 請求書・見積書・納品書・送り状などは5年 |
| 個人の白色申告 | 記帳制度に基づく帳簿 | 多くの書類は5年 |
自分の区分と狙う控除が決まっても、手元にある注文書・請求書・領収書をどの帳簿へどう流すかは、取引の種類や量によって変わり、一人では整理しきれないことがあります。
相談では、いま受け取っている書類の種類と届く経路を一緒に洗い出し、取引から帳簿への記録がどこで止まっているかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 区分の特定 | 法人か個人か、個人なら青色申告の承認を受けているか |
| 記録の水準 | 法人は帳簿を備え付けて記録、個人の青色は原則正規の簿記(簡易簿記も可)、個人の白色は年月日・相手方・金額・日々の合計 |
| 控除 | 55万円は正規の簿記・決算書の添付・期限内提出、65万円はさらにe-Tax送信か優良な電子帳簿保存 |
| 承認申請 | 原則その年の3月15日まで、1月16日以後の新規開業は開始日から2か月以内 |
| 手段の選び方 | 狙う控除に必要な帳簿・送信・保存の条件を満たせるか |
| 月次の確認 | 証憑と帳簿、通帳・現金の残高と帳簿を突き合わせる |
| 保存 | 法人7年(欠損金等の年度は10年)、個人は帳簿7年・請求書等の書類5年 |
保存期間が帳簿と書類で分かれ、電子で受け取る書類も増えると、何をどこにまとめて残すかの判断を自分だけで続けるのは負担になります。 相談では、紙と電子それぞれの書類がどこに届き、月次の確認でどの置き場所を見ればよいかを、自分の取引に当てはめて整理できます。
よくある質問
開業した年の途中でも青色申告の承認申請はできるか
できます。
その年の1月16日以後に新たに事業を始めた場合は、事業開始等の日から2か月以内が承認申請の期限です5。
1月15日までに開業した場合や、以前から事業をしている場合は、原則どおり青色申告をしようとする年の3月15日までが期限です5。
白色から青色に変えると、記帳は何が増えるか
まず、青色申告承認申請書の提出が必要です5。
記帳については、白色では取引の年月日・相手方・金額と日々の合計を簡易な方法で記録するのに対し3、青色では簡易簿記でも現金出納帳・売掛帳・買掛帳・経費帳・固定資産台帳などに分けて記録します2。
55万円・65万円控除を狙う場合は、正規の簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書などを添付して期限内に提出することが加わります4。
65万円控除を受けるのに、e-Taxと電子帳簿保存はどちらが向くか
どちらが優れているかではなく、手元の手段で満たしやすい方を選ぶ問いです。
e-Taxは、申告書と決算書を送信すれば条件を満たし(イメージデータは不可)、優良な電子帳簿の要件を満たさなくても65万円の条件はそろいます4。
優良な電子帳簿は、訂正削除の履歴の保存や検索などの要件を満たし6、令和4年分以後は届出が必要です4。
過少申告加算税の軽減という扱いもあるため6、使っている手段がこれらの要件に対応しているかどうかで判断が分かれます。
法人の帳簿の保存期間が10年になるのはどんなときか
青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じた場合や、災害損失金が生じた場合です1。
その事業年度の帳簿書類は10年保存し、平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年です1。
個人の青色申告で、請求書と帳簿の保存期間が違うのはなぜか
国税庁の案内では、個人の青色申告者の帳簿書類は原則7年、請求書・見積書・納品書・送り状などは5年と、書類の種類ごとに保存期間が分けて定められています2。
実務では、帳簿と取引先とのやりとりの書類を分けて保管し、それぞれに保存期限を書いておくと、5年で請求書類を整理するときに7年残すべき帳簿まで一緒に手放すことを避けられます。
会計の一部だけ税理士などに委託する場合、自分の側で何を残して渡せばよいか
取引を起こし証憑を受け取るのは自分の側なので、委託しても証憑の収集は手元に残ります。
渡すものは、どこまで頼むかで変わります。
記帳まで自分で行うなら帳簿と証憑、記帳から頼むなら証憑と通帳の明細が中心になり、内容が分からない入出金や事業用か迷った支払いには印や短いメモを付けておくと、相手の確認が進めやすくなります。
どの作業を相手が担い、どこを確認するかは依頼先との取り決めで決まります。
- 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
- 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.2070 青色申告者の記帳・帳簿等保存」(現行制度)
- 3 出典:国税庁「タックスアンサー No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存」(現行制度)
- 4 出典:国税庁「タックスアンサー No.2072 青色申告特別控除」(現行制度)
- 5 出典:国税庁「タックスアンサー No.2090 青色申告承認申請」(現行制度)
- 6 出典:国税庁「優良な電子帳簿の要件」(現行制度)