◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- EDIは1社だけでは効果を得られないため、取引先が順に加わる前提で範囲を絞って試し、FAX・電話と並行させながら広げる。
- 区切る前に、取引先ごとの注文の流れと転記・確認の電話の箇所を書き出し、試行前の件数を控えておく。
- すぐに使わない取引先はFAXを残す例外として一覧にし、受けた注文はオンラインの受注一覧へ集める。
- 既存の販売・在庫・会計システムとの連携は試行の前提条件にせず、項目と運用が安定してから検討する。
- 共通EDI実証の51.4%は自社の見込みではなく、移行の成否は自社の試行前後の数字で測る。
目次

FAX注文の転記とミスを減らしたいが、取引先は一斉にオンライン受発注へ切り替わらない
FAXで届いた注文を販売管理の画面へ打ち直し、読みにくい数量を電話で確かめる。
この手間を減らしたくても、取引先がそろってオンライン受発注へ切り替えてくれるとは限りません。
受発注そのものは一日も止められません。
企業間で注文データをやり取りするEDIは、自社だけが導入しても効果が出ない仕組みです1。
そのため、全体を一度に移すより段階を分けるほうが現実的です。
まず今の注文の流れと転記の場所を洗い出し、取引先・品目・機能のどれかで範囲を絞って試します。
そのあとFAXや電話と並行させながら、対象を広げていきます。
FAX・電話の受発注で手間とミスが出る場所
受注側の一日を例に考えてみます。
朝、取引先から手書きの注文書がFAXで数枚届き、事務担当者が品番と数量を読み取って販売管理の画面や表計算のシートへ打ち込みます。
数字の「1」と「7」が判別できない、品番の桁が一つ足りないといった注文書は、取引先へ電話して確かめます。
打ち込んだ内容は出荷担当へ渡す指示書にもう一度書き写されます。
月末には、請求のために注文書の束を見返します。
この流れでは、紙の内容を別の場所へ移すたびに読み違いと打ち間違いの機会が生まれます。
中小企業庁のミラサポplusも、電話やFAXによる受発注は手入力が必要になり、ミスや書類紛失の原因になると指摘しています1。
確認の電話はミスを防ぐための作業である一方、相手の手を止める作業でもあります。
注文を出す側でも事情は似ています。
在庫表を見ながら発注書を作ってFAXし、届いたかどうかを電話で確かめ、納品書が来たら発注書と突き合わせる。
注文を出す人と受ける人のそれぞれに、書く・写す・確かめる作業が積み重なっています。
こうしたやり方は珍しいものではありません。
経済産業省の委託で帝国データバンクが行った調査に基づく2019年の記事は、中小企業の7〜8割が受発注をファクスでやり取りしていると伝えています3。
2021年の報道でも、中小企業の受発注は電話・FAX・メールが主流で、作業効率の悪さが課題とされていました2。
ただし7〜8割は2019年の調査に基づく数字で、いまの割合や自社の取引先の構成をそのまま表すものではありません。
移行の計画に使えるのは、取引先ごとに注文がどの手段で届いているかを自社で数えた数字です。
なぜ一斉に切り替えられないのか
受発注の電子化でよく使われる言葉に、EDIがあります。
企業同士が注文や納品などの情報を、決まった形式のデータでやり取りする仕組みのことです。
ミラサポplusは、EDIは1社だけが導入しても効果を得ることはできないと説明しています1。
自社が注文を受け付ける画面を用意しても、取引先がそこから注文を入れなければ、FAXは今まで通り届き続けます。
取引先側の準備がそろっているとも限りません。
同じくミラサポplusで紹介されている日本政策金融公庫総合研究所の2018年の調査では、中小企業で「電子文書での商取引や受発注情報管理」を利用している割合は18.5%でした1。
この数字は中小の商業・サービス業を対象にした数年前の調査で、業種や時点が変われば割合も変わります。
それでも、取引先の多くがすぐに電子の注文へ対応できると見込むのは前提にしにくいことが読み取れます。
取引先の都合で切り替えの時期がずれる以上、移行のあいだはオンラインの注文とFAX・電話の注文が並びます。
そのため考えるべきは、一斉に移すかどうかより、どこから移し、残る部分をどう扱うかです。
下の図は、ここで説明する進め方の全体像です。
段階の分け方は公的な決まりではありません。
取引先が順に加わっていくことを前提にした、一つの組み立て方です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が手書きの注文書をFAXで送る
- 受注担当が品番と数量を読み取る
- 販売管理の画面へ手入力する
- 判読できない箇所を電話で確認する
- 出荷指示書へもう一度書き写す
▼ 図の内容を文字で読む
- 段階1 流れの洗い出し
- 取引先ごとに転記と確認の電話の箇所を書き出し、試行前の件数を控える
- 段階2 範囲を絞った試行
- 取引先別・品目別・機能別のいずれかで対象を絞って始める
- 段階3 並行運用と拡大
- FAXや電話と並行させ、自社で決めた条件を満たしたら対象を広げる
- 段階4 既存システムとの連携
- 項目と運用が安定してから、販売・在庫・会計システムとのつなぎ方を決める
最初に決めるのは、注文が誰から誰へどう流れ、どこで転記が起きるか
注文の流れを5項目で書き出す
区切り方を決める前に、いま注文がどう流れているかを取引先ごとに書き出します。
項目は、注文を出す人(出し手)、受け取る人(受け手)、やり取りする物、転記が起きる箇所、確認の電話の5つです。
書き出してみると、同じ注文でも途中で何度も形を変えていることが見えてきます。
たとえば取引先AのFAX注文書を営業事務が販売管理へ入力し、その内容を出荷担当が出荷指示書に書き写しているとします。
この場合、1件の注文で転記が2回起きています。
電話で注文してくる取引先Bであれば、受けた人がまずメモを取り、そのメモから入力します。
聞き間違いと書き写しの両方が入り込む流れです。
5つの項目のうち、転記の箇所と確認の電話は、オンライン化で減らしたい作業そのものです。
転記の回数が多い流れほど、データで受け取れるようになったときに減る作業も多くなります。
確認の電話がどの項目について起きているかも書いておくと役立ちます。
オンラインの注文画面で何を必須の入力にすべきかの手掛かりになるからです。
あわせて、取引先ごとのおおよその月の注文件数と、確認の電話の回数を控えておきます。
次の段階へ進むかどうかを判断するとき、比べる相手は自社の試行前の数字になるからです。
受注側と発注側で見る箇所が違う
書き出した表のどこに注目するかは、自社が注文を受ける側か、出す側かで変わります。
受注側にとって大きいのは、届いた注文を自社の画面へ打ち込む転記です。
取引先が注文画面に入力した内容がデータのまま届けば、事務担当者が注文書を読み取って打ち込む作業は減ります。
その代わり、これまでFAXを送るだけだった取引先の担当者には、画面に入力するという新しい作業をお願いすることになります。
発注側にとっては、発注書を作る手間と、納品書や請求書を発注内容と突き合わせる作業が中心です。
発注側が電子化を進める場合、相手は仕入先です。
そのため、仕入先に注文データを受け取ってもらえるかが最初の関門になります。
どちらの側から始める場合も、自社の作業が減る分、相手の作業の何かが変わる点は同じです。
仕入れて販売する企業のように受注と発注の両方を抱えている場合は、両方の流れを同じ表に並べます。
転記が多いのはどちらか、協力を頼みやすい相手がいるのはどちらかを見比べると、最初に手を付ける側が絞り込めます。
| 項目 | 書き出す内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 出し手 | 注文を送ってくる取引先と担当者 | 取引先Aの購買担当 |
| 受け手 | 最初に注文を受け取る自社の担当 | 営業事務の担当者 |
| やり取りする物 | FAX・電話・メール添付などの手段と書式 | 手書きのFAX注文書 |
| 転記が起きる箇所 | 内容を別の紙や画面へ写す場所と回数 | 販売管理へ入力し出荷指示書へ再記入 |
| 確認の電話 | 誰がどんな理由で問い合わせるか | 品番が判読できないときに受注担当から |
取引先別・品目別・機能別のどの区切りから始めるか
3つの区切りを同じ軸で比べる
範囲の絞り方には、大きく分けて取引先別・品目別・機能別があります。
取引先別は、特定の取引先とのやり取りだけをオンラインへ移す方法です。
品目別は、定番品など特定の商品群の注文だけを先に移す方法です。
機能別は、業務の種類で分ける方法です。
たとえばまず注文だけをオンラインにして、納品書や請求書は当面これまでの方法で続けます。
どれが向くかは、次の3つの軸で変わります。
取引先がどこまで対応できるか、注文の中身がどれだけ複雑か、既存の販売・在庫・会計システムとのつながりをどこまで求めるかです。
下の表は、この3つの軸で区切りごとの特徴を整理したものです。
資料に示された基準ではなく、ここまでの注文の流れをもとにした編集上の整理です。
表から読み取れる一番の違いは、取引先にとっての分かりやすさです。
取引先別なら、相手は「これからはこの画面で注文する」と覚えればよく、自社側も試行先の注文だけを見ていれば済みます。
一方で品目別は、同じ担当者に「この商品は画面から、あの商品はFAXで」と使い分けてもらうことになり、取り違えが起きやすくなります。
品目別を選ぶなら、どの品目がオンラインの対象かを一覧で渡す必要があります。
対象外の品目が画面から届いたときの扱いも、あわせて決めておきます。
機能別は、取引先別や品目別と組み合わせて使う区切りです。
試行先の取引先とは注文だけをオンラインにし、納品と請求は紙のままにすれば、相手に頼む変化は小さく済みます。
ただしその間は、画面に残った注文と紙の納品書・請求書を突き合わせる作業が続きます。
月末の照合が楽になるのは、請求まで移した後です。
迷ったときは、まず取引先別に絞り、その中で機能別に注文から始める形が組み立てやすいでしょう。
ただ、取引先は少ないが品目が多く、特注品の注文には図面や仕様の電話確認が欠かせないという場合もあります。
そのときは、定番品だけを品目別に先行させたほうが、注文画面の設計で迷う部分を減らせます。
注文項目をそろえる必要がある場合
品目が多い取引や、取引先ごとに注文書の書式が違う取引では、オンライン化の前に注文の項目をそろえる作業が出てきます。
ある取引先は品番を自社の型番で書き、別の取引先は商品名だけを書く。
数量の単位がケースのこともあれば個のこともあり、納期を日付で書く取引先と「至急」とだけ書く取引先が混ざっている。
FAXなら、こうした違いは担当者が読み替えて入力していました。
データでやり取りする場合も、項目の書き方を先に決めておかなければ、受け取った側に同じ読み替えが残ります。
項目の標準としては、中小企業共通EDIという仕様があります。
中小企業庁の事業をもとにITコーディネータ協会が2018年に初版を公開したもので、仕様書・メッセージガイドライン・実装ガイドラインの3文書から成ります1。
注文メッセージは全135項目、業務アプリの必須項目は13項目と定められています1。
標準の項目がこれだけの数で決められていることから、注文を正しく伝えるために合わせるべき項目は少なくないと分かります。
共通EDIを採用するかどうかは別の判断で、必ず使わなければならないものではありません。
品目別の区切りを選ぶ場合や、複数の取引先を同じ画面に乗せていく予定がある場合は、試行の前に項目を一覧にしておくと手戻りが減ります。
品番・数量と単位・納期・納品先など、自社の注文で欠かせない項目を書き出し、取引先ごとの書き方の違いを並べます。
こうしておくと、画面の設計と取引先への説明が一度で済みます。
確認の電話が多かった項目は、この一覧で優先して決めておきたい項目です。
| 区切り | 取引先の対応力 | 注文の複雑さ | 既存システムとの連携 |
|---|---|---|---|
| 取引先別 | 対応できる取引先が1社でもいれば始められる | 取引先ごとの注文の型に合わせやすい | 試行先の注文分だけ取り込み方を決めればよい |
| 品目別 | 同じ取引先に2つの注文方法を使い分けてもらう必要がある | 項目がそろった定番品から移しやすい | 品番や単位の対応づけが先に必要になる |
| 機能別 | 注文の入力だけなので相手の変化を小さくできる | 注文以外の書類は従来どおりで突き合わせが残る | 注文データと紙の納品書・請求書の照合が当面続く |
最初に試す取引先の選び方、依頼の仕方、使ってもらえない場合
最初の取引先の選び方
EDIが1社だけでは効果を出せないのと同じく、オンライン受発注も最初の相手選びで試行の結果が大きく変わります。
見る点は3つです。
1つ目は取引量です。
注文の件数がある程度ないと、転記や電話が減ったかどうかが試行期間中に見えません。
2つ目は相手の負担です。
日頃からメールやパソコンで仕事をしている担当者がいて、連絡がつきやすい取引先のほうが、画面での入力に移りやすくなります。
3つ目は注文の中身です。
定番品を決まった数量で繰り返し注文してくる取引先なら、画面の項目を少なく保てます。
取引量が最も多い取引先が、最初の相手として最適とは限りません。
大口の取引先で試行がつまずくと影響が大きく、相手との関係にも響きます。
一定の件数があり、話を聞いてもらいやすい取引先から始め、その経験をもとに大口の取引先へ広げる順番も考えられます。
依頼するときは、システムの良さより、相手の作業が具体的に何に変わるかを伝えます。
具体的には、注文を入れる画面、入力してほしい項目、注文の締め時間、注文が届いたことをどう確かめられるか、困ったときの連絡先です。
試行期間中はこれまで通りFAXで送ってもらっても受け付けると伝えておけば、相手は失敗を恐れずに試せます。
相手の会社でも、取引の窓口になっている人と実際に注文を入力する人が違うことがあります。
説明は、入力する人にも届くようにします。
使わない取引先への当面の扱い
依頼しても、すぐには使ってもらえない取引先は出てきます。
人手が足りない、注文の頻度が低く覚える手間に見合わない、別の取引先の仕組みですでに手一杯といった事情は、こちらからは変えられません。
日経クロステックの記事は、発注元に納品データを受け取る仕組みがなければ、納品伝票はファクスで送るか納品物に同封することになると書いています3。
納品する側が電子化を進めても、受け取る相手の準備がなければ紙に戻るということです。
EDIが1社では効果を得られないという指摘と合わせると、相手が受け取れない間はFAXを残す例外の運用が必要になると考えられます。
どれくらいの期間、どれだけの取引先で残るかは取引先の状況次第で、決まった目安はありません。
大切なのは、例外を場当たりにしないことです。
どの取引先のどの書類をFAXのまま受けるのかを一覧にし、届いたFAXの注文を誰がオンラインの受注一覧へ入力するかを決めておきます。
受注側が代わりに入力すれば転記は残ります。
それでも注文の記録が一か所にまとまるので、FAX分だけ別の台帳で管理する状態は避けられます。
使わない取引先にも、時期を改めて声をかける機会はあります。
相手の担当者が替わったとき、相手の会社が自社の仕組みを見直すとき、ほかの取引先で利用が広がって説明できる経験ができたときなどです。
断られた時点で対象から外さず、例外の一覧に再度相談する時期を書いておくと、範囲を広げる機会を逃しにくくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 洗い出した表から候補の取引先を挙げる
- 取引量・相手の負担・注文の中身で絞る
- 相手の作業が何に変わるかを説明して依頼する
- 試行期間とFAXを受け付ける例外を合意する
並行運用の期間と、次の段階へ進める基準
二重入力を抑える
並行運用とは、オンラインの注文とFAX・電話の注文を同時に受け付ける期間のことです。
試行先の取引先が画面から注文を入れたあと、念のためにとFAXも送ってくることがあります。
受け手が別々に処理すれば、同じ注文が2件として登録され、出荷が重複するおそれがあります。
これを防ぐには、試行先とのやり取りではオンラインの注文を正式なものとし、同じ内容のFAXは控えとして扱うと決めておきます。
FAXだけが届いた場合は、受け手がオンラインの受注一覧へ入力し、注文の記録を一か所に集めます。
取引先にも、画面から入れた注文はFAXで重ねて送らなくてよいことを伝えます。
もう一つの二重入力は社内で起きます。
既存の販売管理とまだつないでいない段階では、オンラインで受けた注文を販売管理へ入れ直す作業が残ります。
この負担を受け止められる範囲に試行先を絞っておくことが、並行運用を続けるための前提です。
次へ進む条件を自社で決める
並行運用をどのくらい続ければよいか、何を満たせば次の取引先や品目へ広げてよいかには、公的に示された目安はありません。
期間を先に決めるより、試行先の注文の状態を見て判断するほうが、取引先の事情に合わせやすくなります。
判断の条件には、たとえば次のようなものが考えられます。
・試行先の注文が、一定期間すべてオンライン経由で届いている
・試行先の注文について、転記の回数と確認の電話の回数が試行前より減っている
・受け手と取引先の双方から、操作についての問い合わせが落ち着いている
比べる相手は、流れを書き出したときに控えた試行前の件数です。
条件を満たさない場合は、どこで止まっているかを見ます。
取引先が画面を使わずにFAXを送り続けているなら、入力の手間か説明不足が原因かもしれません。
注文は画面から届くのに確認の電話が減らないなら、画面の項目が足りず、以前と同じ問い合わせが残っている可能性があります。
原因に合わせて画面や説明を直してから広げたほうが、次の取引先で同じつまずきを繰り返さずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 試行前の転記と確認の電話の件数を記録する
- FAX・電話と並行してオンラインの注文を受ける
- 自社で決めた条件を満たしたかを判定する
- 次の取引先や品目へ範囲を広げる
既存の販売・在庫・会計システムとはいつ、どうつなぐか
連携は試行が安定してから
既存の販売・在庫・会計システムとつなぐと、オンラインで受けた注文を販売管理へ入れ直す転記がなくなります。
それでも、試行の最初から連携を条件にする必要はないと考えます。
試行の間は注文画面の項目や取引先とのやり取りの決まりが変わりやすいからです。
先につないでしまうと、変更のたびに連携の設定も直すことになります。
連携を後に回しても、今のシステムを手放すことにはならない場合があります。
ミラサポplusによると、共通EDIでは、発注側の企業は対応プロバイダーと契約すれば、独自に構築したシステムを継続して利用できます1。
また2021年の報道では、中小企業庁が開発を計画していたデータ連携基盤が取り上げられていました2。
業界や系列ごとに異なる電子受発注システムに接続して入力データを自動で変換するもので、取引先を含めて既存システムを変えずに運用できる点が共通EDIとの違いとされていました2。
この基盤は当時の計画として報じられたもので、現在どのような形で提供されているかは別に確かめる必要があります。
2つの資料から言えるのは、既存システムとの連携を、オンライン受発注を始めるための前提条件にしなくても進め方は組めるということです。
自社の販売管理や会計ソフトと実際につなげられるかどうかは、使っている製品ごとに異なります。
連携を検討する段階で、個別に確かめることになります。
つなぐ前の代替運用
連携前は、オンラインの受注一覧を確認し、その内容を販売管理へ移す作業が残ります。
受発注の仕組みに注文データを書き出す機能があり、販売管理側に取り込む機能があれば、ファイルで移せます。
そうでない場合は画面を見ながらの入力になります。
それでも手書きの文字を読み取る必要はなくなるため、判読のための確認の電話は減らせます。
どちらの方法でも、移したあとに受注一覧と販売管理の件数や金額が合っているかを照合する作業は残ります。
試行先が増えれば、この照合と転記の量も増えます。
その増え方が、連携を検討する目安になります。
どの段階でつなぐかは、移す作業にかかる時間と連携にかかる費用を自社で比べて決めます。
▼ 図の内容を文字で読む
- オンラインで取引先の注文が届く
- 受注一覧で内容を確認する
- 書き出せる場合はファイルで販売管理へ取り込む
- 受注一覧と販売管理の件数・金額を照合する
紙・FAX・電話を残す範囲と、移行の成否の測り方
残す範囲を先に決める
オンライン受発注への移行で目指すのは、FAXや電話をゼロにすることではなく、転記と確認の電話を減らすことです。
紙・FAX・電話を残す範囲を先に決めておけば、残っている理由を説明でき、移行の遅れと区別できます。
残す範囲は、次の3つに限るのが一つの考え方です。
・オンラインの注文をまだ使えない、または使わない取引先
・当日中の追加など、電話で直接話したほうが早い緊急の注文
・機器の故障や回線の不具合で、画面から注文できないときの代わり
どの場合も、電話やFAXで受けた注文を誰がオンラインの受注一覧へ入力するかを決めておけば、記録は一か所にまとまります。
この範囲の外でFAXや電話が届き続けるなら、それは例外ではなく、まだ移行できていない部分です。
例外の一覧と実際に届いたFAXを月ごとに見比べると、どの取引先に改めて相談すべきかが分かります。
公的実証の削減率の読み方
効果の目安として、公的な実証の数字があります。
ミラサポplusによると、2016年度補正の中小企業共通EDIの実証(12のプロジェクト)では、中小企業の受発注業務の時間が平均して51.4%減りました1。
同じ記事は、大企業より中小企業のほうが削減率が高かったとも伝えています1。
ただしこれは、企業同士が注文などのデータを直接やり取りする仕組みを実証した結果です。
取引先の一部から段階的に移していく途中の効果や、自社で見込める削減の幅を示すものではありません。
並行運用の期間中は、FAXと画面の両方を見る分、一時的に手間が増えることもあります。
51.4%は、データで直接やり取りできた場合に受発注の作業時間が大きく変わりうることを示す参考として読むのが妥当です。
自社の成否は、自社の数字で測ります。
流れを書き出したときに控えた転記の回数、確認の電話の回数、注文1件の処理にかかる時間を、段階ごとに試行前と比べます。
例外として残したFAXの件数も追っておくと、移行の進み具合と、手間が残っている場所を同時に確かめられます。
数字が改善していない段階があれば、次へ広げる前にその段階の流れを見直します。
それが、受発注を止めずに移行を続けるための手堅い進め方です。
▼ 図の内容を文字で読む
- オンラインの注文をまだ使えない・使わない取引先
- 電話で直接話したほうが早い緊急の注文
- 機器や回線の不具合で画面から注文できないときの代わり
- 受けた注文は担当者がオンラインの受注一覧へ入力する
注文の流れを書き出しても、どの取引先や品目から試すか、FAXの例外をどこまで認めるかは、取引先との関係や社内の体制が絡み、自社だけでは決めにくいことがあります。
書き出した流れをもとに、最初の区切り方と試行先の候補、並行運用中の決まりを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初の作業 | 取引先ごとに出し手・受け手・やり取りする物・転記の箇所・確認の電話を書き出し、試行前の件数を控える |
| 区切り方 | 迷ったら取引先別に絞り、その中で注文から始める。品目別は対象品目と項目の一覧が前提 |
| 最初の取引先 | 取引量・相手の負担・注文の中身で選ぶ |
| 使わない取引先 | FAXを残す例外として一覧にし、受注一覧へ入力する担当を決める |
| 次へ進む条件 | 試行前の転記と確認の電話の件数と比べ、自社で決める |
| システム連携 | 試行が安定し、移す作業と照合が増えてから検討する |
試行の結果を見て次へ広げるか、既存システムとつなぐかを決める段階では、残っている転記の量と連携の手間を比べる判断が必要になります。 試行前後の数字をもとに、次の段階へ進む条件と連携を検討する時期を確かめられます。
よくある質問
取引先がオンライン受発注を使ってくれない場合、FAXはいつまで残してよいですか。
決まった期限はありません。
相手に注文を送ったり受け取ったりする仕組みがない間は、その取引先とのやり取りにFAXを残す運用が必要です。
例外の一覧に取引先と対象の書類、再度相談する時期を書いておきます。
届いたFAXの注文を受注一覧へ入力する担当を決めておけば、FAXを残しても注文の記録は分散しません。
並行運用中の二重入力を減らすにはどうすればよいですか。
試行先とのやり取りではオンラインの注文を正式なものとし、同じ内容のFAXは控えとして扱うと決め、取引先にも重ねて送らなくてよいと伝えます。
社内では、販売管理へ入れ直す作業が受け止められる範囲に試行先を絞ります。
受発注の仕組みにデータを書き出す機能があり、販売管理側に取り込む機能があれば、手入力の代わりにファイルで移せます。
受注側と発注側では、どちらが先に始めるべきですか。
決まった順番はありません。
注文の流れを書き出し、転記が多いのはどちらか、協力を頼みやすい相手がいるのはどちらかで判断します。
受注側から始めるなら取引先に画面での入力をお願いすることになり、発注側から始めるなら仕入先に注文データを受け取ってもらう必要があります。
導入を決める人と日々操作する人が違う場合、現場にどう伝えればよいですか。
注文の流れを書き出す段階から、実際に注文を受けて入力している担当者に加わってもらうのが近道です。
転記や確認の電話がどこで起きているかを一番よく知っているのは、その担当者だからです。
そのうえで、試行によって誰のどの作業が変わり、FAXで届いた場合はどうするかを具体的に伝えます。
試行前後の転記や電話の件数も共有しておくと、続けるかどうかを現場と同じ数字で話し合えます。
電子化した注文データの保存や補助金には、どんな確認が必要ですか。
電子で受け取った注文データの保存方法には税法上の定めが関わるため、国税庁の案内や顧問の税理士に確認してください。
ITツールの導入に使える国の補助金などを検討する場合は、対象経費や補助率、申請期間を事務局の最新の公募要領で確かめる必要があります。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:日刊工業新聞社(ニュースイッチ)「中小企業庁が中小企業の電子受発注実現へ開発する「データ連携基盤」の全容」(2021年)
- 3 出典:日経BP(日経クロステック)「中小企業の8割が「ファクスで受発注」の現実、DX時代に日本の競争力が失われる」(2019年)