◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 仕入先単位ではなく受注品目からたどり、仕入先と品目の組み合わせで「止まれば納品が止まる」行を絞る
- 持ち日数(使える手元在庫と確実に届く入荷待ちを1日あたりの使用量で割った見立て)と切替期間を比べ、その差を備えの対象にする
- 差が小さく停止が短いなら在庫、差が大きく長引くおそれがあれば複数社購買や代替品の事前確認で切替期間を縮める
- 取適法は責任のない受領拒否や代金減額を禁じているが、仕入先の停止が責めに帰すべき理由に当たるかは契約書と相談窓口で確かめる
- 最重要の仕入先1〜3社から始め、取引条件の変更時と年1回を目安に見直す
目次

仕入先が止まったとき、納品が止まるのはどの仕入先か
主要な仕入先が止まったら、何日まで納品を続けられるか。
発注元に聞かれても即答できないのは、数十社の仕入先すべてを同じ重さで心配しているからです。
この状態は、範囲を絞ると変えられます。
まず、受注品目から仕入先をたどり、「止まれば納品が止まる」「代替が利く」「止まっても影響が小さい」に分けます。
次に「止まれば納品が止まる」ものについて、在庫で持つ日数と、代替品へ切り替えるまでの期間を自社の数字で比べます。
その差を見てから、在庫・複数社購買・代替品の事前確認を仕入先ごとに選びます。
発注元との責任は、取適法と契約書で確かめます。
受注と納品を起点に仕入先を3つに分ける
仕入先の一覧を開くと、取引額の大きい順や付き合いの長い順に眺めたくなります。
ただ、止まったときに納品まで止まるかどうかは、取引額とは別の問題です。
金額が小さくても、それがなければ製品が組み上がらない部品や、外せない加工工程を担う外注先なら、止まった時点で自社の納品も止まります。
そこで編集部がすすめるのは、仕入先からではなく、自社が発注元へ納めている品目からたどる整理です。
手順は単純です。
まず、主な受注品目を書き出します。
次に、品目ごとに使っている材料・部品・外注工程を並べ、それぞれの調達先を書き込みます。
部品表や作業手順書があれば、そこから写すだけで骨組みはできます。
この一覧で、どの仕入先がどの受注を支えているかが分かります。
そのうえで、各行を次の三つに振り分けます。
- 止まれば納品が止まる:ほかから手に入らないもの、または手に入っても発注元との約束上すぐには使えない材料・部品・工程
- 代替が利く:別の仕入先から同等のものを、納品に響かない期間で手配できるもの
- 止まっても影響が小さい:止まっても納品に関わらないもの、または手元の在庫で吸収できるもの
振り分けは「仕入先」単位ではなく、「仕入先と品目の組み合わせ」単位で行うと、後の作業が楽になります。
同じ仕入先から買っているものでも、ある部品は発注元が銘柄を指定していて替えられず、別の消耗品はどこでも買える、ということがあるからです。
仕入先単位でまとめると、替えの利かない部品が「代替が利く仕入先」の陰に隠れてしまいます。
たとえば、樹脂成形品を納めている会社が、成形用の樹脂と梱包材を別々の仕入先から買っているとします。
発注元が図面で樹脂の銘柄を指定していれば、樹脂の仕入先が止まった時点で成形ができず、納品も止まります。
一方、梱包材は仕様が合えば別の業者から取り寄せられます。
同じ「仕入先の停止」でも、重みがまったく違います。
この差を一覧の上で見えるようにしておくことが、次の節で日数を出す前提になります。
もう一つ見落としやすいのが、表面上は別々の仕入先でも、その先で同じ材料メーカーや同じ地域の工場につながっている場合です。
二社から買っているので安心だと思っていても、両社が同じ原料に頼っていれば、原料が止まったときには同時に止まります。
仕入先の先まですべて把握するのは難しいので、分かる範囲で「この二社は同じところから仕入れていないか」を聞いておく程度で構いません。
代替が利くかを判断する条件
三つに分けるとき、迷いが集中するのは「代替が利く」に入れてよいかどうかです。
ほかに同じものを売っている会社がある、というだけでは代替が利くとは言えません。
実際に切り替えられるかは、少なくとも次の三つがそろって初めて判断できます。
- 手に入るか:同等の品を扱う仕入先が実際にあり、必要な量を売ってもらえる
- 使ってよいか:発注元の図面・仕様書・契約で銘柄や仕入先が指定されていない、または指定がある場合も変更の手続きが分かっている
- 間に合うか:見積もり、試作や評価、発注元の承認まで済ませても、納品に響かない期間で切り替えられる
二つ目の「使ってよいか」は、自社だけで決められない点で性質が違います。
発注元が材料の銘柄や加工先を指定している取引では、品質が同等でも無断で替えれば約束違反になり得ます。
指定があるかどうか、変更するときに誰の承認がどんな形で要るかは取引ごとに違うため、一般論では判断できません。
手元の仕様書や契約書、過去に材料を変更したときのやり取りの記録が、いちばん確かな手掛かりです。
三つ目の「間に合うか」は、手に入って使ってよいとしても、切り替えが終わるまでの間は納品が止まり得る、という点を拾うための条件です。
ここでの切り替えの期間が、次の節で在庫と比べる数字になります。
判断がつかない行は、いったん「止まれば納品が止まる」側に置いておくことをすすめます。
楽観的に「代替が利く」へ入れると、日数を出す対象から外れ、確かめないまま残ってしまうからです。
確かめた結果、代替が利くと分かれば移せば済みます。
逆向きの見落としより、ずっと手当てしやすいはずです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 止まれば納品が止まる
- ほかから手に入らないもの
- 手に入っても発注元との約束上すぐには使えないもの
- 代替が利く
- 別の仕入先から同等のものを手配できる
- 納品に響かない期間で切り替えられる
- 止まっても影響が小さい
- 納品に関わらないもの
- 手元の在庫で吸収できるもの
▼ 図の内容を文字で読む
- 手に入るか
- 同等の品を扱う仕入先があり、必要な量を売ってもらえる
- 使ってよいか
- 銘柄や仕入先の指定がない、または変更の手続きが分かっている
- 間に合うか
- 見積もり、試作や評価、発注元の承認まで済ませても納品に響かない
- 判断
- 三つがそろえば代替が利く
- 迷えば止まれば納品が止まる側に置く
仕入先が止まったら何日納品を続けられるか
在庫日数と切替期間から持ち日数を出す
前の節で「止まれば納品が止まる」に置いた行について、二つの期間を並べます。
一つは、仕入先が止まってからも手元のもので納品を続けられる期間で、ここでは「持ち日数」と呼びます。
もう一つは、代替品や別の仕入先へ切り替えて、ふたたび納品できるようになるまでの期間で、こちらは「切替期間」と呼びます。
何日納品を続けられるかという問いへの答えは、この二つを比べると出てきます。
持ち日数は、編集部の提案として次の式で見立てられます。
公的な基準ではなく、自社の状況に合わせて項目を足し引きしてよい目安の式です。
持ち日数 =(使える手元在庫 + 確実に届く入荷待ち)÷ 1日あたりの使用量
式は簡単ですが、それぞれの項目に入れる数字には注意が要ります。
- 使える手元在庫:帳簿上の数ではなく、検査待ちや不良として止めているものを除いた、すぐ使える数
- 確実に届く入荷待ち:すでに出荷済みのものなど、仕入先が止まっても届くと確かめられる分だけで、発注済みでも出荷前のものは含めない
- 1日あたりの使用量:受注の多い時期と少ない時期で変わるため、厳しめに見るなら多い時期の使用量で割る
材料が止まっても、作り終えた完成品や途中まで進んだ仕掛品があれば、その分は発注元への納品を続けられます。
材料の持ち日数だけを見ると実際より短く見積もることになるので、完成品と仕掛品で納められる期間も足して考えます。
反対に、一つの材料を複数の受注品目で使っている場合は、使用量を品目ごとに合算しないと、持ち日数を長く見誤ります。
切替期間は、代替先を探し始めてから納品を再開するまでに必要な作業を順に足していきます。
代替先を探して見積もりを取る、試作や評価をする、発注元の承認を得る、初回の納入を受けて生産に乗せる、といった流れです。
過去に材料や仕入先を切り替えた経験があれば、そのとき各段階に何日かかったかの記録が最も頼りになります。
経験がない品目では、担当者が「最短でもこれくらいはかかる」と考える日数を置き、見立てであることを書き添えておきます。
二つを並べると、判断は分かれます。
持ち日数が切替期間より長ければ、仕入先が止まっても、手元のもので納品を続けているあいだに切り替えを終えられる見込みが立ちます。
持ち日数のほうが短ければ、その差の期間は納品が止まるおそれがあり、この差が備えで埋めるべき部分です。
数十社分の漠然とした不安が、「この行は差がある、この行は差がない」という具体的な一覧に置き換わります。
ここで出した日数は、前提を置いた見立てです。
発注元から「何日もつのか」と問われて伝えるなら、日数だけでなく、どの在庫を数えたか、使用量をどの時期で見たか、切替期間に発注元の承認を含めたか、といった前提を一緒に示しておくと、相手も自社の計画に当てはめやすくなります。
停止原因が違うと見立てはどう変わるか
同じ仕入先の停止でも、何が原因で止まったかによって、式に入れる数字が変わります。
変わるのは主に、入荷待ちが本当に届くか、手元在庫がそのまま使えるか、代替先も同時に止まっていないか、の三点です。
- 災害・事故:止まった工場の周辺にある代替先も同じ影響を受けている場合があり、代替先が離れた地域にあるかどうかで切替期間の見立てが変わる
- 倒産・撤退:再開の見込みが立たないため、在庫で待つのではなく切り替えることが前提になり、出荷前の入荷待ちは届かないものとして扱う
- 品質問題:同じ時期に作られた材料が手元在庫にもあれば、その在庫まで使えなくなり、持ち日数が一気に縮むことがある
停止がどのくらい続くかについて、どの会社にもそのまま当てはまる目安の日数を置くのは困難です。
原因の大きさも、品目も、仕入先の規模もまちまちだからです。
他社の例を借りるより、自社の過去の記録を見るほうが確かです。
過去に欠品や入荷の遅れがあったとき、どの仕入先の何が何日遅れ、自社はそれを在庫で埋めたのか、別の仕入先から取り寄せたのか、発注元に納期を相談したのかを振り返ると、その品目の現実的な切替期間と、使える手段が見えてきます。
記録が残っていなくても、担当者に「あのとき何日止まったか」を聞いて一覧に書き込めば、次に同じことが起きたときの出発点になります。
原因ごとに見立てを分けるのが手間なら、まずは最も厳しい場合、つまり倒産のように再開を待てない停止を前提に切替期間を置き、それでも差がないかを確かめるところから始められます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 仕入先の停止
- 持ち日数:手元のもので納品を続けられる期間
- 切替期間:代替先へ切り替えて納品を再開するまでの期間
- 差の期間:持ち日数が短いと納品が止まるおそれ
在庫・複数購買・代替品確認は、どの仕入先に何を選ぶか
対策を同じ軸で比べる
前の節で差がある行が見つかったら、備えを選ぶ段階です。
選択肢を並べる前に押さえておきたいのは、備えには効き方の方向が二つあることです。
在庫の積み増しは持ち日数を延ばす手段で、複数社購買や代替品の事前確認は切替期間を縮める手段です。
仕入先の状況把握は、停止に早く気付くことで、持ち日数のうち実際に使える期間を増やします。
表で判断が分かれるのは、差の大きさと停止の長さです。
在庫は差を埋める効果がすぐ出る一方で、どれだけ積んでも使い切れば終わります。
差が小さく、停止が短く済みそうな品目なら在庫で埋められますが、倒産のように再開を待てない停止では、在庫は切り替えまでの時間を稼ぐ役割にとどまります。
差が大きい行や停止が長引くおそれのある行では、在庫を積み増すだけでは追いつかず、切替期間そのものを縮める手段を考えることになります。
切替期間を縮める二つの手段は、平時にどこまで準備を前倒しするかの違いです。
複数社購買は、普段から二社に発注を分けておくので、一社が止まっても残る一社へ発注を寄せるだけで済みます。
そのかわり、発注量が分かれて条件交渉で不利になったり、二社分の品質を管理したりする手間が平時から続きます。
代替品の事前確認は、普段は買わずに評価と発注元への相談だけを先に済ませておくやり方で、止まったときの切替期間から評価と承認の分を除けます。
ただし、確認した時点から時間がたつと候補品の仕様や供給状況が変わるので、確認結果は見直しの対象になります。
どちらの手段も、発注元が銘柄や仕入先を指定している取引では、発注元の承認が前提になります。
前の節で「使ってよいか」を確かめた結果がここで効いてきます。
承認の手続きが分かっている行ほど、事前確認や二社目の準備に進みやすくなります。
調達先の分散は、日本能率協会が2022年に実施したBCP調査でも、サプライチェーン対策の一つとして取り組み率が示されています3。
ただ、この調査は法人会員や上場企業などの経営層を対象にしたもので、ここでは報道記事を通じて内容を確認しています。
中小の受託企業がどれだけ取り組んでいるかや、分散によって停止の影響がどれだけ減ったかを示すものではありません。
自社がどの備えを選ぶかは、ここで出した差の大きさで決めるのが筋です。
仕入先の状況を平時に把握する
どの備えを選んでも、仕入先が止まったことを知るのが遅れれば、そのぶん持ち日数を無駄に使います。
切り替えは停止を知った日から始まるので、知るまでの日数は、そのまま手元在庫を減らす時間になるからです。
仕入先の状況を平時に把握しておく目的は、止まる前に予測することより、止まったときに早く知り、早く動けるようにすることにあります。
把握しておく項目は、多くを求めなくても次のようなもので足ります。
- 製造拠点の所在地(複数の仕入先が同じ地域に集まっていないか)
- 緊急時の連絡窓口と、平時の担当者以外にも連絡が取れる先
- その仕入先が主な原料をどこから買っているか(分かる範囲)
- 生産終了や仕様変更の予定
- 納期の遅れが続く、問い合わせへの返事が遅くなるなど、日々の取引で気付いた変化
聞き取った内容は、最初に作った「仕入先と品目」の一覧に書き足していきます。
別の台帳を作ると更新が止まりやすいので、日数や備えと同じ行に並べておくほうが、見直しのときにまとめて目を通せます。
仕入先にとっても質問に答えるのは手間です。
定期の打ち合わせのついでに、必要な項目だけを聞くくらいの距離感が続けやすいはずです。
発注元から供給途絶への備えを問われている立場であれば、自社が仕入先に同じことを尋ねるのは、その問いを一段先へ伝える作業でもあります。
自社の仕入先の状況が分かっていれば、発注元への説明にも裏付けが付きます。
| 備え | 効く方向 | 費用の掛かり方 | 主な作業 | 向く条件 |
|---|---|---|---|---|
| 在庫の積み増し | 持ち日数を延ばす | 保管場所と在庫に寝かせる資金が平時から続く | 発注量と保管場所の見直し、劣化や陳腐化の管理 | 差が小さく停止が短く済みそうで劣化しにくい品目 |
| 複数社購買 | 切替期間を縮める | 発注を分けるぶん条件交渉や品質管理の手間が平時から増える | 二社目の選定と評価、発注元の承認、発注の振り分け | 差が大きく停止が長引くおそれがあり継続して使う品目 |
| 代替品の事前確認 | 切替期間を縮める | 評価や承認の作業が先に発生するが平時の購買は増えない | 候補品の評価、発注元への事前相談、確認結果の記録と更新 | 二社から買うほどではないが切り替えに時間がかかる品目 |
| 仕入先の状況把握 | 停止に早く気付く | 主に担当者の時間 | 拠点や窓口などの聞き取りと一覧への記入 | 止まれば納品が止まるすべての行の土台 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 持ち日数を延ばす
- 在庫の積み増し
- 切替期間を縮める
- 複数社購買
- 代替品の事前確認
- 停止に早く気付く
- 仕入先の状況把握
納期に遅れそうなとき、発注元への連絡と責任はどうなるか
取適法が受託側に定める保護
備えを整えても、停止が長引いて納期に間に合わなくなる場面はありえます。
そのとき気になるのが、発注元との関係で自社がどこまで責任を負うのか、という点です。
まず押さえておきたいのは、発注する側の行為を制限するルールがあることです。
公正取引委員会が説明している取適法は、委託事業者、つまり発注する側の禁止行為として、受領拒否、返品、代金減額、買いたたき、協議に応じない一方的な代金決定などを挙げています1。
受領拒否について同委員会は「中小受託事業者に責任がないのに受領を拒むと取適法違反となります。」と説明しています1。
代金の減額も、受託側の責めに帰すべき理由がなければ違反になります1。
ここから言えるのは、法律の対象となる取引であれば、受託側に責任がないのに納品を受け取ってもらえない、代金を減らされる、といった扱いは認められていないということです。
一方で、仕入先が止まって自社の納期が遅れた場合に、それが受託側の「責めに帰すべき理由」に当たるかどうかは、同委員会の説明ページでは詳しく示されていません。
停止の原因や、契約で何を約束していたかによって評価が変わり得る部分であり、ここで一律に判断することはできません。
また、取適法が自社の取引に適用されるかどうかは、取引の内容と、発注側・受託側それぞれの資本金や従業員の規模の組み合わせで決まります。
具体的な基準は、公正取引委員会や中小企業庁の説明で確かめる必要があります。
対象にならない取引であれば、契約の内容がいっそう重要になります。
契約書で先に確認する点
法律の保護が及ぶかどうかとは別に、実際の扱いを左右するのは発注元と交わしている契約書です。
仕入先が止まる前に、次の点がどう書かれているかを確かめておくと、いざというときに慌てずに済みます。
- 納期と変更の手続き:納期を変えたいとき、誰にどの形で申し出ることになっているか
- 遅れたときの扱い:損害賠償や違約金の定めがあるか、あるならどんな場合に生じるか
- 不可抗力・免責の条項:どのような事由が挙げられているか、仕入先の停止や災害による供給の途絶が含まれる書き方か
- 通知の定め:遅れが分かったときに、いつまでに知らせることになっているか
- 材料や仕入先の変更:代替品を使うときに発注元の承認が要るか、その手続き
不可抗力の条項はよく耳にしますが、どの事由まで含むか、仕入先の停止が当てはまるかは、契約ごとの文言で変わります。
「災害なら免責されるはず」と思い込まず、自社の契約書で実際の書き方を読んでおくことが大切です。
文言の解釈に迷う場合は、契約に詳しい専門家に見てもらうほうが確かです。
連絡の進め方については、編集部の提案として、遅れが見えた段階で早めに発注元へ一報を入れることをすすめます。
発注元にも、自社の在庫を調整したり、生産計画を組み直したりする時間が要るからです。
確かな見通しがそろってから連絡しようとすると、その間に発注元が取れたはずの手が減ってしまいます。
最初の連絡で伝えるのは、何が止まったか、どの品目・どの注文に響くか、持ち日数の見立てでいつまで納められそうか、切り替えの検討状況、次にいつ連絡するか、といった内容です。
分かっていることと、まだ分からないことを分けて伝えると、相手も判断しやすくなります。
連絡した日時と内容、相手の返答を記録に残しておくと、あとで経緯を説明する場面で役立ちます。
取引上の扱いが不当ではないかと感じたときは、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口に相談する道もあります。
窓口に相談するときも、契約書と連絡の記録がそろっていれば、状況を説明しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 仕入先の停止を知る
- 響く品目・注文と持ち日数を見直す
- 契約書の納期・通知・不可抗力の定めを確かめる
- 発注元へ第一報を入れる
- 連絡した日時・内容と相手の返答を記録する
小さく始める:優先順位・見直し頻度・連携型の計画
最重要の仕入先1〜3社から着手する
ここまでの作業を、すべての仕入先について一度にやる必要はありません。
人手が限られているなら、「止まれば納品が止まる」に入り、しかも持ち日数が切替期間より短い行の中から、最も気がかりな仕入先を一社から三社ほど選んで始めるのが現実的です。
差が大きい行や、売上の大きい受注、納期の厳しい受注を支えている行を優先すると、選びやすくなります。
- 選んだ仕入先について「仕入先と品目」の行を作り、三つの分類のどこに入るかを書く
- 行ごとに持ち日数と切替期間を見立て、前提とともに書き込む
- 差がある行に、在庫・複数社購買・代替品の事前確認から当てる備えを一つ決める
- 発注元との契約書で納期・遅延・不可抗力・通知の定めを確かめ、連絡するときに伝える項目を控えておく
一社分でも数字がそろえば、発注元から「仕入先が止まったらどうなるのか」と問われたときに、前提付きで答えられるようになります。
そこで見えた手間や足りない情報を踏まえて次の仕入先へ広げていけば、最初から完璧な計画を作ろうとして手が止まることを避けられます。
見直しの頻度
持ち日数と切替期間は、一度出せば終わりではありません。
受注量が増えれば1日あたりの使用量が変わり、在庫の持ち方を変えれば手元在庫が変わり、仕入先の事情が変われば切替期間も変わります。
一覧の数字が古くなると、発注元へ伝える見立てまで実態とずれてしまいます。
見直しのきっかけとして、編集部では取引条件が変わったときと、年1回の定期の見直しを例に挙げます。
取引条件が変わったときとは、たとえば新しい品目を受注した、発注元が仕様を変えた、仕入先を替えた、発注の単位や価格が変わった、といった場面です。
こうした変化は一覧の特定の行に直接響くので、その行だけを見直せば足ります。
定期の見直しでは、変化に気付かなかった行も含めて一覧全体に目を通し、代替品の確認結果が古くなっていないかもあわせて確かめます。
単独で難しいときの連携型計画
仕入先が止まる問題は、自社だけで閉じた話ではありません。
自社の仕入先、自社、発注元がつながっているからこそ起きる問題なので、一社だけで備えを考えるには限界があると感じる場面もあるでしょう。
そうしたときの選択肢の一つが、事業継続力強化計画です。
中小企業が防災・減災の事前対策をまとめ、経済産業大臣が認定する制度で、組合やサプライチェーン、工業団地、商店街など複数の事業者が連携して策定することもできます2。
取引でつながった事業者どうしで計画を作る形があるので、仕入先や発注元と一緒に、止まったときの連絡や対応を考える場として検討できます。
なお、この制度を紹介している中小企業基盤整備機構の案内は、連携型の計画を扱うセミナーの告知で、認定の要件や策定の手順、認定を受けた場合の扱いまでは説明されていません2。
連携型で進めるかどうかを考えるなら、制度の窓口で要件と手続きを確かめたうえで、ここまでに作った一覧を持ち寄るところから始めると、話し合いの材料がそろいます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 「仕入先と品目」の行を作り三つに分類する
- 持ち日数と切替期間を前提とともに書き込む
- 差がある行に備えを一つ決める
- 契約書の定めを確かめ連絡する項目を控える
持ち日数と切替期間は自社の記録からしか出せませんが、受注・発注・在庫の情報が別々に管理されていると、どこから数字を集めればよいか分からず、最初の一覧づくりで手が止まりがちです。
相談では、いまの受注と仕入の記録のどこから持ち日数の材料を取り出せるか、最初の一社分の一覧をどう組み立てるかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| どの仕入先から見るか | 受注品目からたどり、仕入先と品目の組み合わせで「止まれば納品が止まる」行を優先する |
|---|---|
| 代替が利くか | 手に入るか・使ってよいか・間に合うかの三つがそろうかで判断し、迷えば止まる側に置く |
| 何日もつか | 持ち日数と切替期間を前提付きで見立て、その差を備えの対象にする |
| 在庫か切替の短縮か | 差が小さく停止が短いなら在庫、差が大きく長引くおそれがあれば複数社購買や代替品の事前確認 |
| 発注元との関係 | 取適法の適用と、契約書の納期・遅延・不可抗力・通知の定めを確かめる |
| 見直し | 取引条件の変更時と年1回を目安に、一覧の数字を更新する |
備えは見直しを続けて初めて役に立ちますが、取引条件が変わるたびに情報を集め直していると、更新が後回しになり、発注元へ伝える見立てが古くなってしまいます。 相談では、見直しのたびに何を手作業で集め直しているか、受発注の情報のどこを一つにまとめれば更新の手間が減るかを確かめられます。
よくある質問
仕入先が1社しかない部品は、どう備えればよいですか。
その部品は「止まれば納品が止まる」に入ります。
まず持ち日数と切替期間を見立て、差の大きさを確かめます。
差が小さければ在庫で埋められますが、差が大きい場合は、平時に代替品の評価と発注元への相談を済ませておく事前確認で、切替期間を縮めることを考えます。
発注元が銘柄や仕入先を指定している場合は、変更の承認手続きを先に確かめておくと動きやすくなります。
あわせて、その仕入先の拠点や緊急時の連絡窓口を把握しておくと、停止に早く気付けます。
在庫を積み増す前に、まず何を確かめるべきですか。
その品目に持ち日数と切替期間の差があるかどうかです。
差がなければ、積み増しは保管場所と資金を使うだけになります。
差がある場合も、検査待ちや不良を除いた使える在庫の数、劣化しやすいかどうか、想定する停止が倒産のように再開を待てないものかどうかで判断が変わります。
再開を待てない停止では、在庫は切り替えまでの時間を稼ぐ役割にとどまります。
仕入先の停止で納期が遅れそうなとき、発注元にはいつ、何を伝えますか。
編集部としては、遅れが見えた段階での早めの一報をすすめます。
伝えるのは、何が止まったか、影響する品目と注文、持ち日数の見立て、切り替えの検討状況、次の連絡予定です。
分かっていることと分からないことを分けて伝え、連絡の日時と内容、相手の返答を記録に残します。
契約書に通知の期限が定められている場合は、それに従います。
取適法の対象かどうかは、どう確認すればよいですか。
取引の内容と、発注側・受託側それぞれの資本金や従業員の規模の組み合わせで決まります。
具体的な基準は公正取引委員会や中小企業庁の説明で確かめ、判断に迷う場合は両者の相談窓口に問い合わせます。
対象になる取引では、受託側に責任がないのに受領を拒むことや、責めに帰すべき理由なく代金を減額することが禁じられています1。
複数社購買にしたいが、切替に時間がかかる場合はどうすればよいですか。
二社目の評価や発注元の承認に時間がかかるなら、その作業を平時に前倒しする代替品の事前確認から始める方法があります。
確認が終わるまでの間は、持ち日数と切替期間の差を在庫で埋めておく組み合わせも考えられます。
確認した結果は時間がたつと古くなるので、定期の見直しで更新します。
単独でBCPを作る余裕がないときの選択肢はありますか。
まずは、最も気がかりな仕入先を一社から三社選び、持ち日数と切替期間を出すところから始められます。
取引先と一緒に備えたい場合は、事業継続力強化計画を、サプライチェーンなど複数の事業者が連携して策定する形もあります2。
認定の要件や手続きは、制度の窓口で確かめてください。
- 1 出典:公正取引委員会「取適法とは(委託事業者の禁止行為)」(2026年)
- 2 出典:中小企業基盤整備機構(J-Net21)「事業継続力強化計画の連携型セミナーの案内」(2026年)
- 3 出典:日本能率協会(ITmedia @IT の報道)「2022年BCP調査」(2022年)
画像の出典元
- A worker in protective gear supervises operations in a modern Ankara factory./Photo by Cemrecan Yurtman on Pexels