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食材発注の窓口を取引先ごとにばらさない進め方|まず自店の記録と担当を一本化

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 食材発注の「窓口」は、注文の担当と記録場所、取引先への連絡手段、一括送信の仕組みに分けて考え、取引先の同意が要らない記録と担当から一本化する。
  • 取引先ごとの受付手段・締め時間・納品日・担当を棚卸し表にまとめ、自店で変える所と取引先に合わせる所を塗り分ける。
  • 注文台帳に日付・取引先・品目と数量・金額・担当者を残し、注文・納品書・現物の3つの数量を突き合わせる。
  • 発注ツールは取引先が今の受け方のまま受け取れるかで選び、1〜2社で約1か月試してから広げるか元に戻すかを決める。

Close-up of a chef preparing parsley in a professional kitchen setting.
▽ 写真の出典元

食材発注の窓口が取引先ごとに違うと何が起き、「窓口を一つに」は何を指すのか

青果は電話、鮮魚はFAX、酒屋はLINE。
送り方も締め時間も取引先ごとに違い、「あの注文は出したか」を誰かの記憶で追っている店は少なくないはずです。
取引先の受付手段は、自店だけでは変えられません。
それでも、注文の記録、注文を出す担当、納品書との照合は、取引先に何も頼まずに自店で一本化できます。
まず取引先ごとの条件を棚卸し表にまとめ、共通の注文台帳を作ります。
そのうえで、取引先が今の受け方のまま受け取れる発注ツールを一部の取引先で試します。
この順なら、取引先の負担を増やさず、失敗しても元に戻しやすくなります。

よくある抜け・間違いの場面

夕方に青果店へ電話し、鮮魚店には前日の夜にFAXを送り、酒屋にはLINEで品名と本数を送る。
こうした送り分けは、取引先それぞれの受付に合わせてきた結果です。
どれか一つが間違っているわけではありません。
困るのは、注文の記録が送った手段ごとに散らばることです。
電話で頼んだ分は担当者の記憶と手元のメモにしか残りません。
FAXは送信控えの紙に、LINEは担当者のスマートフォンの画面の中にあります。

たとえば、発注を担当している料理長が休みの日を考えてみてください。
代わりに入ったスタッフが「明日の鮮魚は頼んであるか」を確かめようとしても、FAXの控えがどこにあるか分からず、料理長に電話するしかありません。
翌朝届いた鶏ももが少ない気がしても、前日に電話で何キロと伝えたのかを誰も書き残していなければ、取引先に問い合わせる根拠がありません。
酒屋の締めを一時間遅く覚えていれば、週末分の注文が一日ずれます。
場面は違っても、行き着くところは同じです。
「頼んだかどうか」「何をいくつ頼んだか」を、後から一か所で確かめられないのです。

取引先の数が増えるほど、この負担は日々の作業時間にも表れます。
飲食店向け発注サービスPlaceOrdersの導入事例では、牡蠣の仕入れで10以上の取引先とやり取りする店が紹介されています4。
この店は導入前、FAXや電話をする時間を毎日確保する必要があり、その作業が営業終了後の締め作業と重なっていたといいます4。
一店舗の事例なので、どの店でも同じ負担になるとは言えません。
ただ、取引先の数だけ連絡の作業が増え、それが閉店後の慌ただしい時間に重なるという構図は、取引先を複数抱える店なら見覚えがあるのではないでしょうか。

「窓口」の3つの意味

「発注の窓口を一つにしたい」と考えたとき、その「窓口」が何を指すかで、打つ手も相談する相手も変わります。
ここでは次の3つに分けて考えます。

  • 自店の中で、誰が注文を出し、どこに記録するか(注文の担当と記録場所)
  • 取引先に注文を届ける連絡手段(電話・FAX・メール・LINEなど)
  • 複数の取引先へまとめて発注書を送る仕組み(発注ツール)

1つ目は、自店だけで決められます。
担当を決める、記録の置き場所を一つにする、といった変更に取引先の同意は要りません。
一方、2つ目と3つ目は、取引先がどの手段で注文を受け付けているかに左右されます。
電話でしか受けていない取引先に「明日からメールで送ります」と一方的に切り替えれば、今度は相手の側で見落としが起きかねません。

冒頭の困りごとを並べ直すと、「注文済みかどうか分からない」「何をいくつ頼んだか残っていない」は、1つ目の記録と担当の問題です。
連絡手段がばらばらでも、記録が一か所にあれば確かめられます。
反対に、連絡手段だけをメールにそろえても、送った内容を店の誰も見返せない状態なら、同じ困りごとは残ります。
そのため、取引先に何かをお願いする前に、自店で決められる記録と担当から手を付けるのが無理の少ない順序だと考えます。
この順序は仕組みから考えた提案で、効果を測った数字に基づくものではありません。

食材発注の「窓口」の3つの意味と、決められる相手(模式図)
窓口を三つに分け、自店だけで決められるものと取引先の受付に左右されるものを示した図窓口を三つに分け、自店だけで決められるものと取引先の受付に左右されるものを示した図注文の担当と記録場所誰が注文を出すかどこに記録するか自店だけで決められる取引先への連絡手段電話・FAX・メール・LINEなど取引先の受付手段に左右される発注ツール複数の取引先へまとめて発注書を送る仕組み取引先がどの手段で受け付けているかに左右される

▼ 図の内容を文字で読む
  • 注文の担当と記録場所
    • 誰が注文を出すか
    • どこに記録するか
    • 自店だけで決められる
  • 取引先への連絡手段
    • 電話・FAX・メール・LINEなど
    • 取引先の受付手段に左右される
  • 発注ツール
    • 複数の取引先へまとめて発注書を送る仕組み
    • 取引先がどの手段で受け付けているかに左右される

取引先ごとの受付方法・締め時間を棚卸しし、自店で変える所と合わせる所を分ける

棚卸し表の項目

記録と担当から手を付けるといっても、いきなり台帳を作る前に、いまの取引先ごとの条件を1枚に並べておくと、その後の判断が楽になります。
何を共通にできて、何が取引先ごとに残るのかは、並べて初めて見えるからです。
取引先ごとに書き出すのは、次の項目です。

  • 取引先名と扱う食材(青果・精肉・鮮魚・乾物・酒類など)
  • 受付手段(電話・FAX・メール・LINEなど)
  • 締め時間(何日前の何時までか)
  • 納品日と納品の時間帯
  • 最低発注量や配送の条件
  • 連絡先と先方の担当者
  • 自店側でいま注文を出している人
  • 受付手段を変える相談ができそうか

最後の「受付手段を変える相談ができそうか」は、取引先に聞いてみないと分かりません。
それでも欄を作っておくのは、後で連絡手段や仕組みを選ぶとき、取引先ごとに選べる範囲が違うからです。
聞いていないうちは「未確認」と書いておけば足ります。
次の納品のときや、注文の電話のついでに尋ねて、少しずつ埋めていけば十分です。

自店で変える所/取引先に合わせる所

表ができたら、各欄を2色に塗り分けます。
自店で変えられるのは、誰が注文を出すか、どこに記録するか、注文前と納品時に何を確かめるか、という手順の部分です。
取引先に合わせるのは、受付手段、締め時間、納品日、最低発注量のように、相手の業務に組み込まれている部分です。

塗り分けてみると、日々の困りごとのうちどれだけが自店側で手を打てるものかが見えてきます。
たとえば締め時間の取り違えです。
締め時間そのものは取引先の条件ですが、取り違えの原因は「各社の締めを一覧で見られない」という自店側の事情にあります。
締めを遅らせてもらう交渉をするより、締めの一覧を作って発注を出す時刻を決めておく方が早く、取引先にも負担をかけません。
同じように、数量の伝え間違いも、伝える手段を変える前に、送る前に台帳と見比べる手順を足すことで減らせる余地があります。

取引先側の色に残った項目は、すぐには動かさなくて構いません。
ただ、そのなかに「FAXかメールで受けている」取引先があれば、後で仕組みを試すときの候補になります。
取引先が受付手段を変えなくても使える仕組みもあるからです。
たとえば発注サービスCORECの発注側の説明では、発注先にはFAXやメールで発注書が届き、受け取る側は確認に会員登録も費用も要らないとされています3。
この型の仕組みが使えるかどうかは、取引先がFAXかメールを受けているかで決まります。
棚卸し表の受付手段の欄が、そのまま判断材料になるわけです。

項目 記入例(仮の例) 判断に使う場面
受付手段 電話(夕方のみ) 連絡手段やツールの対象にできるか
締め時間 前日17時 注文を出す時刻の一覧づくり
納品日 火・木・土 納品書との突き合わせの予定
自店側の担当 料理長 担当と記録場所の一本化
手段変更の相談 未確認 試す取引先の候補選び
自店で変える所と取引先に合わせる所の分け方(模式図)
棚卸しの項目を自店で変えられる手順と取引先に合わせる条件に分け、自店の手順で補える例を添えた図棚卸しの項目を自店で変えられる手順と取引先に合わせる条件に分け、自店の手順で補える例を添えた図自店で変える所誰が注文を出すかどこに記録するか注文前と納品時に何を確かめるか取引先に合わせる所受付手段締め時間納品日最低発注量自店の手順で補う例締めの一覧を作り、発注を出す時刻を決める送る前に台帳と見比べる手順を足す

▼ 図の内容を文字で読む
  • 自店で変える所
    • 誰が注文を出すか
    • どこに記録するか
    • 注文前と納品時に何を確かめるか
  • 取引先に合わせる所
    • 受付手段
    • 締め時間
    • 納品日
    • 最低発注量
  • 自店の手順で補う例
    • 締めの一覧を作り、発注を出す時刻を決める
    • 送る前に台帳と見比べる手順を足す

手段を変えずに、食材発注の記録と担当を自店で一本化する

注文台帳に残す項目

取引先の受付手段はそのままにして、自店側の記録だけを一つにまとめる。
これが、取引先に何もお願いせずに始められる一本化です。
道具は表計算でも、スタッフで共有できるメモでも構いません。
大事なのは道具より決まりの方で、電話でもFAXでもLINEでも、注文を出したらその場で同じ台帳に書く、という一点です。
台帳には、1回の注文ごとに次の項目を残します。

  • 注文した日と時刻
  • 取引先
  • 品目と数量
  • 金額(単価が日によって変わるものは納品後に追記)
  • 注文を出した担当者
  • 送った手段
  • 納品予定日
  • 納品時の確認結果

このうち日付・取引先・金額は、後で税務上の保存を考えるときにも手掛かりになります。
電子的にやり取りした取引データは、取引の日付、金額、取引先で検索できることが保存の要件とされています1。
台帳を付けることがそのまま法定の保存になるわけではありません。
それでも同じ3項目で注文を探せるようにしておけば、後で控えを探すときに、どの日のどのやり取りを見ればよいかがすぐに分かります。

担当についても、ここで決めておきます。
注文を出す人を一人に固定できればいちばん単純ですが、休みや仕込みの時間帯の都合で難しい店も多いでしょう。
その場合は、出す人が複数いても「書く台帳は一つ」「担当者名を必ず書く」と決めれば、誰が出したかを後から辿れます。
担当の一本化は、人を一人に絞ることより、記録の場所と書き方を一つにすることだと考えると取り組みやすくなります。

納品書との突き合わせ

台帳が本当に役に立つのは、納品のときです。
届いた食材と納品書を見比べるだけでは、納品書の数量が自店の注文どおりかどうかまでは分かりません。
台帳に注文時の数量が残っていれば、「注文した数量」「納品書の数量」「実際に届いた数量」の3つを並べて確かめられます。

差があったときに、どこで食い違ったのかの見当もつけやすくなります。
注文と納品書が違えば、注文の伝わり方か、取引先側の処理のどこかで食い違った可能性があります。
納品書と現物が違えば、配送や検品の段階を疑うことになります。
ただし、台帳の数字だけで原因を決めつけることはできません。
台帳はあくまで、取引先と注文の控えや納品書を見比べて確かめるための材料です。
特に電話の注文は相手にも自店にも控えが残らないため、自店に残る記録は台帳だけになります。

確認した結果は、台帳の「納品時の確認結果」の欄に、一致か差異ありかを短く書けば十分です。
これを続けると、差異が何件あったかを後から数えられるようになります。
どの取引先、どの品目で食い違いが続いているかも見えてくるので、次に手順や手段を見直すときの比較材料になります。

保存の要件と期間

注文の控えや納品書をどれだけ取っておくかは、税務上の保存とも関係します。
法人の場合、帳簿と、取引に関して作成・受領した書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存するとされています2。
保存する書類の例には、注文書も挙がっています2。
個人で営業している店の保存期間は、この記事では扱っていません。
国税庁の個人向けの案内や、顧問の税理士に確かめてください。

紙ではなく電子的に送受信した取引データには、電子取引データの保存という決まりがあります。
対象は、所得税や法人税で帳簿書類の保存義務があるすべての人で、受け取ったデータだけでなく、自分が送ったデータも保存の対象になります1。
発注する店にとっては、受け取った請求書だけでなく、自分が送った注文も対象になりうる点が見落としやすいところです。

検索の要件は、先に触れた日付・金額・取引先です。
ただし、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の場合や、印刷した書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる場合は、検索機能を備えなくてもよいとされています1。
この場合も、税務調査などでデータのダウンロードを求められたら応じられることが条件で、保存そのものが要らなくなるわけではありません1。
なお、保存の猶予措置は、人手不足や資金繰りといった事情だけでは認められないと説明されています1。

迷いやすいのは、LINEで送った注文や、発注ツールからFAXやメールで送った発注書が、この電子取引データに当たるかどうかです。
やり取りの手段によって扱いが変わりうるため、この記事では当たる・当たらないを決めつけません。
自店の手段ごとに国税庁の資料で確かめるか、顧問の税理士に尋ねるのが確実です。
そのときも、取引先ごとの受付手段を並べた棚卸し表があれば、どのやり取りについて確かめればよいかをすぐに示せます。

注文から納品の確認までを一つの台帳でつなぐ流れ
注文を台帳に記録し、納品時に数量を並べて確かめ、結果を書き、差異があれば控えや納品書と見比べる流れの図1注文を出したらその場で台帳に書く2納品時に注文・納品書・現物の数量を並べる3結果を「納品時の確認結果」に書く4差異があれば控えや納品書を取引先と見比べる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 注文を出したらその場で台帳に書く
  2. 納品時に注文・納品書・現物の数量を並べる
  3. 結果を「納品時の確認結果」に書く
  4. 差異があれば控えや納品書を取引先と見比べる
注文の控えや納品書の保存で確かめる4つのこと(法人の場合・模式図)
保存期間、電子取引データの検索の3項目、検索機能が不要になる条件、手段ごとの確認の四つを並べた図保存期間、電子取引データの検索の3項目、検索機能が不要になる条件、手段ごとの確認の四つを並べた図保存の期間確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間注文書も保存する書類の例電子取引データの検索日付・金額・取引先で検索できること自分が送ったデータも対象検索機能が不要になる場合基準期間の売上高が5,000万円以下書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる手段ごとの確認LINEやツールで送った注文が当たるかは決めつけない国税庁の資料か税理士で確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 保存の期間
    • 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間
    • 注文書も保存する書類の例
  • 電子取引データの検索
    • 日付・金額・取引先で検索できること
    • 自分が送ったデータも対象
  • 検索機能が不要になる場合
    • 基準期間の売上高が5,000万円以下
    • 書面を日付・取引先ごとに整理して提示できる
  • 手段ごとの確認
    • LINEやツールで送った注文が当たるかは決めつけない
    • 国税庁の資料か税理士で確かめる

連絡手段の統一と発注ツールを、取引先の対応状況で選び分ける

3案の比較表

記録と担当を一つにしたうえで、次に考えるのが連絡手段や仕組みです。
選択肢は大きく3つあります。
台帳だけを共通にして手段は取引先ごとのまま続ける案、取引先にお願いして連絡手段をメールなど一つにそろえる案、複数の取引先へ発注書を送れる発注ツールを使う案です。
同じ軸で並べると、次のようになります。
評価は仕組みから考えた整理で、導入効果を測ったものではありません。

表で判断が分かれるのは、取引先側の負担の列です。
台帳だけの案は、取引先から見れば何も変わりません。
連絡手段をそろえる案は、送った記録が一か所に集まる利点がある一方、電話で受けてきた取引先にメールを確認する手間を求めることになり、取引先の数だけ相談が要ります。
発注ツールは、取引先がどう受け取るかによって、台帳案に近いこともあれば、手段をそろえる案と同じくらいの相談が要ることもあります。
ツールを検討するときに最初に見るべきなのは、機能の多さより、取引先の側で何が変わるかです。

取引先が登録不要で受けられる場合

発注ツールのなかには、店がツール上で発注書を作り、取引先にはFAXやメールで届ける型があります。
先に触れたCORECの発注側の説明では、発注先は会員登録も費用もなしで発注書を確認できるとされています3。
店側では、発注履歴からの再発注、入荷・未入荷の管理、送信に失敗したときの通知と再送信ができると説明されています3。
取引先がFAXかメールで受けているなら、取引先の側からは「いつもの経路で発注書が届く」状態のまま、店の側では送った記録が一か所に残ることになります。

台帳と比べて変わるのは、記録の手間です。
台帳は、電話やFAXで送った後に人が書き写すため、書き忘れがあれば記録が抜けます。
ツールから送る取引先については、送った内容が履歴として残るので、その分の書き写しが要らなくなります。
一方、届いた数量を納品書や現物と確かめる作業は、ツールを使っても残ります。

料金の条件は、試す範囲を決めるときに関わります。
CORECの発注側では、無料プランで発注書に商品登録できる取引先は1社まで、FAX発注書の無料送信は月5回までとされ、有料のビジネスプランは月額1,480円(税別)です3。
1社だけで試すなら無料の範囲で始められます。
複数の取引先にまとめて使う段階では、有料プランで何が変わるかを提供元で確かめることになります。
この金額は一つのサービスの現在の条件で、同種のツールの相場を示すものではありません。

取引先が対応できない場合

受付手段が電話だけの取引先には、FAXやメールで届ける型のツールでも注文を届けられません。
新しい受け取り方に対応できない取引先や、対応してくれるか分からない取引先についても、無理に切り替えを進めないのが基本です。
こうした取引先は、棚卸し表で「取引先に合わせる」側に残し、台帳で記録をそろえる対象にします。
台帳による一本化は取引先の対応と関係なく続けられるので、ツールを使う取引先と使わない取引先が混ざっても、確認の拠り所は失われません。
どの取引先をツールで送り、どの取引先を台帳で記録しているかを棚卸し表に書いておけば、確認のときにどこを見ればよいか迷わずに済みます。

ツールを比べるときに見落としやすいのが、取引先の側に何が必要かという点です。
たとえばPlaceOrdersは、店舗側が飲食店ドットコムの会員登録(無料)をして使うサービスです4。
前述の導入事例では、店舗はスマートフォンで発注し、既存の発注書をもとに商品リストの登録を代行してもらって使い始めています4。
一方、取引先の側が登録や操作を必要とするかどうか、その費用は、事例のページには書かれていません。
どのツールでも、店側の手間が減るかどうかと同じくらい、取引先が今の受け方のまま受け取れるかを提供元に確かめておくと、導入後に取引先との間で行き違うのを避けやすくなります。

案 取引先側の負担 切り替えの負担 記録・確認のしやすさ
台帳だけ共通(手段はそのまま) 変わらない 小さい(台帳を作り書く習慣をつける) 書き忘れがなければ一か所で確認できる
連絡手段を一つにそろえる 受付方法の変更をお願いする 取引先ごとに相談と調整が要る 送った記録が一つの手段に集まる
発注ツールを使う 型による(今の受け方のまま届くか) 商品リストの登録などの準備が要る 発注履歴がツールに残る型がある
取引先の対応状況による選び分け(模式図)
FAXかメールで受けている取引先と電話だけの取引先で行動を分け、無料の範囲で試す一例を添えた図FAXかメールで受けている取引先と電話だけの取引先で行動を分け、無料の範囲で試す一例を添えた図FAXかメールで受けている取引先今の受け方のまま発注書が届くか確かめる最初に試す1〜2社の候補にする電話だけ・対応が分からない取引先無理に切り替えない台帳で記録をそろえる無料の範囲で試す場合(一例)商品登録できる取引先は1社までFAX発注書の無料送信は月5回まで

▼ 図の内容を文字で読む
  • FAXかメールで受けている取引先
    • 今の受け方のまま発注書が届くか確かめる
    • 最初に試す1〜2社の候補にする
  • 電話だけ・対応が分からない取引先
    • 無理に切り替えない
    • 台帳で記録をそろえる
  • 無料の範囲で試す場合(一例)
    • 商品登録できる取引先は1社まで
    • FAX発注書の無料送信は月5回まで

どの取引先から切り替え、納品照合と担当交代に備えるか

最初に試す取引先の選び方

台帳はすべての取引先ですぐに始められますが、ツールの導入や連絡手段の変更は、一斉に切り替えない方が安全です。
すべてを同時に変えると、うまくいかなかったときに、どの取引先で何が起きたのかを切り分けられなくなるからです。
最初に試す1〜2社は、次のどちらかに当てはまる取引先から選ぶのが一案です。

  • 注文の回数や品目が多く、締め時間が遅めで、送り直す余裕がある取引先
  • 電話やFAXのやり取りに毎日時間を取られていて、変えたときの違いが分かりやすい取引先

前者は、送信がうまくいかなくても締めまでに別の手段で送り直せるため、試行のつまずきが欠品につながりにくい取引先です。
後者は、変えたときの違いが最もはっきり出る取引先です。
どちらの場合も、受付手段がFAXかメールで、棚卸し表の「受付手段を変える相談」が済んでいる取引先を優先します。
反対に、締めが早く、送り直す余裕のない取引先は、店の側が新しい手順に慣れてから後に回す方が無難です。

1か月の確認項目

試す期間は、1か月ほどを目安にします。
曜日ごとの発注の波が一通り入り、月末の締めや請求書との照合も1回経験できる長さだからです。
この期間は効果を測った結果から出したものではなく、確かめるのに足りる長さとして提案している目安です。
1か月の間に見るのは、次の3点です。

  • 出し忘れの件数(締めを過ぎてから気づいた注文)
  • 注文・納品書・現物の数量に差異があった件数
  • 取引先から受け取りについての問い合わせや戻りがあったか

1つ目と2つ目は、台帳の「納品時の確認結果」の欄から数えられます。
3つ目は数字になりにくいので、取引先とのやり取りで出た話をその都度メモしておきます。
試行の前から台帳を付けていれば、切り替え前の同じ期間と件数を比べられます。
記録がない状態から始めた場合は、件数の増減より、差異が起きたときに原因を辿れたかどうかを見る方が現実的です。

1か月たったら、広げるか、戻すかを決めます。
出し忘れや差異が増えず、取引先からも問題が出ていなければ、次の1〜2社に広げます。
取引先の側で受け取りに困りごとが出た場合は、その取引先は元の手段に戻し、台帳だけを共通にしたまま続けます。
戻すことは失敗ではありません。
棚卸し表の「取引先に合わせる」側に、その取引先を移すだけのことです。

担当交代時の引継ぎ

発注が特定の人に頼りきりになっているかどうかは、その人が急に休んだ日に分かります。
担当が替わるときや店舗が増えるときに困らないよう、ここまで作ったものを引継ぎの資料として使います。

引き継ぐのは、棚卸し表、締め時間と納品日の一覧、注文台帳の3つです。
棚卸し表には取引先ごとの受付手段と先方の担当者が、締め時間の一覧にはいつまでに何を出すかが、台帳には直近の注文と納品の結果が残っています。
ツールを使っている取引先があれば、ログインの方法と、どの取引先をツールで送っているかも書き添えます。
この3つがそろっていれば、新しい担当者は前任者に一つずつ聞かなくても、明日どこに何を出せばよいかを自分で確かめられます。

口頭の引継ぎだけでは、「この取引先には電話で数量をケース単位で伝える」といった細かな約束が抜けがちです。
そうした約束は、気づいたときに棚卸し表の備考へ書き足していくと、次の担当者が同じ行き違いを繰り返しにくくなります。
記録を一つにまとめる作業は、日々の確認のためだけでなく、発注を人の記憶から店の手順へ移す準備でもあります。

1〜2社で試す1か月の進め方(提案の目安・模式図)
試行の開始から1か月後に広げるか戻すかを決めるまでの作業を示した図試行の開始から1か月後に広げるか戻すかを決めるまでの作業を示した図開始時:対象の1〜2社を決める1〜3週目:注文と納品の照合結果を台帳に記録する4週目:月末の締めと請求書の照合を1回通す1か月後:出し忘れ・差異・取引先の声を見て、広げるか戻すかを決める

▼ 図の内容を文字で読む
  • 開始時:対象の1〜2社を決める
  • 1〜3週目:注文と納品の照合結果を台帳に記録する
  • 4週目:月末の締めと請求書の照合を1回通す
  • 1か月後:出し忘れ・差異・取引先の声を見て、広げるか戻すかを決める

取引先ごとの受付手段や締め時間、ツールで届けられる範囲は店ごとに違い、どこまで自店で一本化し、どの取引先から試すかは一覧を作っても判断に迷いやすいためです。

棚卸し表をもとに、台帳で記録をそろえる取引先と、ツールで試せそうな取引先の分け方を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
最初に一本化するもの 自店の注文記録・担当・納品照合(取引先の同意が要らない)
棚卸し表の要点 受付手段・締め時間・納品日・先方と自店の担当・受付手段を変える相談の可否
台帳の必須項目 日付・取引先・品目と数量・金額・担当者
ツールを選ぶ条件 取引先が今の受け方(FAX・メール)のまま受け取れるか
切り替えの進め方 1〜2社で約1か月試し、出し忘れと差異を見て広げるか戻す
保存 法人は原則7年。電子でやり取りした注文の扱いは手段ごとに確認

1か月の試行で記録した出し忘れや差異をどう読み、次にどの取引先へ広げるかは、台帳の数字と取引先の事情を合わせて見ないと決めにくいためです。 試行中の台帳の記録をもとに、広げる取引先と元の手段に戻す取引先を判断する材料を整理できます。

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よくある質問

LINEで注文を送っている取引先とのやり取りも、電子取引データとして保存しなければなりませんか。

電子取引データの保存は、所得税や法人税で帳簿書類の保存義務があるすべての人が対象で、受け取ったデータだけでなく送ったデータも含まれます1。
ただ、LINEでの注文が個別にどう扱われるかは手段によって変わりうるため、国税庁の資料か顧問の税理士に確かめてください。
確かめるまでの間も、トークを消さずに残し、注文台帳に日付・金額・取引先を書いておけば、後で該当するやり取りを探しやすくなります。

売上が小さい店なら、検索できる形で保存しなくてもよいのですか。

基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の場合などは、日付・金額・取引先で検索できる機能を備えなくてもよいとされています1。
ただし、データのダウンロードを求められたら応じられることが条件で、保存そのものが不要になるわけではありません1。

取引先が電話でしか注文を受けない場合、何を一本化できますか。

連絡手段は変えられなくても、注文の記録、注文を出す担当者の記入、納品書との照合は一本化できます。
電話の注文は相手にも自店にも控えが残らないため、注文したその場で台帳に品目・数量・担当者を書いておくことが、納品時に数量を確かめる唯一の手掛かりになります。

担当が替わるとき、最低限引き継ぐ情報は何ですか。

棚卸し表、締め時間と納品日の一覧、注文台帳の3つです。
取引先ごとの受付手段と先方の担当者、いつまでに何を出すか、直近の注文と納品の結果がそろっていれば、新しい担当者が自分で翌日の発注を確かめられます。
発注ツールを使っている取引先があれば、ログインの方法と対象の取引先も書き添えます。

発注ツールを入れた後も、納品書との照合は必要ですか。

必要です。
ツールに残るのは自店が送った発注の記録で、実際に届いた数量は納品書と現物で確かめるしかありません。
入荷・未入荷を管理できるツールもありますが3、注文・納品書・現物の数量を見比べる作業そのものは残ります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:財務省「広報誌『ファイナンス』令和6年8月号 電子帳簿等保存制度の特集」(2024年)
  2. 2 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
  3. 3 出典:株式会社ラクーンコマース「COREC(コレック) 発注側向け料金・機能ページ」(2026年)
  4. 4 出典:株式会社飲食店ドットコム「PlaceOrders導入事例 産直かきと炉端焼 恵比寿 牡蠣ツ端」(2026年)

画像の出典元

  1. Close-up of a chef preparing parsley in a professional kitchen setting./Photo by Odin Reyna on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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