◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 食材発注のミスは、在庫確認・必要数の判断・注文の伝達・納品検品のどこで起きたかを、直近1〜2か月の記録で切り分けてから直す。
- 発注量は品目ごとの基準量と在庫の差で決め、予約や宴会の分は別に上乗せし、棚卸しで欠品と廃棄を記録して見直す。
- 伝達手段は仕入先が受けられることを前提に、記録が残り締めに間に合う形へそろえ、手段が違っても店側の発注記録は一つにまとめる。
- データ連携は1社だけでは効果が出にくいため、手順を整えた後、仕入先がデータで受けられる範囲で検討する。公的実証の平均51.4%削減は飲食店の数値ではない。
- メールやサイトを通じた注文は電子取引に含まれ、電子データのまま保存する義務がある。具体的な要件は国税庁の最新資料で確かめる。
目次

食材発注で「届かない・多すぎる・指示が違う」は、流れのどこで起きているのか
朝の仕込み前に仕入先へ電話をして、昼に届いた箱を開けると、頼んだはずの品が無かったり、量が倍になっていたりする。
こうした食材発注のミスは、担当者の注意力だけの問題とは限りません。
まず、在庫確認・必要数の判断・注文の伝達・納品検品の4工程のどこで、ミスと時間のロスが出ているかを切り分けます。
量の決め方が原因なら基準量を、伝達が原因なら手段と記録を見直します。
発注システムやデータ連携は、仕入先の対応がそろって初めて効きます。
そのため、自店の手順を整えたうえで、仕入先が対応できる範囲から検討するのが順番です。
発注の4工程と、ミスが出やすい箇所の見つけ方
食材発注はひとまとまりの作業に見えますが、実際には性質の違う4つの工程が続いています。
1つ目は、冷蔵庫や乾物棚を見て残りを把握する在庫確認です。
2つ目は、次の納品までに使う量を見込んで、頼む数を決める必要数の判断です。
3つ目は、仕入先ごとに電話やFAX、メッセージで注文を出す伝達です。
4つ目は、届いた品を伝票と照らして受け取る納品検品です。
4工程に分けると、同じ「届かない」でも、原因の場所が違うことが見えてきます。
たとえば玉ねぎが届かなかったとします。
在庫確認で残量を多く見誤って頼まなかったのか、頼むつもりで電話をかけ忘れたのか、仕入先の締め時間を過ぎて翌々日の扱いになったのか、届いていたのに検品で見落として別の場所に置かれたのかで、直す先はまったく違います。
前の二つは自店の判断の問題、三つ目は仕入先との取り決めの問題、四つ目は受け取りの手順の問題です。
「多すぎる」も同じように考えられます。
基準となる量があいまいで毎回多めに頼んでいるなら、量の決め方の問題です。
ケース単位とキロ単位を取り違えたなら、伝達の問題です。
二人が別々に同じ品を頼んでいたなら、担当の分け方の問題になります。
「指示が違う」は、規格やカットの指定が口頭でうまく伝わらなかった、前回と同じと言ったつもりが仕入先の記録と食い違っていた、といった伝達の場面に原因があることが考えられます。
ただし、検品で気づけなければ、仕込みの直前まで表に出てきません。
直近のミスを1件ずつ工程に当てはめる
工程の切り分けは、頭の中で考えるより、実際に起きたミスを並べるほうが早く進みます。
直近1〜2か月で気づいたミスを、思い出せる限り書き出します。
そのうえで1件ごとに、どの工程で起きたか、気づいたのはどの時点か、取り戻すのにどれだけ手間がかかったかを添えていきます。
記憶があいまいな件は無理に埋めず、分からないと書いておけば十分です。
当てはめが終わると、件数が偏っている工程が見えてきます。
工程ごとの起きやすさは、店の規模や仕入先の数、品目の多さによって変わりうるため、他店の傾向ではなく自店の記録で判断します。
件数とあわせて見ておきたいのが、取り戻しの手間です。
件数は少なくても、欠品のたびに近所の店へ買いに走ったり、メニューを差し替えたりする工程は、時間の面で大きな負担になっています。
書き出した一覧は、次に何を直すかを決める材料になります。
量の判断にミスが集まっていれば、基準量の見直しへ進みます。
伝達に集まっていれば、手段と記録のそろえ方を見直します。
仕入先の締めや納品の条件に絡むものが多ければ、取引先との調整が必要です。
工程をまたいでばらばらに散らばっている場合は、誰が発注するのか、どう引き継ぐのかといった担当の決め方に原因があることもあります。
| 気づいた症状 | 原因になりうる工程 | 次に見直すもの |
|---|---|---|
| 頼んだ品が届かない | 在庫確認・伝達・仕入先の締め・検品 | 締め時間の共有と発注の記録 |
| 量が多すぎる | 必要数の判断・単位の伝達・担当の重複 | 基準量と単位の書き方と担当の分け方 |
| 規格や指定が違う | 伝達・検品 | 品名と規格の対応表 |
| 発注に時間がかかる | 在庫確認・必要数の判断・伝達 | 数え方と転記の回数 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 在庫確認
- 必要数の判断
- 注文の伝達
- 納品検品
発注量はどう決めれば、欠品と廃棄・過剰在庫の両方を抑えられるのか
在庫と使用実績から基準量を決める
量の判断でミスが続くとき、その背景には、その品をいくつ持っていれば足りるのかが担当者の感覚に任されている状態があります。
感覚で決めると、欠品で困った翌週は多めに、廃棄が出た翌週は少なめにと、直前の出来事に引っ張られて量が揺れます。
欠品と廃棄の両方を抑えるには、品目ごとに基準となる量を決め、その量といまの在庫との差を頼む形に変えるのが一つの方法です。
ここで提案するのは、定数と呼ばれる考え方を簡素にした手順です。
まず、主な品目について、決まった時刻に在庫を数えます。
次に、過去の伝票や仕入れの記録から、その品目を次の納品までにどれくらい使っているかを見ます。
そのうえで、次の納品までの使用量に少しの余裕を足した量を基準量とし、発注のときは「基準量−いまの在庫」を頼みます。
たとえば鶏もも肉を週に何度か納品で受けていて、納品と納品の間に使う量がおおむね一定なら、その量に余裕分を足したものが基準になります。
余裕分をどれだけ取るかは、品目の性質で考えます。
冷凍品や乾物のように日持ちするものは、多めに持っても廃棄になりにくい品目です。
葉物や鮮魚のように日持ちしないものは、余裕を薄くするほうが廃棄を抑えやすくなります。
どちらを優先するかは、その品が切れたときにメニューを止めるのか、代わりの品で回せるのかによっても変わります。
この基準量は、在庫を数えて記録することが前提です。
目分量で残りを判断している間は、基準量を決めても、差し引く在庫の数字があいまいなままになります。
全品目を一度に始める必要はありません。
使う量が多い品目や、欠品・廃棄が出たことのある品目から決めていけば、数える手間を抑えながら、基準量が機能しているかを確かめられます。
予約・宴会など需要の変動をどう織り込むか
基準量は、ふだんの営業を前提にした量です。
宴会や団体予約、週末や近隣の行事がある日など、ふだんと違う需要が入ると、基準量のまま頼めば足りなくなります。
反対に、天候や近隣の休業日などで来客が減りそうなときに基準量どおり頼めば、余りが出ます。
変動を織り込むときは、基準量と上乗せ分を分けて考えると扱いやすくなります。
基準量はふだんの分として変えずに置き、予約が入った日は、コースの内容から必要な食材を別に積み上げて足します。
こうしておくと、宴会のために一時的に増やした量が、いつの間にか基準量として残ってしまうことを避けられます。
翌週以降に余りが続くといった、原因の分かりにくい過剰在庫を防ぐ意味もあります。
上乗せの判断には、予約の情報と発注の担当がつながっていることが欠かせません。
予約を受けるのがホール側で、発注するのが厨房側という店では、予約の情報が発注の時点で届いていなければ、どれだけ基準量を整えても欠品が出ます。
予約の人数とコースを、発注する人が必ず見る場所に書き出しておくだけでも、伝え忘れによる欠品の一部は防げます。
一方、来客が少なそうな日の見込みは予約ほど確かな情報ではありません。
減らす判断は日持ちしない品目に絞り、大きく削りすぎないほうが無難です。
棚卸しで過不足を確かめる
基準量は、一度決めたら終わりではありません。
メニューの入れ替えや季節、客数の変化で使う量が変われば、基準量も合わなくなります。
合っているかどうかを確かめる場が棚卸しです。
確かめ方は、基準量を決めた品目について、棚卸しのたびに、欠品が出たか、廃棄や使い切れずに残った量はどれだけかを記録しておく方法です。
欠品が続く品目は、基準量か余裕分が足りないと読めます。
廃棄や在庫の積み上がりが続く品目は、基準量が多すぎると読めます。
どちらも出ていなければ、いまの基準量で回っていると考えられます。
見直しの頻度は、店の棚卸しの周期に合わせると無理がありません。
月ごとに棚卸しをしている店ならその時に、主要な品目を週ごとに数えている店ならその記録で見直します。
メニューを入れ替えたときは、周期を待たずに関係する品目の基準量を見直しておくと、入れ替え直後の欠品や余りを抑えやすくなります。
廃棄の面では、農林水産省が、外食産業から多くの食品ロスが発生しているとして、飲食店等の食品ロス削減のための好事例集(第二版)を公表しており、57の事例が掲載されています3。
余った食材は、使い切れなければ廃棄につながります。
発注量を見直すことは、欠品を防ぐという店の都合だけでなく、こうした廃棄を減らす取り組みとも重なる作業です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 在庫を数える
- 次の納品までの使用量を見る
- 余裕分を足して基準量を決める
- 基準量と在庫の差を発注する
- 棚卸しで欠品と廃棄を記録し見直す
仕入先への注文伝達(電話・FAX・LINE・Web等)は、何を基準に選び、どう統一するのか
仕入先の受注方法と締め時間を先に確認する
伝達の工程にミスが集まっている店では、自店がどの手段で頼みたいかより先に、仕入先がどの手段で受けられるかを整理します。
青果は電話、精肉はFAX、酒類はメッセージアプリ、業務用の卸はWebの注文画面というように、仕入先ごとに受け方が違うことがあります。
発注する側がいくら一つにそろえたくても、受ける側が対応していなければ、その手段では注文が届きません。
受注方法と並んで確かめたいのが、締め時間と納品の条件です。
何時までの注文なら翌日に届くのか、最低発注量や配送の曜日はどうなっているのか、注文を受けた旨の返事はあるのかを、仕入先ごとに一覧にします。
締め時間を過ぎて頼んだ品が一日遅れて届くというミスは、発注する人の手際の問題ではなく、締め時間の情報が店の中で共有されていないことから起きています。
一覧を発注表の近くに置くだけで、担当者が替わっても同じ時刻を基準に動けます。
そのうえで手段を選ぶ基準は、受注側が受けられるか、記録が残るか、締めに間に合うか、聞き間違い・書き間違いが起きにくいか、の四つに整理できます。
四つの基準は、どれか一つで決まるものではありません。
電話は締めの直前でも確実に相手へ伝えやすい一方、言った内容が手元に残りません。
FAXやメール、注文画面は書いたものが残りますが、仕入先が受信を確かめる時刻によっては、締めに間に合ったかどうかが分かりにくいことがあります。
どの手段なら誤伝達が少ないとは一律に言えないため、ここでの基準は、自店のミスの一覧と照らして選ぶための目安として使います。
たとえば検品で単位の取り違えが続いているなら、文字で伝わる手段へ寄せる理由になります。
記録が残る形にそろえる
仕入先ごとに手段が違う状態をすぐに一本化できなくても、そろえられるものがあります。
それは、何をいつ、どれだけ頼んだかという記録です。
電話で頼む仕入先があっても、店側で発注の内容を発注表に書いてから電話をかけ、かけた時刻と相手の名前を書き添えておけば、手段は電話のままでも記録は残ります。
記録をそろえると、検品の工程も変わります。
届いた品を伝票だけでなく自店の発注表とも照らせるようになり、頼んだのに来ないのか、そもそも頼んでいないのかを、その場で区別できます。
記録がない状態では、この区別が担当者の記憶に頼ることになり、仕入先とのやり取りも言った・言わないの話になりがちです。
記録があれば、仕入先に問い合わせるときも、注文した日時と内容を示して確かめられます。
品名と単位の書き方もそろえておきます。
「玉ねぎ1」が1個なのか1キロなのか1ケースなのかは、書いた本人には明らかでも、受ける側や代わりに発注した人には分かりません。
仕入先の商品名や規格と、自店での呼び方が違う品目は、発注表に両方を並べておくと、言い換えによる取り違えを減らせます。
メールや注文サイトで注文を出す仕入先が増えると、記録は自然に電子データとして残るようになります。
国税庁は、注文書などに通常書かれる事項を電子的にやり取りする取引を電子取引とし、電子メールやインターネット上のサイトを通じた取引、EDI取引などを含むとしています2。
この扱いは保存の義務と関わるため、手段を電子に寄せるときは、残し方も一緒に決めておく必要があります。
| 基準 | 確かめること |
|---|---|
| 受注側が受けられるか | 仕入先がふだん使っている受け方と、対応できる手段 |
| 記録が残るか | 何をいつどれだけ頼んだかが、店側の手元に残るか |
| 締めに間に合うか | 仕入先が注文を確認する時刻と、締め時間との関係 |
| 聞き間違い・書き間違いが起きにくいか | 品名・規格・単位が文字で伝わるか |
▼ 図の内容を文字で読む
- 受注側が受けられるか
- 仕入先がふだん使っている受け方
- 記録が残るか
- 何をいつどれだけ頼んだかが手元に残る
- 締めに間に合うか
- 仕入先が注文を確認する時刻と締め時間
- 聞き間違い・書き間違いが起きにくいか
- 品名・規格・単位が文字で伝わる
手順の整備と発注システム導入は、どんな状況でどちらが適しているのか
手順整備で足りる場合
ここまでの見直しは、どれも自店の中で手順とルールを整える作業でした。
基準量を決め、締め時間を一覧にし、発注の記録を一か所にそろえる。
これによって、量の判断と伝達のミスが減り、迷う時間や電話をかけ直す時間の分だけ、発注にかかる時間も短くなる可能性があります。
手順整備で足りるのは、ミスの原因が自店の判断や記録のあいまいさにある場合です。
仕入先の数が少なく、品目もある程度決まっている店では、発注表と基準量があれば、毎日の作業は「在庫を数え、差を書き、仕入先ごとに伝える」に収まります。
こうした店でシステムを先に入れても、基準量や締め時間が決まっていなければ、画面の上で同じ迷いを繰り返すことになります。
反対に、手順を整えても負担が残るのは、仕入先が多く、それぞれに発注表から書き写して電話やFAX、メールを使い分けている場合です。
このとき手間になっているのは判断ではなく転記です。
同じ内容を発注表、FAX用紙、メールへと何度も書き写す間に、書き間違いが入り込みます。
この転記を減らしたいときに、発注システムやデータ連携が選択肢に入ってきます。
データ連携を検討する場合の条件
データ連携とは、発注側と受注側の仕組みが、注文の内容をデータとして直接やり取りすることです。
企業間でこれを行う仕組みを、EDI(電子データ交換)と呼びます。
中小企業庁の解説では、中小企業共通EDIは2018年4月にITコーディネータ協会が中心となって初版が公開され、データ形式を共通にすることで導入の手間とコストを減らすことを目指したものとされています1。
取引の双方が対応するプロバイダーと契約する形をとり、発注する側はそれまでの自社の仕組みを使い続けられるとも説明されています1。
店側から見たときの要点は、連携がつながれば、発注表に書いた内容を仕入先ごとの手段へ書き写す作業が減ることです。
店の画面に入れた注文がそのまま仕入先に届けば、FAX用紙への転記や電話での読み上げが要らなくなり、その途中で起きる書き間違いや聞き間違いの余地も小さくなります。
一方で、在庫を数えること、基準量との差を判断すること、届いた品を確かめることは、連携しても店側に残る作業です。
前の節までで整えた手順は、システムを入れた後もそのまま必要になります。
そして最も大きな条件は、仕入先が対応しているかどうかです。
同じ解説は、EDIは1社だけでは効果が出にくいため、取引先の状況を踏まえて導入の要否を判断するよう留意点を挙げています1。
飲食店に当てはめると、仕入先の大半が電話とFAXで受けている状態で店だけが発注システムを入れても、画面から印刷してFAXを送るか、電話で読み上げることになり、転記は減りません。
導入を考えるときは、主な仕入先がどの手段で受けられるか、データで受けられる仕入先が自店の注文のどれだけを占めるかを、先に確かめておく必要があります。
表で判断が分かれるのは、仕入先側の要件の列です。
手順整備は仕入先に何も求めず、既存手段の統一は仕入先の受け方の範囲で選べます。
しかしデータ連携は、仕入先の対応がそろわなければ効果が出ません。
そのため順番としては、手順整備を先に行い、仕入先がデータで受けられる範囲が見えてから、その範囲に限って導入を検討するのが筋になります。
公的実証の数値の読み方と限界
中小企業庁の解説によれば、中小企業共通EDIの実証事業(平成28年度補正、12プロジェクト)では、大企業と比べて中小企業のほうが業務時間の削減率が高く、平均で51.4%の削減効果が得られたとされています1。
削減率が高かった理由としては、中小企業は既存の業務の流れを変えやすかったことが挙げられています1。
ただし、この数値をそのまま自店の見込みにすることはできません。
実証の対象は自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界で、北海道・東京・静岡・愛知・大阪の5地域で行われたもので、飲食店や食材の発注は対象として明示されていません1。
51.4%は業界別に分けた数値ではなく、特定の製品を入れた効果でもありません。
飲食店が発注システムを入れれば発注の時間が半分になる、という読み方はできないということです。
それでも、この実証から読み取れることはあります。
一つは、データ連携の効果は、取引の双方がつながって初めて出るものだという点です。
もう一つは、業務の流れを変えやすいことが削減率の高さにつながったという指摘です。
小さな店にとっては、仕組みを入れる前に自店の手順を整えておく意味を裏づける見方といえます。
自店でどれだけ時間が減るかは、試行の前後で自店の記録を比べて確かめることになります。
| 選択肢 | 効く条件 | 仕入先側の要件 | 現場の負担 | 確かめ方 |
|---|---|---|---|---|
| 手順整備 | 原因が量の判断や記録のあいまいさにある | 特に求めない | 在庫を数えて記録する手間が増える | ミス件数と欠品・廃棄の前後比較 |
| 既存手段の統一 | 伝達での取り違えや記録漏れが多い | 仕入先が受けられる範囲で選ぶ | 手段の切り替えと仕入先への依頼 | 伝達工程のミス件数の前後比較 |
| データ連携 | 仕入先が多く転記の手間が大きい | 仕入先がデータで受けられる | 操作の習得とルールづくり | 発注にかかる時間と転記の回数の前後比較 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 手順整備で足りる場合
- 原因が自店の判断や記録のあいまいさにある
- 仕入先が少なく品目もある程度決まっている
- データ連携を検討する場合
- 仕入先が多く転記の手間が残る
- 仕入先がデータで受けられる
- 連携しても店に残る作業
- 在庫を数える
- 基準量との差を判断する
- 届いた品を確かめる
見直しや導入で、仕入先・現場スタッフ・保存の面にどんな調整が必要か
仕入先への依頼の伝え方
手順を整えるときも、仕組みを入れるときも、仕入先には何らかの協力をお願いすることになります。
締め時間や最低発注量を改めて書面でもらう、注文を受けた旨を返事してもらう、FAXからメールへ切り替えてよいかを聞く、といった依頼です。
発注する側の都合だけで手段を変えると、仕入先の側で受け方が増え、かえって見落としが起きるおそれがあります。
依頼の前に聞いておきたい項目は、次のようなものです。
受けられる注文の手段と、そのうち仕入先がふだん使っているもの。
締め時間と、締めを過ぎた注文の扱い。
注文を受けた旨の返事の有無と、その方法。
品名・規格・単位の呼び方。
欠品や代替品が出るときの連絡の仕方。
これらを聞いたうえで、店側から変えたいことを伝えます。
たとえば、発注の内容を毎回記録に残したいので、できれば電話ではなくFAXかメールで送りたい、というように理由と一緒に伝えると、仕入先も自社の受け方の中でどこまで合わせられるかを答えやすくなります。
データ連携を検討している場合も同じで、仕入先がすでに使っている受注の仕組みがあるかどうかを聞くことが、導入を判断する材料になります。
スタッフの操作・記録のルール
発注を一人の担当者が行っている店でも、休みの日や急な欠勤のときには別の人が代わりに頼みます。
このとき、担当者の頭の中にしかない情報が多いほど、代わりの人は迷い、ミスが出ます。
どの品目をどの仕入先に、何時までに、どの手段で頼むのか、基準量はいくつかを発注表に書いておくことが、引き継ぎの土台になります。
ルールとして決めておきたいのは、誰が発注を出すか、発注の前に誰が在庫を数えるか、発注した記録をどこに残すか、検品で違いを見つけたら誰にどう伝えるか、の四つです。
特に誰が出すかが決まっていないと、二人が同じ品を別々に頼んで多すぎる、互いに相手が頼んだと思って誰も頼まない、という両方のミスが起きます。
検品で見つけた違いの伝え方を決めておくと、仕入先への連絡と、次の発注での直しが同じ人に届きます。
システムを入れる場合は、これに操作のルールが加わります。
誰がどの画面で注文を入れ、誰が確定するのか、入力を間違えたときに締め時間の前まで取り消せるのか、といった点は仕組みによって違います。
入れる前に、実際に発注する人に操作してもらって迷う点を書き出し、手順書にまとめておくと、担当が替わっても同じ手順で回せます。
電子で受けた注文データの保存
メールや注文サイトで発注するようになると、もう一つ考えておくべきことがあります。
電子メールやインターネット上のサイトを通じた取引は電子取引に含まれ、その取引情報は電子データのまま保存することが義務付けられています2。
国税庁の説明では、電子帳簿保存法第7条が参照されています2。
店側で気をつけたいのは、紙に印刷して綴じておけば足りると決めてしまうことです。
電子データのまま残すことが求められているため、メールで送った注文書や受け取った注文確認のメールは、データのまま残す前提で、保存場所とファイル名の付け方を決めておくと、後から探しやすくなります。
どのような方法で保存すれば要件を満たすのか、要件が緩和される条件があるのかといった細かな点は、国税庁が公表している電子帳簿保存法の一問一答の最新版で確かめるか、顧問の税理士に相談してください。
電話やFAX、メッセージアプリなど、手段ごとの扱いも迷いやすいところです。
どの手段が電子取引に当たるかは、手段の名前だけでなく、何をどうやり取りしたかで判断が分かれる可能性があります。
自店で使っている手段を一覧にしたうえで、所管の資料や税理士に確かめておくと安心です。
発注の手段を見直すときに保存の方法まで一緒に決めておけば、手段を変えた後で保存をやり直す手間を避けられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 仕入先への依頼
- 締め時間や最低発注量を書面でもらう
- 注文を受けた旨の返事をもらう
- 品名・規格・単位の呼び方を確かめる
- スタッフのルール
- 誰が発注を出すか
- 発注の前に誰が在庫を数えるか
- 発注した記録をどこに残すか
- 検品で違いを見つけたら誰にどう伝えるか
- 電子データの保存
- 電子データのまま保存する
- 保存場所とファイル名の付け方を決める
- 細かな要件は最新の資料か税理士で確かめる
自店では何から始め、どう定着させ、効果を確かめればよいのか
現状把握から試行までの進め方
見直しは、現状把握、ルール化、試行、定着の順に進めます。
現状把握では、直近1〜2か月のミスを工程に当てはめた一覧に加えて、発注にかかっている時間を記録します。
在庫を数える時間、量を決める時間、仕入先ごとに注文を出す時間を分けてしばらく書き留めるだけでも、どこに時間が使われているかが見えてきます。
ミスの一覧と時間の記録がそろうと、量の判断に時間がかかっているのか、伝達の転記に時間がかかっているのかを分けて考えられます。
ルール化では、一覧から見えた工程に合わせて、基準量、締め時間の一覧、発注表の書き方、担当の決め方を整えます。
ここでは並行できる作業を並行して進めます。
仕入先への受注方法や締め時間の確認と、店の中での在庫の数え方や基準量の決め方は、互いの結果を待たずに始められます。
一方が終わるまで他方を止める必要はありません。
試行は、1つの仕入先か、1つの品目群に絞って始めます。
たとえば、ミスが多かった青果の仕入先だけを対象に、新しい発注表と記録のルールで数週間回してみる、といった形です。
範囲を絞ると、うまくいかなかったときに原因を見つけやすく、仕入先への依頼も一社に集中できます。
試行で問題がなければ、仕入先や品目を一つずつ広げ、全体に行き渡ったところを定着とします。
前後比較で効果を確かめる記録項目
効果は、試行の前後で同じ項目を比べて確かめます。
比べる項目は、ミスの件数とその工程、発注にかかった時間、欠品の回数、廃棄や使い切れずに残った量の四つです。
現状把握で記録した数字が、そのまま比較の起点になります。
比べるときに気をつけたいのは、試行の期間に客数や季節が大きく変わっていないかという点です。
宴会が多い月と少ない月を比べれば、手順を変えなくても欠品や廃棄の数は動きます。
前後の期間について、予約の数や営業日数もあわせて書いておくと、変化が手順によるものか、需要の違いによるものかを見分ける手がかりになります。
数字が思ったほど改善しなかった場合も、記録は無駄になりません。
ミスの件数は減ったのに時間が減っていないなら、判断は整ったものの転記の手間が残っているということで、仕入先の対応を確かめたうえでデータ連携を検討する材料になります。
時間は減ったのに欠品が増えたなら、基準量か余裕分を見直す必要があります。
効果の確かめ方を先に決めておくと、次に直す工程も、感覚ではなく記録から選べるようになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 現状把握
- ルール化
- 試行
- 定着
工程の切り分けや基準量は自店で進められますが、仕入先ごとの受注方法を並べてどこまでを電子でのやり取りに寄せられるかは、取引全体を見渡さないと判断しにくいところです。
いまの仕入先と手段・締め時間を一緒に整理し、手順整備で済む範囲と、データでのやり取りを検討できる範囲の切り分けを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| ミスの原因 | 在庫確認・必要数の判断・伝達・検品のどこで起きたかを、直近の記録で切り分ける |
| 発注量 | 品目ごとの基準量と在庫の差を頼み、予約分は別に上乗せする |
| 伝達手段 | 仕入先が受けられ、記録が残り、締めに間に合うものを選ぶ |
| システム導入 | 手順を整えた後、仕入先がデータで受けられる範囲に限って検討する |
| 注文データの保存 | メール・サイト経由の注文は電子データのまま。詳細は国税庁の最新資料で確かめる |
| 効果の確かめ方 | 試行前後でミス件数・発注時間・欠品・廃棄を比べる |
試行の記録で転記の手間が残っていると分かったときや、メール・サイト経由の注文が増えて残し方を決める必要が出たときは、手段と記録をまとめて見直す時期です。 試行前後の記録をもとに、どの仕入先や品目から仕組みを広げるか、注文の記録をどう残していくかの進め方を確かめられます。
よくある質問
仕入先ごとに受注方法が違うとき、発注方法は1つにそろえるべきですか。
無理に一つにそろえる必要はありません。
仕入先が受けられない手段に変えると、注文が届かない、見落とされるといった別のミスが起きます。
先にそろえたいのは、何をいつどれだけ頼んだかという店側の記録と、品名・単位の書き方です。
そのうえで、仕入先が受けられる範囲で、記録が残り締めに間に合う手段へ少しずつ寄せていきます。
発注点(定数)はどう決め、どのくらいの頻度で見直せばよいですか。
品目ごとに、次の納品までに使う量へ少しの余裕を足した量を基準量とし、基準量といまの在庫の差を頼む形が扱いやすい方法です。
余裕分は、日持ちする品目は厚めに、日持ちしない品目は薄めにします。
見直しは棚卸しの周期に合わせ、欠品が続く品目は増やし、廃棄や積み上がりが続く品目は減らします。
メニューを入れ替えたときは、周期を待たずに関係する品目を見直します。
LINEやメールで出した注文は、電子取引として保存が必要ですか。
電子メールやインターネット上のサイトを通じた取引は電子取引に含まれ、その取引情報は電子データのまま保存することが義務付けられています2。
メッセージアプリなど個別の手段の扱いや、保存の具体的な要件、要件が緩和される条件は、国税庁の電子帳簿保存法の一問一答の最新版で確かめるか、税理士に相談してください。
発注担当が替わっても回るように、何を記録として残しておけばよいですか。
仕入先ごとの受注方法・締め時間・最低発注量・連絡先の一覧、品目ごとの基準量、仕入先の商品名と自店の呼び方の対応、日々の発注の記録(日時・内容・相手)、検品で見つけた違いとその連絡先の五つです。
あわせて、誰が発注を出し、誰が在庫を数えるかを決めておくと、二重発注や頼み忘れを防げます。
試行は1つの仕入先と全仕入先のどちらから始めるべきですか。
1つの仕入先か1つの品目群から始めるほうが、うまくいかなかったときに原因を見つけやすく、仕入先への依頼も一社に集中できます。
ミスが多かった仕入先や品目を選ぶと、前後の違いも確かめやすくなります。
データ連携を試す場合は、データで注文を受けられる仕入先であることが前提になります。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:国税庁「電子帳簿保存法関係(電子取引データの保存)」
- 3 出典:農林水産省「外食における食品ロス対策」(2019年)
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- Bearded chef seasoning gourmet dishes with pepper in a busy restaurant kitchen./Photo by Alex Gonzo on Pexels