◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 締め請求の差異は、請求書・納品と検収の記録・売掛金元帳・入金明細の4つを、ずれが出た場所に合わせて上流から照らすと原因に早く届く。
- 差額は締め日・対象期間、数量・単価、税額計算と端数処理、値引・返品、入金側の5つの型に当てはめて見当を付け、明細と取引条件で確かめる。
- 自社の記載誤りは修正した適格請求書、値引・返品・売手負担の振込手数料は対価の返還等として扱い、税込1万円未満なら返還請求書の交付義務は免除されるが帳簿の記録は要る。
- 繰り返す差異は条件の認識違いから起きるため、締め日・単価・端数・手数料負担を取引先と確認して記録に残し、締め前の突合と担当・期限を決める。
- ツール化は差異の型を数えたうえで、転記と照合の手作業が中心で記録がデータとして取り出せる場合に検討する。
目次

締め請求の差異に気づいたら、最初に突き合わせる4つの記録
月末で締めて請求書を出したあと、取引先から「金額が合わない」と連絡が来る。
請求に異論はなかったのに、入金額だけが少ないこともあります。
そのたびに伝票を最初からめくり直していると、締め請求の差異の確認が毎月の重い作業になります。
原因に早く届くには、請求書・納品と検収の記録・売掛金元帳・入金明細の4つを、ずれが出た場所に合わせて突き合わせます。
そうすると原因は、締め期間、数量・単価、税の端数、値引・返品、入金側の差引のどれかに絞れます。
訂正は売手として修正した適格請求書か適格返還請求書で行います。
繰り返す差異は、取引条件の確認し直しと締め前の突合で止めます。
差異が出た場所で、見る記録を分ける
「金額が合わない」という連絡には、大きく分けて二つの現れ方があります。
ひとつは、取引先が請求書を受け取った段階で「当社の認識と違う」と言ってくる場合です。
もうひとつは、請求額に異論は出なかったのに、入金額が請求額と合わない場合です。
どちらも同じ差異に見えますが、ずれが起きた場所が違います。
そのため、最初に開く記録も変わります。
突き合わせに使う記録は、次の4つです。
- 請求書:自社が締め期間の取引をまとめて発行したもの
- 納品・検収の記録:納品書の控え、出荷記録、取引先が検収した明細
- 売掛金元帳:得意先ごとに請求の計上と入金を積み上げた帳簿
- 入金明細:銀行口座の入金記録と、取引先から届く支払通知
取引先が請求額に異論を出したときは、請求書と納品・検収の記録を、明細の行単位で照らすところから始めます。
合計額だけを比べても、どの取引で食い違ったのかは分かりません。
行ごとに日付・数量・単価を並べると、差額がどの行から生まれたかが見えてきます。
入金額が請求額と合わないときは、売掛金元帳と入金明細から始めます。
まず、その入金がどの請求に対するものかを結び付けます。
そのうえで差額がいくらかを確かめます。
複数の請求がまとめて振り込まれている場合は、結び付けを誤ったまま差額を計算すると、存在しない差異を追いかけることになります。
両方が同時に起きているときは、請求書と納品・検収の記録から見るのが近道です。
入金の差額が、取引先が請求の誤りを自分で直して支払った結果である場合があるからです。
上流の請求で原因が見つかれば、入金側の差額もその説明で片付きます。
どの記録を正しいものとして基準に置くかは、法令で一律に決まっているわけではありません。
自社が出荷日で売上を立てているのか、取引先の検収日で立てているのか、取引先とどちらで請求する取り決めになっているのかで変わります。
ここでの提案は、取引先との取り決めに沿った記録を基準に置き、もう一方をそれに照らすことです。
取り決めがはっきりしない場合は、それ自体が差異の原因の候補になります。
この点は、後で再発防止の話として取り上げます。
請求書の記載事項で先に確認する点
明細を照らす前に、請求書そのものの記載を一度見ておくと、後の作業が減ります。
適格請求書の記載事項は次の6つです3。
- 発行者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目である旨を含む)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 交付を受ける事業者の氏名又は名称
このうち金額の差異に直接つながるのは、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価と適用税率、税率ごとの消費税額等の4つです。
取引年月日は締め期間のずれに、取引内容は数量・単価の違いに関わります。
税率ごとの対価と消費税額等は、税の計算や軽減税率の区分の誤りに関わります。
どの欄で食い違ったかが分かれば、次に見るべき原因の型もほぼ決まります。
発行者名や登録番号、宛名の誤りは、金額の差異ではありません。
ただし記載事項の誤りとして直す対象であることは同じです。
金額の訂正を出したあとで宛名の誤りに気づくと、もう一度書類を出し直すことになります。
差異を調べる最初の段階で一緒に見ておけば、その二度手間を避けられます。
上流から下流へ順に照らすのは、ずれが下流へ伝わっていくからです。
納品の数量を誤って請求すれば、元帳の残高も入金との差も、同じ誤りを引き継ぎます。
反対に、入金明細から遡って調べると、差額は分かってもその理由までたどり着くのに時間がかかります。
入金のずれだけが起きているとはっきりしている場合を除けば、上流から見るほうが原因に早く届きます。
| 差異の現れ方 | 先に照らす記録 | そこで分かること |
|---|---|---|
| 取引先が請求額に異論を出した | 請求書と納品・検収の記録 | どの明細行の日付・数量・単価が食い違うか |
| 入金額が請求額と合わない | 売掛金元帳と入金明細 | どの請求に対する入金で差額がいくらか |
| 両方が起きている | 請求書と納品・検収の記録から | 入金の差額が請求の誤りに由来するか |
差異の原因は5つの型に分かれる:期間・数量単価・税の端数・値引返品・入金側
差額を型に当てはめる前に
突き合わせで差額が見つかったら、次はその差額がどこから来たかを型に当てはめます。
差額の大きさや端数の形は手掛かりになります。
ただし、それだけで原因を決めることはできません。
同じ金額の差が、期間のずれでも単価の誤りでも起こりうるからです。
型は見当を付けるために使い、最後は明細と取引条件で確かめます。
締め日・対象期間のずれ
たとえば月末締めで部品を納めている場合を考えます。
月末日に出荷した品が、取引先に届いて検収されたのは翌月初めでした。
自社は出荷日で当月の請求に含め、取引先は検収日で翌月の支払対象に入れています。
このとき当月はその一件分だけ自社の請求が多くなり、翌月は逆に少なくなります。
この型を見分けるには、差額と同じ金額の明細が、自社の締め期間の端に置かれていないかを見ます。
月末や月初の取引を、自社の出荷記録と取引先の検収日で並べると見つけやすくなります。
締め日が休日に当たる月の扱いや、締め日当日の夕方に出荷した分をどちらに入れるかといった細かな違いも、この型に含まれます。
翌月に逆向きの差が出て合計では一致するなら、金額の誤りではなく期間の基準の違いだと判断できます。
数量・単価の違い
数量の違いは、分納、欠品、取引先の側で受入れを保留した品などで起こります。
自社は出荷した数量で請求し、取引先は検収で合格とした数量で支払おうとすると、その差が請求額の差になります。
単価の違いは、単価を改定したときに、どの取引から新しい単価を使うかの認識が食い違うと起こります。
見分けるには、明細の行ごとに数量と単価を掛け直し、取引先の検収明細と一行ずつ並べます。
差が特定の行に集まっていれば、この型の可能性が高くなります。
単価の食い違いなら、改定の合意を残した書面やメールを探し、新しい単価の適用開始が出荷日基準なのか、発注日基準なのかを確かめます。
その記録が見つからないときは、自社と取引先のどちらが正しいかを決める材料がないことになります。
次の節で扱う、取引条件の確認し直しが必要な場面です。
税額計算と端数処理
適格請求書には、税率ごとに区分した消費税額等を記載します3。
売上税額の計算方法には積上げ計算と割戻し計算があり、その詳細は国税庁の適格請求書等保存方式に関するQ&Aの問118〜130で示されています4。
自社が請求書単位で税額を計算し、取引先が明細単位や支払通知の単位で計算し直していると、端数の扱いの違いから小さな差が出ることがありえます。
この型を見分けるには、税抜の対価の合計が一致しているかを先に見ます。
対価が一致していて消費税額だけが少し違うなら、計算の単位か端数の処理の違いを疑います。
軽減税率の対象品目が混じる取引では、税率の区分そのものが食い違っていないかも見ます。
端数処理をどの単位で何回行うかといった具体的な条件は、上のQ&Aの原文で確かめてください。
自社の請求書の計算方法が分かれば、取引先にもその方法を示して照らし合わせられます。
値引・返品
返品、値引き、割戻しなど、課税資産の譲渡等に基因して支払う金額は、消費税法上「売上げに係る対価の返還等」に当たります1。
差異として現れるのは、取引先が返品分を差し引いて支払ったのに自社の請求に反映していない場合や、合意した値引が請求書に入っていない場合です。
見分けるには、返品を受け取った記録と、値引を合意した記録を探します。
返品の受領が締め日の前後にまたがっていると、期間のずれと重なって見えることがあります。
差額が返品や値引の額と一致するかを確かめ、合意の時期と請求の時期を並べると切り分けられます。
この型で見つかった差異は、次の節で説明する書類の処理につながります。
入金側:振込手数料の差引と相殺
請求額には双方とも異論がないのに、入金だけが少ない場合があります。
よくある形が、取引先が振込手数料を差し引いて振り込んだ場合です。
売手が手数料を負担する取り決めであれば、その振込手数料相当額は、消費税法上は売上げに係る対価の返還等として扱うことができます2。
ただし、負担の取り決めがあいまいなままだと、その差引が正しいのかどうかを判断できません。
もうひとつの形が相殺です。
自社が取引先に支払う金額と、取引先から受け取る金額を差し引きして入金されている場合です。
この場合は、取引先からの支払通知や相殺の合意の記録を見て、何と何を差し引いたのかを確かめます。
相殺の会計・税務上の扱いは取引の中身で変わるので、ここでは突き合わせの対象として切り分けるところまでにとどめます。
入金の結び付けの誤りも、この型に含めて見ておきます。
複数の請求分がまとめて一回で振り込まれたり、一つの請求が分割で支払われたりすると、元帳の上では差異があるように見えます。
入金明細と支払通知でどの請求の分かを確かめ直すと、差異そのものが消えることもあります。
| 原因の型 | 差額の手掛かり | 照らす記録 |
|---|---|---|
| 締め日・対象期間 | ある取引一件分の金額と一致することがある | 出荷記録と取引先の検収日 |
| 数量・単価 | 特定の明細行で差が出る | 納品書控え・検収明細・単価の取り決め |
| 税額計算と端数処理 | 税抜の対価は一致し税額だけが小さく違う | 税率ごとの対価と税額の計算単位 |
| 値引・返品 | 返品や値引の額に対応する差 | 返品の受領記録・値引の合意記録 |
| 入金側 | 請求額は一致し入金だけが少ない | 入金明細・支払通知・手数料負担の取り決め |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が請求額に異論を出した
- 請求書と納品・検収の記録を行単位で照らす
- 日付・数量・単価のどの行が食い違うかが分かる
- 入金額が請求額と合わない
- 売掛金元帳と入金明細から始める
- どの請求に対する入金かを結び付け、差額を確かめる
- 両方が同時に起きている
- 請求書と納品・検収の記録から見る
- 入金の差額が請求の誤りに由来するかを確かめる
取引先と認識が違うとき:根拠書類の出し方と、請求書の修正・値引の処理
相手に示す根拠書類の選び方
原因の型に見当が付いたら、取引先と話すために根拠を示します。
このとき、手元の書類を全部送るより、その型に対応する記録だけを、相手が自社の記録と照らせる形で示すほうが話が早く進みます。
型ごとに示す記録は、前の節で照らしたものがそのまま使えます。
- 締め日・対象期間:出荷記録と、取引先の検収日を並べたもの
- 数量・単価:納品書の控え、検収明細、単価を取り決めた書面やメール
- 税額計算と端数処理:税率ごとの対価と消費税額の計算の過程
- 値引・返品:返品の受領記録と値引の合意記録
- 入金側:入金明細と、振込手数料の負担や相殺の取り決め
根拠を並べた結果、取引先の認識が誤っていたと分かることもあります。
その場合は、照らした記録を示して、取引先の側で確認し直してもらうよう依頼します。
反対に、自社の請求に誤りがあったと分かれば、次に説明する書類の処理へ進みます。
どちらにしても、どの記録とどの記録を照らしてそう判断したかを伝えると、相手も同じ手順で確かめられます。
記載誤りは修正した適格請求書で直す
原因が自社の請求書の記載誤りだった場合は、売手として修正した適格請求書を交付し直します。
数量や単価の転記誤り、期間の基準を取り違えた請求、税額の計算誤りなどがこれに当たります。
修正した請求書の書き方には決められた方法があり、国税庁の適格請求書等保存方式に関するQ&Aで示されています。
自社の請求書の形式でどの方法が使えるかは、その原文で確かめてください。
書類を出し直すときに気をつけたいのは、当初の請求と修正したものが、社内の記録の上で結び付いているかどうかです。
修正したものだけが残り、当初の請求とのつながりが分からないと、次の締めで売掛金元帳を照らしたときに、どちらの金額が正しいのかで再び迷います。
修正の内容を元帳にも反映し、当初の請求との関係が後から追えるようにしておきます。
値引・返品・手数料差引は適格返還請求書と帳簿で扱う
値引や返品は、当初の請求が誤っていたわけではありません。
正しく請求した取引について、あとから対価の一部を返す性質のものです。
そのため、請求書を修正するのではなく、売上げに係る対価の返還等として扱います1。
適格請求書発行事業者の売手が対価の返還等をした場合は、適格返還請求書を交付します。
ここで判断が分かれるのが金額の大きさです。
返還等の金額が税込1万円未満の場合は、適格返還請求書の交付義務が免除されます2。
売手負担の振込手数料を対価の返還等として扱う場合2も、この免除の範囲に入るかどうかを金額で確かめることになります。
入金のたびに差し引かれる手数料について、毎回返還請求書を出すかどうかで迷う場面は、この基準で整理できます。
ただし、免除されるのは交付の義務です。
売上げに係る対価の返還等について控除を受けるには、返還等の金額の明細を記録した帳簿を保存する必要があります1。
金額が小さく書類を出さない場合でも、どの取引について、いつ、いくらの値引や手数料の差引があったかを、帳簿に残しておくことになります。
突き合わせの観点でも、この記録があれば、翌月以降に元帳と入金明細を照らしたときに同じ差額を再び調べずに済みます。
なお、ここで説明した扱いは国内の課税売上げに係る返還等が対象で、輸出免税取引に基因するものは除かれます1。
振込手数料の扱いを示した国税庁のパンフレットも、適格請求書発行事業者である売手を前提にしています2。
取引先が免税事業者である場合や、相殺による調整の扱いは個別の事情で変わるため、顧問の税理士などと確かめてから処理を決めてください。
写しの保存
適格請求書発行事業者には、取引先から求められたときに適格請求書を交付する義務と、交付した書類の写しを保存する義務があります4。
修正した適格請求書や適格返還請求書を交付した場合も、交付した書類として写しを残します。
保存の期間や方法は、国税庁の資料で確かめてください。
差異を調べる立場から見ると、写しの保存は義務を果たすためだけのものではありません。
当初の請求、修正したもの、返還請求書が、同じ取引先・同じ締め期間で並べて取り出せるように保存しておくと、次に差異が出たときに最初の4つの記録と一緒に照らせます。
取引先から過去の請求について問い合わせがあったときも、どの書類が最新かをすぐ示せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 請求書の記載事項:取引年月日・取引内容・税率ごとの対価と税額
- 納品・検収の記録:明細の行単位で日付・数量・単価を照らす
- 売掛金元帳:請求の計上と前の締めからの残高
- 入金明細:どの請求に対する入金か、差額はいくらか
毎月の差異を止める:取引条件の確認、締め前チェック、担当と期限
一度きりの誤りか、繰り返す差異かを見分ける
ここまでの手順で、今回の差異は直せます。
ただ、毎月同じように原因を探しているなら、直す作業とは別に、なぜ毎月起きるのかを見る必要があります。
差異には、一度きりのものと繰り返すものがあります。
数量の打ち間違いや請求先の取り違えのような転記の誤りは、その場で直せば次の月には持ち越しません。
一方で、締め期間の基準、単価の改定時期、税額の計算単位、振込手数料の負担といった取引条件の認識が違うと、記録をどれだけ正確に作っても、毎月同じ形の差異が出ます。
どちらかを見分けるには、差異を見つけるたびに記録を残すことです。
取引先、原因の型、差額、原因の詳細、どう対応したかを一行ずつ書き留めておきます。
同じ取引先で同じ型の差異が続いていれば、それは転記の誤りではなく、条件の認識違いだと見当が付きます。
この記録は、最後の節でツール化を考えるときの材料にもなります。
締め日・単価・端数・手数料負担を書面か電磁的記録で確認する
条件の認識違いが原因なら、取引先と条件を確認し直し、その結果を書面かメールなどの記録に残します。
口頭の確認だけでは、担当者が替わったときや、時間がたってから差異が出たときに、どちらの認識が正しかったかを示せません。
確認しておきたい項目は、これまでの原因の型に対応しています。
- 締め日と対象期間の基準(出荷日か検収日か)
- 単価と、改定したときの適用開始の基準
- 税額の計算単位と端数の処理
- 振込手数料をどちらが負担するか
- 支払期日
自社が製造や役務提供などの委託を受ける側で、その取引が中小受託取引適正化法(取適法)の対象になる場合は、この確認を求める根拠があります。
取適法では、委託事業者は報酬の額と支払期日などを、書面の交付か、電子メールなどの電磁的方法で示すことになっています5。
具体的な金額を示すのが難しい場合は算定方法を示せばよく、継続する委託で共通する内容は、その旨を明らかにすれば足ります5。
取適法の対象かどうかは、取引の類型と、事業者の資本金・従業員数の基準で決まります6。
具体的な基準は、公正取引委員会の取適法の概要ページで確かめてください。
また、この明示の義務は報酬の額や支払期日などが対象で、締め日の基準や端数の処理まで含まれるかどうかは、ここでは言い切れません。
取適法の対象でない取引や、明示の対象に入らない項目は、取引条件の合意として取引先と確認し合い、メールなど記録の残る方法で残しておきます。
締め前チェックと担当・期限の決め方
締め後に差異が見つかると、取引先への説明と、修正や返還の書類の発行まで必要になります。
同じ照合を締め前に行えば、請求書を出す前に直せます。
以下は実務上の提案です。
締め前に照らしたいのは、請求書の明細と納品・検収の記録です。
出荷記録と請求データの数量、単価表と請求の単価、当月に受けた返品や合意した値引が請求に入っているか、軽減税率の対象品目の区分が正しいかを確かめます。
取引先ごとに確認した条件と違う請求になっていないかも、このときに見ます。
担当は、請求書を作った人とは別の人が照らす形にすると、作った本人が見落としやすい誤りに気づきやすくなります。
人手が限られていて別の人を置けない場合は、作成と照合の日を分けるだけでも、見る目を切り替えられます。
期限は、締め日から請求書の発行までの間に照合の日を置き、入金の照合も支払期日の後の決まった日に行うようにします。
そうすると、差異の発見が取引先からの指摘を待つ形ではなく、自社の予定の中で起きるようになります。
この仕組みで減るのは、締め後に遡って調べる作業と、その結果として出す訂正の書類です。
差異が全くなくなるわけではありません。
取引先の側の処理の都合で生じる差異は、締め前の照合では見つけられないからです。
それでも、差異の記録を次の条件の確認に戻していけば、同じ型の差異を毎月一から調べることはなくなっていきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の扱い
- 月末日に出荷した品を出荷日で当月の請求に含める
- 取引先の扱い
- 翌月初めに検収した品を検収日で翌月の支払対象に入れる
- 差異の現れ方
- 当月はその一件分だけ自社の請求が多くなる
- 翌月は逆に少なくなり、合計では一致する
運用の見直しとツール化:どの条件でどちらを選ぶか
先に運用で差異の型を数える
毎月の突き合わせが負担になると、ツールを入れれば解決するのではと考えたくなります。
運用の見直しとツール化は、どちらか一方を選ぶものではなく、同じ仕事の中で組み合わせられます。
ただ、順番としては運用を先に整えるほうが、判断を誤りにくくなります。
理由は、ツールで止められる差異と止められない差異があるからです。
締め期間の基準や手数料負担の認識が取引先と違っている場合、自社の計算をどれだけ正確にしても、相手の数字とは合いません。
この種の差異は、取引先と条件を合わせない限り残ります。
一方で、出荷記録から請求データへの転記や、入金明細と元帳の照合といった手作業の中で起きる誤りは、記録をつなぐ仕組みで減らせる余地があります。
そこで、前の節で残した差異の記録を、何回かの締めの分ためてから見直します。
どの型が多いのか、特定の取引先に偏っているのか、転記の誤りと条件の認識違いのどちらが中心なのかを数えます。
条件の認識違いが中心なら、先に取り組むのは取引条件の確認です。
転記や照合の誤りが中心で、しかもその作業に時間を取られているなら、ツール化を考える段階に入ります。
ツール化を考える条件
ツール化を考えるときに見る条件は、取引の件数、請求条件の種類、記録の電子化の状況の3つです。
差異の型と合わせて、自社の状況がどちらに近いかを比べます。
判断が分かれやすいのは、記録の電子化の行です。
納品や検収の記録が紙で残っている場合、ツールを入れても、その紙の内容を誰かが入力する作業は残ります。
転記の誤りをなくすつもりでツールを入れたのに、入力の工程が一つ増えるだけになることもあります。
この場合は、まず記録をデータとして残す運用に変えることが先になります。
請求条件の種類も見落とされがちです。
取引先ごとに締め日や端数の処理、手数料の負担が違うと、担当者がそれを覚えて請求ごとに使い分けることになります。
件数が少ないうちは回りますが、取引先が増えるほど、条件の取り違えによる差異が起きやすい状態になります。
取引条件の確認で決めた内容を、請求を作る仕組みの中に設定として持てるかどうかは、ツールを検討するときの見どころの一つです。
検討するときは、自社の4つの記録のうちどれを取り込めるのか、どの照合が人の手を離れ、どこに人の確認が残るのかを、実際の明細で試して確かめます。
ツールで減るのは記録の間の転記と照合の手作業で、取引条件の合意と、差異が出たときの原因の判断は人に残ります。
差異の記録を数えたうえで、その手作業がどれだけの負担になっているかを見れば、入れるかどうかを自社の数字で判断できます。
| 見る条件 | 運用の見直しを先に進める状況 | ツール化を検討する状況 |
|---|---|---|
| 差異の主な型 | 締め日・端数・手数料負担など条件の認識違いが中心 | 転記や照合の手作業による誤りが中心 |
| 取引件数 | 担当者が明細を行単位で照らし切れる | 締めごとの照合が期限内に終わらない |
| 請求条件の種類 | 取引先ごとの条件が少なく覚えて扱える | 取引先ごとに締め日・端数・手数料負担が分かれる |
| 記録の電子化 | 納品・検収の記録が紙や別々の形式で残る | 4つの記録がデータとして取り出せる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の記載誤り
- 修正した適格請求書を交付する
- 交付した書類の写しを保存する
- 値引・返品
- 売上げに係る対価の返還等として適格返還請求書を交付する
- 返還等の金額の明細を帳簿に記録する
- 売手負担の振込手数料
- 対価の返還等として扱うことができる
- 税込1万円未満なら返還請求書の交付義務は免除される
- 帳簿の記録は残す
差異の型に当てはめても、自社の取引条件や記録の作り方によって、どこから直すべきかの判断は変わります。
自社の請求・納品・入金の記録の流れを一緒にたどり、差額がどの記録の間で生まれているか、締め前にどこを照らせばよいかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初に照らす記録 | 請求額に異論なら請求書と納品・検収の記録、入金のずれなら売掛金元帳と入金明細 |
| 原因の型 | 締め日・対象期間、数量・単価、税額計算と端数処理、値引・返品、入金側 |
| 自社の記載誤り | 修正した適格請求書を交付し、写しを保存する |
| 値引・返品・売手負担の手数料 | 対価の返還等として扱う。税込1万円未満は返還請求書の交付義務が免除、帳簿の記録は必要 |
| 繰り返す差異 | 締め日・単価・端数・手数料負担を取引先と確認し、記録に残す |
| ツール化の判断 | 差異の型を数え、転記と照合の手作業が中心なら検討する |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引条件の確認:締め日・単価・端数・手数料負担を記録に残す
- 締め前の突合:請求明細と納品・検収の記録を照らす
- 請求書の発行:写しを保存する
- 入金の照合:元帳と入金明細を結び付ける
- 差異の記録:原因を書き留め、取引条件の確認へ戻す
▼ 図の内容を文字で読む
- 運用の見直しを先に進める状況
- 締め日・端数・手数料負担など条件の認識違いが中心
- 取引先ごとの条件が少なく、担当者が行単位で照らし切れる
- ツール化を検討する状況
- 転記や照合の手作業による誤りが中心
- 締めごとの照合が期限内に終わらず、取引先ごとに条件が分かれる
- 記録の電子化で迷う場合
- 納品・検収の記録が紙のままなら、入力の工程が残る
- まず記録をデータとして残す運用に変える
運用の見直しで足りるか、ツール化を考える段階かは、差異の記録と取引条件の種類を並べてみないと決めにくいところです。 記録した差異の型と取引先ごとの条件をもとに、人の確認として残る照合と、仕組みで減らせる転記がどこかを確かめられます。
よくある質問
取引先が振込手数料を差し引いて入金してきたとき、売上の差額はどう処理しますか。
まず、振込手数料をどちらが負担する取り決めになっているかを確かめます。
売手が負担する取り決めであれば、その振込手数料相当額は、消費税法上は売上げに係る対価の返還等として扱うことができます2。
返還等の金額が税込1万円未満なら、適格返還請求書の交付義務は免除されます2。
ただし控除を受けるには、返還等の明細を記録した帳簿の保存が必要です1。
負担の取り決めがない場合は、差引が正しいかを判断できないため、取引先と負担を確認して記録に残すところから始めます。
税込1万円未満の値引なら、返還インボイスは出さなくてよいのですか。
返還等の金額が税込1万円未満であれば、適格返還請求書の交付義務は免除されます2。
免除されるのは交付の義務で、記録が要らなくなるわけではありません。
売上げに係る対価の返還等について控除を受けるには、返還等の金額の明細を記録した帳簿の保存が必要です1。
どの取引について、いつ、いくら値引したかを帳簿に残しておくと、後の突き合わせでも同じ差額を調べ直さずに済みます。
取引先が検収した金額と、自社の納品実績が違うとき、どちらを基準にしますか。
どちらを基準にするかは法令で一律に決まっているものではなく、取引先との取り決めによります。
発注書や契約で、出荷日と検収日のどちらで請求するか、検収で合格とした数量で請求するかが決まっていれば、それに沿った記録を基準に置きます。
取り決めがはっきりしない場合は、双方の記録を明細の行単位で並べて差の出た行を特定し、今回の扱いを相談したうえで、今後の基準を書面かメールで確認し合います。
自社の取引が取適法の対象かどうかは、どこで確かめればよいですか。
公正取引委員会の取適法の概要ページで確かめられます。
対象かどうかは、取引の類型(物品の製造・修理、特定運送、情報成果物の作成や役務提供の委託など)と、事業者の資本金・従業員数の基準で決まります6。
対象であれば、委託事業者は報酬の額と支払期日などを書面か電磁的方法で示すことになっています5。
対象でない取引では、取引条件の合意として確認し、記録の残る方法で残しておきます。
- 1 出典:国税庁「No.6359 売上げに係る対価の返還等をした場合」(2026年)
- 2 出典:国税庁「適格請求書等保存方式の概要(令和5年4月改正)」(2023年)
- 3 出典:国税庁「No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年)
- 4 出典:国税庁「No.6498 適格請求書等保存方式(インボイス制度)」(2026年)
- 5 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法に基づく規則」(2026年)
- 6 出典:公正取引委員会「取適法の概要」(2026年)
画像の出典元
- Business professional examining financial documents, focusing on analytics and paperwork in an office setting./Photo by RDNE Stock project on Pexels