◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 食材発注のミスは、連絡手段よりも数量の基準・仕入先ごとの締め時間・記録と確認の流れが決まっていないことから起きやすく、在庫確認・必要量の決定・送信・検収・記録の5工程に分けて発生箇所を特定する
- 数量の基準は品目の日持ちと仕入れ頻度で変え、発注表に書いておくことで担当者が代わっても同じ数量を出せるようにする
- 使える手段は仕入先が受けられるものが先に決まり、電話やFAXのままでも発注表と送信済みの記録で属人化を減らせる
- 検収は納品書ではなく自店の発注記録を基準にし、差異を同じ記録に残して請求の確認と工程の振り分けに使う
- 変更は1工程ずつ行い、同じ長さの期間で比べ、廃棄は頼みすぎ・仕込み・食べ残しの原因別に見る
目次

発注漏れ・数量違い・担当者依存は、食材発注のどの工程で起きているのか
閉店後に冷蔵庫を見て、仕入先ごとに電話やLINEで注文を入れる。
忙しい日に限って一社への連絡が漏れ、届いた数量が思っていたものと違い、担当者が休むと誰も発注の勝手が分からない。
こうした食材発注のミスは、連絡手段の古さよりも、数量を決める基準、仕入先ごとの締め時間、記録と確認の流れが決まっていないことから起きている可能性が高いものです。
まず発注を在庫確認・必要量の決定・送信・検収・記録の5工程に分け、ミスが出る工程を見つけます。
次に仕入先の条件を一覧にし、相手が受けられる手段の中から店の規模に合うものを選ぶ。
この順なら、小さく変えて効果を確かめられます。
発注業務を5工程に分ける
「発注」とひとまとめに呼んでいる仕事の中には、性質の違う作業がいくつも入っています。
冷蔵庫や乾物棚の残りを見る作業、何をいくつ頼むかを決める作業、仕入先へ伝える作業、届いた物を確かめる作業、そして頼んだ内容と届いた内容を残す作業です。
ここでは順に、在庫確認、必要量の決定、仕入先への送信、検収、記録と呼びます。
分けて考える理由は、ミスの直し方が工程ごとにまったく違うからです。
在庫確認で見落としがあるなら、確認する場所と順番を決めれば済みます。
必要量の決定がぶれているなら、何を基準に数量を出すかを決めない限り、手段をどれだけ便利にしても数量違いは残ります。
送信で漏れるなら、締め時間と担当の決め方の問題です。
検収や記録が抜けているなら、誤納品や請求の食い違いに後から気づけません。
この5工程の分け方は、業務を見直すための整理の一案です。
店によっては在庫確認と必要量の決定を同じ人が同じ時間に行っていますが、それでも頭の中では別々の判断をしています。
一つの作業として扱ってしまうと、後から「どちらで間違えたのか」が分からなくなります。
過去のミスを工程に振り分ける
工程を分けたら、過去1〜2か月に起きたミスや困りごとを思い出せる範囲で書き出し、どの工程で起きたかを振り分けます。
納品書、仕入先とのやり取り、LINEの履歴、廃棄した食材のメモなど、手元に残っているものから拾うと、記憶だけに頼るより漏れが減ります。
たとえば「月曜にキャベツが足りなかった」というミスは、一見すると発注漏れに見えます。
しかし、在庫を見た時点で残量を多めに読んでいたのか、量の計算は合っていたが予約が増えていたのか、注文は送ったが仕入先の締め時間を過ぎていたのかで、起きた工程は変わります。
同じ欠品でも、在庫確認、必要量の決定、送信のどれに当たるかで直す場所が違うということです。
振り分けた結果、ミスが一つの工程に集まっていれば、そこから手を付けます。
送信の工程に漏れが集中しているのに在庫管理のやり方から変え始めると、手間が増えるわりにミスは減りません。
逆に、必要量の決定にばらつきがあるのに発注手段だけを新しくしても、間違った数量が整った形で仕入先に届くだけです。
属人化は「基準」「連絡先」「代行ルール」のどれが欠けているか
担当者が休むと発注が止まる状態は、「あの人しか分からない」ことが具体的に何なのかで分けると、手の付け方が見えてきます。
- 基準:どの品目をいくつ頼むかが、担当者の経験や勘でしか決まっていない
- 連絡先:どの仕入先に、何時までに、電話・FAX・LINEのどれで送るかが、担当者の記憶や個人のスマートフォンの中にしかない
- 代行ルール:休みの日に誰が代わり、どこまで自分で判断してよいかが決まっていない
基準が欠けているなら次の節で扱う数量の決め方を、連絡先と代行ルールが欠けているならその次の仕入先一覧を先に整えます。
三つとも欠けている場合は、連絡先から書き出すほうが早く効きます。
数量の基準があっても、どこへ何時までに送るかが分からなければ、代わりの人は注文そのものを出せないからです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 在庫確認
- 必要量の決定
- 仕入先への送信
- 検収
- 記録
発注量を決める基準(在庫・予約・販売見込み・発注点)を店の条件別に決める
廃棄の原因は発注だけではない
必要量の決定にミスが集まっていた場合、気になるのは欠品と廃棄の両方でしょう。
ただ、廃棄が多いことをそのまま発注の失敗と読むのは早すぎます。
環境省は、外食産業では食べ残しや仕込みロスが食品ロスの原因として考えられるとしており、対策として小盛り・小分けメニューや、宴会予約時の食事量の調整を挙げています1。
つまり店の廃棄には、頼みすぎて使い切れなかった分のほかに、仕込みすぎた分や、お客様が残した分が混ざっています。
発注量を絞れば頼みすぎの分は減らせても、食べ残しや仕込みの過不足までは変わりません。
発注の見直しで廃棄がどこまで減るかは、自店の廃棄のうち発注に由来する部分がどれだけあるかで決まり、その割合は店ごとに違います。
廃棄を原因別に分けて見ることが、発注の基準を考える出発点になります。
需要の見込みについては、環境省が、気象データを使った需要予測の精緻化と、その予測を製造・卸・小売で共有する取組を紹介しています1。
これは食品産業全体に向けた取組で、飲食店の発注手順を示したものではありません。
それでも、先の需要を見込んで量を決め、その見込みを関係者で共有するという考え方は、店の中で発注を担当者の勘から切り離すときの方向として参考になります。
品目を日持ちと仕入れ頻度で分ける
全品目に同じ基準を当てはめようとすると、かえって複雑になります。
まず品目を、日持ちするかどうかと、どれくらいの間隔で仕入れるかで大まかに分けます。
葉物や鮮魚のように日持ちが短く毎日か隔日で入れるもの、肉や乳製品のように数日はもつが週に数回入れるもの、米・調味料・乾物・冷凍品のように日持ちが長く間隔をあけて入れるもの、という分け方が一例です。
献立や保管設備によって、同じ食材でもどこに入るかは店ごとに変わります。
分ける目的は、品目ごとに数量の決め方を変えることにあります。
日持ちが短い品目は、次の納品までに使う分だけを頼む必要があるので、その期間の客数や予約の影響を強く受けます。
日持ちが長い品目は、多少多めに持っても傷まない代わりに、置き場所と資金が寝てしまうので、切らさない最低量を決めて、そこを下回ったら頼むほうが管理しやすくなります。
その中間の品目は、見込み量で頼みつつ、最低量も決めておく併用が扱いやすいでしょう。
在庫・予約・曜日実績のどれを基準にするか
基準の候補は、いまの在庫、入っている予約、曜日ごとの販売実績、そして発注点です。
発注点とは、「この量を下回ったら発注する」と品目ごとに決めておく残量のことです。
日持ちが長い品目は、発注点から始めるのが扱いやすい方法です。
「醤油は残り2本になったら1ケース」のように決めておけば、在庫確認をした人は残量を見るだけで、頼むかどうかを判断できます。
ここで決めるのは厳密な計算式ではなく、店で実際に切らしたことがあるか、余らせたことがあるかを踏まえた目安です。
切らしたら少し上げ、使い切れずに残ったら下げる、という調整を繰り返して店に合う値へ寄せていきます。
日持ちが短い品目は、次の納品までに使う見込み量から、いまの在庫を差し引いて頼む量を出します。
見込み量の手掛かりになるのが予約と曜日ごとの実績です。
予約の比率が高い店や宴会の入った日は、予約人数とコース内容から必要量を積み上げられます。
予約が少なく来店客が中心の店は、過去数週間の同じ曜日に何食出たかを見て、そこに天候や近隣の行事などの見込みを足し引きします。
どれから始めるか迷ったら、いま欠品と廃棄のどちらで困っているかで選ぶ方法があります。
欠品が多いなら、発注点を決めて切らさない最低量を先に固めます。
廃棄が多いなら、前に触れたとおり食べ残しや仕込みとの切り分けをしたうえで、日持ちの短い品目の見込み量を実績で見直します。
どの基準も、決めた数字を発注表に書いておいて初めて、担当者が代わっても同じ数量を出せるようになります。
| 品目のまとまり | 例 | 数量の決め方 | 主に見るもの |
|---|---|---|---|
| 日持ちが短く毎日か隔日で入れる | 葉物・鮮魚など | 次の納品までの見込み量から在庫を引く | 予約・曜日ごとの実績 |
| 数日もち週に数回入れる | 肉・乳製品など | 見込み量から在庫を引き最低量も決める | 予約・曜日ごとの実績・在庫 |
| 日持ちが長く間隔をあけて入れる | 米・調味料・乾物・冷凍品など | 発注点を下回ったら決まった量 | 在庫 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 日持ちが短く毎日か隔日で入れるもの
- 次の納品までに使う見込み量から在庫を引く
- 予約と曜日ごとの実績を見る
- 数日はもち週に数回入れるもの
- 見込み量で頼む
- 最低量も決めておく
- 日持ちが長く間隔をあけて入れるもの
- 発注点を下回ったら頼む
- 在庫の残量を見る
仕入先ごとの締め時間・受注手段・納品日を整理して食材発注の流れに組み込む
仕入先一覧に入れる項目
数量の基準が決まっても、締め時間までに仕入先へ届かなければ意味がありません。
仕入先ごとの条件が担当者の記憶やスマートフォンの中にしかないと、送信の工程はその人がいなければ回らなくなります。
そこで、仕入先ごとに次の項目を1枚にまとめます。
- 仕入先名、先方の担当者、連絡先
- 受注手段(電話・FAX・LINE・Webなど、相手が受けられるもの)
- 締め時間(何時までの注文がいつ届くか)
- 納品日と納品の時間帯(仕入先の休業日を含む)
- 最低発注量や配送の条件
- 欠品や変更があったときの連絡方法
- 主に頼む品目
締め時間や納品日は仕入先によって違い、同じ仕入先でも曜日や時期で変わることがあります。
一般的な目安をあてにせず、取引のある仕入先に一社ずつ確かめて書き込むのが確実です。
とくに欠品時の連絡方法は、普段は問題にならないぶん抜けやすい項目です。
頼んだ物が入らないと分かったときに電話が来るのか、納品書に記載されるだけなのかで、店が代わりの手配に動ける時間が変わります。
締め時間から逆算した作業時刻と担当
一覧ができたら、締め時間から逆算して、誰がいつ在庫を確認し、誰がいつ送るかを決めます。
たとえば、ある仕入先の締めが前日の夜で、もう一社が当日の朝に締める場合を考えます。
閉店前に在庫を確認して発注表に必要量を書けば前者に間に合い、翌朝の仕込み前に予約の変更を見て追加分を後者へ送る、という形に組めます。
締め時間の近い仕入先をまとめて同じ時刻に処理すると、送り忘れが起きにくくなります。
締め時間がばらばらな仕入先を、思い出したときに一社ずつ処理していると、どこかで一社抜けます。
送ったら発注表の仕入先の欄に送信済みの印を付けておけば、その日の担当者でなくても、どこまで送ったかが一目で分かります。
決めた時刻と担当は、発注表の上部や厨房の見える場所に書いておくと、仕入先の条件を覚えていない人でも動けます。
休みの日の代行ルール
代行ルールには、誰が代わるかだけでなく、代わった人がどこまで判断してよいかまで書いておきます。
- 代わりの担当者(第一候補と、その人も不在の場合)
- 見る資料と置き場所(仕入先一覧、発注表、発注点を書いた品目表)
- 判断してよい範囲(発注点どおりに頼むところまでか、予約に合わせて増減してよいか)
- 迷ったときの連絡先と、連絡が取れない場合の扱い
- 送ったことを残す場所
判断してよい範囲を決めておかないと、代わりの人は二つのどちらかに寄ります。
担当者に毎回電話して確認するか、前回と同じ数量をそのまま頼むかです。
前者では担当者が休めず、後者では予約の増減が反映されません。
基準が書かれていれば、代わりの人はそれに沿って頼み、基準から外れる判断だけを持ち帰ればよくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 閉店前に在庫を確認する
- 発注表に必要量を書く
- 前日締めの仕入先へ送り、送信済みの印を付ける
- 翌朝の仕込み前に予約の変更を見る
- 当日締めの仕入先へ追加分を送る
紙・表計算・LINE・FAX・発注システムを仕入先数・品目数・担当者数で選び分ける
比較の4条件と5つの軸
前の節で作った仕入先一覧があれば、手段の比較は具体的になります。
比べるときは、店の側の条件として、仕入先の数、品目の数、発注にかかわる担当者の数、複数店舗かどうかを手元に置きます。
そのうえで各手段を、仕入先が受けられるか、記録が残るか、引き継ぎやすいか、初期の手間、費用の発生という5つの軸で見ます。
下の表は、各手段の一般的な性格を編集部の考え方で整理したもので、効果や費用を測った結果ではありません。
同じ手段でも、使い方や契約の内容で評価は変わります。
表で見えてくるのは、紙と表計算が何をいくつ頼むかを決めて残す道具で、LINEとFAXが仕入先へ届ける道具だということです。
発注システムはその両方を一つにまとめようとするものですが、仕入先側が対応していることが前提になります。
困っている工程が必要量の決定なら発注表の作り方を、送信と記録なら送り方と残し方を見直す、というように、第1節で見つけた工程と対応させて選ぶと的を外しにくくなります。
仕入先が受けられる手段が先に決まる
手段選びで最初に効いてくるのは、店の好みより仕入先の対応です。
電話とFAXしか受けない仕入先がいる限り、店がどんな仕組みを入れても、その仕入先には電話かFAXで送ることになります。
発注システムを入れても、対応する仕入先とそうでない仕入先が混ざれば、システムと電話の二本立てになり、どの仕入先に送ったかを追う場所が二つに分かれます。
手段を変える前に、仕入先一覧の受注手段の欄を見て、主要な仕入先がどの手段で受けられるかを確かめておくのはそのためです。
電話しか受けない仕入先が残る場合でも、属人化は減らせます。
電話で伝える内容を発注表に先に書き、伝えたあとに送信済みの印と、先方で受けた人の名前を残せば、電話という手段のままでも誰が何を頼んだかは後から追えます。
FAXなら、送った用紙と送信結果を同じ場所に綴じておくだけで、記録の工程の多くが片付きます。
LINEで発注している場合は、どのアカウントで送っているかが分かれ目です。
担当者の個人アカウントで送っていると、やり取りの履歴はその人のスマートフォンの中にあり、休んだり辞めたりすると店からは確認できません。
店で共有するアカウントや端末を使う、送った内容を発注表にも書き写す、といった形にすれば、手段は同じでも引き継ぎやすさが変わります。
複数店舗・複数担当者の場合
仕入先や品目が少なく、発注する人が一人か二人の店では、紙か表計算の発注表に仕入先一覧を添えるだけで、必要量の決定と記録の多くは整理できます。
担当者が増えると、誰が送ったかが分からなくなる問題が出てきます。
同じ品目を二人が別々に頼んだり、互いに相手が頼んだと思って誰も頼まなかったりするのは、送信の記録が一か所に集まっていないときに起こりやすいミスです。
複数店舗になると、比べる観点がさらに変わります。
店舗ごとに発注表の品目名や単位がそろっていないと、責任者がまとめて見たときに比較ができません。
キャベツを「玉」で数える店と「ケース」で数える店が混ざれば、どちらが多く頼んでいるのかも判断できません。
この段階で発注システムを検討する場合も、先に品目名・単位・仕入先の対応をそろえておかないと、システムに入れる元の情報がばらついたままになります。
発注システムの料金や機能は、製品と契約によって大きく異なります。
検討するときは、いまの仕入先が対応しているか、対応していない仕入先の分をどう扱うか、発注と検収の履歴をどこまで残せるか、担当者ごとに権限を分けられるかを、提供元に具体的に確かめておくと、導入後に二本立ての運用に戻る事態を避けやすくなります。
| 手段 | 仕入先が受けられるか | 記録が残るか | 引き継ぎやすいか | 初期の手間 | 費用の発生 |
|---|---|---|---|---|---|
| 紙の発注表 | 送る手段ではない(電話・FAXと併用) | 書けば残る | 置き場所と書式が決まれば可 | 小さい | 用紙程度 |
| 表計算 | 送る手段ではない(印刷や転記をして送る) | 保存すれば残る | ファイルの場所と更新者が決まれば可 | 品目と基準の入力が要る | 既に使っているソフトなら追加は少ない |
| LINE | 仕入先が対応していれば可 | 履歴に残るがアカウント次第 | 個人アカウントだと難しい | 小さい | 利用形態による |
| FAX | 仕入先が受けていれば可 | 送った紙と送信結果を残せる | 書式が決まれば代行しやすい | 機器と回線が前提 | 通信費・用紙 |
| 発注システム | 仕入先側の対応が要る場合がある | 製品の仕様による | 権限の設定次第 | 品目登録と仕入先との調整 | 製品と契約により発生 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 何をいくつ頼むかを決めて残す道具
- 紙の発注表
- 表計算
- 仕入先へ届ける道具
- LINE
- FAX
- 両方を一つにまとめようとするもの
- 発注システム
- 仕入先側が対応していることが前提
納品時の検収と記録を発注内容と突き合わせる
検収で照合する項目
発注の流れを整えても、届いた物を確かめる工程が抜けていると、誤納品や請求との食い違いに気づくのが遅れます。
検収とは、納品された現物と納品書を、自店が頼んだ内容と照らし合わせて受け取ることです。
照合する項目は、品目、数量、規格(サイズ・産地・部位など店が指定したもの)、単価、納品日です。
このうち単価は、納品の場で確かめにくい項目でもあります。
納品書に単価が書かれていればその場で見られますが、月末の請求書で初めて分かる取引もあります。
発注時に単価を記録していないと、請求額が上がったときに、それが価格改定なのか誤りなのかを判断する手掛かりがありません。
照合の基準になるのは、納品書ではなく自店の発注記録です。
納品書は仕入先が作ったものなので、先方で入力を間違えていれば、現物と納品書が一致していても、店が頼んだ内容とは違うことがあります。
頼んだ内容を残していない店は、ここで比べる相手を持てません。
差異の記録の残し方
差異があったときは、発注記録と同じ紙やファイルに書き込みます。
別のノートに書くと、月末に請求書を確かめるとき、発注・納品・差異の三つを別々の場所から集めることになり、照合の手間が増えます。
書く内容は、どの品目が、何と比べて、どう違ったかと、その後どうしたかです。
「豚ロース 発注5kg・納品4kg、仕入先に電話済み、翌日1kg追加納品」のように残しておけば、検収した人と請求を確認する人が別でも、同じ情報を見られます。
欠品で代わりの品が入った場合も、その品名と数量を書いておくと、翌月の請求で単価の違いが出たときに理由をたどれます。
差異の記録は、第1節で行った工程の振り分けにもそのまま使えます。
差異が特定の仕入先や特定の品目に集まっているなら、店の発注の問題というより、仕入先への伝え方や規格の指定の仕方に原因がある可能性があります。
その場合は、仕入先一覧の欄に指定の仕方を書き足すほうが、店の中の手順を変えるより早く効きます。
電子で発注した場合の保存の確認先
LINEやメール、Webの受発注画面でやり取りした発注や納品の情報は、税務上の電子取引のデータとして保存の対象になる可能性があります。
電子帳簿保存法の電子取引にあたるか、どの形式で何年残す必要があるか、事業の規模で扱いが変わるかといった点は、国税庁が公表している最新の資料や、顧問の税理士に確かめてください。
店の運用として決めておけるのは、扱いを確かめるまでは、トークや送受信の履歴を削除しないことです。
紙に印刷して綴じていても、元のデータの扱いは別に確かめる必要があります。
個人アカウントのLINEで発注している場合は、保存の面からも、担当者が端末を替えたり退職したりしたときに履歴を店が保持できるかを考えておく必要があります。
前の節で触れた共有アカウントへの切り替えは、引き継ぎだけでなく、この点にも関わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自店の発注記録を用意する
- 納品書と照合する
- 現物と照合する
- 差異を発注記録と同じ紙やファイルに書く
- 仕入先へ連絡する
まず何から変え、効果をどの指標で確かめるか
最初の2週間は記録だけ取る
ここまでの見直しを一度に始めると、何が効いたのか分からなくなります。
最初の2週間は、やり方を変えずに記録だけを取ることを勧めます。
記録するのは、発注にかかった時間、欠品した品目と回数、廃棄した量とその理由、誤納品や請求の差異の回数です。
発注にかかった時間は、在庫確認を始めてから最後の仕入先に送り終えるまでを、毎回おおまかに書き留めれば足ります。
廃棄は、頼みすぎて使い切れなかった分、仕込みすぎた分、食べ残しの少なくとも三つに分けて書きます。
2週間としたのは、曜日ごとの違いを少なくとも2回ずつ見られる長さだからです。
宴会の多い週や連休を含む場合は、その事情も一緒にメモしておくと、後で比べるときの判断材料になります。
直す工程を1つに絞る
記録がそろったら、第1節の5工程に当てはめ、最も多くのミスや時間を生んでいる工程を一つだけ選びます。
選んだ工程によって、変えることは次のように違います。
- 在庫確認:確認する場所の順番と時刻を決める
- 必要量の決定:品目ごとの発注点や見込み量の出し方を発注表に書く
- 仕入先への送信:仕入先一覧の締め時間に合わせて担当と時刻を決め、送信済みの印を付ける
- 検収と記録:発注記録に照合欄と差異欄を設ける
一つに絞るのは、効果を確かめるためです。
発注表を作り直し、同時に仕入先への送り方も変えると、欠品が減ったときにどちらが効いたのか分かりません。
次の工程に進むのは、選んだ工程の変更が定着し、担当者が代わっても同じように回ることを確かめてからで遅くありません。
時間・欠品・廃棄・誤納品の見方
変更のあとも同じ項目を同じ長さの期間で記録し、前の2週間と比べます。
期間をそろえるのは、営業日数や曜日の構成が違うと、回数の増減が変更の効果なのか日数の違いなのか区別できないからです。
指標ごとに、分かることと分からないことが違います。
発注にかかる時間は、在庫確認や送信の手順を変えたときに最初に動く指標です。
欠品の回数は、発注点や見込み量の決め方が合っているかを示しますが、仕入先側の欠品は店の発注とは別に数えておかないと評価を誤ります。
誤納品や差異の回数は検収と記録の効果を見る指標で、照合を始めたばかりの時期には、これまで見落としていた差異が見えるようになって一時的に増えることもあります。
廃棄はいちばん扱いに注意が要ります。
環境省の推計では、令和5年度(2023年度)の食品ロスは約464万トンで、そのうち事業系が約231万トンでした2。
事業活動から出る食品ロスが家庭と同じ程度の規模にあることは分かりますが、この発表には外食の内訳は示されておらず、店がどれだけ減らせるかの目安にはなりません。
店で確かめられるのは、自店の廃棄を原因別に分けて見たときの変化です。
外食では食べ残しや仕込みロスも原因として考えられています1。
発注の見直しで動くのは主に頼みすぎて使い切れなかった分で、食べ残しや仕込みの分が変わらないまま全体の廃棄量だけを見ていると、発注の改善は見えにくくなります。
原因別の記録があれば、発注に由来する廃棄が減ったのか、ほかの原因が増えて打ち消されたのかを読み分けられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 最初の2週間は記録だけ取る
- 直す工程を1つに絞る
- 選んだ工程だけ変える
- 同じ長さの期間で比べる
工程の切り分けや仕入先一覧づくりは店の中で進められますが、受注手段の違う仕入先が混ざっているとき、どこまでを今の手段で回し、どこから仕組みを変えるかは、日々の営業の合間には判断の材料をそろえにくいところです。
仕入先一覧と過去のミスの書き出しをもとに、最初に手を付ける工程と、今の手段のままで足りるかどうかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| ミスの切り分け | 在庫確認・必要量の決定・送信・検収・記録のどこで起きたか |
| 数量の基準 | 日持ちが長い品目は発注点、短い品目は予約と曜日ごとの実績で見込む |
| 仕入先の整理 | 受注手段・締め時間・納品日・最低発注量・欠品時の連絡方法を一覧にする |
| 手段の選び方 | 仕入先が受けられる手段を先に確かめ、困っている工程に合わせて選ぶ |
| 検収 | 自店の発注記録を基準に納品書と現物を照合し、差異を同じ記録に残す |
| 効果の確かめ方 | 2週間記録し、1工程だけ変え、同じ長さの期間で比べる。廃棄は原因別に見る |
2週間の記録を取ると直すべき工程は見えてきますが、複数店舗での品目のそろえ方や、発注システムを検討する段階に来ているかどうかで迷うことがあります。 記録した指標と仕入先の条件をもとに、次に変える工程と、その効果を確かめる期間や見方を具体的に決められます。
よくある質問
発注量の基準は、在庫・予約・販売実績のどれから始めればよいですか。
品目の日持ちと、いま困っているのが欠品か廃棄かで選びます。
日持ちが長い品目は、残量を見るだけで判断できる発注点から始めると扱いやすくなります。
日持ちが短い品目は、予約と曜日ごとの実績から次の納品までの見込み量を出し、在庫を差し引きます。
欠品で困っているなら発注点を、廃棄で困っているなら原因を分けたうえで見込み量の見直しを先にします。
仕入先が電話やFAXしか受けない場合、発注の属人化はどう減らせますか。
手段を変えられなくても、伝える内容と伝えた事実を残すことで減らせます。
電話の前に発注表へ品目と数量を書き、伝えたあとに送信済みの印と先方で受けた人の名前を残します。
FAXなら送った用紙と送信結果を同じ場所に綴じます。
あわせて仕入先一覧に締め時間と連絡先を書いておけば、担当者以外でも同じ手順で送れます。
LINEで発注している場合、記録の残し方で気をつけることは何ですか。
どのアカウントで送っているかが最も大きな分かれ目です。
担当者の個人アカウントだと、その人が休んだり辞めたりしたときに店から履歴を確認できません。
店で共有するアカウントや端末を使う、送った内容を発注表にも書き写す、といった形が考えられます。
税務上の保存の扱いは国税庁の最新資料や税理士に確かめ、それまでは履歴を削除しないでおくと安全です。
担当者が休む日の代行ルールには何を書いておくべきですか。
代わりの担当者、見る資料とその置き場所、判断してよい範囲、迷ったときの連絡先、送ったことを残す場所です。
とくに判断してよい範囲が抜けると、代わりの人は担当者に毎回確認するか、前回と同じ数量をそのまま頼むかになりがちです。
発注点どおりに頼むところまでか、予約に合わせて増減してよいかを書いておきます。
廃棄が多いとき、発注の問題と仕込み・食べ残しの問題はどう見分けますか。
廃棄を記録するときに、頼みすぎて使い切れなかった分、仕込みすぎた分、食べ残しの少なくとも三つに分けて書きます。
外食では食べ残しや仕込みロスも食品ロスの原因として考えられており、廃棄の全量を発注の結果とみなすと判断を誤ります。
原因別に数か週分を並べると、発注の見直しで減らせる部分がどれくらいあるかが見えてきます。
複数店舗で発注を統一するとき、まず何をそろえるべきですか。
品目名、数える単位、仕入先との対応をそろえることから始めます。
同じ食材を店によって「玉」と「ケース」で数えていると、どの店が多く頼んでいるかを比べられません。
発注システムを検討する場合も、この元の情報がそろっていないと、ばらつきをそのままシステムに持ち込むことになります。
画像の出典元
- A male chef meticulously prepares a dish in a contemporary restaurant kitchen, surrounded by culinary tools./Photo by cottonbro studio on Pexels