◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取引先の担当者の氏名や直通の連絡先は、会社そのものの情報とは違い個人情報になり得るため、LINEのトークと転記した台帳の両方で扱いを決める必要がある。
- 送信取消は個人向けLINEで標準1時間以内、公式アカウントで24時間以内だが、取り消しは見られていないことの保証にならないため、誤送信後の連絡と報告判断の手順を先に決めておく。
- 個人LINE・LINE公式アカウント・LINE WORKSの違いは履歴と担当を会社側に置けるかにあり、どれを選んでも自社の安全管理は必要になる。
- 受ける項目を絞り、転記先を一つにし、削除の時期と確かめる人を決めれば、LINE側の保存期間に頼らずに注文情報を管理できる。
- 取引先には、利用目的・受け取る範囲・窓口・LINEでの約束を最初の案内で伝える。
目次

取引先の担当者名・電話番号・納品先は、LINEで受け取ると個人情報になるのか
取引先から届いたLINEの注文に、担当者の名前や直通の電話番号、納品先が書かれている。
それを現場の担当者が自分のスマホで受けたままでよいのか、不安になる場面です。
担当者の氏名や連絡先は、会社そのものの情報とは違い、個人情報になり得ます。
ただ、LINEでの受注をすぐにやめる必要があるとは限りません。
誤送信や端末の紛失など漏れやすい場面を押さえ、誰のアカウントで受けるかを選び、受ける項目、保管先と削除の時期、取引先への案内を決めれば、続ける道があります。
法人の情報と担当者個人の情報の分かれ目
個人情報保護法でいう個人情報は、氏名などによって特定の個人を識別できる情報です。
それ自体では誰か分からなくても、他の情報と容易に照合して識別できるものも含まれます1。
これに対して、企業の財務情報のように団体そのものに関する情報は、個人情報に当たらないと整理されています2。
LINEの注文に当てはめると、分かれ目は「会社についての情報か、人についての情報か」です。
会社名と代表電話番号だけが書かれた注文であれば、団体そのものの情報として考えやすいでしょう。
一方、「担当の〇〇です、何かあればこの携帯へ」と担当者の氏名と直通の番号が添えられていれば、その人を識別できる情報になります。
勤め先の仕事として名乗っている担当者の情報であっても、従業員に関する情報が個人情報の定義に当たれば個人情報になるとされています2。
迷いやすいのが納品先です。
納品先が取引先の店舗や倉庫であれば、住所そのものは会社の拠点の情報です。
ただ、注文は「〇〇倉庫、受け取りは担当の△△まで、携帯は……」のように、一通の中で担当者の名前と並んで届く形もあります。
その場合は、住所だけを切り離して考えるより、担当者を識別できる情報と一緒に届いたものとして扱うほうが、後の判断で迷いません。
もう一つ見落としやすいのは、LINEでは注文の本文だけでなく、相手のアカウントの表示名もトークに残ることです。
表示名が本名であれば、本文に名前が書かれていなくても誰からの注文か分かります。
つまり担当者本人のLINEアカウントから注文を受けるなら、個人情報を受け取っている前提で準備しておくのが現実的です。
注文履歴を残すと何が変わるか
個人情報を受け取ったこととは別に、受け取った情報をどう並べて残すかでも、考える範囲が変わります。
ガイドラインは、特定の個人情報を検索できるように体系的に構成した集合物を「個人情報データベース等」と呼び、名刺の情報を表計算ソフトで整理している場合をその例に挙げています1。
LINEのトーク履歴そのものがこれに当たるかどうかは、ガイドラインに直接の記載がなく、ここでは断定できません。
一方で、注文を受けたあとに受注台帳や表計算ソフトへ転記し、取引先ごとに担当者名と連絡先を並べていくと、名刺の例とよく似た形になります。
担当者の名前から連絡先がすぐ引ける台帳であれば、同じ「容易に検索できるか」という基準で考える必要が出てきます。
このため、LINEで受けるかどうかだけを議論しても、守る対象の半分しか見ていないことになります。
トークに残る情報と、そこから転記した台帳の情報。
この二か所それぞれについて、誰が見られて、いつ消すのかを決めることが、続けるための土台になります。
| 注文に含まれる情報 | 考え方 |
|---|---|
| 会社名・代表電話番号だけ | 団体そのものの情報として考えやすい |
| 担当者の氏名 | 特定の個人を識別できるため個人情報になり得る |
| 担当者の直通番号・携帯番号 | 氏名と照合できれば個人情報になり得る |
| 納品先の事業所住所 | 担当者名と同じ注文に並ぶなら一緒に扱う |
| 転記した取引先ごとの担当者一覧 | 検索できる形なら個人情報データベース等の考え方が及ぶ |
▼ 図の内容を文字で読む
- 会社そのものの情報
- 会社名と代表電話番号だけの注文
- 担当者を識別できる情報
- 担当者の氏名と直通の番号
- 本名の表示名
- 納品先
- 住所だけなら会社の拠点の情報
- 担当者名と並んで届けば一緒に扱う
- 転記した台帳
- 担当者名から連絡先を引ける台帳は検索できる形として考える
LINE受発注で情報が漏れやすいのは、注文のどの場面か
受付・転記・共有・誤送信・端末紛失と退職の流れ
情報が漏れる場面は、注文の流れに沿って並べると見つけやすくなります。
たとえば、営業担当者が自分のスマホで取引先から注文を受け、事務所で受注台帳に打ち直し、社内のグループトークに注文画面のスクリーンショットを貼って配送担当に共有している、という流れを仮に置いてみます。
最初の受付では、注文が担当者個人の端末とアカウントに届きます。
この段階で会社が把握できるのは、担当者が報告した内容だけです。
次の転記では、トークから台帳へ打ち直す際に、注文に要らない情報まで写したり、別の取引先の欄に書いたりする誤りが入り込みます。
共有の場面では、スクリーンショットに注文以外のやり取りや担当者の表示名まで写り込みます。
グループトークに貼った画像は、配送担当だけでなくグループの全員が見られる状態になります。
誤送信は、複数の取引先と同じアプリでやり取りしているからこそ起きる事故で、確認の返信や納期の連絡を、隣に並んだ別の取引先のトークへ送ってしまう形です。
最後が端末の紛失と退職です。
スマホを置き忘れれば、ロックの設定次第でトークの中身が他人の目に触れます。
担当者が辞める場合は、取引先とのやり取りがその人の個人アカウントに残ったままになり、会社の側から消したり引き継いだりする手段を持ちにくくなります。
どの場面で事故が多いかの順位は付けられないため、この並びは頻度の順ではありません。
ただ、受付と退職は「個人のアカウントで受けているかどうか」で状況が大きく変わり、転記と共有は「どこに何を写すか」の決め方で変わります。
この違いが、アカウントの持ち方の選択と、その後の運用ルールの両方につながります。
誤送信後に取り消せる時間の違い
誤送信に気づいたとき、まず頼りにするのは送信の取り消しです。
個人向けのLINEでは、送信取消ができるのは標準で送信後1時間以内、LYPプレミアム会員なら7日以内です3。
LINE公式アカウントのチャットでは、送信から24時間以内なら取り消せます4。
ここで混同しやすいのが「送信取消」と「削除」の違いです。
個人向けLINEの送信取消は自分と相手の両方のトークルームからメッセージを消しますが、削除は自分のトークルームから消えるだけで、相手の画面には残ります3。
慌てて削除を押しても、誤って届いた相手の手元からは何も消えていません。
もう一つ、取り消しが間に合っても、見られていないことの保証にはなりません。
LINEヘルプは、取り消す前にプッシュ通知で内容の一部が相手に表示された可能性があることや、既読や相手のアプリのバージョンによる制約にも触れています3。
取り消せる時間の長さは、事故のあとに打てる手の幅の違いであって、事故そのものを防ぐ仕組みではありません。
だからこそ、取り消しのあとに相手へ連絡するか、社内の誰に報告するかを先に決めておく意味があります。
漏えいが報告対象になる条件
誤送信や紛失がどこまで重い話なのかは、個人情報保護委員会への報告が必要な条件と照らすと見当がつきます。
ガイドラインは、要配慮個人情報が含まれる場合、財産的被害が生じるおそれがある場合、不正の目的によるおそれがある場合、本人の数が1,000人を超える場合のいずれかに当たる漏えい等を報告の対象としています1。
報告は二段階で、速報は速やかに(目安は概ね3〜5日以内)、確報は原則30日以内、不正の目的によるものは60日以内です1。
取引先の担当者一人の名前と携帯番号を、別の取引先へ誤って送ってしまった場合を考えてみます。
人数の条件は1,000人を超えるかどうかなので、一通の誤送信がそこに届くことはまずありません。
ただ、残りの三つの条件は人数と関係なく判断されます。
送った画像に何が写っていたのか、端末の紛失が置き忘れなのか盗難なのかによって判断が変わるため、「一人分だから大丈夫」と決めつけず、四つの条件に照らして確かめる手順を持っておく必要があります。
報告の対象に当たらない場合でも、それで終わりではありません。
誤って届いた相手に削除を頼むか、情報を送られてしまった担当者の会社にどう伝えるかは、取引の関係の中で判断することになります。
こうした連絡を誰が決めるのかが決まっていないと、誤送信した担当者が一人で抱え込むことになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受付:担当者個人の端末とアカウントに注文が届く
- 転記:台帳へ打ち直す際に要らない情報や取り違えが入る
- 共有:スクリーンショットをグループトークに貼ると全員に見える
- 誤送信:別の取引先のトークへ送ってしまう
- 端末の紛失と退職:トークが個人の端末とアカウントに残る
▼ 図の内容を文字で読む
- 漏えい等のおそれに気づく:誤送信や端末の紛失など
- 四つの条件に当たるか確かめる:要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正の目的、1,000人超のいずれか
- 当たる場合は速報:速やかに(目安は概ね3〜5日以内)
- 確報:原則30日以内(不正の目的によるものは60日以内)
個人LINEのまま続けるか、公式アカウントや業務チャットへ切り替えるか
個人LINE・公式アカウント・業務チャットの比較表
前の節で見た場面のうち、受付と退職での状況や、誤送信のあとに打てる手は、どのアカウントで受けるかで変わります。
ここでは、担当者の個人LINEで受ける形と、事業者として開設するLINE公式アカウント、業務用チャットのLINE WORKSを、同じ点で並べます。
表で判断が分かれるのは、履歴と担当を会社の側に置けるかどうかです。
個人LINEは、アカウントが担当者本人のものです。
担当者が変わったり辞めたりしたときに、取引先とのやり取りが会社の手を離れるのは、前の節で見た退職の場面そのものです。
なお、個人アカウントを業務の受注に使うことが利用規約上どう扱われるか、個人LINEの履歴がどのように保管されるかは確認できておらず、表でも埋めていません。
個人LINEで続ける場合は、自社で規約を読んだうえで判断することになります。
LINE公式アカウントは、事業者が開設するアカウントで取引先とやり取りする形です。
料金プランのうちコミュニケーションプランは月額0円で、1対1のチャットの送受信は無料メッセージの通数に数えられません5。
通数の対象になるのは配信などなので、注文を受けるだけの使い方なら、通数を気にする場面は限られます。
チャットごとに公式アカウントに登録したメンバーを担当者に設定でき、担当者を決めないまま返信すると最初に送信したメンバーが担当者になります4。
誰がどの取引先の注文を見ているかを、アカウントの側で確かめられるのが個人LINEとの大きな違いです。
その代わり、履歴には期限があります。
無料の範囲で残るチャット履歴は半年で、チャットProを使えば5年(2024年1月1日以降の履歴が対象)になり、履歴のダウンロードもチャットProでしかできません4。
また、グループや複数人のトークで送られた画像・動画は2週間、ファイルは1週間しか閲覧・保存できません4。
取引先が注文書を写真で送ってくる運用なら、トークを記録として当てにせず、受け取ったら社内の保管先へ移す前提で考えることになります。
LINE WORKSは、利用する人ごとに料金がかかる業務用のチャットです。
料金はフリーが0円、スタンダードが1ユーザーあたり月450円、アドバンストが月800円(いずれも年額契約・税抜)で、トークを最長10年保存するアーカイブはスタンダード以上に月300円で追加でき、フリーでは使えません7。
フリーは30人までで、365日間利用がないと自動で退会になる条件も付きます7。
ただし、取引先がふだん使っているLINEとそのままトークできるかは料金ページからは判別できず、ここでは断定しません。
取引先に新しいアプリを入れてもらう必要があるかどうかで負担は大きく変わるため、導入前に提供元の案内で確かめる部分です。
なお、ここに挙げた金額は各社が2026年時点で公表している料金で、受発注の手段一般の相場ではありません。
どれを選んでも、取引先の情報を外部のサービスに預けることになります。
個人情報保護委員会のQ&Aは、クラウドサービスの利用が第三者への提供に当たるか委託に当たるかは、サービスの提供事業者が預かった個人データを取り扱うかどうかで決まるとしています。
取り扱わないことになっていて、アクセス制御も適切に行われていれば、本人の同意も委託先の監督も要りませんが、その場合も自社の安全管理措置は必要です2。
LINEの各サービスがどちらに当たるかはこのQ&Aからは決められず、各サービスの規約や契約内容を見て判断する部分が残ります。
確かなのは、どのサービスを選んでも、自社の中での扱いを決める作業はなくならないということです。
公式アカウントで気をつける規約
公式アカウントに切り替える場合は、LINE公式アカウントのガイドラインも受注の運用にかかわります。
ガイドラインは、第三者の個人情報や登録情報、利用履歴情報を不正に収集・開示・提供することを禁じ、第三者の名前・住所・電話番号などを許可なく投稿・配信することも禁じています。
違反した場合は、コンテンツの非公開やアカウントの停止といった措置があります6。
取引先の担当者から1対1のチャットで注文を受けること自体は、ガイドラインがいう投稿・配信とは別の場面と考えられます。
注意が要るのは、受け取った情報を別の相手に向けて使う場面です。
たとえば、納品の段取りを伝える配信に取引先Aの担当者の連絡先を載せる、取引先Bへの案内にAの納品先を書き込むといった使い方は、許可のない配信に当たりかねません。
アカウントが止まれば、注文の受け口そのものが止まります。
受注の窓口として使うなら、取引先の情報を配信に混ぜないことを、運用ルールの一行として最初に決めておくと安心です。
LINE以外の手段へ移す場合の考え方
注文フォームやメールなど、LINE以外の受け口へ移す方法もあります。
仕様や費用はサービスごとに違うので、ここでは考え方だけ触れると、受ける項目が最初から決まった形で届く手段ほど、次の節で扱う「受ける項目を絞る」「転記先を一つにする」を組み込みやすくなります。
取引先にとっての手間とあわせて、LINEを続けるかどうかの比較に加えておく価値はあります。
| 比べる点 | 個人LINE | LINE公式アカウント | LINE WORKS |
|---|---|---|---|
| 誰がアカウントを持つか | 担当者本人 | 開設した事業者 | 契約した事業者 |
| 履歴の保管 | 今回確認できず | 無料範囲は半年・チャットProは5年 | アーカイブ追加で最長10年(スタンダード以上) |
| 担当者・権限 | 今回確認できず | チャットごとに担当者を設定できる | 今回確認できず |
| 誤送信の取消 | 標準は1時間以内・LYPプレミアム会員は7日以内 | 送信から24時間以内 | 今回確認できず |
| 費用 | 今回確認できず | コミュニケーションプランは月額0円(1対1チャットは通数外) | フリー0円・スタンダード月450円・アドバンスト月800円(1ユーザー・年額契約・税抜) |
| 取引先のLINEとのやり取り | できる | できる | 料金ページでは判別できず |
▼ 図の内容を文字で読む
- 1週間:グループや複数人のトークで送られたファイル
- 2週間:グループや複数人のトークで送られた画像・動画
- 半年:無料の範囲で残るチャット履歴
- 5年:チャットProの履歴(2024年1月1日以降が対象)
受け取った注文情報は、どこへ転記して、いつ消すのか
受ける項目を絞る
アカウントをどれにしても、受け取った注文情報をどう扱うかのルールは別に要ります。
安全管理措置は、事業の規模、扱うデータの性質と量、記録する媒体などに応じたリスクで決めるもので、ガイドラインに例示された手法を全部講じる必要はないとされています2。
小さな会社が受注の範囲で決めるなら、やることは絞れます。
最初に決めるのは、注文で受け取る項目です。
品名、数量、納期、納品先、問い合わせ先になる担当者の連絡先。
受注に要るのがこの範囲なら、それ以外は求めず、送られてきても台帳には写さない、と決めておきます。
担当者の私用の番号や自宅に関する話がやり取りの流れでトークに混ざっても、転記の時点で落とせば、台帳に残る情報は注文に必要なものだけになります。
項目を決めておくと、取引先に送ってもらう注文の型を作れます。
決まった並びで届けば、転記する人はどこを拾えばよいか迷わず、前の節で見た転記の取り違えも起きにくくなります。
項目を絞ることは、守る範囲を小さくすることと、転記の確認を軽くすることの両方につながります。
保管先を一つに決める
次に、転記先を一つに決めます。
個人LINEのトーク、公式アカウントのチャット、事務所の受注台帳、担当者が手元で付けているメモと、注文の情報が置かれる場所が増えるほど、どこを消せば消したことになるのかが分からなくなります。
公式アカウントを使う場合も、チャットを台帳の代わりにはしにくい事情があります。
無料の範囲では履歴が半年で見られなくなり、まとめて書き出すダウンロードもチャットProに限られるからです4。
注文のたびに必要な項目を会社の台帳へ移し、正式な記録はそちらに置く、と分けておけば、LINE側の履歴が消えても困るのは台帳に写していない情報だけになります。
ここで分けて考えたいのは、LINE側で履歴が残る期間と、自社が情報を持ち続ける期間は別物だということです。
半年や5年はLINEの仕様で決まる保存期間で、自社がいつまで担当者の連絡先を持つかを決めたものではありません。
取引が続いている間は連絡先が必要ですが、取引が終わった取引先や、担当が替わった前任者の情報をいつまで台帳に置くかは、自社の取引の周期に合わせて決めることになります。
一律の目安があるわけではないので、決めた時期と、削除を確かめる人をセットで書き残しておくのが実務的です。
端末・アカウントの管理と削除の確認
ガイドラインの別添には、従業員が100人以下の中小規模事業者向けの手法例が示されています(個人データの取扱いを委託されている事業者などは除かれます)。
責任者と担当者を区分して確認すること、定期的に点検すること、個人データを扱う機器と従業者を明確にすること、OSやセキュリティ対策ソフトを最新に保つこと、持ち運ぶときの紛失・盗難を防ぐこと、削除や廃棄のときに責任者が確認することなどです1。
これを受注に当てはめると、次のような決め方になります。
受注に使ってよい端末と、注文を受けてよい人を決める。
その端末は画面ロックとOSの更新を欠かさない。
台帳の削除は担当者が行い、責任者が消えたことを確かめる。
月に一度など自社で決めた間隔で、責任者が台帳と各端末のトークを見て、決めた項目以外が残っていないか、削除の時期を過ぎた情報がないかを点検する。
点検で見つかったことは、受ける項目や削除の時期の見直しにつなげます。
私物のスマホで受注している場合の扱いは、参照した手法例には書かれていません。
会社が持たない端末に取引先の情報が残る以上、更新や紛失時の対応を本人にどこまで求めるかは、自社で線を引く必要があります。
その線引きが難しいと感じたら、それ自体が会社のアカウントや端末へ寄せることを考える材料になります。
こうしたルールで減るのは、誰が何を持っているか分からない状態と、消したつもりで残っている情報です。
事故がなくなるわけではありませんが、起きたときに範囲を確かめ、前の節で見た報告の判断へ進む手掛かりが手元に残ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受ける項目を決める:品名・数量・納期・納品先・担当者の連絡先に絞る
- 一つの台帳へ転記する:LINEの履歴を正式な記録にしない
- 決めた時期に削除する:担当者が消し、責任者が消えたことを確かめる
- 責任者が点検する:自社で決めた間隔で、決めた項目以外や削除の時期を過ぎた情報がないか見る
取引先に不安を与えず、ルールを伝えて合意を取るには
利用目的の特定と通知・公表
ルールを決めたら、取引先に伝える段階です。
個人情報を扱う事業者は、利用目的をできる限り具体的に特定し、取得するときにはあらかじめ公表しておくか、取得後速やかに本人へ通知または公表する必要があります。
本人から書面などで直接取得する場合は、取得する前に利用目的を明示することも求められます1。
受注に当てはめるなら、利用目的は「受注内容の確認、納品の連絡、請求に関する連絡のため」のように、担当者の連絡先を何に使うのかが分かる書き方にします。
会社のウェブサイトにプライバシーポリシーを載せているなら、そこにこうした目的が含まれているかを見直すことが、公表の手当てになります。
一方で、名刺交換のように慣行として行われる取得は事前に明示する義務の対象外とされ、取得の状況から利用目的が明らかな場合は通知や公表が要らない例外もあります1。
ただし名刺交換で外れるのは明示の義務で、通知・公表の義務は別に残ります1。
LINEで注文と一緒に担当者の連絡先が届く場面が、名刺交換と同じように扱えるのか、目的が明らかな場合と言えるのかは、状況によって判断が分かれる余地があります。
迷う余地を残さないためには、LINEで受け始める最初の案内で目的を伝えてしまうのが簡単です。
案内に載せる項目
案内文に決まったひな形があるわけではないので、ここでは載せておきたい項目を挙げます。
一つ目は利用目的で、前の項のように連絡先を何に使うかを書きます。
二つ目は受け取る情報の範囲で、注文に必要な項目と、送らないでほしい情報を示します。
三つ目は問い合わせの窓口で、情報の扱いについて聞きたいときに誰へ連絡すればよいかを書きます。
四つ目はLINEを使ううえでの約束で、誤送信に気づいたときはお互いにすぐ知らせること、担当者が替わるときは知らせてほしいことなどを入れます。
取引先にとって、この案内は自分の連絡先がどこでどう使われるかが分かる材料です。
「御社のご担当者の連絡先は受注と納品のご連絡にだけ使い、社内の受注台帳で管理します」と自社の扱いを先に示す書き方にすると、相手に何かを課すより、自社の約束を伝える形になります。
前の節で決めた受ける項目や削除の時期がそのまま案内の中身になるので、ルールを決めることと取引先へ伝えることは、別々の作業ではありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 利用目的
- 連絡先を何に使うかを書く
- 受け取る情報の範囲
- 注文に必要な項目
- 送らないでほしい情報
- 問い合わせの窓口
- 情報の扱いについて誰へ連絡するか
- LINEを使ううえでの約束
- 誤送信に気づいたらお互いにすぐ知らせる
- 担当者が替わるときは知らせてもらう
取引先ごとに注文の届き方や転記先が違うと、担当者の情報がどこに残っているかを社内だけで洗い出すのは手間がかかります。
いまの受注の流れを受付から台帳への転記まで順にたどり、情報が増えたり分散したりしている場所を整理できます。無料相談で要件を整理する
LINE受発注を続ける場合に決めること
注文を受けてから記録を消し、取引先へ伝えるまでの流れの中で、先に決めておく必要があるものから並べた。
- 注文を受けるアカウント(個人LINE・LINE公式アカウント・業務用チャット)
- 注文で受け取る項目の範囲
- 転記先の台帳と、削除の時期・確かめる人
- 受注に使ってよい端末と、注文を受けてよい人
- 誤送信や紛失に気づいたときの連絡と報告判断の手順
- 取引先への案内(利用目的・受け取る範囲・窓口・LINEでの約束)
取引先や受注担当者が増え、誰がどの取引先のトークを持っているかを責任者が把握できなくなったら、個人LINEから会社側で持つアカウントへの切り替えを検討する。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 個人情報かどうか | 会社そのものの情報か、担当者を識別できる情報か |
| 守る場所 | LINEのトークと、転記した台帳の二か所 |
| アカウントの選び方 | 履歴と担当を会社側に置けるか、取引先の負担はどうか |
| 誤送信のとき | 取り消せる時間内か、報告の四条件に当たるか |
| 運用ルール | 受ける項目・転記先・削除の時期と確かめる人・使う端末 |
| 取引先への案内 | 利用目的・受け取る範囲・窓口・LINEでの約束 |
アカウントの切り替えや、受ける項目・削除の時期の決め方は、取引先の数や受注の頻度によって答えが変わります。 自社の取引に合わせて、どのアカウントで受け、何をどこに残し、いつ消すかの条件を整理できます。
よくある質問
取引先の代表電話番号や会社名だけの注文なら、個人情報の対象にならないのですか。
会社名や代表電話番号のように会社そのものに関する情報だけなら、団体の情報として個人情報には当たらない側で考えられます2。
ただ、LINEでは本文に名前がなくても相手の表示名が残り、表示名が本名なら誰からの注文か分かります。
担当者本人のアカウントから届く注文は、本文が会社の情報だけでも、個人情報を受け取っている前提で扱うほうが判断がぶれません。
個人LINEで誤送信したとき、取引先に連絡すべきですか。取り消せば済みますか。
個人向けLINEなら標準で送信後1時間以内に送信取消ができますが、取り消す前に通知で内容の一部が見えた可能性は残り、削除では相手の画面から消えません3。
取り消しだけで済ませず、誤って届いた相手に削除をお願いするか、情報が出てしまった担当者の会社にも伝えるかを、社内の責任者と決めておくと対応がぶれません。
あわせて、報告の対象になる四つの条件(要配慮個人情報、財産的被害のおそれ、不正の目的、1,000人超)に当たらないかを確かめます1。
公式アカウントのチャット履歴が半年で消えると困るとき、何を残せばよいですか。
無料の範囲で残る履歴は半年で、チャットProなら5年(2024年1月1日以降が対象)まで延び、履歴のダウンロードもProで使えます4。
ただ、残したいのが注文の記録であれば、チャット全体を保存するより、品名・数量・納期・納品先・担当者の連絡先といった必要な項目を受注のたびに社内の台帳へ移しておくほうが、残す範囲を絞れます。
何をどれだけの期間残すかは、LINEの保存期間ではなく自社の取引の周期で決めます。
退職する担当者の個人LINEに残った取引先とのトークは、どう引き継げばよいですか。
個人LINEのトークは担当者本人のアカウントに残るため、会社の側から引き継いだり消したりする手段は持ちにくいのが実情です。
注文の情報をふだんから会社の台帳へ移していれば、引き継ぐべき記録は台帳側にあります。
退職の前に取引先へ窓口の変更を伝え、本人の端末から取引先とのトークや画像を消したことを責任者が確かめる手順を決めておくと、残る情報を減らせます。
公式アカウントで受けている場合は、チャットの担当者に後任のメンバーを設定する形で受け持ちを移せます4。
取引先から個人LINEのIDで注文してよいかと聞かれたら、どう返せばよいですか。
会社として受け口を決めているなら、そのアカウントを案内するのが基本です。
たとえば「ご注文は弊社の公式アカウントで承っています。担当が替わってもやり取りを引き継げるよう、こちらへのご登録をお願いします」のように理由を添えると、個人のIDを使わない理由が相手に伝わります。
個人のアカウントで受けると決めている場合も、連絡先を何に使うか、どの情報を送ってほしいかを最初に伝えたうえで受けるようにします。
- 1 出典:個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年)
- 2 出典:個人情報保護委員会「「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A」(2026年)
- 3 出典:LINEヤフー株式会社「LINEヘルプセンター:メッセージの取り消し(送信取消)と削除」(2026年)
- 4 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント マニュアル(チャット)」(2026年)
- 5 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント 料金プラン」(2026年)
- 6 出典:LINEヤフー株式会社「LINE公式アカウント ガイドライン」(2024年)
- 7 出典:ワークスモバイルジャパン株式会社「LINE WORKS 利用料金ページ」(2026年)
画像の出典元
- Close-up of hands writing in notebook with smartphone calculator on the table./Photo by AlphaTradeZone on Pexels