◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 稟議は社内で支出を決める手続き、注文書は取引先へ発注内容を示す書類で、承認を得てから注文書を出す順を基本にする
- 急ぐときは自社規程の緊急・事後承認の手順を使い、了承の経緯と発注内容を事後の稟議に残す
- 取適法の対象取引では、発注内容の書面または電磁的記録を直ちに交付し、支払期日は受領日から60日以内でできる限り短く定める
- 稟議書の金額や納期は注文書へそのまま転記できる形で書き、承認額と注文額に差があれば先に社内の手続きを済ませる
- 注文書などは法人税法上7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)保存し、取適法の対象取引では取引記録を2年間保存する
目次

見積は届いたが承認前に注文書を出してよいか:稟議と注文書の役割と進める順
見積は届いたのに、承認が下りる前に注文書を出してよいか分からず、手が止まっていませんか。
稟議は社内で支出を決める手続き、注文書は取引先へ発注内容を示す書類で、向いている相手が違います。
基本は、承認を得てから注文書を出す順に整えます。
急ぐ場合は、自社規程にある緊急・事後承認の手順を使います。
取適法の対象取引であれば、急ぎでも発注内容を記載した書面か電磁的記録を、直ちに取引先へ渡す必要があります2。
注文書は稟議で承認された内容とそろえて作り、終わった書類は制度ごとの年数で保存します。
稟議は社内の決定、注文書は取引先への発注内容の明示
手元に見積書があり、納期も決まりかけていても、稟議が通っていなければ注文書を出してよいか迷います。
稟議と注文書はどちらも「発注」の手続きに見えますが、向いている相手が違います。
この違いが、迷いの大きな原因です。
稟議は、社内で「この支出をしてよいか」を決める手続きです。
申請者が金額や取引先、必要な理由をまとめ、決裁の権限を持つ人が承認します。
やり取りの相手は社内の人で、取引先が稟議書を目にすることは通常ありません。
注文書は、取引先に「何を、いくつ、いくらで、いつまでに頼むか」を示す書類です。
取引先はこれを根拠に手配を始め、納品や請求の準備を進めます。
稟議は会社の内側での意思決定、注文書は外側への意思表示です。
役割が違うので、片方がもう片方を兼ねる書類としては扱いにくい関係です。
稟議書に注文書の案を添付する会社もあれば、承認後に注文書を作る会社もあり、どちらにするかは自社の運用で決まります。
承認を得てから注文書を出す順を基本にする理由
順番を考えるときは、注文書を出した後に何が起きるかをたどると分かりやすくなります。
注文書を受け取った取引先は、材料を仕入れたり、作業の予定を押さえたりします。
その後で社内の承認が下りなければ、発注を取り消すにしても内容を変えるにしても、相手はすでに動き始めています。
承認を得てから注文書を出せば、注文書の金額や納期は社内で認められた内容になります。
取引先に示した条件と社内で決めた条件が最初から一致するため、後から説明し直す場面が減ります。
「承認を得てから注文書」を基本の順として勧めるのは、この食い違いを起こしにくくするための整理です。
ただし、この順序は法令が一律に定めたものではありません。
どの金額から稟議が必要か、誰が承認するかは会社ごとに規程が違います。
少額の購入なら、稟議を経ずに発注できる会社もあります。
まずは自社のルールで、今回の発注に稟議が必要かどうかを確かめるところから始まります。
承認前の発注で自社に確認すること
承認前に注文書を出してしまった場合、その発注が有効なのか、取り消せるのかは、担当者がいちばん気にする点です。
答えは発注の経緯、担当者の権限、取引先とのやり取りによって変わるため、一般論として「有効」とも「無効」とも言い切れません。
判断が必要になったら、法務担当や顧問弁護士に経緯を伝えて相談するのが確実です。
担当者の立場で先に確かめられるのは、社内の規程の側です。
見ておきたいのは次の点です。
・今回の金額や取引の種類で、稟議が必要とされているか
・承認前の発注を禁止する定めや、例外を認める定めがあるか
・例外がある場合、誰の了承をどの形で残すことになっているか
規程に例外の定めがあれば、それが急ぎの発注の入口になります。
定めが見当たらないまま独断で注文書を出すと、後で説明を求められたときに根拠を示せません。
納期が迫るときの進め方:急ぎ発注と事後承認で押さえること
自社規程の緊急・事後承認の定めを探す
納期が迫っているのに承認者が出張中で、決裁が数日先になることがあります。
こうした場面に備えて、稟議規程に「緊急時は事後承認とする」「上長の口頭了承で先行して発注できる」といった定めを置いている会社があります。
呼び方は会社によって違い、「事後稟議」「緊急決裁」「先行手配」などの名前で書かれていることもあります。
定めを探すときは、規程の本文だけでなく、権限表や運用マニュアルの注記にも目を通します。
緊急時の扱いは例外なので、本文の末尾や別紙に書かれていることがあるためです。
見つかったら、使える条件(金額の上限、対象となる取引、理由の要件)と、了承を得る相手を確かめます。
定めが無い場合は、事後承認を前提に進めてよいかを、承認者本人か総務・経理に確認してから動くのが無難です。
得た了承は、誰がいつ認めたかを後で示せる形で残します。
口頭で了承を得たときも、その場でメールやチャットに要点を書いて送り、相手に確かめてもらえば記録になります。
口頭や電話だけで終わらせない
急いでいると、取引先に電話で「進めてください」と伝え、注文書は後で送る流れになりがちです。
社内の承認は、規程の範囲で後回しにできることがあります。
しかし、取引先へ発注内容を示す書類まで後回しにしてよいとは限りません。
取適法の対象となる取引では、委託事業者は発注に際して、具体的記載事項をすべて記載した書面または電磁的記録を、直ちに中小受託事業者へ交付する義務を負います2。
委託事業者は発注する側、中小受託事業者は受注する側の事業者です。
電話で発注内容を決めたなら、その内容を記した書面やデータを、間を置かずに取引先へ渡すことになります。
取適法の対象になるかどうかは、取引の内容と、発注側・受注側それぞれの資本金や従業員数の基準で決まります。
すべての発注が対象になるわけではありません。
ただ、自社の取引がどちらに当たるかを把握していないなら、急ぎの発注ほど先に確かめておく必要があります。
対象外の取引でも、電話だけで発注を済ませると、数量や納期の聞き違いが起きたときに確かめる材料がありません。
メールで発注内容を送り、取引先に受け取った旨を返してもらうだけでも、後の照合がしやすくなります。
事後に稟議へ残すこと
事後承認で進めた場合、稟議書は「これから決めること」を諮る書類ではなく、すでに決めて動いたことを報告し、追認を求める書類になります。
そのため、通常の稟議書の項目に加えて、急いだ経緯を読み手がたどれるように書きます。
・承認を待てなかった理由(納期、在庫切れ、設備の停止など具体的な事情)
・先行して了承した人と、了承を得た日時・方法
・取引先へ発注した日と、交付した書面や電磁的記録
・発注した内容(品名・数量・金額・納期・支払条件)
・見積と発注内容に違いがあれば、その差と理由
承認者がまず確かめたいのは、了承した内容と実際に発注した内容が一致しているかです。
了承の時点より数量が増えた、単価が変わったといった差があれば、隠さずに書き添えます。
差が書かれていれば、承認者は追認するかどうかを事実に基づいて判断できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 稟議
- 社内で「この支出をしてよいか」を決める
- 決裁の権限を持つ人が承認する
- 注文書
- 何を、いくつ、いくらで、いつまでに頼むかを示す
- 取引先が手配の根拠にする
- 二つの書類の扱い
- 片方がもう片方を兼ねる書類としては扱いにくい
- 注文書の案を稟議書に添付するかは自社の運用で決まる
稟議書に何を書くか:見積書・金額・選定理由の添え方
稟議書に載せる項目
急ぎかどうかにかかわらず、承認者が稟議書で判断するのは「この支出は必要か」「この取引先と条件でよいか」「予算の範囲に収まるか」の三点です。
稟議書の項目は、この判断に答える材料を並べたものと考えると、何を書けばよいかが見えてきます。
・件名と目的:何のために、何を発注するのか
・取引先と選定理由:なぜこの取引先なのか、比べた相手があればその結果
・金額:税込・税抜の別、単価と数量、総額
・予算の位置づけ:どの予算から支出するか、予算内か超過か
・納期と支払条件:いつまでに必要で、いつ支払うのか
・添付書類:見積書、比べた相手の見積書、仕様書など
これは公的に決まった雛形ではなく、承認者の判断の順に沿って整理した項目です。
自社に稟議書の様式があればそれに従い、様式に欄がない情報は備考に書き添えます。
見積書の添付と注文書への転記
見積書を稟議書に添付しておくと、承認者は稟議書の金額が取引先の提示どおりかをその場で確かめられます。
複数の取引先から見積を取ったなら、選ばなかった側の見積書も添付すると、選定理由の裏付けになります。
意識したいのは、稟議書の金額や納期を、そのまま注文書へ写せる形で書いておくことです。
稟議書に概算の金額だけを書き、注文書には見積書の明細どおりの金額を書くと、承認された金額と注文額の関係を後から確かめる手間が生じます。
見積書の明細どおりに単価・数量・総額を稟議書へ書いておけば、承認後はそれを注文書へ転記するだけになります。
注文書の案を稟議書に添付する方法もあります。
承認者は取引先へ出す書類そのものを見て判断できるため、承認内容と注文書の食い違いが起きにくくなります。
一方で、承認の途中で条件が変わると注文書の案も作り直しになります。
どちらにするかは、自社の運用に合わせて選びます。
差し戻しを避ける準備
書類の中で答えが見つからない問いが残っていると、承認者は確認のために差し戻すしかありません。
「なぜ今必要なのか」「なぜこの取引先なのか」「見積と稟議の金額はなぜ違うのか」といった問いには、書類の中で先に答えておきます。
提出前に、承認者の立場で読み直すのが手軽な確認方法です。
見積書の金額と稟議書の金額が一致しているか、納期が見積の有効期限内に収まるか、予算の残額で足りるかを一つずつ照らします。
見積書に有効期限が書かれている場合、承認に時間がかかると期限を過ぎ、再見積が必要になることもあります。
納期が迫っているなら、その事情も稟議書に書いておきます。
急ぐ理由が承認者に伝われば、決裁を早めてもらえる場合があり、事後承認に頼らずに済むこともあります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 見積書を受け取る
- 稟議で承認を得る
- 注文書を作成し取引先へ交付する
- 納品を受けて検収し、代金を支払う
- 注文書や稟議の書類を保存する
注文書の記載項目と、承認内容との揃え方
品名・数量・金額・納期・支払条件の対応
承認が下りたら、稟議書の内容を注文書へ移します。
大切なのは、承認された事項と注文書に書く事項を一つずつ対応させることです。
注文書は取引先が手配の根拠にする書類です。
承認内容と違う条件が書かれていると、社内では認めていない約束を取引先に示すことになります。
稟議書の側には「なぜ必要か」「予算はどうなっているか」という社内の判断の理由が入ります。
注文書の側には、取引先が動くための具体的な条件が入ります。
理由まで注文書に書く必要はありませんが、数量・金額・納期・支払条件は、転記した後に両方で同じ値になっているかを見比べます。
取適法の対象取引では、発注の際に交付する書面や電磁的記録に、具体的記載事項をすべて記載する必要があります2。
記載事項の詳細は公正取引委員会の資料で確かめ、自社の注文書の様式に欠けている欄がないかを見ておくと安心です。
支払期日と取適法の関係
支払条件は、注文書の中でも社内の慣行がそのまま書かれやすい項目です。
自社の締め日と支払サイクルを、取引ごとの事情を見ずに書き写している場合は注意が要ります。
取適法の対象取引では、委託事業者は支払期日を、物品等を受領した日(役務提供委託の場合は、中小受託事業者が役務の提供をした日)から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に定める義務があります2。
起算点は、注文書を出した日や請求書が届いた日ではなく、受領した日です。
注文書の支払条件は、納品から支払までの日数で考える必要があります。
受領日から支払日までの日数は、締め日の位置によって変わります。
たとえば月末締めで支払日を決めている場合、締め日の直後に納品された物は、直前に納品された物より支払までの日数が長くなります。
注文書の支払条件を自社の締め日と組み合わせ、日数が最も長くなる納品日でも60日を超えないかを確かめておくと、承認後に条件を直す手間を避けられます。
支払が遅れた場合には、遅れた日数に応じ、未払金額に年率14.6%を乗じた遅延利息を支払う義務も定められています2。
支払条件は経理の処理日程とも関わるため、注文書を作る段階で経理とすり合わせておくのが確実です。
承認額と注文額がずれたとき
承認後に取引先と最終調整をすると、数量の追加や送料の加算で、注文額が承認額を上回ることがあります。
この差をどう扱うかは、自社の規程で決まります。
差が一定の範囲なら上長の了承で足りると定めている場合もあれば、少しでも超えれば変更の稟議を出し直すと定めている場合もあります。
どちらの場合も、差が残ったまま注文書を出さないのが基本です。
先に社内の手続きを済ませ、その結果を注文書に反映させれば、承認内容と注文書の一致を保てます。
注文額が承認額を下回ったときは、規程上の手続きが要らなくても、稟議書に最終の金額を書き添えておくと、支払額と照合するときに迷いません。
金額ではなく、取引先や品目そのものが変わった場合は、承認者が判断した前提が変わっています。
金額の差が小さくても、変更の稟議を出すかどうかを規程と承認者に確かめます。
| 項目 | 稟議書で決めること | 注文書に書くこと |
|---|---|---|
| 品名・仕様 | 発注する物やサービスと、その目的 | 取引先が手配できる品名・型番・仕様 |
| 数量 | 必要な数量とその根拠 | 承認された数量 |
| 金額 | 単価・総額と予算の位置づけ | 承認された単価・総額と税の扱い |
| 納期 | 必要な時期とその理由 | 納品日と納品場所 |
| 支払条件 | 支払時期の想定 | 支払期日と支払方法 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 稟議規程の本文を読む
- 権限表や運用マニュアルの注記、別紙も読む
- 使える条件と、了承を得る相手を確かめる
- 誰がいつ認めたかを、メールやチャットに残す
金額や取引の種類で承認ルートが変わるとき:自社規程の確認の仕方
規程と権限表の見方
稟議書と注文書に何を書くかが決まったら、その稟議を誰に承認してもらうかが残ります。
承認ルートは、稟議規程や、それとあわせて定められた権限表で決まっていることがあります。
権限表は、決裁権限規程や職務権限表と呼ばれることもあります。
権限表は、金額や取引の種類ごとに、誰が申請し、誰が承認するかを一覧にしたものです。
自分の発注に当てはめるときは、次の順に見ていくと迷いにくくなります。
1. 金額:税込か税抜か、単価か総額かなど、権限表がどの金額で区分しているかを確かめ、今回の発注額を当てはめる
2. 取引の種類:物品の購入、業務の委託、ソフトウェアの利用契約など、種類ごとに別の行が設けられていないかを見る
3. 継続か単発か:毎月発生する取引や複数年の契約は、1回分ではなく年間や契約期間の総額で区分されていないかを見る
4. 承認者と回付先:該当した行の承認者に加えて、経理や法務の確認が必要とされていないかを見る
見落としやすいのは金額の数え方です。
継続する取引を毎月の金額で見ると下位の承認者で足りるように見えても、年間の総額で見ると上位の承認が必要になる場合があります。
どの金額で区分するかは会社ごとに違うため、権限表の注記や定義の欄も合わせて読みます。
迷うときの問い合わせ先
権限表に当てはめても判断がつかないことはあります。
新しい種類の取引で該当する行がない、二つの行のどちらにも読める、といった場合です。
近そうな行で申請すると、承認の途中で回付先の誤りを指摘され、やり直しになることがあります。
問い合わせ先は、迷っている点によって変わります。
規程や権限表の読み方なら、規程を管理している総務などの担当に聞きます。
予算の区分、支払条件、書類の保存は経理が、契約の効力や取引先との条件、取適法の対象かどうかは法務が判断の窓口になります。
部署の名前や分担は会社ごとに違うので、規程の末尾にある所管部署の記載も手掛かりになります。
問い合わせでは、発注の内容、金額の内訳、継続か単発か、急ぐ理由を一度にまとめて伝えると、回答が返ってきやすくなります。
回答をメールなどで残しておけば、同じ種類の発注を次に行うときの判断の根拠になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 社内の承認
- 規程の範囲で後回しにできることがある
- 取適法の対象取引
- 具体的記載事項をすべて記載した書面または電磁的記録を、直ちに交付する
- 電話で決めた内容も、間を置かずに書面やデータで渡す
- 対象外の取引
- メールで発注内容を送り、受け取った旨を返してもらう
- 数量や納期の聞き違いを後で照合できる
注文書・稟議書の保存:年数の確認と電子データの扱い
法人税法上の7年と10年の例外
納品と支払が済んでも、注文書と稟議の書類の扱いは終わりません。
何年保存するかは、どの制度の上で保存するかによって決まります。
法人税法上、注文書などの書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません1。
起算点は、書類を受け取った日や発注した日ではなく、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日です。
保存の終わりは、発注日ではなく事業年度で決まります。
欠損金が生じた事業年度など一定の場合は、保存期間が10年間になります(平成30年4月1日前に開始した事業年度は9年間)1。
どの年度が例外に当たるかは担当者の手元では判断しにくいため、廃棄の前に経理へ確かめておくと、必要な書類を早く捨ててしまうことを防げます。
稟議書の保存年限は、自社の文書管理規程に定めがあることがあります。
稟議書に見積書や注文書を添付してまとめて保管している場合は、規程の年限と書類ごとの保存期間の両方を見ておきます。
取適法の2年
取適法の対象取引では、これとは別に、委託事業者は給付の内容や製造委託等代金の額等を記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務を負います2。
求められているのは、取引の内容を記録として作成し、残しておくことです。
法人税法の7年と取適法の2年は、根拠となる制度も、保存するものも違います。
年数の短い方は長い方に含まれると考えたくなりますが、取適法で求められるのは給付の内容や代金の額などを記載した記録の作成です。
税務のために書類を保存しているだけで足りるかは、別に確かめる必要があります。
自社の取引が取適法の対象なら、両方の制度で求められる記録をそれぞれ満たしているかを、経理と法務の双方に確かめておくと確実です。
電子で受け渡したときの確認先
見積書をPDFでメール受信し、注文書もPDFで送った場合、その保存には別の決まりがあります。
国税庁は、電子データでの保存は電子帳簿保存法で別に定められているとしています1。
紙で受け渡した書類と同じ扱いでよいとは限りません。
電子で受け渡した書類の保存方法や、紙に出力して保存してよいかは、電子帳簿保存法の要件によって判断が分かれます。
国税庁の最新の資料を確かめるか、経理や顧問税理士に自社の受け渡し方法を伝えて確認します。
メール、取引先のシステム、自社のクラウドなど、書類がどこで受け渡されたかを一覧にしておくと、相談の場で答えが出やすくなります。
急ぎの発注でメールやチャットに残した了承の記録も、事後承認の根拠として稟議と一緒に保管しておきたいものです。
どこに何を保存したかを稟議書に書き添えておけば、数年後に問い合わせがあっても、発注の経緯を一続きでたどれます。
| 制度 | 対象 | 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 法人税法 | 法人の帳簿書類 | 注文書などの書類 | 確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間) |
| 取適法 | 取適法の対象取引 | 給付の内容や代金の額等を記載した書類または電磁的記録 | 2年間 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 物品等を受領した日(起算点)
- 受領日から60日以内で、できる限り短い期間内に支払期日を定める
- 支払が遅れると、未払金額に年率14.6%の遅延利息を支払う
自社規程に緊急・事後承認の定めがあるか、今回の取引が取適法の対象になるかは、担当者の手元の資料だけでは判断が分かれやすい点です。
見積の受領から承認、注文書の交付までの流れを自社の規程に当てはめ、どの段階で誰の確認が要るかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 進める順 | 承認を得てから注文書を出すのを基本にし、急ぐときは自社規程の緊急・事後承認の手順を使う |
| 急ぎの発注 | 電話や口頭だけで済ませず、取適法の対象取引なら発注内容の書面または電磁的記録を直ちに交付する |
| 稟議書 | 目的、取引先と選定理由、金額、予算、納期、支払条件を、注文書へ転記できる形で書く |
| 注文書 | 数量・金額・納期・支払条件を承認内容と一致させる。取適法の対象取引では支払期日を受領日から60日以内に定める |
| 承認ルート | 権限表に金額、取引の種類、継続か単発かを順に当てはめ、迷えば所管部署に聞く |
| 保存 | 法人税法上は7年間(欠損金が生じた事業年度などは10年間)、取適法の対象取引は取引記録を2年間。電子データは電子帳簿保存法を確かめる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 法人税法
- 確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存する
- 欠損金が生じた事業年度などは10年間になる
- 取適法の対象取引
- 給付の内容や代金の額等を記載した書類または電磁的記録を作成する
- 2年間保存する
- 両方を満たすための確認
- 税務のための保存だけで足りるかは別に確かめる
- 経理と法務の双方に確認する
保存年数は制度ごとに起算点や対象が違い、電子で受け渡した書類には別の決まりがあるため、書類が増えるほど整理が難しくなります。 書類の受け渡し方法と保存先を一覧にし、どの制度の確認が必要で、経理・法務・税理士のどこへ何を聞けばよいかを確かめられます。
よくある質問
稟議が下りる前に、取引先へ口頭で発注の内定を伝えてもよいですか。
内定を伝えてよいかどうか、伝えた内容が取引先との間でどんな効力を持つかは、伝え方や経緯によって変わるため、一般論では言い切れません。
伝える場合は、まだ社内の承認前であることと、正式な発注は注文書で行うことをはっきり伝え、その内容をメールなどで残しておくと、後で認識の違いを確かめられます。
規程に先行手配の定めがあるかを確かめ、判断に迷うときは法務に相談してください。
稟議書に注文書を添付すべきですか。注文書を稟議書の代わりにできますか。
添付するかどうかは自社の運用で決まります。
添付すれば、承認者が取引先へ出す書類そのものを見て判断できます。
稟議書は社内で支出を決める書類、注文書は取引先へ発注内容を示す書類で役割が違うため、規程で認められていない限り、注文書だけで稟議の代わりにするのは避けたほうが安全です。
承認額より注文額が増えたときは、稟議をやり直しますか。
扱いは自社の規程で決まります。
一定の範囲なら上長の了承で足りるとする定めもあれば、変更の稟議を求める定めもあります。
どちらの場合も、差が残ったまま注文書を出さず、社内の手続きを済ませてから注文書に反映させるのが基本です。
自社の取引が取適法の対象かどうかは、何で確認しますか。
取適法の対象かどうかは、取引の内容と、発注側・受注側それぞれの資本金や従業員数の基準で決まります。
基準は公正取引委員会の資料で確かめ、取引先の資本金などの情報と照らし合わせます。
判断に迷う取引は、法務担当や顧問弁護士に確認してください。
メールで受け取った見積書や注文書の電子データは、紙に出力して保存すれば足りますか。
電子データでの保存は電子帳簿保存法で別に定められています1。
紙に出力して保存してよいかは同法の要件によるため、国税庁の最新資料を確かめるか、経理や顧問税理士に、受け渡しの方法を伝えて確認してください。
事後承認にした場合、稟議書には何を書き残しますか。
通常の項目に加えて、承認を待てなかった理由、先行して了承した人と了承の日時・方法、取引先へ発注した日と交付した書類、発注した内容を書きます。
了承した内容と実際の発注内容に差があれば、その差と理由も書き添えます。