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注文書を出した後に発注を止めたい:契約成立の時点と費用負担、取適法の制限

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 契約は書面がなくても、相手が承諾した時点で成立する。請書が届いていなくても、返信や納期回答、着手の連絡で成立している可能性がある。
  • 請負なら完成前は損害を賠償して解除できるが、無償で止められるわけではない。売買など請負以外の取引には、この解除の定めは直接当てはまらない。
  • 取適法の対象取引では、相手に責任のない発注取消しや納期の延期は、受領拒否や不当な給付内容の変更になりうる。相手が負担した費用を全額負担して止めるのが基本線である。
  • 止めるときは進み具合ごとに確かめることが変わる。費用の合意を先に済ませ、止める範囲・精算額と根拠・既納品の扱いを合意書に残す。
  • 次回からは、発行前に相手の規模を記録に残る方法で確かめ、キャンセル時の費用の扱いと変更ルールを決めておく。

Close-up of a businessman reviewing documents at an office desk. Focus on hands and paperwork.
▽ 写真の出典元

注文書を出したあと止められるのか:契約が成立しているかを先に確かめる

取引先に注文書を送ったあとで、予算や仕様、納期の事情が変わることがあります。
発注を止めたくなったとき、最初の分かれ目は契約がもう成立しているかどうかです。
契約は書面がなくても、相手が承諾した時点で成立します1。
成立済みでも、請負なら完成前は損害を賠償して解除できます2。
ただし相手が取適法(旧下請法)の対象なら、相手に責任のない取消しは受領拒否や不当な給付内容の変更になりえます4。
その場合は、相手が負担した費用を全額負担して止めるのが基本線です5。

契約は申込みと承諾で成立する

発注を止めたいとき、最初に確かめるのは状況の段階です。
相手はまだ申込みを受け取っただけなのか、それともすでに契約が成立しているのかを見分けます。
民法は、契約は申込みに対して相手方が承諾したときに成立すると定めています。
また、法令に特別の定めがある場合を除いて、書面の作成などの方式は要らないとしています1。
注文書は発注側の意思を伝える書類ですが、書面があること自体は契約成立の条件ではありません。

この原則は、発注側にとって二つの方向に働きます。
一つは、注文書を送っただけで相手がまだ何も応じていなければ、契約は成立していないということです。
もう一つは、相手から正式な書面が返ってきていなくても、承諾にあたるやり取りがあれば契約は成立しうるということです。
前者なら、話はまだ解除や賠償の段階に進んでいません。
後者なら、成立後の止め方を考える必要があります。

成立前の段階だと分かった場合でも、止める連絡は早めに、記録の残る方法で出しておくのが無難です。
相手が引き受ける準備や材料の手配を始めていれば、そのぶん後のやり取りが複雑になるからです。
なお、特別法で書面などが求められる取引は、この一般原則とは別に扱われます1。

請書が未返送でも成立しうる場合

現場で迷いやすいのは、請書がまだ届いていない場面です。
請書とは、注文を引き受けたことを示すために受注側が出す書面です。
承諾にも書面などの方式は求められていないため1、請書が届いていないことだけを理由に、契約が成立していないとは言い切れません。

たとえば、注文書をメールで送った翌日に、相手の担当者から「納期どおり対応します」と返信があったとします。
請書は相手の社内で押印待ちのまま止まっている、という状況です。
この場合、返信の文面が注文内容を引き受ける意思と読めれば、承諾があったと見られる可能性があります。
一方で、「社内で確認のうえ改めて回答します」という返信なら、まだ引き受けたとは言いにくいでしょう。
どちらに当たるかは、やり取りの言葉や前後の経緯で決まるため、一律の線は引けません。

請書は、契約がいつ、どの内容で成立したかを示す証拠として役立つ書類だと考えると整理しやすくなります。
請書があれば成立の時点と内容がはっきりします。
ただし、請書がないからといって成立していないとは限りません。
また、相手が注文書と異なる納期や価格を書いて請書を返してきた場合は、どの内容で合意したのかが争点になりえます。
その場合は、注文書どおりの内容で話がまとまったと決めつけないことが大切です。

確認すべき事実の一覧

成立の有無は、社内の感覚ではなく、残っているやり取りから判断します。
手元で集めておきたいのは次の事実です。

  • 注文書を送った日時と方法(メール、受発注システム、郵送など)
  • 相手からの返信の有無と文面(請書、メール、チャット、電話の記録)
  • 納期・数量・価格について、相手が回答や修正を返してきたか
  • 相手が材料の手配、外注先への発注、作業の着手を伝えてきたか
  • 基本契約などに、個別の注文がいつ成立するかの定めがあるか

これらを時系列に並べると、承諾がいつあったのか、あるいはまだないのかの見通しが立ちます。
相手が着手を伝えてきている場合は、成立していると考えて、成立後の止め方を検討するほうが現実的です。

返信の文面で承諾の有無を見分ける例(模式図)
納期どおり対応するという返信、改めて回答するという返信、異なる条件の請書を、承諾の見え方で分けた図納期どおり対応するという返信、改めて回答するという返信、異なる条件の請書を、承諾の見え方で分けた図承諾と見られる可能性「納期どおり対応します」という返信請書は社内で押印待ちまだ引き受けたと言いにくい「社内で確認のうえ改めて回答します」という返信内容が食い違う場合注文書と異なる納期や価格を書いた請書どの内容で合意したかが争点になりうる

▼ 図の内容を文字で読む
  • 承諾と見られる可能性
    • 「納期どおり対応します」という返信
    • 請書は社内で押印待ち
  • まだ引き受けたと言いにくい
    • 「社内で確認のうえ改めて回答します」という返信
  • 内容が食い違う場合
    • 注文書と異なる納期や価格を書いた請書
    • どの内容で合意したかが争点になりうる

成立後に止めると何を負うのか:民法上の解除と損害賠償

請負は完成前なら損害賠償を条件に解除できる

契約が成立していても、発注側から止める方法がまったくないわけではありません。
民法は、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できると定めています2。
請負とは、相手が仕事の完成を約束し、発注側がその結果に対して代金を払う契約です。
特注品の製作や、指定した仕様での制作物の作成など、「完成させて引き渡す」ことを頼む発注は、この類型にあたる可能性があります。

この定めのポイントは二つあります。
一つは、解除できるのが「完成しない間」に限られることです。
仕事が完成した後は、この解除は使えません。
もう一つは、理由を問わず解除できる代わりに、相手に生じた損害の賠償が条件になっている点です。
止めることはできても、無償で止められるわけではありません。

注意したいのは、この定めが請負だけを対象にしていることです。
既製品を指定の数だけ買う注文のように、売買にあたる取引には直接当てはまりません2。
自社の発注がどちらにあたるかは、注文の中身が「仕事を完成させること」なのか「物を引き渡すこと」なのかで考えます。
ただ、特注品の製作のように両方の要素を持つ取引では、境界がはっきりしないこともあります。
売買など請負以外の取引を途中で止めるときは、契約の条項や相手との合意が中心になります。

履行しない側が負う損害賠償の枠組み

解除の手続を踏まずに「もう要らないので受け取らない」「代金は払わない」と、契約どおりの行動をとらない場合もあります。
この場合は、別の枠組みで責任を問われます。
民法は、債務者が債務の本旨に従った履行をしないとき、債権者は損害賠償を請求できると定めています3。
発注側が代金の支払いなど自分の側の義務を果たさなければ、相手から賠償を求められる立場になります。

この条文には例外もあり、不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるときは賠償を免れます3。
ただ、予算の削減や計画の変更は発注側の社内の事情です。
この例外に当たることを前提に交渉を組み立てるのは避けたほうがよいでしょう。

641条による解除と比べると、どちらも金銭の負担が生じうる点は同じですが、出発点が違います。
641条は、完成前の請負で発注側に認められた解除の方法です。
一方、何もしないまま履行を止めていると、契約は続いているのに義務を果たしていない状態になります。
この状態では、相手との関係もこじれやすくなります。
止めたいなら、黙って受け取りを先延ばしにせず、止める意思を伝えて精算の話に進むほうが、後で争点が増えにくくなります。

金額を決める前に整理する項目

賠償の範囲や金額は、事案ごとに決まります。
一般的な相場を当てはめて判断できるものではありません。
そのため、まずは相手に何が生じているかを具体的に把握することが先になります。

  • 相手がすでに使った費用(材料の購入、外注先への発注、作業にかけた工数など)
  • すでに完成している部分や、作りかけの部分があるか、その状態
  • 手配した材料や外注を、相手がキャンセルしたり別の仕事に回したりできるか
  • 相手が示す請求の内訳と、その根拠になる資料(見積書、発注書、作業記録など)

これらは金額を決める道具というより、相手の請求と自社の見立てを同じ項目で突き合わせるための枠です。
項目ごとに資料をそろえて話すと、総額だけで交渉するよりも、どこで認識が食い違っているのかが見えやすくなります。
取適法の対象になる取引では、相手が負担した費用をどこまで持つかについて、民法とは別の考え方がかかります。
そのため、この整理は取適法の検討でもそのまま使えます。

見る点 641条による解除 契約どおりに履行しない場合
対象 請負で仕事の完成前 契約の種類を問わない
発注側の行為 解除の意思を伝える 支払いなど自分の義務を果たさない
負うもの 相手の損害の賠償 債務不履行による損害賠償
注意点 完成後は使えない 責めに帰することができない事由なら免れるが社内事情では期待しにくい
損害賠償を条件にした解除が使える場面(模式図)
請負の完成前、売買など請負以外、完成後の三つに分けて、民法上の解除が使えるかを示した図請負の完成前、売買など請負以外、完成後の三つに分けて、民法上の解除が使えるかを示した図請負で完成前損害を賠償して解除できる理由は問われないが無償では止められない売買など請負以外この解除の定めは直接当てはまらない契約の条項や相手との合意が中心仕事の完成後この解除は使えない

▼ 図の内容を文字で読む
  • 請負で完成前
    • 損害を賠償して解除できる
    • 理由は問われないが無償では止められない
  • 売買など請負以外
    • この解除の定めは直接当てはまらない
    • 契約の条項や相手との合意が中心
  • 仕事の完成後
    • この解除は使えない

基本契約や約款に取消しの定めがある場合とない場合の違い

先に確認する条項

取引先と基本契約を結んでいる場合や、注文書の裏面に約款を載せている場合は、民法の原則より先に、その書面の内容を確かめます。
当事者が合意した条項があれば、まずはそれが話し合いの出発点になるからです。
見ておきたいのは次の点です。

  • 個別の注文を解除・キャンセルできるかの定め
  • キャンセル料や精算の方法の定め
  • 納期や仕様を変更するときの通知の期限や方法
  • 基本契約、個別の注文書、裏面の約款の内容が食い違うとき、どれを優先するかの定め

四つ目の優先順位は、書面が複数あるときに結論を左右します。
たとえば、基本契約に「個別契約の解除には協議を要する」とあり、注文書の裏面には別の書き方がされているとします。
この場合、どちらに従うかによって、通知だけで止められるのか、協議が必要なのかが変わります。

条項があっても、それで話がすべて決まるとは限りません。
取適法の対象になる取引では、別の物差しもかかります。
相手に責任がないのに取り消し、相手が負担した費用を持たない場合、その取消しが禁止された行為にあたらないかが問われます。
契約条項に従ったかどうかと、取適法上問題がないかどうかは、分けて考えておくのが安全です。

定めがない場合の基準線

基本契約も約款もない場合や、取消しについて何も書かれていない場合は、民法の原則が基準線になります。
請負であれば、仕事が完成する前は損害を賠償して解除できます2。
売買など請負以外の取引では、この解除の定めが直接当てはまりません。
そのため、相手との合意によって契約を終わらせる方向で話を進めることになります。

定めがないことは、自由に止められることを意味しません。
むしろ、精算の方法が事前に決まっていないぶん、相手が負担した費用をどう数えるかを一から話し合う必要があります。
前の節で挙げた項目に沿って相手の費用を確かめ、合意した内容を書面に残す流れは、定めがある場合よりも重要になります。

書面の確認から民法の基準線までの順番
書面の優先順位、解除の定め、精算と変更通知の定め、定めがない場合の民法、取適法の確認を上から順に進む図1基本契約・注文書・約款の優先順位を確かめる2個別注文の解除・キャンセルの定めを読む3キャンセル料・精算・変更通知の定めを読む4定めがなければ民法請負は完成前に損害賠償で解除、それ以外は合意5取適法の対象かを別に確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 基本契約・注文書・約款の優先順位を確かめる
  2. 個別注文の解除・キャンセルの定めを読む
  3. キャンセル料・精算・変更通知の定めを読む
  4. 定めがなければ民法(請負は完成前に損害賠償で解除、それ以外は合意)
  5. 取適法の対象かを別に確かめる

取適法の対象になる取引か:発注取消しが受領拒否・不当な給付内容の変更になる場合

下請法から取適法への変更点

ここまでは民法の話でした。
相手が中小の事業者で、自社が内容を指定して作業や製作を任せている場合は、もう一つ確認すべき法律があります。
旧下請法は、「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(通称:中小受託取引適正化法、取適法)に改称・改正され、2026年に施行されました6。

名前だけでなく、使われる言葉も変わっています。
発注する側は「委託事業者」、受注する側は「中小受託事業者」と呼ばれます。
また、対象かどうかの判断には、資本金の規模に加えて従業員数の基準も使われます6。
以前は資本金だけを見て対象外と判断していた取引先でも、従業員数の面から対象になる可能性があります。
過去の判断をそのまま使い回さないことが大切です。

取消しの扱いを詳しく示しているのは、公正取引委員会の運用基準と、よくある質問への回答です4。
運用基準は改正が重ねられています。
実際に判断するときは、公正取引委員会のサイトで現行の版を参照してください。

対象になるかの判断(取引内容と従業員数・資本金)

取適法の対象は、取引の内容と事業者の規模の組み合わせで決まります6。
取引の内容は、製造、修理、情報成果物の作成、役務の提供、特定運送といった委託です。
市販品をそのまま買う取引なのか、自社が仕様や内容を決めて製作や作業を任せる取引なのかで、入り口が分かれます。

規模の基準は、自社(委託事業者)と相手(中小受託事業者)の両方について、資本金または従業員数で見ます6。
具体的な基準の値は、公正取引委員会の概要ページにある表を見て、自社の取引の内容に当てはめて確認してください。

従業員数の数え方には、迷いやすい点がいくつかあります。
公正取引委員会の回答では、「常時使用する従業員」は事業者単位で判断するとされています。
グループ会社の従業員は含めず、パートやアルバイトは含めます5。
また、判断は製造委託などをした時点の従業員数によります5。
取り消そうとしている今の人数ではなく、発注した時点の人数で見るという点は、実務で特に効いてきます。

受領拒否になる取消し・ならない場合

取適法の対象となる取引で、発注側の都合による取消しが問題になる理由の一つが「受領拒否」です。
運用基準では、受領拒否は、中小受託事業者の責めに帰すべき理由がないのに給付の受領を拒むことと説明されています4。
ここでいう給付とは、委託した製品や成果物など、相手が納めるものを指します。

責めに帰すべき理由、つまり相手の側に責任があると認められる場合は二つに限られます。
給付の内容が明示された委託内容と異なる場合などと、給付が明示された納期に行われない場合です4。
そして、納期を延ばしたり発注を取り消したりして納期内に受け取らない場合も、原則として受領拒否に含まれます4。
違反の例として、生産計画や設計の変更、取引先の都合による受領拒否が挙げられています4。

これを自社の状況に当てはめてみます。
予算が付かなくなった、顧客の案件が流れた、仕様を見直すことになった、といった理由は、いずれも相手の側の責任ではありません。
取消しなのだから受け取らないのは当然、と考えたくなるかもしれません。
しかし対象取引では、その取消しが受領拒否として扱われうるという前提で動く必要があります。
納期を先送りするだけでも、納期内に受け取らなければ同じ問題になりうる点にも注意が必要です。

役務提供委託の扱い

作業や運送を任せる取引では、事情が少し違います。
役務提供委託と特定運送委託には、受領拒否の規定は適用されません5。
受け取る「物」がない取引なので、受領を拒むという形がそもそも生じにくい、と考えると分かりやすいでしょう。

ただし、だから自由に打ち切れるわけではありません。
受託側が要した費用を負担せずに契約を打ち切ると、不当な給付内容の変更にあたるとされています5。
不当な給付内容の変更とは、相手に責任がないのに給付の内容を変えさせたり、受領後にやり直させたりすることです。
それに伴う費用を委託事業者が負担しない場合は、相手の利益を不当に害するおそれがあると整理されています4。
違反の例には、販売不振や取引先の都合による発注取消しも挙げられています4。

製造などの委託でも、同じ考え方がかかります。
受領の前に内容を変えたり発注を取り消したりする場合も、相手に責任がなく、相手の利益を不当に害すれば問題になります5。
つまり、受領拒否にあたるかどうかとは別に、費用の負担という面からも取消しが問われる構造です。

費用を全額負担して止める考え方

では、対象取引で発注を止めたいときはどうすればよいのでしょうか。
公正取引委員会の回答では、取消しによって受託側が負担した費用を委託事業者が全額負担すれば、不当な給付内容の変更にはあたらないとされています5。
また、生産の打切りや発注の取消しでは、すでに完成した品物の受領と、発生した費用の全額負担が求められます5。

民法と重ねてみると、違いがはっきりします。
民法では、請負なら完成前に損害を賠償して解除できます2。
取適法の対象取引では、それに加えて、相手が負担した費用を持たない取消しそのものが禁止された行為になりえます。
止めること自体は可能でも、費用を全額負担するという条件を満たさなければ、法律違反の問題を抱えることになります。

ただし、民法上の賠償額と、取適法の考え方で負担すべき費用の額が同じになるとは限りません。
両者は別の仕組みで、金額が自動的に連動するものではないからです。
費用の算定方法は個別に協議することになります5。
どの費用を含めるかは、前の節で挙げた項目に沿って相手と確かめていきます。
また、取引の内容や規模から取適法の対象外と分かった取引には、これらの規制は及びません。
その場合は、民法と契約条項に沿って判断します。

取引の種類 受領拒否の規定 費用を持たない取消し・打切り
製造委託など(役務提供・特定運送以外) 適用される(取消しで納期内に受け取らない場合も原則含む) 不当な給付内容の変更になりうる
役務提供委託・特定運送委託 適用されない 不当な給付内容の変更にあたる
取適法の対象かを確かめる順番
取引の内容が委託にあたるか、資本金または従業員数の基準に当てはまるかを確かめ、対象なら相手の費用を全額負担して止める流れの図1取引の内容は委託か製造・修理・情報成果物の作成・役務の提供・特定運送2自社と相手の資本金または従業員数委託した時点・事業者単位3対象なら相手が負担した費用を全額負担して止める

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引の内容は委託か(製造・修理・情報成果物の作成・役務の提供・特定運送)
  2. 自社と相手の資本金または従業員数(委託した時点・事業者単位)
  3. 対象なら相手が負担した費用を全額負担して止める

未着手・着手済み・納品済み:取引先とどう合意して止めるか

未着手の場合

ここからは、相手の作業の進み具合ごとに、止め方を具体的に考えます。
相手がまだ作業に入っていない段階は、負担を小さくできる余地がいちばん大きい段階です。
この段階で大切なのは、止める連絡を一日でも早く出すことです。

未着手でも、相手に費用がまったく生じていないとは限りません。
材料を仕入先に発注済みだったり、外注先の枠を押さえていたり、作業の段取りに人を割いていたりすることがあります。
連絡の際は、止めたいという結論と合わせて、すでに生じている費用や手配があれば教えてほしいと伝えましょう。
そうすると、相手も内訳を出しやすくなります。
取適法の対象取引であれば、ここで出てきた費用を全額負担するのが基本です5。

契約がまだ成立していない段階なら、この連絡は申込みを取り下げる意思を伝えるものになります。
成立しているかどうか微妙な場合も、口頭だけで済ませず、メールなど記録の残る方法で伝えておきましょう。
後で「いつ止めると言ったか」をめぐって争いにくくなります。

着手済みの場合

作業が始まっている場合は、止める範囲と精算の範囲を一緒に決める必要があります。
たとえば、特注部品の製作を頼み、相手がすでに材料を加工し始めているとします。
このとき確かめるのは、どこまで加工が進んでいるか、完成している分があるか、残った材料を相手が別の仕事に使えるか、といった点です。

取適法の対象取引では、生産の打切りや発注の取消しの際に、すでに完成した品物の受領と、発生した費用の全額負担が求められます5。
完成済みの分を受け取らずに取消しだけを通すと、受領拒否の問題にもなりえます4。
請負であれば、民法上も、完成前の解除には損害の賠償が条件になります2。

手順としては、先に相手と費用の負担について合意し、そのうえで取消しを確定させるほうが安全です。
「まず取り消すと通知し、費用は後で相談」という順番にすると、相手は費用が支払われるか分からないまま作業を止めることになります。
その結果、話がこじれやすくなります。

納品済みの場合

品物や成果物をすでに受け取った後は、発注を止めるというより、受け取ったものをどう扱うかの問題になります。
この段階で問題になりやすいのは、自社の都合で作り直しを求めたり、内容を変えさせたりすることです。
運用基準は、相手に責任がないのに受領後にやり直させることを、不当な給付内容の変更としています。
その費用を委託事業者が負担しない場合は、相手の利益を不当に害するおそれがあるとしています4。

反対に、納められたものが明示した委託内容と違う場合は、相手の側に責任がある場面として扱われます4。
ただ、その判断は、発注時に内容がどれだけ具体的に示されていたかに左右されます。
「思っていたものと違う」という社内の感想と、「注文書に書いた仕様と違う」という事実は、分けて確かめてください。
自社の都合で受け取ったものを返したり作り直させたりする前に、取適法上の問題にあたらないかを確認しておく必要があります。

合意書に入れる項目

どの段階で止める場合も、話がまとまったら合意の内容を書面に残します。
入れておきたい項目は次のとおりです。

  • 止める範囲(どの注文書の、どの品目・作業を止めるのか)
  • 精算額と、その算定の根拠(費用の内訳や根拠資料)
  • 完成品・作りかけの品・材料の扱い(受け取るのか、相手が処分するのか)
  • 支払いの時期と方法
  • この精算をもって、互いにこれ以上の請求をしないこと

最後の項目は、精算後に追加の請求が出てくるのを防ぐためのものです。
こうした合意と記録は、相手が取適法の対象外であっても、後から「言った・言わない」の争いを減らす役に立ちます。
ここに挙げた項目は一つの整理です。
自社の契約内容に合わせて、法務担当者や弁護士と確認しながら整えるとよいでしょう。

進み具合ごとに確かめることと負担すること
未着手、着手済み、納品済みの三つの段階ごとに、確かめること、負担すること、進め方を並べた図未着手、着手済み、納品済みの三つの段階ごとに、確かめること、負担すること、進め方を並べた図未着手止める連絡を早く記録の残る方法で出す材料手配などすでに生じた費用を聞く着手済み進み具合と完成済みの分を確かめる既完成品の受領と費用の全額負担費用の合意の後に取消しを確定する納品済み委託内容と違うかを事実で確かめる自社都合のやり直しは費用負担が前提

▼ 図の内容を文字で読む
  • 未着手
    • 止める連絡を早く記録の残る方法で出す
    • 材料手配などすでに生じた費用を聞く
  • 着手済み
    • 進み具合と完成済みの分を確かめる
    • 既完成品の受領と費用の全額負担
    • 費用の合意の後に取消しを確定する
  • 納品済み
    • 委託内容と違うかを事実で確かめる
    • 自社都合のやり直しは費用負担が前提

次回から同じことを避ける:注文書に書くこと、発行前の確認

発行前の確認事項

取消しのたびに、相手の規模を調べ直し、契約の条項を読み返し、費用の内訳を一から集めるのは手間がかかります。
次回からは、注文書を出す前の段階で、取消しのときに必要になる情報をそろえておくと、止めるかどうかの判断が速くなります。

  • 取適法の対象になるか:取引の内容が委託にあたるか、自社と相手の資本金・従業員数がどうか
  • キャンセルしたときの費用の扱いを決めてあるか
  • 納期や仕様を変えるときのルール(連絡の方法と期限)を決めてあるか

相手の従業員数について、公正取引委員会は、確認する義務はないものの、基準に近い相手については確認することが望ましいとしています。
確認の方法も、書面やメールなど記録に残る方法が望ましいとされています5。
判断は委託した時点の人数で行うため5、発注のときに確認した記録を残しておけば、取消しを考える段階で改めて調べ直す必要がなくなります。
取引先の登録情報を更新するときや、新しい案件の発注を承認するときに、この確認を一緒に行う形にしておくと、確認漏れに気づきやすくなります。

注文書に書く内容

注文書や基本契約に、取消しのときに何を払うのかを書いておく方法があります。
公正取引委員会の回答でも、役務提供委託について、キャンセル時の支払いの有無や金額をあらかじめ定めておく方法が挙げられています5。
事前に決めておけば、取消しのたびに一から交渉する場面が減り、相手にとっても見通しが立ちます。

ただし、定めた内容が、相手が実際に負担した費用を大きく下回るような場合にまで、取消しが問題にならないとは言い切れません。
取適法の対象取引では、相手が負担した費用を全額持つかどうかが判断の軸になっているからです5。
キャンセル時の定めは、費用の考え方をそろえるための道具と捉えましょう。
実際の費用との差が大きいときは、協議で調整する余地を残しておくのが現実的です。

あわせて、契約がいつ成立するのかをはっきりさせておく工夫も役立ちます。
たとえば、請書の返送や受発注システム上での承諾をもって受注とする、と書いておく方法です。
そうすれば、最初の節で見た「成立したのかどうか」の迷いが小さくなります。
納期や仕様の変更については、誰に、いつまでに、どの方法で連絡するかを決めておきましょう。
変更が取消しに近づいたときに、相手の費用がどこから発生したかをたどりやすくなります。

発注前にそろえておくこと(模式図)
発行前の確認、注文書や基本契約に書く内容、納期や仕様の変更ルールの三つに分けて示した図発行前の確認、注文書や基本契約に書く内容、納期や仕様の変更ルールの三つに分けて示した図発行前の確認取適法の対象になるか相手の従業員数を記録に残る方法で確認する注文書や基本契約に書くキャンセル時の支払いの有無や金額契約が成立する時点(請書の返送など)変更のルール誰に、いつまでに、どの方法で連絡するか

▼ 図の内容を文字で読む
  • 発行前の確認
    • 取適法の対象になるか
    • 相手の従業員数を記録に残る方法で確認する
  • 注文書や基本契約に書く
    • キャンセル時の支払いの有無や金額
    • 契約が成立する時点(請書の返送など)
  • 変更のルール
    • 誰に、いつまでに、どの方法で連絡するか

契約が成立しているか、請負にあたるか、取適法の対象になるかは、手元の注文書ややり取りと取引の実態を合わせて見ないと判断が分かれやすい部分です。

相談では、注文書・基本契約・相手とのやり取りを並べて、成立の有無と取適法の対象になるかの見立て、止めるときに確かめるべき費用の項目を整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
契約の成立 書面の有無ではなく、相手が承諾したか(返信・納期回答・着手の連絡も含めて確かめる)
民法上の止め方 請負は完成前なら損害を賠償して解除できる。売買などは条項や合意が中心
契約条項 基本契約・注文書・約款の優先順位を先に確かめ、定めがなければ民法が基準線
取適法の対象 取引の内容と、自社・相手の資本金または従業員数(委託した時点)で判断
対象取引での取消し 相手に責任がなければ受領拒否や不当な給付内容の変更になりうる。相手の費用を全額負担して止める
進み具合 未着手は早く連絡、着手済みは既完成品と費用の扱いを合意、納品済みはやり直しの前に確認
次回の発注 相手の規模を記録に残る方法で確認し、キャンセル時の扱いと変更ルールを決めておく

次回からの注文書の書き方や発行前の確認の流れは、自社の取引の種類や取引先の構成によって、必要な項目が変わります。 相談では、自社の注文書や基本契約の記載を見ながら、キャンセル時の扱いや変更ルールをどこに書くか、発行前に何をどう記録するかを整理できます。

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よくある質問

請書をまだ受け取っていない注文書は、取り消しても責任は生じないのか

責任が生じないとは限りません。
契約は書面がなくても、申込みに相手が承諾したときに成立します1。
相手からメールで引き受ける旨の返信があった、納期の回答があった、着手の連絡があった、といった事情があれば、承諾があったと見られる可能性があります。
請書がないことだけで判断せず、やり取りの記録を時系列で確かめてください。

口頭で発注しただけの場合も、取適法の受領拒否の対象になるのか

民法上は、口頭でも契約は成立しえます1。
取適法の対象かどうかは、取引の内容と事業者の規模で決まります6。
口頭で頼んだからといって受領拒否の扱いが変わると考えるのは避けましょう。
書面で発注した場合と同じように、相手が負担した費用を全額持つ前提で話を進めるほうが安全です。

相手が個人事業主の場合は、止め方や必要な手続が変わるのか

取適法の対象かどうかは、取引の内容と規模の基準で判断します6。
加えて、個人で事業を営む相手への委託には、取適法とは別の法律のルールがかかる場合があり、止め方に関わる定めが別にある可能性があります。
相手が個人事業主の場合は、公正取引委員会などの案内で、どの法律が当てはまるかを確かめてから止め方を決めてください。

取引先の従業員数や資本金が分からないとき、取適法の対象かをどう確認するのか

従業員数は事業者単位で判断し、グループ会社の従業員は含めず、パートやアルバイトは含めます。
判断に使うのは、製造委託などをした時点の人数です5。
相手の従業員数を確認する義務はありませんが、基準に近い相手については、書面やメールなど記録に残る方法で確認することが望ましいとされています5。
基準の値そのものは、公正取引委員会の概要ページの表で確かめてください6。

受領後に不良が見つかった場合、やり直しや返品の費用はどちらが負担するのか

納められたものが明示した委託内容と異なる場合は、相手の側に責任がある場面として扱われます4。
一方で、相手に責任がないのに受領後にやり直させ、その費用を発注側が負担しない場合は、不当な給付内容の変更の問題になります4。
分かれ目は、注文書などで示した仕様と実際の納品物が違うかどうかです。
社内の期待との違いではなく、書面に示した内容と照らして判断してください。

基本契約に解約条項がある場合でも、取適法の規制は及ぶのか

取適法の対象取引では、条項に従ったことだけで問題がないとは考えないほうが安全です。
取消しが問題になるかどうかは、相手に責任があるか、相手が負担した費用を持ったかどうかで判断されます4。
キャンセル時の支払いをあらかじめ定めておく方法は示されていますが5、実際の費用との差が大きい場合は、協議で調整する余地を残しておくのが現実的です。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第522条(契約の成立と方式)」(現行法令)
  2. 2 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第641条(注文者による契約の解除)」(現行法令)
  3. 3 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第415条(債務不履行による損害賠償)」(現行法令)
  4. 4 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(令和7年全部改正・令和8年改正)
  5. 5 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
  6. 6 出典:公正取引委員会「取適法の概要」(2026年)

画像の出典元

  1. Close-up of a businessman reviewing documents at an office desk. Focus on hands and paperwork./Photo by Kampus Production on Pexels

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◆この記事について

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年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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