まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

電話受注から高齢の取引先に移ってもらう進め方|電話を残しながら段階的に切り替える判断基準

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 受注側の負担は通話より受けた後の手入力・確認連絡・変更対応に出やすく、最初は電話を残したまま聞き方と記録を揃えられる
  • 取引先が電話を選ぶ理由は、三つの質問で確認の安心感・操作の不安・慣習・相談できる関係に聞き分け、年齢だけで手段を決めない
  • 段階は注文内容の固定、定型注文書、補助者による入力、代行入力・同席の順に置き、どこから入るかは補助者・端末・注文頻度と会話の要否で決める
  • 併用期間は台帳を一つにし、入口ごとの件数・打ち直し・誤りと折り返しを数えて、進める相手と電話を残す相手を分ける
  • 全廃を目標にせず、電話へ戻す条件を先に決め、戻すときは一つ前の段階へ戻す

Businessman signing important documents at office desk.
▽ 写真の出典元

「電話をやめてほしい」と言い出せないとき、最初に変えるのは電話の外側

電話注文に慣れた取引先に「Web注文に変えてください」とは、なかなか言い出しにくいものです。
ただ、受注側の負担は通話そのものより、受けた後の手入力・確認連絡・変更対応に出やすい傾向があります。
そうであれば、最初の一歩は電話をやめてもらうことではありません。
電話を残したまま、注文内容を固定することから始められます。
そのうえで相手が電話を選ぶ理由を聞き取り、負担の小さい手段から順に勧めます。
最後に、移行を進める相手と電話を残す相手を、件数と誤りで分けていきます。

受注側の負担は『通話』より『受けた後の処理』に出やすい

たとえば、取引先の店主から「いつものを、今週は少し多めで」と電話が入ったとします。
通話そのものは短く終わっても、受けた担当者の仕事はそこから始まります。
メモを見ながら受注台帳や販売管理の画面へ打ち込み、「いつもの」が何を指すかを過去の注文で確かめます。
「少し多め」が何ケースなのかは、折り返して聞くことになります。
午後に「やっぱり一つ減らしてほしい」と電話が来れば、どの注文のどの行を直すのかを探すところから始まります。

食品の小売・卸売で受注を担当する人を対象にした2023年のインターネット調査があります。
FAX・Eメール・電話で注文を受ける業務の課題として、「注文書の手入力に手間がかかる」が60%で最も多く、「注文確認の連絡」が41.1%、「注文の変更対応」が40%と続きました1。
上位に並ぶのは、どれも電話を切った後の作業です。
この数字は複数回答で、回答者は90人です。
電話だけでなく、FAXやEメールでの受注も含みます。
業種は食品の小売・卸売に限られ、取引先が高齢かどうかも問われていません。
そのため割合を自社にそのまま当てはめるより、負担がどこに出やすいかの型として読むのが妥当です。

同じ調査では「オペレーションの属人化が発生している」も38.9%ありました1。
属人化とは、取引先ごとの「いつもの」や注文の癖を、特定の担当者しか分からない状態のことです。
電話の内容が担当者の頭の中やメモ帳にしか残らないと、その人が休んだ日に注文を正しく受けられません。
同じ調査で受注方法に電話を挙げた人は50%でした1。
電話が今も受注の主な入口の一つであることがうかがえます。

中小企業庁の情報サイトも、電話やFAXでの受発注には経理システムへの手入力が必要で、入力ミスや書類紛失のおそれがあると説明しています5。
こう整理すると、取引先に最初にお願いすることは「電話をやめてください」でなくてもよいと分かります。
受注側が変えたいのは電話の外側です。
つまり、受けた内容をどう記録し、どう確かめ、どう直すかです。
何を・いくつ・いつ・どこへ届けるかを毎回同じ順で聞き、同じ書式で一度だけ記録できれば、電話を残したままでも手入力のやり直しや折り返しを減らす余地があります。

一斉切替を避けたい理由

では、受注側の負担を一気に減らすために、電話注文を終了してWeb注文に一本化するのはどうでしょうか。
先ほどの調査では、FAX・電話で受注している担当者80人に、廃止した場合の影響も聞いています。
結果は「取引に支障が出ると想定する」が58.8%、「いいえ」が25%、「わからない」が16.2%でした1。
これは受注担当者の想定であり、取引先本人が電話を好むと答えた割合ではありません。
支障の中身も記事には示されていません。
それでも、電話を受けている側の半数を超える人が、やめれば取引に響くと見ています。
一斉切替をためらう感覚は、読者だけのものではないということです。

もう一つの理由は、受注側だけが仕組みを整えても効果が出にくいことです。
企業間でデータをやり取りするEDI(電子データ交換)について、中小企業庁の情報サイトは「1社だけが導入しても効果を得ることはできません」としています5。
あわせて、取引先の状況を考えて導入を判断する必要があると述べています5。
EDIに限らず、Web注文の画面を用意しても取引先が使わなければ、電話とFAXは残ります。
受付の入口が一つ増えるだけで、どこから来た注文かを照合する手間も増えます。
だからこそ、相手の環境と理由を見ながら、受けた後の処理を整えるところから順に進めるほうが、受注側の負担を減らせる範囲が見えやすくなります。

高齢の取引先が電話を選ぶ理由を、説得の前に3つの聞き方で見分ける

理由の4分類:確認の安心感・操作の不安・慣習・相談できる関係

前の節で、変える対象は電話を受けた後の処理だと整理しました。
次に知りたいのは、取引先がなぜ電話で注文したいのかです。
理由によって、勧めるべき最初の一歩が変わるからです。
電話を続けたい理由は、次の四つに分けて考えると聞き取りやすくなります。
ただしこれは、取引先との会話で確かめるための仮の分け方です。
どの理由が多いかを示すものではありません。

・確認の安心感:声で数量を伝え、復唱を聞くことで、注文が確かに届いたと分かる
・操作の不安:画面の操作が分からない、押し間違えたら取り消せるかが心配
・慣習:長年この形で困っておらず、変える理由を感じていない
・相談できる関係:在庫や入荷の見込み、代わりの品を聞きながら注文を決めたい

四つのうち、確認の安心感と操作の不安は、手段を変えても補える可能性があります。
復唱の代わりに受付内容を紙で返す、操作を一度一緒にやる、といった形です。
慣習は、相手にとっての得が見えれば動くこともあります。
ただ、受注側の都合だけを伝えても動きにくい理由です。
相談できる関係は、電話が注文の手段であると同時に、情報を得る場になっている状態です。
ここを無理に置き換えると、取引先にとっては大事なものを失う提案に聞こえます。

普段の注文で聞ける3つの質問

理由は、改まって「なぜ電話なのですか」と尋ねても答えにくいものです。
普段の注文の電話や納品時の会話の中で、次の三つを聞くと見分けやすくなります。

1.「いつものご注文で、電話で確かめておきたいのはどこですか」
2.「御社で注文を決めたり書いたりされるのは、どなたですか」
3.「ご注文は毎回ほぼ同じですか、それとも在庫や入荷を聞いてから決めますか」

一つ目の質問で「数量を言い間違えていないか心配」「届く日を確かめたい」と返ってくれば、確認の安心感が理由の中心です。
この場合は、受付内容を書面で返すなど、確認の手段を残したまま入口を変える道があります。
二つ目の質問で、社内の事務担当や家族の手伝いがいると分かれば、入力をその人に頼めます。
そうすれば、本人の操作の不安は小さくできます。
逆に本人が一人で決めて一人で注文しているなら、操作の不安と慣習の両方を考えておく必要があります。

三つ目の質問で「ほぼ同じ」と答える相手は、注文の中身を書式に落としやすい相手です。
「話を聞いて決める」と答える相手にとっては、相談できる関係そのものが電話の価値になっています。
その場合は注文方法の変更を急ぐより、相談は電話で続け、決まった内容の記録だけを整えるほうが関係を損ねにくいでしょう。
三つの答えは、後で取引先ごとに入る段階を決めるときにも使います。

高齢者向けの公的調査をどこまで当てはめてよいか

高齢の方がデジタルの手段を使わない理由については、公的な調査があります。
総務省の情報通信白書によると、2024年の個人のインターネット利用率は85.6%です3。
13〜69歳の各年齢階層では9割を超える一方、70歳以降は年齢が上がるほど低くなります3。
また、内閣府が2020年に70歳以上を対象に行った世論調査を紹介した日本総合研究所の記事があります。
そこではスマートフォンを使わない理由として、「生活に必要がないと思っている」「どのように使えばよいかわからない」「必要があれば家族に任せればよいと思っている」が挙がっています4。

これらは個人の生活での利用についての調査で、事業者として注文を出す人の理由を調べたものではありません。
仕事ではFAXやパソコンを長く使ってきた方もいれば、年齢に関係なく電話を好む方もいます。
年齢だけで手段を決めず、先の三つの質問で確かめる材料として使うのが適切です。
たとえば「必要がない」は慣習に、「使い方がわからない」は操作の不安に重ねて考えられます。
「家族に任せればよい」は、補助者の有無を尋ねる二つ目の質問につながります。

同じ白書では、インターネットの利用者の約7割が何らかの不安を感じているともされています3。
これは全年齢の利用者についての数字です。
新しい手段への不安は高齢の方に限ったものではない、と考えることもできます。
そうすれば、お願いの言葉も「慣れていない方のために」ではなく、「誰でも間違えにくくするために」という形にできます。

理由の型 聞き分けの手がかり 考えられる最初の一歩
確認の安心感 数量や納品日を確かめたいと答える 受付内容を紙で返すなど確認の手段を残す
操作の不安 画面の操作や取り消し方を気にする 補助者への依頼や同席を挟む
慣習 困っていないので変える理由がないと答える 電話のまま聞き方と記録を揃える
相談できる関係 話を聞いてから注文を決めると答える 電話を残し決まった内容の記録だけを整える
電話注文を受けた後に続く作業(本文の例にもとづく模式図)
電話を受けた後に入力、過去の注文の確認、折り返し、変更対応が続く流れ1電話を受ける「いつものを、今週は少し多めで」と注文が入る2台帳・販売管理へ手入力するメモを見ながら打ち込む3「いつもの」を過去の注文で確かめる何を指すかを調べる4折り返して数量を聞く「少し多め」が何ケースかを確かめる5変更の電話を受けて直すどの注文のどの行かを探して修正する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 電話を受ける:「いつものを、今週は少し多めで」と注文が入る
  2. 台帳・販売管理へ手入力する:メモを見ながら打ち込む
  3. 「いつもの」を過去の注文で確かめる:何を指すかを調べる
  4. 折り返して数量を聞く:「少し多め」が何ケースかを確かめる
  5. 変更の電話を受けて直す:どの注文のどの行かを探して修正する

電話を残したまま進める4段階:注文内容を固定する→紙→補助者→代行・同席

第0段階:電話のまま復唱と定型メモで固定する

理由が見えてきたら、相手の負担が小さい順に段階を置きます。
ここで示す四つの段階は、二つの点から組み立てた進め方の提案です。
一つは受注側の負担が受けた後の処理に出やすいこと、もう一つは取引先の環境を見ずに一斉導入しても効果が出にくいことです。
実測で効果が確かめられた標準の手順ではありません。
それでも順番を持っておくと、取引先ごとに「いまどこまで来ていて、次に何を頼むか」を決めやすくなります。

第0段階は、取引先に何もお願いしない段階です。
電話はそのまま受け、受注側が聞き方と記録の仕方を揃えます。
品名・規格・数量・納品日・届け先など、自社の注文に必要な項目を決まった順に聞きます。
最後に「〇〇を3ケース、木曜日の納品でよろしいですね」と読み上げます。
メモ用紙も同じ項目順の書式にしておけば、受けた人と入力する人が違っても読み違えにくくなります。

この段階で減らせるのは、聞き漏らしによる折り返しの連絡と、担当者しか読めないメモです。
手入力そのものは残ります。
それでも、取引先から見れば何も変わらないので、お願いを切り出す必要がありません。
そして、ここで決めた項目の順番が、次の段階で渡す注文書の形になります。

第1段階:FAX・定型注文書

第1段階では、第0段階で使っている聞き取りの項目を、そのまま紙の注文書にします。
取引先がいつも頼む品をあらかじめ印字し、数量と納品日だけを書けばよい形にします。
そうすれば、電話で言っていたことを順に書くだけで済みます。
FAXがある相手ならFAXで受け取れます。
FAXがない相手でも、納品時に手渡しで受け取る形が考えられます。

受注側にとっての変化は、聞き間違いが減り、注文の内容が紙で残ることです。
一方で、中小企業庁の情報サイトが指摘するように、FAXでも手入力は残ります5。
第1段階は手入力を減らす段階ではなく、注文の内容を相手と同じ形で持つ段階だと考えておくと、期待と結果がずれません。
確認の安心感が理由の相手には、届いた注文書に受付印を押して返すなど、確認の手段を残しておくと安心してもらいやすくなります。

第2段階:補助者がいる相手からWeb・LINE

第2段階で、Web注文やLINEなどの画面から入力してもらう手段へ進みます。
最初に頼むのは、社内の事務担当や家族など、入力を手伝える人がいる取引先です。
注文を決めるのは本人、入力するのは補助者という分担にすれば、本人の操作の不安を直接解く必要がありません。
入力画面の項目を第1段階の注文書と同じ順にしておくと、紙で書いていた内容を写すだけになります。

受注側で手入力が減るかどうかは、受け取った注文がどこへ入るかで決まります。
Webで受けた注文を結局は販売管理の画面へ打ち直しているなら、入力の手間は形を変えて残ります。
LINEなどのメッセージで受ける場合も、文章で届いた注文を読み取って入力する作業は電話のときと似ています。
この段階に進む前に、受けた注文を自社のどの画面へ何回写しているかを書き出しておきましょう。
どの手段なら転記が実際に減るのかを見極めやすくなります。

第3段階:代行入力・同席

第3段階は、代行入力と同席です。
代行入力とは、取引先からの電話を受けた担当者が相手の代わりにWeb注文の画面へ入力し、その内容を相手にも見てもらう形です。
同席は、訪問時や電話をつないだまま、取引先が自分の端末で初めての注文を入力するのを横で支える形です。
どちらも、新しい手段に慣れてもらうための橋渡しの段階です。

番号は第3としましたが、いつも最後に来るわけではありません。
補助者がいない取引先に新しい手段を試してもらうなら、第2段階より先に同席を一度挟むほうが自然な場合もあります。
どの段階から入るかは、相手の状況によって変わります。

電話を続けたい理由の分け方(聞き取りのための仮の分類・模式図)
4つの理由を補いやすさで3つに分けた図4つの理由を補いやすさで3つに分けた図手段を変えても補える可能性確認の安心感受付内容を紙で返す操作の不安操作を一度一緒にやる相手の得が見えれば動くこともある慣習受注側の都合だけでは動きにくい無理に置き換えない相談できる関係電話が情報を得る場にもなっている

▼ 図の内容を文字で読む
  • 手段を変えても補える可能性
    • 確認の安心感:受付内容を紙で返す
    • 操作の不安:操作を一度一緒にやる
  • 相手の得が見えれば動くこともある
    • 慣習:受注側の都合だけでは動きにくい
  • 無理に置き換えない
    • 相談できる関係:電話が情報を得る場にもなっている
電話を残したまま進める4段階(提案の模式図)
電話のまま固定から定型注文書、補助者による入力、代行入力・同席へ進む流れ1第0段階 電話のまま固定決まった順に聞いて復唱し、同じ書式のメモに残す2第1段階 FAX・定型注文書いつもの品を印字し、数量と納品日だけ書いてもらう3第2段階 補助者からWeb・LINE本人が決め、補助者が入力する4第3段階 代行入力・同席受注側が代わりに入力するか、初回を一緒に入力する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 第0段階 電話のまま固定:決まった順に聞いて復唱し、同じ書式のメモに残す
  2. 第1段階 FAX・定型注文書:いつもの品を印字し、数量と納品日だけ書いてもらう
  3. 第2段階 補助者からWeb・LINE:本人が決め、補助者が入力する
  4. 第3段階 代行入力・同席:受注側が代わりに入力するか、初回を一緒に入力する

状況別に最初に勧める手段を決める:補助者・端末・注文頻度で分ける

補助者の有無で分ける

四つの段階は進む順番を示すもので、すべての取引先が第0段階から始める必要はありません。
どこから入るかは、二つ目の質問で分かった補助者の有無、端末や通信の環境、そして注文の頻度と会話の要否で決められます。
次の表は、その組み合わせごとに最初に勧める段階を整理した編集上の目安です。

補助者がいる取引先は、第2段階から始めやすい相手です。
ただし補助者が入力を担うと、本人は画面を見ないまま注文が出ることになります。
本人が確かめたい気持ちが強いなら、入力後に受付内容を紙や電話で返す手段を残しておくと、本人の安心と補助者の手間が両立しやすくなります。
補助者がいない取引先では、本人が新しい操作を覚える前提になります。
そのため、第1段階の注文書か、同席を挟んだ第2段階が候補になります。

端末・通信環境で分ける

FAXやパソコン、スマートフォンがあるかどうかは、手段の候補を絞る条件です。
FAXがあれば、第1段階の注文書をすぐ試せます。
スマートフォンはあっても通話にしか使っていない場合、画面での入力は新しい操作になります。
端末があることと、注文に使えることは別の話です。
二つ目の質問のついでに「普段、注文や連絡に使っている機械は何ですか」と聞いておくと、判断を誤りにくくなります。

端末がどれもない取引先には、新しい手段を勧める前提が整っていません。
その場合は第0段階のまま、受注側の聞き方と記録を整えることが現実的な一歩です。
電話の入口は変わらなくても、受けた後の手入力や折り返しは受注側の工夫で軽くできます。

注文頻度と会話の要否で分ける

注文の頻度は、受注側にとっての効果の大きさを左右します。
週に何度も注文する取引先が書式や画面に移れば、そのたびに減る手入力や折り返しが積み重なります。
月に一度程度の取引先は、移ってもらっても減る手間は限られます。
相手にとっては、新しい操作を覚える負担のほうが大きく感じられるかもしれません。

もう一つの軸が、注文が会話で決まるかどうかです。
三つ目の質問で「話を聞いて決める」と答えた取引先は、注文頻度が高くても電話を残す候補になります。
この場合に変えるのは、会話の後に決まった内容を第0段階の書式で記録し、必要なら受付内容を返すところです。
会話の価値を残しつつ、受けた後の処理だけを固定するという考え方は、ここでも変わりません。

相手の状況 最初に勧める段階 電話の扱い
社内や家族に補助者がいて端末もある 第2段階(補助者による入力) 相談や確認用に残す
補助者はいないがFAXがある 第1段階(定型注文書) 迷ったとき用に残す
補助者はいないが本人がスマートフォンなどを使う 同席を挟んでから第2段階 試行中は併用する
FAXも画面で使える端末もない 第0段階(聞き方と記録の統一) 注文の入口として残す
注文頻度が高く折り返しや変更が多い 理由に合う段階を早めに試す 試行中は併用する
注文を会話で決める 第0段階(決まった内容の記録) 注文の入口として残す

切替の伝え方:相手の不安を減らす言い方・タイミング・同席

言い方の例

段階と入る位置が決まれば、あとはどう切り出すかです。
避けたいのは、受注側の都合や新しい手段の便利さから話し始めることです。
「電話注文は今月で終了します」「Webのほうが便利ですよ」という言い方は、相手にとっては慣れたやり方を取り上げられる話に聞こえます。

・「聞き間違いがないように、いただいたご注文を紙でお返ししたいのですが、よろしいですか」
・「いつもの品を印刷した注文書を作りました、数だけ書いていただければ大丈夫です」
・「入力のやり方は、最初の一回はご一緒します」
・「電話はこれまで通りお受けしますので、迷ったときはお電話ください」

どの例も、相手の手間を増やす依頼ではなく、注文の間違いを防ぐための提案として伝えています。
二つ目の質問で補助者がいると分かっていれば、本人だけでなくその方にも話を持ちかけるのも一つの方法です。
最後の一言のように電話がいつでも使えると明言しておくと、新しい手段は「置き換え」ではなく「選べる入口が増える」話になります。
こうした言い方で必ず受け入れてもらえるわけではありません。
それでも、断られたときに関係を損ねにくい頼み方です。

伝える時期と試行期間の区切り

切り出す時期は、取引先が忙しい時期を避けます。
繁忙期や棚卸しの前後に新しいやり方を持ち込むと、試す余裕がないまま印象だけが悪くなりがちです。
電話で突然伝えるより、納品や訪問で顔を合わせる機会に、実物の注文書や画面を見せながら話すほうが、相手は具体的に想像できます。

お願いするときは、試す期間を区切ります。
たとえば「月末までのご注文で試してみて、使いにくければ元に戻します」と伝えれば、相手は失敗しても戻れると分かったうえで試せます。
期間の長さに決まりはありませんが、注文が数回入る程度の長さがないと、慣れたかどうかを判断できません。
期間の終わりに振り返りの機会を持つことも、最初に伝えておきます。

同席サポートの進め方

同席では、練習用の入力ではなく、その回の実際の注文を一緒に入力するほうが、相手にとって意味があります。
入力するのは取引先本人か補助者で、受注側の担当者は横で見守り、詰まったところだけ言葉で伝えます。
代わりに操作してしまうと、次に一人でやるときに同じところで止まってしまいます。

入力が終わったら、受注側に届いた内容を読み上げ、いつもの電話の復唱と同じように確かめます。
こうすると、確認の安心感が理由の相手にも、新しい手段で注文が確かに届くことを体験してもらえます。
最後に、相手が自分の言葉で書いた手順のメモを手元に残してもらうと、次の注文で迷ったときの手がかりになります。
訪問が難しい場合は、電話をつないだまま同じ流れで進める形も考えられます。

試行の進め方(電話を残したまま試す流れの模式図)
伝える、試行期間、振り返り、続けるか戻すかの4つの区切り伝える、試行期間、振り返り、続けるか戻すかの4つの区切り伝える納品や訪問で実物を見せ、電話は続けると話す試行期間注文が数回入る長さで区切り、電話と併用する振り返り台帳の件数・打ち直し・誤りと相手の感想を見る続けるか戻すか先に決めた条件で判断し、戻すときは一つ前の段階へ

▼ 図の内容を文字で読む
  • 伝える:納品や訪問で実物を見せ、電話は続けると話す
  • 試行期間:注文が数回入る長さで区切り、電話と併用する
  • 振り返り:台帳の件数・打ち直し・誤りと相手の感想を見る
  • 続けるか戻すか:先に決めた条件で判断し、戻すときは一つ前の段階へ

移行期間の併用運用:入口が増えても二重対応にしない

注文を一つの台帳にまとめる

移行期間には、同じ取引先から電話とFAX、Web注文が混ざって届きます。
FAXを送った後に「届いたか心配で」と電話が来て、同じ注文を二度登録してしまう。
Webで受けた注文の変更が電話で来て、元の注文を探せない。
入口が増えたときに起きやすいのは、こうした二重登録と変更の取りこぼしです。

これを防ぐ基本は、どの入口から来た注文も一つの台帳にまとめることです。
専用の仕組みがなくても、表計算の一覧で始められます。
一件を一行にし、取引先、納品日、品目と数量に加えて、受けた入口、受けた人、状態(受付・確認済み・変更あり)を記録します。
新しい注文を登録する前に、同じ取引先・同じ納品日の行がないかを見るだけでも、二重登録に気づきやすくなります。

変更は新しい行を足さず、元の行を直して、変更を受けた入口を書き添えます。
同じ取引先・同じ納品日の注文が別の入口から届いたときは、「先ほどFAXでいただいた分と同じご注文でしょうか」と確かめる決まりにしておきます。
台帳があれば事故がなくなるわけではありません。
ただ、照合する場所が一つになるので、確認の手間と取りこぼしが入口ごとに散らばらずに済みます。

入口ごとに数える3項目

台帳をまとめると、もう一つの使い道が生まれます。
入口ごとの数字を取れるようになることです。
数える項目は、受注側の主な負担として挙がっていた手入力、確認連絡、変更対応に合わせて決めると1、次の三つになります。

・件数:入口ごと、取引先ごとの注文の数
・打ち直し:受けた内容を別の画面や紙へ写し直した回数
・誤りと折り返し:聞き間違い、数量や納品日の違い、確認や変更のために連絡した回数

時間まで細かく測る必要はありません。
台帳の行に印を付けるだけでも、一か月分を並べれば、どの取引先のどの入口で手間がかかっているかが見えてきます。
電話の件数は多くても誤りがほとんどない取引先と、件数は少なくても毎回折り返しが必要な取引先では、次に頼むことが違います。
この違いが、電話を残す相手と進める相手を分ける材料になります。

入口が増えても台帳は一つにする流れ(模式図)
電話・FAX・Web注文から一つの台帳へ集め、入口ごとに数えて次の方針を決める流れ1電話・FAX・Web注文入口はいくつあってもよい2一つの台帳一件を一行にし、受けた入口・受けた人・状態を記録して同じ納品日の行と照合する3入口ごとに数える件数・打ち直し・誤りと折り返し4次の方針進める相手と電話を残す相手を分ける

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 電話・FAX・Web注文:入口はいくつあってもよい
  2. 一つの台帳:一件を一行にし、受けた入口・受けた人・状態を記録して同じ納品日の行と照合する
  3. 入口ごとに数える:件数・打ち直し・誤りと折り返し
  4. 次の方針:進める相手と電話を残す相手を分ける

電話を残す相手と進める相手の分け方、うまくいかないときの戻し方

分ける基準

台帳の数字と、三つの質問で聞き取った理由を合わせると、取引先ごとの方針を決められます。
考え方は単純で、受注側の手間が大きい相手から進め、手間が小さく会話に価値がある相手には電話を残します。

・件数が多く、打ち直しや誤りも多い:移行を進める相手として、理由に合った段階を勧める
・件数は多いが誤りは少ない:第0段階や第1段階で十分な場合があり、急いで画面へ移さない
・件数は少ないが毎回誤りや折り返しがある:聞き方と注文書を見直し、記録の形を固定する
・件数が少なく、会話で中身が決まる:電話を残し、受けた後の記録だけを整える

電話を残す相手がいることは、移行の失敗ではありません。
前半で触れたとおり、FAX・電話で受注する担当者の半数を超える人が、廃止すれば取引に支障が出ると想定しています1。
全廃を目標にすると、電話を残すべき相手まで無理に動かすことになります。
目標は、受注側の手間が大きい相手から順に、受けた後の処理を軽くすることに置くほうが現実的です。

取引先の社内事情も考えに入れておきます。
東京商工会議所が主に東京23区の中小企業を対象に2024年に行った調査(1,218社が回答、回答率12.2%)があります。
この調査では、デジタル化の段階が最も初期の「口頭連絡、電話、帳簿での業務が多い」企業が17.7%でした2。
これは各社の自社業務についての数字で、取引先との受発注の方法を調べたものではありません。
ただ、社内の連絡や記録が電話と帳簿で回っている会社にとって、注文だけを画面で出すのは、社内の流れから一つだけ外れた作業になります。
そうした相手には、帳簿に写しやすい紙の注文書のほうが合う場合があります。

電話に戻す条件を先に決める

試行を始める前に、電話へ戻す条件と時期を決めておきます。
たとえば、試行期間中に操作が分からないという電話が続く、入力の誤りで納品に影響が出た、入力を担っていた補助者がいなくなった、といった場合です。
条件を先に決めておけば、うまくいかないときに受注側が迷わず判断できます。
相手にも「お約束どおり、元のやり方に戻しましょう」と伝えられます。

戻すときは、ゼロに戻すのではなく、一つ前の段階に戻すと考えます。
Web注文が合わなかった取引先でも、第1段階の注文書や、第0段階の復唱と台帳は残せます。
受注側の聞き方と記録が揃っていれば、電話に戻っても、受けた後の処理は試行前より整った状態にとどまります。
補助者の状況が変わったときや、相手から新しい手段の話が出たときに、改めて声をかければよいのです。

件数と誤りで分ける取引先ごとの方針(本文の考え方にもとづく模式図)
件数と誤りの組み合わせごとに勧める対応を分けた図件数と誤りの組み合わせごとに勧める対応を分けた図件数が多く、打ち直しや誤りも多い移行を進める相手として、理由に合った段階を勧める件数は多いが誤りは少ない第0段階や第1段階で十分な場合があり、急いで画面へ移さない件数は少ないが毎回折り返しがある聞き方と注文書を見直し、記録の形を固定する件数が少なく、会話で中身が決まる電話を残し、受けた後の記録だけを整える

▼ 図の内容を文字で読む
  • 件数が多く、打ち直しや誤りも多い
    • 移行を進める相手として、理由に合った段階を勧める
  • 件数は多いが誤りは少ない
    • 第0段階や第1段階で十分な場合があり、急いで画面へ移さない
  • 件数は少ないが毎回折り返しがある
    • 聞き方と注文書を見直し、記録の形を固定する
  • 件数が少なく、会話で中身が決まる
    • 電話を残し、受けた後の記録だけを整える

どの取引先から、どの段階で始めるかは、自社が受けた注文をどの画面へ何回写しているかによって変わり、記事の目安だけでは決めきれないことがあります。

相談では、いまの電話・FAX注文を受けた後にどこで転記が起きているかを一緒に洗い出し、最初に試す取引先と段階の候補を整理できます。無料相談で要件を整理する

受注側が感じるFAX・Eメール・電話受注の負担の大きさ

食品の小売・卸売の受注担当者(n=90、複数回答、2023年)がFAX・Eメール・電話受注業務の課題として挙げた割合の高い順に並べた。

  • 注文書の手入力に手間がかかる:60%
  • 注文確認の連絡に手間がかかる:41.1%
  • 注文の変更対応に時間がかかる:40%
  • オペレーションの属人化が発生している:38.9%
  • 注文書の管理(保管義務)が煩雑:30%

上位の項目はいずれも電話を切った後の作業で、電話を残したままでも聞き方と記録を揃えて減らす余地がある部分です。

要点の整理

軸 基準
最初の一歩 電話を残したまま、聞き方と記録の書式を揃える
理由の見分け 三つの質問で確認の安心感・操作の不安・慣習・相談できる関係を聞き分ける
入る段階 補助者の有無、端末、注文頻度と会話の要否で決める
伝え方 間違いを防ぐ提案として伝え、電話は続けると明言し、試行期間を区切る
併用期間 台帳を一つにし、入口ごとに件数・打ち直し・誤りと折り返しを数える
電話を残す範囲 件数が少なく会話で決まる相手は残し、戻すときは一つ前の段階へ

併用期間に入口が増えると、台帳の項目や照合の決まりを自社の注文の流れに合わせて決める必要があり、担当者だけでは手が回りにくくなります。 相談では、台帳に残す項目と入口ごとに数える項目を自社の受注の流れに当てはめ、電話を残す相手と進める相手を分ける材料を揃えられます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

電話受注を続ける相手がいても、受注側の負担を減らす方法はありますか。

あります。
電話はそのまま受け、品名・数量・納品日など必要な項目を決まった順に聞いて最後に復唱し、同じ書式のメモに残します。
受注側の負担は通話より受けた後の手入力・確認連絡・変更対応に出やすいため、聞き方と記録を揃えるだけでも、聞き漏らしによる折り返しや担当者しか読めないメモを減らす余地があります。
手入力そのものは残る点は理解しておきましょう。

高齢の取引先に新しい注文方法をお願いするとき、断られたらどうすればよいですか。

まず、なぜ電話がよいのかを普段の会話で聞いてみます。
確かめたい気持ちが理由なら受付内容を紙で返す方法、操作が不安なら補助者への依頼や同席というように、理由ごとに別の一歩があります。
注文を会話で決めている相手なら、電話を残して記録だけを整えるのが無理のない選択です。
時期を改めて、繁忙期を避けて再度相談することもできます。

FAXと電話の併用中に、同じ注文が二重に届くのを防ぐには何をすればよいですか。

どの入口から来た注文も一つの台帳に一件一行で記録し、受けた入口と状態を書き添えます。
登録前に同じ取引先・同じ納品日の行がないかを見て、別の入口から届いたときは「先ほどFAXでいただいた分と同じご注文でしょうか」と確かめる決まりにします。
変更は新しい行を足さず、元の行を直します。

家族や補助者がいない取引先には、何から勧めればよいですか。

FAXがあれば、いつもの品を印字して数量と納品日だけ書けばよい注文書から始めやすいです。
本人がスマートフォンなどを使っているなら、初回の注文を一緒に入力する同席を挟んでから画面での注文を試します。
FAXも端末もない場合は、電話のまま受注側の聞き方と記録を整えるのが現実的です。

試しに切り替えて合わなかったとき、電話へ戻してよいのですか。

戻して構いません。
試行を始める前に、操作の問い合わせが続く、誤りで納品に影響が出る、補助者がいなくなるといった戻す条件を決め、相手にも伝えておくと、関係を損ねずに戻せます。
戻すときは一つ前の段階へ戻すと考え、注文書や復唱、台帳は残せば、受けた後の処理は試行前より整った状態にとどまります。

取引先の人数が多いとき、どの相手から移行をお願いすればよいですか。

台帳で入口ごと・取引先ごとの件数、打ち直し、誤りと折り返しを一か月ほど数えると、手間のかかっている相手が見えてきます。
件数が多く誤りも多い相手から、理由に合った段階を勧めるのが基本です。
そのなかでも、入力を手伝える補助者がいる相手は始めやすい相手です。
件数が少なく会話で注文が決まる相手は、急がず電話を残す候補にします。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:株式会社ハンモック(調査実施:IDEATECH「リサピー」)「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
  2. 2 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査」(2025年)
  3. 3 出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年)
  4. 4 出典:日本総合研究所「高齢者のスマートフォン利用に関する解説記事(内閣府『情報通信機器の利活用に関する世論調査』2020年の紹介)」(2020年調査)
  5. 5 出典:経済産業省 中小企業庁 ミラサポplus「中小企業共通EDIの紹介記事」

画像の出典元

  1. Businessman signing important documents at office desk./Photo by Kampus Production on Pexels

Photos provided by Pexels

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top