◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 二重入力は、発注から請求までの工程ごとに「誰が・何を・どこへ」入力しているかを1か月分の実書類で書き出すと、場所と原因が見えてくる。
- 原因は、書類の届き方、社内の入力先の数、システム間のつなぎ、マスタやコードの不一致に分けられ、原因によって効く手が違う。
- 入力先の一本化と運用ルール整理は自社内で始められるが、仕入先から紙やPDFで届く限り、最初の一回の転記は残る。
- EDIは1社だけが導入しても効果が出ず、データ連携は仕入先がデータで出せることが前提になる。仕入先側の入力負担も合わせて確かめる形で依頼する。
- 1つの業務・1社の仕入先で試し、入力件数・修正件数・確認の問い合わせ回数を、同じ期間と数え方で前後比較する。
目次

仕入先の回答や請求書を二度打ちしているのは、どの工程か
仕入先との業務で起きる二重入力は、たとえば次のような作業です。
メールで届いた納期回答を販売管理へ打ち込み、同じ品番と納期を共有用の表計算にも写す。
月末には請求書のPDFを見ながら会計へ金額を入力し、検収の記録と突き合わせる。
原因は、書類がどんな形で届くかと、社内の入力先がいくつあるかで分かれ、原因によって効く手も変わります。
まず発注から請求までの流れで「誰が・何を・どこへ」入力しているかを書き出します。
データ連携は仕入先が対応できなければ成り立ちません。
そのため、自社内で完結する入力先の一本化やルール整理から始めるか、データで出せる仕入先1社から小さく試すのが現実的です。
発注・納期回答・検収・請求の流れで書き出す
二重入力をなくそうとして「どのシステムを入れるか」から考え始めると、困りごとの場所がぼやけます。
月末に負担を感じるのは請求の工程でも、元をたどると、納期回答の段階で同じ品番と数量をすでに二度写していることがあるからです。
そこで、仕入先とのやり取りを時間の順に並べ直し、工程ごとに入力の回数を見ていくところから始めます。
工程の分け方には、業界の標準が物差しとして使えます。
流通BMS(流通業界の企業間取引でやり取りするデータの形式を定めた標準)の基本形は、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務と、8種類の標準メッセージを対象にしています1。
発注から代金の支払までを抜けなく区切った並びです。
自社の工程を書き出すときに、返品や数量の訂正を見落としていないか、支払の消し込みで請求額をもう一度打っていないか、を点検する目安になります。
ただし、この標準はスーパーとグロサリー業界の取引を出発点に作られ、のちにアパレル、チェーンドラッグストア、ホームセンターの要素が加わったものです1。
製造業の部品調達や卸売の仕入れに、そのまま当てはまるとは言えません。
たとえば6業務の名前には「納期回答」がありません。
しかし、仕入先から納期の回答や変更の連絡を受け、それを生産計画や顧客への回答に転記している会社では、ここが二重入力のいちばん多い工程になることもあります。
流通BMSは区切りの漏れを点検する道具にとどめ、工程の名前と順番は自社の実際の流れで決めるのが確実です。
自社の流れの例を一つ置いてみます。
発注書を送る、仕入先から納期回答が届く、品物が入荷して検収する、返品や数量の訂正がある、月末に請求書が届く、代金を支払う、という工程に分けてみます。
工程ごとに「仕入先から何が、どんな形で届くか」を書き添えると、人の手で写すしかない場所がもう見え始めます。
『誰が・何を・どこへ』の一覧表の作り方
工程を並べたら、行ごとに「受け取る書類」「入力する人」「入力先」「入力する項目」を書き込んだ一覧を作ります。
これは公的な様式ではなく、二重入力の場所を探すために私たちが勧めている整理の仕方です。
記憶で埋めると「たぶん一度しか打っていない」と書きがちです。
1か月分の実際の書類を手元に置き、届いた順にたどりながら埋めていくと抜けが減ります。
埋め終わったら、同じ項目が2か所以上の入力先に現れている箇所に印を付けます。
たとえば、ある仕入先から納期回答がメールで届き、購買担当が販売管理の発注残に納期を入力し、さらに営業と共有している表計算にも同じ品番・数量・納期を書き写しているとします。
この場合、一覧には同じ工程の行に入力先が2つ並び、品番・数量・納期の3項目に印が付きます。
入荷した品物を検収するとき、在庫の記録と検収記録の表計算の両方に数量を入れているなら、検収の行にも印が付きます。
月末に届く請求書のPDFを見ながら経理担当が会計システムに金額を打ち込み、検収の記録と1件ずつ照らしているなら、請求の行も同じです。
印の付き方を見ると、問題の中心が少しずつ違うことに気づきます。
同じ人が同じ項目を別の画面に打っているなら、入力先が多いことが中心です。
別の人が、前の人の入力を見ずに書類からもう一度打っているなら、社内で情報が渡っていないことが中心です。
書類そのものが紙やPDFで、どの入力先にも人の手で写すしかないなら、届き方が中心です。
同じ「二度打ち」でも、印の付き方を書き分けておくと、次に原因を見分けるときの手がかりになります。
一覧には、件数の欄も足しておくと後で役に立ちます。
1か月に何件の納期回答や請求書が届き、そのうち何件で入力し直しや問い合わせが起きたかを書いておけば、どの行から手を付けるかを比べられるからです。
この数は、試行の効果を確かめるときの「前の値」にもなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 納期回答が届く
- メールの納期を販売管理と共有の表計算へ二度入力
- 入荷して検収する
- 数量を在庫の記録と検収記録の両方へ入力
- 返品・数量の訂正
二重入力の原因は4つに分かれ、原因で取れる手が変わる
紙・FAX・メール・PDFで届く場合
一覧で印を付けた行は、原因ごとに分けると取れる手がはっきりします。
ここでは「仕入先から紙・FAX・メール・PDFで届く」「社内の入力先が複数ある」「システム間が連携していない」「マスタやコードが揃っていない」の4つに分けて考えます。
公的な資料が定めた分類ではなく、手の選び方につなげるための私たちの整理です。
1つの行が2つ以上の原因に当てはまることもあり、その場合はどれから外すかの順番が問題になります。
最初の原因は、書類の届き方です。
電話やFAXによる受発注では、内容を経理システムなどへ手で入力する必要があり、入力ミスや書類の紛失のリスクが生じると、中小機構のミラサポplusは説明しています2。
メールの本文やPDFの請求書も、人が読んで打ち直すという点では同じ構造です。
画面上で見えている数字でも、データとして取り込めない形なら、受け取った側の誰かが写すしかありません。
この原因に当てはまる行では、社内でどれだけ工夫しても、最初の一回の転記は残ります。
社内の工夫で減らせるのは、その後に続く二回目、三回目の写しです。
最初の一回までなくすには、仕入先からデータで受け取れるかが先に問われ、これは自社だけでは決められません。
入力先が複数ある場合
2つ目は、社内の入力先の数です。
先の例で、納期を販売管理と共有用の表計算の両方へ入れていたのは、営業が販売管理の画面を見られない、見方を知らない、といった社内の事情から生まれていることがあります。
この場合、仕入先からデータで届くようになっても、社内で二か所に写す作業はそのまま残ります。
ミラサポplusは、発注側の企業がそれぞれ独自のシステムを用意すると、受注側は取引先ごとに異なる画面を操作することになり、複数の画面を同時に扱う「多画面問題」が起きると説明しています2。
これは注文を受ける側から見た企業間の話です。
それでも、入力する場所が分かれるほど同じ内容を何度も打ち、どれが正しいかを確かめる手間が増える、という構造は社内の入力先が多い場合にも通じます。
仕入先ごとにウェブの受発注画面が分かれていて、自社の購買担当がそれぞれにログインして回答を確かめ、社内のシステムへ写しているなら、自社の側も似た状態にあります。
入力先が複数あることが原因の行では、連携より先に「そもそも入力先を一つにできないか」を考えます。
表計算を参照用に限り、入力は販売管理にだけ行う、といった変更なら、仕入先の協力は要りません。
営業が表計算を使っていた理由が「販売管理の画面を見られないから」なら、閲覧の権限や見方を整えることが、そのまま二重入力を減らす手になります。
システム間が連携していない場合
3つ目は、社内にシステムが複数あり、それぞれに役割があって一つにはまとめられないのに、データが渡らない場合です。
たとえば販売管理に入れた検収の数量を、会計システムに仕入として改めて打ち込んでいるなら、両方のシステムが必要なまま転記だけが残っています。
この行では、人が手で入力する場所を一つにし、他のシステムへはデータで渡す、という形を目指します。
システムそのものは減らさず、手で打つ場所を減らすという意味で、これも入力先の一本化の一つの形です。
販売管理から会計へ取り込める形でデータを書き出せるか、取り込みの手順を決められるかは、使っている製品と契約によって違います。
手元のシステムの仕様や提供元の説明で確かめることになります。
自社と仕入先のシステムのあいだがつながっていない場合は、1つ目の届き方の問題と重なります。
こちらは自社の中だけでは解けず、仕入先とデータをやり取りする仕組みを考えることになります。
マスタやコードが揃っていない場合
4つ目は、品目や取引先の「マスタ」(品番、品名、単位、取引先コードなど、取引のたびに参照する基本情報の台帳)が、入力先ごと、あるいは自社と仕入先とで揃っていない場合です。
仕入先の請求書に書かれた品番が自社の品番と違えば、担当者は対応表を見ながら読み替えて入力します。
販売管理と表計算で同じ品目の呼び方が違えば、突き合わせのたびに人が判断します。
この4つ目は、紹介した資料が直接述べている原因ではありません。
ただ、一覧で印を付けた行の中に、写すだけでなく読み替えている行があるなら、そこではデータの形でつないでも、読み替える作業が残ると考えられます。
連携や一本化を進める前に、その行に関わるコードだけでも対応関係を決めておくと、後の手が空回りしにくくなります。
4つの原因を並べてみると、自社だけで外せるものと、仕入先の事情が関わるものがあります。
入力先の多さと社内のシステム間の転記は、自社の中で手を打てます。
書類の届き方は、仕入先がデータで出せるかどうかに左右されます。
コードの不一致は、社内で揃える部分と、仕入先とのあいだで対応を決める部分に分かれます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 紙・FAX・メール・PDFで届く
- データ連携(仕入先がデータで出せることが前提)
- 提出形式の統一(仕入先への依頼が要る)
- 社内の入力先が複数ある
- 入力先の一本化(自社内で完結)
一本化・データ連携・提出形式の統一・ルール整理は、何を減らし、何を求めるか
4つの手を同じ軸で比べる表
原因に対して取れる手は、大きく4つあります。
人が手で入力する場所を一か所に絞る「入力先の一本化」、仕入先とデータを直接やり取りする「データ連携」、仕入先から届く書類の形を揃えてもらう「提出形式の統一」、社内の入力の担当・順番・コードを決め直す「運用ルール整理」です。
どれが優れているかではなく、どの入力を減らし、自社と仕入先に何を求めるかが違います。
判断が分かれるのは「仕入先の負担」と「成り立つ前提」の2列です。
一本化とルール整理は、自社の中で決めれば始められます。
その代わり、減らせるのは社内で二回目以降に写す入力までで、仕入先から紙やPDFで届く限り、最初の一回の転記は残ります。
データ連携は、その最初の一回まで減らせる可能性がある手です。
一方で、仕入先がデータで出せることが前提になり、自社だけでは成立しません。
提出形式の統一はその中間で、仕入先に様式を合わせてもらう手間をお願いする代わりに、受け取った後の読み取りや並べ替えの手間を減らします。
4つは、どれか一つを選ぶものではありません。
たとえば、まず社内で入力先を販売管理に一本化し、品番の対応表を決めてから、データで出せる仕入先と連携する、という順に重ねることもできます。
先に社内を整えておくと、連携で受け取ったデータをどこへ入れるかで迷わずに済みます。
逆に、社内の入力先が3つあるまま連携を始めると、データで届いた内容をまた3か所に写すことになりかねません。
表に削減の割合や費用、期間を載せていないのは、どの手でどれだけ減るかが、一覧で数えた自社の件数と仕入先の対応によって決まるからです。
効果は一般論ではなく、自社で前後を数えて確かめることになります。
流通BMS・中小企業共通EDI・JP PINTは何のための標準か
データ連携を考え始めると、いくつかの標準の名前に行き当たります。
EDI(電子データ交換。
企業間で注文や請求などのデータを、決められた形式で受け渡す仕組み)は、相手と同じ形式でやり取りして初めて機能します。
そのため、業界や国が形式を揃える標準を用意しています。
ここで挙げる3つは対象とする取引と業務が違うので、自社のどの工程の話かと合わせて見ます。
工程の物差しとして触れた流通BMSは、発注から支払までの6業務について標準のメッセージを定めたもので、基本形のVer.1.0は2007年に公開されました1。
2018年のVer2.0では、請求の内容をまとめる請求鑑のメッセージが加わっています1。
出発点がスーパーとグロサリー業界の取引であるため、製造業の部品調達などにそのまま当てはまる標準ではありません。
仕入先や顧客がすでに流通BMSでやり取りしているかどうかが、検討するかどうかの分かれ目になります。
中小企業共通EDI標準に基づくEDIについて、ミラサポplusは次のように説明しています。
受注側は対応するプロバイダー(EDIの通信や変換を担う事業者)と業務アプリケーションを使えばよく、発注側は対応プロバイダーと契約すれば既存の独自システムを使い続けられる、というものです2。
仕入先に発注する側から見れば、自社のシステムを入れ替えずに連携の入口を作れる可能性がある、という点が判断の材料になります。
一方で、仕入先の側にも対応するプロバイダーとアプリケーションが要るため、仕入先が何を使っているかを知らずには進められません。
費用は契約によって違うため、プロバイダーへの見積もりで確かめることになります。
請求書に絞った標準としては、JP PINTがあります。
デジタル庁はJapan Peppol Authorityとして、Peppolという電子文書のやり取りの仕様をベースにした、日本のデジタルインボイス標準仕様JP PINTを管理しています3。
請求書のほか、セルフビリング請求書や免税事業者向け請求書の仕様もあり、2026年にはVer.1.1.3への更新が公表されています3。
受発注から請求までを通す流通BMSや共通EDIと違い、請求の工程に絞った標準です。
一覧で印が付いたのが主に請求の行なら、仕入先が請求書をこの形式で出せるかを聞くことが、選択肢に入ります。
受け取った後に会計システムへどう取り込めるかは、使っている会計システムの対応によります。
3つの標準は、どれを選ぶかを自社だけで決めるものではありません。
相手がすでに使っている形式があればそれに合わせるのが近道です。
相手が何も使っていなければ、標準の名前より先に、相手がデータで出せるかどうかが問題になります。
| 手 | 減らせる入力 | 自社の準備 | 仕入先の負担 | 成り立つ前提 |
|---|---|---|---|---|
| 入力先の一本化 | 社内で二回目以降に写す入力 | 入力する場所と参照する場所を決め、他のシステムへデータで渡す手順を作る | なし | 社内の関係者が入力先の変更に合意できる |
| データ連携 | 届いた内容の最初の転記まで(取り込み先が整っている場合) | 対応する仕組みやプロバイダーとの契約、取り込み先の整理 | データで出すための対応が要る | 仕入先がデータで出せる |
| 提出形式の統一 | 書類を読み取り並べ替える手間 | 受け取りたい様式を決めて示す | 様式に合わせて作る手間 | 仕入先が様式の変更を受け入れられる |
| 運用ルール整理 | 担当の重複や読み替えによる入力 | 担当・順番・コードの対応を決めて共有する | 原則なし(コードの対応を決める場合は相談が要る) | 社内でルールを守り続けられる |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の中で決めれば始められる手
- 入力先の一本化と運用ルール整理
- 減るのは社内で二回目以降に写す入力まで
- 紙やPDFで届く限り、最初の一回の転記は残る
- 仕入先に様式を合わせてもらう手
仕入先が対応しないとき、連携は成り立つのか
EDIは1社だけでは効果が出ない
ミラサポplusは、共通EDIの説明の中で「EDIは、1社だけが導入しても効果を得ることはできません」と述べ、取引先の状況を考慮して導入の要否を判断する必要があるとしています2。
自社がどれだけ準備しても、仕入先がFAXで回答を送り続ければ、受け取った後の転記は残る、ということです。
では、仕入先が対応しないとき、連携をどう考えればよいか。
この点について、紹介した資料に決まった答えは書かれていません。
私たちは、連携を「対応できる仕入先とだけ始める手」と位置づけ、対応しない仕入先の分は自社内の一本化とルール整理で二回目以降の転記を減らす、という組み合わせを勧めています。
全仕入先が揃うのを待って何もしないより、自社の中でできる分を先に進めておくほうが、連携できる仕入先が現れたときの受け皿にもなります。
同じページは、導入前に取引先と状況を共有し、連携を図ることが重要だとも述べています2。
また、共通EDIの導入については、つなぐITコンソーシアムが無料で相談を受け付けていると案内されています2。
自社と仕入先のどちらの側に何が要るかを、標準の仕組みに詳しい相手と整理する入口として使えます。
仕入先の入力負担から依頼の仕方を考える
仕入先にデータ化をお願いするとき、自社の都合だけを伝えると、先方には手間が増える話に聞こえます。
ここで目を向けたいのは、仕入先の側でも、受け取った注文を手で入力している可能性があることです。
食品の小売・卸売業の受注担当者を対象にしたハンモックのインターネット調査では、受注方法がFAX・メール・電話の90名のうち60%が、注文書の「手入力」に手間がかかると答えています4。
調査は2023年3月に行われ、有効回答106名のうち該当する90名に複数回答で尋ねたもので、食品業の、注文を受ける側の回答です4。
読者の仕入先が同じ状況だとは限らず、業種や規模が違えば割合も変わり得ます。
それでも、自社がFAXやメールで送っている発注書を、仕入先では誰かが打ち直しているかもしれない、という見方を持つ材料にはなります。
そう考えると、依頼の中身も変わります。
「自社の入力を減らしたいのでデータで送ってほしい」と頼むより、「こちらからの注文をデータで送れば、そちらの入力も減るか」を一緒に確かめる形にすると、先方にとっての得失を話し合えます。
これは私たちの提案で、どの仕入先でも受け入れられるという意味ではありません。
仕入先がすでに別の顧客のEDIや受発注画面に対応しているなら、自社独自の形式を一つ加えることは、先方にとって多画面の負担を増やす結果にもなります。
相手がすでに使っている形式を先に聞き、自社の側を合わせられるかを考えると、こうした押し付けを避けやすくなります。

依頼の前に聞いておきたいのは、どの書類(注文、納期回答、請求書)をどの形で出しているか、受注をどのシステムで処理しているか、他の取引先とすでにデータでやり取りしているか、形式を変えるなら誰の手間が増え誰の手間が減るか、の4点です。
この答えが、連携を試せる仕入先かどうかの見立てになります。
| 項目 | 割合(%) |
|---|---|
| 注文書の「手入力」に手間がかかる | 60 |
最初に試す業務と仕入先の選び方、効果の確かめ方
試す業務・仕入先の絞り方
ここまでで、一覧の行ごとに原因と取れる手、仕入先の事情が見えてきました。
全部を一度に変えようとすると、どの変更が効いたのか分からなくなり、仕入先との調整も同時に何社も抱えることになります。
私たちは、1つの業務と1社の仕入先に絞って試すことを勧めています。
連携は相手の対応に左右されるため、全社に広げる前に、前提が成り立つかを小さい範囲で確かめておきたいからです。
絞るときの手がかりは3つです。
1つ目は、入力件数が多いこと。
一覧で月の件数を書いておいた行のうち、件数が多い行ほど、変えたときの差が見えやすくなります。
2つ目は、修正が多いこと。
件数は少なくても、入力し直しや仕入先への問い合わせが頻繁に起きている行は、ミスの手戻りが負担の中心になっています。
3つ目は、データで出せる仕入先があること。
連携や提出形式の統一を試すなら、聞き取りで対応できそうだと分かった仕入先を選びます。
3つの手がかりは、選ぶ手によって効き方が違います。
入力先の一本化やルール整理を試すなら、仕入先の対応は関係しないので、件数と修正の多い業務を選べば足ります。
データ連携を試すなら、3つ目が欠けると始められません。
まず対応できる仕入先を探し、その仕入先との取引の中で件数や修正の多い業務を選ぶ、という逆の順になります。
どの仕入先も対応できないと分かったら、社内でできる一本化とルール整理を先に試し、仕入先の事情が変わるのを待つ、という判断もあり得ます。
前後で数える3つの指標
試したことで何が変わったかは、前と後で同じものを数えて比べます。
数えるのは、入力件数、修正件数、確認の問い合わせ回数の3つです。
これは公的な測定の基準ではありません。
二重入力の負担が「打つ回数」「打ち直す回数」「確かめる回数」に表れるという考えから、私たちが選んだ指標です。
入力件数は、対象の業務で人が手で入力した件数です。
一本化が効いていれば、同じ書類について入力先ごとに数えた件数が減ります。
修正件数は、入力した後に間違いが見つかって直した件数で、転記の回数が減ったときに写し間違いも減ったかを見ます。
確認の問い合わせ回数は、数量や納期、金額が合わずに仕入先や社内へ問い合わせた回数です。
データで受け取るようになった場合や、コードの対応を決めた場合に、変化があったかを見る指標になります。
比べるときは、期間と数え方を揃えます。
前を1か月、後を1か月と同じ長さにし、月末の繁忙が片方にだけ入らないようにします。
数え方は、たとえば入力件数なら「書類1枚」で数えるか「明細1行」で数えるかを先に決めておきます。
前後で数え方が違うと、減ったように見えても実際の変化かどうか分かりません。
結果がどうであれ、試行から分かることはあります。
件数が減っていれば、同じやり方を次の仕入先や業務に広げられるかを考えます。
減っていなければ、一覧に戻り、その行の原因の見立てが合っていたかを見直します。
入力先を一本化したのに件数が減らないなら、別の担当者が独自に表計算へ写し続けている、仕入先からの書類がまだPDFのまま、といった見落としていた原因が残っているのかもしれません。
1つずつ確かめながら広げていけば、どこで何が減ったかを説明できる形で、二重入力を減らしていけます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 一覧に月の件数を書く
- 前の値になる
- 1つの業務と1社の仕入先で試す
- 件数・修正が多く、対応できる仕入先がある業務
- 同じ期間・数え方で数える
工程の書き出しと原因の振り分けは、毎日その業務を回している担当者ほど、当たり前になった転記を見落としやすい作業です。
作った一覧をもとに、どの行が自社内の一本化やルール整理で減らせ、どの行が仕入先の対応を待つ必要があるかを、相談の中で一緒に切り分けられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 工程の切り分け | 1か月分の実書類で、工程ごとに受け取る書類・入力する人・入力先・項目を書き出す |
| 原因の見分け | 届き方/社内の入力先の数/システム間のつなぎ/コードの不一致に振り分ける |
| 自社だけで打てる手 | 入力先の一本化と運用ルール整理(減るのは二回目以降の転記) |
| 仕入先が関わる手 | データ連携と提出形式の統一(仕入先がデータや様式に対応できることが前提) |
| 最初に試す範囲 | 件数・修正が多く、対応できる仕入先がある1業務・1社 |
| 効果の確かめ方 | 入力件数・修正件数・問い合わせ回数を同じ期間・数え方で前後比較 |

試す業務と仕入先の選定や、仕入先への聞き方は、自社と取引先の事情を同時に見る必要があり、担当者ひとりでは決めにくい部分です。 最初に試す業務と仕入先の候補、前後で数える指標の数え方と期間を、相談で具体的に確かめられます。
よくある質問
仕入先がFAXやメールでしか回答できない場合、二重入力は減らせないのですか。
最初の一回の転記は残りますが、その後の二回目以降の写しは社内の工夫で減らせます。
入力する場所を一つに絞り、他の部署は入力ではなく参照で済むようにする、品番の読み替えに使う対応表を決める、といった手は仕入先の対応を必要としません。
仕入先にデータ化を頼む場合も、先方の入力負担が減るかを一緒に確かめる形にすると、話し合いの糸口ができます。
流通BMSや中小企業共通EDIは、製造業や卸売業でも使えますか。
流通BMSは、スーパーとグロサリー業界の取引を出発点に、アパレル、チェーンドラッグストア、ホームセンターの要素が加わった標準です1。
製造業の部品調達などにそのまま当てはまるとは言えず、取引先がすでに流通BMSでやり取りしているかどうかが検討の前提になります。
中小企業共通EDIは、受注側・発注側ともに対応プロバイダーを通じて使う枠組みが説明されています2。
自社と仕入先の業務に合うかは、仕入先の状況と合わせて判断することになり、導入の相談はつなぐITコンソーシアムが無料で受け付けていると案内されています2。
二重入力を減らす前に、まずマスタやコードを揃えるべきですか。
全部を先に揃える必要はありません。
一覧で印を付けた行のうち、写すだけでなく品番や単位を読み替えている行があれば、その行に関わるコードから対応を決めます。
読み替えが残ったまま連携や一本化を進めると、データで受け取っても対応表を見ながら直す作業が残るためです。
読み替えのない行なら、コードの整理を待たずに一本化を試せます。
小さく試すとき、仕入先にどう依頼すればよいですか。
対象の業務と期間を限り、「1か月、この書類だけをこの形で送ってもらえないか」と具体的に伝えるのが一つの方法です。
その前に、先方が注文をどう受け、どのシステムで処理しているか、他の取引先とデータでやり取りしているかを聞き、先方の入力が減るかどうかも一緒に確かめます。
自社独自の形式を増やすことが先方の負担になる場合もあるため、先方がすでに使っている形式に自社が合わせられるかも検討します。
- 1 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様 基本形」(2025年閲覧)
- 2 出典:中小機構(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2026年閲覧)
- 3 出典:デジタル庁「デジタルインボイス(Japan Peppol Authority)」(2026年)
- 4 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
画像の出典元
- office, work, desk, computer, workplace, indoor, business, home office, designer, web developer, gray business, gray computer, gray office, gray home, gray laptop, gray work, gray desk, gray design, gray company, gray web, office, office, office, office, office, work, work, computer, computer, business, business, home office, home office, home office, designer, designer/tookapic on Pixabay
- Crop anonymous male reading document and talking on mobile phone while sitting at desk with laptop/Photo by Michael Burrows on Pexels
- Focused businessman writing on sticky notes in a modern office environment./Photo by Yan Krukau on Pexels