◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 民法の既定では、検収の合否ではなく、不適合を知った時から1年以内に相手へ通知したかが、追完・減額・損害賠償・解除の4つの手段を残せるかを分ける。
- 売買は566条、請負は637条と条文は分かれるが組み立ては同じで、相手が引渡し時に不適合を知っていたか重大な過失で知らなかった場合は期間の制限が外れる。
- 契約書が期間の起点を検収の日に置いている場合や、会社どうしの売買で商法の規定がかかる場合があるため、受け取った後の検査を後回しにしない。
- 検収の前に止まってはならない業務を書き出して関わる部分を深く確かめ、保留するときは不適合を特定して書面で通知する。
- 契約書は検収条項・通知期間・賠償上限・停止時の対応の4点で見直す。
目次

検収を通す前に、法律の既定では何が基準になるのか
システムや設備を受け取り、検収書に判を押す直前で手が止まる。
通した後で業務が止まったら、もう相手に何も言えなくなるのではないか、という迷いです。
民法の既定では、後から修理や減額、損害賠償、解除を求める手段を残せるかを分けるのは、検収の合否ではありません。
不適合を知った時から1年以内に相手へ通知したかどうかです。
ただし期間や起点は契約で変わることがあり、会社どうしの売買には別の規定もあります。
判を押す前に契約書の検収条項と通知期間を読み、押した後に不具合を知ったら期間内に書面で知らせる、という順で動けます。
売買と請負で条文が分かれる
検収書に判を押すかどうかを考える前に、受け取ったものがどんな取引で届いたのかを見ておくと、後の話が整理しやすくなります。
既にある製品や部材を買ったのなら売買、自社の注文に合わせて作ってもらった成果物なら請負として考えるのが出発点です。
不具合が見つかった後の権利の期間は、売買なら民法566条、請負なら民法637条が定めています12。
たとえば、汎用の業務用機器や仕入品を購入した場合は売買です。
業務システムの開発を外部に頼んだ場合や、制作物を外注した場合は、請負に近い取引になります。
設備の購入に据付けや調整の作業が付いているときのように、一つの契約に両方の要素が混ざることもあり、どちらとして扱うかは契約の中身で変わります。
契約書の表題だけで決めず、何を引き渡す約束なのか、何を完成させる約束なのかを読むことになります。
ただ、二つの条文の組み立ては同じです。
受け取った側が不適合を知った時から1年以内に相手へ通知しないと、4つの手段を使えなくなります12。
直してもらう、代金や報酬を減らす、損害の賠償を求める、契約を解除する、の4つです。
売買か請負かで迷う取引でも、不具合を知ったら期間内に相手へ知らせる、という動き方は変わりません。
ここでいう不適合は、契約で約束した種類や品質と、実際に届いたものが合っていないことを指します1。
壊れているかどうかではなく、約束と違うかどうかが問われます。
そのため、何を約束したかが書かれた仕様書や発注書が、後で相手と話をするときの物差しになります。
検収の合否ではなく「知った時から1年以内の通知」が軸になる
検収で合格を出したら、その後に見つかった不具合は自社の見落としとして引き受けるしかない。
そう考えて、判を押す手が止まることがあります。
しかし条文が期間の起点に置いているのは、検収の日でも引渡しの日でもなく、受け取った側が不適合を知った時です12。
仮に、外注した受注管理システムを検収し、翌月の締め処理で初めて請求データの出力が仕様と違うと気づいたとします。
民法の既定で読む限り、この場合の期間は検収の日からではなく、締め処理で気づいた時から進みます。
検収の合否そのものが、後から相手に求める手段を消す仕組みにはなっていません。
その代わり、気づいてから何もしないまま時間が過ぎると、手段を失うおそれがあります。
条文が期間内に求めている行為は、相手への通知です。
通知した後に請求をどう進めるか、いつまでに行うかは、この条文とは別に確かめる必要があります。
実務で大切になるのは、いつ知ったかを後から説明できることです。
不具合に気づいた日、誰が何を操作して気づいたか、相手にいつ何を送ったかが残っていれば、期間内に通知したことを示しやすくなります。
逆に、現場の担当者は前から気づいていたのに管理部門へ上がっていなかった、という状態は、会社としていつ知ったのかを曖昧にします。
契約で期間や条件が変わる場合がある
ここまでは、契約で特に決めていない場合の民法の既定です。
契約書に検収の手順や、不具合を申し出られる期間、保証の範囲が書かれている場合は、まずそちらを読みます。
たとえば、検収完了から一定期間内に申し出たものに限って無償で直す、という条項があれば、契約の文言の上では起点が検収の日に置かれ、長さも民法の既定と違ってきます。
民法の既定では関係のなかった検収が、契約によって期間の起点になることがある。
これが、判を押す前に契約書を開く理由です。
こうした条項がどこまで効力を持つかは取引の事情によって判断が分かれるため、条項があるなら、書かれた期間の内に動けるよう備えておくのが安全です。
もう一つ、会社どうしの売買には、民法とは別に商法にも、受け取った物の検査と不具合の通知を早めに行うことを求める規定があります。
期間や適用の条件は取引の形で変わるので、売買の取引で検査を後回しにしてよい、とは読まないでください。
民法の1年は、受け取った物をすぐに確かめなくてよいという意味ではなく、知った後の動きを決めている規定と考えると、取り違えが少なくなります。
また、566条が対象にしているのは種類と品質の不適合で、数量の不足は文言に含まれていません1。
個数の不足や欠品は、受け取りの場で数えて確かめておくほうが、後で揉めにくくなります。
| 観点 | 売買(民法566条) | 請負(民法637条) |
|---|---|---|
| 当てはまりやすい納品物 | 既製の設備・機器・仕入品 | 受託開発のシステム・外注の制作物 |
| 通知する相手 | 売主 | 請負人 |
| 期間の起点 | 買主が不適合を知った時 | 注文者が不適合を知った時 |
| 通知しないと失う手段 | 追完・代金減額・損害賠償・解除 | 追完・報酬減額・損害賠償・解除 |
| 期間の制限が及ばない場合 | 売主が引渡し時に知っていた・重大な過失で知らなかった | 請負人が引渡し時(引渡し不要なら仕事の終了時)に知っていた・重大な過失で知らなかった |
▼ 図の内容を文字で読む
- 不適合を知る
- 気づいた日と経緯を記録する
- 知った時から1年以内に通知
- 通知しないまま過ぎると4つの手段を使えなくなる
- 4つの手段が残る
検収後に業務が止まる不具合が見つかったら、何をどこまで求められるか
求められる4つの手段:追完・減額・損害賠償・解除
期間内に通知した場合に残るのは、追完、代金や報酬の減額、損害賠償、解除の4つの手段です12。
追完は、不具合を直す、代わりの物を渡すなどして、契約どおりの状態にしてもらうことを指します。
名前が並ぶと自由に選べる選択肢のように見えますが、業務が止まっている場面では、どれから手を付けるかに順番があります。
先ほどの受注管理システムで、繁忙期に出荷指示が出せなくなったとします。
止まっている業務を動かすことが先なので、最初に相手へ求めるのは追完です。
直るまでの間、手作業で出荷指示を出した人手や、取引先への遅延の連絡が発生すれば、それは後で損害として話し合う材料になります。
直してもらえない、または直っても一部の機能が使えないまま残る場合には、その分の代金や報酬を減らす話になります。
業務の中心となる機能がいつまでも動かず、契約した目的そのものを果たせないなら、解除も視野に入ります。
それぞれの手段をどんな条件で使えるかは、期間の条文とは別の定めや契約の内容で決まります。
ここでは、期間内の通知がこれらを使える状態を保つ、という関係を押さえておけば足ります。
通知の段階では、まず追完を求めつつ、ほかの手段を放棄しない書き方にしておくと、後で減額や賠償の話になったときに筋が通りやすくなります。
修理だけを頼む文面にすると、相手がそれで話が済んだと受け取ることもあるからです。
相手が不適合を知っていた場合の例外
1年の期間には例外があります。
売買では、売主が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合、この期間の制限は適用されません1。
請負でも、請負人が引渡しの時、引渡しが要らない仕事なら仕事が終わった時に、不適合を知っていたか重大な過失で知らなかった場合は、期間の制限が外れます2。
知りながら黙って渡した相手まで、期間で守る理由はない、という考え方として読めます。
ただ、相手が引渡しの時に何を知っていたかを、発注側が後から示すのは簡単ではありません。
この例外は、期間を過ぎてしまったときに検討する余地として残るものであり、通知を遅らせてよい理由にはなりません。
相手が不具合を知っていたと疑うきっかけがあるなら、それも記録に残します。
たとえば、納品前のやり取りで相手が特定の動作の不安定さに触れていた、テスト結果の報告から一部の項目が抜けていた、といった事実です。
判断を専門家に委ねるとしても、材料が残っていなければ検討そのものができません。
停止による損害は契約の上限条項で左右される
業務が止まったときに発注側が負うのは、直す費用だけではありません。
止まっていた間に逃した注文、代わりの作業にかけた人手、取引先への対応も生じます。
そして、そのうちどこまでを相手に求められるかは、法律の既定だけでなく、契約にある損害賠償の定めに大きく左右されます。
契約書には、賠償の額に上限を置く条項や、間接的な損失を対象から外す条項が入っていることがあります。
たとえば、賠償の上限をその契約の代金の範囲に限る、という書き方です。
こうした条項があると、業務停止による損失が代金を大きく上回っても、契約の文言の上では上限までしか求められない形になります。
条項の効力や、実際にどこまで認められるかは事情で変わるため、金額の見込みを一般論で示すことはできません。
それでも、検収を迎える前に、この条項があるかどうかだけは知っておく必要があります。
停止に備えて残しておきたい記録は、止まった時刻と復旧した時刻、止まっていた業務の範囲、代わりに行った作業と人数、取引先とのやり取りです。
上限条項がある場合でも、どの損失が上限の内側に入るかを話し合うときに、この記録が土台になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 追完を求める
- 止まっている業務を動かすことが先
- 手作業の人手や遅延の連絡は損害として記録する
- 直らない分は減額を求める
- 一部の機能が使えないまま残る場合
止めないために、検収前に何を確認するか(納品物の種類別)
業務停止に直結する項目を先に決める
ここまでの手段は、不具合に気づき、それを相手に伝えられることが前提です。
そして業務が止まってから気づくより、検収の前に見つけて直してもらうほうが、止まる時間そのものをなくせます。
ただ、納品物のすべてを同じ深さで確かめようとすると、検収の期限に間に合わないこともあります。
そこで、確認の範囲を決める前に、自社の業務のうち止まってはならないものを先に書き出します。
受注を受け付ける、出荷を指示する、請求を出す、製造ラインを動かす、といった業務の単位で考え、それぞれについて、どの時間帯や時期に止まると困るのかを添えます。
この基準は法律や公的な資料が決めてくれるものではなく、各社が自分の業務から決めるものです。
書き出した業務に、納品物のどの部分が関わるかをつなげると、検収で深く確かめる範囲が見えてきます。
関わらない部分は、目視や簡単な動作の確認にとどめても、業務が止まる危険は小さく抑えられます。
この一覧を検収の前に相手と共有しておくと、相手も何を重点に準備すればよいかが分かります。
システム
業務システムの受託開発について、IPAのモデル取引・契約書の概要は、発注側と受注側が仕様やプロジェクト管理の方法、検収の方法などについて共通の理解を持ち、対話を深めることを期待しています3。
検収の方法は、納品されてから考えるものではなく、開発の途中で双方が合意しておくものだ、という位置づけです。
まだ合意できていないなら、検収の前に、どの業務をどの手順で試すかを相手と文書で取り決めるところから始めます。
確かめる中身は、画面ごとの動作より、業務の流れを通しで動かせるかが中心になります。
業務停止を防ぐ観点で、検収前に試しておきたい項目の例を挙げます。
・受注から出荷、請求までの一連の流れを、実際に近いデータで最後まで通す
・月末の締めや年度の切り替えなど、時期を選ぶ処理を前倒しで試す
・担当者ごとの権限で、使う人が実際に操作できるかを見る
・既存のシステムや取引先とのデータのやり取りが、想定どおりの形式で届くかを見る
・移行したデータが、件数だけでなく中身まで元のデータと一致するかを抜き取って照合する
・障害が起きたときの連絡先と、復旧までの手順が決まっているかを確かめる
時期を選ぶ処理は見落としやすい項目です。
検収の時期が月の半ばだと、締め処理を誰も動かさないまま合格が出て、翌月に初めて問題が表に出ることがあります。
その場合でも民法の既定では知った時から期間が進みますが、業務は止まってしまいます。
試験用のデータで締めの日付を作り、検収の前に動かしておく価値があります。
設備・仕入品
設備や仕入品は売買として受け取る取引が中心で、IPAの資料のような情報システム向けの枠組みは直接には当てはまりません。
ここでの確認は、届いた物が発注どおりの種類と品質で、自社の現場で使える状態かを見ることになります。
設備であれば、据付けた場所で、実際に流す材料や負荷に近い条件で試しに動かしてみるのが要になります。
出荷前の検査で問題がなくても、自社の電源や設置環境、前後の工程とつないだときに初めて分かる不具合があるからです。
取扱説明書や保守部品の手配先、故障したときの連絡窓口がそろっているかも、止まった後の復旧の速さに関わるので、このときに確かめます。
仕入品は、規格書や発注書と照合して種類と品質を確かめるとともに、個数や欠品を受け取りの場で数えます。
数量の不足は566条の文言に含まれていないため、数の確認を後回しにする理由はありません1。
ロットで届く品物なら、抜き取りで確かめた範囲と確かめていない範囲を分けて記録しておくと、後で不具合が出たときに説明しやすくなります。
外注成果物
デザインや文書、動画、調査報告のような外注の成果物は、請負に近い取引になることが多いはずです。
成果物は動作で確かめられない分、発注書や仕様のどこと照らし合わせるかを先に決めておかないと、良し悪しの議論が好みの話にずれていきます。
確かめる順番は、まず約束した形式で届いているか、次に約束した内容がそろっているか、最後に自社の業務でそのまま使えるかです。
たとえば販促用の制作物なら、指定したファイル形式で納品されているか、商品情報や価格の表記が発注時の資料と一致しているか、そのまま印刷や掲載に回せるかを見ます。
外注成果物では、機械が止まるというより、誤った表記のまま公開や配布に回り、差し替えや回収に追われる形で業務への影響が出ることがあります。
修正を何回まで、どこまで頼めるかが契約で決まっている場合は、検収の前に指摘をまとめて出すほうが有利です。
小出しに指摘すると修正の回数を消費し、検収の期限にも追われるからです。
▼ 図の内容を文字で読む
- システム
- 受注から出荷、請求までを実際に近いデータで通す
- 月末の締めなど時期を選ぶ処理を前倒しで試す
- 移行したデータの中身を抜き取って照合する
- 設備・仕入品
検収を保留・拒否するときの伝え方と、期限・みなし検収の確認点
不適合を特定して書面で通知する
検収の前に問題が見つかったとき、ただ判を押さずに置いておく、という止め方はおすすめしません。
相手は何を直せば合格になるのか分からず、支払いの時期だけが延びていくので、話がこじれやすくなります。
保留も拒否も、どこが約束と違うのかを特定して、相手に書面で伝えることで初めて意味を持ちます。
書面で伝える理由は、もう一つあります。
検収の後に見つかった不具合では、知った時から1年以内の通知が手段を残す要件になっています12。
検収前の指摘を記録に残す手順を作っておけば、検収後も同じ手順で通知でき、期間内に知らせたことを後から示しやすくなります。
通知に書いておきたい内容は次のとおりです。
・対象の契約と納品物、納品された日
・不具合に気づいた日と、気づいた経緯
・起きている現象と、再現の手順や画面、写真
・仕様書や発注書のどの記載と違うのか
・求める対応と、回答してほしい時期
・業務への影響がある場合は、その範囲
メールで送る場合も、件名に契約名と不具合の通知であることを入れ、本文と添付で内容が完結するようにしておくと、後で探すときに困りません。
口頭や電話で伝えた場合は、その日のうちに同じ内容をメールで送り直しておきます。
保留と拒否の使い分けは、業務への影響で考えると判断しやすくなります。
止まってはならない業務に関わる不具合なら、直るまで検収は通さず、その旨を明確に伝えます。
業務に関わらない軽い不具合だけなら、契約に部分的な検収や条件付きの合格の定めがあるかを見たうえで、残った不具合と直す時期を書面に残して先に進める、という選び方もあります。
検査期間とみなし検収の定めを確認する
契約書には、納品から一定の期間内に検査の結果を通知する、という検査期間の定めが置かれていることがあります。
さらに、その期間内に発注側が何も通知しなければ合格したものとみなす、という条項が付いている場合もあり、これをみなし検収と呼びます。
この条項があると、確認が終わらないまま期間が過ぎた時点で、契約の文言の上では検収が済んだ扱いになります。
みなし検収の条項が個別の取引でどこまで効力を持つかは、事情によって判断が分かれるため、一律には言えません。
発注側にできる備えは、期間を逃さないことです。
納品を受けた日に検査期間の終わる日を社内の予定表に入れ、担当者の休暇や繁忙期と重なるなら、代わりに判断する人を決めておきます。
期間内に確認が終わりそうにないときは、黙って過ぎるのを待たず、期間の延長を相手に申し入れ、合意した内容を書面に残します。
延長に応じてもらえない場合でも、期間内に見つかっている不具合を先に通知しておけば、少なくともその不具合については指摘した記録が残ります。
受注側の入金への影響をどう見るか
検収を止めると、受注側では請求や入金が遅れることがあります。
検収の完了を請求の条件にしている契約では、保留がそのまま相手の資金繰りに響きます。
だからこそ相手は早く合格を出してほしいと考え、発注側は不具合が残ったまま押し切られることを警戒する、という構図になりやすいのです。
この構図をほどくのは、何が直れば合格になるのかを具体的に示すことです。
直す範囲がはっきりすれば、相手は作業の見通しを立てられ、発注側も再検査で何を見ればよいかが決まります。
指摘が曖昧なまま保留を続けるのは、相手にとっては入金の見通しが立たない状態であり、発注側にとっても交渉の材料が残らない状態です。
受注側の規模や取引の内容によっては、受け取りから支払いまでの期日や、受け取りの拒否、やり直しの求め方について、民法とは別の法律で規制がかかる場合があります。
その規制に当たる取引では、発注側の都合で保留を続けることが問題になり得ます。
自社の取引が対象に当たるかは、公正取引委員会や中小企業庁の案内で、取引先の資本金などの条件とあわせて確かめておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 不適合を特定して書面で通知
- 気づいた日・現象・仕様との違い・求める対応
- 追完
- 直す範囲と時期を書面に残す
- 再検査
契約書のどこを見直せば、検収と停止のリスクを事前に減らせるか
検収条項
IPAのモデル取引・契約書は、民法の改正を反映した見直しの要点として3点を挙げています3。
報酬の減額を求める権利が救済の方法に加わったことへの対応、契約不適合責任での損害賠償と解除の位置づけ、権利を行使できる期間の制限への対応です。
情報システムの請負契約に向けた整理ですが、ここまでたどってきた論点と重なっており、設備や物品の売買契約を読むときの観点としても使えます。
まず検収条項では、誰が、何を基準に、いつまでに検査するのかが書かれているかを見ます。
基準が発注者の承認とだけ書かれ、何を満たせば承認するのかが空いていると、検収の場で基準そのものをめぐる議論が始まってしまいます。
先に書き出した、止まってはならない業務とその確かめ方を、検収の基準として契約や別紙に入れておけると、判断の物差しが双方で一致します。
あわせて、検査期間の長さが自社の確認に見合っているか、みなし検収の定めがあるか、不合格のときの再検査の手順があるかを見ます。
再検査の手順がないと、直した後に何をもって合格とするかが、その都度の話し合いになります。
通知期間
民法の既定は、不適合を知った時から1年以内の通知です12。
契約書に別の期間がある場合は、その起点が知った時なのか、検収や引渡しの時なのかを読み分けます。
起点が検収の日に置かれていると、締め処理や繁忙期のように時期を選んで初めて表に出る不具合が、気づいた時には期間を過ぎている、ということが起こり得ます。
自社の業務に、年に一度しか動かない処理や、季節で使い方が変わる設備があるなら、その時期が期間の内側に入るかを確かめます。
入らないなら、交渉で期間の延長を求めるか、検収の前にその処理を前倒しで試すか、どちらかの手当てが必要です。
賠償上限
損害賠償の定めでは、上限の有無と、その上限が何を基準にしているかを読みます。
代金の範囲に限る書き方なら、業務停止による損失の多くを自社で負うことになりかねません。
そのうえで、止まってはならない業務の一覧と照らして、業務が止まったときの影響を見積もり、上限との差が許容できるかを考えます。
差が大きいと感じるなら、上限の引き上げを求める、重大な過失による場合は上限を外す、停止の影響が大きい機能に限って別の扱いを決める、といった交渉の余地があります。
相手が応じるかどうかは取引の関係にもよりますが、少なくとも上限の存在を知ったうえで契約するかどうかを決められます。
停止時の対応
期間の条文が残してくれるのは、直してもらうなどの手段を使える状態です。
どれだけ早く直してもらえるかは、条文からは出てきません。
業務が止まったときに本当に必要なのは復旧の速さなので、ここは契約で決めておくしかない部分です。
見ておきたいのは、障害の連絡を受け付ける窓口と時間帯、連絡してから対応を始めるまでの目安、復旧までの間の代わりの手段、そして検収後の不具合を無償で直す範囲です。
システムでは保守運用の契約が開発の契約と別になっていることもあり、検収後の不具合が開発の契約で直されるのか、保守の契約で対応されるのかを分けて読む必要があります。

契約書を見直す時期は、次の発注や更新の前が現実的です。
すでに結んだ契約を今から変えるのは難しくても、今回の検収で困った点を記録しておけば、次の契約で何を求めるかがはっきりします。
検収の判を押す前は、契約書のどの条項が自社の取引に効いてくるのかを、担当者一人で読み切るには負担が大きい場面です。
手元の契約書と納品物の状況をもとに、検収で深く確かめる範囲と、不具合を通知した記録の残し方を整理するところから相談できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 後から手段を残せるか | 民法の既定では、不適合を知った時から1年以内に相手へ通知したか(契約で変わり得る) |
| 売買と請負 | 条文は566条と637条に分かれるが、通知で4つの手段を残す組み立ては同じ |
| 期間の例外 | 相手が引渡し時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合 |
| 検収前の確認 | 止まってはならない業務を先に決め、関わる部分を深く確かめる |
| 保留の伝え方 | 不適合を特定し、書面で通知して記録を残す |
| 契約書の点検 | 検収条項・通知期間・賠償上限・停止時の対応 |

次の発注や契約の更新を控えている時期は、今回の検収で困った点を契約に反映できる機会です。 検収条項・通知期間・賠償上限・停止時の対応の4点について、自社の業務に照らして相手と話し合うべき点と、専門家に確認すべき論点を切り分けられます。
よくある質問
検収を通した後でも、不具合を理由に修理や代替品を求められますか。
民法の既定では、検収の合否ではなく、不適合を知った時から1年以内に相手へ通知したかが基準です12。
通知していれば、修理や代替品などの追完を求める手段は残ります。
ただし、契約書で期間や起点を検収の日に置き換えている場合はその定めを確認する必要があり、会社どうしの売買には商法の規定もあるため、受け取り後の検査を後回しにしないことが前提です。
不具合に気づいてから1年たっていませんが、契約書に通知期間の短縮があった場合はどうなりますか。
契約の文言の上では、書かれた短い期間の内に動く必要があります。
その条項がどこまで効力を持つかは取引の事情によって判断が分かれるため、一律には言えません。
まずは契約の期間内に書面で通知し、すでに過ぎてしまった場合は、相手が引渡し時に不適合を知っていたかどうかも含めて、専門家に相談してください。
検収を保留している間に、納期や支払いの話がこじれたら、どう記録を残せばよいですか。
納品日、検査期間の終わる日、不具合を通知した日と内容、相手の回答、合意した延長や修正の予定を時系列で残します。
電話や打ち合わせで決まったことは、その日のうちにメールで送り直して記録にします。
あわせて、何が直れば合格になるのかを書面で示しておくと、保留の理由が相手にも第三者にも伝わりやすくなります。
取引の内容によっては支払いの期日などに法律の規制がかかる場合もあるため、その対象に当たるかも確かめておきます。
システムの外注と設備の購入で、確認する項目はどう違いますか。
システムの外注は請負に近く、業務の流れを通しで動かせるか、締め処理のような時期を選ぶ処理、データ移行の中身、障害時の連絡先が確認の中心になります。
設備の購入は売買が中心で、自社の設置環境と実際に近い負荷での試運転、保守部品と連絡窓口、付属品や数量が中心です。
どちらも、不具合を知ったら期間内に相手へ通知するという動き方は同じです12。
相手が不具合を知らせないまま納品していた場合は、どうなりますか。
売主や請負人が引渡しの時に不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合は、1年の期間の制限は適用されません12。
ただ、相手が何を知っていたかを発注側が示すのは簡単ではないため、この例外を当てにして通知を遅らせるのは避けてください。
相手が不具合に触れていたやり取りなど、疑うきっかけになった事実は記録に残しておきます。
- 1 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第566条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)」(2026年時点の現行条文)
- 2 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第637条(請負人の担保責任の期間の制限)」(2026年時点の現行条文)
- 3 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(受託開発(一部企画を含む)、保守運用)<第二版>」(2020年)
画像の出典元
- Two colleagues collaborating over documents and a laptop in a bright office setting./Photo by https://kaboompics.com/ on Pexels
- Two professionals discussing a contract at a business meeting with documents and a laptop./Photo by Mikhail Nilov on Pexels
- Close-up of hands writing and organizing documents on a wooden desk./Photo by Ron Lach on Pexels