◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 返答の前に、対象業務・使うメッセージ・通信手順・開始時期の4点を小売に確かめる
- 改修は業務データ(受注取り込み・出荷/請求出力)と通信(AS2・ebMS等とセキュリティ)の2層に分けて範囲を決める
- 対応方法は、取引先数・受ける業務の範囲・社内体制・小売が指定する手順の4軸で選ぶ
- 通常の卸売は取適法の委託に当たらないことが多く、費用協議の拠り所は優越ガイドラインや大規模小売業者告示の考え方になる
- 相談は範囲と工数の整理を先にし、費用は内訳・算出根拠・目的と自社の利益を確かめる順で進める
目次

小売から流通BMS対応を求められたら、返答の前に確認する4点
取引先の小売から「流通BMSで受発注をお願いしたい」と連絡が来ても、どのシステムをどこまで直すのか、費用は誰が持つのかが見えないままでは返事ができません。
先に決められるのは、範囲のほうです。
対象業務・使うメッセージ・通信手順・開始時期の4点を小売に確かめ、改修を業務データと通信の2層に分けると、自社が手を付ける場所と選べる対応方法が絞れます。
費用の負担については、一律に決めたルールはありません。
通常の卸売取引は取適法の対象外になることが多いため、協議の拠り所は独占禁止法の優越的地位の考え方などになります。
対象業務と使うメッセージ
小売からの依頼が「流通BMSでの取引に切り替えたい」という一文だけでは、卸の側で作業の大きさを見積もれません。
流通BMSは、卸・メーカーと小売の取引を対象にした電子データ交換(EDI)の標準です。
基本形では、発注・出荷・受領・返品・請求・支払の6業務が対象になっています1。
同じ「対応」という言葉でも、小売の発注データを受け取るだけなのか、出荷や請求のデータを自社から送り返すところまでなのかで、手を入れる範囲は大きく違います。
返答の前に小売へ確かめたいのは、次の4点です。
- 対象業務:6業務のうち、どこからどこまでをデータでやり取りするか
- 使うメッセージ:基本形か百貨店版か、どの版を前提にしているか
- 通信手順:どの通信プロトコルで、どの接続方法を受け付けるか
- 開始時期:いつから、どの順番で切り替えるか
メッセージの版も確かめておく理由があります。
基本形は、Ver1.0が2007年に公開されました。
2018年には、消費税の軽減税率に対応したVer2.0が公開されています1。
百貨店との取引向けには、2010年に百貨店版も公開されています1。
小売がどの版・どの形を前提にしているかで、自社が出力するデータの項目が変わります。
そのため、対象業務と組にして聞いておくと、後の見積もりがぶれにくくなります。
通信手順と開始時期
業務の範囲が決まっても、データをどう届けるかは別に決める必要があります。
流通BMSには、業務データの形を定めた標準とは別に、インターネットで送受信する際の通信プロトコルとセキュリティのガイドラインがあります。
このガイドラインは、AS2やebMSなどを対象にしています7。
小売がどの手順で接続してくるかによって、自社で用意する通信の仕組みが決まります。
ここは推測で準備を始めず、指定があるかどうかを先に聞いておきたいところです。
開始時期は、小売の要請内容でしか決まりません。
流通BMS協議会の推計では、流通BMSを導入している卸・メーカーは2025年時点で21,600社以上あり、直近の半年で700社以上増えたとされています2。
この数字から導入が広がっていることは分かりますが、これは業界全体の推計です。
自社がいつまでに対応すべきかを示すものではありません。
周囲の動きを理由に急ぐより、小売が想定している開始時期と、複数の取引先を順に切り替える計画なのかを確かめるほうが、社内の計画に直結します。
現行方式(FAX・旧来EDI等)との差
4点の答えがそろったら、いまの受注の流れと並べて差を見ます。
現在FAXで注文を受けているなら、紙の注文書を見て販売管理に入力している作業が、データの取り込みに置き換わります。
その代わり、データを受け取る通信の仕組みと、取り込んだデータを自社のコードや納品先に合わせる処理が新たに必要になります。
すでに電話回線を使う従来型のEDIでやり取りしている場合は、業務データの扱いには慣れていても、通信の手順そのものを入れ替える作業が残ります。
2016年の取材記事では、受注側の企業の担当者が「旧来のJCA手順や全銀手順を使う取引先が多く、通信手順の変更作業が大変だ」と語っています3。
移行の性質は、現行方式によって次のように分かれます。
FAXからの移行は、受注の仕組みを新しく作る作業です。
旧来EDIからの移行は、通信を入れ替え、業務データを標準の形に合わせ直す作業です。
この違いを押さえておくと、次に見る改修範囲の見当がつけやすくなります。
卸側で改修が必要になるのは業務データと通信の2層
業務データ側(受注取り込み・出荷/請求データ出力)
改修範囲を考えるときは、データの中身を扱う層と、データを運ぶ層を分けると整理しやすくなります。
流通BMSの標準も、業務ごとのデータの形と、通信のプロトコル・セキュリティを別々の資料で定めています17。
層ごとに、社内の誰と何を合わせればよいかが違うからです。
業務データの層でまず触るのは、小売から届く発注データを自社の受注として登録する部分です。
たとえば、小売が使う商品コードや店舗コードを自社の商品マスタ・得意先マスタと対応付け、納品日や数量を受注伝票に落とし込む処理がこれに当たります。
FAXの注文を担当者が読み替えて入力していた場合は、その読み替えの判断を対応表やルールとして書き出す作業が、改修の中身になります。
どこまで自動にできるかは、いまの販売管理システムにデータの取り込み口があるかどうかで変わります。
出荷・受領・請求まで求められている場合は、逆向きの流れも必要です。
自社で出荷を確定したら、その内容を小売の求める形で組み立てて送ります。
請求も同じくデータで出すため、出力側の処理が加わります。
受領は小売が検品した結果を受け取る業務なので、自社の出荷実績と突き合わせて差異を確かめる場面が生まれます。
発注だけの対応なら取り込み口の改修で済むこともありますが、請求まで含むと会計や売掛の処理にまで影響が及ぶ可能性があります。
どの機能がどこに関わるかは、各社のシステム構成によって異なります。
対象業務ごとに「どのシステムのどの画面・帳票に関係するか」を並べておくと、社内の見積もりにも小売への説明にも使えます。
通信側(AS2・ebMS等とセキュリティ)
通信の層は、小売とデータを確実にやり取りするための仕組みです。
協議会の通信プロトコル利用ガイドラインは、インターネットで送受信する際のAS2・ebMSなどの通信プロトコルとセキュリティの標準仕様、推奨されるパラメータを説明しています7。
標準があることで手順の種類は絞られます。
ただし実際に接続するには、小売と自社が同じ手順を選び、設定をそろえたうえで接続を試す必要があります。
この層の作業が重くなりやすいのは、取引先ごとに日程を合わせる必要があるからです。
2016年の取材記事では、受注側の企業が「切替は小売1社ずつ日程を調整して進め、事前の調整から利用開始まで約1カ月かかる」と説明しています3。
これは当時の1社の例で、いまの標準的な期間を示すものではありません。
それでも、通信の切替が「設定すれば終わる」作業ではなく、相手との共同作業であることは読み取れます。
現行がFAXや電話回線のEDIであれば、インターネット経由の通信環境を用意するところから始まります。
業務データの改修と並行して計画しておく必要があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 業務データの層
- 対象業務
- 使うメッセージ
- 通信の層
- 通信手順
自社対応・中継(Web-EDI等)・段階対応の選び方
比較の4軸
2層の作業を誰が持つかで、対応方法はいくつかに分かれます。
主な方法は次のとおりです。
まず、自社で通信と変換の仕組みを持ち、小売と直接つなぐ方法です。
次に、通信や変換を中継事業者のサービスに任せる方法です。
さらに、小売が用意するWeb-EDI(ブラウザの画面で受発注データをやり取りする方式)で受ける方法もあります。
それぞれを段階的に進める選び方も考えられます。
2016年の取材記事でも、従来の通信手順からの移行先として、流通BMSとWeb-EDIが並べて挙げられています3。
どれを選ぶかは、費用の安さだけでは決められません。
判断を分けるのは、次の4つの軸です。
- 取引先数:流通BMSでつなぐ小売が1社か、今後増えそうか
- 受ける業務の範囲:発注だけか、出荷・請求まで返すか
- 社内の体制:通信や変換の設定・保守を担える担当者がいるか
- 小売が指定する手順:接続の方法が決まっているか、選べるか
取引先数と業務の範囲は、仕組みを自社で持つ意味を左右します。
取引先が多く、出荷や請求まで返す業務が続くなら、同じ変換や通信の設定を何度も使い回すことになるため、仕組みを自社で持つ意味が出てきます。
反対に、1社の発注だけを受けるのであれば、大がかりな仕組みを持っても使う場面が限られます。
社内体制の軸は、導入後に効いてきます。
たとえば通信で使う証明書の更新や、接続トラブルの切り分けなど、仕組みを動かし続けるための作業があります。
こうした作業を自社で持てないなら、外部に任せる部分を増やす選び方になります。
最後の小売指定の手順は、ほかの3軸より優先されることがあります。
小売がWeb-EDIを用意していない場合や、特定のプロトコルでの接続しか受け付けない場合、自社の都合だけで方法を選ぶことはできないからです。
取引先数別の見方
流通BMSでつなぐ小売がまだ1社で、当面増える見込みがないなら、その小売が受け付ける方法のうち、自社の体制で無理なく動かせるものを選ぶのが現実的です。
Web-EDIが用意されていれば候補になります。
ただし、画面で受けた内容を自社の販売管理へどう移すかを決めておかないと、FAXからの手入力が画面からの転記に置き換わるだけになりかねません。
複数の小売から求められている場合や、今後増えそうな場合は事情が違います。
取引先ごとに別の方法で受けると、受注の入口が小売の数だけ増えます。
通信と変換を一つの基盤(自社の仕組みでも中継サービスでも)にまとめ、小売ごとの違いは設定で吸収する形にしておくと、2社目以降の作業は業務データの対応付けと接続の確認が中心になります。
どの中継サービスがどの手順や業務に対応しているかは、事業者ごとに違います。
費用の水準も条件で変わるため、候補を比べる際は、自社が受ける業務と小売の指定手順を伝えたうえで見積もりを取る必要があります。
段階対応は、開始時期と範囲を分けて考える方法です。
たとえば、発注データの受信から始め、出荷や請求のデータは社内の改修が終わってから加える進め方があります。
開始時期の早い小売から1社ずつ切り替える進め方も考えられます。
小売がこうした進め方を認めるかどうかは、相手の計画次第です。
相談の場で、自社の希望として伝えることになります。
| 対応方法 | 取引先数 | 受ける業務の範囲 | 社内の体制 | 小売の指定との関係 |
|---|---|---|---|---|
| 自社で通信・変換を持つ | 複数の小売とつなぐ・増える見込みがある | 出荷・請求まで返す | 設定・保守を担える担当者がいる | 指定の手順に自社で合わせる |
| 中継事業者のサービスを使う | 少数から複数まで | サービスの対応範囲による | 通信の担当者が少ない | サービスが小売の手順に対応しているかを確かめる |
| Web-EDIで受ける | 小売ごとに画面を使う | 小売の画面が扱う範囲 | 画面操作と社内システムへの移し方を決められる | 小売がWeb-EDIを用意している場合に限る |
| 段階対応 | 開始時期が異なる複数の小売 | 発注から始め後で業務を追加 | 少人数で順に進めたい | 小売が段階的な開始を認める場合 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社で通信と変換を持つ
- 取引先が多く、出荷や請求まで返す
- 設定・保守を担える担当者がいる
- 中継サービスに任せる
- 自社で持てない部分を外部に任せる
費用負担は誰が持つのか:取適法の対象かどうかを先に切り分ける
規格品の購入は「委託」にならない
改修の範囲が見えてくると、次に問題になるのが費用の持ち方です。
小売から卸・メーカーへの要請という構図から、取適法(旧下請法)で守られるのではないかと考える方もいるでしょう。
しかし、まず自社の取引がその対象に入るかを切り分ける必要があります。
取適法が対象にするのは、製造委託や役務提供委託などの「委託」の取引です。
公正取引委員会のQ&Aでは、規格品や標準品の購入は原則として「委託」にならないとされています4。
小売がメーカーブランドの商品を発注する場合も、汎用性が高く、その小売向けの変更がなければ規格品の購入と認められ、製造委託には当たらないと説明されています4。
卸が自社の取扱商品を小売に販売する通常の取引は、この形に近いことが多いため、取適法の対象外になる場合が多いと考えられます。
ただし、Q&Aは卸から小売への販売そのものについて直接答えているわけではありません。
上の見方は、Q&Aの考え方から導いたものです。
自社の取引が当てはまるか迷う場合は、公正取引委員会などの相談窓口で個別に確かめるのが確実です。
PB商品など仕様指定がある場合
一方で、小売のプライベートブランド(PB)商品のように、小売が仕様を指定して製造を頼んでいる取引は、規格品の購入とは性格が違います。
Q&Aの考え方からすると、その小売向けの変更を加えた商品の製造を頼む場合は製造委託に当たりうるため、取適法の対象になる可能性があります。
なお、対象になるかどうかは、取引の内容だけでなく、双方の資本金や従業員数の基準でも決まります。
取引の形だけで判断しないよう注意が必要です。
取適法の対象になる取引では、協議を行わずに代金を定めることは一方的な代金の決定に当たるとされています4。
流通BMS対応に伴う費用や作業を、話し合いのないまま取引価格の引き下げなどの形で織り込まれる場合には、この考え方が協議を求める拠り所になりえます。
同じ卸でも、PB商品の取引は対象に入り、通常の商品の販売は対象外という分かれ方をすることがあります。
取引ごとに整理しておくと、協議のときに根拠を使い分けられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 規格品・メーカーブランド品の販売
- 取適法の「委託」に当たらないことが多い
- 優越ガイドラインの考え方を拠り所にする
- PB商品など仕様を指定した製造
- 製造委託として取適法の対象になりうる
小売が大規模なら、優越的地位の濫用と大規模小売業者告示を根拠にできる
優越ガイドラインの見方
取適法の対象外だからといって、費用の持ち方を話し合う根拠がなくなるわけではありません。
独占禁止法の優越的地位の濫用に関する考え方(優越ガイドライン)は、継続的な取引の相手に経済上の利益の提供を求める行為を扱っています5。
ここでいう優越的な地位は、相手より相対的に優越していれば足ります。
判断は、取引への依存度や、取引先を変えられる可能性などから総合的に行われます5。
つまり、小売の規模が大きいというだけで決まるものではありません。
自社の売上に占めるその小売の比率や、ほかの販売先へ移せるかといった事情が見られるということです。
費用の負担を考えるうえで参考になるのは、協賛金などの扱いです。
ガイドラインでは、負担額や算出根拠、使途が明確でない場合や、提供する側が得る直接の利益を超える場合に問題となりうるとしています。
一方、直接の利益の範囲内で自由な意思により提供される場合は問題とならないとしています5。
この資料はEDI対応の費用そのものを扱ったものではありません。
それでも、小売から費用の分担を求められたとき、「金額の内訳は何か」「何に使われるのか」「自社にはどんな利益があるのか」を確かめる観点として使えます。
たとえば、受注の手入力が減るといった利益が自社にも生じる部分と、小売側の都合で生じる部分を分けて話せると、協議の論点がはっきりします。
告示が挙げるシステム利用料
相手が大規模な小売業者であれば、もう一つの拠り所があります。
大規模小売業者告示の運用基準では、一般消費者向けの小売で前年度の総売上高が100億円以上、または一定以上の店舗面積を持つ事業者を大規模小売業者としています6。
そのうえで、納入業者に本来提供する必要のない金銭を提供させることを禁じ、その例として受発注オンライン・システム等の利用料を挙げています6。
また、大規模小売業者の担当者が行うべきデータ処理を納入業者にさせることも、役務の提供として問題となりうるとされています6。
流通BMS対応に当てはめるなら、次のような場合が確認の対象になります。
一つは、小売が自社の受発注システムの利用料を卸に負担させる場合です。
もう一つは、本来は小売側で行うデータの入力や加工を卸に回す場合です。
たとえば、小売の担当者が入力するはずの発注情報を、卸が画面で代わりに入力するよう求められているなら、その作業が誰の業務なのかを話し合う材料になります。
EDI対応がこれに当たるかの限界
ただし、ここには越えられない線もあります。
運用基準の本文にEDIという言葉は出てきません。
標準のメッセージや通信手順で受発注したいという要請そのものが不当な利益の提供に当たるかどうかは、これらの資料からは判断できません。
小売が標準形式での取引を求めること自体が、直ちに違反になるわけではないということです。
そのため、協議でこれらの考え方を使うときは「違反ではないか」と迫るより、別の形が現実的です。
ガイドラインが示す観点に沿って費用の内訳・目的・自社が得る利益を確かめ、対等な立場で条件を話し合うよう求める形です。
要請の内容とやり取りを書面やメールで残しておくと、後で相談窓口に確かめるときにも事情を説明しやすくなります。

小売への相談の順序と、状況別の対応方針
相談の4ステップ
ここまでの整理を、小売とのやり取りの順番に置き直します。
費用の話から入ると、範囲が決まらないまま金額だけを交渉することになり、互いに根拠を示しにくくなります。
範囲と工数を先に固め、そのうえで希望と費用を話す順にすると、小売にとっても判断しやすい材料がそろいます。
- 対象業務・使うメッセージ・通信手順・開始時期を小売に確かめる
- 回答をもとに、業務データと通信の2層で自社の改修範囲と必要な工数を整理する
- 開始時期の猶予、発注から始める段階移行、受け付ける接続方法の選択など、自社の希望を伝える
- 費用の負担を求められた場合は、その内訳・算出根拠・目的と、自社が得る利益を確かめる
3番目の希望を伝える場面では、なぜその条件が必要かを2番目の整理とつなげて説明します。
そうすれば、単なる先延ばしの依頼と受け取られにくくなります。
たとえば「請求データの出力は会計システムの改修が必要で開始時期に間に合わないため、発注と出荷から始めたい」のように、範囲と理由を対にして伝える形です。
状況別の方針
現在FAXで受注していて、流通BMSで取引する小売がまだ1社の場合は、仕組みを新しく作る段階です。
小売が受け付ける方法の中から、社内で動かせるものを選びます。
発注の受信から始め、取り込み先の販売管理との対応付けを固めることを優先すると、後で業務を追加するときにもつなげやすくなります。
旧来のEDIで多くの小売と取引している場合は、通信の入れ替えが中心の課題です。
小売指定の手順に順に合わせていくことになりますが、取引先ごとに接続の調整が必要です。
どの小売をいつ切り替えるかの計画を自社側で持ち、開始時期の相談を早めに小売へ持ちかけることが要になります。
複数の小売から同時に求められている場合は、共通の通信基盤でまとめて受ける形を検討する価値があります。
小売ごとの違いは、メッセージの使い方や接続設定に残ります。
1社目で業務データの対応付けを固め、2社目以降は差分の確認に絞る順序にすると、負担を時期ごとに分けられます。
実例から見る切替の集中リスク
切替の順番を自社で持つべき理由は、2016年の取材記事に表れています。
約500弱の小売店と取引する受注側の企業の担当者は、取引先の10%強がすでにIP網に対応した流通BMSやWeb-EDIなどへ移行済みだと述べています3。
そのうえで、切替は小売1社ずつ日程を調整し、事前の調整から利用開始まで約1カ月かかると説明しています3。
さらに、残りの取引先の切替が直前に集中すると間に合わない取引先が出るおそれがあり、件数を平準化する必要があるとしています3。
この記事は、旧来の通信回線の終了予定を前提にした当時のもので、その後予定は変更されています。
1社の発言でもあるため、期間や割合をそのまま自社に当てはめることはできません。
それでも、1社ずつの調整は取引先の数だけ積み重なります。
依頼が重なった時期にまとめて対応しようとすると、社内の担当者と小売の双方の日程が詰まるという構造は変わりません。
複数の小売から要請が来ているなら、開始時期の早い順に並べ、自社が一定の期間に何社の切替を回せるかを見積もっておきます。
その枠に収まらない分を早めに小売へ相談しておけば、直前の詰まりを避ける手当てになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 小売1社と日程を調整する
- 事前の調整を進める
- 利用を開始し、次の小売の調整へ戻る
改修範囲は自社の販売管理や会計の構成によって変わり、小売の要請文だけでは業務データと通信のどちらにどれだけ作業が生じるかを判断しにくいためです。
小売から届いた要請内容と自社の受注・出荷・請求の流れを照らし合わせ、手を入れる場所と、小売に追加で確かめるべき点を整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 返答前の確認 | 対象業務・使うメッセージ・通信手順・開始時期 |
| 改修の層 | 業務データ(受注取り込み・出荷/請求出力)と通信(AS2・ebMS等とセキュリティ) |
| 対応方法の選択 | 取引先数・受ける業務の範囲・社内体制・小売が指定する手順 |
| 取適法 | 規格品の販売は委託に当たらないことが多い。PB商品など仕様指定の製造は対象になりうる |
| 独占禁止法側の拠り所 | 負担額・算出根拠・使途の明確さと直接の利益。大規模小売業者ならシステム利用料・データ処理の転嫁 |
| 相談の順序 | 範囲の確認→工数の整理→希望の提示→費用の内訳確認 |

複数の小売への切替の順番や、協議で伝える希望の組み立ては、取引先の構成と開始時期の重なり方によって答えが変わるためです。 取引先ごとの開始時期と対象業務を並べ、切替の順番と、小売に相談すべき時期や範囲の希望を確かめられます。
よくある質問
小売から流通BMS対応を求められたら、断ることはできるのか
流通BMSは業界団体が定めた標準仕様で、対応するかどうかは小売との取引条件として話し合う事柄です。
ただ、取引を続けたい相手からの要請を一方的に断ると、関係そのものに影響しかねません。
現実的なのは、全面的に受けるか断るかの二択にしないことです。
開始時期・対象業務・接続方法について、自社が対応できる条件を示して協議します。
要請に応じないことを理由に不利益な扱いを示唆されるような場合は、優越的地位の濫用の考え方に照らして、公正取引委員会などの相談窓口に確かめる選択肢もあります。
取適法の対象になる卸の取引とは、どのような取引か
小売が仕様を指定して製造を頼むPB商品のような取引は、製造委託として対象になりえます。
一方、規格品や標準品の購入は原則として委託に当たりません。
メーカーブランドの商品も、小売向けの変更がなく汎用性が高ければ製造委託には当たらないとされています4。
取引の内容に加えて資本金や従業員数の基準もかかわるため、個別の取引が当てはまるかは公正取引委員会などの窓口で確かめるのが確実です。
Web-EDIや中継サービスで対応しても、小売は受け付けるのか
受け付けるかどうかは、小売ごとの方針で決まります。
従来の通信手順からの移行先として、流通BMSとWeb-EDIを並べて挙げた取材記事もあります3。
しかし、その小売がWeb-EDIを用意しているか、中継サービス経由の接続を認めるかは、要請の段階で確かめる必要があります。
中継サービスを使う場合は、そのサービスが小売の指定する手順と、自社が受ける業務に対応しているかも事前に確かめておきます。
複数の小売から同時に対応を求められた場合、どの順で進めるか
一つの考え方は、開始時期の早い小売と、受ける業務の範囲が広い小売を見比べ、まず共通して必要になる部分を固めることです。
共通部分とは、通信の基盤と発注データの取り込みです。
切替は1社ずつ相手と調整する作業になるため、自社が一定の期間に回せる件数を見積もっておきます。
収まらない分は早めに時期を相談しておくと、直前の集中を避けやすくなります。
小売から費用の一部負担を求められたとき、何を確認すべきか
負担額とその算出根拠、何に使われるのか、自社がどんな利益を得るのかを確かめます。
優越ガイドラインでは、これらが明確でない場合や、提供する側の直接の利益を超える場合に問題となりうるとされています5。
相手が大規模小売業者に当たる場合は、受発注オンライン・システム等の利用料を本来必要のない負担の例として挙げる運用基準も参考になります6。
ただし、EDI対応の費用分担がこれらに当たるかは個別の事情で変わります。
確認した内容と回答を記録に残しておくと、後の相談の材料になります。
現行がFAXの場合、流通BMSの導入で何が変わるか
注文書を見て販売管理へ入力していた作業が、データの取り込みに置き換わります。
その代わり、データを受け取る通信の仕組みと、小売のコードを自社の商品・得意先に対応付ける処理を新たに用意する必要があります。
出荷や請求まで求められている場合は、自社から小売へデータを送る作業も加わります。
どこまでを対象にするかで、社内の変化の大きさが変わります。
- 1 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「流通BMS標準仕様(基本形)」(2025年閲覧)
- 2 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「第28回 卸・メーカーの流通BMS導入企業数推計」(2025年)
- 3 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 4 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年閲覧)
- 5 出典:公正取引委員会「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」(2026年閲覧)
- 6 出典:公正取引委員会「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法の運用基準」(2026年閲覧)
- 7 出典:流通BMS協議会(GS1 Japan)「通信基盤関連の標準」(2025年閲覧)
画像の出典元
- High stacks of cardboard boxes organized in a warehouse with a blue metal ceiling./Photo by Ihsan Adityawarman on Pexels
- Close-up of two business professionals discussing documents in a meeting./Photo by Kampus Production on Pexels
- Young professionals collaborating and brainstorming with sticky notes on a wall./Photo by RDNE Stock project on Pexels