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仕入先選定の相見積の取り方|同じ条件で依頼し、単価以外で比べて決める手順

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 相見積は値下げ競争の道具ではなく、同じ依頼書で条件をそろえ、同じ物差しで比べて仕入先を決める手順として使う。
  • 比較表は依頼書の項目を行にし、品質・納品・供給の安定・取引条件・税負担・総額を並べ、重みは見積を開く前に品目の重要度で決める。
  • 本則課税の買い手は、免税事業者からの仕入れの控除割合(令和8年10月から2年間は70%)を見積の実質コストに入れて比べる。
  • 条件がそろわない見積は違いを書き出し、特定の会社にだけ条件を緩めず、全社に同じ質問を同時に送って整える。
  • 取適法の対象になりうる取引では、他社見積で押し切らず、価格協議に応じて説明し、そのやり取りを記録に残す。

A focused businessman in a modern office, taking notes in front of a computer.
▽ 写真の出典元

仕入先の選定で相見積を取る場面と、取らなくてよい場面

仕入先に見積を頼んだのに、数量の前提も納期も支払条件もそろっておらず、どこが安いのか決められない。
既存の仕入先から値上げの知らせが届き、変えるべきか迷っている。
こうした迷いの多くは、見積の取り方を変えると減らせます。
相見積を値下げ競争の道具として使わず、同じ条件で依頼し、同じ物差しで比べる手順として使います。
依頼書で仕様・数量・納期・支払条件をそろえます。
そのうえで、単価のほかに品質、納品、供給の安定、取引条件、税負担まで並べて比べます。
決めたあとの価格の話し合いでは、2026年1月に施行された取適法が求める協議と説明を守ります。

仕入先を変えるか迷う場面

相見積とは、同じ品目を同じ条件で複数の仕入先候補に見積依頼し、返ってきた内容を比べて取引先を決める方法です。
手間がかかるのは、依頼書を作る段階と、返ってきた見積をそろえる段階です。
その手間に見合うかどうかは、いま何に困っているかで変わります。

既存の仕入先から値上げの知らせが届いた場合を考えてみます。
通知書だけを見ていると、受け入れるか断るかの二択に見えます。
同じ仕様・数量・納期で他の候補にも見積を頼むと、値上げ後の価格が自社の条件のもとでどの位置にあるのかが見えてきます。
そのうえで、仕入先を変えるのか、既存先と条件を話し合って取引を続けるのかを選べます。
相見積は乗り換えを前提にした手続きではありません。
変えるかどうかを決めるための材料集めとして使えます。

納期遅れや品質への不満がきっかけなら、比べる中心は価格よりも納品と品質になります。
見積書の単価を並べても、遅れや不良が減るかどうかは分かりません。
依頼の段階で、リードタイム(注文から納品までにかかる期間)、納入の頻度、品質基準への対応、不良が出たときの扱いを回答してもらいます。
そうすれば、いまの不満の原因に応えられる先かどうかを比べられます。

仕入先が一社に偏っていて不安だという場合にも、相見積は役に立ちます。
中小機構の開業マニュアルは、仕入先を見るときの条件として安定した供給体制を挙げ、仕入先が代替の調達先を持っているかを尋ねるとよいとしています4。
この資料は創業者向けで、小売の仕入を中心に書かれています。
それでも、供給が途切れたときに困るという事情は業種を問いません。
見積と一緒に供給体制を尋ねておくと、自社の側でも、いざというときに頼める候補を把握できます。

相見積を省いてよい場面の考え方

すべての仕入れに相見積をかける必要はありません。
相見積を取るべき金額や頻度を定めた公的な基準は見当たらないため、ここからは編集部の考え方として判断の軸を示します。
見るのは、仕入額の大きさ、継続して発注するか一度きりか、汎用品か特注品か、代わりに頼める先があるか、という点です。

仕入額が大きく、繰り返し発注する品目ほど、相見積の手間に対して得られる判断材料が多くなります。
単価の差は発注のたびに積み重なり、納期や品質の差も繰り返し効いてくるからです。
反対に、少額で一度きりの購入では、依頼書を作る手間のほうが大きくなりがちです。
価格が公開されていて、どこで買っても条件がほぼ同じ汎用品も同様です。

特注品で、作れる会社が実質的に限られている場合は、相見積そのものが成り立ちにくくなります。
このときは候補を無理に集めるより、既存先に単価の内訳や条件の根拠を尋ね、話し合いで条件を詰めるほうが判断に近づきます。
ただし、代わりの先がまったくないこと自体がリスクです。
すぐに切り替えない場合でも、候補を探しておく意味はあります。

もう一つ気をつけたいのは、相見積のたびに取引先を増やしてしまうことです。
中小機構は、仕入先の選定は条件などにより適正な数に絞り込む必要があり、無制限に増えるとトラブルの原因になるとしています5。
相見積は比べて選ぶための手順です。
声をかけた先すべてと取引を始めるためのものではありません。
依頼の前に、最終的に何社と取引を続けるつもりかを決めておくと、依頼先の絞り込みもしやすくなります。

観点 相見積の価値が大きい場面 省いても判断しやすい場面
仕入額 原価や利益への影響が大きい 少額で影響が小さい
取引の続き方 繰り返し発注する 一度きりの購入
品目の性質 仕様を示せば複数の会社が対応できる 価格が公開された汎用品/作れる会社が限られる特注品
代替先 一社に偏っていて代わりがない 既存の取引先どうしで条件を比べられる

見積を依頼する前に揃える条件と、依頼先の絞り方

依頼書に入れる項目

相見積を取ると決めたら、最初に作るのが見積依頼書です。
見積依頼書は、何を、どれだけ、いつまでに、どんな条件で買いたいのかを仕入先に伝える書面で、全社に同じものを送ります。
電話や口頭で個別に頼むと、相手ごとに伝わる前提が少しずつ変わり、返ってきた見積を比べられなくなります。

依頼書に次の項目を入れておくと、比較に必要な回答がそろいやすくなります。
項目の並びは編集部の提案で、品目に合わせて足し引きできます。

  • 品名と仕様:規格、図面、材質、品質基準、検査の有無
  • 数量:一回あたりの発注量、年間の発注見込み、最小ロットの希望
  • 納期と納入:希望納期、リードタイム、納入の頻度、納入場所、運賃の負担
  • 支払条件:締め日と支払日、支払方法
  • 見積に含める範囲:梱包、検査、型代や初期費用など別途になりうる費用
  • 事業者の情報:インボイス発行事業者の登録の有無、供給体制、代替の調達先
  • 回答の期限と見積の有効期限

このなかで特に食い違いが起きやすいのが数量です。
年間の見込みが大きいと伝えれば、仕入先はその量を前提に単価を下げて出すことがあります。
ところが実際の発注が見込みより少なければ、その単価は仕入先にとって採算の合わないものになります。
公正取引委員会は、多量の発注を前提に単価の見積りをさせ、その単価を少量発注の単価として代金を定めることを、買いたたきの例として挙げていました2。
見積り段階より発注内容が増えたのに、当初の見積価格を代金の額とすることも、同じく例として示されています2。

これらは旧・下請法の時代に公取委が示した例です。
2026年1月に下請法は取適法に変わっており1、新しい法律の下での扱いは公取委の運用基準で確かめる必要があります。
ここで同じ扱いだと断定はできません。
それでも、見積を取ったときの条件と実際に発注するときの条件がずれたまま、見積の単価だけを使い続けることが問題視されてきたのは確かです。
依頼書で数量を「一回あたり」と「年間見込み」に分けて書き、見込みが変わったら単価も話し合い直す前提を共有しておきます。
そうすれば、比較のしやすさと取引上の行き違いの防止を同時に満たせます。
自社が取適法の対象になるかは、取引の種類と資本金・従業員数で決まるため、決定後の交渉を扱う節で整理します。

依頼社数と候補の絞り方

何社に依頼すればよいかについて、公的な目安は確認できません。
中小機構が示しているのは、仕入先を適正な数に絞り込むという考え方までです5。
そこで編集部としては、社数から決めるのではなく、最後まで比較と取引の検討をやり切れる範囲で候補を選ぶことを勧めます。

候補を絞るときは、見積を頼む前に分かることで外していきます。
自社の品目を扱った実績があるか、納入場所に配送できるか、必要な数量が最小ロットに合うか、インボイス発行事業者かどうかといった点は、見積の金額を待たなくても確かめられます。
条件に合わない先まで依頼すると、比較表の行が増えるだけで判断は進みません。
既存の仕入先も候補に含めておくと、乗り換えない結論になったときにも、同じ物差しで比べた材料が手元に残ります。

これも編集部の考えですが、依頼するときは、複数の会社に見積を頼んでいることを伝えておくとよいでしょう。
相手も回答の前提をつかみやすくなります。
相見積であることを伏せたまま進めると、選ばなかったときの説明が難しくなります。

条件変更は全社に同時に伝える

依頼書を送ったあとで、仕入先から質問が届くことがあります。
「数量をこのロットに変えれば安くできる」「納期を延ばせるなら対応できる」といった提案もあるでしょう。
その質問や提案に答えて条件を変える場合は、変えた内容を全社に同じタイミングで伝えます。

特定の会社とのやり取りだけで条件が動くと、その会社は新しい条件で、ほかの会社は古い条件で見積を出すことになります。
金額の差が条件の差から来ているのか、会社ごとの力の差なのかが分からなくなり、比較をやり直す手間が生じます。
質問と回答を一覧にして全社に共有しておけば、どの会社も同じ情報で見積を作れます。

20代前半の日本人男性が電話会議室での通話をしている場面

仕入先からの提案が自社にとって有利なら、それを全社共通の条件として取り入れ、改めて全社に見積を頼む方法もあります。
その際、提案した会社の工夫をそのまま他社に見せることにならないよう、条件だけを示して提案元は伏せる配慮が要ります。

依頼条件のずれが生む二つの問題と、依頼書での手当て
依頼条件を相手ごとに変えると見積を比べられなくなり、見積時と発注時の条件がずれると公取委が買いたたきの例として挙げていた状態になる。数量を分けて書く依頼書が両方につながることを示す図1依頼条件を相手ごとに変える2返ってきた見積の前提がそろわない3同じ物差しで比べられない4見積時と発注時の数量・内容がずれる5多量前提の見積単価を少量発注に使う

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 依頼条件を相手ごとに変える
  2. 返ってきた見積の前提がそろわない
  3. 同じ物差しで比べられない
  4. 見積時と発注時の数量・内容がずれる
  5. 多量前提の見積単価を少量発注に使う

返ってきた見積を単価以外の物差しで比べる

品質・納品・供給力・取引条件の比較表

見積がそろったら、依頼書で尋ねた項目をそのまま比較表の行にします。
依頼の時点で項目をそろえておけば、返ってきた見積は同じ行に並べるだけで比べられます。

行の土台になるのは、中小機構が仕入先を見る観点として挙げている、品質、価格のバランス、取引条件の公正さ、正確で素早い納品、安定した供給体制、代替の調達先の有無です4。
この観点は小売の仕入を想定した開業マニュアルのものです。
部品や特注品では、品質基準への適合や検査の方法などの行を足すと、自社の品目に合った表になります。
税負担と総額の行は、次の小見出しで説明する理由から、編集部が加えたものです。

比較項目 見積や回答で見るところ 判断が分かれやすい点
品質 仕様・品質基準への対応、検査の有無、不良時の扱い 見本や試作で確かめるまで差が見えにくい
価格のバランス 単価、最小ロット、数量による単価の変化 単価が安くても最小ロットが大きいと在庫が増える
取引条件 支払条件、見積の有効期限、別途費用 型代や初期費用が単価の外に出ていないか
納品 リードタイム、納入頻度、運賃の負担 運賃別の見積は総額で比べ直す
供給の安定 生産や在庫の体制、欠品時の対応 見積書に書かれないことが多く、質問が要る
代替先 仕入先自身が持つ代替の調達先 自社にとっての代替先とは分けて考える
税負担 インボイス発行事業者の登録の有無 本則課税の買い手では控除できる割合が変わる
総額 上の条件をそろえたうえでの支払総額 取引期間を通した額で見る

表にすると、単価だけで並べたときとは順位が入れ替わることがあります。
たとえば、単価は最も安いのに運賃が別で、最小ロットも依頼数量より大きい見積があったとします。
運賃を足し、余る分を在庫として抱える負担まで考えると、単価がやや高く運賃込みの見積より有利だとは言い切れなくなります。
こうした差は、総額の行で初めて見えてきます。

反対に、表にしても差がつかない行もあります。
供給の安定や代替先は見積書に書かれていないことが多く、回答がなければ空欄のままです。
空欄を「問題なし」と読まず、回答がない項目として残しておくと、追加の質問につなげられます。

インボイス制度の経過措置を実質コストに入れる

比較表に税負担の行を加えるのは、仕入先がインボイス発行事業者かどうかで、同じ見積額でも買い手の負担が変わることがあるからです。
インボイス発行事業者とは、登録を受け、登録番号を記載した請求書(インボイス)を発行できる事業者です。
仕入税額控除は、売上にかかる消費税から仕入にかかった消費税を差し引く仕組みです。
本則課税でこの控除を受けている買い手がインボイス発行事業者以外から仕入れる場合、控除は経過措置で定められた割合までしか受けられません。

国税庁によると、この控除できる割合は段階的に下がります。
令和8年10月から2年間は70%、令和10年10月から2年間は50%、令和12年10月から1年間は30%で、その後は控除できなくなります3。
令和8年10月より前はこれより高い割合でしたが、現在は70%の区間に入っています。

令和8年10月以後に開始する課税期間からは、インボイス発行事業者以外からの課税仕入れについて、経過措置を使える年間の合計額の上限が1億円になりました(改正前は10億円)3。
仕入額の大きい品目を免税事業者から仕入れている場合や、そうした先への切り替えを考えている場合は、この上限も比較の前提に入ります。

ここから言えるのは、免税事業者の見積をインボイス発行事業者の見積と単価だけで並べると、買い手の実質負担を見誤るおそれがあるということです。
仕入額に含まれる消費税相当額のうち、経過措置の割合で控除できる分を除いた残りは控除できず、その分だけ自社の納める消費税が増えます。
比較表では、見積額と並べて、控除できない分を上乗せした額を書いておくと、条件をそろえた比較になります。
これは国税庁の資料が示す割合をもとにした編集部の整理です。

継続取引では、取引期間のなかで割合が変わる点にも注意が要ります。
今の割合で比べて差が小さくても、令和10年10月以降は控除できる割合が下がるため、同じ見積額のままなら実質負担の差は広がります。
見積の有効期限や契約期間が割合の切り替わりをまたぐかどうかを比較表の脇に書いておくと、判断がぶれにくくなります。

この割合は、本則課税で仕入税額控除を受ける買い手についての話です。
簡易課税などを選んでいる買い手にどう影響するかは、ここでは確かめていません。
自社の課税方式が分からない場合や簡易課税を使っている場合は、顧問税理士などに確認してから税負担の行を埋めるのが確実です。

重みづけは品目の重要度で決める

行がそろったら、どの行をどれだけ重く見るかを決めます。
評価項目の重みづけについて公的な目安は確認できないため、ここも編集部の提案です。
基本の考え方は、その品目が止まったり不良が出たりしたときに、自社のどこにどれだけ影響が出るかで重さを決めることです。

欠品すると製造ラインや店頭の販売が止まる品目なら、納品と供給の安定、代替先の行を重く見ます。
多少の遅れは在庫で吸収でき、品質の差も出にくい消耗品なら、総額の行を重く見てよいでしょう。
同じ会社のなかでも、品目によって重みが変わるのは自然なことです。

Close-up of a business meeting with documents and laptop on a white table.
▽ 写真の出典元

重みは見積を開ける前に決めておきます。
見積を見てから決めると、気に入った会社が勝つように重みを動かしたくなり、比較表が結論の後付けになってしまうからです。
先に決めて記録しておけば、社内で結論を説明するときにも、選ばなかった先に理由を伝えるときにも、同じ根拠を示せます。

期間 控除できる割合(%)
令和5年10月から3年間 80
令和8年10月から2年間 70
令和10年10月から2年間 50
令和12年10月から1年間 30
令和13年10月以降 0

金額や条件が揃わない見積を整えて、比較できる形にする

条件の違いを書き出す

依頼書をそろえて送っても、返ってくる見積が同じ形になるとは限りません。
運賃を別に書く会社、依頼した数量より大きい最小ロットで出してくる会社、支払条件を自社の標準に置き換えてくる会社など、前提がずれた見積は珍しくありません。
そのまま比較表に載せると、条件の違いが金額の違いに見えてしまいます。

まずは依頼書の項目ごとに、各社の見積が依頼どおりかどうかを書き出します。
手順は次のとおりで、これは編集部の提案です。

  1. 依頼書の項目を縦に並べ、各社の見積の記載を横に書き写す
  2. 依頼と違う箇所、記載がない箇所に印を付ける
  3. 違いが「見積の前提の読み違い」なのか、「その会社が出せる条件」なのかを分ける
  4. 記載がない項目と読み違いは、全社に同じ質問を同時に送って補う
  5. そろえた条件で再見積を頼むか、比較表のなかで条件差を負担として書き込む

判断が分かれるのは三つ目の仕分けです。
読み違いであれば、依頼書の書き方を補って全社に伝え直せば済みます。
一方、「この数量でないと作れない」「この支払条件でないと受けられない」という会社の条件であれば、それ自体が比較の材料です。
無理に依頼どおりに直させるのではなく、その条件を受け入れたら在庫や資金繰りにどんな影響が出るかを、比較表に書き込みます。

このとき気をつけたいのは、特定の会社にだけ条件を緩めないことです。
「御社だけはこの最小ロットでよい」と個別に認めると、ほかの会社は厳しい条件で見積を出したことになり、比べる意味が薄れます。
条件を緩めるなら全社に同じく伝え、改めて見積を頼みます。

金額の差が大きい見積を見つけると、どこかに誤りがあると考えたくなります。
ただ、差の大きさだけでは、条件の読み違いなのか、その会社の調達や生産の事情なのかは決められません。
明細と条件を依頼書と一つずつ照らし合わせ、差がどの項目から生じているのかを突き止めるのが先です。

内訳の提出を依頼する

条件をそろえても単価の差が説明できないときは、単価の内訳を尋ねる方法があります。
材料費、加工費、運賃、梱包費などに分けてもらうと、どこで差がついているのかが分かります。
材料費は同程度で加工費に差があるなら、工程や設備の違いを尋ねる手がかりになります。
運賃の差なら、納入頻度やまとめ方を変える話し合いにつなげられます。

内訳は、決めたあとの価格の話し合いでも役に立ちます。
材料の値動きなどを理由に価格の見直しを求められたとき、どの費目がどう変わったのかを同じ形で比べられるからです。
相見積の段階で内訳の形をそろえておくと、取引が始まってからの協議の土台にもなります。

ただし、再見積や内訳の作成は、仕入先にとって手間のかかる作業です。
何度も条件を変えて取り直したり、取引の見込みが薄い会社にまで詳しい内訳を求めたりすると、仕入先の負担が増え、次に依頼するときの関係にも響きます。
依頼は比較に必要な範囲にとどめ、なぜ必要なのかを添えると、相手も応じやすくなります。

見積の段階の条件と発注の内容がずれたまま当初の単価で代金を決めることは、公取委が買いたたきの例として挙げていました2。
整えた条件が最終的な発注条件と一致しているかを、決定の前に見比べておくと、次の交渉を同じ前提で始められます。

30代後半の日本人男性が見積書の照合をしている場面

決めたあとの価格交渉、選ばなかった先への連絡、見直し

取適法で買い手が守ること

比較表で候補が決まると、最後に価格や条件の詰めが残ります。
この段階で知っておきたいのが、2026年1月に下請法から変わった取適法です1。
公正取引委員会によると、取適法は、中小受託事業者から価格協議の求めがあったのに協議に応じず、または必要な説明をせずに、一方的に価格を決める行為を禁止しています1。
中小受託事業者とは、取適法の対象となる取引で仕事を受ける側の事業者で、発注する側は委託事業者と呼ばれます。

自社が委託事業者に当たるかどうかは、取引の種類と、自社と相手の規模で決まります。
取引の種類は製造委託等や役務提供委託等に分かれ、規模は資本金の基準に加えて従業員数の基準でも判断します。
資本金の基準に当てはまらなくても従業員数の基準に当てはまれば対象となり、その基準は製造委託等で300人、役務提供委託等で100人です1。
相見積で選ぶ取引が、自社の仕様で製造や加工を頼むものか、既にある商品を仕入れるものかによっても見方が変わりうるため、具体的な当てはめは公取委の資料や窓口で確かめる必要があります。

相見積との関係で気をつけたいのは、他社の見積を値下げの材料にして押し切る進め方です。
既存の仕入先に「他社はこの価格だった」とだけ伝えて単価を決めてしまうと、仕入先が価格の根拠を説明したくても、話し合いの場がないまま決まってしまいます。
取適法の対象になりうる取引では、仕入先の説明を聞き、自社の考えを説明し、そのやり取りを記録に残す進め方が、法律の求める協議に沿います。
対象にならない取引であっても、協議と説明の記録があれば、あとで条件をめぐる行き違いが起きたときに確かめる材料になります。

値上げを求めてきた既存先との話し合いも同じです。
相見積の結果、値上げ後の価格がほかの候補より高いと分かっても、それだけで要求を退けるのではなく、値上げの理由と内訳を聞き、比較の結果も説明します。
そのうえで、受け入れるか、条件を変えるか、仕入先を変えるかを決めます。
内訳の形をそろえておけば、この話し合いで費目ごとに比べられます。

選ばなかった先・既存先への伝え方

選ばなかった仕入先への連絡について、決まった作法を示す公的な資料はありません。
編集部としては、決まった時点で速やかに結果を伝え、見積を作ってくれたことへの礼を添えることを勧めます。
見積は相手が時間をかけて作ったものなので、返事がないまま終わると、次に依頼するときに応じてもらいにくくなります。

理由は、比較表の観点の単位で伝えるのが無難です。
「納期の条件で今回は別の先に決めた」「供給体制を重視した」といった伝え方なら、相手は次の提案に生かせます。
一方、選んだ会社の名前や見積額を示すのは控えたほうがよいでしょう。
見積はそれぞれの会社が自社に向けて出したもので、ほかの会社に見せることまで想定されていないからです。

既存の仕入先から乗り換える場合は、切り替えの段取りも伝える内容に入ります。
最後の発注の時期、残っている注文や在庫の扱い、未払いの代金の支払時期を、相手と確かめながら決めます。
中小機構は、期日どおりに支払うことを、仕入先との良好な関係を続ける大原則としています5。
取引を終える先にも最後まで期日どおりに支払っておけば、将来ふたたび候補として声をかける余地が残ります。
選ばなかった先や取引を終えた先は、自社にとっての代替先の候補でもあります。

取引開始後の見直し

相見積で選んだ時点の判断は、見積書と回答をもとにした予想です。
実際に取引を始めると、リードタイムどおりに届くか、欠品や不良がどのくらい出るか、問い合わせへの対応はどうかといった、見積では分からなかったことが見えてきます。
取引後の評価の運用は会社ごとに決めるもので、ここからは編集部の提案です。

見直しの材料には、比較表の行をそのまま使います。
選定のときに重く見た納品や供給の安定の行に、実際の納期の守られ方、欠品、不良、対応の記録を書き足していけば、選んだ理由が当たっていたかを同じ物差しで確かめられます。
記録が残っていれば、次に条件を話し合うときにも、印象ではなく事実をもとに話せます。

見直しのきっかけは、定期的な時期を決めておくほか、条件が変わる節目に合わせると無理がありません。
見積の有効期限や契約の更新時期、仕入先から価格の見直しを求められたとき、そして免税事業者から仕入れている場合は経過措置の割合が切り替わる時期が節目になります。
節目が来たら、比較表を作り直すほどの変化があるかを確かめ、必要なら依頼書を更新して相見積を取り直します。
依頼から見直しまでが一巡すると、次の依頼書に前回の記録を反映させられます。

相見積から取引後の見直しまでの一巡
依頼書の送付、見積の整理、比較、協議と決定、取引中の記録、節目での見直しと依頼書の更新を経て、再び依頼書の送付へ戻る循環の図1依頼書を作り、全社に同じ条件で送る2返ってきた見積の条件差を書き出してそろえる3比較表と事前に決めた重みで比べる4協議と説明を経て価格・条件を決める5取引中の納期・欠品・不良・対応を記録する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 依頼書を作り、全社に同じ条件で送る
  2. 返ってきた見積の条件差を書き出してそろえる
  3. 比較表と事前に決めた重みで比べる
  4. 協議と説明を経て価格・条件を決める
  5. 取引中の納期・欠品・不良・対応を記録する

依頼書の項目と比較表の行が決まらないまま見積を集めると、あとでそろえ直しや再見積が必要になるため、依頼を出す前に整理しておく意味があります。

自社の品目と取引の続き方に照らして、依頼書でそろえる条件と、比較表で重く見る行を確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

相見積を取るか 仕入額、継続か単発か、汎用品か特注品か、代替先の有無で判断する
依頼の仕方 同じ依頼書を全社に送り、数量は一回あたりと年間見込みに分けて書く
条件の変更 質問への回答や条件の変更は全社に同時に伝える
比べ方 依頼書の項目を比較表の行にし、重みは見積を開く前に決める
税負担 本則課税の買い手は、免税事業者からの仕入れの控除割合を実質コストに入れる
揃わない見積 違いを書き出し、読み違いか会社の条件かを分け、特定の会社だけに条件を緩めない
決定後の交渉 取適法の対象になりうる取引は、協議に応じて説明し、記録を残す
見直し 取引中の記録を比較表に書き足し、有効期限や契約更新などの節目で依頼書を更新する
50代前半の日本人女性が発送控えのファイリングをしている場面

税負担の比べ方や取適法の当てはまり方は、自社の課税方式や取引の種類によって答えが変わり、記事だけでは決めきれない部分が残るためです。 見積の比較表に税負担や取引条件をどう載せるか、どこから先を税理士や公取委の窓口に確認すべきかを整理できます。

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よくある質問

相見積は最低何社に依頼すればよいか。

何社以上という公的な基準は確認できません。
中小機構は、仕入先を適正な数に絞り込む必要があるとしています5。
編集部としては、既存先を含めて比較が成り立つ数に頼み、最後まで比較と検討をやり切れる範囲にとどめることを勧めます。
取扱実績、納入地域、最小ロット、インボイス発行事業者かどうかなど、見積の前に分かる条件で候補を絞ると、依頼先が増えすぎません。

既存の仕入先に、他社の見積額を見せて値下げを求めてもよいか。

他社見積の開示の可否を定めた公的な目安は確認できていません。
見積はそれぞれの会社が自社に向けて出したものなので、そのまま見せるのは避け、比較で分かった条件の違いを伝える形が無難だと編集部は考えます。
取適法の対象になりうる取引では、価格協議の求めに応じず、必要な説明もしないまま一方的に価格を決めることが禁止されています1。
他社の金額を示して押し切るのではなく、仕入先の説明を聞き、自社の考えを説明し、記録を残す進め方が安全です。

見積の条件が1社だけ違っていた場合、そのまま比較してよいか。

そのまま並べると、条件の違いが金額の違いに見えてしまいます。
まず違いが前提の読み違いか、その会社が出せる条件なのかを分けます。
読み違いなら、依頼書の書き方を補って全社に同時に伝え直します。
会社の条件なら、それを受け入れた場合の在庫や資金繰りへの影響を比較表に書き込みます。
その会社にだけ条件を緩めると比較の意味が薄れるため、緩めるなら全社に同じく伝えます。

免税事業者の仕入先と、インボイス発行事業者の仕入先の見積はどう比べるか。

本則課税で仕入税額控除を受ける買い手の場合、インボイス発行事業者以外からの仕入れは、経過措置の割合までしか控除できません。
令和8年10月から2年間は70%、令和10年10月から2年間は50%、令和12年10月から1年間は30%と下がります3。
控除できない分を見積額に上乗せして比べると、実質負担をそろえた比較になります。
令和8年10月以後に開始する課税期間からは、経過措置を使える年間の合計額の上限が1億円になった点も前提に入ります3。
簡易課税などの買い手への影響はここでは確かめていないため、顧問税理士などに確認してください。

選ばなかった仕入先には、理由をどこまで伝えるべきか。

決まった作法を示す公的な資料はありません。
編集部としては、速やかに結果を伝えて見積への礼を添え、理由は「納期の条件」「供給体制を重視した」など比較表の観点の単位で伝えることを勧めます。
選んだ会社の名前や見積額は示さないほうが無難です。
選ばなかった先は、将来の代替先の候補でもあります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(改正のポイント)」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「下請法 知っておきたい豆情報 その12(買いたたき)」(年次不明)
  3. 3 出典:国税庁「令和8年度税制改正特集(インボイス制度関係)仕入税額控除に係る経過措置」(2026年)
  4. 4 出典:中小企業基盤整備機構(J-Net21)「仕入先の探し方」(年次不明)
  5. 5 出典:中小企業基盤整備機構(J-Net21)「仕入品を管理するには」(年次不明)

画像の出典元

  1. A focused businessman in a modern office, taking notes in front of a computer./Photo by Vitaly Gariev on Pexels
  2. Close-up of a business meeting with documents and laptop on a white table./Photo by Mikhail Nilov on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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