◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 受発注システムの初期費用は導入方式で桁が変わり、提供元の目安ではSaaS型が30~50万円、料金例では50万〜150万円の幅がある
- 同じSaaSでもプランと機能の組み合わせで初期費用が動くため、見積の金額差は明細で機能と結びつけて判断する
- 稟議の予算は初期費用だけでなく、少なくとも一年分の月額と別途費用、取引先側の負担まで含めて組む
- 補助金は、取引先にアカウントを無償で渡す発注側なら電子取引類型、自社のために入れるなら通常枠を確かめ、初期費用が対象になるかは公募要領で確認する
目次

受発注システムの初期費用は、導入方式でどこまで変わるか
紙やFAX、メールで届く注文を毎日転記していて、受発注のシステム化を稟議に出したい。
けれど初期費用の目安がなく、見積をもらっても高いのか妥当なのか判断できない。
この段階で先に決められるのは、どの導入方式を前提に比べるかです。
提供元が示す目安と料金例では、クラウド型(SaaS)の初期費用は30万〜150万円ほどの幅にあり、個別開発になると桁が上がります12。
同じ方式でも機能や別費用で金額は動きます。
そのため、要件を固めてから初期費用・月額・別途費用を同じ軸で並べると、見積の妥当性を判断しやすくなります。
補助金は、自社が発注側か受注側かで使える枠が変わります。
SaaS・パッケージ・個別開発の桁の違い
受発注システムの初期費用で、金額を最初に大きく分けるのは「どの方式で入れるか」です。
方式は大きく三つに分かれます。
- SaaS(サース):提供元がクラウド上に用意した受発注の仕組みを、アカウントを発行してもらって使う方式です。
自社でサーバーを持たず、利用料を払い続けます。 - パッケージ(ハーフスクラッチ):既製のシステムを土台にして、自社の業務に合わない部分を追加開発で整える方式です。
- フルスクラッチ(個別開発):画面や機能を自社の業務に合わせて一から作る方式です。
受発注システムを提供する竹田印刷は、自社調べの目安として、SaaS型の初期費用を30~50万円としています1。
同じ資料では、パッケージとフルスクラッチをSaaSより上の価格帯に置いています。
金額の決まり方は、フルスクラッチが規模と機能の数、パッケージが追加開発の量だと説明されています1。
方式を決めないうちは、見積が数十万円台に収まるのか、それとも上の桁になるのかさえ定まりません。
稟議で最初に方式別の目安を示すのは、この桁を先に決めるためです。
上司から「いくらかかるのか」と聞かれ、方式を決めないまま答えると、SaaSを想定した数字と個別開発を想定した数字が混ざり、話が噛み合いません。
先に「既製のクラウドサービスで業務が回るか、それとも自社専用に作り込む必要があるか」を決めれば、予算の桁が決まります。
そのうえで、方式の中で金額がどこに落ち着くかを詰めていく順番になります。
ただし、ここで挙げた数字は受発注システムを提供する一社の目安で、市場全体を調べた相場ではありません。
同じ記事の中でも、表ではSaaSの初期費用を30~50万円としています。
一方で本文には、導入までに50万円程度、毎月の運用に20万円程度かかる想定と書かれています1。
一つの資料の中でも表と本文の数字がずれているので、目安は一点の金額ではなく、おおよその幅として受け取るほうが安全です。
提供元の料金例に見る初期費用の幅
目安の幅が実際の料金でどう現れるかは、提供元が公開している料金例で確かめられます。
竹田印刷が運営するTS-BASE受発注の料金ページには6件の料金例があり、初期費用は最も低い例で50万円、最も高い例で150万円です2。
料金例はどれも、プランに具体的な機能を組み合わせた構成として示されています。
そのため、目安の30~50万円より上まで広がっています。
どの組み合わせで金額が動いているのかは、次の節で詳しく見ます。
一方で、初期費用が0円のサービスもあります。
COREC の発注側向けの料金は初期費用0円で、無料プランと月額1,480円(税別)のプランが案内されています3。
ただし COREC の発注側の使い方は、発注書を作って取引先へ送ることが中心です。
取引先ごとに商品を見せ分けたり、受けた注文を出荷までつないだりする受注サイトとは役割が違います。
0円という数字を受発注システム全体の初期費用の下限として扱うと、比べる相手を取り違えます。
自社の料金がどちらに近いかは、システムで何をしたいかで決まります。
注文を出す側で、仕入先への発注書をそろえて送りたいだけなら、発注書送信型の料金が参考になります。
注文を受ける側で、取引先が注文を入れる画面を用意したいなら、受注サイト型の料金例のほうが近くなります。
この「自社が注文を出す側か、受ける側か」という区別は、後で取引先の負担や補助金の枠を考えるときにも効いてきます。
| 方式 | 仕組み | 金額が増える要因 | 導入後に続く費用 |
|---|---|---|---|
| SaaS | 提供元のクラウドサービスを使う | アカウント数に応じた従量課金・オプション・独自カスタマイズ | 利用料・追加した機能の費用 |
| パッケージ(ハーフスクラッチ) | 既製システムに追加開発する | 追加開発の量 | 追加開発分の改修 |
| フルスクラッチ(個別開発) | 一から自社専用に作る | 規模と機能の数 | ドメイン維持費・SSL証明書費・改善のスポット費用 |
▼ 図の内容を文字で読む
- SaaS
- 提供元のクラウド上の仕組みを、アカウントを発行してもらって使う
- 自社でサーバーを持たず、利用料を払い続ける
- 初期費用の目安は30~50万円(提供元一社の調べで市場相場ではない)
- パッケージ(ハーフスクラッチ)
同じ方式でも金額が変わる条件は何か
機能の違いが初期費用に出る例
方式をSaaSに決めても、見積は一つの金額に収まりません。
TS-BASE受発注の料金例は、受注プランか受注+出荷プランを土台に、承認機能、仕入先FAX連携、ユーザーグループ、複数配送先への一括注文などの機能を組み合わせた構成になっています2。
構成が分かる3件の初期費用は、次の図のとおりです。
並べて目を引くのは、プランの大きさと初期費用の順序が一致しないことです。
例04は出荷を含まない受注プランですが、初期費用は受注+出荷プランの例01より高くなっています2。
例04には、仕入先の情報を登録し、発注書を作ってFAXで送る機能が含まれています。
例01と例06はどちらも受注+出荷プランで部署別在庫を含んでいます。
ただ、例01には送り状連携が、例06には複数配送先への一括注文が入っていて、初期費用は50万円と150万円に分かれています2。
業務の範囲が広く、組み込む機能が多い構成ほど、初期費用が高い傾向は読み取れます。
ただし、これは一社の料金例6件を見比べて分かる範囲の傾向です。
どの機能がいくら上乗せしているのか、機能だけが差の理由なのかまでは分かりません。
見積で同じような差が出たときは、金額の差がどの機能から来ているのかを、提供元に内訳で示してもらうのが確実です。
自社に当てはめるときは、料金例の機能名を自社の作業に言い換えて読むと距離が縮まります。
たとえば、受けた注文をもとに担当者が仕入先へFAXで発注し直しているなら、仕入先FAX連携に近い要件があります。
注文を確定する前に社内の承認を通しているなら承認機能が、取引先ごとに見せる商品を変えているならユーザーグループが候補に入ります。
一度の注文で届け先が複数に分かれるなら、複数配送先が候補です。
自社の作業に当てはまる機能を拾っていくと、どの料金例の構成に近いのか、見積がどのあたりに落ち着きそうかの当たりが付きます。
アカウント数・追加開発など費用の増え方
機能のほかにも、金額を動かす要素があります。
竹田印刷は、方式ごとに費用の増え方が違うと説明しています1。
SaaSは利用するアカウント数に応じて料金が増える従量課金が一般的で、オプションの追加や独自のカスタマイズは別途の費用です1。
フルスクラッチは規模と機能の数で金額が変わり、パッケージは追加開発が多いほど高くなるとされています1。
増え方の違いは、見積を比べるときの落とし穴になります。
SaaSの見積が標準機能だけの金額で出ていると、自社に必要な機能をオプションで足した時点で金額が上がります。
パッケージでは、既製の部分で足りない業務が多いほど追加開発が膨らみます。
どちらの場合も、最初に提示された金額ではなく、自社の要件を全部入れたときの金額で比べないと、安く見えた見積が後から逆転することがあります。

アカウント数に応じた料金は、導入時より運用が続いてから効いてきます。
受注を担当する人が今後増える見込みがある場合や、営業担当にも注文状況を見せたい場合は、使う人数が導入時より増えていきます。
こうした見込みがあるなら、いまの人数と増えた後の人数の両方で料金がどう変わるかを、見積の段階で聞いておくと、稟議の数字が実態から離れにくくなります。
| 料金例 | 初期費用(万円) |
|---|---|
| 例01 受注+出荷プラン(部署別在庫・送り状連携) | 50 |
| 例04 受注プラン(仕入先マスタ・発注書作成・FAX連携) | 95 |
| 例06 受注+出荷プラン(複数配送先・部署別在庫) | 150 |
初期費用に含まれるものと、別にかかる費用・取引先の負担
月額・オプション・カスタマイズ・保守
稟議に初期費用だけを書いて予算を通すと、導入した翌月から足りなくなります。
SaaSは使い続ける限り月額がかかり、TS-BASE受発注の料金例01では、初期費用50万円に対して月額14万円です2。
月額を一年払えば合計は初期費用を大きく上回ります。
稟議には初期費用と並べて少なくとも一年分の月額を載せたほうが、会社が実際に払う金額に近づきます。
先に見た竹田印刷の記事本文でも、導入費とは別に毎月の運用費を見込んでいます1。
月額のほかに見積から漏れやすいのが、導入後に足していく費用です。
SaaSではオプションの追加や独自カスタマイズが別途費用になります1。
フルスクラッチでは、ドメインの維持費やSSL証明書の費用、運用しながら改善するたびのスポット費用が生じます1。
SSL証明書は、システムとの通信を暗号化するための証明書です。
個別開発は初期費用が大きいうえ、作った後の維持と改修も自社の負担になります。
方式を比べるときは、この点を初期費用の差と一緒に見ておく必要があります。
社内の販売管理システムとつなぐ作業、取引先や商品のデータを新しいシステムへ移す作業、担当者向けの操作説明も、見積の中で扱いが分かれやすい費目です。
初期費用の一行に含まれているのか、別の行で計上されているのか、そもそも見積に入っていないのかは、見積書を読むまで分かりません。
これらは会社ごとの事情で金額が大きく変わるので、目安の金額を探すより、見積に入っているかどうかを先に確かめるほうが判断に役立ちます。
取引先に費用が生じるか
受発注は相手のある業務です。
自社がシステムを入れたとき、取引先に何をお願いするかで、費用の見え方が変わります。
注文を出す側がシステムを入れても、取引先がこれまでと同じ方法で注文を受け取れるなら、相手に新しい負担はかかりません。
COREC の発注側の案内では、発注先にはFAXやメールで発注書が届き、内容の確認に会員登録は不要で、費用もかからないとされています3。
ただし、これは COREC の発注書送信という使い方についての説明です。
受発注システム全般に当てはまるわけではありません。
取引先にもシステムの画面へログインして注文を受けてもらう形なら、相手に登録や操作の習得をお願いすることになります。
そのとき取引先側に利用料が発生するのか、発生するならどちらが負担するのかは、サービスごとに確かめなければ分かりません。
取引先の協力が得られないと、紙やFAXの受発注が残り、二重の運用になりかねません。
取引先側の負担は、金額だけでなく導入の進めやすさにも関わります。
反対に、自社が注文を受ける側で、取引先からの注文を受け付ける仕組みを入れる場合は、費用は受注側の自社に生じます。
COREC も供給側(卸)向けには別の料金を設けていて、初期費用0円で、無料プランと月額2,980円(税別)のプランから選ぶ形です4。
同じサービスでも、注文を出す側と受ける側で料金が分かれています。
見積を依頼するときに、自社がどちらの立場で使うのか、取引先にどこまで使ってもらうのかを最初に伝えておくと、提供元ごとに見積の前提がずれるのを防げます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注側の自社が導入し、発注書をFAXやメールで送る
- 取引先はこれまでと同じ方法で注文を受け取れる
- 発注書送信の案内では、取引先の会員登録も費用も不要
- 発注側の自社が導入し、取引先にも画面で操作してもらう
- 取引先に登録や操作の習得をお願いする
見積を依頼するときの準備と、比較の見方
依頼前に揃える要件
ここまで見たとおり、金額を動かすのは方式、機能の組み合わせ、別にかかる費用、取引先との関係です。
見積を依頼する前にこれらを自社の言葉で書き出しておけば、提供元ごとに前提がばらばらの見積が届くのを防げます。
以下は、前の節までの内容を踏まえた進め方の提案です。
出発点は、いまの受発注の流れを一件の注文でたどることです。
たとえば、取引先からFAXで届いた注文を、受注担当が販売管理の画面へ打ち込み、在庫を確かめて出荷を指示し、足りない商品は仕入先へ発注書を送る、という流れがあるとします。
この流れのどこで転記しているのか、どこで誰の確認を通しているのかに印を付けていきます。
すると、システムに任せたい範囲が機能の単位で見えてきます。
転記している箇所は、取り込みや連携の要件になります。
確認を通している箇所は、承認機能の要件になります。
書き出した要件は、なくては業務が回らない必須のものと、あれば便利なものに分けておきます。
料金例で見たように、機能の組み合わせで初期費用は動きます。
必須だけの構成と、便利な機能まで入れた構成の両方で見積を頼めば、どの機能にいくらかかるのかを比べる手掛かりになります。
稟議でも、必須の構成を基本の予算とし、便利な機能を後から足せる選択肢として示せます。
- 一件の注文を例に、受け取りから出荷、仕入先への発注までの流れを書き出す
- 転記している箇所と確認を通している箇所に印を付け、機能の要件に置き換える
- 要件を、必須のものと、あれば便利なものに分ける
- 社内で使う人数の見込み、つなぎたい社内システム、取引先にどこまで使ってもらうかを添えて、必須だけの構成と便利な機能まで入れた構成の二通りで見積を依頼する
見積を同じ軸で並べる
見積が届いたら、合計金額を見比べる前に、同じ軸で一枚に並べ直します。
軸は、初期費用、月額、オプション、保守、連携、教育、取引先側の負担の7つです。
方式によって、同じ軸でも見積への出方が違います。
初期費用の金額だけを見ていると見落とすのが、月額と別途費用です。
初期費用が低い見積は標準の範囲だけで出されていて、必要な機能をオプションで足すと、月額や別費用が上がる場合があります。
反対に、初期費用が高い見積は、要件の多くを最初から組み込んでいることがあります。
初期費用の高低だけで決めず、少なくとも一年分の月額と別途費用を足した総額で並べれば、性格の違う見積も同じ物差しで比べられます。
見積が妥当かどうかの手掛かりは、金額の差を機能の差で説明できるかどうかです。
二社の見積で初期費用が大きく違うとします。
高いほうには自社が必須とした機能が含まれ、安いほうではそれが別途やオプションの扱いになっているなら、差には理由があります。
同じ要件を伝えたのに機能の内訳で説明できない差が残るなら、見積の前提がずれている可能性があります。
その場合は、どの作業にいくらかかるのかを明細で出してもらいます。
差額が大きいことだけで割高と決めつけず、明細と条件を照らし合わせてから判断します。
細かいところでは、料金の表示が税込みか税別かもそろえておきます。
COREC のように税別で表示している料金もあるので、並べる前に表示をそろえておかないと、同じ金額に見えて実際の支払いが違うことがあります3。
あわせて、月額の契約期間や途中で機能を足したときの料金も一枚に書き添えておくと、稟議で聞かれたときにすぐ答えられます。
| 比較の軸 | SaaSの見積で見るところ | パッケージ・個別開発の見積で見るところ |
|---|---|---|
| 初期費用 | 標準機能の範囲か・オプション込みか | 開発の範囲と規模 |
| 月額 | 使い続ける限りかかる・アカウント数で増える形が一般的 | ドメイン維持費・SSL証明書費など続く費用 |
| オプション | 追加機能は別途費用 | 追加開発として見積に入るか |
| 保守 | 提供元が受け持つ範囲 | 改善のたびのスポット費用 |
| 連携 | 社内システムとつなぐ費目の有無 | 社内システムとつなぐ費目の有無 |
| 教育 | 操作説明や研修が含まれるか | 操作説明や研修が含まれるか |
| 取引先側の負担 | 登録・利用料の有無と負担者 | 登録・利用料の有無と負担者 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 初期費用
- 標準機能の範囲か、オプション込みかを確かめる
- 少なくとも一年分の月額
- 使い続ける限りかかる
- アカウント数で増える形が一般的
初期費用を抑える方法と、補助金を使える条件
通常枠
初期費用を抑える方法は、大きく分けて二つあります。
一つは、最初に入れる機能を必須のものに絞ることです。
機能の組み合わせで初期費用が動くなら、必須の範囲で始め、運用が落ち着いてから機能を足す進め方が考えられます。
ただし、後から足す機能が別途費用になる場合は、その金額も先に聞いておく必要があります。
そうしないと、分けて入れたほうが結果的に高くつくことがあります。
もう一つが補助金です。
受発注システムの費用に関わる枠として、デジタル化・AI導入補助金の通常枠と、インボイス枠の電子取引類型があります56。
通常枠は、中小企業・小規模事業者などが自社の業務に使うITツールを入れる費用を補助する枠です5。
補助率は1/2以内で、賃金に関する条件を満たすと2/3以内になります5。
補助の上限は、ツールが受け持つ業務の工程(プロセス)の数で変わります。
1〜3プロセスでは150万円未満、4プロセス以上では150万円以上450万円以下です5。
補助される額は、補助率と上限の両方で決まります。
見積の総額に補助率を掛けた額が上限を超える場合は、上限までしか補助されません。
対象経費として、ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、オプション、導入時の設定や研修などの役務が挙げられています5。
SaaSの月額はクラウドの利用料に当たります。
初期費用の中身が設定作業や研修であれば、役務の区分に近いと考えられます。
ただし、見積書の「初期費用」という一行がそのまま対象になるとは限らず、どの区分に当たるかは中身次第です。
ここで挙げた内容は事務局の概要ページの記載です。
細かな条件は公募要領で決まります。
電子取引類型
電子取引類型は、受発注を取引先と一緒に電子化する場合を想定した枠です。
対象は、発注側の事業者が導入し、受注側の取引先にアカウントを無償で発行して使ってもらえる、クラウド型の受発注ソフトです6。
補助率は中小企業・小規模事業者などが2/3以内、その他の事業者などが1/2以内で、上限は350万円です6。
この枠は、注文を出す側がシステムを用意し、取引先の負担を増やさずに受発注をつなぐ形を前提にしています。
前の節で見た「取引先にも画面で操作してもらう」使い方と重なりますが、取引先へのアカウントが無償であることが条件です。
自社が発注側で、取引先にも同じシステム上で注文を受けてもらいたいなら、この類型が候補になります。
反対に、自社が注文を受ける側で、自社のために受注の仕組みを入れる場合は、この類型の前提とは向きが逆です。
その場合は、通常枠が検討の中心になります。
電子取引類型の対象経費や、クラウドの利用料が何年分まで対象になるかは、事務局の概要ページには書かれていません6。
初期費用が対象に含まれるかどうかも、公募要領で確かめるまでは予算の見込みに入れないほうが安全です。
申請前に確認すること
補助金を見込んで予算を組むなら、確かめる順番があります。
- 自社が発注側か受注側か、取引先にアカウントを無償で渡す形かで、検討する枠を決める
- 候補のツールがその枠の対象として扱われるかを、事務局の案内で確かめる
- 見積の費目が、どの対象経費の区分に当たるかを公募要領と照らし合わせる
- 公募の期間と、契約や支払いの時期の関係を、最新の公募要領で確かめる
補助金の制度は、公募の回ごとに期間や条件が改められることがあります。
ここで挙げた補助率や上限も、2026年度の事務局の概要ページの内容です。
稟議では、補助金がない場合の金額を本来の予算として載せ、補助金は採択された場合に負担が軽くなる分として分けて書いておくのが無難です。
そうしておけば、採択の結果に左右されずに導入の判断を進められます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 通常枠
- 自社の業務に使うITツールを入れる費用を補助する
- 補助率は1/2以内(賃金の条件を満たすと2/3以内)
- 上限は1〜3プロセスで150万円未満、4プロセス以上で150万円以上450万円以下
- 電子取引類型
要件の書き出しや見積の並べ直しは、自社の受発注の流れを知る担当者だけで進めると、どの作業が見積のどの費目に当たるのかで迷いやすく、提供元ごとの前提のずれにも気付きにくいためです。
いまの受発注の流れを一件の注文でたどりながら、見積に入れるべき機能と、別途費用として確かめておく項目を一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
自社の立場から見る、補助金の枠の当たりの付け方
自社が注文を出す側か受ける側か、取引先へアカウントを無償で渡すかどうかで並べた
- 自社が発注側で、取引先にアカウントを無償で発行して使ってもらうクラウド型を入れる:電子取引類型の対象かを確かめる(上限350万円)
- 自社が発注側で、取引先にアカウントを渡さずに使う:電子取引類型の前提に当たらないため、通常枠の条件で確かめる
- 自社が受注側で、取引先からの注文を受け付ける仕組みを自社のために入れる:通常枠の条件で確かめる(4プロセス以上で上限450万円)
取引先へアカウントを無償で発行する形かどうかで、検討する枠が電子取引類型と通常枠に切り替わる
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 導入方式 | SaaSか、パッケージ・個別開発かで初期費用の桁が変わる |
| SaaSの初期費用 | 提供元の目安で30~50万円、料金例では50万〜150万円。市場相場ではない |
| 金額差の理由 | 機能の組み合わせと追加開発。差は明細で機能に結びつけて判断する |
| 予算の範囲 | 初期費用に、少なくとも一年分の月額と別途費用を加える |
| 取引先の負担 | 発注側か受注側か、取引先に画面での操作を求めるかで変わる |
| 補助金 | 通常枠は4プロセス以上で上限450万円、電子取引類型は上限350万円。初期費用が対象かは公募要領で確かめる |

補助金の枠や対象経費は、自社が発注側か受注側か、見積の費目が何に当たるかで判断が分かれ、公募要領と一人で照らし合わせるのは手間がかかるためです。 自社の立場から検討する枠の当たりを付け、見積のどの費目を公募要領で確かめればよいかを洗い出せます。
よくある質問
受発注システムの月額費用は、初期費用の何倍くらいを見込めばよいですか。
決まった倍率はありません。
竹田印刷の記事本文は導入までに50万円程度、毎月の運用に20万円程度という想定で、TS-BASE受発注の料金例01は初期費用50万円・月額14万円です12。
どちらも、月額を一年分合計すると初期費用を上回ります。
一方で COREC の発注側は初期費用0円、月額1,480円(税別)のプランがあり、そもそも比べる対象が違います3。
倍率で考えるより、何年使う前提で総額を出すかを決めて、初期費用と月額を足した金額で予算を組むほうが実態に合います。
取引先(受注側)にも費用や登録は必要ですか。
システムの使い方によります。
COREC の発注側の案内では、発注先にはFAXやメールで発注書が届き、確認に会員登録は不要で費用もかからないとされています3。
ただし、これは COREC の発注書送信についての説明です。
取引先にも画面へログインして注文を受けてもらう形なら、登録や利用料の有無と、その負担者をサービスごとに確かめる必要があります。
補助金の電子取引類型は、取引先へアカウントを無償で発行できることを対象の前提にしています6。
補助金は初期費用にも使えますか。申請のタイミングはいつですか。
通常枠では、ソフトウェアの購入費、クラウドの利用料(最大2年分)、オプション、導入時の設定や研修などの役務が対象経費に挙げられています5。
見積の初期費用がどの区分に当たるかは中身によるため、費目ごとに公募要領と照らし合わせる必要があります。
電子取引類型の対象経費は事務局の概要ページに記載がなく、公募要領で確かめるまで初期費用を対象として見込まないほうが安全です6。
公募の期間は回ごとに決まるので、契約や支払いの時期との関係も含めて、最新の公募要領で確かめてから発注の時期を決めてください。
見積書で確認すべき項目は何ですか。
初期費用、月額、オプション、保守、連携、教育、取引先側の負担の7つを、同じ表に並べて見比べます。
そのうえで、標準機能とオプションの境目、社内システムとの連携やデータ移行が見積に入っているか、料金が税込みか税別かを確かめます。
他社との金額差が機能の差で説明できない場合は、作業ごとの明細を出してもらうと、前提のずれが見つかります。
クラウド型と個別開発は、どちらを選べばよいですか。
自社が必須とした要件が、既製のクラウドサービスの機能とオプションで満たせるかどうかが分かれ目です。
満たせるなら、SaaSは初期費用を抑えて始められますが、アカウント数に応じた従量課金やオプションの費用が続きます1。
既製の機能では足りない業務が多い場合は、パッケージへの追加開発や個別開発が候補になります。
ただし、初期費用が上の桁になり、ドメイン維持費やSSL証明書の費用、改善のたびのスポット費用も自社の負担になります1。
初期費用の差だけでなく、作った後の維持と改修の負担まで含めて比べてください。
- 1 出典:竹田印刷株式会社「Webの受発注システムの選び方とコストの目安」(2026年)
- 2 出典:竹田印刷株式会社「TS-BASE 受発注 料金ページ(料金例)」(2026年)
- 3 出典:ラクーンホールディングス株式会社グループ「COREC 発注側(バイヤー)向け料金ページ」(2026年)
- 4 出典:ラクーンホールディングス株式会社グループ「COREC 供給側(卸)向け料金ページ」(2026年)
- 5 出典:デジタル化・AI導入補助金 事務局「通常枠」(2026年度)
- 6 出典:デジタル化・AI導入補助金 事務局「インボイス枠(電子取引類型)」(2026年度)
画像の出典元
- Hands typing on a laptop at a desk with an insurance paper and plant, suggesting a work environment./Photo by Kindel Media on Pexels
- A diverse group of colleagues collaborates using sticky notes on a glass wall in an office./Photo by Mikhail Nilov on Pexels
- Close-up of a digital checklist being marked off on a tablet with a stylus pen./Photo by Jakub Zerdzicki on Pexels