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EDI導入を取引先に求める発注側の進め方|要求と自社負担の分け方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 発注側が先に決めるのは、対象の取引先、対象業務、方式の三つです。
  • 取引先に求める内容は方式で変わるため、方式ごとに取引先の準備と自社の受け持ちを書き出してから依頼します。
  • 取引先の既存システム、通信手順、担当者の体制を聞き取ると、方式の候補と依頼の重さが見えてきます。
  • 切り替えは取引先一社ずつの調整が要るため、旧来の手段を残しながら開始時期を分散して進めます。
  • 取適法の対象取引では電話だけの発注は明示義務違反とされ、協議や提供要請の点からも依頼の進め方を見直します。

20代後半の日本人男性が小会議室での打ち合わせをしている場面

取引先にEDIを求める前に、発注側が先に決める三つのこと

取引先から「注文をEDIで送ってほしい」と言われた。
あるいは、電話やFAX、メールで続けてきた発注を見直し、取引先にもEDIを使ってほしいと考えている。
どちらの場面でも迷うのは、取引先にどこまで求めてよく、どこから自社が用意すべきかです。
発注側が先に決めるのは、対象の取引先、対象業務、方式の三つです。
取引先に求める内容と自社が受け持つ内容は方式ごとに分けて考えます。
すぐ対応できない取引先は、旧来の発注手段を残したまま一社ずつ切り替えます。
取適法の対象になる取引かどうかも、依頼を出す前に確かめておきます。

求められた場合も、求めたい場合も、決めることは変わらない

EDI(電子データ交換)は、注文書や出荷の連絡などを、あらかじめ決めた形式のデータで企業間に受け渡す仕組みです。
発注側の担当者がEDIに向き合う入口は、大きく二つあります。
一つは、取引先から「注文をEDIで送ってほしい」と求められた場面です。
もう一つは、自社の発注業務を見直すなかで、取引先にもEDIを使ってほしいと考えた場面です。

入口は違っても、発注側が決めることは同じです。
どの取引先との間で、どの業務を、どの方式でやり取りするか。
この三つが決まらないまま話を進めると、取引先に送る依頼が「EDIに対応してください」という一文だけになりがちです。
受け取った取引先は、何を準備すればよいのか、いつまでに必要なのかが分からず、問い合わせを返すか、対応を先送りするしかありません。

取引先から求められた場面でも、考える順番は変わりません。
求められた方式をそのまま受け入れる前に、自社の他の取引先とのやり取りと揃えられるのか、社内の発注の仕組みからそのデータを作れるのかを見ておく必要があります。
ここを確かめずに個別に応じていくと、取引先ごとに別々の送り方を抱え、発注担当者が取引先によって操作を変える状態が生まれます。

対象の取引先は、全社一斉ではなく分けて考える

一つ目は対象の取引先です。
発注先が多い場合、すべての取引先に同時にEDIを求めるのは現実的ではありません。
発注の頻度が高い先、注文の明細が多くて転記や読み合わせに手間がかかっている先、すでに何らかの電子的なやり取りをしている先は、切り替えたときに変わることが大きく、話も進めやすい相手です。
反対に、発注がまれな先や、担当者が一人で受注から出荷までを抱えている先は、急がずに後へ回す判断もあります。

このとき作る取引先の一覧は、後で方式を選ぶときにも、切り替えの順番を決めるときにも使います。
取引先名、現在の発注手段、発注の頻度、窓口になっている担当者を並べておくだけでも、誰に何を相談すればよいかが見えてきます。

対象業務は、注文だけか、その先までかを決める

二つ目は対象業務です。
EDIで送るのは注文だけなのか、取引先からの出荷の連絡や請求のデータまで受け取りたいのか。
範囲が広がるほど自社で手入力する場面は減りますが、取引先が用意するものも増えます。
まず注文の送信から始め、運用に慣れた取引先から範囲を広げる、という段階の付け方もできます。

三つ目の方式は、取引先がそろえるものと、発注側が受け持つ変換や接続の作業を左右します。
そのため、取引先との役割の線引きは、方式を前提にしてはじめて具体的になります。

いまの発注手段が、見直しの優先度を変える

三つを決める前に、いまの発注手段を見ておく理由もあります。
中小受託取引適正化法(取適法)の対象になる取引では、発注内容などを取引先に明示する義務があり、電話だけで発注している場合はこの明示義務に違反すると、公正取引委員会のQ&Aで示されています4。
電話で数量や納期を伝え、書面もデータも残していない取引先があるなら、その取引先はEDIの導入を待たず、発注の伝え方そのものを先に見直す対象になります。

EDIに移すと、発注内容は電磁的方法で取引先に渡ります。
同じQ&Aでは、書面または電磁的方法で内容をあらかじめ明示しておけば、EDIで記号を使うことも可能とされています4。
品目をコードで送る運用にする場合、そのコードが何を指すのかを、書面やデータで取引先に示しておくことが前提になります。

ただし、明示義務が関わるのは取適法の対象となる取引に限られます3。
自社の取引が対象かどうかは、取引先ごとに確かめる必要があります。

取引先に求める内容と自社が受け持つ内容の分け方

依頼の中身を四つに分けて線を引く

取引先にEDIを求めるとき、依頼の中身は少なくとも四つに分けられます。
どの業務のデータをやり取りするか(対象業務)、どんな形式のデータにするか(データ形式)、どの経路で送受信するか(通信方式)、いつから使い始めるか(対応時期)です。

この四つそれぞれについて、取引先に用意してもらうのか、自社が用意するのかを分けると、依頼の重さが見えてきます。
たとえば、データ形式も通信方式も自社が指定し、受け取ったデータを取引先の社内システムへ取り込む作業まで取引先に任せる場合、取引先の準備は大きくなります。
一方、取引先には決まった窓口でデータを受け取ってもらうだけにし、形式の変換や接続先の手配を自社が受け持つ場合、取引先の負担は小さくなり、その分の作業が自社に残ります。
どちらが正しいということではなく、作業をどちらに置くかの選択です。

中小企業共通EDIに見る、変換を発注側が受け持つ分担

役割の分け方を考えるうえで、一つの型になるのが中小企業共通EDIです。
中小企業庁の紹介では、受注側は共通EDIに対応したプロバイダー(データのやり取りを仲立ちする事業者)と業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないとされています1。
発注側は対応プロバイダーと契約し、共通辞書に従って注文情報を変換することで、独自に作ったシステムを使い続けられます1。

この分担では、データの形を合わせる作業が発注側に寄せられています。
発注側は社内の発注システムを作り直さず、出口でデータを共通の形に変える。
取引先は、その共通の形を受け取れる道具をそろえる。
発注側が変換を受け持つことで、取引先に求める準備を絞っている、と読むことができます。

ただし、これは中小企業共通EDIという一つの標準での分担です。
取引先がすでに別の方式で他の発注元とやり取りしている場合、同じ分担になるとは限りません。
また、「大きな費用はかからない」という説明に金額は示されておらず、取引先ごとの見積もりの代わりにはなりません。

方式ごとに、取引先の準備を書き出してから依頼する

共通EDIの例から引き出せるのは、取引先に求める内容は方式が決まってはじめて具体的になる、という点です。
そこで、候補の方式ごとに、取引先が新たに用意するもの、取引先の担当者が日々行う操作、自社が受け持つ作業を書き出してから、依頼の文面を作ることを勧めます。

依頼の文面には、次の事柄を含めておくと、取引先が準備の重さを判断しやすくなります。

  • EDIでやり取りする業務の範囲
  • 使う方式と、取引先が用意するもの
  • 自社が受け持つ作業(変換、接続先の手配、問い合わせの窓口など)
  • 開始の希望時期と、それまでの発注手段の扱い
  • 取引先の事情を聞く場と、その時期

最後の項目を入れておくと、依頼が一方的な通知ではなく相談として届きます。
取引先から「この時期は繁忙期で難しい」「受注の担当者が別の業務と兼ねている」といった事情が返ってくれば、それを方式や順番の見直しに使えます。
反対に、事情を聞かないまま開始日だけを伝えると、取引先は準備が間に合わないことを言い出しにくく、開始直前になって問題が表に出ることになります。

中小企業共通EDIでの発注側と受注側の受け持ち(模式図)
発注側が独自のシステムを使い続け、対応プロバイダーで共通辞書に従って変換し、受注側は対応プロバイダーと業務アプリを利用して注文情報を受け取る分担の図1発注側2対応プロバイダー3受注側

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 発注側
    • 独自に作ったシステムを使い続ける
  2. 対応プロバイダー
    • 共通辞書に従って注文情報を変換する
  3. 受注側
    • 対応プロバイダーと業務アプリを利用するだけで済む

出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2020年)

取引先の対応力に応じた方式の選び分け

取引先ごとに確かめる三つの項目

依頼の文面を作る前に、取引先の側の状況を知っておく必要があります。
取引先ごとに確かめたいのは、次の三つです。

  • 既存のシステム:受注を管理する仕組みがあるか、他の発注元とEDIでやり取りしているか
  • 現在の通信手順:EDIを使っている場合、どの手順と回線でつないでいるか
  • 担当者の体制:受注を処理する人が誰で、データの確認や問い合わせに誰が応じるか

どれも取引先に尋ねて分かることです。
電話で聞いてもかまいませんが、同じ項目を各取引先に送って回答をそろえると、一覧で比べられます。
回答を並べると、すぐにEDIへ移れる先、方式を選べば移れる先、当面は難しい先に分かれてきます。

旧来の通信手順が残っている取引先への目配り

すでにEDIでやり取りしている取引先でも、使っている通信手順が古い場合があります。
日経クロステックが2016年に取り上げた発注側企業の例では、IP網に対応した通信手順への移行は一部にとどまり、アナログ回線やISDN回線を使うJCA手順など、旧来の通信手順がまだ多く使われていました2。
移行先としては、流通BMSやWeb-EDIなどが挙げられています2。

これは一社の、2016年時点の状況で、いまの業界全体の移行の程度を示すものではありません。
それでも、取引先の「EDIに対応している」という返事が、どの手順で、どの回線を使った対応なのかまで確かめる必要があることは読み取れます。
旧来の手順で接続している取引先への依頼は、EDIを新しく始めてもらうのではなく、手順を移してもらう依頼になり、取引先の準備の中身が変わります。

方式の候補を、取引先の状況と組み合わせる

方式の候補を、取引先の状況と組み合わせて考えてみます。
流通BMSとWeb-EDIは、旧来の通信手順からの移行先として名前が挙がる方式です2。
Web-EDIは、インターネットを通じて画面からやり取りする形のEDIを指して使われる呼び方です。
中小企業共通EDIは、受発注を行う全ての業種を対象に、EDI導入の手間やコストを大幅に削減することを目指すものとされています1。

表の右端は、どれかに決めるための答えではなく、話し合いを始める出発点です。
判断が分かれやすいのは、取引先がすでに他の発注元とEDIでつながっている場合です。
自社の都合で別の方式を指定すると、取引先はその方式のためだけに新しい準備をすることになります。
取引先の既存の方式に合わせられるなら、取引先に求める準備は小さくなり、その分、方式に合わせる作業を自社が受け持つことになります。

もう一つ判断が分かれるのは、受注システムがなく、担当者が手作業で受注を処理している取引先です。
画面で注文を確認できる形なら、取引先は大きな設備をそろえずに始められる可能性があります。
一方で、取引先から見れば、発注元ごとに別の画面や仕組みがあれば、その数だけログインや操作、確認の手間が増えます。
自社の方式が取引先にとっていくつ目の仕組みになるのかを、聞き取りの段階で把握しておくと、依頼の重さを見誤りにくくなります。

取引先の状態 まず確かめること 検討の出発点
他の発注元とEDIで接続している 使っている方式と通信手順 取引先の既存の方式に合わせられるか
旧来の通信手順で接続している 回線と手順の移行の予定 流通BMSやWeb-EDIなどへの移行
受注システムはあるがEDIは使っていない システムに取り込める形式 共通EDIなど取引先の準備を絞れる方式
受注システムがなく担当者が手作業で処理している 担当者の体制と確認に使える時間 画面で受け取れる方式か当面は旧来の手段を続けるか
取引先の状態ごとに、まず確かめることと方式を考える出発点(模式図)
取引先を四つの状態に分け、それぞれについてまず確かめることと方式の検討の出発点を並べた図。答えを一つに決める図ではない取引先を四つの状態に分け、それぞれについてまず確かめることと方式の検討の出発点を並べた図。答えを一つに決める図ではない他の発注元とEDIで接続している確かめること:使っている方式と通信手順出発点:取引先の既存の方式に合わせられるか旧来の通信手順で接続している確かめること:回線と手順の移行の予定出発点:流通BMSやWeb-EDIなどへの移行受注システムはあるがEDIは使っていない確かめること:システムに取り込める形式出発点:共通EDIなど取引先の準備を絞れる方式受注システムがなく担当者が手作業で処理している確かめること:担当者の体制と確認に使える時間出発点:画面で受け取れる方式か、当面は旧来の手段を続けるか

▼ 図の内容を文字で読む
  • 他の発注元とEDIで接続している
    • 確かめること:使っている方式と通信手順
    • 出発点:取引先の既存の方式に合わせられるか
  • 旧来の通信手順で接続している
    • 確かめること:回線と手順の移行の予定
    • 出発点:流通BMSやWeb-EDIなどへの移行
  • 受注システムはあるがEDIは使っていない
    • 確かめること:システムに取り込める形式
    • 出発点:共通EDIなど取引先の準備を絞れる方式
  • 受注システムがなく担当者が手作業で処理している
    • 確かめること:担当者の体制と確認に使える時間
    • 出発点:画面で受け取れる方式か、当面は旧来の手段を続けるか

費用と運用負担をどう考え、どこまで求めてよいか

負担を、始めるとき・使い続けるとき・日々の運用に分ける

取引先に求める内容が増えるほど、取引先の費用と手間は増えます。
費用の話し合いを始める前に、発生する負担を場面ごとに分けておくと、何を誰が持つかを整理しやすくなります。

  • 始めるときの準備:プロバイダーとの契約、業務アプリやシステムの設定、接続の試験
  • 使い続けるための費用:プロバイダーやサービスの利用料など、継続して発生するもの
  • 日々の運用の手間:データの確認、エラー時の問い合わせ、取引先や品目のコードの管理

三つ目は、見積書の金額には出にくい負担です。
取引先の担当者が毎朝届いたデータを確かめ、来るはずの注文が見当たらなければ発注側に問い合わせる。
こうした作業は、方式を選んだ時点で取引先の業務に加わります。
費用の線引きを話すときに、運用の手間も同じ表に並べておくと、取引先が何を背負うのかが双方に見えます。

方式が決まると、取引先の負担の形が決まる

負担の大きさは、選ぶ方式によって変わります。
中小企業共通EDIの資料では、受注側は対応プロバイダーと業務アプリを利用するだけで済み、大きな費用はかからないと説明されています1。
発注側が変換を受け持つ設計にすることで、受注側の負担を小さくする方向です。

ただし、資料に金額の記載はありません。
実際の費用は、取引先が契約するプロバイダーやアプリによって変わります。
取引先の負担の水準を知るには、候補の方式ごとに取引先の側で見積もりを取ってもらうか、事業者に問い合わせて確かめることになります。

「どこまで求めてよいか」を考える手掛かり

どこまでを取引先に求めてよいかについて、一律の線は引けません。
考える手掛かりになるのは、その負担が誰の都合で生まれ、誰に何をもたらすかです。
自社システムの都合で特定のデータ形式を指定する場合、その形式に合わせる作業は自社の都合から生まれた負担です。
一方、EDIによって取引先の受注の転記や読み合わせが減るなら、取引先の側にも得るものがあります。

前者は自社で受け持つ方向で検討し、後者は取引先が得るものと負担を並べて話し合う。
このように分けておくと、取引先に説明するときに、なぜその負担をお願いするのかを言葉にできます。
ここで示したのは依頼を組み立てるための考え方の整理で、法的にどちらが負担すべきかを示すものではありません。
取適法の対象となる取引では、取引先に費用や作業を求める際に、別に注意したい点があります。

取引先に生じる負担を三つの場面に分けた整理(模式図)
始めるときの準備、使い続けるための費用、日々の運用の手間の三つに負担を分け、それぞれに含まれる項目を示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 始めるときの準備
    • プロバイダーとの契約
    • 業務アプリやシステムの設定
    • 接続の試験
  • 使い続けるための費用
    • プロバイダーやサービスの利用料など、継続して発生するもの
  • 日々の運用の手間
    • データの確認
    • エラー時の問い合わせ
    • 取引先や品目のコードの管理
    • 見積書の金額には出にくい負担

取引先がすぐ対応できないときの並行運用と切り替え

切り替えは、取引先ごとの調整の積み重ね

EDIへの切り替えは、取引先が多いほど一度には終わりません。
先の発注側企業の例では、切り替えは取引先一社ずつ日程を調整して進める必要があり、事前の調整から利用開始までにまとまった期間がかかっていました2。
残る取引先の移行が特定の時期に集中すると間に合わない先が出るため、移行の時期を平準化することが課題とされていました2。

これは通信手順の移行についての、2016年時点の一社の話です。
新しくEDIを始めてもらう場合に、同じ期間がかかるとは言えません。
ただ、取引先ごとに日程の調整と開始前の確認が要ること、時期が重なると対応が追いつかなくなることは、方式が違っても起こりうる構造です。
役割分担を決めたら、取引先ごとの調整にかかる時間を見込んで、順番と時期を組むことになります。

並行運用の間、発注担当者の手元で起きること

切り替えの途中では、EDIで発注する取引先と、FAXやメールで発注する取引先が混在します。
たとえば、発注担当者が朝のうちに複数の取引先へまとめて注文を出す場合を考えてみます。
EDIに切り替えた取引先にはデータを送り、まだの取引先にはFAXを送る。
このとき起きやすいのは、切り替え済みの取引先にFAXも送ってしまう二重の発注と、どちらの経路からも送られていない漏れです。

これを防ぐのに役立つのが、取引先ごとに「いまどの手段で発注しているか」を一か所にまとめた一覧です。
切り替えた日と、旧来の手段を止めた日を残しておけば、取引先から「注文が届いていない」と問い合わせがあったときに、どちらの経路を確かめればよいかがすぐ分かります。
切り替えた直後の期間は、データを送ったあとに取引先から受信の連絡をもらうなど、確認を一つ加えておくと、データが届いていない状態に気づくのが早くなります。

切り替えの順番を組む

順番は、次のように考えると組みやすくなります。

  1. 準備が整っている取引先(他の発注元とEDIで接続している先など)から始め、自社側の手順を固める
  2. 発注量が多く、切り替えたときに転記や読み合わせが大きく減る取引先を続ける
  3. 当面は難しい取引先は、旧来の手段を続けながら、事情が変わる時期を聞いておく

最初に切り替える取引先には、自社の手順を試す意味もあります。
データの形式や、エラーが起きたときの連絡の流れに問題があれば、ここで直しておくと、後の取引先へ同じ問題を持ち込まずに済みます。
また、取引先ごとの開始時期を分散させておくと、自社の担当者も取引先も、立ち上げの対応が重なって追われる状態を避けやすくなります。

旧来の手段を止めるときに確かめること

並行運用を終えて旧来の手段を止める判断は、取引先と一緒に行います。
止める前に確かめたいのは、EDIで送った注文が取引先に届き、取引先の側で処理できていること、エラーが起きたときの連絡先と手順を双方が把握していること、取引先の担当者が不在のときに代わりに確認できる人がいることです。
これがそろわないうちに旧来の手段を止めると、問題が起きたときに戻る経路がなくなります。

すぐに対応できない取引先を、無理に期限で区切る必要はありません。
旧来の手段を残しながら、取引先の事情が変わる時期を聞き、改めて相談する。
そのうえで、取適法の対象となる取引で電話だけの発注が残っている場合は、EDIを待たずに発注内容を明示する方法へ改めることが先になります4。

取引先一社ごとに繰り返す切り替えの流れ(模式図)
取引先と日程を調整し、旧来の手段とEDIを並行して使い、確認がそろったら旧来の手段を止め、一覧を更新して次の取引先の調整へ戻る流れの図1取引先と日程を調整する2旧来の手段とEDIを並行して使う3確認がそろったら旧来の手段を止める4一覧を更新して次の取引先へ

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 取引先と日程を調整する
    • 開始時期を分散させる
  2. 旧来の手段とEDIを並行して使う
    • 受信の連絡をもらい、届いていない状態に気づく
  3. 確認がそろったら旧来の手段を止める
    • 連絡先と手順を双方が把握している
  4. 一覧を更新して次の取引先へ
    • 切り替えた日と止めた日を残す

EDIを求めることが取引上の問題にならないよう確認すること

自社の取引が取適法の対象かを最初に確かめる

取引先にEDI対応を求めるとき、もう一つ確かめておきたいのが取適法との関係です。
取適法の対象となる取引は、事業者の資本金の規模または従業員の基準と、取引の内容によって定められています3。
自社と取引先それぞれの規模と、どのような業務を委託しているかを合わせて見ないと、対象かどうかは決まりません。

同じ会社でも、取引先によって対象になる取引とならない取引が分かれることがあります。
この法律が関わるのは、発注側である自社が業務を委託する側にあたる取引で、自社と取引先の規模の組み合わせによっては対象外になります。
基準の具体的な内容は、公正取引委員会と中小企業庁の「取適法の概要」で、取引先ごとに当てはめて確かめてください3。

対象の取引なら、依頼の進め方で気を付けたいこと

対象の取引では、まず発注内容の明示があります。
電話だけの発注が明示義務違反になること、EDIで記号を使う場合も書面または電磁的方法で内容を明示しておくことは、前に見たとおりです4。

次に協議です。
公正取引委員会のQ&Aは、協議に応じない一方的な代金の決定について、実質的な協議が行われているかで判断されると説明しています4。
これは代金の決め方についての説明で、EDIの費用負担を直接扱ったものではありません。
それでも、EDIの導入で取引先の負担が変わるなら、その影響を取引先から聞き、話し合った経過を残しておくことは、依頼の進め方として筋が通ります。
依頼の文面に取引先の事情を聞く場を含めておくことは、ここにもつながります。

もう一つは、取引先に金銭や労働力の提供を求める場合です。
同じQ&Aでは、中小受託事業者に対して、利益との関係を明確にしないまま金銭や労働力の提供を要請することは、不当な経済上の利益の提供要請に該当するおそれがあるとされています4。
ただしこの設問は、販売応援のための人員派遣を例にしたもので、EDIの費用や作業にそのまま当てはまるとは言えません。

言い切れないところは、説明できる状態で依頼する

ここで挙げた公正取引委員会の説明は、EDIの導入を求めることや、その費用を誰が持つかについて直接の答えを示していません。
そのため、「EDIを求めると違反になる」とも、「費用は取引先に求めてよい」とも言い切れません。

Close-up of hands writing and reading documents with a pen.
▽ 写真の出典元

実務で取れるのは、取引先に新たな費用や作業が生じるなら、それが取引先にとってどんな利点につながるのかを説明できる状態で話を始める、という進め方です。
方式ごとの取引先の準備、自社が受け持つ作業、開始時期と並行運用の扱いを依頼の文面に示し、取引先の事情を聞く場を設けておけば、取引先は負担と利点を比べて答えられます。
個別の取引で判断に迷う場合は、公正取引委員会の相談窓口や弁護士などの専門家に確かめるのが確実です。

取引先ごとの方式や切り替えの順番は、取引先の状況と自社の発注の仕組みを並べてみないと決めにくいためです。

自社の取引先の一覧をもとに、どの取引先からどの方式で始め、取引先に何を依頼するかの整理を相談できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
先に決めること 対象の取引先、対象業務、方式
役割の線引き 方式ごとに、取引先が用意するものと自社が受け持つ作業を書き出してから依頼する
方式の選び方 取引先の既存システム、通信手順、担当者の体制から考え始める
費用の整理 始めるときの準備、使い続ける費用、日々の運用の手間に分け、誰の都合で生まれる負担かを見る
切り替え 一社ずつ日程を調整し、開始時期を分散する。旧来の手段は確認がそろってから止める
取適法 対象取引かを取引先ごとに確かめ、明示、協議、提供要請の点から依頼の進め方を見直す
20代前半の日本人男性がホワイトボードでの説明をしている場面

依頼の文面や切り替えの計画は取引先との関係を左右するため、送る前に抜けがないかを確かめておきたい場面があるためです。 取引先に送る依頼の内容と並行運用の進め方について、確認が足りない点がないかを一緒に見直せます。

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よくある質問

取引先がEDIに対応できないとき、旧来のFAXや電話の発注は続けてよいですか。

EDIに移れない取引先との間で、旧来の手段を残しながら一社ずつ切り替えていく進め方は、取引先ごとに調整が要る以上、自然な選択です。
注意したいのは電話です。
取適法の対象となる取引では、電話だけの発注は発注内容などの明示義務に違反するとされています4。
電話で伝えている取引先がある場合は、EDIへの対応を待たずに、発注内容を書面やデータで示す方法へ見直してください。

自社の取引が取適法の対象かどうかは、どう確認しますか。

取適法の対象となる取引は、事業者の資本金の規模または従業員の基準と、取引の内容によって定められています3。
自社と取引先それぞれの規模、委託している業務の内容を、公正取引委員会と中小企業庁の「取適法の概要」に当てはめて確かめます。
取引先によって結論が分かれることがあるため、取引先の一覧に対象かどうかの欄を設けておくと、依頼の進め方を取引先ごとに見直せます。

取引先に求める内容を決めるとき、取引先の担当者の体制はどう確かめればよいですか。

依頼の前に、取引先へ聞き取りとして尋ねるのが確実です。
受注を処理しているのは誰か、届いたデータの確認や問い合わせに誰が応じるか、担当者が不在のときに代わりがいるか、他の発注元の仕組みをいくつ使っているかを聞くと、日々の運用の手間を取引先が抱えられるかが見えてきます。
同じ項目を各取引先に送って回答をそろえると、一覧で比べて順番を決めやすくなります。

Web-EDIと流通BMSは、どう使い分けて考えればよいですか。

どちらも、アナログ回線やISDN回線を使う旧来の通信手順からの移行先として名前が挙がる方式です2。
どちらが優れているかで選ぶより、取引先がすでに使っている方式、取引先に受注システムがあるか、担当者が画面での操作に時間を割けるかから考えるほうが、取引先に求める準備を見誤りにくくなります。
取引先が他の発注元と同じ方式でつながっているなら、その方式に合わせられるかを先に検討します。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:中小企業庁「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!(ミラサポplus)」(2020年)
  2. 2 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
  3. 3 出典:公正取引委員会・中小企業庁「取適法の概要」(2026年)
  4. 4 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)

画像の出典元

  1. Close-up of hands writing and reading documents with a pen./Photo by Kindel Media on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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