まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

検収の厳しさはどこまで?多拠点で甘さのリスクと遅れの損失を比べる判断軸

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 検収の甘さは通知期限を、遅さは支払期日を動かすため、どちらが重いかではなく、取引ごとにどの期限が動いているかを見分ける
  • 商人間の売買は受領から検査と通知の期限が動き、直ちに発見できない種類・品質の不適合は6か月以内の発見が条件になる。請負は不適合を知った時から1年以内の通知が求められる
  • 取適法の対象取引では、検査の有無にかかわらず受領後60日以内に支払期日が来るため、検収完了を支払の起点にする運用は見直しが必要になる
  • 検収の厚さは見つけにくさ・不適合時の影響・遅延時の影響の3軸で3段階に振り分け、期限・通知の窓口・記録の様式は本部で統一する
  • 受領日・検収完了日・不具合に気づいた日・通知した日の4つを同じ様式で残し、まず1か月分を拠点別に集計して比べる

60代前半の日本人男性が倉庫でのピッキングをしている場面

検収が甘いと何を失うか:通知期限が先に切れる

拠点ごとに検収の見方が違い、後から不備が見つかる。
かといって確認を厚くすると、現場の稼働や支払の手続きが止まる。
この迷いは、甘さと遅さがそれぞれ別の期限を動かすと考えると整理できます。
甘さが脅かすのは、不適合を相手に伝える通知の期限です。
商人間の売買なら受領後の検査と通知2、請負なら不適合を知ってから1年以内の通知が求められます3。
遅さが脅かすのは支払期日です。
取適法の対象取引では、検査を待たずに受領後60日以内の期日が進みます1。
そのため、全件を同じ厳しさで見るのではなく、不適合の見つけにくさと遅延の影響で対象を3段階に分け、期限と記録は本部で統一するのが現実的です。

商人間の売買:受領後の検査と6か月の通知

検収で不適合を見落としたとき、すぐに失われるのはお金よりも、相手に直してもらう・値引きしてもらうと求められる期間です。
商法526条は、商人どうしの売買で買主が目的物を受け取ったら遅滞なく検査し、契約の内容に合わない点(不適合)を見つけたら直ちに売主へ通知しなければ、追完(修補や代わりの品の引渡し)・代金減額・損害賠償・契約の解除を請求できないと定めています2。
社内で「検収」と呼んでいる手続きの名前に関係なく、法律の上で意味を持つのは、いつ受け取り、いつ検査し、いつ通知したかという時点です。

受け取った時点では見ても分からない不適合については、別の定めがあります。
種類や品質について直ちに発見できない不適合は、買主が6か月以内に発見したときも同じ扱いになります2。
読み替えると、受領から6か月以内に見つけ、見つけたら直ちに通知するという二段の条件です。
6か月を過ぎてから見つかった品質の問題は、この条文のもとでは請求の足場を失うおそれがあります。

多拠点の運用でこれが効いてくるのは、拠点ごとに「いつ開けて見るか」が違うときです。
たとえば同じ取引先から同じ部材が二つの拠点に届き、一方の拠点は受領当日に開梱して数と外観を確かめ、もう一方は使う直前まで箱のまま保管していたとします(説明のための仮例です)。
同じ不適合が混じっていても、前者は受領直後に通知でき、後者は気づいた時点で6か月を過ぎているかもしれません。
拠点ごとの見方の違いは、手間の違いにとどまらず、通知を出せる期限の違いとして表に出てきます。

請負:不適合を知ってから1年

工事や制作物、システムの改修など、仕事の完成を頼む請負の契約では、民法637条が期限を定めています。
注文者は、種類や品質の不適合を知った時から1年以内に請負人へ通知しないと、追完・報酬減額・損害賠償・解除を請求できません3。

売買との大きな違いは、時計が動き出す点です。
商人間の売買では受領が出発点になり、受け取った日から検査と通知の期限を意識することになります。
請負では不適合を知った時が出発点で、引渡しからしばらく経って見つかっても、知った日から1年という数え方になります。
一見すると請負のほうが余裕があるように見えますが、多拠点では「知った日」が拠点の担当者の頭の中にだけある、という状態が起きやすくなります。

たとえば拠点の設備担当者が工事箇所の不具合に気づき、次の点検のときにまとめて本部へ上げようと考えていたとします(仮例)。
その間にも、気づいた日からの1年は進んでいます。
気づいた日が記録に残っていなければ、期限内に通知したことを後から示すのも難しくなります。
請負の期限管理で本部が押さえたいのは、検収日よりもむしろ、拠点で不具合に気づいた日です。

期限の例外(悪意・重過失)と契約での別定め

どちらの条文にも、期限が適用されない場合があります。
商法526条は、売主が不適合を知っていた(悪意の)場合には適用されません2。
民法637条は、引渡しの時(引渡しが要らない仕事なら仕事が終わった時)に請負人が不適合を知っていたか、重大な過失で知らなかった場合には適用されません3。

ただ、相手が知っていたかどうかは、後から発注側が示さなければならない事柄です。
例外があるから多少遅れても大丈夫、と考えて運用を組むのは、検収の基準づくりとしては頼りにくい前提です。

もう一つ、契約で検収期間や保証期間を別に定めている場合は、条文の期限がそのまま当てはまるとは限りません。
どこまで条文と違う扱いになるかは契約の文言で変わるため、取引ごとの確認が必要です。
システム開発のように売買か請負かの見方が分かれうる契約もあり、ここで挙げた6か月や1年は、契約に特別な定めがないときの原則の形として読んでください。

まとめると、甘い検収の損失は、見落とした不適合の修理代そのものではなく、それを相手に求める権利が期限によって細っていくことです。
どれほどの金額になるかは不適合の中身次第で、一律の目安はありません。
だからこそ、遅さの側の制約とも、金額ではなく期限の形で並べて考えるのが判断の出発点になります。

比べる点 商人間の売買(商法526条) 請負(民法637条)
期限の出発点 目的物の受領 不適合を知った時
求められること 遅滞なく検査し発見したら直ちに通知 知った時から1年以内に通知
後から分かる不適合 種類・品質の不適合は6か月以内の発見なら同じ扱い 知った時から1年の数え方は同じ
通知しないと請求できなくなるもの 追完・代金減額・損害賠償・解除 追完・報酬減額・損害賠償・解除
適用されない場合 売主が悪意のとき 引渡し時に請負人が悪意または重過失のとき
取引の類型ごとに動く期限の違い(模式図)
商人間の売買と請負の通知期限、取適法の対象取引の支払期日を三つに分けた図商人間の売買と請負の通知期限、取適法の対象取引の支払期日を三つに分けた図商人間の売買脅かされるのは通知の期限受領後の検査と通知が求められる請負脅かされるのは通知の期限不適合を知ってから1年以内の通知が求められる取適法の対象取引脅かされるのは支払期日検査を待たずに受領後60日以内の期日が進む

▼ 図の内容を文字で読む
  • 商人間の売買
    • 脅かされるのは通知の期限
    • 受領後の検査と通知が求められる
  • 請負
    • 脅かされるのは通知の期限
    • 不適合を知ってから1年以内の通知が求められる
  • 取適法の対象取引
    • 脅かされるのは支払期日
    • 検査を待たずに受領後60日以内の期日が進む
商人間の売買で受領から通知までに求められる流れ
受領後に遅滞なく検査し、不適合を見つけたら直ちに通知し、直ちに発見できない不適合は6か月以内の発見と通知が求められる流れ1目的物を受領する検査と通知の出発点になる2遅滞なく検査する受け取ったら遅れずに検査する3不適合を見つけたら直ちに通知する通知しないと追完・代金減額・損害賠償・解除を請求できない4直ちに発見できない種類・品質の不適合は6か月以内に発見する見つけたら直ちに通知する

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 目的物を受領する:検査と通知の出発点になる
  2. 遅滞なく検査する:受け取ったら遅れずに検査する
  3. 不適合を見つけたら直ちに通知する:通知しないと追完・代金減額・損害賠償・解除を請求できない
  4. 直ちに発見できない種類・品質の不適合は6か月以内に発見する:見つけたら直ちに通知する

検収が遅いと何が起こるか:支払期日は検収を待たない

検査の有無にかかわらない60日の支払期日

通知期限の話だけを読むと、全件を時間をかけて丁寧に見ればよいように思えます。
しかし検収に時間をかけると、稼働開始が遅れる、売り場に並べられないといった事業ごとの損失に加え、取引によっては支払の期限という決まった制約にぶつかります。

中小受託取引適正化法(取適法)のよくある質問では、委託事業者は情報成果物(委託して作成してもらうデータなどの成果物)について、検査するかどうかにかかわらず、受領後60日以内に定めた支払期日までに代金を支払う必要があると説明されています1。
納期の時点で成果物が委託事業者の支配下にあれば、検査が終わっていなくても納期が支払期日の起算日になります1。

社内の支払フローが「検収完了をもって支払手続きを始める」形になっていると、ここで食い違いが起きます。
たとえば拠点でデータを受け取ったものの、担当者が繁忙で確認に手が回らず、検収完了が受領から50日後になったとします(仮例)。
そこから支払申請・承認・振込の段取りを始めると、受領から60日以内の期日に間に合わないおそれがあります。
検収の遅れが、現場の不便にとどまらず支払義務の期限にかかわるのは、この構造のためです。

この扱いが及ぶのは、取適法の対象になる取引、つまり委託事業者と中小受託事業者との取引で、資本金や取引内容の要件を満たすものに限られます。
自社のどの取引が対象になるかは、要件に照らして取引ごとに判定する必要があります。
また、ここで挙げた起算日の扱いは主に情報成果物と役務についての説明であり、物品や工事に同じ考え方をそのまま当てはめられるかは別に確かめる必要があります。

納期が受領日になる場合とやり直しの場合

検査をどこで行うかによって、起算日は動きます。
納期より前に検査を終えた場合は、検査が終わった時点を受領日としてよいとされています1。
一方、検査の途中で納期が来た場合は、納期が受領日になります1。
納期より前に一定の水準を満たすことを確認した時点で受領とする、と事前に合意している場合は、その確認時点が起算日です1。

検査で不適合が見つかったときの扱いもあります。
中小受託事業者の責任による不適合が支払期日前に見つかり、やり直しをさせる場合は、当初の受領日から60日以内に支払う必要はなく、やり直し後の受領日が起算日になります1。
ここで甘さと遅さの話がつながります。
この扱いは支払期日より前に見つかった場合として示されているため、受領後の早い段階で不適合を見つけることは、通知期限だけでなく支払期日の管理にも効いてきます。
検査を後回しにして期日直前に不備が見つかる形が、両方の面でいちばん苦しくなります。

役務の提供を委託する取引では、役務の提供を受けた日は役務が完了した日であり、報告書が届いた日ではないとされています1。
拠点で作業が終わり、報告書が数日遅れて本部に届く運用だと、本部の台帳上の受領日が実際より後ろにずれます。
完了日を拠点で記録して本部へ渡す流れがないと、支払期日の計算そのものが遅れた日付から始まってしまいます。

支払期日の定め方で認められない例

支払期日の決め方にも注意点があります。
「納品後○日以内」のような定め方は、具体的な日が特定できないため認められないとされています1。
拠点ごとに発注書の書式や支払条件の書き方がまちまちだと、こうした書き方が一部の拠点に残っていても気づきにくくなります。

ここまでで、二つの時計が出そろいました。
甘い検収は、商人間の売買なら受領から、請負なら不適合を知った時から動く通知期限を脅かします。
遅い検収は、取適法の対象取引なら受領や納期から動く支払期日を脅かします。
二つは別の法律で、適用される取引の条件も違うため、一つの取引に両方が必ずかかるわけではありません。
また、どちらの損失が大きいかを金額で比べられる相場もありません。
判断の出発点は、どちらが重いかを一般論で決めることではなく、いま扱う取引でどの時計が動いているかを見分けることです。

場面 起算日
納期前に検査を終えた 検査が終わった時点
検査中に納期が来た 納期
一定水準の確認時点を受領とする事前合意がある その確認時点
支払期日前に中小受託事業者の責による不適合でやり直し やり直し後の受領日
役務の提供を委託した 役務が完了した日(報告書の到着日ではない)
取適法の対象取引で起算日が決まる場面の分類
検査が先に終わる場合や事前合意がある場合、検査中に納期が来る場合、やり直しの場合、役務の場合の起算日を分けた図検査が先に終わる場合や事前合意がある場合、検査中に納期が来る場合、やり直しの場合、役務の場合の起算日を分けた図検査の側に寄る場合納期前に検査を終えたら、検査が終わった時点一定水準の確認時点を受領とする事前合意があれば、その確認時点納期が受領日になる場合検査の途中で納期が来たら、納期やり直しの場合支払期日前に中小受託事業者の責任による不適合を見つけてやり直しをさせたら、やり直し後の受領日役務の場合役務が完了した日が受領日報告書が届いた日ではない

▼ 図の内容を文字で読む
  • 検査の側に寄る場合
    • 納期前に検査を終えたら、検査が終わった時点
    • 一定水準の確認時点を受領とする事前合意があれば、その確認時点
  • 納期が受領日になる場合
    • 検査の途中で納期が来たら、納期
  • やり直しの場合
    • 支払期日前に中小受託事業者の責任による不適合を見つけてやり直しをさせたら、やり直し後の受領日
  • 役務の場合
    • 役務が完了した日が受領日
    • 報告書が届いた日ではない

厳格に見るものと簡易に済ませるものを分ける条件

見つけにくさ・不適合時の影響・遅延時の影響の3軸

二つの時計を前提にすると、すべての品目を同じ厚さで検収する理由はなくなります。
ここからは編集部の提案として、品目や取引ごとに検収の厚さを決める軸を三つ挙げます。

  • 見つけにくさ:受領時に見て分かる不適合か、使って初めて分かる不適合か
  • 不適合時の影響:見落としたまま使ったとき、何が止まり誰に影響が出るか
  • 遅延時の影響:検収を待つ間に、支払期日や稼働開始がどれだけ迫るか

一つ目の見つけにくさは、条文の区別に対応しています。
商法526条は、受領時の検査で直ちに発見できる不適合と、直ちに発見できない種類・品質の不適合とで、通知までの扱いを分けています2。
受領時に見れば分かる不適合は、受領時の確認を厚くするほど見落としが減ります。
反対に、使ってみないと分からない不適合は、受領時に時間をかけても見つかりにくく、厚くした分は遅延として残りがちです。
こうした品目では、受領時の確認を必要な範囲にとどめ、使い始めてから気づいた不具合を期限内に本部へ上げる経路を整えるほうが、甘さの損失を減らしやすくなります。

二つ目の不適合時の影響は、見落としたときにどこまで被害が広がるかです。
替えのきかない設備や、複数の拠点で同時に使う仕組みは、影響の大きい側に入ります。
三つ目の遅延時の影響は、検収を待つ間に何が止まるかで、取適法の対象取引であれば受領から支払期日までの日数がここに入ります1。
稼働開始や販売開始を待っている品目も、遅延の影響が大きい側に入ります。

3段階の振り分け表(提案)

三つの軸を組み合わせると、検収の厚さは次の3段階に振り分けられます。
段階の名前や基準は、各社の取引に合わせて置き換える前提の提案です。

段階Aは、見落としたときの影響が大きいか、使ってみないと不適合が分からない品目です。
受領時の確認だけで終わらせず、使い始めてから一定期間を確認の期間として決め、その間に気づいた不具合をどこへ上げるかを先に決めておきます。
請負なら知った時から1年3、商人間の売買なら6か月以内の発見2という期限を、この確認期間の設計に重ねて考えます。

段階Bは、受領時に数や外観、仕様との違いを見ればおおむね分かる品目です。
ここで厚くしたいのは確認の項目よりも、受領から検収完了までの日数の上限です。
確認の中身は受領時に集中しているので、日数が延びても見つかる不適合は増えにくく、遅延だけが積み上がります。

段階Cは、不適合があっても影響が小さく、替えも利きやすい品目です。
受領時には数と破損の有無だけを見て、使う中で不具合に気づいたら本部へ報告する形にとどめます。
簡易にするのは確認の手順であって、受領日の記録まで省くわけではありません。

例として、拠点の業務システムの改修(使って初めて分かる不具合が多く、止まると影響が大きい)は段階A、店舗の什器の納品(受領時に外観や数で多くが分かり、遅れると開店準備に響く)は段階B、事務用の消耗品は段階C、という振り分けが考えられます(いずれも説明のための仮例です)。
同じ什器でも、特注品で替えがきかないなら段階Aへ上げる、というように、品目名ではなく三つの軸で判断します。

金額や件数でどこに線を引くかは、事業ごとの取引の規模や品目の数で変わるため、ここでは数値の目安を置きません。
まず現状の取引を三つの軸で並べてみて、段階Aが多すぎて現場が回らないか、段階Cに影響の大きい品目が紛れていないかを見るのが、線を決める手がかりになります。

振り分けを変える例外条件

品目で決めた段階を、取引の事情で動かしたほうがよい場面もあります。

  • 取適法の対象取引で受領から支払期日までの余裕がないとき:検査を長くするより、納期前に検査を終える段取りや、一定水準の確認時点を受領とする事前合意1で、起算日を検査の側へ寄せる
  • 初めての取引先や初回の納品:過去の実績がない分、一段厚くする
  • 過去に不適合が出た品目や取引先:一定期間だけ一段厚くし、問題がなければ戻す
  • 契約で検収期間や保証期間を定めている取引:段階の手順を契約の定めに合わせる

例外を足しすぎると、結局どの拠点も全件を厚く見る運用に戻ってしまいます。
例外で段階を上げたときは、いつ元に戻すかも同時に決めておくと、厚さが積み上がり続けるのを防げます。

検収の厚さを3段階に振り分ける提案(模式図)
段階Aの重点検収、段階Bの標準検収、段階Cの簡易確認について、条件と確認の中身を分けた図段階Aの重点検収、段階Bの標準検収、段階Cの簡易確認について、条件と確認の中身を分けた図段階A 重点検収条件:不適合時の影響が大きい、または使って初めて分かる不適合が多い受領時の確認に加え、使用開始後の確認期間と通知経路を決める段階B 標準検収条件:受領時に見て分かる不適合が中心受領時に数・外観・仕様を確かめ、検収完了までの日数の上限を決める段階C 簡易確認条件:不適合時の影響が小さく、替えも利きやすい受領時に数と破損の有無を確かめ、不具合に気づいたら本部へ報告する

▼ 図の内容を文字で読む
  • 段階A 重点検収
    • 条件:不適合時の影響が大きい、または使って初めて分かる不適合が多い
    • 受領時の確認に加え、使用開始後の確認期間と通知経路を決める
  • 段階B 標準検収
    • 条件:受領時に見て分かる不適合が中心
    • 受領時に数・外観・仕様を確かめ、検収完了までの日数の上限を決める
  • 段階C 簡易確認
    • 条件:不適合時の影響が小さく、替えも利きやすい
    • 受領時に数と破損の有無を確かめ、不具合に気づいたら本部へ報告する

本部で統一する範囲と拠点裁量に残す範囲

本部で統一する項目:期限・通知窓口・記録様式

振り分けの表を作っても、拠点ごとに運用が違えば、拠点ごとの期限の差はそのまま残ります。
どこまでを本部で統一し、どこを拠点に任せるかの線引きも、編集部の提案として示します。
考え方の軸は、拠点ごとに違うと害になる項目と、現場の知識がないと決められない項目を分けることです。

本部で統一したいのは、期限、通知の窓口、記録の様式です。
通知の有無と時期によって、追完や減額などを求められるかどうかが左右されるため23、通知をいつ誰が出したかは拠点任せにしにくい項目です。

期限は、取引の類型ごとに「受領から何日以内に検収を終えるか」「不具合に気づいたら何日以内に本部へ上げるか」を本部が一覧で定めます。
通知の窓口は、拠点が不適合に気づいたときに誰へ連絡し、誰が取引先へ通知するかを一本の経路にします。
記録の様式は、拠点が違っても同じ項目を同じ形で残せるようにします。
発注書の支払条件の書き方もここに含めると、「納品後○日以内」のような認められない書き方1が一部の拠点に残るのを防ぎやすくなります。

拠点に残す項目:現物確認の方法と軽微品の簡易確認

一方、現物をどう確かめるかは、拠点の知識がないと決められません。
どの箱を開けて何を見るか、設備ならどの順で動かしてみるか、店舗の営業時間のどこで確認するかといった手順は、拠点の設備や人員によって最適な形が違います。
段階Cの簡易確認のやり方も、拠点に任せたほうが無理なく回ります。

ただし拠点に任せるのは確認の手順までで、受領日と不具合に気づいた日の記録は外せません。
手順が拠点ごとに違っていても、日付さえ同じ様式で残っていれば、本部は期限が守られているかを後から確かめられます。

承認権限をどこに置くか

段階の振り分けを変える権限は、本部に置くことをおすすめします。
繁忙な拠点が段階を下げれば見落としが増え、慎重な拠点が段階を上げれば遅延が増えます。
どちらも拠点の中では筋の通った判断ですが、他の拠点とそろわなくなり、同じ取引先との間で期限の扱いがばらつく原因になります。

段階の中での検収完了は、拠点の責任者が承認する形で足ります。
段階Aの品目だけは、本部の担当者も確認に加わると、使用開始後の確認期間や通知の経路が実際に動いているかを本部が把握しやすくなります。

迷いやすいのが、不適合の通知を誰が取引先へ出すかです。
本部の窓口に一本化すると、文面や記録の残し方がそろいます。
その反面、拠点から本部への伝達に日数がかかると、商人間の売買で求められる「直ちに」の通知2に響きかねません。
拠点から取引先へ直接通知し、同時に本部へ写しを送る形と、本部へ当日中に上げて本部から通知する形のどちらが合うかは、拠点の数と本部の人員で変わります。

この線引きは一つの提案で、拠点の数や本部の人員によって合う形は変わります。
採用する前に、自社の契約の定めや権限の規程と食い違いがないかを照らし合わせておくと、運用を始めてからの手戻りが減ります。

項目 本部が決めること 拠点に任せること
期限 受領から検収完了・報告までの日数の上限 上限の範囲内での確認の日程
通知の窓口 連絡先と取引先へ通知する担当 不具合に気づいた時点での本部への連絡
記録の様式 残す日付の項目と様式 様式への記入
段階の振り分け 品目ごとの段階と変更の承認 段階を変えたい品目の申し出
現物確認の手順 段階ごとに最低限見る範囲 開梱・試運転などの具体的な手順
段階Cの確認 対象となる品目の範囲 簡易確認のやり方
検収の運用で本部と拠点が受け持つ項目の分担(提案・模式図)
本部で統一する項目、拠点に任せる項目、拠点でも省けない記録を分けた図本部で統一する項目、拠点に任せる項目、拠点でも省けない記録を分けた図本部で統一する期限(検収完了・報告までの日数の上限)通知の窓口記録の様式段階の振り分けの変更の承認拠点に任せる現物確認の具体的な手順段階Cの簡易確認のやり方拠点でも省けない受領日の記録不具合に気づいた日の記録

▼ 図の内容を文字で読む
  • 本部で統一する
    • 期限(検収完了・報告までの日数の上限)
    • 通知の窓口
    • 記録の様式
    • 段階の振り分けの変更の承認
  • 拠点に任せる
    • 現物確認の具体的な手順
    • 段階Cの簡易確認のやり方
  • 拠点でも省けない
    • 受領日の記録
    • 不具合に気づいた日の記録

ばらつきと遅延を把握する記録と見直し指標

最低限残す4つの日付と通知の有無

本部で統一した項目が実際に守られているかは、記録を見ないと分かりません。
拠点ごとに記録の残し方が違うと、ばらつきがあるのかないのかさえ比べられないためです。
最低限、次の4つの日付を同じ様式で残すことを提案します。

  • 受領日(納期を含む)
  • 検収完了日
  • 不具合に気づいた日
  • 取引先へ通知した日

受領日は、商人間の売買で検査と通知の出発点になり2、取適法の対象取引では支払期日の起算点になります1。
検収完了日は、納期前に検査を終えた場合にその時点を受領日として扱えるかの判断に使います1。
不具合に気づいた日は、請負の1年の出発点であり3、売買では6か月以内に発見したかどうかの判断材料になります2。
通知した日は、期限内に通知したことを示すための記録です。

日付に加えて、通知の有無と方法、通知した相手も同じ行に残します。
やり直しをさせた場合は、やり直し後の受領日が新たな起算日になるため1、その日付も追記します。
支払期日は受領日から計算して同じ行に並べておくと、検収が遅れている取引が支払期日に近づいていることを一目で見つけられます。

拠点別に見る指標

4つの日付がそろうと、拠点ごとの違いを数字で比べられるようになります。
見る指標の案は次のとおりです。

  • 受領から検収完了までの日数の分布
  • 検収が終わらないまま、本部で決めた上限日数を過ぎた件数
  • 不具合に気づいた日から通知した日までの日数
  • 受領からしばらく経って見つかった不適合の件数と品目

受領から検収完了までの日数が長い拠点は、遅延の側に偏っています。
気づいた日から通知までの日数が長い拠点は、確認の厚さよりも、本部へ上げる経路に詰まりがあると考えられます。
受領後しばらく経ってから不適合が見つかる品目が多い場合は、その品目を段階Aへ上げるか、使用開始後の確認期間を見直す材料になります。

これらの指標に、一般に通用する目標値の相場はありません。
比べる相手は、拠点どうしと、自社の過去の数字です。
拠点の間で大きく外れているところがあれば、その拠点の取引や人員の事情を聞き、運用の問題か品目の違いかを分けて考えます。

見直しの頻度と判断のしかた

最初は、まず1か月分の受領日と検収完了日を拠点別に集計し、日数の分布を見るところから始めると取り組みやすくなります。
受領日が記録されていない拠点や取引が見つかれば、それ自体が最初に直すべき点です。
日付が残っていなければ、期限の管理も指標の比較も始められないためです。

その後は、四半期や半期など取引の量に合わせた間隔で、同じ指標を見直します。
見直しのたびに、段階の振り分けと本部・拠点の分担を少しずつ調整し、次の期間の記録で効き目を確かめます。

判断に迷うのは、遅延と見落としが同じ拠点で両方多い場合です。
このときは、確認の厚さを上げ下げするより、受領の段取りや担当者の手当てを見直す余地があります。
厚さを上げれば遅延が増え、下げれば見落としが増えるので、どちらの時計にも余裕がない状態では、振り分けだけで解決しにくいためです。

検収の記録から振り分けの見直しまでの循環(提案・模式図)
日付と通知の有無の記録、拠点別の集計、比較、振り分けと分担の見直しの順に進み、次の記録で確かめる流れ14つの日付と通知の有無を記録する受領日・検収完了日・不具合に気づいた日・通知した日2拠点別に集計するまず1か月分の日数の分布を見る3拠点どうしと過去の数字を比べる検収までの日数、上限超過の件数、通知までの日数4振り分けと分担を見直す次の期間の記録で効き目を確かめる

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 4つの日付と通知の有無を記録する:受領日・検収完了日・不具合に気づいた日・通知した日
  2. 拠点別に集計する:まず1か月分の日数の分布を見る
  3. 拠点どうしと過去の数字を比べる:検収までの日数、上限超過の件数、通知までの日数
  4. 振り分けと分担を見直す:次の期間の記録で効き目を確かめる

自社の取引が商人間の売買・請負・取適法の対象のどれにあたり、契約に別の定めがあるかは、契約書と取引条件を一件ずつ読み合わせないと判断しにくいためです。

品目や取引先ごとにどの期限が動いているかを整理し、3段階の振り分けをどう当てはめるかを一緒に確かめられます。
法的な判断が必要な点は、専門家に確認すべき論点として切り分けます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

甘さの損失 不適合を相手に求める権利が通知期限で失われうること(商人間の売買は受領から、請負は知った時から)
遅さの損失 取適法の対象取引では、検査を待たずに受領後60日以内の支払期日が進むこと
検収の厚さ 見つけにくさ・不適合時の影響・遅延時の影響の3軸で3段階に振り分ける
本部で統一 期限、通知の窓口、記録の様式、段階の振り分けの変更
拠点に任せる 現物確認の具体的な手順、簡易確認のやり方
記録と見直し 4つの日付を同じ様式で残し、まず1か月分を拠点別に集計して比べる

本部と拠点の分担や記録の様式は、拠点の数や本部の人員によって合う形が変わり、社内だけでは線引きの妥当性を比べにくいためです。 現在の拠点ごとの検収の流れと記録を見ながら、本部で統一する項目と拠点に任せる項目、最初の1か月で集計する指標を整理できます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

検収の期間を契約書で長く定めれば、商法526条の通知義務は免除されますか。

契約で別の定めをしている場合に条文の期限がどう扱われるかは、契約の文言によって変わるため、取引ごとの確認が必要です。
検収期間を長く書いただけで通知の義務がなくなると考えるのは危険で、検収の期間と、不適合を見つけてから通知するまでの期限は別のものとして整理しておくのが安全です。
また、取適法の対象取引では、検収期間を長くしても受領後60日以内の支払期日は検査を待たずに進みます1。

検収を拠点ごとに任せている場合、通知期限を過ぎないようにするには最低限何を本部で管理すべきですか。

受領日、不具合に気づいた日、通知した日の3点を、全拠点で同じ様式で残すことです。
商人間の売買では受領から検査と通知の期限が動き2、請負では不適合を知った時から1年が数えられるため3、この日付が拠点の手元にしかないと本部は期限を管理できません。
あわせて、拠点が不具合に気づいたときの連絡先と、取引先へ通知する担当を本部で一本化しておきます。

取適法の対象かどうか分からない取引では、検収と支払期日をどう扱えばよいですか。

対象になるかは、委託事業者と中小受託事業者の取引で、資本金や取引内容の要件を満たすかどうかで決まるため、要件に照らした個別の判定が必要です。
判定が終わるまでの運用としては、受領日を必ず記録し、受領日から60日以内に支払期日が来る前提で支払の段取りを組んでおくと、後から対象と分かった場合にも慌てずに済みます。
支払期日を「納品後○日以内」と書く定め方は認められないとされているため1、発注書の書き方もあわせて見直しておきます。

システムや工事のように使って初めて不適合が分かるものは、検収後の不適合発見をどう扱えばよいですか。

契約が請負にあたる場合は、不適合を知った時から1年以内の通知が求められます3。
商人間の売買にあたる場合は、直ちに発見できない種類・品質の不適合を受領から6か月以内に発見し、直ちに通知することが求められます2。
システム開発のように契約の類型の見方が分かれうるものもあるため、どちらにあたるかは契約ごとに確認が必要です。
運用としては、受領時の確認を厚くするより、使用開始後の確認期間を決め、気づいた日を記録して本部へ上げる経路を整えるほうが効果的です。
取適法の対象取引で、支払期日前に中小受託事業者の責による不適合が見つかりやり直しをさせる場合は、やり直し後の受領日が起算日になります1。

検収書や受領日の記録は何を残せば、後で期限の起算点を説明できますか。

受領日(納期を含む)、検収完了日、不具合に気づいた日、取引先へ通知した日の4つの日付と、通知の方法・相手を残します。
やり直しがあった場合は、やり直し後の受領日も起算日になるため追記します1。
役務の委託では、報告書が届いた日ではなく役務が完了した日が提供を受けた日とされるため1、拠点で完了日を記録して本部へ渡す流れを作っておきます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年)
  2. 2 出典:法務省(e-Gov法令検索)「商法 第526条(買主による目的物の検査及び通知)」(現行)
  3. 3 出典:法務省(e-Gov法令検索)「民法 第637条(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)」(現行)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top