◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 請求書が届いた段階は、仕入時点で計上済みなら内容確認と支払準備の段階であり、稟議・検収・請求書の照合承認・支払決裁は別の判断として分けられる。
- 二重承認と承認漏れは、判断ごとに誰が何を見るかが決まっていないことから起きる。
- 継続・定額の取引は包括承認にして請求書は照合に絞り、単発・高額・枠超え・条件変更の取引は個別に決裁する。
- 権限表は枠内・枠外、金額帯、取引の種類で承認者を割り当て、請求書の承認者と支払実行者を分ける。
- 支払日から承認期限を逆算し、代理決裁者と緊急支払の条件を先に決め、承認の記録は請求書データの保存とは分けて残す。
目次

請求書が届いても止まらない買掛の承認:どこで何を決めるかを4つに分ける
請求書は届いたのに決裁者の承認が下りず、支払期日だけが近づいてくる。
この案件に稟議が要るのか、誰に回せばよいのかも、毎回ばらつく。
こうした詰まりは、発注時の稟議、検収、請求書の照合承認、支払決裁を別々の判断として分けると整理できます。
継続取引は基本契約や予算の枠で一度承認し、請求書の段階では枠内かどうかの照合に絞ります。
そのうえで金額・取引の種類・継続性で決裁者を決め、代理決裁者と承認期限を先に置いておきます。
承認を省くのではなく、同じ判断を何度も繰り返さない形にするのが中心の考え方です。
請求書到着時点と買掛計上時点は別
買掛金は、仕入先や外注先との継続的な営業取引から生じる債務で、単発の取引から生じる未払金とは区別されます2。
仕入れた時点をいつとするかは、出荷時点・商品の受取時点・検収完了時点のいずれかとするのが一般的とされ、どれを採るかは会社の会計方針で決まります2。
会計ソフト提供者の解説による整理なので、自社がどの時点で計上しているかは、自社の会計方針で確かめる必要があります。
掛け仕入を仕入時点で計上している場合、請求書が届いた段階では新たな会計処理は発生せず、内容を確かめて支払の準備をする段階になります2。
つまり請求書の承認は、買掛金を発生させる手続きではありません。
すでに発生した債務の金額と中身が合っているかを確かめ、支払へ渡すための手続きだと位置づけられます。
ここを混同すると、請求書の承認欄で「そもそもこの発注は妥当だったのか」まで改めて問われます。
決裁者は発注の経緯を調べ直すことになり、その間、請求書は止まったままです。
請求書の承認に時間がかかっているときは、請求書そのものではなく、前の段階で済ませるべき判断を請求書の段階でやり直していないかを疑ってみる価値があります。
稟議・検収・請求書承認・支払決裁の役割
買掛の流れを、判断の中身で分けると次のようになります。
- 稟議(発注前):この取引をしてよいか、いくらまで、どの条件で発注するかを決める
- 検収:注文どおりの物やサービスが、数量・品質どおりに届いたかを確かめる
- 請求書の照合承認:請求書の金額・数量・単価が、注文内容と検収結果に合っているかを確かめる
- 支払決裁:いつ、どの口座へ、いくらを支払うかを確定させる
4つの判断は、確かめる材料も、確かめるのに向いた人も違います。
発注の妥当性は予算を持つ部門長、検収は現場で物を受け取った担当者、照合は注文書と納品記録を並べられる経理や購買、支払は資金繰りを見る経理責任者、という割り当てが一つの考え方です。
会社の規模によっては一人が複数を兼ねます。
兼ねる場合でも「いまどの判断をしているか」を分けておくと、どこで止まっているかが見えやすくなります。
二重承認と承認漏れが起きる理由
仮の例で考えます。
ある会社が、外注先に毎月の保守作業を依頼しているとします。
発注時には部門長が稟議で承認し、作業完了後には現場担当者が完了を確認しています。
ところが月末に請求書が届くと、請求書承認の欄にも同じ部門長の承認が求められ、部門長は「この保守は何の契約だったか」を稟議書まで遡って確かめ直します。
発注の妥当性という同じ判断を、別の場面でもう一度している状態で、これが二重承認です。
反対に、承認漏れは判断の受け持ちが決まっていないときに起きます。
たとえば検収を誰がするか決まっておらず、請求書が届いた時点で初めて「作業は本当に終わったのか」と誰かが気づく。
あるいは稟議を通さずに発注された取引の請求書が届き、照合する注文情報がないまま支払決裁だけが回ってくる。
どちらも、4つの判断のどこかが空いている状態です。
二重承認と承認漏れは逆の問題に見えますが、原因は共通しています。
判断ごとに誰が何を見るかが決まっていないため、ある判断は重なり、ある判断は抜けるのです。
承認の滞りとしてよく挙がる要因も、この重なりと深く関係しています。
▼ 図の内容を文字で読む
- 稟議(発注前)
- 検収
- 請求書の照合承認
- 支払決裁
稟議はどれくらい時間がかかり、何で滞るのか
承認にかかる日数の調査
稟議の承認にどれくらいかかっているかについては、弁護士ドットコム株式会社のプロフェッショナルテック総研が2024年に公表した社内稟議の実態調査があります。
電子契約サービス「クラウドサイン」の利用者を対象にしたウェブアンケートで、回答は312名、実施期間は2024年9月〜10月です1。
この調査では、稟議の承認までに1日以上かかるという回答が73.5%でした1。
所要時間別に見ると、2〜3日が52.5%、4〜5日が14.4%となっています1。
ただし、これは稟議全般についての回答で、買掛の請求書承認に限った数字ではありません。
特定のサービスの利用者に聞いた調査なので、全国の企業の平均とも言えません。
それでも、請求書の承認を稟議と同じ重さの手続きで回している会社なら、一件に数日かかることを前提に期日を考えておく必要があります。
支払日の直前に請求書を回し始めると、承認が1〜2日ずれるだけで間に合わなくなるからです。
滞りの3つの要因
同じ調査で稟議の課題として挙がったのは、「承認完了までに関わる人が多すぎる」が41.0%、「稟議書作成前の相談や根回しに時間がかかる」が35.9%、「稟議書の作成が必要となる対象範囲が広すぎる」が31.6%でした(複数回答)1。
これを買掛の流れに置き換えると、3つの要因はそれぞれ先ほどの4つの判断と結び付きます。
関わる人が多すぎるのは、照合で済むはずの請求書にも、発注時と同じ承認者が並んでいる状態と重なります。
根回しに時間がかかるのは、発注時点で枠や条件を決めておかなかったため、請求書の段階で関係部門の了解を取り直している状態に近いものです。
対象範囲が広すぎるのは、毎月同じ金額で届く請求書まで、一件ずつ稟議書を起こしている状態にあたります。
この読み替えは、調査結果をもとにした分析です。
調査は買掛を対象にしておらず、請求書の承認を絞れば日数が何日縮むといった効果までは示していません。
言えるのは、承認の重なりを減らす方向が、挙がった課題と同じ向きを向いているということまでです。
自社の滞留箇所を測る方法
一般的な調査より判断に役立つのは、自社のどこで止まっているかの記録です。
難しい仕組みは要りません。
直近数か月分の請求書について、次の日付を一覧に並べてみます。
- 請求書の受領日
- 照合が終わった日
- 各承認者が承認した日
- 支払決裁が下りた日
- 支払日
日付の差を見ると、止まっている場所が分かります。
受領から照合完了までが長いなら、注文書や検収の記録が手元に揃っていない可能性があります。
特定の承認者の前で毎回数日止まるなら、その人の承認がそもそも必要か、代理を置けるかを考える材料になります。
支払決裁の直前で詰まるなら、請求書の承認と支払決裁が同じ人に集中していることが考えられます。
記録を取るときは、差し戻しがあった請求書に印を付けておくと原因の見当が付きやすくなります。
差し戻しの理由が「発注の経緯が分からない」であれば前段の稟議や発注情報の不足、「金額が違う」であれば照合の問題というように、どの判断で詰まったかが分かれるからです。
| 項目 | 回答の割合 |
|---|---|
| 承認までに1日以上かかる | 73.5% |
| 承認までの所要時間が2〜3日 | 52.5% |
| 承認までの所要時間が4〜5日 | 14.4% |
| 課題:承認完了までに関わる人が多すぎる | 41.0% |
| 課題:稟議書作成前の相談や根回しに時間がかかる | 35.9% |
| 課題:稟議書の作成が必要となる対象範囲が広すぎる | 31.6% |
▼ 図の内容を文字で読む
- 承認完了までに関わる人が多すぎる(41.0%)
- 照合で済むはずの請求書にも発注時と同じ承認者が並ぶ
- 稟議書作成前の相談や根回しに時間がかかる(35.9%)
- 発注時に枠や条件を決めておかず、請求書の段階で関係部門の了解を取り直す
- 稟議書の作成が必要となる対象範囲が広すぎる(31.6%)
- 毎月同じ金額で届く請求書まで一件ずつ稟議書を起こす
案件ごとに稟議を取るか、包括承認にして請求書は照合に絞るか
個別稟議が向く取引
個別稟議は、取引ごとに発注の妥当性を判断する方法です。
初めて取引する相手、単発の購入、金額が大きいもの、仕様や条件がその都度変わるものは、発注のたびに判断する意味があります。
買掛金は継続的な取引から、未払金は単発の取引から生じる債務として区別されます2。
この区分は会計上のものですが、承認の分け方を考える手掛かりにもなります。
単発の取引には、その都度「この支出をしてよいか」を判断する場面が残るからです。
個別稟議の弱点は、取引の数が増えると、似たような稟議が毎月積み上がることです。
先の調査で「対象範囲が広すぎる」が課題に挙がっていたことは1、こうした積み上がりと重なる面があります。
包括承認が向く取引
包括承認は、継続取引について、基本契約・年間予算・月額の上限といった枠を一度決裁し、その枠内の請求書は個別の稟議を起こさずに処理する方法です。
請求書の段階では、枠の中に収まっているか、注文や検収と合っているかの照合に絞ります。
仮の例として、毎月定額の保守料、単価が決まっている消耗品の定期購入、年間契約の外注作業などが考えられます。
先ほどの保守作業の例なら、年度初めに「この契約で年間いくらまで」と決裁しておけば、毎月の請求書では金額が契約どおりか、作業完了の確認があるかを見ればよくなります。
部門長が毎月、稟議書を遡って確かめ直す必要はなくなります。
包括承認は承認を省くことではありません。
発注の判断を契約時や年度初めにまとめて行い、毎月の請求書では照合だけを行う、という判断の配置換えです。
その代わり、枠を決める段階の判断は重くなります。
上限額、対象となる取引の範囲、条件が変わったときの扱いを、最初に決めておく必要があります。
比較表と向かない取引
判断が分かれるのは、手間をどこに置くかです。
個別稟議は毎回の手間が大きい代わりに、取引ごとの判断が記録に残ります。
包括承認は毎回の手間が小さい代わりに、枠を決める時点の判断と、枠を超えたことに気づく仕組みが要になります。
包括承認が向かないのは、単発の取引、高額の取引、枠を超える取引、条件が変わる取引です。
継続取引でも、単価の改定や数量の大幅な増加があった月は、枠を決めたときの前提が変わっています。
こうした月の請求書まで照合だけで通すと、本来判断すべき変化が見過ごされます。
包括承認を採るときは、「枠を超えたら個別の決裁に戻す」「単価や条件が変わったら枠を決め直す」という戻し方も一緒に決めておきます。
どちらが優れているかは、取引によって変わります。
一社の中で両方を使い、取引の性質で振り分けるのが現実的です。
自社の取引一覧を見て、どの取引なら枠で管理できるかを一つずつ判断していくことになります。
| 比べる点 | 案件ごとの稟議 | 包括承認+請求書は照合 |
|---|---|---|
| 承認のタイミング | 発注のたび | 契約時・年度初めなどに枠を一度 |
| 請求書側で見る点 | 稟議の内容と請求内容が合うか | 枠内か、注文・検収と合うか |
| 統制が効く点 | 取引ごとの判断が記録に残る | 枠の設定時に条件をまとめて判断できる |
| 手間が増える点 | 取引が増えると稟議の件数が増える | 枠の設定と、枠を超えたときの検知 |
| 向く取引 | 単発・初めての相手・高額・条件が都度変わる取引 | 継続取引・定額や単価が決まっている取引 |
| 向かない取引 | 毎月繰り返す定額の取引(手間が積み上がる) | 単発・高額・枠を超える・条件が変わる取引 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 案件ごとの稟議
- 初めて取引する相手
- 単発・高額・条件が都度変わる取引
- 包括承認で請求書は照合に絞る
- 毎月定額の保守料や単価が決まった定期購入
- 請求書では枠内か、注文・検収と合うかを見る
- 個別の決裁に戻す場合
- 枠を超えたとき
- 単価や条件が変わったとき
決裁権限を金額・取引の種類・継続性でどう区分するか
権限表のひな形
包括承認の枠内か枠外かという区分に、金額帯と取引の種類を重ねると、誰がどの請求書を決裁するかを一覧にできます。
この一覧を権限表(決裁権限の一覧)と呼びます。
取引の種類は、商品の仕入、外注、経費性の支出(備品や消耗品など)のように分けると、確かめる中身の違いがはっきりします。
仕入は数量と単価、外注は作業の完了、経費性の支出は予算との関係が主な確認点です。
継続性は、包括承認の枠内か、枠外または単発かで分けます。
閾値A・閾値Bは、会社の規模、取引の量、一件あたりの影響の大きさで決めるもので、一般的な相場額はありません。
決め方の手掛かりとしては、先ほど記録した請求書の金額分布を見て、件数の多い少額の請求書をどこまで現場の責任者で完結させられるかを考える方法があります。
少額で件数の多い請求書を上位の承認者から外せれば、上位の承認者は金額の大きい案件や例外の判断に時間を使えるようになります。
会計監査を受けている会社や、外部への報告が求められる会社では、承認の水準について別の考慮が必要になることもあります。
その場合は、権限表の案を作った段階で監査人などの専門家にも見てもらうと安心です。
承認者と支払実行者を分ける
権限表と一緒に決めておきたいのが、請求書を承認する人と、支払を実行する人を分けることです。
承認と記録と支払処理を別の担当者が受け持てば、一人の判断だけでは支払が完了しません。
誤りや不正に気づける機会が増えるという点で、職務の分担(分掌)の考え方を請求書の処理に当てはめた提案です。
具体的には、請求書の照合と承認は部門側と経理の照合担当、支払データの作成と実行は経理の支払担当、支払決裁は経理責任者、という分け方が考えられます。
同じ人が請求書を承認し、振込データを作り、送金まで行える状態だと、承認内容と違う支払がされても気づく人がいません。
人数の少ない会社では、すべてを別の人に分けられないこともあります。
その場合は、支払後に別の人が振込明細と承認済みの請求書を突き合わせる、月に一度は経営者が支払一覧を見る、といった事後の確認で補う方法があります。
分けられない部分を把握したうえで、どこで誰が見直すかを決めておけば、一人で完結してしまう範囲を狭められます。
| 取引の区分 | 閾値A未満 | 閾値A以上B未満 | 閾値B以上 |
|---|---|---|---|
| 枠内の継続取引 | 照合担当の確認で承認 | 照合担当+部門責任者 | 部門長 |
| 枠外・単発の仕入 | 部門責任者 | 部門長 | 役員などの上位者 |
| 枠外・単発の外注 | 部門責任者(完了確認を添付) | 部門長 | 役員などの上位者 |
| 経費性の支出 | 部門責任者 | 部門長 | 役員などの上位者 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 部門側と経理の照合担当
- 請求書の照合と承認
- 経理の支払担当
- 支払データの作成と実行
- 経理責任者
- 支払決裁
- 分けられない場合
- 支払後に別の人が振込明細と承認済みの請求書を突き合わせる
決裁が止まったときの代理決裁・期限管理・緊急支払
承認期限の逆算
期日に間に合わなくなる場面では、支払日から逆算した締め切りがないまま、請求書が届いた順に回っていることがよくあります。
逆算の考え方は単純です。
支払日に送金するには支払データを作る日が要り、その前に支払決裁が完了している必要があり、さらにその前に請求書の照合と承認が終わっている必要があります。
それぞれに何営業日を見込むかを決めると、請求書ごとの承認期限が決まります。
何営業日前に置くかは、会社の支払サイクルと、自社で測った滞留日数で決めます。
たとえば承認に毎回2〜3日かかっている会社なら、その日数を見込んだうえで余裕を持たせる、という決め方です。
期限を決めたら、請求書を受け付けた時点でその請求書の承認期限を記録し、期限が近いものから順に処理できるようにしておきます。
支払期日そのものは、取引先との契約や取引条件で決まります。
取引の種類によっては支払期日に法令上の決まりが関わる場合もあるため、自社の取引が該当するかどうかは取引ごとに確かめておく必要があります。
代理決裁者の事前設定
決裁者が出張や休暇で不在になると、その人の承認待ちで請求書が止まります。
調査で承認完了までに関わる人が多すぎることが課題の上位に挙がっていたように1、承認者が多いほど、誰か一人の不在で止まる場所も増えます。
対策は、不在になってから代わりを探すのではなく、権限表の段階で代理決裁者を決めておくことです。
決めておく内容は、誰の代理を誰が務めるか、代理で決裁できる金額や取引の範囲、代理で決裁したことを本来の決裁者へどう伝えるか、の3点です。
代理の範囲を決めずに「部長が不在のときは次長が承認」とだけ定めると、高額の案件や例外まで代理で通ってしまうことがあります。
逆に範囲を狭くしすぎると、結局は不在明けまで待つことになります。
権限表の閾値を基準に、代理で決裁できる上限を一段下げておく、といった決め方が考えられます。
緊急支払の例外条件
どうしても通常の決裁が期日に間に合わない場合に備えて、緊急支払の扱いも先に決めておきます。
決めずにいると、その場の判断で承認を飛ばした支払が前例になり、例外が例外でなくなっていきます。
決めておく内容の例は次のとおりです。
- 緊急支払として扱える条件(例:期日を過ぎると取引の停止などの不利益が生じるおそれがある場合)
- 事前に最低限必要な承認(例:経理責任者と、支払実行者以外の一人の確認)
- 事後に正式な決裁を取る期限と、報告する相手
- 緊急支払の件数と理由を定期的に振り返る仕組み
事後承認をどこまで認めるかは社内の規程で決める事柄で、範囲は会社によって異なります。
欠かせないのは、事後に正式な決裁を取り、その記録を残すことです。
緊急支払が頻繁に起きるなら、承認期限の逆算か代理決裁の設定のどこかに無理があるという合図として読み取れます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 請求書の受領と承認期限の記録
- 照合と請求書の承認(支払日のX営業日前まで)
- 支払決裁(支払日のY営業日前まで)
- 支払データの作成(支払日のZ営業日前まで)
- 支払日
承認の証跡をどう残すか:紙・メール・ワークフローの違い
請求書データの保存で確認できる要件
承認の記録を考える前に、請求書そのものの保存と、承認の記録とを分けておく必要があります。
両者は、求められている理由が違うからです。
メールに添付されたPDFや、取引先のシステムからダウンロードした請求書など、電子でやり取りした請求書は電子取引のデータとして保存します。
国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、データの真実性を確保する方法として、タイムスタンプが付された後に授受すること、または正当な理由がない訂正や削除を防止するための事務処理規程によることが示されています3。
検索については、一課税期間を通じて検索できる状態にしておく必要があり、既存のシステムで検索できなくてもよい場合もあるとされています3。
保存期間や、紙で受け取った請求書の扱いなど、ここで触れていない要件もあります。
具体的な保存方法を決めるときは、国税庁の資料や税理士への相談で全体を確かめておくと安全です。
承認ログの扱い
誰がいつ何を承認したかという承認の記録は、請求書データの保存とは別の話です。
ここでは、主に社内の統制のために残す記録として考えます。
残しておきたいのは、承認した人、承認した日時、承認した対象(どの請求書のどの金額か)、代理決裁や緊急支払だった場合はその旨、の4点です。
後から「この支払は誰が認めたのか」と問われたときに、請求書と承認の記録を結び付けてたどれることが目安になります。
代理決裁や緊急支払の記録は、例外の運用が決めたとおりに守られているかを振り返る材料にもなります。
例外として処理した件数と理由を見返すと、権限表や承認期限の設定を見直すきっかけがつかめます。
手段別の比較
紙の回覧は手元で完結しやすい一方、いま誰のところで止まっているかが見えにくくなります。
電子で受け取った請求書を印刷して回す場合、印刷した紙とは別に、元の電子データの保存も考える必要があります。
メールでの承認は返信の記録が残るものの、請求書のデータと承認の返信が別々の場所に散らばりやすく、後から一件を探すのに手間がかかります。
ワークフローシステム(申請と承認の流れを電子化する仕組み)は、承認の状況や期限を画面で追いやすく、承認の記録を請求書と同じ場所に残しやすい手段です。
ただし、どの機能があるかは製品ごとに異なり、導入しただけで滞りがなくなるわけではありません。
4つの判断の分け方、権限表、承認期限と代理決裁の設定が決まっていなければ、紙の回覧をそのまま画面に移すだけになります。
どの手段を選ぶにしても、先に整えるのは承認の流れそのものです。
手段は、その流れを見えるようにし、記録を残すための道具として選ぶと判断しやすくなります。
| 比べる点 | 紙の回覧 | メール | ワークフローシステム |
|---|---|---|---|
| いま誰が持っているか | 回覧先に聞かないと分かりにくい | 送信履歴をたどる必要がある | 画面で確認しやすい(製品の機能による) |
| 期限の通知 | 人が声をかける | 人が催促のメールを送る | 自動で通知できる場合がある(製品の機能による) |
| 承認の記録 | 押印・署名した紙 | 承認の返信メール | システム上の承認履歴 |
| 請求書データとの結び付き | 電子の請求書とは別に管理する | 添付と返信が散らばりやすい | 同じ申請に添付して残しやすい |
▼ 図の内容を文字で読む
- 請求書データの保存
- 真実性の確保(タイムスタンプ、または事務処理規程)
- 一課税期間を通じて検索できる状態
- 承認の記録(社内の統制)
- 承認した人と日時
- 承認した対象(どの請求書のどの金額か)
- 代理決裁や緊急支払だった場合はその旨
4つの判断の分け方や包括承認に移せる取引の範囲は、取引の一覧と現在の承認ルートを並べてみないと決めにくく、社内だけでは前例に引っ張られやすいためです。
現在の承認ルートのどこで判断が重なり、どこが空いているかを一緒に整理し、包括承認に移せそうな取引を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 判断の分け方 | 稟議・検収・請求書の照合承認・支払決裁を別の判断として扱う |
|---|---|
| 請求書の位置づけ | 仕入時点で計上済みなら、請求書は内容確認と支払準備の段階 |
| 包括承認 | 継続・定額の取引に向く。枠超えや条件変更は個別決裁に戻す |
| 権限表 | 枠内・枠外、金額帯、取引の種類で承認者を決める。閾値は各社で決める |
| 分掌 | 請求書の承認者と支払実行者を分ける。分けられなければ事後確認で補う |
| 期限と代理 | 支払日から承認期限を逆算し、代理決裁者と範囲を事前に決める |
| 証跡 | 請求書データの保存要件と、社内統制のための承認記録を分けて考える |
権限表の閾値、代理決裁の範囲、承認期限の日数は、自社の取引量と滞留の記録によって変わり、一般的な相場では決められないためです。 請求書ごとの滞留の記録をもとに、権限表のひな形を自社向けにどう埋めるか、承認期限と代理決裁をどう置くかを検討できます。
よくある質問
請求書を受け取っただけで、買掛金として計上してよいか。
買掛金を計上する仕入の時点は、出荷時点・商品の受取時点・検収完了時点のいずれかとするのが一般的とされ、どれを採るかは会社の会計方針で決まります2。
仕入時点で計上している場合、請求書が届いた段階では新たな会計処理は発生せず、内容の確認と支払の準備をします2。
自社がどの時点で計上しているかは、会計方針や顧問の税理士に確かめてください。
継続取引は、毎月の請求書ごとに稟議が必要か。
毎月の稟議が必要かどうかは、社内の規程で決める事柄です。
基本契約や年間予算の枠で一度決裁し、毎月の請求書は枠内かどうか、注文や検収と合うかの照合に絞る包括承認という方法もあります。
単価や数量が変わった月、枠を超えた月は個別の決裁に戻す、という戻し方を一緒に決めておくのが前提です。
決裁者が出張中のとき、誰が請求書を承認してよいか。
権限表で事前に決めた代理決裁者が承認するのが基本です。
不在になってから代わりを探すと、範囲があいまいなまま高額の案件まで通ってしまうおそれがあります。
誰の代理を誰が務めるか、代理で決裁できる金額や取引の範囲、本来の決裁者への報告方法を、あらかじめ決めておきます。
承認と支払処理を同じ担当者がしてもよいか。
同じ人が承認から送金まで行えると、承認内容と違う支払がされても気づく人がいなくなるため、分けておくことをおすすめします。
人数が少なく分けられない場合は、支払後に別の人が振込明細と承認済みの請求書を突き合わせるなど、事後の確認で補う方法があります。
メールで受けた請求書の承認記録は、どう残すか。
まず請求書のデータそのものは電子取引のデータとして保存し、タイムスタンプまたは訂正削除を防止する事務処理規程による真実性の確保と、一課税期間を通じた検索ができる状態が求められます3。
承認の記録は社内の統制のために、承認した人・日時・対象の請求書と金額・代理や緊急の別を、請求書とたどれる形で残しておくと、後から確かめやすくなります。
緊急で支払う場合、事後承認でも問題ないか。
事後承認をどこまで認めるかは社内の規程で決める事柄です。
緊急支払として扱える条件、事前に最低限必要な承認、事後に正式な決裁を取る期限と報告先を先に決めておけば、その場の判断で承認を飛ばす前例を作らずに済みます。
緊急支払が頻繁に起きる場合は、承認期限や代理決裁の設定を見直す合図になります。
- 1 出典:弁護士ドットコム株式会社(プロフェッショナルテック総研)「社内稟議の実態調査」(2024年)
- 2 出典:弥生株式会社「買掛金とは?仕訳方法、売掛金や未払金との違いを解説」(2026年)
- 3 出典:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」(令和7年6月版)
画像の出典元
- Businessman working with financial documents at office desk, highlighting details./Photo by RDNE Stock project on Pexels