◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 買掛業務を受領・確認・計上・支払・残高確認の5工程に分け、工程ごとの担当・承認者・代わる人を空欄なしで書くと、担当者が替わると止まる箇所が見える
- 記録・承認・支払が一人の中で閉じる形を避け、分けられない場合は支払前の承認や担当以外による月次の残高確認で補う
- 確認の工程ではインボイスの記載事項を見て、メールやWebで届いた請求書はデータのまま決まった場所へ保存する
- 計上は請求書の到着ではなく引渡しの時点が基準になるため、計上の基準を一つに決め、月末には未着・記録なし・確認中の一覧を承認者が見る
- 引き継ぎでは工程表に取引先別の例外や支払権限などを添え、買掛金元帳で取引先別の残高を確かめる
目次

請求書が届いても誰が何をするのか曖昧なとき、まず買掛業務の5工程と担当を書き出す
請求書は届くのに、確認・計上・支払の担当がはっきりせず、担当者が休んだり替わったりすると止まってしまう。
一人に集中していて不安でも、どこを分ければよいのか分からない。
こうした買掛金の担当体制は、業務を受領・確認・計上・支払・残高確認の5工程に分け、工程ごとの担当と承認者を書き出すと見直せます。
基本は、記録・承認・支払を同じ人が一人で完結させないことです。
人手が足りず分けられない場合は、上長の承認や担当以外の人による残高確認などで補います。
そのうえで、取引量と人数に合う体制を条件から選びます。
受領・確認・計上・支払・残高確認の5工程
買掛金は、商品やサービスを掛けで仕入れ、まだ代金を払っていない分を表す勘定です。
担当を決めるには、まずこの未払の分が生まれてから消えるまでに、どんな作業が挟まるのかを並べる必要があります。
会計ソフトを提供する弥生の解説では、注文した段階では仕訳は不要で、商品の引渡しを受けた時点で買掛金を計上するとされています1。
請求書を受け取った段階では会計処理は発生せず、内容の確認と支払期限への備えを行います1。
支払ったときに未払分を支払って買掛金を消し込み、振込手数料がかかれば支払手数料として別に計上します1。
そのうえで、残高は定期的に確認するという流れです1。
これを担当の単位に置き直すと、請求書の受領、内容の確認、計上、支払、残高確認の5工程になります。
受領は請求書を受け取り、届いたことを記録する作業です。
確認は、発注や納品の記録と請求の中身を照らし合わせる作業です。
計上は会計帳簿へ入れる作業、支払は振込などで資金を動かす作業、残高確認は取引先ごとの未払残高が正しいかを確かめる作業です。
なお、工程の並びは作業の順番であって、計上の日付を請求書の到着日に合わせるという意味ではありません。
帳簿上の計上時点は引渡しを受けた時点が基準になるため、請求書より先に商品が届く取引では、計上の材料は納品や検収の記録の側にあります。
この時点の違いが月末の処理にどう響くかは、計上のタイミングを扱う節で改めて説明します。
工程ごとの担当と承認者を空欄なしで書く
工程が並んだら、次は工程ごとに、実際に手を動かす担当と、その結果を確かめて先へ進めてよいと認める承認者を書き出します。
表にする場合は、工程、作業の内容、担当、承認者または確認者、使う記録、担当が不在のときに代わる人の欄を設けると、後で引き継ぎの資料にもそのまま使えます。
これは弥生の解説の流れを担当表に置き直した編集部の整理で、欄の名前や数は自社に合わせて変えて構いません。
書くときの決まりは、空欄を残さないことと、部署名ではなく役割か個人で書くことです。
「経理」と書いた欄は、経理に二人いれば、どちらが受け持つのか決まっていない状態と同じです。
まだ誰も決まっていない工程は、空欄のままにせず「未定」と書いておくと、後で決めるべき箇所として目に入ります。
仮の例で考えます。
仕入先からの請求書が、発注した営業担当のメールアドレスに届き、営業担当が経理へ転送しているとします。
この場合、受領の担当は経理ではなく営業担当で、転送が遅れれば確認以降の工程がすべて止まります。
表に書くと、受領の欄に営業担当の名前が入り、使う記録の欄には個人のメールボックスと書かれるはずです。
担当が曖昧に感じられる職場では、このように工程の入口が経理の外にあり、表にして初めてそれが見えることがあります。
担当者が替わると止まる箇所の見つけ方
書き上げた表は、担当者が替わったときにどこで仕事が止まるかを探す材料になります。
見るのは次のような行です。
- 代わる人の欄が空いている、または担当と同じ名前が入っている行
- 受領から支払まで、一人の名前が続けて並んでいる行
- 使う記録が、特定の人のメールボックスや手元のファイル、記憶にしかない行
- 承認者の欄は埋まっているが、承認者が何を見て承認しているのか書けない行
最後の点は見落とされやすいところです。
承認者が支払の一覧に印を押していても、請求書や検収の記録を見ていなければ、確認の役割は果たされていません。
一人の名前が続く行と、承認の中身が書けない行は、次に考える分担の見直しで中心になる箇所です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受領
- 会計処理は発生しない
- 確認
- 会計処理は発生しない
- 内容の確認と支払期限への備え
- 計上
- 引渡しを受けた時点で買掛金を計上
- 支払
- 買掛金を消し込む
- 振込手数料は支払手数料として別に計上
- 残高確認
- 取引先ごとの未払残高を確かめる
分けるべき作業と、兼ねてもよい作業:小規模で分けられないときの代替統制
記録・承認・支払を同じ人が完結させない
工程表の各行は、性質でまとめると三つの機能に分かれます。
帳簿に入れる「記録」、支払ってよいと認める「承認」、口座から実際にお金を動かす「支払」です。
計上の工程が記録、支払の工程が資金の動きに当たり、承認はその間に入って、記録された内容どおりに払ってよいかを判断します。
以下は、工程の区切りにこの三つの機能を重ねた編集部の整理です。
記録・承認・支払を同じ人が一人で完結できると、誤りに気づく機会がその人自身の見直しだけになります。
同じ請求書を二度計上して二度払った場合も、金額を打ち間違えた場合も、入れた本人がそのまま承認して振り込めば、次に気づけるのは仕入先からの連絡か、後の残高確認の時です。
意図的な不正を前提にしなくても、同じ人の目を二度通しただけでは、思い込みによる誤りは残ります。
一方で、すべての工程を別の人にする必要はありません。
受領と内容の確認を同じ人が続けて行っても、その後に別の人の承認が入れば、誤りを止める機会は残ります。
兼ねるときに避けたいのは、記録と承認と支払の三つが一人の中で閉じる形と、支払をした本人だけが残高確認をする形です。
どこを兼ねてよいかは、兼ねた結果、別の人の目が一度も入らない流れが生まれるかどうかで見分けられます。
分けられないときの代替統制の考え方
人員が少なく、記録と支払をどうしても同じ人が担う会社もあります。
この場合の考え方として参考になるのが、金融庁が示す財務報告に係る内部統制の基準と実施基準です。
金融庁の解説では、小規模で比較的簡素な組織構造の企業では、その特性に応じた工夫が行われるべきとし、「職務分掌に代わる代替的な統制や外部専門家の利用等」を例示しています4。
職務分掌とは、仕事の範囲と権限を人ごとに分けて決めることです。
ただし、この基準は金融商品取引法に基づく制度の枠組みで、上場企業などを対象にしたものです4。
非上場の中小企業に同じ義務を課すものではないため、ここでは、分けられないときに別の確認で補うという考え方を借りる位置づけで捉えてください。
買掛業務に当てはめると、補い方として次のような形が考えられます。
これは編集部の提案で、どれか一つで足りるというものではなく、自社の工程表で一人に閉じている行に合わせて選びます。
- 振込の前に、上長や代表者が支払予定の一覧と請求書を見て承認する
- 通帳や入出金の明細を、支払をした人とは別の人が見る
- 月に一度、支払の一覧と買掛金元帳の取引先別の残高を、担当以外の人が突き合わせる
どの形でも、成り立つ条件は、承認者や確認者が中身を実際に見られることです。
一覧に印を押すだけの承認は、表の上では分担があるように見えても、誤りを止める機会は増えていません。
確かめ方としては、月次の突合で、支払った額と元帳の残高の減り方が取引先ごとに合っているかを見ることが手掛かりになります。
こうした確認を加えても誤りがなくなるわけではありませんが、一人の中で閉じていた流れに、別の人の目が入る場所が一つ増えます。
外部専門家を使う場合に残すべき自社側の確認
記帳や月次の締めを税理士事務所などの外部に頼む場合も、外に出せるのは主に記録の部分です。
外部の担当者が見られるのは、自社から送られた請求書や明細だけです。
商品が本当に届いたのか、発注どおりの数量だったのかは、自社の側にしか分かりません。
そのため、外部専門家を使う場合でも、自社側に残すべき確認があります。
納品や検収の事実の確認、支払ってよいという承認、振込データの最終確認の三つです。
特に、ネットバンキングなどの支払の権限を誰が持っているかは、委託の範囲とは分けて決めておく必要があります。
外部へ資料を送る作業も、最初に作った工程表に一行として加えておくと、送る担当と送る時期が決まります。
送付が遅れれば外部での記帳も遅れるため、締めの日程は、委託先とのあいだで資料の送付期限をそろえて決めるのが実際的です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 一人の中で閉じる形
- 記録・承認・支払を同じ人が完結させる
- 支払をした本人だけが残高確認をする
- 別の人の目を入れて補う形
- 振込の前に上長や代表者が支払予定の一覧と請求書を見て承認する
- 通帳や入出金の明細を支払をした人とは別の人が見る
- 月に一度、担当以外の人が支払の一覧と買掛金元帳の残高を突き合わせる
請求書の確認で見落とせない制度上の確認事項:インボイスと電子データの保存
インボイスの記載事項の確認項目
確認の工程で、制度上まず見るのはインボイスです。
インボイスは、インボイス発行事業者である売手が交付する、税率や税額などを記載した請求書等のことです。
国税庁は、インボイスがない仕入れや経費は原則として仕入税額控除ができず、買手は売手からインボイスを受け取って保存する必要があると説明しています2。
仕入税額控除は、仕入れの際に払った消費税を、納める消費税から差し引く仕組みです。
国税庁が買手の確認事項として示す記載事項は、次の6項目です2。
- インボイスの交付を受ける買手の名称
- 売手の名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象であればその旨)
- 税率ごとに区分した対価の総額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
簡易インボイスの場合は、買手の名称の記載を省略でき、税率と税額はどちらか一方の記載でよいとされています2。
確認担当の手順には、この6項目を見る欄を作り、欠けていれば仕入先に修正したインボイスの交付を依頼する流れまで書いておくと、確認する人と依頼する人が食い違いません。
項目ごとの細かな判断は、国税庁の同じページにあるチェックシートで確かめられます2。
なお、令和13年9月末までは、インボイスの保存がなくても、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります2。
経過措置があるからといって確認を省いてよいわけではありません。
インボイスかどうかで控除の扱いが変わるため、確認担当がどちらに当たるかを記録に残しておくことが、税額を計算する側の作業につながります。
メール・Webで受け取った請求書の保存
次に、請求書がどう届いたかで保存の仕方が変わります。
国税庁の電子帳簿保存法の案内では、申告所得税や法人税の保存義務者が電子取引を行った場合、その取引情報の電磁的記録、つまりデータを保存しなければならないとされています3。
電子取引には、注文書や領収書、見積書などの情報を電子的にやり取りするもののほか、インターネット上のサイトを通じた取引や、電子メールとその添付ファイルによるやり取りも含まれます3。
担当体制にとって大事なのは、受領の工程で受け取り方を区別することです。
メールやWebで届いた請求書は、データそのものを保存する手順が必要で、紙に印刷して綴じるだけでは保存の代わりになりません。
受け取った人の個人メールボックスに置いたままにすると、その人が異動や退職でいなくなったときに、データの所在が分からなくなります。
編集部の提案としては、受領の担当が、届いたデータを決まった保存場所へ移すところまでを受領の作業に含め、保存場所とファイルの名前の付け方を手順書に書いておく方法があります。
保存の方法には別に要件が定められているため、具体的なやり方は国税庁の案内や顧問税理士で確かめたうえで手順に反映させます。
紙で届いた請求書は原本をどこに綴じるかを別に決め、受領の記録に受け取り方を書いておくと、後で探す人が紙とデータのどちらを当たればよいか迷いません。
簡易課税など例外がある場合の確認
インボイスの保存には例外もあります。
国税庁によると、簡易課税や2割特例などを適用する場合は、消費税の計算上はインボイスの保存が不要になります2。
ただし、所得税などの観点からは書類の保存が必要です2。
ここで迷いやすいのは、例外に当たるかどうかを確認担当が自分で判断してよいのかという点です。
簡易課税などを選んでいるかは、会社の消費税の申告方法として決まっていることで、請求書を一枚ずつ見る段階で判断するものではありません。
手順書には、自社がどの計算方法を使っているかと、それによって確認の項目を変えるのかどうかを、経理の責任者や顧問税理士が決めた内容として書いておきます。
例外に当たる場合でも、請求書そのものは保存の対象として残り、受け取り方による保存の区別も変わりません。
また、申告方法は事業の状況によって見直されることがあります。
確認の項目を省く運用にしている場合は、申告方法を変えたときに手順書も見直す対象にしておくと、確認の抜けに気づきやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- メール・Webで届いた請求書
- データそのものを保存する
- 印刷して綴じるだけでは保存の代わりにならない
- 受領の担当が決まった保存場所へ移す
- 個人メールボックスに置いたままにしない
- 紙で届いた請求書
- 原本をどこに綴じるかを別に決める
- 受領の記録に受け取り方を書く
計上のタイミングと、請求書の不一致・遅れ・訂正が出たときの扱い
請求書の受領と計上時点は別のもの
請求書の確認が済んでも、計上の日付をいつにするかで、もう一つ判断が残ります。
最初に見たとおり、計上は商品の引渡しを受けた時点で行い、請求書の受領時には会計処理は発生しません1。
引渡しの時点として、弥生の解説は出荷、受け取り、検収のいずれかを挙げています1。
検収とは、届いた品物の数量や品質を確かめて受け入れることです。
この区別が担当体制に関わるのは、計上の材料を持っている人と、請求書を受け取る人が違う場合があるからです。
商品を受け取るのは倉庫や現場、検収をするのは発注した部署、請求書が届くのは経理という分かれ方をしていると、経理は請求書が届くまで仕入れがあったことを知りません。
請求書を待って計上する運用では、月末をまたいで請求書が届く取引が、その月の帳簿から抜けることになります。
そこで、出荷・受け取り・検収のどれを計上の基準にするかを社内で一つに決め、その情報を持つ人から経理へ渡す流れを工程表に加えます。
基準を決めておけば、担当者が替わっても同じ日付の考え方で計上できます。
ここでの説明は一般的な会計処理の解説に基づくもので、税務上の計上時期については顧問税理士に確認が必要です。
不一致が出たときの判断者と保留の考え方
確認の工程では、請求書の内容が発注や検収の記録と合わないことがあります。
数量が届いた分より多い、単価が発注時と違う、返品や値引きが反映されていない、同じ納品分が二度請求されている、といった場面です。
迷いやすいのは、誰がその差を判断し、支払をどうするかです。
編集部の提案としては、確認担当は差の内容を記録して仕入先に問い合わせるところまでを受け持ち、請求額を自分の判断で直したり、そのまま払ったりはしない形にします。
そのうえで、全額を払うのか、差の分の訂正を待つのか、訂正した請求書の再発行を求めるのかは、承認者が決めます。
この運用の前提は、前の小見出しで述べた計上の基準が一つに決まっていることで、検収記録と請求書のどちらを正とするかが担当によって変わらないようにしておきます。
差の金額が小さいからといって、端数の処理や単純な入力ミスだと決めてかからないことも大切です。
小さな差でも、単価の改定が反映されていないことが原因なら、同じ取引先の他の請求にも同じ差が続いている可能性があります。
差の大小ではなく、明細の行ごとに数量と単価を突き合わせ、原因が分かってから扱いを決めます。
支払を止める場合は、支払期日との関係にも注意が要ります。
請求の一部に疑問があっても、取引条件で支払期日は決まっているため、問い合わせを早めに行い、訂正や支払の扱いについて仕入先と合意しておくことが、一方的な支払の遅れを避けることにつながります。
個別の例外処理の会計上の扱いは、顧問税理士や会計監査人の判断を前提にします。
月末の未達・遅延分の整理
月末になると、工程の途中で止まっている取引が残ります。
締めの前に、次の三つの一覧を作り、承認者が確認する形にしておくと、何が月次に入っていないのかが一目で分かります。
これも編集部の提案です。
- 引渡しを受けたが、請求書がまだ届いていない取引
- 請求書は届いたが、検収などの記録がない取引
- 不一致のため確認中で、支払や計上の扱いが決まっていない取引
一つ目は、計上の基準が引渡しにある以上、月次の帳簿に入っているべき取引です。
請求書がない段階でどの金額で入れるかは、発注や検収の記録が材料になりますが、その扱いは顧問税理士や会計監査人と決めておきます。
二つ目は、商品が届いていないのか、届いたのに記録が経理に回っていないのかで対応が変わるため、検収を担う部署に確かめます。
三つ目は、前月から続けて残っていないかを見ます。
同じ取引が何か月も確認中のまま残っている場合は、仕入先への問い合わせが止まっているか、判断する人が決まっていないことが考えられます。
一覧に載せて承認者の目を通すことで、確認担当の手元で止まっている案件が、締めのたびに表へ出てきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 引渡し済で請求書が未着
- 月次の帳簿に入っているべき取引
- 金額の扱いは顧問税理士や会計監査人と決める
- 請求書あり・検収の記録なし
- 商品が届いていないのか、記録が経理に回っていないのかを検収を担う部署に確かめる
- 不一致で確認中
- 前月から続けて残っていないかを見る
- 問い合わせが止まっていないか、判断する人が決まっているかを確かめる
取引量と人数で選ぶ体制:一人運用+確認、社内分担、外部委託・仕組みの利用
同じ軸で比べる4つの観点
ここまでの工程と分け方を踏まえると、自社の取引量と人数でどの体制が成り立つかを考えられます。
選択肢は、一人で回して別の人の確認を加える体制、社内で工程を分担する体制、記帳などを外部に委託する体制、会計ソフトなどの仕組みを使う体制の四つです。
実際には組み合わせることもでき、どれか一つを選ぶというより、自社の工程表のどの行をどれで埋めるかを考えることになります。
比べるときは、同じ観点で並べると違いが見えます。
ここでは次の四つの観点を使います。
- 分離できる工程:記録・承認・支払のうち、別の人に分けられるのはどこか
- 確認者の確保:支払の前と月次に、中身を見られる人がいるか
- 休暇・退職時の代替:担当が不在の日に、誰が工程を進められるか
- 月次の締めへの影響:締めに必要な情報が、期日までにそろうか
次の表は、ここまでの工程と分け方の考え方から導いた編集部の整理で、利用実態の統計や費用の相場に基づくものではありません。
取引先の数や請求書の件数で体制を切り替える境目も一律には決められないため、自社の工程表に照らして判断します。
一人運用+確認が成り立つ条件
経理担当が一人の会社では、一人運用に確認を加える形が検討の出発点になります。
この体制では記録と支払が同じ人に残る点は変えられないため、成り立つかどうかは承認と残高確認の中身にかかっています。
表で見ると、確認者の確保と休暇・退職時の代替の二つが、この体制の弱いところです。
成り立つための条件として、次の点を工程表で確かめます。
- 承認者が、振込の前に請求書と検収の記録を見られる
- 承認が済むまで振込を実行しない手順になっている。
銀行の仕組みで振込の最終承認を別の人が行えるなら、その設定を使う - 月次の残高確認を、担当以外の人が行う
- 担当が休む日に、少なくとも支払だけは進められる人が決まっている
成り立たなくなるのは、承認者が忙しく、一覧を見ずに承認するようになったときです。
表の上では分担があっても、確認の役割は消えています。
承認にかける時間が取れない状態が続くなら、それは体制を変える合図として扱うのが現実的です。
社内分担・外部委託・仕組みの利用が必要になる場面
社内分担が必要になるのは、一人では受領から計上までが締めの日程に間に合わなくなったときや、承認者が件数の多さで中身を見られなくなったときです。
分け方としては、商品を受け取る部署に受領と検収の確認を任せ、経理は計上と残高確認、支払は別の人が行うというように、工程表の行単位で担当を移していきます。
分担を増やすと工程の間に受け渡しが生まれるため、何をいつまでに渡すかを表に書き足しておきます。
外部委託は、金融庁の解説が小規模な企業の工夫として挙げる外部専門家の利用に当たります4。
記帳や月次の締めの作業を外に出せる一方で、検収の事実や支払の承認が自社に残ることは、前に触れたとおりです。
人数が少ないから外部委託が正解というわけではなく、自社に残る確認を誰が担うかが決まって初めて成り立つ選択肢です。

会計ソフトなどの仕組みを使うと、弥生の解説にあるように、買掛金元帳が仕訳に合わせて作られます1。
元帳を手作業で書き写す転記がなくなる分、残高を確認する人は、計上と支払の結果を同じ帳簿で見られます。
一方で、請求書が検収と合っているかの照合や、支払ってよいかの判断が仕組みに置き換わるわけではありません。
どの製品で何ができるかは製品ごとに異なるため、導入を検討するときは、自社の工程表のどの行の作業が減り、どの確認が人に残るのかを、製品の説明と照らして確かめます。
| 体制 | 分離できる工程 | 確認者の確保 | 休暇・退職時の代替 | 月次の締めへの影響 |
|---|---|---|---|---|
| 一人運用+確認 | 記録と支払は同じ人に残り、承認を別の人に分ける | 上長や代表者が支払前に中身を見る時間が要る | 代わる人を決めないと止まりやすい | 担当一人の作業量と承認者の都合で日程が決まる |
| 社内分担 | 受領・確認、計上、支払を別の人に分けやすい | 工程の受け渡しごとに確認が入る | 工程ごとに代わる人を立てやすい | 工程間の受け渡しが遅れると締めが遅れる |
| 外部委託 | 記録の一部を外に出せる。承認と支払の権限は自社に残る | 外部の目が入るが、検収の事実は自社が確かめる | 外部に頼れる部分と、自社の承認者の代わりは別に要る | 資料の送付期限が締めの日程を左右する |
| 仕組みの利用 | 分離そのものは操作権限の決め方による | 元帳が仕訳から作られ、残高を見る人が確かめやすい | 手順と記録が仕組みに残れば引き継ぎやすい | 元帳への転記は減るが、照合と承認の判断は残る |
体制を変えるとき・担当が替わるときの引き継ぎと月次の締めの回し方
引き継ぎで決めておく項目
体制を変えるときや担当者が替わるときに渡すものの土台は、最初に作った工程表です。
工程ごとの担当、承認者、使う記録、代わる人が書かれていれば、後任は自分の受け持つ行を見て仕事を始められます。
ただ、工程表だけでは、取引先ごとの事情や途中で止まっている案件までは伝わりません。
編集部の提案として、工程表に次の項目を添えて渡す方法があります。
- 取引先別の例外(締め日や支払日の違い、請求書の届き方、分割や合算での請求など)
- 支払日程(支払日ごとに、どの取引先の分をいつまでに承認へ回すか)
- 承認の流れ(誰が、何を見て、どの手段で承認するか)
- 請求書と関連データの保存場所と、ファイルの名前の付け方
- 引き継ぎ時点で確認中・保留中の案件と、その経緯
- ネットバンキングなど支払の権限の持ち主と、変更の手続き
取引先別の例外は、前任者の記憶にだけあると、引き継ぎの資料から抜けやすい項目です。
普段は問題なく回っている取引先ほど、例外が当たり前になっていて書き出されないことがあります。
支払の権限は、前任者がいなくなった後に変更できない状態になると支払そのものが止まるため、引き継ぎの前に手続きを済ませておきます。
買掛金元帳による月次の残高確認
引き継ぎの後、体制がうまく回っているかを確かめる場所が買掛金元帳です。
弥生の解説では、買掛金元帳は取引先ごとの残高や取引をまとめた帳簿で、残高確認はこの元帳で行い、残高は定期的に確認するとされています1。
月次の確認では、取引先ごとに元帳の残高と取引の明細を見て、届いた請求書と支払の記録に一件ずつ当てていきます。
請求書があるのに元帳に計上されていない取引、計上されているのに支払の予定に入っていない取引、払ったのに元帳の残高が減っていない取引が、漏れや二重の処理の手掛かりになります。
仕入先の請求書に前回の請求額や入金の額が載っている場合は、それと元帳の残高を比べると、双方の認識のずれも見えます。
残高が合わないときも、差の大きさだけで原因を決めないようにします。
請求書が届いていない取引による時期のずれなのか、計上や支払の誤りなのかは、明細を当てて初めて分かります。
月末に作った三つの一覧と照らすと、時期のずれとして説明できる分と、説明できない分を分けられます。
この確認を支払をした本人以外が行えば、一人の中で閉じていた流れを外から確かめる場になります。
引き継ぎの直後は、前任者と後任者が同じ元帳を見ながら最初の月次の確認を一緒に行い、引き継いだ時点の取引先別の残高をお互いに確かめておくと役に立ちます。
その後に見つかった差が、引き継ぎの前に生じたものか後に生じたものかを区別できるからです。
会計ソフトを使っている場合、元帳の見方や操作は製品ごとに違うため、自社のソフトでの手順も合わせて渡します。
体制変更後の見直しのタイミング
体制を変えた後も、一度決めた分担がそのまま続くとは限りません。
見直しのきっかけとして、次のような時点が考えられます。
- 体制を変えて最初の月次の締めを終えたとき
- 担当者や承認者が替わったとき
- 取引先が増えた、請求書の受け取り方がメールやWebに変わったなど、受領の入口が変わったとき
- 消費税の申告方法を変えたなど、確認項目に関わる前提が変わったとき
見直しで見るのは、工程表に空欄や同じ名前の続く行が戻っていないか、月末の一覧に同じ取引が続けて残っていないか、承認が支払の前に行われているかの三点です。
この三点は、どれも工程表と月次の確認で記録が残るため、特別な調べものをしなくても確かめられます。
体制は一度決めて終わりではなく、締めのたびに残る記録から次に直す箇所を見つけていくものとして扱うと、担当が替わっても同じ考え方で回し続けられます。
工程表を書き出すと、兼務を外せない行や、税務上の判断が要る行が残ります。そこは社内だけでは決めにくい部分です。
相談では、書き出した工程表をもとに、どの行を承認や月次の確認で補うか、顧問税理士に確かめるべき論点はどれかを整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 工程の書き出し | 受領・確認・計上・支払・残高確認ごとに、担当・承認者・使う記録・代わる人を空欄なしで書く |
| 分けるべき作業 | 記録・承認・支払を一人で完結させない。支払をした本人だけで残高確認をしない |
| 分けられないとき | 支払前の承認と、担当以外の人による月次の残高確認などで補う |
| 請求書の確認 | インボイスの記載事項を見て、データで届いた請求書はデータのまま保存する |
| 計上の基準 | 出荷・受け取り・検収のどれかに一つ決め、請求書の到着を待たない |
| 体制の選択 | 分離できる工程・確認者の確保・不在時の代替・締めへの影響で比べる |
| 引き継ぎ | 工程表に取引先別の例外、支払日程、承認の流れ、保留案件、支払権限を添える |

体制の変更や担当の交代を控えていると、引き継ぎの項目と月次の確認手順を、次の締めの前に固めておく必要があります。 相談では、引き継ぎ項目に抜けがないかと、月次の残高確認を誰がどう行うかの案を一緒に確かめられます。
よくある質問
経理担当が一人だけの会社では、買掛金の承認は誰がすればよいですか。
経理担当以外で、支払の前に請求書と検収の記録を見られる人が承認者になります。
小規模な会社では、上長や代表者が担う形が考えられます。
金融庁の解説が小規模な企業の工夫として挙げる「職務分掌に代わる代替的な統制や外部専門家の利用等」の考え方を参考に、承認に加えて月次の残高確認を担当以外の人が行うと、別の人の目が入る場所が増えます4。
この基準は上場企業などを対象とする制度の枠組みで、中小企業に同じ義務を課すものではありません。
請求書の金額が発注や検収の記録と合わないとき、支払は保留してよいですか。
確認担当が自分の判断で保留したり、請求額を直したりせず、差の内容を記録して仕入先に問い合わせ、扱いは承認者が決める形をおすすめします。
差が小さくても原因を決めつけず、明細の行ごとに数量と単価を突き合わせます。
取引条件で支払期日は決まっているため、早めに照会し、訂正や支払の扱いを仕入先と合意しておくことが、一方的な支払の遅れを避けることにつながります。
メールで届いたPDFの請求書は、紙に印刷して保存すれば足りますか。
足りません。
国税庁の案内では、申告所得税や法人税の保存義務者が電子取引を行った場合、取引情報のデータを保存しなければならず、電子メールと添付ファイルによるやり取りも電子取引に含まれます3。
印刷した紙を社内の確認用に使うのは構いませんが、データそのものの保存が別に必要です。
保存の方法には要件があるため、国税庁の案内や顧問税理士で確かめたうえで手順に書き込みます。
担当者が急に退職する場合、最低限どの情報を引き継げばよいですか。
工程ごとの担当・承認者・使う記録・代わる人を書いた工程表を土台に、取引先別の例外、支払日程、承認の流れ、請求書データの保存場所、確認中や保留中の案件、支払の権限の持ち主を添えます。
支払の権限は前任者がいなくなると変更できず支払が止まるおそれがあるため、最優先で手続きを済ませます。
あわせて、引き継いだ時点の取引先別の残高を買掛金元帳で確かめておくと、その後に見つかった差の時期を区別できます。
月末までに請求書が届かない取引は、買掛金に計上しなくてよいですか。
一般的な会計処理の解説では、買掛金は請求書の受領時ではなく、商品の引渡しを受けた時点で計上するとされています1。
そのため、引渡しを受けていれば、請求書が未着でも月次の帳簿に入るべき取引になります。
請求書がない段階でどの金額で入れるかは発注や検収の記録が材料になりますが、その扱いや税務上の計上時期は、顧問税理士や会計監査人と決めておきます。
- 1 出典:弥生株式会社「買掛金とは?仕訳方法、売掛金や未払金との違いを解説」(2026年)
- 2 出典:国税庁「インボイス制度の概要」(2026年)
- 3 出典:国税庁「電子帳簿保存法について」(2026年)
- 4 出典:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準・実施基準」(2007年)
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- Two business professionals exchanging documents in a collaborative office setting./Photo by cottonbro studio on Pexels
- A vintage office meeting with three adults discussing documents around a table./Photo by MART PRODUCTION on Pexels
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