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掛け率を取引先別に管理する方法:価格の決まり方と改定ルール、移行前のデータ整理

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 取引先別の価格は上代・掛け率・個別価格・端数処理・税込/税抜の組合せで決まり、ずれは置き場所と優先順位が決まっていないところから生まれる
  • 表計算を続けるかは、取引先数・品目数・改定頻度・例外価格の件数・担当者数を数え、人が覚えているルールの多さで判断する
  • 弥生販売では個別価格が基本価格より優先され、単価の一括変更はできるが適用日の予約は商品台帳のみのため、取引先別価格の改定は実行日と担当者を決めておく
  • 取適法は委託取引で仕事を受ける側を守る法律で、取引先ごとに自社の立場と取引類型を確かめる
  • 移行では取引先マスタの統合と商品コードの対応表を先に整え、掛け率から単価への変換ルールを決める

Business professional working in a modern office with a green screen computer setup.
▽ 写真の出典元

取引先ごとに掛け率が違うと、価格は何で決まりどこでずれるのか

見積や受注のたびに上代へ掛け率を掛けて計算し直していると、担当者によって単価が1円ずれたり、改定したはずの取引先だけ旧価格のまま請求したりといったミスが起きます。
防ぐために変えられるのは、取引先別の価格をどの台帳に持つか、基本の価格とどちらを優先するか、端数をどう丸めるかを先に決めておくことです。
そのうえで改定の手順と記録の残し方を固めます。
表計算で続けるか販売管理システムへ移るかは、取引先数・品目数・改定頻度・例外価格の件数・担当者数を数えて判断します。

上代・掛け率・個別価格の関係

取引先に出す単価は一つの数字に見えますが、実際にはいくつかの部品を組み合わせてできています。
商品そのものの基準になる価格が上代(定価や希望小売価格にあたる価格)で、取引先ごとに上代の何割で卸すかを決めた数字が掛け率です。
さらに、特定の取引先の特定の商品だけに決めた個別の価格が加わることがあります。
たとえば同じ商品を、A社には6掛け、B社には6.5掛けで卸し、B社向けのある商品だけは別に取り決めた価格で出す、といった形です。

販売管理ソフトでは、これらの部品が別々の台帳に置かれていることがあります。
弥生販売の公式ヘルプでは、取引先別・商品別の価格は商品価格表で設定する仕組みで、得意先別の価格表で得意先コードを入れると、得意先台帳(取引先の情報をまとめた台帳)にある「単価種類」「掛率」「税転嫁」が表示されます1。
商品別の価格表では商品台帳の「上代」が表示されます1。
ただし価格表に出る「上代」と「販売価格」は参考表示で、直すときは商品台帳で修正します1。

伝票に使われる価格には優先順位があります。
同じヘルプでは、商品価格表に登録した価格が商品台帳の価格より優先して伝票に適用され、価格表の単価を0のままにしておくと商品台帳の価格が使われると説明されています1。
取引先ごとの例外を置く場所と、例外がないときに使われる基本の価格の場所が分かれていて、どちらが優先されるかがあらかじめ決まっているということです。

一方で、得意先台帳の掛率の値と、価格表に入れる単価がどう結び付いて伝票の単価になるのかは、同じページからは読み取れません。
価格表に入力するのは税抜または税込の単価です1。
掛率を入れれば単価が決まる使い方なのか、掛率は参考として持ち単価は個別に入れる使い方なのかは、使っている製品でテスト用の取引先を作り、実際に見積や伝票を起こして確かめておくと、後で改定の手順を組むときに迷いません。
これは弥生販売の仕様であり、ほかの製品が同じ順序で価格を決めるとは限りません。

端数処理と税込・税抜の持ち方

掛け率で計算すると、単価に1円未満の端数が出ることがあります。
たとえば上代1,250円の商品を63%で卸すと787.5円になり、切り捨てなら787円、四捨五入なら788円です。
1個あたりは1円の差でも、数量の多い明細や、毎月同じ商品を届けている取引先では、請求額の差として目に見える形で表れます。
取引先から「前回の見積と単価が違う」と問い合わせを受けたとき、どちらの丸め方が正しいのかを社内で答えられないと、そのつど担当者の判断で直すことになります。

弥生販売では、金額の端数処理を得意先台帳の[金額端数処理]で、消費税額の端数処理を[税端数処理]で設定します3。
複数の得意先は、得意先リストからまとめて変更できます3。
丸め方が取引先単位の設定なので、同じ商品・同じ単価でも、取引先によって金額の丸め方が違うことはあり得ます。
表計算で管理している場合も事情は同じで、丸め方を取引先ごとの取り決めとして書き出しておかないと、関数を組んだ人の設定がそのまま社内の基準になってしまいます。

税込・税抜の扱いも、価格の部品の一つです。
弥生販売の得意先別価格表には得意先台帳の「税転嫁」が表示され、単価は税抜または税込で入力します1。
掛け率を税抜の上代に掛けるのか、税込の価格に掛けるのかが取引先や担当者によって違っていると、同じ掛け率でも単価がそろいません。
取引先ごとの掛け率を一覧にするときは、掛け率の数字と並べて、税抜・税込のどちらを基準にしているか、端数をどう丸めるかを同じ行に置いておくと、計算の前提を後から追えます。

ずれが出やすい場所

ここまでの部品を並べてみると、価格がずれやすい場所はおおよそ決まってきます。

  • 上代を直したのに、掛け率から計算した取引先別の単価を更新していない
  • 取引先別の個別価格を登録し忘れ、基本の価格のまま伝票が作られる
  • 掛け率は同じでも、端数の丸め方や税込・税抜の基準が担当者や取引先で違う
  • 改定後の価格を、改定前に作った見積や伝票にも当てはめてよいかの判断が人によって分かれる

二つ目のずれは見落とされがちです。
弥生販売のように価格表の単価が0なら商品台帳の価格が使われる仕組みでは1、個別価格を登録し忘れても伝票はエラーで止まらず、基本の価格で作られます。
そのまま通ってしまうので、請求した後に取引先から指摘されて初めて気づくことになりやすいのです。
手計算の運用でも同じで、例外の取引先を覚えている担当者が不在の日に、別の人が標準の掛け率で見積を出せば、同じずれが起きます。

どのずれも、どこか一か所の計算間違いというより、価格の部品をどこに置き、どれを優先し、どう丸めるかが決まっていないところから生まれます。
そう考えると、次に決めるべきなのは、その部品を表計算に持たせ続けるのか、システムの台帳に持たせるのかです。

一つの製品の仕様で見る、伝票の単価が決まるまでの価格の部品(模式図)
商品台帳の上代、得意先台帳の掛率と端数処理、商品価格表の取引先別単価が、優先順位に従って伝票の単価になる流れ1商品台帳2得意先台帳3商品価格表4伝票

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 商品台帳
    • 上代・販売価格を持つ
    • 価格表の単価が0のとき使われる
  2. 得意先台帳
    • 掛率・税転嫁を持つ
    • 金額端数処理・税端数処理を取引先ごとに設定
  3. 商品価格表
    • 取引先と商品の組合せの単価を登録
    • 登録した単価が商品台帳の価格より優先
  4. 伝票
    • 優先順位に従って単価が入る

取引先と価格の対応を表計算で持つか、システムで持つか:何を基準に選ぶか

自社で数える5つの条件

表計算で取引先別の価格を管理すること自体は、無理のあるやり方ではありません。
問題になるのは、ファイルに書かれた価格の決まり方を、人が覚えて運用している部分がどれだけあるかです。
何社・何品目を超えたら表計算では足りない、という決まった線はなく、同じ取引先数でも改定の多さや例外の数で負担は大きく変わります。
そこで、次の5つを自社の数字として数えてみると、どこに負担が集まっているかが見えてきます。

  • 取引先数:掛け率や個別価格を持つ取引先が何社あるか
  • 品目数:取引先に価格を出している商品が何品目あるか
  • 改定頻度:上代や掛け率を年に何回見直しているか
  • 例外価格の件数:掛け率で計算した価格とは別に決めた単価が何件あるか
  • 担当者数:見積・受注・改定の作業で価格を入力・変更する人が何人いるか

取引先数と品目数は、取引先ごとに価格を持つ場合のマス目の数を決めます。
全取引先が同じ掛け率なら上代の一覧で足りますが、取引先ごとに掛け率が違い、さらに商品ごとの例外があると、取引先と商品の組合せごとに正しい価格が一つずつ存在することになります。
改定頻度は、そのマス目を書き換える回数です。
年に一度の改定なら、丸一日かけて確認しても回せます。
仕入価格の変動に合わせて年に何度も見直すなら、書き換えと確認の作業がそのたびに繰り返されます。

例外価格の件数と担当者数は、ルールが人に頼っている度合いを表します。
掛け率の計算は数式にできても、「この取引先のこの商品だけは据え置き」といった例外は、数式の外にメモや記憶として残りがちです。
担当者が増えると、各自が手元に保存した見積用のファイルが少しずつ違う版になり、どれが最新か分からなくなります。
例外の件数が多い、担当者が複数いる、改定のたびに複数のファイルを直している、といった状態が重なっているなら、数式を工夫するより、価格の置き場所と優先順位を仕組みとして持つ方法を検討する理由になります。

システム側で確認できる機能(個別価格の優先順位・一括変更・適用日予約・端数処理の設定単位)

販売管理システムへ移るかを考えるとき、見るべきなのは「掛け率に対応しているか」という一言ではなく、価格の部品をそれぞれどう持てるかです。
表計算でも同じ価格は計算できますが、優先順位や丸め方を守る役目は、数式の組み方と担当者の注意に任されます。
弥生販売の公式ヘルプで確認できる仕様を例に、確認する項目を並べると次のようになります。

表の中で判断が分かれやすいのは、一括変更と適用日の予約の組合せです。
弥生販売では、商品台帳だけでなく商品価格表の単価も、税込単価の税率・増減額・増減率のいずれかで一括変更できます2。
一方、適用日を指定して予約登録できるのは商品台帳だけです2。
つまり、基本の価格だけを改定する会社なら予約で切り替えられますが、取引先別の価格を多く持つ会社ほど、改定日に合わせて誰かが実行する作業が残ります。
同じ製品でも、価格をどこに多く持っているかで手間の残り方が違うということです。

端数処理の設定単位も見ておきたい項目です。
弥生販売の端数処理は、得意先台帳で取引先ごとに設定します3。
取引先の要望に合わせられる反面、設定が取引先ごとにばらばらになりやすく、移行の前に取り決めを一覧にしておかないと、設定値をどう入れればよいか判断できません。

ここで挙げたのは一つの製品の公式ヘルプで確かめられる仕様で、ほかの製品が同じ動きをするとは限りません。
製品を比べるときは、どれが優れているかを決めるより、表の4つの項目について各製品のヘルプや体験版で同じ質問をして、自社の運用で手作業が残る場所を見つけるほうが判断に直結します。

限界の見極めで言えること・言えないこと

表計算の限界について言えるのは、取引先数や品目数そのものより、価格のルールを人が覚えている部分が増えたときに無理が出る、ということです。
何社を超えたら移るべきか、という一律の線は示せません。
同じ取引先数でも、全社共通の掛け率で例外がほとんどない会社と、取引先ごとに例外を抱えて頻繁に改定する会社とでは、作業の重さがまったく違うからです。

手作業での更新がどこで負担になるかを考える材料として、取引先向けの情報を基幹システムとつないだ事例があります。
工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に約3,800品種の製品を扱い、全国約3,000社の販売店が製品を取り扱っている日東電工CSシステム株式会社では、導入前はコーポレイトサイトと各ECサイトを別々に管理していて情報の整合性が取れず、情報の更新がすべて手作業で、更新の頻度も低いことが課題でした7。
導入後は、基幹システムで更新した情報が各ECサイトに即時反映され、複数サイトの情報を一括で更新できるようになったとされています7。

この事例は掛け率の管理を直接扱ったものではなく、効果の検証もこれからとされていた段階のものです7。
読み取れるのは、同じ情報を複数の場所に手で書き写している限り、更新の回数を増やすほど作業と食い違いが増えるという構造です。
取引先別の価格でも、見積用のファイル、請求用のファイル、取引先に送る価格表が別々にあるなら、改定のたびにその数だけ書き換えが発生します。
価格を一か所で持ち、ほかの場所はそこから参照する形にできるかどうかが、表計算を続けるか移るかを分ける実際の問いになります。

確認項目 表計算で持つ場合に人に残りやすいこと 弥生販売の公式ヘルプで確認できる仕様
個別価格と基本価格の優先順位 どちらを使うかを担当者が判断する 商品価格表の単価が商品台帳の価格より優先。単価0なら商品台帳の価格
単価の一括変更 数式やコピーで書き換え、例外の行も上書きしやすい 商品台帳・セット商品台帳・商品価格表を税率・増減額・増減率で一括変更
適用日の予約 切替日に誰かがファイルを差し替える 予約登録は商品台帳のみ。価格表は即時実行
端数処理の設定単位 数式を組んだ人の丸め方が基準になりやすい 得意先台帳で取引先ごとに設定。得意先リストでまとめて変更
自社で数える5つの条件と、表計算で負担が集まる所(模式図)
取引先数と品目数はマス目の数、改定頻度は書き換えの回数、例外価格の件数と担当者数は人に頼るルールの多さを表すことを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • マス目の数
    • 取引先数
    • 品目数
  • 書き換えの回数
    • 改定頻度
  • 人に頼っているルール
    • 例外価格の件数
    • 担当者数

掛け率の改定と取引先だけの例外価格:反映手順と記録の残し方

一括改定と適用日の使い分け

掛け率の改定には、上代そのものを変える改定と、取引先ごとの掛け率や個別価格を変える改定があります。
どちらを変えるかで、作業する台帳も、使える機能も変わります。

弥生販売の単価一括変更では、商品台帳・セット商品台帳・商品価格表の単価を、税込単価の税率、増減額、増減率のいずれかでまとめて変えられます2。
増減率を使えば、全品目を一律に数%上げるといった改定を一度の操作で反映できます。
ただ、一括で変えた後の単価が、取引先と取り決めた丸め方と合っているかは別の問題です。
改定の後に数品目の単価を抜き出し、想定どおりの金額になっているかを見ておくと安心です。

適用日を指定した予約登録ができるのは商品台帳だけで、それ以外は「すぐに適用する」での即時実行になります2。
基本の価格を翌月から上げるなら、前もって商品台帳に予約しておけます。
取引先別の価格表を改定する場合は、適用日に合わせて誰かが実行しなければなりません。
実行が早すぎれば、旧価格で受けるはずの注文を新価格で入力することになり、遅れれば、改定後の注文に旧価格が残ります。
適用日の前日に誰が実行するか、切り替えの前後に入った注文をどちらの価格で扱うかまで決めておくと、価格が混ざる余地が小さくなります。

例外価格の置き場所

特定の取引先だけ特別な価格にしたいとき、その取引先の掛け率を変えるか、その商品だけ個別の価格を登録するかで迷うことがあります。
掛け率で価格を計算している取引先なら、掛け率を変えればその取引先の他の商品にも影響が及ぶ可能性があります。
一商品だけの特価や、ある案件に限った価格であれば、取引先と商品の組合せの個別価格として置くほうが、影響の範囲を限定できます。

弥生販売であれば、その置き場所は商品価格表です1。
価格表に登録した単価は商品台帳の価格より優先されるので1、例外を基本の価格と分けて持てます。
例外をやめたいときは、価格表の単価が0なら商品台帳の価格が使われるという仕組みに沿って1、基本の価格に戻すことになります。
前の節で触れたとおり、この仕組みは登録漏れも基本価格で通してしまうので、例外を登録した取引先と商品は一覧にして、価格表の中身と定期的に突き合わせておくと漏れに気づけます。

注意したいのは、期間を区切った例外です。
価格表は適用日の予約ができないため2、特価の終了日に元の価格へ戻す作業も人の手で行うことになります。
終了日に誰が戻すかを決めておかないと、期限の切れた特価がそのまま残り続けます。
例外を登録するときは、終わりの日付と戻す担当者を同時に決めておくのが現実的です。

改定記録の項目と確認方法

改定の反映漏れが起きたとき、原因になった改定を特定できるかどうかは、記録の残し方で決まります。
使っているシステムに変更の履歴や承認の仕組みがあるかは製品ごとに確かめるとして、それとは別に、改定ごとに次の項目を一行で残しておくと後から追えます。

  • 適用日:いつから新しい価格になるか
  • 対象:どの取引先・どの商品か、全品目か一部か
  • 変更の方法と変更後の値:増減率、増減額、個別の単価入力など
  • 理由:仕入価格の上昇、取引条件の変更、取引先との協議の結果など
  • 担当者:依頼した人、承認した人、反映した人、確認した人
  • 確認の結果:突き合わせた取引先と、差異があればその内容

依頼・承認・反映・確認を一人で済ませると、間違いに気づく機会がなくなります。
少なくとも反映した人と確認した人を分けておけば、片方の思い込みをもう片方が拾えます。
確認は、改定の対象になった取引先から数社を抜き出し、同じ商品・同じ数量で改定前と改定後の見積を作って突き合わせるやり方が手軽です。
単価の差が改定の内容と合っているか、端数の丸め方が取り決めどおりか、例外として据え置いたはずの商品が変わっていないかを見ます。

端数処理の設定を変える場合は、さらに注意が要ります。
弥生販売では、端数処理の設定を変えても入力済みの伝票や請求明細書には反映されず、変えたい伝票は削除して作り直す必要があります3。
設定を変えた日の前後で、同じ取引先の伝票の丸め方が違うことになります。
記録には変更した日を残し、作り直した伝票があればその番号も書いておくと、取引先から問い合わせがあったときに経緯を説明できます。

改定する場所ごとの反映のしかたの違い(一つの製品の仕様・模式図)
商品台帳は適用日を予約でき、取引先別の価格表は適用日に合わせて即時実行し、端数処理の変更は入力済み伝票に反映されず作り直しが要ることを並べた図商品台帳は適用日を予約でき、取引先別の価格表は適用日に合わせて即時実行し、端数処理の変更は入力済み伝票に反映されず作り直しが要ることを並べた図商品台帳適用日を指定して予約できる商品価格表(取引先別)予約できず即時実行になる適用日に誰が実行するかを決める得意先台帳の端数処理入力済みの伝票・請求明細書には反映されない変えたい伝票は削除して作り直す

▼ 図の内容を文字で読む
  • 商品台帳
    • 適用日を指定して予約できる
  • 商品価格表(取引先別)
    • 予約できず即時実行になる
    • 適用日に誰が実行するかを決める
  • 得意先台帳の端数処理
    • 入力済みの伝票・請求明細書には反映されない
    • 変えたい伝票は削除して作り直す

価格改定の通知・協議と書類保存:取適法の対象になるかを先に確かめる

施行日と価格協議の禁止

取引先との価格改定には、社内の手順だけでなく、取引先とのやり取りにかかわる法律が関係する場合があります。
下請法が改正され、2026年から「中小受託取引適正化法(取適法)」として施行されています4。
中小企業庁の解説では、委託事業者が協議に応じない、必要な説明を行わないなど、一方的に価格を決める行為が禁止されたと説明されています4。

押さえておきたいのは、この規定が守ろうとしているのは仕事を受ける側だという点です。
仕事を発注する側(委託事業者)が、受ける側(中小受託事業者)から求められた価格の協議を拒んだり、説明しないまま価格を決めたりすることが問題になります。
掛け率を決めて取引先に示す売り手であっても、取引の中身によっては、自社が仕事を受ける側に当たる可能性があります。
たとえば取引先から仕様を指定されて製品をつくり、納めているような場面です。
そうした取引で原材料費の上昇などを理由に価格の見直しを求めるとき、相手に協議に応じる義務があるかどうかは、その取引がこの法律の対象かどうかで変わります。

対象取引と書類保存

対象になる取引は類型で決まっています。
公正取引委員会の概要では、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5つが挙げられています5。
いずれも仕事を委託する取引で、自社の商品を取引先の注文に応じて卸す取引が、そのまま当てはまるとは言い切れません。
取引先ごとの掛け率で商品を卸している会社のすべてが、この法律の対象になるわけではないということです。

対象になる取引では、委託する側に書類の義務があります。
発注の際には、双方の名称、給付の内容、受領の期日や場所、代金の額、支払期日などを記載した書面または電磁的記録を直ちに交付する義務があります5。
また、給付の内容や代金の額などを記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務もあります5。

売り手の立場から見ると、自社が仕事を受ける側なら、発注の書面を受け取り、その内容を自社の価格の記録と照らし合わせられる立場にあります。
反対に、自社が商品の製造などを外部へ委託しているなら、その取引では自社が書類を交付し保存する側に回ります。
同じ会社でも、取引先によって立場が入れ替わることがあるわけです。
前の節で残した改定記録は法律上の書類そのものではありませんが、いつ、どんな理由で価格を変えたかを説明する材料として、協議の場面でも役に立ちます。

対象かどうかの確認先

対象になるかどうかは、取引の類型だけでなく、事業者の規模にかかわる基準も合わせて判断します。
規模の基準の詳細は、公正取引委員会が公表している取適法の概要で確かめるのが確実です。
取引先ごとに、次の3点を順に見ていくと整理しやすくなります。

  1. その取引で、自社は仕事を委託する側か、受ける側か
  2. 取引の中身が5つの類型のいずれかに当たるか
  3. 自社と取引先の規模が基準に当てはまるか

判断がつかない取引は、契約書や発注書を手元にそろえて専門家に相談するのが安全です。
掛け率の運用と結び付けるなら、取引先の一覧に「委託の取引があるか」「その取引で自社はどちらの立場か」を書いておくと、価格改定のたびに同じ確認を一から繰り返さずに済みます。

取適法の対象になるかを取引先ごとに確かめる順序(模式図)
自社が委託する側か受ける側かを見て、5つの類型に当たるかを確かめ、最後に規模の基準を確かめる3段の順序1委託する側か、受ける側か25つの類型に当たるか3規模の基準に当てはまるか

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 委託する側か、受ける側か
    • 取引先ごとに自社の立場を見る
  2. 5つの類型に当たるか
    • 製造委託・修理委託・情報成果物作成委託
    • 役務提供委託・特定運送委託
  3. 規模の基準に当てはまるか
    • 自社と取引先の規模を確かめる

移行するなら、取引先マスタ・商品コード・取引先別単価をどう整えるか

取引先マスタの重複統合

表計算から販売管理システムへ移ると決めた場合、最初に手間がかかるのは機能の設定より旧データの整理です。
取引先別の価格は「どの取引先の」「どの商品の」価格かで決まるので、取引先と商品の識別がずれていると、価格の数字を正しく移しても別の取引先や商品に結び付いてしまいます。

システム開発会社のriplaの解説では、取引先マスタ(取引先の基本情報をまとめた一覧)について、「株式会社○○」「(株)○○」「○○」のように同じ会社が別のコードで登録されているものを統合し、住所・電話番号・法人番号で重複の候補を抽出したうえで、統合後に業務部門の承認を得る手順が示されています6。
掛け率を取引先ごとに持っている会社では、この重複が価格のずれに直結します。
同じ会社が二つのコードで登録され、それぞれに違う掛け率が入っていれば、どちらが正しいかを決めないまま移すと、新しいシステムでも担当者によって選ぶコードが分かれます。

統合するときは、どちらの掛け率・個別価格・端数処理の設定を残すかを、取引先ごとに決めます。
業務部門の承認が必要になるのは、住所や電話番号で重複を見つけることはできても、どちらの価格が現在の取り決めかまでは、データからは分からないからです。
その取引先と実際にやり取りしている営業担当や、請求を扱う経理担当が見て初めて判断できます。

商品コードの新旧対応表

新しいシステムで商品コードの付け方を変える場合は、旧コードと新コードの対応表(マッピングテーブル)の作成が必須とされています6。
取引先別の単価は商品コードに結び付いているので、対応表がなければ、単価を移す段階でどの商品の価格なのかが分からなくなります。

掛け率で計算している価格は、上代と掛け率さえ移せば作り直せるように見えます。
ところが例外の個別価格は、商品コードごとに一つずつ持っています。
旧コードの複数の商品が新しいコードでは一つにまとまる場合や、逆に一つの商品が色やサイズで分かれる場合には、例外価格をどの新コードに付けるかを個別に決めなければなりません。
対応表の列に、その商品に例外価格を持つ取引先があるかどうかを書き加えておくと、価格の移し替えで確認すべき行を絞り込めます。

取引先別単価の変換と過去実績の移行範囲

取引先別の単価には、特定の取引先向けの特別単価、期間限定の割引単価、ロットごとの段階単価など、いくつかの形があります。
同じ解説では、新旧で単価の構造が合わない場合は変換の仕組みが必要になるため、その作業を移行の見積に含めること、あわせて単価テーブル、消費税区分、与信限度額の整合性を確認することが挙げられています6。

掛け率で運用してきた会社で構造の違いが表れやすいのは、旧データが「取引先ごとの掛け率」で持たれていて、新しいシステムでは「取引先と商品の組合せの単価」で持つ場合です。
このとき、上代に掛け率を掛けた結果をどう丸めて単価にするかを決めないと、移した単価が今の請求額と1円ずつずれることがあります。
価格の部品として挙げた税込・税抜の基準と端数処理の取り決めが、ここで変換のルールとしてそのまま必要になります。
期間限定の単価についても、終了日ごと移すのか、すでに終わったものは移さないのかを決めておきます。

過去の売上をどこまで新しいシステムに持ち込むかも、決めておきたい点です。
同じ解説では、取引先別売上・商品別売上の月次集計を直近1〜2年分移すことを目安とし、明細単位の全件移行は分析の要件がはっきりしている場合に限るとしています6。
それより前のデータは、CSVやBIツール、PDFで保管しておく方法が示されています6。

Hands typing on a laptop with a calculator and pens nearby on a wooden table.
▽ 写真の出典元

これは一つの開発会社が示した目安で、どの会社にも当てはまる基準ではありません。
取引先別の価格という観点で見ると、過去の明細を移す意味が大きいのは、改定の前後で単価がどう変わったかを取引先ごとに説明する必要がある場合です。
改定の記録を別に残しているなら、売上は集計で移し、価格の経緯は改定記録で追う、という分け方もできます。
古いデータを手元に置いておく期間は、税務上の保存期間など社内の規程とあわせて決めます。

取引先別の価格を基幹システムで持つと決めても、取引先向けのECサイトや価格表へ情報を出す場面で、手作業の書き写しがどこに残るかは自社の台帳の持ち方を前提にしないと判断しにくいためです。

いまの取引先数・品目数・改定の頻度を前提に、基幹システムで更新した商品や価格の情報を取引先向けのECサイトへどう反映できるか、手作業の更新がどこに残るかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
価格の置き場所 上代・掛け率・個別価格・端数処理・税込/税抜を分け、どれが優先されるかを決める
表計算か、システムか 取引先数・品目数・改定頻度・例外価格の件数・担当者数を数え、人が覚えているルールの多さで判断する
改定の反映 予約できる台帳と即時実行になる台帳を分け、実行日と担当者を決める
改定の記録 適用日・対象・方法・理由・担当者・確認結果を残し、反映と確認は別の人が行う
取適法 取引先ごとに自社の立場と取引類型、規模の基準を確かめる
移行前の整理 取引先と商品の識別を先に整え、単価の変換ルールと過去実績の範囲を決める
Close-up of hand writing in notebook using a blue pen, focus on creativity.
▽ 写真の出典元

取引先マスタや商品コードの整理が進むと、整えたデータを新しい仕組みのどこで持ち、取引先向けの窓口へどう反映させるかを決める段階に入るためです。 整理した取引先マスタと商品コードを前提に、基幹システムと取引先向けECサイトの間で情報をどうそろえるか、一括更新でどの書き写しが減るかを確かめられます。

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よくある質問

掛け率を変えたとき、すでに入力した見積や伝票の価格は変わりますか?

製品の仕様によります。
弥生販売では、端数処理の設定を変えても入力済みの伝票や請求明細書には反映されず、変えたい伝票は削除して作り直す必要があります3。
単価や掛率の変更が入力済みの伝票にどう及ぶかは、使っている製品でテスト用の取引先を作り、伝票を入力した後に設定を変えて確かめておくと確実です。

特定の取引先だけ特価にしたい場合、掛け率を変えるのと個別価格を登録するのはどちらがよいですか?

一商品だけの特価や案件限りの価格なら、取引先と商品の組合せの個別価格として登録するほうが、影響の範囲を限定できます。
掛け率で価格を計算している取引先では、掛け率を変えると他の商品にも影響が及ぶ可能性があるためです。
弥生販売では商品価格表に登録した単価が商品台帳の価格より優先されます1。
期間限定の特価は、終了日と元に戻す担当者を同時に決めておきます。

価格改定の適用日を前もって設定しておけますか?

弥生販売では、単価一括変更で適用日を指定した予約登録ができるのは商品台帳だけで、取引先別の価格表は即時実行になります2。
取引先別の価格を改定するときは、適用日の前日に誰が実行するか、切り替えの前後に入った注文をどちらの価格で扱うかを決めておく必要があります。

取引先から価格交渉を求められたとき、取適法の対象になる取引かどうかはどこで確認しますか?

公正取引委員会が公表している取適法の概要で、対象になる取引の類型と規模の基準を確かめます。
対象は製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託の5類型です5。
協議に応じない一方的な価格決定が禁止されるのは委託する側で4、自社がその取引で委託する側か受ける側かによって立場が変わります。
判断がつかない場合は、契約書や発注書を持って専門家に相談してください。

過去の売上データはどこまで新システムに移せばよいですか?

一つの開発会社の解説では、取引先別・商品別の月次集計を直近1〜2年分移すことを目安とし、明細の全件移行は分析の要件が明確な場合に限るとしています6。
これは全社共通の基準ではありません。
改定前後の単価の経緯を取引先ごとに説明する必要があるかどうかで、明細まで移すか、集計と改定記録で足りるかを判断します。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:弥生株式会社「取引先や商品ごとに価格を細かく設定したい(弥生販売 サポート情報)」(2026年確認)
  2. 2 出典:弥生株式会社「台帳の単価一括変更の概要(弥生販売 サポート情報)」(2026年確認)
  3. 3 出典:弥生株式会社「弥生販売で金額や消費税の端数処理を変更したい(弥生販売 サポート情報)」(2026年確認)
  4. 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「【2026年1月1日施行】受注者を守る法!手形払い禁止など「取適法」がもたらす変化」(2026年)
  5. 5 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(2026年)
  6. 6 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ」(2026年)
  7. 7 出典:株式会社フライトソリューションズ(EC-Rider)「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(事例掲載時点)

画像の出典元

  1. Business professional working in a modern office with a green screen computer setup./Photo by Vitaly Gariev on Pexels
  2. Hands typing on a laptop with a calculator and pens nearby on a wooden table./Photo by Kindel Media on Pexels
  3. Close-up of hand writing in notebook using a blue pen, focus on creativity./Photo by picjumbo.com on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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