◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 発行に必須の取引先・商品・単価のマスタを、表記揺れや重複を整えてから最優先で移す
- 過去の納品書は、新システムで参照する範囲と、保存義務のために別に残す範囲を分けて決める
- 法人の取引書類は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年保存し、移さない過去分は旧システムの解約前に出力して保管する
- 切替日は締め日との関係で選び、旧新の集計の差異の原因を明細で説明できてから旧システムを止める
目次

納品書の移行で最初に決めるのは「移すデータ」と「残すデータ」の線引き
新しいシステムで納品書を出すことは決まったものの、今ある取引先や商品の一覧、過去の納品書をどう持ち込めば出荷を止めずに済むのか見通しが立たない。
そんなときは、データを一度に全部移そうとせず、発行に欠かせない取引先・商品・単価のマスタを先に整えて移します。
過去の納品書は、新システムに移す分と、保存のために別に残す分へ分けて考えます。
法人が取引に関する書類を保存する期間は原則7年です1。
切替は、旧新の残高や集計を突き合わせ、差異の理由を説明できる状態になってから行います。
発行に必須のマスタ(取引先・商品・単価)
切替日の朝、新しいシステムで最初の納品書を出そうとしたときに、取引先の宛名や送り先、商品名と単価が入っていなければ、その場で手入力するしかありません。
出荷を止めないために最初にそろえるべきなのは、過去の記録よりも、この「次の1枚を出すための情報」です。
こうした繰り返し使う基本情報の一覧をマスタと呼びます。
販売管理システムの移行を解説している株式会社ripla(業務システム開発やDX支援を手がける会社)も、マスタデータを最優先で移すとしています3。
販売管理全体の移行を前提にした一事業者の見解ですが、納品書の発行に絞っても、マスタがなければ1枚も出せないという理屈は変わりません。
納品書の発行で使うマスタは、おおむね次のような項目です。
- 取引先:正式な社名と宛名、敬称、住所、担当部署、送付方法(郵送・メールなど)
- 商品:品名、品番、単位
- 単価と税区分:標準の単価、取引先ごとに違う単価があればその対応、消費税の税区分
ここで迷いやすいのは、旧システムやExcelに残っている取引先をすべて移すかどうかです。
何年も取引のない先や、一度だけ出荷した先まで含めると、移したあとに確認する件数が増えます。
切替後も納品書を出す見込みのある取引先と、現在扱っている商品から先に移し、それ以外は旧データの出力に残しておく分け方にすると、取込み前の点検を実際に使う情報に集中させられます。
参照・保管のために残す過去の納品書
一方、過去の納品書は、新システムで何に使うかによって扱いが分かれます。
取引先から「先月の納品書を再送してほしい」と言われたときに見るのか、取引先別の売上の推移を見るのか、税務上の保存のために持っておくのか。
目的が違えば、必要な期間も、新システムに入っている必要があるかどうかも違います。
前出のripla社は、過去の実績について、直近1〜2年分の月次集計データ(取引先別売上、商品別売上)を新システムに移し、それより前は旧システムから出力したCSVなどで参照する設計を現実的としています3。
ここで言う1〜2年分は、月ごとに集計した売上の目安です。
納品書の明細を1枚ずつ何年分移すかの基準ではありません。
明細の移行範囲を決める手掛かりは、実務でどれだけさかのぼって見ているかです。
再発行や問い合わせ対応で参照するのが前年同期程度までなら、明細を長く移す理由は薄くなります。
反対に、毎年同じ時期に前年の明細を見ながら見積もりを作っているような運用なら、その期間分は新システムで検索できるほうが手間が減ります。
注意したいのは、新システムに移さなかった過去の納品書を、それで処分してよいわけではないことです。
保存しなければならない期間は、移す年数とは別の基準で決まります。
その期間と保管の形は、保存義務を扱う節で説明します。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発行に使うマスタ(最優先で移す)
- 取引先(宛名・住所・送付方法)
- 商品(品名・品番・単位)
- 単価と税区分
- 参照に使う過去データ(移す範囲を決める)
- 直近1〜2年分の月次集計(一事業者の目安)
- それより前は旧システムの出力で参照
- 保存のために残す過去の納品書
- 保存期間が終わるまで別に保管
現在のデータが紙・Excel・既存ソフトのどれかで、移行の手間は変わる
Excel・既存ソフトからCSVで出せる場合
移す範囲が決まったら、次は手元のデータがどんな状態で残っているかです。
既存の販売管理ソフトや、一覧形式のExcelで取引先を管理しているなら、CSV(項目をカンマで区切った文字データ)に書き出して、新システムの取込み機能で読み込む流れが基本になります。
取込みの細かな仕様は製品ごとに違います。
一例として、マネーフォワード クラウド請求書発行の取引先CSV一括インポートでは、CSVの項目と取引先マスタの設定項目を対応づけて取り込み、不要な項目は「インポートしない」にできます4。
この仕組みがあれば、旧ソフトの出力をすべて新しい列の並びに作り直す必要はなく、使う列を選んでつなげば済みます。
ただし、これは1つのサービスの仕様です。
導入するシステムに同じ対応づけの画面があるのか、決まったテンプレートに合わせる必要があるのかは、その製品のヘルプで確かめることになります。
対応づけで解決できるのは、列の並びや見出しの違いまでです。
同じ会社が「株式会社A」と「(株)A」で2件登録されている、住所の欄に部署名まで入っている、といった列の中身の問題は、取り込んでもそのまま新システムに入ります。
CSVを出せる場合ほど作業が早く進むぶん、中身の点検を飛ばしやすい点には気をつけたいところです。
Excelでも、納品書を1枚ずつ別のシートやファイルで作ってきた場合は事情が違います。
取引先の情報が各納品書の宛名欄に散らばっていて、一覧になっていないからです。
この場合は、まず取引先と商品を1行1件の表に書き出す作業が必要になり、実質的には次に説明する紙の場合に近い進め方になります。
紙しかない場合に入力する項目
手書きや複写式の納品書で運用してきた場合、移す元のデータはありません。
移行というより、新しいシステムで使うマスタを一から作る作業です。
このとき、過去の納品書をすべて入力し直そうとすると、作業が切替日に間に合わなくなるおそれがあります。
最初に入れるのは、切替後に納品書を出す取引先と商品のマスタに絞ります。
過去の紙の控えは入力の対象にせず、これまでどおり保管しておく形が考えられます。
紙の控えの保存の扱いが気になる場合は、税理士などに確認しておくと安心です。

入力する項目は、導入先の取込みテンプレートや登録画面の項目に合わせて先に決めておくと、二度手間を防げます。
直近の納品書の控えを取引先ごとに1枚ずつ取り出し、宛名・住所・送付方法・よく出る商品と単価を拾っていくと、実際に使っている情報から漏れなく集められます。
表計算ソフトで一覧を作ってからCSVで取り込むか、システムの画面で1件ずつ登録するかは、件数と、導入先に一括取込みの機能があるかで選びます。
| 観点 | Excel・既存ソフト(CSVを出せる) | 紙のみ(または納品書ごとのExcel) |
|---|---|---|
| 出発点 | 旧データを書き出したCSV | 直近の納品書の控え |
| 主な作業 | 列の対応づけと中身の点検 | 取引先と商品の一覧を新しく作る |
| 見落としやすい点 | 表記揺れや二重登録をそのまま取り込む | 過去分まで入力しようとして切替日に間に合わない |
| 過去の納品書 | 出力して参照・保管 | 入力せず控えを保管 |
取込み前に整える項目と、エラー・重複が出やすい点
識別コードと送付方法別の必須項目
CSVや一覧の元ができたら、取り込む前に中身を整えます。
ripla社は、クレンジング(表記揺れや誤りを直し、不要なデータを除く作業)をせずに取り込めば、データ品質の問題をそのまま新システムへ持ち込むと指摘しています3。
どこを整えるかは導入先の必須項目で決まるので、ここでもマネーフォワード クラウド請求書発行の仕様を例に、つまずきやすい点を見ていきます。
同サービスでは、取引先コードが必須で、255字以内と決められています4。
取引先コードは、社名が似ている会社や、社名が変わった会社をシステムが区別するための識別番号です。
旧ソフトにすでに取引先コードがあるなら、新システムでも同じコードを使うと、あとで旧新の集計を取引先ごとに並べるときに対応がすぐ取れます。
Excelや紙から作る場合は、この段階で採番のルールを決めることになります。
もう一つは、送付方法と必須項目の関係です。
同サービスでは、郵送を使う取引先には郵便番号と住所、メールまたはWebで送る取引先にはメールアドレスが必須です4。
つまり、取引先ごとに送り方が決まっていないと、どの欄を埋めればよいかも決まりません。
これまで手渡しやFAXで済ませていた取引先がある場合、新システムでどの方法に切り替えるかを先に決めておかないと、取込みの段階で必須項目の不足として止まります。
重複・複数入力・文字コードの注意
同サービスでは、同じメールアドレスを重複して登録できず、1つのセルに複数のアドレスを入れることもできません4。
引っかかりやすいのは、本社と支店を別の取引先として登録しているのに、納品書の送り先が同じ経理担当のアドレスになっている場合です。
また、「担当者と経理の両方に送る」ために1つの欄に2つのアドレスを並べていた場合も、そのままでは取り込めません。
どう直すかは、取引先の分け方そのものに関わります。
本社と支店を1つの取引先にまとめて送り先を別に持つのか、別の取引先のまま送り先のアドレスを分けてもらうのかは、請求の単位や宛名の出し分けと一緒に決めることになります。
複数の送り先を登録できる機能があるかどうかも製品によるので、エラーを消すためだけにアドレスを削らず、受け取る側に届かなくならないかを確かめてから整えます。
重複はメールアドレスに限りません。
同じ会社が表記違いで2件ある状態を1件にまとめる作業を名寄せと呼びます。
全角と半角、「株式会社」の位置や略記、スペースの有無をそろえてから並べ替えると、重複が見つけやすくなります。
どちらの住所や単価が正しいかは表の上では判断できないため、直近の納品書の控えと照らして残す方を決めます。
取込み後に社名や住所が読めない記号に置き換わる文字化けは、CSVの文字コード(文字をデータとして記録する方式)と、取込み側が想定する文字コードが合っていないときに起こります。
受け付ける文字コードは製品ごとに決まっているため、導入先のヘルプで指定を確かめ、CSVを保存するときにその文字コードを選びます。
最初は数件だけを取り込み、表示を確かめてから全件に進むと、全件を消して入れ直す事態を避けられます。
マネーフォワード クラウド請求書発行の仕様を例にした整理ですが、項目名を導入先の必須項目に置き換えれば、取込み前の点検の順番として使えます。
| 項目 | つまずきやすい点 | 取込み前にすること |
|---|---|---|
| 取引先コード | 旧データにコードがない、同じコードが重なっている | 採番のルールを決め、1社1コードにする |
| 送付方法と住所・メール | 送付方法が決まっておらず必須項目が埋まらない | 取引先ごとに送付方法を決め、必要な欄を埋める |
| メールアドレス | 同じアドレスの重複、1つのセルに複数 | 取引先の分け方と送り先の持ち方を決める |
| 社名の表記 | 表記違いによる二重登録 | 表記をそろえ、控えと照らして名寄せする |
| 文字コード | 社名・住所の文字化け | 導入先が受け付ける文字コードで保存し、数件で試す |
上書き取込み時の空欄の扱い
取込みは一度で終わるとは限りません。
試しに入れてみて誤りが見つかれば、直したCSVをもう一度取り込むことになります。
同サービスでは「既存データを上書きする」を選ぶと既存の取引先を上書きでき、アップロードしたデータの空欄を「元の値を残す」か「空欄で上書き」かを選べます4。
この選択が効いてくるのは、一部の列だけを直して再取込みするときです。
たとえば住所の誤りに気づき、取引先コードと住所だけを入れたCSVを作ったとします。
ここで「空欄で上書き」を選ぶと、CSVに含めなかったメールアドレスなどの欄まで空になり、メールで送る取引先の必須項目が欠けたり、送り先が消えたりします。
一部の列だけを直すなら元の値を残す側、意図して古い値を消したいなら空欄で上書きする側と、目的を決めてから選びます。
製品によって上書きの方式や選べる内容は異なりますが、「再取込みで何が消えるか」を先に確かめておく考え方は共通して使えます。
再取込みの前に、その時点の取引先一覧を書き出して控えておけば、想定外の上書きがあっても元に戻す材料が手元に残ります。
切替の時期と並行運用は「月次締めを何回またぐか」で決める
並行運用の目安と、その当てはまる範囲
マスタが入ったら、いきなり旧システムを止めるのではなく、一定期間、旧新の両方で同じ取引を処理して結果を比べる方法があります。
これを並行運用(並行稼働)と呼びます。
新システムの設定に誤りがあっても、旧システムで納品書と請求を出し続けられる点が、出荷を止めずに切り替えるうえで並行運用を置く理由です。
期間について、ripla社は販売管理システムのデータ移行で6〜8週間の並行稼働期間を設けることが多いとし、月次締め処理を2回またぐことを安全ラインとしています3。
締めを1回通すと、端数処理や税区分の設定の違いが集計の差として見えてきます。
2回目の締めは、その差を直した設定で本当に一致するかを確かめる機会になる、と考えると、2回という数の意味がつかみやすくなります。
ただし、この期間は販売管理システム全体を移す場合の一事業者の目安で、公的な基準や業界の決まりではありません。
納品書の発行だけを切り替え、請求や売掛金の管理は別のシステムで続ける場合に、同じ長さが必要かどうかは分かっていません。
期間を決めるときに見るべきなのは週数よりも、新しいシステムの中で締め処理が行われるかどうかです。
新システムの納品データから請求額を集計するなら、締めをまたいで比べる意味は大きくなります。
納品書を出すだけなら、比べる対象は締めの集計よりも、納品書の金額と記載そのものになります。
締め日と切替日の関係
並行運用を置くかどうかにかかわらず、切替日は締め日との関係で選びます。
月末締めの取引先に対して月の途中で切り替えると、その月の納品は前半が旧システム、後半が新システムに分かれます。
請求額を出すときに両方から納品を拾って合算することになり、片方の取り漏れや二重計上が起きやすい状態になります。
そのため、切替日を締め日の翌日、つまり新しい締め期間の初日に合わせると、1つの締め期間の納品が1つのシステムに収まります。
取引先によって締め日が月末、20日などと分かれている場合は、どの日に切り替えても、どこかの取引先の締め期間が旧新にまたがります。
その場合は、またがる取引先と期間を一覧にし、その期間だけはどちらのシステムで請求額を集計するかを決めておきます。
並行運用中は旧新で同じ取引を入力することになり、担当者の負担は一時的に増えます。
旧システムから出力した納品データを新システムに取り込める仕組みがあれば、手入力をその分減らせます。
また、全取引先ではなく、締め日や単価の条件が違う取引先を選んで並行させる方法もあります。
どちらの場合も、何を比べれば切替を判断できるかを先に決めておくと、並行する範囲を必要以上に広げずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 旧システムで納品書を発行する
- 同じ取引を新システムにも登録する
- 旧新の両方で締め処理を行う
- 集計を旧新で比べる
- 差異の原因を直し、次の締めへ
過去の納品書は移すか、別に保管するか:保存義務で決まる
法人の保存期間7年と、10年になる場合
ここまでは、新しいシステムで納品書を出し続けるためのデータでした。
新システムに移さなかった過去の納品書をどうするかは、別の物差し、つまり保存義務で決まります。
国税庁によると、法人は帳簿と、取引に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します1。
この書類には自社が作成した書類の写しも含まれるため、取引先に渡した納品書の控えも対象になります1。
青色申告書を提出した事業年度で欠損金額が生じた場合などは、保存期間が10年になります1。
数え始めが納品書の発行日ではなく、確定申告書の提出期限の翌日である点にも注意が必要です。
事業年度の初めに発行した納品書は、その年度の申告期限が来るまで数え始めないため、発行日から見ると7年より長く保存することになります。
これを移行の範囲と並べると、二つの期間がずれていることが分かります。
新システムに移すのが直近の一部だけなら、それより古く、まだ保存期間が終わっていない納品書は、新システムの外で保存を続けることになります。
旧システムを閲覧用に残すのか、解約前に納品データとPDFを出力して保管するのかは、旧システムの契約や出力機能によって選び方が変わります。
どちらの形が保存の要件に合うかは、税理士などに確認しておくと確実です。
いずれにしても、旧システムを解約する日より前に、保存期間内の分を取り出せるかを確かめておくことが、移行の段取りに入ります。
なお、ここでの7年・10年は法人についての定めです。
個人事業者の保存期間は別に定められているため、個人で事業をしている場合は、税理士や税務署で確認してください。
電子で送った納品書の電子取引データ保存と検索要件
納品書をPDFにしてメールで送ったり、Webで取引先に渡したりしている場合、その納品書は電子取引のデータとして、電子データのまま保存することになります。
移行の場面でこれが効いてくるのは、旧システムから出力した過去のデータを、旧システムがなくなったあとも探せる形にしておく必要があるからです。
財務省の資料では、電子取引データの検索要件として、日付・金額・取引先で検索できること、日付や金額の範囲を指定して検索できること、二つ以上の項目を組み合わせて検索できることの3つを挙げています2。
ダウンロードの求めに応じられるようにしておけば、範囲指定と組み合わせの検索は不要になります2。
旧システムの中ではこうした検索ができていても、PDFだけを書き出してフォルダに入れると、日付や金額で探す手段がなくなります。
出力するときは、納品書ごとの日付・金額・取引先を一覧にしたデータも一緒に残し、PDFのファイルと対応がつくようにしておくと、旧システムから切り離しても検索の手掛かりを保てます。
これは要件に沿うための組み方の一つで、唯一の方法ではありません。
これまで紙で出していた納品書を、移行を機にPDFのメール送付に変える場合は、切替日を境に保存の形が変わることになります。
紙とPDFが混在する期間の扱いは、自社の運用に合わせて税理士などに確かめておくと、あとで保存方法を組み直さずに済みます。
基準期間の売上高5,000万円以下の場合
財務省の資料によると、基準期間(2課税年度前)の売上高が5,000万円以下の保存義務者は、ダウンロードの求めに応じられることを条件に、検索要件を満たす必要がなくなります2。
小規模な事業者にとっては、出力データに検索用の一覧を作り込まなくてよい場合がある、ということです。
ただ、ここで不要になるのは検索要件であって、電子データを保存すること自体ではありません。
条件になっているダウンロードの求めに応じるには、求められたデータを取り出して渡せる状態で持っている必要があります。
旧システムを解約したあとに、どこに何年分のデータがあるのか分からなくなっていれば、この条件を満たせません。
また、基準期間は2課税年度前の売上高で判定するため、売上が伸びれば数年後に条件から外れることがあります。
保存の途中で検索要件が必要になる可能性があるなら、移行時の出力の段階で日付・金額・取引先の一覧を残しておくほうが、あとから過去分を整え直すより手間がかかりません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 保存義務の期間
- 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年
- 欠損金額が生じた場合などは10年
- 新システムに移す範囲
- 発行に使うマスタ
- 参照に使う直近の過去データ
- 移さないが保存期間内の納品書
- 旧システムの解約前に出力して別に保管
- 電子で送った分は日付・金額・取引先で探せる形に
移行後の数字・書式・取引先別記載をどう突き合わせるか
残高・月次集計の突合せ
並行運用や試験的な発行を経て、最後に決めるのは「旧システムを止めてよいか」です。
ripla社は、販売管理の移行での切替判断の基準として、売掛金残高が1円単位で一致すること(一致率100%)と、月次売上集計の新旧差異がゼロであることを挙げています3。
これは一事業者の判断基準で、一般的な規格ではありませんが、「差異がない」ことを切替の条件にするという考え方は、納品書の移行にも置き換えられます。
納品書の発行だけを切り替え、売掛金は新システムで管理しない場合は、比べる対象を置き換えます。
たとえば、締め期間ごとの取引先別の納品金額の合計や、商品別の数量の合計を旧新で並べる方法です。
取込み前に取引先コードを旧新でそろえておけば、取引先ごとの並べ替えがそのまま突合せの表になります。
差異が出たとき、金額の大きさは原因を探す手掛かりになります。
数円程度のずれが多くの取引先に出ているなら、端数処理や税額計算の設定の違いを疑う手掛かりになり、ある取引先で納品1件分ちょうどの差があるなら、入力漏れや二重登録を疑う手掛かりになります。
ただし、差額の見え方だけで原因は決まりません。
差のある取引先の明細を旧新で1件ずつ並べ、どの納品書で金額が分かれているかを見つけてから、設定やデータを直します。
納品書の記載と書式の確認
集計が一致しても、取引先が受け取る納品書の見た目や記載が正しいとは限りません。
宛名の敬称が抜けている、住所の改行位置が崩れている、取引先ごとの単価ではなく標準単価が出ている、といった違いは、合計金額を比べるだけでは見つかりにくいものです。
そこで、実際に発行した納品書を旧新で数枚ずつ並べて比べる方法が役に立ちます。
枚数を増やすより、条件の違う取引先を選ぶことが大切です。
郵送とメールで送る取引先、取引先ごとの単価がある取引先、税区分の違う商品が同じ納品書に並ぶ取引先などから選ぶと、設定の違いが表に出やすくなります。
確認する項目は次のとおりです。
- 宛名・敬称・担当部署
- 住所と送り先(郵送先・メールアドレス)
- 品名・品番・数量・単位
- 単価(取引先ごとの単価が反映されているか)
- 税区分と税額、合計金額
- 自社の社名・連絡先・備考など、書式の固定部分
受け取る側の取引先から見れば、納品書の書式が変わること自体が問い合わせのきっかけになります。
受入れの照合で品番や注文番号を見ている取引先なら、その欄の位置や有無が変わると照合の手間が増えることも考えられます。
切替前に書式が変わることを伝えておくと、受け取る側の戸惑いを減らせます。
取込みエラーの履歴の確認
突合せで見落としやすいのが、そもそも取り込まれていない取引先です。
マネーフォワード クラウド請求書発行では、インポートの結果がメールで届き、失敗したときはインポート履歴のエラー詳細で内容を確認できます4。
取込みのたびにこの結果を見て、エラーになった行を直してから次に進むと、漏れを切替前に拾えます。
製品によっては、エラーの行だけを除いて残りを取り込む場合もあれば、全件を取り込まない場合もあり、通知の仕方も違います。
どの仕様でも使える確認として、元のCSVの行数と、取込み後にシステムに登録された取引先の件数を比べておくと、気づかないうちに抜けた取引先を見つけられます。
件数が合わなければ、取引先コードで旧新の一覧を照らし、ない行を探します。
残高や集計の差異に説明がつき、条件の違う納品書の記載を確かめ、取込みの漏れがない。
この三つがそろったところで、旧システムを閲覧用に切り替えるか、保存期間内のデータを出力したうえで解約へ進むかを決めます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 数円程度のずれが多くの取引先に出る
- 端数処理や税額計算の設定の違いを疑う
- 納品1件分ちょうどの差が一つの取引先にある
- 入力漏れや二重登録を疑う
- 原因を確定する
- 差のある取引先の明細を旧新で1件ずつ並べる
- 金額が分かれた納品書を見つけてから設定やデータを直す
取引先ごとの送付方法や単価、締め日の違いは、データを開いてみるまで移行の手間が見えにくく、担当者だけで線引きを決めると後から範囲を組み直すことがあるためです。
手元の取引先・商品データと締め日の一覧をもとに、何を最優先で移し、何を出力して残すかの線引きと、取込み前に整える項目を一緒に確認できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最優先で移すもの | 切替日に納品書を発行するのに必要な取引先・商品・単価のマスタ |
| 過去データの移行範囲 | 実務でさかのぼって参照する期間で決める |
| 取込み前の点検 | 送付方法を決め、必須項目・重複・文字コードを導入先の仕様で確認する |
| 切替日 | 締め日の翌日を候補にし、締め期間が旧新にまたがる取引先を一覧にする |
| 保存 | 法人は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年。電子で送った分は日付・金額・取引先で探せる形にする |
| 切替の判断 | 残高・集計の差異の原因が明細で説明でき、記載と取込み件数を確かめたか |

切替の判断と過去データの保管は、旧システムの解約時期や保存期間と結び付いていて、一度旧システムを止めると取り返しにくい判断だからです。 並行運用で比べる項目と切替の条件、旧システムを止める前に出力しておくデータの範囲を整理できます。税務上の保存の扱いは、税理士への確認事項としてまとめられます。
よくある質問
取引先マスタをCSVで取り込むとき、文字化けや重複エラーが出たらどう直すか
文字化けは、CSVの文字コードと取込み側が受け付ける文字コードが合っていないときに起こります。
受け付ける文字コードは製品ごとに決まっているため、導入先のヘルプで指定を確かめ、その形式でCSVを保存し直してから数件で試します。
重複エラーは、仕様上重ねられない項目が重なっているときに出ます。
たとえばマネーフォワード クラウド請求書発行では、同じメールアドレスの重複登録と、1つのセルへの複数アドレスの入力ができません4。
アドレスを削って消すのではなく、本社と支店を1つの取引先にまとめるか、送り先を分けるかを決めてから直すと、納品書が届かなくなる事態を避けられます。
過去の納品書を何年分、新システムに移せばよいか
新システムに移す年数に決まった基準はありません。
株式会社riplaは販売管理の移行について、直近1〜2年分の月次集計を移し、それより前は旧システムの出力で参照する設計を挙げていますが、これは一事業者の目安で、納品書の明細の年数ではありません3。
明細は、再発行や問い合わせでどこまでさかのぼって見ているかで決めると実務に合います。
移さない分も、法人なら確定申告書の提出期限の翌日から原則7年の保存が必要です1。
そのため、旧システムの解約前に出力して別に保管します。
個人事業者の場合、納品書の保存期間は法人と同じか
国税庁の案内で確認できる7年(欠損金が生じた事業年度などは10年)は、法人についての保存期間です1。
個人事業者の保存期間は法人とは別に定められているため、法人と同じと考えず、税理士や税務署に確認してください。
紙で発行している納品書をPDFでメール送付に変えると、保存の扱いはどう変わるか
PDFをメールで送る納品書は電子取引にあたり、電子データのまま保存することになります。
日付・金額・取引先で検索できることなどの検索要件があり、基準期間の売上高が5,000万円以下なら、ダウンロードの求めに応じられることを条件に検索要件は不要になります2。
切替日より前に紙で出した控えと、切替日以降のPDFが混在する期間の扱いは、自社の運用に合わせて税理士などに確認しておくと確実です。
並行運用の期間中、旧新の二重入力の負担をどう減らすか
並行させる範囲と期間を、切替の判断に必要な分に絞ることで負担を抑えられます。
全取引先ではなく、締め日や単価、送付方法の条件が違う取引先を選んで並行させる方法があります。
旧システムから納品データを出力して新システムに取り込める仕組みがあれば、手入力をその分減らせますが、取込みの可否は導入先の機能によります。
期間は、新システムで締め処理を行うなら締めをまたいで集計を比べられる長さ、納品書を出すだけなら記載と金額を確かめられる長さを目安に決めます。
- 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間(法人)」(確認時点)
- 2 出典:財務省「広報誌『ファイナンス』令和6年8月号 電子帳簿等保存制度の内容と中小企業の対応策」(2024年)
- 3 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ」(2026年)
- 4 出典:株式会社マネーフォワード「マネーフォワード クラウド請求書発行 使い方ガイド 取引先CSV一括インポート」(確認時点)
画像の出典元
- Close-up of a professional writing on documents at a work desk with a laptop./Photo by olia danilevich on Pexels
- Close-up of a businessman in a suit reviewing a binder in a professional setting./Photo by Lara Jameson on Pexels
- Close-up of a checklist and pen with brightly colored sticky note that says ‘DONE!’ indicating task completion./Photo by Jakub Zerdzicki on Pexels