◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 発注伝票のコストは、作成・送付、照合、再入力、保管、ミス対応の工程ごとに1か月分の件数と分数を記録して出す
- 削減時間×時間単価に手戻りの減少分を足し、初期費用と月々の費用から回収期間を求める
- 中小企業庁の実証の51.4%は取引先とデータ連携した中小企業の平均で、上限側の参考にとどめる
- 取引先を対応度で分け、電子化できる件数にだけ削減を見込み、二重運用の手間を費用に入れる
- 取適法の7条記録は記録日から2年間保存し、4条明示の写しだけでは足りない点を電子化の手間に含める
目次

発注側の伝票コストは、どの工程から数えればよいか
月末になると、届いた納品書と発注控えを突き合わせ、合わない分を取引先に電話で確かめ、会計システムへ打ち直す。
その手間が毎月どれだけの時間になっているのか分からないまま、発注伝票を電子化する費用を上司に説明するのは難しいものです。
発注伝票の費用対効果は、相場から推すのではなく、作成・送付、照合、再入力、保管、ミス対応の工程ごとに1か月分の件数と時間を数えると見えてきます。
その削減見込みを導入費用と比べて回収期間にし、取引先がどこまで電子でやり取りできるかで、始める順番を決めます。
発注書の作成と送付
発注側の伝票コストというと、発注書を作る時間だけを思い浮かべがちです。
しかし実際の手間は、発注してから支払うまでのあいだに、何度も伝票を手に取る場面に分かれて発生しています。
最初の工程が、発注書の作成と送付です。
品目・数量・単価・納期を発注書の様式に書き込み、上長の承認を得て、FAXやメールで取引先へ送る。
この工程で数えたいのは、書き込む分数だけではありません。
承認待ちで止まる時間、送信後に届いたかどうかを確かめる電話、取引先ごとに異なる様式へ書き直す手間も、同じ発注書のために使っている時間です。
取引先ごとに様式が違う場合は、様式によって1件あたりの分数が変わるため、主な様式ごとに分けて記録しておくと、後で選択肢を比べるときに使いやすくなります。
納品書との照合と再入力
品物が届くと取引先から納品書が、月末には請求書が届きます。
発注側はこれを自社の発注控えと突き合わせ、数量や単価、品目が合っているかを確かめます。
そのうえで、受入や買掛の記録として会計システムや在庫の台帳へ入力します。
ここで時間を食うのは、同じ内容を何度も目で追い、打ち直していることです。
発注書を作るときに一度入力した品目と数量を、納品書を見ながらもう一度、請求書を見ながらさらにもう一度入力している流れになっていないかを見ます。
照合と再入力は担当が別の部署に分かれていることも多いため、購買の担当者が照合し、経理の担当者が入力するといった分担ごとに時間を記録します。
照合と再入力を分けて数えておくのは、後で比べる選択肢によって、照合は減っても再入力は残る、あるいはその逆、という違いが出るからです。
保管とミス対応
照合が済んだ伝票は、ファイルに綴じたり、PDFにして共有フォルダへ保存したりします。
後から取引先や社内から問い合わせがあったときに探し出す時間も、保管の工程に含めて考えます。
見落とされやすいのがミス対応です。
納品書の数量が発注書と合わない、単価が古いまま請求されている、発注書の品番を写し間違えていた、といった差異が見つかると、取引先への確認、伝票の訂正と再入力、そしてもう一度の照合が続きます。
1件の差異が、照合の担当者と取引先、経理の担当者のあいだを何度も往復することもあります。
件数としては少なくても1件あたりの時間が長くなりやすいため、通常の処理とは分けて数えておきます。
1か月分の記録のとり方
記録は1か月分あれば試算の材料になります。
長く記録しようとすると現場の負担が重くなり、途中で記録が途切れやすくなるためです。
記録する項目は、工程ごとに次の4つです。
- 件数(その月に処理した伝票の数)
- 1件あたりの分数(数件を測って平均を出す)
- 担当者(部署と役割)
- 手戻りの件数(差異が見つかり、確認や訂正が発生した件数)
1件あたりの分数は、すべての伝票で計る必要はありません。
工程ごとに数件の作業時間をメモで測り、その平均を使えば試算には足ります。
件数は、発注番号や伝票の綴りから月の合計を数えられます。
手戻りは、差異が見つかったときに担当者が日付と内容を一行残すだけでも、月末には件数と原因の傾向がつかめます。
工程の分け方は、ここで挙げた5つにそろえる必要はありません。
検収を別の工程として扱っている会社もあれば、照合と入力を一人が続けて行う会社もあります。
大切なのは、後で「どの工程の時間が減るのか」を選択肢ごとに当てはめられる単位で分けておくことです。
この区分は自社の試算のための整理で、業界の平均的な内訳を示すものではありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 納品書・請求書と発注控えの照合
- 数量・単価・品番の差異の発見
- 取引先への確認
- 伝票の訂正と再入力
費用対効果は何を指標にどう試算するか
削減時間×時間単価
1か月分の記録がそろったら、工程ごとの月の作業時間を出します。
件数に1件あたりの分数を掛け、60で割れば時間になります。
仮に照合が月400件、1件あたり4分だとすると、照合だけで月に約27時間です。
次に、検討している方法でその工程がどれだけ減るかを、工程ごとに仮定します。
発注データがそのまま取引先へ届き、納品の情報もデータで戻ってくる仕組みなら、照合と再入力が減る見込みがあります。
一方、発注書をPDFにしてメールで送るだけなら、減るのは印刷やFAX送信、紙の保管の手間が中心で、照合や再入力はほとんど残ります。
減る工程と残る工程を分けて仮定すると、「電子化すれば伝票の仕事が全部楽になる」という大づかみな見積もりを避けられます。
削減時間が出たら、時間単価を掛けて金額にします。
社内で人件費の単価を決めていればそれを使い、決まっていなければ経理と相談して、給与や社会保険料などをどこまで含めるかをそろえます。
どの単価を使ったかは、上司に説明するときに必ず聞かれる前提になります。
手戻りの減少分は、別に計算して足します。
差異の確認や訂正にかかる時間は、手戻りの件数×1件あたりの時間で出せます。
転記がなくなれば写し間違いによる差異は減る見込みがありますが、単価の取り決め違いや納品数量の不足のように、転記と関係のない差異は残ります。
記録した手戻りのうち、転記が原因のものがどれだけあるかを見分けておくと、減る分を大きく見積もりすぎずに済みます。
初期費用と月額費用を入れた回収期間
金額にした削減効果は、導入にかかる費用と比べます。
費用は、初期にかかるものと、毎月かかり続けるものに分けます。
初期には、システムの設定、既存の様式や取引先の情報の登録、担当者が操作を覚える時間、取引先への説明などがかかります。
月々には、利用料や保守のほか、電子化した後も残る記録の作成や保存の手間がかかります。
回収期間は、初期費用を「月の削減額から月々の費用を引いた額」で割って求めます。
月の削減額が月々の費用を下回るなら、何か月たっても回収できないということです。
上司にとっては、何か月で元が取れるかという一つの数字になるため、判断の材料として扱いやすくなります。
費用の金額は、候補の提供元に自社の月の件数と取引先の数を伝えて見積もりを取り、その数字を入れます。
製品や契約の形によって費用の組み立ては大きく異なり、他社の事例の金額を当てはめても自社の回収期間にはなりません。
見積もりがまだ無い段階では、費用の欄を空けたまま削減額だけを先に出しておき、「この金額以内なら何か月で回収できる」という逆算の形で示す方法もあります。
公的な実証値の参考範囲
削減率を仮定するとき、目安になる公的な数字が一つあります。
中小企業庁の解説によると、平成28年度補正で行われた企業間の受発注データ連携の実証12プロジェクトでは、中小企業の業務時間が平均で51.4%削減されました1。
ただし、この数字の扱いには注意が要ります。
これは発注側と受注側が受発注データをつないだ場合の、参加した中小企業の平均です。
発注側だけの削減率ではなく、自社で同じ割合が得られる保証もありません。
また、取引先とデータをやり取りすることが前提なので、社内の転記を減らすだけの改善に、この割合を当てはめることはできません。
試算では、51.4%を上限側の参考として扱い、自社の仮定はそれより控えめに置くほうが説明しやすくなります。
削減率を控えめな値と中くらいの値の2通りで計算し、どちらでも回収期間が許容できる範囲に収まるかを見ると、一つの仮定に頼りすぎない説明になります。
控えめな値でも回収できるなら判断はしやすく、中くらいの値でしか回収できないなら、何がそろえばその値に近づくのかを次の比較で考えることになります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 工程ごとの月の作業時間
- 件数×1件あたりの分数
- 工程ごとの削減時間
- 減る工程と残る工程を分けて仮定
- 月の削減額
- 削減時間×時間単価
- 手戻りの減少分を加える
- 月々の費用
- 利用料や保守
- 記録の作成や保存の手間
- 回収期間
- 初期費用÷(月の削減額−月々の費用)
現状改善・部分電子化・受発注システムやEDIでは何が違うか
3つの選択肢の比較表
試算の形が決まったら、どの方法を当てはめるかを比べます。
選択肢は大きく3つに分けて考えられます。
今の紙・FAX・メールの運用を整える現状改善、発注書の送付や保管など一部の工程を電子にする部分電子化、そして取引先と受発注データをやり取りする受発注システムやEDIです。
EDIは、企業間で発注や納品の情報を、決まった形式のデータとしてやり取りする仕組みのことです。
表で判断が分かれるのは、「取引先に求める対応」の行です。
現状改善と部分電子化は自社の中で完結する部分が多く、取引先にはメールで受け取ってもらう程度の協力で始められます。
その代わり、照合や再入力はほとんど残ります。
受発注システムやEDIは照合と再入力まで減らせる可能性がありますが、中小企業庁の解説では、EDIは1社だけが導入しても効果を得られず、導入の判断では取引先の状況も考える必要があるとされています1。
取引先の負担については、同じ解説で、受注側の企業は対応するプロバイダーと業務アプリケーションを使うだけでよく、大きな費用はかからないと説明されています1。
導入費用の一部がIT導入補助金などで補助される場合があることにも触れられています1。
取引先へ協力を頼むとき、費用面の不安に答える材料になります。
ただし、これは受注側についての記述で、発注側にかかる費用の金額は示されていません。
現状改善の効果は、今の様式や運用によって大きく変わるため、前の節で記録した数字から自社で見積もります。
取引先ごとに違っていた発注書の様式を一つにそろえるだけでも、作成のときに迷う欄や照合のときに目で追う位置が統一され、1件あたりの分数が変わる可能性があります。
導入費用がほとんどかからない分、少しの削減でも回収期間は短くなります。
EDIで記号を使うときの明示
EDIで発注する場合、発注内容の一部を記号やコードで送ることがあります。
取引先とあらかじめ取り決めた内容を、毎回文章で書かずにパターンコードで示すやり方です。
取適法の対象となる取引では、発注時に取引の内容を明示する義務があります。
公正取引委員会のQ&Aでは、EDIで発注する場合でも、記号の意味をあらかじめ書面または電磁的方法で明示しておけば、記号を使えるとされています2。
コード化すれば日々の発注データは短くなりますが、その意味を取引先に示した書面やデータを、別に用意して残しておく手間が生じます。
システムを比べるときは、このコードの対応表をどこで管理し、取引先がいつでも参照できるようにするかも、初期の負担として見ておく対象になります。
| 観点 | 現状改善 | 部分電子化 | 受発注システム・EDI |
|---|---|---|---|
| 削減できる工程 | 作成・送付と保管の一部 | 送付と保管(照合と再入力は残りやすい) | 照合と再入力まで減る可能性 |
| 自社の負担(初期) | 様式の作り直しと手順の取り決め | ツールの設定と様式の電子化 | システム設定・情報の登録・取引先への説明 |
| 自社の負担(月々) | 決めた運用を守る手間 | 契約による利用料 | 利用料・保守・二重運用の手間 |
| 取引先に求める対応 | ほぼ不要 | メールなどで受け取る程度 | 対応プロバイダーと業務アプリの利用 |
| 前提条件 | 自社の中で完結する | 取引先が電子で受け取れる | 主要な取引先が対応できる |
| 金額 | 自社見積もりを記入 | 自社見積もりを記入 | 自社見積もりを記入 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 現状改善
- 発注書の様式を一つにそろえるなど自社で完結する
- 取引先の協力はほとんど要らない
- 照合と再入力はほとんど残る
- 部分電子化
- 発注書の送付や保管など一部の工程を電子にする
- 取引先にはメールで受け取ってもらう程度
- 照合と再入力はほとんど残る
- 受発注システムやEDI
- 取引先と受発注データをやり取りする
- 照合と再入力まで減らせる可能性がある
- 1社だけの導入では効果が得られない
取引先が対応しない場合、効果はどこまで下がるか
取引先の分け方
取引先とデータでやり取りする方法は、相手が対応して初めて効果が出ます。
そのため試算では、すべての取引先が対応する前提を置かず、取引先を分けて考えます。
まず、取引金額や件数の多い順に取引先を並べます。
そのうえで、次の3つに分けます。
- 電子での受発注に対応できる、または対応してくれそうな取引先
- 頼めば検討はするが、すぐの対応は難しい取引先
- 紙やFAXでのやり取りが当面残る取引先
分けるための手掛かりは、日々のやり取りの中にあります。
今どの方法で発注書を受け取ってもらっているか、PDFをメールで送ったときに問題なく処理されているか、といった点です。
判断がつかない取引先には、電子での受け取りに対応できるかを直接たずねるのが確実です。
その際に、受注側の負担は大きくない場合があることを伝えられると、話が進めやすくなります。
試算では、電子化できる取引先の件数にだけ削減時間を掛けます。
仮に月の発注が全体で300件あり、そのうち対応できる取引先の分が120件なら、削減の見込みを計算するのは120件分です。
残る180件分は、従来の作業時間のまま残ります。
件数の上位数社が対応できるかどうかで、削減の見込みが大きく変わるのはこのためです。
二重運用の費用
一部の取引先だけが電子化すると、社内では電子の流れと紙・FAXの流れが並んで動くことになります。
発注のたびに、この取引先はシステム、この取引先はFAX、と送り方を切り替え、納品書も画面で見るものと紙で届くものが混ざります。
この二重運用には、それ自体の手間がかかります。
どちらの流れで処理したかを確かめる時間、紙で届いた分をシステムへ入力して記録をそろえる時間、担当者が2つの手順を覚える負担です。
紙で届いた分をシステムへ打ち込む運用にすると、その取引先については再入力が減らず、入力先がかえって増えることもあります。
試算では、二重運用で増える時間を月々の費用の側に入れます。
電子化できる件数が少ないうちは、削減時間より二重運用の手間が上回ることもあり得ます。
その場合は、対応できる取引先が増えた段階の見込みを別に計算し、何社が対応すれば回収できるかという形で示すと、取引先への働きかけを含めた計画として説明できます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 電子での受発注に対応できる取引先
- 削減時間を掛ける対象にする
- 仮の例:月300件のうち120件分
- 頼めば検討はするが、すぐの対応は難しい取引先
- 削減時間は掛けない
- 従来の作業時間のまま残る
- 紙やFAXでのやり取りが当面残る取引先
- 削減時間は掛けない
- 電子と紙・FAXの二重運用の手間が出る
発注書の電子化で、発注側が確認しておく条件は何か
取適法の施行と4条明示
発注書を電子にするとき、費用とは別に確かめておきたいのが、法律上の明示と記録の扱いです。
下請代金支払遅延等防止法は名称が変わり、略称を取適法として、2026年(令和8年)1月から施行されています3。
取適法の対象となる取引では、発注時に取引の内容を明示する義務があり、これは書面または電磁的方法で行います。
発注書を電子で送る場合は、この電磁的方法による明示として、必要な事項がそろっているかを見ることになります。
電磁的方法で明示するときに取引先の承諾が要るかどうかなど、細かな条件は公正取引委員会の資料で確かめておきます。
7条記録と2年間の保存
もう一つが取引の記録です。
公正取引委員会のQ&Aでは、取適法7条に基づく記録は、記録した日から2年間保存するとされています2。
また、4条で明示した発注内容の写しを残しておくだけでは、7条記録の記録事項を満たすには足りないと示されています2。
これは電子化の試算に関わる点です。
発注書のデータが残るから記録も済む、と考えて保存の手間をゼロにすると、導入後に記録の作成と保存の作業が別に必要になります。
候補のシステムが、発注書のデータとは別に記録の事項を残せるか、2年間取り出せる形で保存できるかを見ておくと、導入後に手作業が戻ることを避けられます。
システムで残せない部分は、記録の作成と保存の時間として月々の費用に入れます。
取引先とのやり取りを記録に残す点では、Q&Aは取引の相手方の従業員数を確かめる方法についても、書面や電子メールなど記録に残る方法が望ましいとしています2。
取引先の規模の確認も電話で済ませず、記録として残る方法で行うと、後から確認を求められたときに探しやすくなります。
電子で受け取った発注書や請求書は、税務上の保存についても確認が要ります。
電子帳簿保存法による電子取引データの保存の要件は、顧問税理士や国税庁の資料で確かめたうえで、保存にかかる手間を試算に入れます。
自社が対象かの確認先
自社の取引が取適法の対象になるかどうかは、資本金や取引の内容などの条件で決まります。
具体的な基準は、公正取引委員会の取適法のページやQ&Aで確かめます3。
対象でない取引であっても、発注内容とその後の変更を後から確認できる形で残しておくと、納品書との差異が見つかったときに、どちらの認識が正しいかを確かめる時間が短くなります。
取引件数と取引先の状況別に、どこから始めるか
件数が少ない場合
ここまでの試算と取引先の分類を重ねると、始め方は自社の条件によって分かれます。
月の伝票件数と、取引先がどこまで電子で対応できるかの2つで見ると整理しやすくなります。
月の件数が少なく、取引先も電子での受発注に対応していない場合は、様式の統一とメール運用の整理から始めます。
システムの費用を回収するだけの削減時間が出にくいうえ、取引先とつながらなければ照合と再入力は減らないためです。
たとえば、取引先ごとにばらばらだった発注書の様式を一つにそろえ、PDFにしてメールで送る、ファイル名に発注番号を入れる、受信の確認をメールで残す、といった整え方です。
これらは印刷やFAX送信、伝票を探す時間を減らすもので、照合と再入力は残ります。
件数は多いものの主要な取引先が電子に対応できない場合も、まずはこの段階から始め、並行して対応してくれそうな取引先を探す順になります。
一部の取引先が対応できる場合
件数の上位に電子で対応できる取引先がある場合は、その取引先に限って電子化します。
前の分類で「対応できる」に入った取引先の件数が、全体の中でどれだけを占めるかが判断の材料です。
対象を絞ると二重運用は残りますが、初期の設定や取引先への説明の負担を小さくできます。
実際に使ってみて、照合と再入力の時間がどれだけ減ったかを1か月分記録すれば、次に対象を広げるときの試算は、仮定ではなく自社で測った数字で組めます。
件数が少なくても、取引の多くが対応できる数社に集まっているなら、この進め方が当てはまります。
件数が多く主要取引先が対応できる場合
件数が多く、主要な取引先が電子での受発注に対応できる場合は、受発注システムやEDIの見積もりを取ります。
見積もりを依頼するときは、月の発注件数、取引先の数、そのうち対応できる取引先の数、今使っている会計・基幹システムを伝えます。
既存のシステムとつながるかどうかで再入力がどこまで減るかが変わるため、連携できるかどうかは候補の仕様書で確かめます。

上司への説明では、回収期間の数字と一緒に、その前提を並べて示します。
どの工程の時間をどれだけ減ると仮定したのか、対応できる取引先を何社と見込んだのか、二重運用と記録の手間をどう入れたのかが見えていれば、前提が違ったときの判断も上司と一緒に検討できます。
| 始め方 | 月の伝票件数(1=少ない〜3=多い) | 取引先の対応度(1=低い〜3=高い) |
|---|---|---|
| 様式の統一とメール運用の整理 | 1 | 1 |
| 現状改善から始め対応できる取引先を探す | 3 | 1 |
| 対応できる取引先に限った電子化 | 2 | 2 |
| 受発注システム・EDIの見積もり | 3 | 3 |
工程の記録や取引先の分類を自社だけで進めると、どこまでが電子化で減る作業で、どこからが残る作業かの線引きに迷いやすくなります。
相談では、記録した件数と分数をもとに、どの工程を削減の対象にするか、削減率の仮定をどう置くかを一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する
上司への説明資料に並べる試算の前提
試算を組み立てるときに材料を集める順に並べています。
- 1か月分の工程別の件数と1件あたりの分数
- 工程ごとに置いた削減の仮定と、使った時間単価
- 電子化の対象にした取引先とその件数
- 初期費用と月々の費用の見積もり(二重運用と記録の手間を含む)
- 削減率を控えめな値と中くらいの値にした場合の回収期間
対応できる取引先の数が変わったら、対象の件数と回収期間を計算し直します。
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 数える工程 | 作成・送付、照合、再入力、保管、ミス対応を1か月分 |
| 試算の形 | 削減時間×時間単価+手戻りの減少分を、初期費用と月々の費用と比べて回収期間にする |
| 削減率の参考 | 51.4%は取引先とデータ連携した中小企業の平均。上限側の参考にとどめる |
| 取引先の扱い | 対応できる件数にだけ削減を見込み、二重運用の手間を費用に入れる |
| 記録と保存 | 7条記録は記録日から2年間保存。4条明示の写しだけでは足りない |
| 始め方 | 件数と取引先の対応度で、運用整理・対象を絞った電子化・システムの見積もりを選ぶ |

回収期間の数字は、取引先の対応や二重運用、記録の手間の入れ方で大きく変わり、上司への説明ではその前提が問われます。 相談では、自社の取引先の構成に合わせた始め方と、説明資料に並べる前提の整理を確かめられます。
よくある質問
発注側の伝票コストは、社内のどの部署の誰が数えればよいですか。
工程を担当している人が自分の工程を記録し、試算をまとめる人が集約するのが現実的です。
発注書の作成は購買の担当者、照合と入力は経理の担当者、というように担当が分かれていれば、それぞれの部署に1か月だけ記録を頼みます。
まとめ役は件数と分数を同じ表に集め、部署ごとに工程の区切りがずれていないかをそろえます。
取引先がFAXしか使えない場合、電子化は意味がありますか。
その取引先とのデータ連携はできませんが、社内側の工程は見直せます。
発注書の様式の統一や、届いたFAXの保管方法の整理は、取引先の対応がなくても進められます。
ほかに電子で対応できる取引先があれば、その分だけを電子化し、FAXの取引先は従来の作業時間のまま試算に残します。
FAXの取引先の件数が多いほど二重運用の手間が増えるため、その時間も費用の側に入れて判断します。
電子化した発注書は、取適法の記録としてそのまま使えますか。
そのままでは足りない場合があります。
公正取引委員会のQ&Aでは、4条で明示した内容の写しだけでは、7条記録の記録事項を満たすには足りないとされています2。
7条記録は記録した日から2年間保存します2。
自社の取引が対象かどうかと、記録に必要な事項は、公正取引委員会の資料で確かめてください。
IT導入補助金は、発注側の導入費用にも使えますか。
中小企業庁の解説では、受注側の導入費用の一部がIT導入補助金などで補助される場合があると説明されています1。
発注側の導入費用が対象になるかは、その年度の公募要領で対象となる事業者・ツール・経費を確かめる必要があります。
補助を見込んで試算する場合は、補助がない場合の回収期間も並べておくと、採択されなかったときの判断がしやすくなります。
会計・基幹システムと連携しないと、再入力の削減効果は出ませんか。
取引先との電子化で発注や納品のデータが手元に届いても、それを会計や基幹システムへ打ち直しているなら、その転記は残ります。
照合は減っても再入力は減らない、という形です。
候補のシステムからデータを取り込めるかは仕様書で確かめ、つながらない部分は再入力の時間として試算に残します。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 2 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「取適法(中小受託取引適正化法)紹介ページ」(2026年)
画像の出典元
- Close-up of hands typing on a laptop, with a focus on modern office tools and teamwork./Photo by Edmond Dantès on Pexels
- Close-up of a businessman writing notes in a notepad at a desk, highlighting stationary and productivity./Photo by RDNE Stock project on Pexels