◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 検収は受領とは別の手続で、合否を確定させるには基準・検査期間・不合格時の手順を契約書に書く必要がある
- 合否の物差しは仕様書や受入条件を条項から引いて置き、検査方法と判定者まで決める
- みなし合格は期間内に不合格を通知しなければ合格が確定する取り決めで、検査を後回しにしてよい根拠にはならない
- 取適法の対象取引では検査の有無にかかわらず受領日から60日以内に支払期日を定める必要があり、検収と支払いは別の条項で書き分ける
- 取適法の適用判断と最終的な文言は、仕様書や契約書案をそろえて専門家に確認する
目次

納品されたのに合格かどうか決まらないとき、検収は契約上何を決めるのか
納品は済んだのに、取引先と合格かどうかの認識が合わず、支払いも修正の依頼も止まっている。
こうした行き詰まりの多くは、検収の基準・検査期間・不合格時の手順を契約書で決めていないことから起きます。
基準は仕様書や受入条件を引いて書き、検査期間を決めたうえで、不合格の通知、修正、再検収の順に手順を定めておきます。
支払期日と契約不適合の通知期間は、検収とは別の条項で書き分けます。
取適法の対象取引では、検査をしても受領日から60日以内という支払期日の上限は動きません1。
納品・受領・検収はそれぞれ何を指すか
納品は、受注側が契約で決めた物や成果物を発注側へ引き渡す行為です。
受領は、発注側がそれを受け取った状態を指します。
検収は、受け取ったものが仕様や受入条件に合っているかを確かめ、合格か不合格かを確定させる手続です。
日常の会話では三つが混ざりがちですが、契約の上では別々の出来事として扱います。
この区別が実務で効いてくるのは、どの出来事を起点にどの期限が動き出すかが変わるからです。
取適法(中小受託取引適正化法)の対象となる取引では、受注側に納品させた時点で受領したことになり、検査中に納期が来た場合は納期が受領日になると公正取引委員会は説明しています2。
発注側が「まだ検収していないから受け取っていない」と考えていても、法律上の受領日はすでに過ぎていることがあるわけです。
一方で、受領しただけでは合否は決まりません。
検収は契約で合否を確定させるための手続なので、何をもって合格とするか、いつまでに判定するか、不合格ならどうするかが書かれていなければ、手続そのものが終わりません。
基準が曖昧だと何が止まるか
たとえば部品を発注し、納品された箱を開けたところ、一部の寸法がわずかにずれていたとします。
発注側の担当者は「この精度では使えない」と考え、受注側は「図面の許容範囲内だ」と考える。
契約書に「検収に合格したものを納品完了とする」としか書かれていなければ、どちらの言い分にも決め手がありません。
このとき止まるものは一つではありません。
合格が決まらないので、社内では支払いの手続を回してよいか判断できません。
不合格とも言い切れないので、受注側へ修正を正式に求めることもできません。
受注側から見ると、代金も入らず、直すべき点もはっきりしないまま待たされることになります。
しかも取適法の対象取引であれば、合否が宙に浮いているあいだも受領日からの支払期日は進みます2。
揉めている中身は製品の出来に見えても、実際には合否を決める物差しと手順が契約に無いことが原因です。
だからこそ検収条項は、基準・期間・不合格時の手順をひとそろいで書く必要があります。
商人間売買の検査・通知義務
契約書に何も書かなかった場合でも、法律の側に一定の定めがあります。
弁護士の解説によると、会社どうしのような商人間の売買では、買主は受け取った物を遅滞なく検査する義務を負い、検査で見つけた不適合を直ちに通知しなければ、後から追完などの救済を求められなくなります6。
民法と商法の両方に規定がある場合は、商法が優先されるとも説明されています6。
発注側にとってこれは、受け取った物を検査せずに置いておくこと自体が、不利益につながりうるという意味です。
ただしこの定めは商人間の売買に関するもので、業務委託や工事の請負にそのまま当てはまるわけではありません。
どの法律のどの規定が自社の取引にかかるかで、契約書に書き足すべき範囲も変わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 物差しと手順が無い
- 何をもって合格とするか
- いつまでに判定し、不合格ならどうするか
- 止まるもの
- 社内の支払手続を回してよいかの判断
- 受注側へ修正を正式に求めること
- 進むもの
- 取適法の対象取引で受領日から進む支払期日
検収基準は何を根拠に、どの粒度で書くか:取引の種類別の置き方
仕様書・受入条件・検査方法の関係
合否を決める物差しは、契約書の本文に全部書き込むより、仕様書や受入条件を書いた別紙を引いて置くほうが扱いやすくなります。
契約書の検収条項には「別紙の仕様書に定める受入条件に基づき検査する」のように根拠の置き場所を書き、具体的な数値や確認項目は仕様書の側で管理する形です。
仕様が改訂されたときにどの版で検査するかを特定できるよう、仕様書の名称や版を条項から指せるようにしておくと、食い違いが起きにくくなります。
ここで分けて考えたいのが、何を満たせば合格かという受入条件と、それをどう確かめるかという検査方法です。
同じ「寸法が図面どおり」という条件でも、全数を測るのか抜き取りで測るのか、どの器具で測るのかで結果が変わることがあります。
前の部品の例で言い分が割れたのは、まさにこの部分が書かれていなかったからです。
弁護士の解説でも、検査条項は検査の基準・方法、期限、不合格時の通知と対応を定めるもので、契約不適合責任の条項と一体で確認することが望ましいとされています6。
検収の基準だけを細かくしても、後で見つかった不具合の扱いが別の条項で手薄なら、発注側の守りは片側だけになります。
取引の種類別に書く欄を比べる(物品・システム開発・業務委託)
システム開発については、IPA(情報処理推進機構)が情報システム・モデル取引・契約書を公表しています。
受託開発・保守運用の契約書と、パッケージやSaaS/ASPを活用する場合の追補版からなり、契約時に検収方法などについて発注側と受注側が共通の認識を持つことを狙いとしています4。
Word形式の文書は自由にカスタマイズして使えますが、参照している法令は公表当時の内容なので、現行の法令と照らして確認が必要とされています4。
ただしこの雛形はITシステムの取引向けで、物品の納入や工事は対象外です。
物品や業務委託の検収条項について、取引の種類別に書き方を示した公的な雛形をここで挙げることはできません。
そこで以下は編集上の整理として、どの取引でも埋めたい欄(何を基準にするか、誰が判定するか、どの時点で確定するか)を並べ、取引の種類ごとに中身がどう変わるかを考えます。
判断が分かれやすいところは、取引ごとに違います。
物品では、数量や外観、寸法のように測れる項目が多く、基準を数値で置きやすい反面、抜き取りか全数かという検査方法の違いが合否を左右します。
システム開発では、要件定義書や設計書のどこまでを受入テストの対象にするかで合否の範囲が変わり、テスト項目を発注側と受注側のどちらが用意するかも決めておく必要があります。
業務委託では、成果物が報告書や作業の実施そのものであることが多く、成果物の一覧と「何が提出されたら完了か」を決めておかないと、出来栄えの評価が合否の議論に混ざりやすくなります。
三つの取引に共通するのは、基準の細かさそのものより、基準がどの文書にあり、誰がそれを見て判定するかが決まっているかどうかです。
合否を判定する人と記録の残し方
判定する人を決めていないと、受入部署の担当者が問題なしと判断した後で、実際に使う部署から不具合の指摘が上がり、合否が覆ることがあります。
受注側から見れば、一度合格と聞いたものを後から不合格にされる形になり、取引の信頼関係にも響きます。
契約書や発注書には、判定する部署や役職と、合否を相手に伝える方法を書いておくと、誰の判断が正式なのかがはっきりします。
記録の面では、取適法の対象取引に明確な義務があります。
発注側が検査を行った場合は、検査を完了した日、検査の結果、不合格となった給付の扱いを記録しておく必要があります1。
対象外の取引でも、同じ項目を検収記録として残しておけば、後で不具合が見つかったときに、いつ何を確認して合格としたのかを双方で確かめる材料になります。
| 観点 | 物品 | システム開発 | 業務委託 |
|---|---|---|---|
| 何を基準にするか | 仕様書・図面の数量と品質項目 | 要件定義書・設計書に沿った受入テスト項目 | 成果物の一覧と完了の条件 |
| 誰が判定するか | 受入部署の担当者 | 発注側の検収担当(テスト結果を確認) | 業務を依頼した部署の責任者 |
| どの時点で確定するか | 検査結果の通知 | 受入テスト結果の確認と通知 | 完了報告の確認と通知 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 検収条項
- 仕様書の名称や版を指す
- 判定する部署や役職と通知方法
- 別紙の仕様書
- 受入条件(何を満たせば合格か)
- 具体的な数値や確認項目
- 検査方法
- 全数か抜き取りか
- どの器具で測るか
検査期間とみなし合格:発注側と受注側のどちらに有利かを知って決める
検査期間の決め方
基準が決まったら、次はいつまでに合否を出すかです。
検査期間は、納品から合否の通知までにかけられる期間として契約に書きます。
弁護士の解説では、買主側の立場では検査や通知の期間に余裕を持たせることを、売主側の立場では期間を短くすることを、それぞれ検討すべき点として挙げています6。
同じ条項でも、どちらの立場で読むかで望ましい長さが逆になるわけです。
発注側としては長めに取りたくなりますが、必要な日数は、検査に使う人手と方法から逆算するのが筋です。
全数検査が必要な部品、受入テストに業務部門の参加が要るシステム、内容を読んで確認する報告書では、検査にかかる手間がまったく違います。
世間の相場を探すより、自社の受入作業を一度並べて何日あれば判定できるかを見積もるほうが、受注側にも理由を説明しやすい期間になります。
期間の書き方にも工夫の余地があります。
検査で不適合を見つけるまでの期間、見つけてから相手に通知するまでの期限、修正などを請求できる期限を分けて書くと、「いつまでに何をすればよいか」の解釈が分かれにくくなります。
これは法律の決まりではなく、条項を読み違えないための書き方の提案です。
みなし合格の入れ方と限界
みなし合格とは、検査期間内に発注側から不合格の通知がなければ、合格したものとみなす取り決めです。
前述の解説では、売主側が検討する規定として挙げられています6。
受注側にとっては、発注側が検査を後回しにしても合否が確定し、請求に進めるという安心材料になります。
発注側がこの条項を受け入れるときに誤解しやすいのは、「みなし合格があるから、忙しければ検査を後回しにしても構わない」という読み方です。
実際は逆で、期間が過ぎれば合格が確定するので、検査を後回しにした分だけ不合格を主張する機会を失います。
受注側から示された契約書案にみなし合格が入っていたら、検査期間が自社の受入作業に足りる長さか、不合格の通知の方法と宛先が決まっているかを先に見ておく必要があります。
みなし合格がどこまで有効に働くか、たとえば検査では見つけられない不具合まで合格扱いで片付くのかについては、一般論で言い切れる材料がありません。
後から見つかる不具合の扱いは、検収条項よりも契約不適合責任の条項と期間の定めで決まる部分が大きいため、両方を並べて読むことが欠かせません。
取適法の対象取引で検査完了期日を明示する
自社が取適法の委託事業者に当たる場合、検査期間は当事者どうしの工夫だけでは済みません。
発注時に、検査を行うのであればその検査を完了する期日を、書面などで受注側に明示する義務があります1。
「検査期間は別途協議」のように期日を空けたまま発注する進め方は、この点で問題になりえます。
さらに、検査期間をどれだけ長く取っても、支払期日の上限は受領日から数えます。
検査に余裕を取りたいという発注側の事情と、受領日から支払期日までの期限は、同じ日数の中で両立させなければなりません。
この関係は、支払いの条項を書く段階でもう一度効いてきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注側
- 検査や通知の期間に余裕を持たせる
- みなし合格では検査を後回しにすると不合格を主張する機会を失う
- 受注側
- 検査期間を短くする
- みなし合格で、検査を後回しにされても合否を確定させる
- 先に見る点
- 検査期間が自社の受入作業に足りる長さか
- 不合格の通知の方法と宛先が決まっているか
不合格のときの通知・修正・再検収・返品をどう取り決めるか
不合格の通知に何を書くか
不合格の通知で揉めやすいのは、「不合格です」としか伝わらず、受注側が何を直せばよいか分からない場合です。
通知には、どの納品物のどの項目が、仕様書のどの基準に合わなかったのかを書き、検査の方法と結果を添えます。
先の部品の例なら、測定した個数、ずれていた寸法、図面の許容範囲を並べれば、受注側は自社の測定と比べて反論するか修正するかを判断できます。
契約書には、不合格の通知を検査期間内に行うこと、通知の方法、通知に書く事項を定めておきます。
みなし合格の条項がある契約では、この通知が期間内に届いたかどうかが合否を分けるので、送った日時を後から示せる方法にしておくと安心です。
修正期限と再検収の流れ
不合格を通知した後に何を求められるかは、民法の契約不適合責任が土台になります。
弁護士の解説によれば、売買の買主は、まず修理や代替品の引渡しといった追完を請求でき、相当の期間内に追完されなければ代金の減額を請求できます6。
あわせて契約の解除や損害賠償の請求も可能とされています6。
ただ、法律が用意しているのは選択肢であって、日々の取引をどう回すかまでは決めてくれません。
契約では、修正の期限、修正後に改めて検査する再検収の期間、再検収でも不合格だった場合の扱いを順に書いておきます。
再検収の期間を最初の検査期間と同じにするのか、修正箇所だけを見るので短くするのかも、ここで決めておけます。
再検収でまた不合格になれば、通知・修正・再検収をもう一度繰り返すことになります。
この往復が終わらないまま続かないよう、たとえば繰り返し不合格となった場合は代金減額や解除の協議に移る、といった出口を設けておくと、双方が見通しを持てます。
何回目で切り替えるか、何に切り替えるかは取引の性質で変わるので、双方の協議で決める部分です。
返品・やり直しと支払期日の関係
取適法の対象取引では、不合格後の動きにも制約があります。
公正取引委員会のQ&Aでは、受領した物の返品は受領後速やかに行う場合に限って認められるとされています2。
不合格を出しながら長く手元に置き、後になって返品するという進め方は、この点で問題になりえます。
一方、不適合を理由に受注側がやり直しをした場合は、当初の受領日から60日以内に代金を支払う必要はないとされています2。
不合格が正当で、やり直した成果物を受け取り直す場合には、支払期日の数え方が最初の受領日に縛られないということです。
裏を返せば、合否が曖昧なまま「やり直し」と呼んでも、不適合があったことを示せなければこの扱いの前提が崩れます。
不合格の通知に根拠を書き、検査の記録を残しておくことが、ここでも効いてきます。
対象外の取引では、返品ややり直しの扱いは民法と契約の定めによります。
その場合は、条項に書いた通知・修正・再検収の手順が、そのまま双方の動き方の基準になります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 検査
- 契約で決めた検査期間内に合否を判定
- 合格なら往復を抜ける
- 不合格の通知
- 項目、仕様書の基準、検査の結果を書く
- 修正
- 契約で決めた修正期限までに対応
- 再検収
- 契約で決めた再検収の期間で判定
- 再び不合格なら通知へ戻る
- 繰り返す場合は代金減額や解除の協議へ
検収と支払い・責任期間の関係:検査があっても動かない期限と、契約で決められる期限
検査の有無にかかわらない支払期日と遅延利息
取適法の対象取引では、支払期日は物品などの受領日(役務の提供を委託した場合は役務を提供した日)から60日以内に定めなければならず、これは検査をするかどうかを問いません1。
情報成果物の作成委託についても、Q&Aは同じ扱いを示し、検査が終わっていなくても納期が支払期日の起算日になるとしています2。
支払期日までに支払わなければ、受領日から60日を経過した日から年率14.6%の遅延利息を支払う義務が生じます1。
ここから分かるのは、検収をいくら丁寧に設計しても、支払期日を「検収合格日から何日」とだけ書くと、検査が長引いた場合に法定の上限を超えるおそれがあるということです。
発注側の担当者が受入テストを延ばした分だけ、経理部門の支払いが期限に近づいていく、という状態が起きえます。
取適法の対象であれば、検査期間と社内の支払手続を足しても受領日から60日以内に収まるかを、契約書を作る段階で見ておく必要があります。
対象外の取引では、支払期日の上限はこの法律では決まりません。
それでも、検収と支払いを同じ日に結び付けると、合否で揉めた途端に支払いも止まるという構造は変わりません。
契約不適合の通知期間の起算点
支払いと並んで期限を整理したいのが、検収後に見つかった不具合をいつまで受注側に求められるかです。
弁護士の解説では、民法の売買では、買主は不適合を知った時から一定の期間内に売主へ通知する必要があり、数量の不足はこの制限の対象外で、売主が不適合を知っていたか重大な過失で知らなかった場合も制限は適用されないとされています6。
商人間の売買では、直ちには見つけられない種類や品質の不適合についても、受領から一定期間内の発見と通知が求められます6。
IPAのモデル契約の検討経緯では、ソフトウェア開発の契約について、この期間制限の起算点を検収完了時とし、期間の長さは「〇ヶ月/〇年」と空欄にして、ユーザ企業とITベンダの対話で決めることが望ましいとしています5。
ベンダに故意や重大な過失がある場合は、期間制限を適用しない整理です5。
法律の起算点が「不適合を知った時」であるのに対し、契約で「検収完了時」から数えると決めれば、起算点が日付として確定します。
発注側にとっては期間がいつ終わるかを把握しやすく、受注側にとってはいつまで責任を負うかの見通しが立ちます。
ただし、モデル契約はソフトウェア開発を前提にしたもので、工事などの請負には民法の別の規定が関係します。
物品や工事の契約で同じ起算点を採るかどうかは、取引の性質に合わせて判断する部分です。
検収完了日と支払日を別の条項にする
ここまでを並べると、受領日、検収完了日、不具合を知った日という三つの日付が、それぞれ別の期限の起点になっていることが分かります。
受領日は取適法の支払期日の起点、検収完了日は合否の確定と、契約で決めれば責任期間の起点、不具合を知った日は民法上の通知期間の起点です。

条項を書くときは、この三つの日付を一つの「検収」という言葉に押し込めず、検収条項、支払条項、契約不適合責任の条項にそれぞれ書き分けます。
支払条項には起算日と期日を、検収条項には検査期間と合否の通知を、契約不適合責任の条項には通知期間とその起算点を置きます。
そうすれば、合否で揉めているあいだも支払期日は条項どおりに進み、検収後に見つかった不具合は責任期間の中で扱う、という切り分けが文面から読めるようになります。
| 期限 | 起算点 | 根拠 | 契約で決めること |
|---|---|---|---|
| 支払期日 | 受領日(役務は提供日) | 取適法(対象取引) | 受領日から60日以内で期日を定める |
| 合否の確定 | 納品後の検査 | 契約の検収条項 | 検査期間と不合格の通知方法 |
| 不具合の通知 | 不適合を知った時 | 民法(売買) | 通知期間と起算点を責任条項で定める |
| 請求期間の例 | 検収完了時 | IPAモデル契約(ソフトウェア開発) | 期間の長さを双方の対話で決める |
自社の取引に合わせて条項へ入れる要素と、専門家に相談すべき条件
条項に入れる要素のチェック
ここまでの判断を、契約書案を作るときに見直す項目としてまとめます。
- 検収の基準:仕様書・受入条件の名称と版を条項から指せるか
- 検査方法:全数か抜き取りか、受入テストの項目を誰が用意するか
- 判定者と通知方法:誰の判断が正式で、合否をどう伝えるか
- 検査期間:自社の受入作業で足りる長さか、取適法の対象なら検査完了期日を発注時に明示しているか
- みなし合格:入れるかどうか、入れるなら不合格の通知期限と宛先
- 不合格時の手順:通知に書く事項、修正期限、再検収期間、繰り返し不合格になった場合の扱い
- 支払条項:起算日と期日が検収とは別に書かれているか
- 契約不適合責任:通知期間と起算点
- 検収記録:検査完了日、結果、不合格となった給付の扱い
受注側から契約書案を受け取った場合も、同じ項目で読むと、空欄や相手に有利な書き方がどこにあるかが見えます。
特に、短い検査期間とみなし合格の組み合わせや、支払期日が検収合格日だけに結び付いている書き方は、発注側の立場で見落としやすいところです。
取適法の対象かを確かめる
ここまでに出てきた支払期日の上限、検査完了期日の明示、返品の制限は、自社が取適法の委託事業者に当たり、相手が中小受託事業者に当たる取引でだけ働く決まりです。
対象かどうかは、取引の類型(製造委託、役務提供委託など)、双方の資本金と従業員数、委託の内容で判断します。
公正取引委員会は、製造委託等では従業員数300人、役務提供委託等では従業員数100人を基準とし、資本金の基準に当たらない場合でも従業員数の基準に当たれば適用対象になると示しています3。
この従業員数は、委託をした時点で常時使用している従業員の数で判断します2。
資本金の金額の基準は取引の類型ごとに定められているので、公正取引委員会の解説資料で自社と相手の数字を当てはめて確かめておく必要があります。
相手の会社の規模が変われば、同じ取引先でも対象かどうかが変わることがあります。
契約を更新するたびに判定し直す運用にしておくと、条項の前提と法令の扱いがずれたまま取引が続くことを避けやすくなります。
専門家に確認すべき個別事情
この記事は検収条項を考えるための整理であり、個別の契約に対する法的な助言ではありません。
次のような事情がある場合は、締結前に弁護士などの専門家に文言を見てもらうのが確実です。
- 自社や相手が取適法の対象になるか判断がつかない
- 設計から製造まで一括で頼むなど、売買・請負・業務委託のどれに当たるかがはっきりしない
- 受注側から示された契約書案に、みなし合格や短い検査期間が入っている
- 契約不適合の通知期間や起算点を、法律の定めと違う内容にしたい
- 検査では見つけにくい不具合が出やすい製品やシステムを扱う
相談するときは、仕様書、発注書、相手から受け取った契約書案、自社の受入作業の流れをそろえておくと、どの条項をどう直すかの話が具体的になります。
検収の揉め事は文言だけでなく、実際の受入作業と条項が合っていないことからも起きるため、両方を並べて見てもらうことに意味があります。
検査期間や支払期日を現実に合った長さで書くには、自社の発注から受入、支払いまでの流れのどこで期日を管理しているかを先に把握する必要があるため。
受領日、検収完了日、支払期日を今どの書類や画面で記録しているかを整理し、条項に書こうとしている期限と実際の業務がずれている箇所を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 合否の物差し | 仕様書・受入条件を条項から引き、検査方法と判定者を決める |
| 検査期間 | 自社の受入作業から必要な日数を見積もる。取適法の対象なら検査完了期日を発注時に明示 |
| みなし合格 | 期間内に不合格を通知しなければ合格が確定する。通知の方法と期限を先に確認 |
| 不合格時 | 通知内容・修正期限・再検収期間・繰り返し不合格時の出口を決める |
| 支払い | 取適法の対象なら受領日から60日以内。検収とは別の条項に書く |
| 責任期間 | 通知期間と起算点を契約不適合責任の条項で定める |

検収条項は文言を整えるだけでは働かず、受入作業や支払いの運用と合っていて初めて揉め事を減らせるため。 発注書から検収記録までの流れを見直し、検査完了日や不合格となった給付の扱いを記録として残せているかを確かめられます。
よくある質問
みなし合格を入れておけば、発注側が検査を放置しても問題ないか
問題があります。
みなし合格は、検査期間内に不合格の通知がなければ合格が確定する取り決めで、弁護士の解説では売主側が検討する規定として挙げられています6。
検査を放置すれば、その分だけ不合格を主張する機会を失います。
商人間の売買では買主に遅滞なく検査する義務もあり6、取適法の対象取引では検査を完了する期日を発注時に明示する必要があります1。
検収書にサインした後でも、不具合が見つかったら追完や減額を求められるか
検収に合格したことだけで請求の道が閉じるわけではなく、契約不適合責任の条項と期間の範囲で求めることになります。
民法の売買では、不適合を知った時から一定の期間内に通知する必要があり、商人間の売買では、すぐには見つからない不適合にも受領から一定期間内の発見と通知が求められます6。
ソフトウェア開発のモデル契約のように、起算点を検収完了時と定める例もあります5。
実際に請求できるかは契約の文言と取引の種類で変わるため、専門家に確認してください。
検収と受領はどう違い、どちらが支払期日の起算点になるか
受領は納品物を受け取った状態、検収は合否を確定させる手続です。
取適法の対象取引では、納品させた時点で受領となり、検査中に納期が来た場合は納期が受領日となって、そこが支払期日の起算点になります2。
対象外の取引では、契約で定めた起算日によります。
自社が取適法の対象かどうかは、何を見て判断するか
取引の類型、双方の資本金と従業員数、委託の内容で判断します。
従業員数は、製造委託等では300人、役務提供委託等では100人が基準で、資本金の基準に当たらなくてもこの基準に当たれば対象になります3。
従業員数は委託をした時点の常時使用する従業員の数で判断します2。
資本金の金額基準は公正取引委員会の資料で確かめてください。
仕様書が無い物品や業務委託では、検収基準をどう書けばよいか
契約書の別紙や発注書に受入条件を書き出す方法が考えられます。
物品なら品名・数量・確認する品質項目・検査方法・判定者、業務委託なら成果物の一覧と、何が提出されたら完了とするかを決めておきます。
これは編集上の提案で、公的な雛形に基づくものではありません。
取適法の対象取引では、検査を行う場合の検査完了期日の明示も必要です1。
IPAのモデル契約書は物品の売買や工事にも使えるか
IPAのモデル取引・契約書はITシステムの取引向けで、物品の納入や工事は対象外です4。
契約時に検収方法の共通認識を持つという考え方は参考になりますが、条項は取引の種類に合わせて作る必要があります。
Word形式の文書は自由にカスタマイズできるものの、参照法令は公表当時の内容なので現行法との確認が必要です4。
- 1 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「中小受託取引適正化法(取適法)よくある質問コーナー」(2026年)
- 3 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(特設ページ)」(2026年)
- 4 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年、最終更新2025年)
- 5 出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「モデル契約の検討経緯(契約不適合責任の期間制限)」(2019年)
- 6 出典:BUSINESS LAWYERS(弁護士監修)「検査・契約不適合責任条項のポイント」(2026年確認)
画像の出典元
- Mechanic in workshop handling greasy metal parts on workbench, depicting repair process./Photo by cottonbro studio on Pexels
- Businessperson writing on a document at a wooden desk, with focus on hands and pen./Photo by MART PRODUCTION on Pexels