◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 取引先ごとの通信手順と経路を台帳にすると、止まったのが一社か複数社かで疑う場所を絞れる
- 監視は届いたデータを見るだけでなく、送受信予定表と照らし合わせて「届いていない」に気付ける形にする
- 再送は取引先の受信の有無を確かめてから行い、二重発注を避ける
- 電話網型の手順でつながる取引先があれば、INSネット関連サービスの提供終了予定(2028年12月末)を期限に、取引先ごとに時期を分けて移行を計画する
- 変換や通信は委託できても、取引先との取り決め・業務判断・台帳の管理は自社に残す
目次

EDIが止まったとき、まず見るべきは「通信手順」と「取引先ごとの経路」
朝の確認で、ある取引先からの出荷データだけが届いていない。
発注は送ったはずなのに、相手は受け取っていないと言う。
こうした場面で原因の見当が付かない理由の一つは、取引先ごとにどの通信手順と経路でつながっているかが、手元で一覧になっていないことです。
まず取引先ごとの通信手順を台帳にします。
そのうえで、EDIの運用を毎日の監視、障害の切り分けと連絡、変更への対応に分けて考えると、見る場所と連絡先が絞れます。
電話網型の手順でつながる取引先がある場合は、INSネット関連サービスの提供終了予定(2028年12月末)が切替の期限になります2。
取引先ごとの通信手順を一覧にする
EDI(企業間で受発注などのデータを決まった形式で送り合う仕組み)が「止まった」と感じる場面は、実際にはいくつかに分かれます。
全取引先への発注が出ていないのか、特定の一社からの出荷データだけが来ないのか、届いたデータが取り込めないのか。
小売の側は発注データを送り、取引先から出荷や請求のデータを受け取る立場なので、送る向きと受ける向きでも見る場所が変わります。
状況を取引先単位で把握できれば、どこまでが正常で、どこから先が止まっているかの線が引けます。
取引先単位で見る理由は、つながり方が取引先ごとに違いうるからです。
多数の小売店とEDIを行うメーカーの事例では、JCA手順や全銀手順といった従来の通信手順から別の手順へ変えることが大きな負担になったと紹介されています3。
これは2016年のメーカー側の話ですが、相手ごとに異なる手順を抱える構図は、受ける側の小売にも当てはまりえます。
一方で、流通BMS(消費財流通の標準を目指すEDI標準)は、電子取引文書の形式だけでなく、通信プロトコルやセキュリティも仕様の対象にしています1。
つまり同じ「EDI」でも、従来の手順でつながる取引先と、標準に沿ってつながる取引先が、一つの社内に並んでいることがあります。
そこで最初に作りたいのが、取引先ごとの通信手順を一行ずつ並べた台帳です。
項目は多くなくてかまいません。
少なくとも次の内容があれば、止まったときに見る場所と連絡先がその場で分かります。
- 取引先名と、やり取りするデータの種類(発注・出荷・受領・請求のどれか)
- 通信手順の名前と経路(電話網型か、IP網型か、取引先の画面を使うWeb-EDIか)
- 送受信の時刻と頻度
- 合意している標準の版(流通BMSなら、どの版で取り決めたか)
- 変換や通信を担う機器・サービスと、その保守の窓口
- 取引先側の技術の窓口と業務の窓口
台帳が効くのは、障害が一社で起きたのか、複数社で同時に起きたのかを見分けるときです。
同じ経路を使う取引先がそろって止まっていれば、共通の部分、つまり自社の送受信の仕組みや通信路を先に疑えます。
一社だけなら、その取引先側の事情や、その取引先向けの設定に目を向けます。
この見分けは、経路が一覧になっていなければできません。
電話網型とIP網型で疑う場所が変わる
台帳の中でも、疑う場所を大きく分けるのは「電話網型」か「IP網型」かの違いです。
電話網型は、INSネットのような固定電話網を通信路にして、JCA手順や全銀手順などで相手と接続する形です。
この場合、回線の契約や、回線につながる通信機器、相手側の受け口が確認の対象になります。
NTT東日本は、ISDNの終了によってPOSやEDIシステムが影響を受ける可能性があると説明しています2。
回線サービス側の変化そのものが原因の候補に入る点が、電話網型の特徴です。
IP網型は、インターネットなどのIP網を通信路にする形で、流通BMSに沿った接続や、取引先の画面で受発注を扱うWeb-EDIがここに入ります。
流通BMSに沿った接続でも手順は一種類ではないため、台帳には取引先ごとに実際に使っている手順の名前を書いておきます。
こちらで確認の対象になるのは、接続の設定や認証の情報、相手のサーバー側の状況です。
また、合意した標準の版とデータが合っているかどうかが、届いたデータを取り込めない原因になることがあります。
Web-EDIの場合は、担当者が取引先の画面からデータを取り出し、自社のシステムへ取り込む手作業が挟まることがあります。
そうした取引先では、通信ではなく取り出し作業の抜けが「届いていない」の原因になりえます。
台帳に経路を書くときは、機械が送受信する部分と人が操作する部分を分けておくと、疑う順番を誤りにくくなります。
| 観点 | 電話網型の手順 | IP網型の手順 |
|---|---|---|
| 通信路 | INSネットなどの固定電話網 | インターネットなどのIP網 |
| 手順の例 | JCA手順・全銀手順など | 流通BMSに沿った接続・Web-EDI(手順は複数) |
| 止まったときに疑う場所 | 回線の契約・通信機器・相手の受け口 | 接続設定・認証情報・相手のサーバー |
| 期限と変更の論点 | INSネット関連サービスの提供終了予定 | 合意した標準の版の更新 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 電話網型の手順
- 通信路はINSネットなどの固定電話網、手順はJCA手順・全銀手順など
- 疑う場所は回線の契約・通信機器・相手の受け口
- INSネット関連サービスの提供終了予定(2028年12月末)が切替の期限
- IP網型の手順(流通BMSに沿った接続)
- 通信路はインターネットなどのIP網、手順は一種類ではない
- 疑う場所は接続の設定・認証の情報・相手のサーバー
- 合意した標準の版とデータが合っているかを確かめる
- Web-EDI
- 取引先の画面で受発注を扱う
- 取り出し作業の抜けが「届いていない」の原因になりうる
- 機械が送受信する部分と人が操作する部分を分けて台帳に書く
発注・出荷・受領・請求の各データで、毎日の監視・障害対応・変更対応に何をするか
毎日の監視:送受信の有無と件数
台帳ができたら、次は日々の運用を毎日の監視、障害対応、変更対応の三つに分けて考えます。
小売の側から見ると、流れは発注データを送るところから始まり、取引先が出荷した荷の明細である出荷データを受け取り、検品の結果である受領データを返し、最後に請求データを受け取る、という順に進みます。
どのデータにも、いつ送る、いつ届くはずという予定があります。
毎日の監視で大事なのは、届いたものを見るだけでは「届いていない」に気付けないという点です。
エラーの通知は、処理が動いて失敗したときには出ても、そもそも相手が送ってこなかったときには出ないことがあります。
そのため、取引先とデータの種類ごとに予定時刻を並べた送受信予定表を用意し、予定に対して実績があったかを照らし合わせる形にします。
予定時刻を過ぎても受信がなければ、それが最初の合図になります。
件数も手掛かりになります。
自社の発注システムで確定した件数と実際に送った件数、送った発注に対して届いた出荷データの件数を並べておくと、一部だけ抜けた状態を見つけやすくなります。
ただし、件数の差がそのまま障害を意味するわけではありません。
欠品や分納で出荷が発注より少ないこともあるため、差が出たときは明細を見て、取引上の理由か送受信の問題かを確かめます。
曜日や季節で件数が大きく動く業態なら、前日ではなく前週の同じ曜日と比べるほうが判断しやすいでしょう。
障害対応:エラーの記録と再送の判断
異常に気付いたら、まず記録を残します。
時刻、取引先、データの種類、画面やログに出た表示、誰が何をしたか。
この記録は、その場の切り分けに使うだけでなく、同じ取引先で同じ表示が繰り返されていないかを後で見返すときや、保守を委託している先と原因を話し合うときの材料になります。
記録がないと、復旧した後に「前にもあった気がする」という印象しか残りません。
障害対応で判断が分かれやすいのが、再送するかどうかです。
自社の画面では送信に失敗したように見えても、相手側では受け取っていた、ということは起こりえます。
その状態で発注データを送り直すと、取引先で同じ発注が二重に取り込まれるおそれがあります。
再送の前に取引先へ受信の有無を確かめ、受け取っていないと分かってから送り直す、という順番を決めておくと、慌てた再送による二重発注を避けやすくなります。
再送を実行する人と、業務として承認する人を分けるかどうかも、社内で決めておきたい点です。
変更対応:版・マッピングの確認
変更対応は、毎日の監視とは違い、予定を立てて進める仕事です。
きっかけは、取引先側の変更、自社側の変更、標準そのものの更新に分かれます。
自社側では、店舗や商品のコードが増えたり、発注の締め時刻を変えたりすると、送るデータの中身や送受信予定表が変わります。
標準の更新も運用の作業になります。
流通BMSでは、基本形Ver2.2.2が2025年に公開され、Ver2.2.1の資料にあった誤記を項目一覧とマッピングシートで訂正しています1。
マッピングとは、自社システムのデータ項目を、標準のメッセージのどの項目に当てはめるかを決めた対応表のことです。
誤記の訂正のように小さく見える更新でも、自社の変換設定がその箇所に関わっていれば見直しが必要になります。
同じ年には基本形Ver2.2を反映した運用ガイドラインも公開されており、マッピングシートチェックなどの支援資料も用意されています1。
更新が出たら、自社のマッピングに関わる箇所があるかを確かめ、関わるなら取引先といつ合わせるかを決める、という流れになります。
三つの仕事は別々に見えて、実際には一巡でつながっています。
監視で異常に気付き、記録して切り分け、再送や修正を判断して取引先と合わせる。
対応が終わったら、原因と取った対応を台帳や送受信予定表へ戻しておくと、次の監視の基準が実態に合ったものになります。
この戻す作業を省くと、古い予定表のまま監視を続けることになり、正常な状態を異常と見誤る原因にもなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 送受信予定表と実績を照らし合わせる
- 異常を記録して切り分ける
- 再送や修正を判断し取引先と合わせる
- 原因と対応を台帳・予定表へ戻す
データが届かないとき、自社・通信網・取引先・保守のどこを疑い、誰に連絡するか
切り分けの順序(提案)
データが届かないときに原因をどの順で疑うかは、契約や仕組みの構成によって変わります。
ここでは一般的な通信の考え方に沿って、自分で確かめられるところから外側へ順に疑っていく進め方を提案します。
自社の中で分かることを先に済ませておけば、外部へ連絡したときに状況を具体的に伝えられ、やり取りの往復が減ります。
- 自社の送受信処理:送信の処理が予定どおり動いたか、受信を待つ処理が止まっていないかを、送受信ログで確かめる
- 変換:自社のデータを標準の形式に変える処理(受信時はその逆)でエラーが出ていないかを見る
- 通信路:同じ経路を使う他の取引先が正常かを台帳で確かめる。
そろって止まっていれば、通信路や共通の機器を疑う - 取引先側:相手が送信したか、受け取ったかを、取引先の技術窓口に確かめる
- データの中身:届いたのに取り込めない場合は、取り決めた版やマッピングと実際のデータが合っているかを見る
三番目の通信路で、電話網型の取引先だけが止まっている場合は、回線サービス側の変化も疑う範囲に入ります。
NTT東日本の案内では、INSネットのディジタル通信モードは2024年から段階的に終了しています2。
それまで動いていた電話網型の接続が急に不安定になったときは、回線や通信機器の状態とあわせて、提供条件の変化に当たっていないかを通信事業者の案内で確かめます。
この順序はあくまで目安です。
委託先が通信と変換をまとめて担っている構成なら、二番目と三番目は委託先に一度に確かめてもらうほうが早いこともあります。
大事なのは、どこまで自社で確かめたかを記録に残し、次に連絡する相手へその範囲をそのまま渡すことです。
連絡経路表に載せる項目
切り分けの各段階には、それぞれ連絡すべき相手がいます。
障害の最中に連絡先を探し始めると時間がかかるため、台帳とは別に、疑う場所と連絡先を結んだ連絡経路表を用意しておきます。
載せておきたい項目は次のとおりです。
- 社内の窓口:送受信の仕組みを担うシステム担当と、発注や検収の業務を判断する担当
- 保守の窓口:変換や通信を委託している先の連絡先、受付時間、時間外の連絡手段
- 通信路の窓口:回線や通信サービスの契約先と、契約番号など問い合わせに必要な情報
- 取引先の窓口:取引先ごとの技術担当と業務担当の両方
- 連絡の順番:どの段階で誰に連絡し、誰が取引先へ状況を説明するか
- 伝える内容:発生時刻、データの種類、件数、表示されたエラー、自社で確かめた範囲
取引先の窓口を技術と業務の二つに分けて書くのは、確かめたい内容が違うからです。
受信の有無やエラーの内容は技術担当に、納品や検収をどう進めるかは業務担当に聞くことになります。
どちらか一方しか分からないと、受発注が止まっている間の業務の手当てが遅れます。
障害時に誰がどこまで責任を持つかは、委託契約や取引先との取り決めによって決まります。
そのため連絡経路表を作るときは、保守契約の仕様書や取引先との取り決め書面を手元に置き、書かれている範囲と実際の連絡先が食い違っていないかを照らし合わせます。
標準の使い方そのものに疑問がある場合は、流通BMS協議会が投書箱や問い合わせフォームを設けています1。
ただしこれは標準に関する相談の窓口で、目の前の障害を復旧するための連絡先ではない点は分けておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社の送受信処理
- 送受信ログ
- 社内のシステム担当
- 変換
- 変換のエラー表示
- 変換を担う保守の窓口
- 通信路
- 同じ経路の他の取引先の状況
- 回線・通信サービスの契約先
- 取引先側
- 相手の送信・受信の有無
- 取引先の技術担当
- データの中身
- 取り決めた版とマッピング
- 取引先と保守の窓口
電話網型EDIの終了予定と、取引先追加・仕様更新で増える作業
INSネット終了予定と対象になる条件
電話網型の手順でつながる取引先がある場合、運用の計画には期限が加わります。
NTT東日本の案内によると、INSネットのディジタル通信モードは2024年から段階的に終了し、補完策を含むINSネット関連サービスは2028年12月末に提供を終える予定です2。
新規の申込みも2024年に締め切られています2。
この期限は、固定電話網のINSネットを通信路に使っているEDIにだけ当てはまり、IP網でつながる取引先には関係しません。
新規の申込みが終わっているということは、電話網型の経路を新しく増やす選択肢がすでにないということでもあります。
台帳で電話網型の取引先を洗い出し、それぞれをいつ、どの手順へ移すかを決めることが、この期限に対する実際の準備になります。
終了予定はNTT東日本のページに記載された内容で、変更される可能性もあります。
回線をほかの事業者と契約している場合は、その事業者の最新の案内で日付と条件を確かめてください。
NTT東日本は、システムの刷新には時間がかかるため早めの対応が必要だとも説明しています2。
取引先1社の切替にかかる調整
取引先との切替は、自社の設定を変えれば終わる作業ではありません。
相手と新しい手順や版を取り決め、接続の試験を行い、切替の日を合わせ、切替の後もしばらくはデータが予定どおり届くかを見守る、という一連の調整が取引先ごとに発生します。
相手の準備が整わなければ、自社だけ先に進めることもできません。
先に挙げたメーカーの事例では、切替が期限の直前に集中すると間に合わない取引先が出るおそれがあり、時期を分散させる必要があるとされています3。
2016年の、多くの小売店と取引するメーカー1社の話ですが、相手の数だけ調整が積み重なるという点は、多くのメーカーや卸とつながる小売の側でも同じです。
EDIは1社だけでは効果が出にくく、取引先の状況も踏まえて判断する必要があるという指摘もあります4。
取引先によってシステムの更新時期や担当者の数が違うため、全社を一律の時期にそろえるより、準備の進んだ取引先から順に移す計画のほうが無理がありません。
台帳には、電話網型の取引先ごとに、移行先の手順、相手の準備状況、予定する時期を書き足しておきます。
これで、期限までに残っている取引先がどれだけあり、どこで調整が止まっているかが一覧で見えるようになります。
標準の版更新と取り決めの確認
取引先の追加も、変更対応の中で作業量が読みにくい仕事です。
流通BMSの導入企業は2025年6月時点で21,600社以上とされており1、新しく取引を始める相手がすでに流通BMSで他社とつながっていることも考えられます。
その場合でも、どの版を使うか、どのデータをやり取りするか、試験をいつ行うかは、その取引先との間で改めて決める必要があります。
標準の版が更新されたときに取り決め直すのは、主に使う版、移行の時期、試験の範囲です。
前の節で見たとおり、誤記の訂正にとどまる版でも、自社のマッピングに関わる箇所があれば影響を受けます。
取引先によって移行の時期がずれると、しばらくは版の違う取引先が混在するため、台帳の版の欄は合意した時点で更新しておきます。
口頭で合わせた版は担当が替わると分からなくなりやすいので、書面やメールなど後から確かめられる形で残しておくと安心です。

自社で持つ範囲と委託する範囲の分け方
委託に出しやすい作業と自社に残す判断
ここまでの仕事を全部自社で持つか、一部を外に任せるかは、担当者の数や取引先の数によって答えが変わります。
考える手掛かりとして、公的な枠組みの例を一つ見ておきます。
中小企業共通EDIでは、プロバイダーが各社の情報を共通の形式へ変換するため、各社は既存の独自システムを使い続けられる仕組みになっています4。
導入にあたっては、ITコーディネータ協会が無料の導入相談や導入後の運用支援を行うと紹介されています4。
これは2018年時点の情報で、中小企業共通EDIは流通BMSの運用委託とは別の仕組みです。
それでも、変換や通信といった技術的な部分を外部が担い、各社は自分の業務とシステムを続けるという分け方は、委託範囲を考えるうえで参考になります。
変換や通信を外に出しても、どの取引先とどの版で取引するか、再送するか、いつ切り替えるかといった判断は、取引の当事者である自社に残ります。
この考え方で分けると、自社に残す仕事、委託しやすい仕事、双方で取り決めておく仕事の三つに整理できます。
自社に残すのは、取引先との版や切替時期の取り決め、再送や修正の業務上の判断、そして台帳そのものの管理です。
委託しやすいのは、送受信の監視、変換設定の作成や修正、通信機器やサービスの保守といった、手順が決まっていて専門の知識が要る作業です。
そのあいだにあるのが、障害時の連絡の順番と時間帯、再送を実行する人と承認する人、記録の受け渡し方で、ここは自社と委託先が文書で合意しておく部分になります。
台帳を自社に残すのは、委託先を見直すときに、取引先ごとの経路や取り決めの記録まで一緒に手放さないためです。
状況別の分け方(提案)
どこまで外に出すかは、次のような状況の違いから考えるのが一つの方法です。
いずれも編集部の提案で、決まった基準があるわけではありません。
- 通信手順の種類が多い:電話網型と複数のIP網型が混在していると、それぞれの機器や設定の知識が要ります。
通信と変換の保守は外に出し、自社は台帳と取引先との調整に集中する分け方が考えられます。 - 担当者が少ない:一人で見ていると、休みや不在のときに監視が途切れます。
予定時刻の監視と一次連絡を委託し、再送や業務判断の基準を文書にして渡しておくと、不在時にも判断が止まりにくくなります。 - 取引先が少なく、経路がそろっている:見る場所が限られるため、日々の監視は自社で持ち、障害の調査や設定変更のときだけ外部に頼る形でも回る場合があります。
- 電話網型からの移行が残っている:移行が終わるまでは、通常の運用に切替の調整が重なります。
移行の期間だけ外部の手を借りる分け方もあります。
どの分け方を取っても、委託先が見ているのは渡された範囲だけです。
取引先が版の更新を予定している、来月から店舗が増えるといった業務側の予定は、自社から伝えなければ委託先には届きません。
委託の範囲を決めるときは、こうした情報を誰がいつ委託先へ渡すかまで含めて決めておくと、変更のたびに確認が抜けることを防ぎやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 自社に残す
- 取引先との版・切替時期の取り決め
- 再送や修正の業務上の判断
- 台帳の管理
- 双方で取り決める
- 障害時の連絡の順番と時間帯
- 再送を実行する人と承認する人
- 記録の受け渡し方
- 委託しやすい
- 送受信の監視
- 変換設定の作成・修正
- 通信機器・サービスの保守
委託先の見直し・担当交代で確認する契約・手順書・引き継ぎ項目
引き継ぎ時に渡す台帳の項目
担当が替わるときや委託先を見直すときに受発注が止まりやすいのは、前任者の頭の中にだけあった情報が抜け落ちるからです。
ここまでに作ってきた台帳と表をそろえて渡せば、引き継ぎの大部分はそのまま済みます。
- 取引先台帳:取引先ごとの通信手順、経路、合意した版、データの種類
- 送受信予定表:取引先とデータの種類ごとの予定時刻と、普段の件数の目安
- 連絡経路表:社内、保守、通信路、取引先の窓口と連絡の順番
- 障害記録:過去の障害の時刻、表示、原因、取った対応
- 切替計画:電話網型の取引先の移行先、相手の準備状況、予定時期
- 標準側の資料の置き場所:流通BMSの運用ガイドライン、マッピングシートチェック、e-learningなど1
書類を渡すだけでなく、前任者がいるうちに一度、予定時刻の照合と、一社分の切り分けを一緒にたどっておくことを勧めます。
実際に画面を開いてみると、台帳に書かれていない手作業や、特定の取引先だけに必要な操作が見つかることがあります。
見つかった作業は、その場で台帳か手順書に書き足しておきます。
引き継ぐ側にとっては、どの記録を見れば何が分かるかを、手を動かして覚える機会にもなります。
契約で確認したい点(提案)
委託先を見直すときは、契約書や保守の仕様書で次の点がどう書かれているかを確かめておきたいところです。
ここに挙げるのは、ここまでの運用の流れから見て、抜けると困る点の提案です。
- 監視の範囲と時間帯:どのデータの、どの時間帯の送受信を見るのか。
送受信予定表と突き合わせて、誰も見ていない時間がないかを確かめる - 障害時の連絡:誰に、どの手段で、どこまで調べた段階で連絡が来るのか
- 変更の扱い:変換設定の修正、取引先の追加、標準の版更新への対応が、通常の作業に含まれるのか、都度の依頼になるのか
- 設定と記録の引き渡し:委託先を替えるとき、変換設定やマッピング、障害記録を受け取れるか
- 通信路の変更への対応:電話網型からの移行作業を、どこまで担うのか
このうち見落とされやすいのが、設定と記録の引き渡しです。
マッピングや変換の設定が委託先の環境にしかないと、委託先を替えるときに取引先ごとの設定を作り直すことになり、その間の切替の調整が取引先の数だけ増えます。
契約を結ぶ時点で、終了時に何を受け取れるかを決めておけば、見直しの判断を、設定を作り直す負担の重さに左右されずに行えます。
変更の扱いも、版の更新や取引先の追加がある年とない年で、作業の見通しが変わる部分です。
前の節で見たとおり、標準の版は誤記の訂正でも更新されます。
どこまでが契約内の作業かを事前に分けておくと、更新が出るたびに依頼内容の確認から始める手間が減り、取引先と合わせる時期も決めやすくなります。
取引先ごとの通信手順や経路が社内のどこにも一覧になっていない場合、台帳を作り始めた段階で、どの欄を誰に確かめればよいか分からず手が止まりがちです。
相談の場では、手元の資料からどの取引先の手順が分かっていて、どこを取引先や委託先へ確かめる必要があるか、電話網型の経路が残っていないかを一緒に整理できます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 最初の一歩 | 取引先ごとの通信手順・経路・合意した版を台帳にする |
| 毎日の監視 | 送受信予定表と実績・件数を照らし合わせ、届いていないことに気付く |
| 障害時 | 自社の処理、変換、通信路、取引先側、データの中身の順に疑い、記録を残す |
| 再送 | 取引先の受信の有無を確かめてから送り直す |
| 電話網型の期限 | INSネット関連サービスは2028年12月末に提供終了予定(NTT東日本の案内) |
| 委託の分け方 | 監視・変換・通信は外に出せても、取り決め・業務判断・台帳は自社に残す |
| 引き継ぎと契約 | 台帳類をそろえ、設定と記録を受け取れるかを契約で確かめる |

委託範囲や契約の見直しは、自社に残す業務判断と委託先の作業の境目を、社内だけで引くのが難しい部分です。 相談では、いまの契約書や手順書を前提に、自社に残す判断と外に出せる作業の線引き、引き継ぎで抜けやすい項目を確かめられます。
よくある質問
取引先ごとの通信手順は、どう調べて台帳にまとめればよいですか
自社側の送受信の仕組みや変換の設定、保守を委託している先が持つ構成の資料、回線の契約書、取引開始時の取り決め書面を突き合わせると、多くの取引先の手順と経路が分かります。
それでも不明な取引先は、相手の技術窓口に、使っている手順の名前、接続先、合意している版を聞きます。
最初の段階では、電話網型かIP網型かWeb-EDIかが分かれば、止まったときに疑う場所を分けるという目的は果たせます。
流通BMSの版が更新されたとき、取引先と何を取り決め直す必要がありますか
主に、使う版、移行の時期、試験の範囲と日程です。
流通BMSでは誤記の訂正にとどまる版も公開されており1、自社のマッピングに関わる箇所があれば変換設定の見直しが必要になります。
取引先ごとに移行時期がずれると版の違う取引先が混在するため、合意した内容は書面やメールで残し、台帳の版の欄を更新しておきます。
INSネットを使うEDIが自社にあるかは、どう確認すればよいですか
台帳の手順欄に、JCA手順や全銀手順など電話網を使う手順の取引先があるかを見ます。
あわせて、EDIに使っている回線の契約内容を契約先に確かめ、保守を委託している場合は委託先に通信の構成を聞きます。
該当する経路があれば、NTT東日本の案内ではINSネット関連サービスは2028年12月末に提供終了予定です2。
日付は変更される可能性があるため、契約している事業者の最新の案内で確かめてください。
担当交代のとき、最低限どの情報を引き継げば受発注が止まりませんか
最低限そろえたいのは、取引先台帳、送受信予定表、連絡経路表の三つです。
どの取引先とどの経路でつながり、いつ何が届くはずで、止まったら誰に連絡するかが分かれば、日々の監視と一次対応は続けられます。
そのうえで障害記録と切替計画を渡し、前任者がいるうちに一社分の切り分けを一緒にたどっておくと、書かれていない手作業に気付きやすくなります。
取引先から通信方式の変更を依頼されたとき、何を確認してから受けるべきですか
新しい手順の名前と使う版、接続の試験の日程、切替の日、切替後の確認の進め方を確かめます。
自社側では、変換や通信の設定を誰が変えるのか、委託している場合はその作業が契約の範囲に入るのかも確かめておきます。
ほかの取引先の切替と時期が重なると調整が追いつかなくなるおそれがあるため3、台帳の切替計画と照らして時期を決めると無理がありません。
- 1 出典:流通システム標準普及推進協議会(流通BMS協議会)/GS1 Japan「流通BMS(流通EDI標準)」(2025年)
- 2 出典:NTT東日本「INSネット(ディジタル通信モード)に関する案内」(2026年時点の記載)
- 3 出典:日経BP(日経クロステック)「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
- 4 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
画像の出典元
- Two colleagues reviewing documents in a modern office setting, focused and professional./Photo by Gustavo Fring on Pexels
- Close-up of an employee sorting documents with sticky notes and pens on a wooden desk./Photo by RDNE Stock project on Pexels