◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- BtoB通販を小規模で始めるときは、システムを選ぶ前に、取引先の確認方法、取引先別の卸価格、支払条件と出荷の締めを決める。
- 価格が全取引先で同じ、支払いがカードや前払い、誰でも注文できてよい、の三つがそろえば一般向けのカートで始めやすく、どれかが外れるとBtoB向けの機能が要る。
- 最初は条件が単純な一部の取引先と定番品で試し、電話・FAX・メールは止めずに併用して、経路ごとの注文件数と書き写しの件数を数える。
- インボイス発行事業者は6項目をそろえた請求書を出し、取引先別の価格と請求書の金額は同じ単価の表から作る。
- 仕組みは料金だけでなく、取引先別価格、請求書払い、取引先の承認、受注データの出力、運用支援の項目で同じ形の答えをそろえて比べる。
目次

電話・FAX・メール受注をそのまま続けるか、ネットで受けるか迷ったときの見分け方
取引先からの注文が電話・FAX・メールに散らばり、転記と確認に追われている。
あるいは法人向けのネット販売を始めたいのに、一般向けのネットショップと何が違うのかが見えない。
どちらの場合も、BtoB通販を小規模で始める最小構成は、システムを選ぶ前に取引の取り決めを決めることです。
決めるのは、取引先の確認方法、取引先ごとの価格、支払条件と出荷の締めです。
その中身によって、一般向けのカートで足りるか、BtoB向けの機能が要るかが分かれます。
最初は一部の取引先と商品で試し、今の受注経路は止めずに併用します。
困っているのは転記か、新しい販路か
ネット受注を考え始める理由は、大きく二つに分かれます。
一つは、すでに取引のある店舗や事業者から電話・FAX・メールで注文が届き、それを販売管理の表や出荷指示へ書き写す作業が重くなっている場合です。
もう一つは、これまで取引のなかった事業者へ、ネットを入口に新しく売りたい場合です。
前者では、価格や支払条件はすでに取引先ごとに決まっています。
ただ、その中身が担当者の記憶や個別の見積書、表計算のファイルに散らばっていることがあります。
電話で受けた注文を書き取り、FAXの手書きを読み取り、メールの本文から品番と数量を拾う。
どの経路でも、届いた注文を自社の形式へ書き直す人がいて、読み違いや書き漏れがあれば取引先へ確認の連絡を入れることになります。
後者では、そもそも取引条件がまだ決まっていません。
誰に売るのか、価格をいくらにするのか、代金をいつどう受け取るのかを、ネットの画面を作る前に決める必要があります。
出発点は違いますが、行き着く作業は同じです。
前者は散らばった条件を書き出してそろえる作業、後者は条件を新しく決める作業で、いずれも取引の取り決めを文字にすることから始まります。
ネットに移すと変わること、変わらないこと
ネット受注で変わるのは、注文を受け取る形です。
取引先が自分で品番と数量を選んで送れば、受け手側が注文内容を書き写す手間は減ります。
注文が同じ項目の並びで届くので、手書きの読み違いによる問い合わせも起きにくくなります。
一方で、在庫の引き当て、出荷の手配、請求書の発行といった注文を受けた後の作業は、ネットにしただけでは消えません。
受注データを出荷や会計の作業へそのまま渡せる形にしなければ、紙からの転記が画面からの転記に変わるだけ、ということも起こります。
この点は、後で受注データの渡し方として扱います。
迷ったときは、次のような状態が続いているかを振り返ると判断しやすくなります。
注文の書き写しに毎日まとまった時間を取られている、読み違いの確認連絡が繰り返し起きている、取引先から営業時間外にも注文したいと言われている、新しい取引先を増やしたいが一件ずつ電話で対応する余裕がない。
こうした状態があれば、ネットで受ける仕組みを試す価値があります。
反対に、取引先が少なく注文の頻度も低い場合や、取引先側がFAXでの発注を社内の決まりにしている場合は、今の受注方法を続けながら取り決めの整理だけを先に進める判断もあります。
取り決めを書き出しておけば、後でネット受注へ移すときにもそのまま使えます。
BtoB通販の最小構成は「取引の取り決め」を先に決めること
取引先の確認方法と注文できる範囲
一般向けのネットショップは、訪れた人なら誰でも商品を見て注文できる作りが基本です。
法人向けでは、誰に注文を許すかを売る側が決めます。
取引先別の価格や後払いを扱う以上、注文してきた相手がどの取引先なのかを特定できなければ、適用する条件が決まらないからです。
最初に決めるのは、取引先として受け入れる手順です。
既存の取引先なら、こちらから案内を送ってログインの情報を渡す形が考えられます。
新規の申し込みを受け付けるなら、申込時にどの情報を出してもらい、社内の誰がどんな点を見て承認するのかを決めておきます。
承認の担当と基準が決まっていないと、申し込みが届いたまま誰も判断しない、という状態になりがちです。
注文できる範囲も同時に決めます。
すべての取引先に全商品を見せるのか、取引先の業態によって扱える商品を絞るのか。
価格をログイン前から見せるのか、ログインした取引先にだけ見せるのか。
この選び方が、次に決める価格の持ち方と、後で仕組みに求める機能を左右します。
取引先別の卸価格
法人向けの販売で一般向けECと大きく違いやすいのが、価格の持ち方です。
同じ商品でも、取引先との契約や取引の量によって卸価格が違うことがあります。
一つの商品に一つの価格を付ける一般向けの作りでは、この違いを表しきれません。
法人向けの通販サイトを運営している例として、日東電工CSシステムの取り組みがあります。
同社は愛知県豊橋市に本社を置く粘着テープ関連企業で、各種工業用粘着テープやテープ貼り機器を中心に約3,800品種の製品の提案・販売を手掛けています。
同社の法人専用通販サイトでは、取引先ごとの卸価格や販路を設定しています2。
販売加盟店は卸価格に対して製品ごとの利益率を決め、販売価格が自動で計算される仕組みです2。
これは一社の大規模な取り組みで、小規模に始める場合の構成をそのまま示すものではありません。
ただ、取引先別の価格を運用するには、どの取引先にどの商品をいくらで出すかという対応があり、それを仕組みに載せるという順序はこの例からも読み取れます。
小さく始める場合も、まずはこの対応を表に書き出します。
対応表の作り方には、標準の卸価格に取引先ごとの掛け率をかける方法と、取引先と商品の組み合わせごとに価格を決める方法があります。
掛け率なら表は小さく済みますが、一部の商品だけ特別な価格にしている取引先があると例外が増えます。
今の価格を書き出してみて、掛け率で説明できるのか、個別の価格が多いのかを見ると、必要な仕組みの見当がつきます。
注文数量によって単価を変えている場合は、その段階も書き出しておきます。
支払条件と出荷の締め
支払条件では、代金をどう受け取るかを決めます。
カード決済や前払いにするのか、締め日でまとめて請求書を送り、後日振り込んでもらうのか。
今の取引でどの方法を取っているかを、取引先ごとに書き出しておきます。
請求書での後払いを受けるなら、締め日と支払期日、未入金のときに誰が連絡するかも決めておく必要があります。
どの取引先にどこまで後払いを認めるかは売る側の判断です。
新規の取引先にいきなり後払いを認めるのか、最初は前払いにするのかも、ここで決めます。
出荷の側では、最小の注文単位と締め時間を決めます。
ケース単位でしか出さない商品があるなら、注文画面でもその単位でしか選べないようにしたい、という要件が出てきます。
何時までの注文を当日の出荷に回すのかが経路ごとに違うと、電話の注文とネットの注文で扱いが変わり、取引先からの問い合わせの原因になります。
送料の扱いも、ここで一緒に決めておきます。
ここまでの取り決めは、それぞれ後の作業につながっています。
取引先の確認方法は誰が何を見られるかに、卸価格は注文画面の表示と請求書の金額に、支払条件は請求と入金の確認に、締め時間は出荷の段取りにつながります。
どれかが決まっていないと、その先の作業で人がその都度判断することになり、ネットで受けても確認の手間は残ります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の確認方法
- 誰が何を見られるか
- 取引先別の卸価格
- 注文画面の表示
- 請求書の金額
- 支払条件
- 請求
- 入金の確認
- 最小の注文単位と締め時間
- 出荷の段取り
一般向けのネットショップ機能で足りる条件と、BtoB向けの機能が要る条件
三つの条件で見分ける
書き出した取り決めのうち、仕組みの選び方を大きく左右するのは三つです。
価格が全取引先で同じか、取引先ごとに違うか。
支払いがカードや前払いで済むか、請求書での後払いが要るか。
誰でも注文できてよいか、取引先を限定するか。
三つとも前者なら、法人を相手にしていても、注文の受け方は一般向けのネットショップと大きくは変わりません。
会員登録や購入の手続きを一般向けの機能で組み、法人向けであることは商品の見せ方や案内文で伝える、という始め方が取りやすくなります。
どれか一つでも後者に当てはまると、一般向けの機能では足りない部分が出てきます。
取引先別の価格なら、ログインした取引先を見分けて単価を変える仕組みが要ります。
請求書での後払いなら、注文時に決済を済ませない流れと、締めごとの請求の作り方が要ります。
取引先の限定なら、申し込みを承認するまで注文させない仕組みが要ります。
一般向けパッケージで足りなかった例と、その読み方
日東電工CSシステムは、法人向けのEC構築に着手した当初、一般消費者向けのパッケージを検討していました。
しかし、BtoBの取引に必要な機能は、そのパッケージでは追加のカスタマイズが必要だったといいます2。
取引先ごとの卸価格や販路の設定は、まさに前の節で見た法人向け特有の取り決めです。
この例から言えるのは、法人向けの取り決めを一般向けの機能に載せようとすると、追加の対応が必要になる場合がある、というところまでです。
同社が着手した時点での一社の経緯であり、いま提供されている一般向けのカートが何に対応しているかを示すものではありません。
機能の範囲はサービスごとに異なるため、個々のサービスについては公式の仕様で確かめることになります。
自社の取り決めを、そのまま確認の項目にする
そこで役に立つのが、書き出した取り決めです。
検討しているサービスの公式の仕様や問い合わせ窓口に対して、自社の取り決めをそのまま質問の形にして当てていきます。
取引先ごとに違う単価を表示できるか、ログインした取引先にだけ価格と商品を見せられるか、取引先ごとに支払方法を変えられるか、注文時に決済しない後払いの流れを組めるか、申し込みを承認してから注文できるようにできるか。
答えが「標準でできる」「設定や追加費用でできる」「できない」のどれなのかを分けて記録しておくと、後で比べやすくなります。
「できない」が出た項目は、すぐに別のサービスへ移る理由になるとは限りません。
その条件に当てはまる取引先が一部だけなら、その取引先は当面今の受注方法で続け、条件が単純な取引先からネットで受ける、という分け方もできます。
この分け方は、次に見る小さく始める順序と相性のよい進め方です。
| 判断軸 | 一般向けの機能で始めやすい | BtoB向けの機能が要る |
|---|---|---|
| 価格 | 全取引先で同じ価格 | 取引先ごとに卸価格が違う |
| 支払い | カード決済・前払い | 締めて請求書で後払い |
| 注文できる相手 | 誰でも注文できる | 承認した取引先だけ |
▼ 図の内容を文字で読む
- 一般向けの機能で始めやすい
- 価格が全取引先で同じ
- 支払いがカードや前払い
- 誰でも注文できてよい
- BtoB向けの機能が要る
- 取引先ごとに価格が違う
- 請求書での後払いが要る
- 取引先を限定する
最初は誰に・どの商品から試すか、電話・FAX・メールとどう併用するか
最初に試す取引先と商品の選び方
一度にすべての取引先をネットへ移そうとすると、取り決めの例外や取引先ごとの事情を同時に抱えることになります。
最初は、条件が単純で、協力を頼みやすい取引先から始めるのが進めやすい方法です。
選ぶときの目安としては、注文が定期的にあり、頼む商品がおおむね決まっている取引先が挙げられます。
価格が標準の卸価格に近く、特別な支払条件がない取引先なら、前の節の三つの条件も単純なまま始められます。
先方の発注担当者がネットでの発注に前向きかどうかも、試す段階では大事な条件です。
商品も、最初は絞ります。
規格がはっきりしていて、品番と数量だけで注文が決まる定番品は、注文画面に載せやすい商品です。
寸法や仕様を相談しながら決める商品や、都度見積もりで価格が変わる商品は、当面は電話やメールでのやり取りを残したほうが取引先も迷いません。
電話・FAX・メールと併用するときの決めごと
ネット受注を始めても、既存の経路はすぐには止めません。
試す相手の取引先にも、急ぎの注文や画面にない商品は電話で受けると伝えておけば、ネットで注文できない場面で取引先が困ることを避けられます。
併用で起きやすいのは、同じ注文が二つの経路から届くことです。
ネットで注文した後、念のためにFAXも送る取引先がいると、受け手が気付かなければ二重に出荷してしまいます。
ネットで注文した分はFAXを送らなくてよいと取引先へはっきり伝えること、届いた注文を経路にかかわらず一つの受注一覧に集めて重複を見られるようにすることを、始める前に決めておきます。
締め時間と最小の注文単位も、経路でそろえます。
ネットは夕方まで当日出荷、電話は昼まで、といった差があると、取引先はどちらで頼むかで迷い、受け手は注文ごとに扱いを確かめることになります。
何を数えて、次に広げるかを決めるか
試す期間と取引先を先に決めておき、その間に経路ごとの注文件数を数えます。
あわせて、注文を書き写した件数と、注文内容の確認で取引先とやり取りした件数も記録します。
ネットで受けた注文が増えた分だけ書き写しが減っているか、注文内容についての問い合わせが減っているかを見れば、仕組みが役に立っているかを自社の件数で確かめられます。
期間が終わったら、取引先の声も聞きます。
画面で迷った箇所や、電話に戻ってしまった理由を聞くと、取り決めの書き方や注文画面の見せ方で直す点が見えてきます。
直した上で取引先や商品を少しずつ広げ、また数える。
この繰り返しの中で、取引先別の価格や後払いといった条件の複雑な取引先を、どの段階で載せるかを決めていきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 試す取引先・商品・期間を決める
- 既存の経路と併用して受ける
- 経路ごとの注文件数を数える
- 取引先の声を聞いて直す
- 取引先と商品を広げる
請求書の記載事項と、受注データのつなぎ込みで決めておくこと
インボイスの記載事項と、交付・保存の義務
ネットで注文を受けるようになっても、請求書を出す作業は残ります。
カードで決済する一般向けの販売に慣れていると、購入者向けの明細で足りると考えがちですが、法人の取引先は受け取った請求書を自社の経理で使います。
そのため、請求書に何を書くかを先に決めておく必要があります。
インボイス発行事業者として登録している場合、インボイスの記載事項は次の6項目です1。
- 交付を受ける相手の氏名・名称
- 売手の氏名・名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象品目であればその旨)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
書類の名称は問われないため、呼び名に関係なく、記載事項がそろっていればインボイスとして扱えます1。
売手は、買手である課税事業者から求められたときにインボイスを交付する義務があり、交付した写しを保存します1。
登録すると課税事業者として消費税の申告が必要になる点も、登録を考える段階で知っておきたい条件です1。
一般向けの通販では、宛名を省いた簡易な形式の書類を見かけることがあります。
この簡易インボイスを使えるのは、不特定多数の者に販売する小売業、飲食店業、タクシー業で、宛先を省略でき、税率か税額のどちらか一方の記載でよいとされています1。
取引先を法人に限って販売する場合は、この形式を標準と考えず、上の記載事項をそろえた請求書を出す前提で書式を準備しておきます。
ここで述べたのは、インボイス発行事業者として登録している場合の記載事項と義務です。
登録していない場合の請求書の扱いや、電子で受け渡した請求書の保存方法は、税理士や国税庁の案内で自社の状況に合わせて確かめてください。
取引先別の卸価格を設けている場合は、請求書の取引内容と金額が、注文時にその取引先へ適用した単価と一致している必要があります。
注文画面の単価と請求書を別々の表から作っていると、どちらかの更新漏れで金額がずれることがあります。
請求書をカートの側で作るのか、販売管理や会計の側で作るのかを決め、単価の元になる表を一つにしておくと、このずれを突き合わせる手間が減ります。
受注データを出荷・会計へ渡す形の決め方
ネットで受けた注文は、受注データとして画面や一覧に残ります。
ただし、データがあることと、それが出荷や会計の作業へ自動で流れることは別の話です。
出荷指示書や販売管理の表へ人が打ち直しているなら、FAXの転記が画面からの転記に変わっただけになります。
小さく始める段階で決めておきたいのは、次の四つです。
一つ目は、渡す項目です。
取引先、納品先、商品の品番、数量、適用した単価、税率、希望納期など、出荷と請求に必要な項目を書き出し、受注データにそれがそろっているかを見ます。
二つ目は、取引先と商品をどの記号で見分けるかです。
カートの会員番号と販売管理の取引先コード、カートの商品番号と社内の品番が違う場合は、どちらに合わせるか、対応表をどこで持つかを決めます。
三つ目は、渡す形とタイミングです。
受注データをファイルで書き出して取り込むのか、手で写すのか、出荷の締め時間の後に一日一回まとめて渡すのか。
四つ目は、担当です。
誰が受注データを確かめ、誰が出荷と請求へ回すのかを決めておけば、ネットの注文が届いたまま処理されない状態は起きにくくなります。
最初からシステム同士を直接つなぐ必要はありません。
決めた項目がそろったファイルを書き出せれば、販売管理への取り込みは表計算の作業で済む場合もあります。
件数が増えて手作業の取り込みが負担になった段階で、つなぎ方を見直す順序でも遅くはありません。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先が注文画面から注文
- 適用した単価
- 受注データを確かめる
- 確かめる担当
- 他の経路との重複
- 出荷へ渡す
- 締め時間の後にまとめて渡す
- 品番の対応
- 請求書を作る
- インボイスの記載事項
- 単価の元になる表
- 会計へ渡す
- 取引先コードの対応
自作・既存カート・BtoB向けサービスの選び方
三つの選択肢は、手間をどこで負うかが違う
仕組みの選び方は、大きく三つに分かれます。
自社で注文の仕組みを作る、一般向けの既存カートを使う、BtoB向けのサービスを使う、の三つです。
自社で作る方法は、取り決めをそのまま形にできる反面、作る手間と、作った後の修正や保守を自社で負います。
小規模で始める段階では、取り決めがまだ固まりきっておらず、試しながら直したい部分が出てきます。
その直しのたびに作り直しが要る点は、選ぶ前に見込んでおきます。
一般向けの既存カートは、注文画面や決済の仕組みがそろっていて、始めやすい選択肢です。
前の節で見た三つの条件が単純な取引先から始めるなら、候補になります。
取引先別の価格や後払いが必要な取引先を後で載せるときに、追加の設定や開発で対応できるかどうかが分かれ目になります。
BtoB向けのサービスは、取引先別の価格や取引先の承認といった法人向けの取り決めを前提にしたものです。
ただし、どこまでを標準で備え、何が追加の対応になるかはサービスごとに違うため、ここでも自社の取り決めを当てて確かめます。
比べるときにそろえる項目
比べるときは、料金表の金額を並べる前に、次の項目について各サービスの公式の料金表と仕様から同じ形の答えをそろえます。
- 取引先別価格:取引先ごとに違う単価や掛け率を持てるか
- 請求書払い:注文時に決済しない後払いの流れと、締めごとの請求に対応するか
- 取引先の承認:申し込みを承認してから注文できるようにできるか
- 受注データの出力:出荷と請求に必要な項目を、決めた形で書き出せるか
- 運用支援:始めた後の設定変更や運用の相談に応じてもらえるか
費用は、初期にかかる額、毎月かかる額、追加の設定や開発にかかる額、社内でかかる手間に分け、同じ期間で比べます。
初期の額が小さくても、取り決めに合わせるための追加の対応が積み重なれば、比べる期間の合計は変わります。
どの項目が「標準」で、どの項目が「追加」なのかを前の確認でそろえておくと、この合計を同じ条件で見積もれます。

最後の運用支援は、始めた後に効いてくる項目です。
日東電工CSシステムは、運用まで支援するサポート体制を評価して、BtoB向けのサービスを採用したと述べています2。
これは同社の採用理由で、他の選択肢との優劣を示すものではありません。
それでも、取り決めを試しながら直していく小規模な始め方では、設定を変えたいときに誰に相談できるかが、日々の運用のしやすさに関わります。
取引先別の価格や後払いなど、書き出した自社の取り決めをどの仕組みにどう載せるかは、仕様を読むだけでは判断しにくいためです。
手元の取り決めをもとに、標準で扱える部分と追加の対応が要る部分、始めた後に受けられる運用支援の範囲を確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 始める前に決めること | 取引先の確認方法、取引先別の卸価格、支払条件、最小注文単位と締め時間 |
| 一般向けのカートで始めやすい条件 | 価格が全取引先で同じ、支払いがカードや前払い、誰でも注文できてよい |
| BtoB向けの機能が要る条件 | 取引先別の価格、請求書での後払い、取引先の限定のいずれかがある |
| 最初に試す範囲 | 条件が単純で協力を頼みやすい取引先と、品番と数量で決まる定番品 |
| 既存経路との併用 | 締め時間と注文単位をそろえ、重複注文を一つの一覧で見る |
| 請求書 | インボイス発行事業者なら6項目をそろえ、単価の元になる表を一つにする |
| 仕組みを比べる項目 | 取引先別価格、請求書払い、取引先の承認、受注データの出力、運用支援 |

小さく試した後に取引先や商品を広げる段階では、条件の複雑な取引先の載せ方や受注データの渡し方の見直しが重なるためです。 試した結果と今後載せたい取引条件をもとに、どの段階で何を設定すればよいか、運用をどう支えてもらえるかを確かめられます。
よくある質問
取引先ごとに価格が違うとき、一般向けのカートでは対応できませんか。
対応できるかどうかはカートの仕様とプランによります。
ログインした取引先を見分けて単価を変えられるか、取引先ごとに見せる商品を絞れるかを、公式の仕様で確かめてください。
対応できない場合でも、価格が標準と同じ取引先だけをネットで受け、個別価格の取引先は当面今の受注方法で続けるという分け方があります。
最初に何社・何商品くらいで試せばよいですか。
決まった数の目安はありません。
数よりも、注文が定期的にあり、価格や支払条件が単純で、ネットでの発注に前向きな取引先を選ぶことが大切です。
商品も品番と数量だけで注文が決まる定番品から始め、試す期間を先に決めて、経路ごとの注文件数や書き写しの件数を数えます。
電話やFAXの注文は、ネット受注を始めたらやめるべきですか。
すぐにやめる必要はありません。
急ぎの注文や画面にない商品のために既存の経路を残しておくと、取引先が困る場面を減らせます。
併用するときは、同じ注文がネットとFAXの両方から届く重複を防ぐため、取引先への案内と、注文を一つの受注一覧に集める運用を決めておきます。
請求書を出すとき、インボイスの記載事項は何を入れればよいですか。
インボイス発行事業者の場合、交付を受ける相手の氏名・名称、売手の氏名・名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、税率ごとの消費税額等の6項目です1。
宛先などを省ける簡易インボイスは、不特定多数に販売する小売業などに限られます1。
取引先を法人に限る販売では、記載事項をそろえた請求書を前提に準備します。
受注データを会計や出荷の作業につなぐとき、何を先に決めますか。
渡す項目、取引先と商品を見分ける記号、渡す形とタイミング、担当の四つです。
特に、カートの会員番号や商品番号と、社内の取引先コードや品番が違う場合は、どちらに合わせるかを先に決めておくと、取り込みのたびに手で直す作業が減ります。
システム同士を直接つなぐのは、件数が増えて手作業の取り込みが負担になってからでも間に合います。
画像の出典元
- Colleagues collaborating on data charts and discussing business strategies in an office setting./Photo by Yan Krukau on Pexels