◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 製造業のBtoB ECの月額は、料金の型やオプション、連携の範囲で変わるため、稟議には一つの相場ではなく条件を書いた範囲で示す
- 見積書は、初期費用・毎月の固定額・従量分・後から足すオプションや追加作業に分けて読み、未回答の欄から確かめる
- 受注を定型品・見積を挟む注文・ロットや納期の調整の三つに分けると、見積依頼に書く要件が決まる
- 連携は費用より先に、取引先がECに移るかと、どの転記を減らすかを決める
- インボイス枠(電子取引類型)は発注側が導入して受注側を招く形が前提で、受注用のECは補助を前提にしない総額で示すほうが安全
目次

FAX・電話の受注を減らしたいが月額が言えない:まず「一つの相場」を探さない理由
取引先からFAXや電話で届く注文を毎日受注システムへ打ち直していて、BtoB ECに切り替えたいと社内で相談したら「で、月額いくら?」と聞かれて答えに詰まる。
費用の負担は、中小企業がデジタル化の課題として最も多く挙げる項目です2。
ただ、製造業の受注をBtoB ECへ移すときの月額は、取引先別の価格や見積の扱い、基幹システムとの連携、オプションの有無で変わるため、一つの相場では言えません。
稟議に出せる数字は、本体の月額と別料金を分け、自社の受注条件をそろえて取った見積もりを比べた結果から作れます。
費用負担が最大の課題という調査結果
東京商工会議所の調査では、デジタルシフト・DXの課題として「コスト負担」を挙げた企業が31.9%で、最も多い回答でした2。
この調査は2024年に主に東京23区の中小企業を対象に行われたもので、BtoB ECに限った費用の話でも、製造業だけの結果でもありません。
それでも、デジタル化の費用をどう説明するかで悩んでいるのは自社だけではない、とは言えます。
決裁する側から見ると、費用が気になるのは金額が大きいからだけではありません。
毎月いくら払うのか、いつまで払うのか、あとから何が増えるのかが見えないと、承認してよいかを判断できないからです。
月額が言えないという悩みは、金額を知らないことよりも、金額が何で決まるのかを説明できないことに近いのです。
固定・従量・オプションが混在する料金体系
BtoB ECの料金は、毎月決まった額を払う形だけとは限りません。
2016年にEC-Rider B2Bが発表した料金体系では、固定料金、売上金額に連動する従量課金、ハイスペックの3プランが並んでいました5。
これは当時の料金体系の例で、現在の料金を示すものではありません。
ただ、同じ製品の中でも課金の考え方が複数あり、どのプランを選ぶかで月額の意味が変わることは読み取れます。
さらに、本体の利用料金とは別に月額がかかるオプションを用意している製品もあります。
従量課金なら、ECを通る注文や売上が増えるほど月額が動きます。
固定料金なら注文量にかかわらず月額は同じですが、どのプランを選ぶかで使える機能の範囲が変わることがあります。
型が違えば、同じ「月額」という言葉でも中身が違います。
ある製品の月額と別の製品の月額を並べても、片方は売上連動分を含んでおらず、もう片方はオプション込みの金額だった、ということが起こり得ます。
一つの相場を探して稟議に書いても、その数字が自社の条件で何を含むのか説明できないのは、このためです。
稟議では範囲と条件を出す
稟議に書けるのは、一つの金額より「この条件なら、この範囲」という形の数字です。
条件とは、ECで注文を受ける取引先の数、毎月の注文件数、取引先ごとの価格の有無、基幹システムとの連携の方法、契約期間などを指します。
たとえば「まず定型品を多く注文してくる取引先数社から始め、受けた注文は基幹システムへCSVで取り込む前提で、複数の提供元から見積もりを取った。本体月額と別料金を分けて並べると、総額はこの範囲になる」と書けたとします。
決裁者は、何が前提で、どの条件を変えると金額が動くのかを読めます。
取引先を広げたら従量分が増える、自動連携にしたら別の費用が乗る、という先の話も、同じ表の上で説明できるようになります。
この条件を書き出す作業は、見積もりを取る前の準備そのものです。
まずは、見積書に並ぶ月額の中身を見分けるところから進めます。
月額に何が含まれ、何が別料金になるのか:初期費用・従量・オプション・保守の見分け方
本体月額とオプション月額は別
見積書の「月額」に一つの数字しか書かれていないときほど、内訳を確かめる意味があります。
たとえばEC-Rider Primoでは、導入企業向けのデータ分析オプション(アクセス解析ライトプラン)が、初期費用0円、月額70,000円(税別)、契約6カ月からで提供されていて、Primo本体の利用料金は別に必要です4。
これは特定製品のオプション一つの価格で、本体の月額でもBtoB ECの相場でもありません。
この例から読み取りたいのは金額の大小ではなく、構造です。
本体の月額にオプションの月額が足され、オプションにはオプション独自の契約期間がある。
本体の月額だけで見積もりを比べると、あとから必要になった機能の分だけ、稟議に書いた総額から外れていきます。
オプションの中身を知っておくと、導入時に要るかどうかも判断しやすくなります。
このオプションは、GA4とGTMでデータを取得し、Looker Studioで取引先別・商品カテゴリ別の売上を可視化するもので、月次レポートと月1回のオンライン相談会を含みます4。
FAXの注文をECに移すことが目的なら、最初は要らないかもしれません。
一方で、取引先ごとの売れ方を営業の提案に使いたいなら、運用が回り始めた段階で検討の対象になります。
導入時の稟議に入れるのか、次の予算で追加するのかを分けておくと、後から「聞いていない費用」になりません。
別料金になりやすい項目の見分け方
見積もりの費目は、払い方で四つに分けると見分けやすくなります。
- 最初に一度だけ払うもの(初期費用、初期設定)
- 毎月決まって払うもの(本体月額、保守が月額に含まれない場合はその月額)
- 注文量や売上で変わるもの(従量課金の部分)
- 必要になったときに足すもの(オプション、追加の設定や連携の作業)
どの費目がどこに入るかは提供元によって違うため、これは見積もりを読むための整理です。
保守が本体月額に含まれる製品もあれば、別の月額になる製品もあり、見積書の書き方だけでは区別できないことがあります。
見落としやすいのは、最後の「必要になったときに足すもの」です。
見積もりの段階で「標準機能で対応」とされていても、自社の受注に合わせた設定が要ると分かった時点で、追加作業として別に見積もられることがあります。
見積書の各行について、月額に含まれるのか、別に請求されるのか、請求されるならいつなのかを書き込んでいくと、空欄のまま残った行が、後から増えるかもしれない部分として見えてきます。
従量課金と固定料金の違い
従量課金は、ECを通る売上や注文に応じて月額が変わる型です。
2016年のEC-Rider B2Bの従量課金プランも、売上金額に連動するものでした5。
ECに移る注文がまだ少ない導入初期は負担を抑えやすい一方、取引先が増えて注文がECに集まるほど、月額も増えていきます。
固定料金は、注文量にかかわらず月額が一定です。
予算は立てやすくなりますが、ECを使う取引先が少ないうちは、受ける注文の割に高く感じることもあります。
どちらが合うかは、ECに移す注文がどれくらいあり、どの速さで増やす計画なのかで変わります。
稟議で比べるなら、今の注文件数や金額で計算した月額と、ECで受ける取引先を広げたときの月額を、両方並べておくと判断しやすくなります。
従量の料率や上限、プランを切り替えるときの条件といった計算の前提は、見積もりの中で提供元に聞いておく必要があります。
前提が分からないまま広げた後の月額を書くと、決裁者に示した範囲そのものが崩れてしまうからです。
▼ 図の内容を文字で読む
- 最初に一度だけ払うもの
- 初期費用
- 初期設定
- 毎月決まって払うもの
- 本体月額
- 保守が月額に含まれない場合はその月額
- 注文量や売上で変わるもの
- 従量課金の部分
- 必要になったときに足すもの
- オプション
- 追加の設定や連携の作業
取引先別価格・見積・ロット・納期の条件は、どこで費用差になるか
受注を三つに分ける
製造業の受注は、同じ「注文」でも中身がかなり違います。
毎月決まった部品を価格表どおりに注文してくる取引先もあれば、仕様を確かめて見積もりを出してから注文が決まる取引先もあり、ロットや納期を電話で何度もやり取りして決まる注文もあります。
そこで、自社の受注を次の三つに分けて考えることを提案します。
- 定型品で、価格表どおりに注文が来る
- 見積もりや仕様の確認を挟んでから注文が決まる
- ロットや納期の調整が要る
一つ目は、ECの注文画面に商品と価格を載せておけば、取引先の担当者が自分で数量を入力して注文できます。
FAXを受け取って受注システムに打ち直す作業が最も減りやすいのは、この部分です。
二つ目と三つ目は、注文の前後に人の判断が入ります。
ECで受けるにしても、見積もりの依頼をどの画面で受け、誰が回答し、確定した価格をどう注文につなげるのかを決めておかないと、結局は電話とメールが残ります。
納期の回答も同じで、在庫や生産の状況を見て返しているなら、その情報をECにどこまで載せるかで必要な機能が変わります。
取引先別の価格・権限設定
製造業のBtoB ECで製品ごとの違いが出やすいのは、取引先によって価格や見せる商品を変える設定です。
同じ部品を、取引先Aには契約単価で、取引先Bには別の単価で売っているなら、ECでもその単価を取引先ごとに出し分けられるかが論点になります。
特定の取引先にしか見せない専用品がある場合や、取引先の中で注文できる担当者と閲覧だけの担当者を分けたい場合も同じです。
取引先ごとの区別は、売上の見え方にも関わります。
前節で触れたPrimoのデータ分析オプションは、取引先別や商品カテゴリ別の売上を可視化するものです4。
ただ、これは売上を見るための機能で、取引先ごとに価格を設定する機能とは別物です。
価格や権限の出し分けにどこまで対応し、それが標準の月額に含まれるのか、上位のプランやオプションになるのかは、製品とプランごとに確かめるほかありません。
見積依頼に書き出す要件
三つの受注の割合が分かると、見積依頼に書く要件が決まってきます。
定型品の注文が大半なら、商品点数と取引先別単価の有無が中心になります。
見積もりを挟む注文が多いなら、見積依頼をECで受けたいのか、当面は従来どおり受けて確定後の注文だけをECに載せるのかを書きます。
ロットや納期の調整が多いなら、ロット単位での注文や納期回答をECの中で扱いたいかどうかを書きます。
要件は、機能の名前より、今の業務で起きていることを書くほうが伝わります。
「取引先別価格に対応」と書くより、「取引先ごとに契約単価があり、単価は年に何回見直していて、見直しのたびに価格表を作り直している」と書けば、提供元は必要な設定の範囲を見積もれます。
書き出していない要件は見積もりに入らず、導入の途中で追加作業として出てくるので、見積もりの金額が後から増える原因の多くは、この段階で防げます。
| 受注の型 | 今の受け方の例 | ECで受けるときに決めること |
|---|---|---|
| 定型品・価格表どおり | FAXの注文書を受注システムへ転記 | 商品と価格を載せ、取引先が自分で入力 |
| 見積・仕様確認を挟む | メールで見積を出し、電話で確定 | 見積依頼の受け方と回答者、確定価格の反映 |
| ロット・納期の調整 | 電話で数量と納期を何度も調整 | ロット単位の扱いと納期回答の方法 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 定型品で価格表どおりに注文が来る
- 商品と価格を載せる
- 取引先の担当者が数量を入力する
- 見積もりや仕様の確認を挟む
- 見積依頼をどの画面で受けるか
- 誰が回答し、確定した価格をどう注文につなぐか
- ロットや納期の調整が要る
- ロット単位の扱い
- 納期の回答をECにどこまで載せるか
基幹システム・在庫との連携で増えるもの:費用より先に「相手がそろうか」
データ形式の共通化という考え方
ECで注文を受けても、その注文を基幹システムや在庫表に手で打ち直していたら、FAXのときの転記が場所を変えて残るだけです。
連携とは、ECで受けた注文のデータを、基幹システムが読める形で受け渡すことを指します。
受け渡しの考え方として参考になるのが、中小企業庁のミラサポplusが紹介する中小企業共通EDI標準です。
EDIは企業間で受発注データを電子的にやり取りする仕組みで、この標準ではデータの形式を国際標準に準拠して共通化し、各社が使う事業者が変換を受け持つため、自社のシステムを残したまま取引先とやり取りできるとされています3。
これはBtoB ECの連携費用を示すものではありません。
それでも、「基幹システムを作り替えなくても、形式を合わせれば受け渡せる」という考え方は、連携の見積もりを読むときの手掛かりになります。
ECの見積もりでも、基幹システム側を改修するのか、ECやその間をつなぐ仕組みで形式を合わせるのか、CSVで書き出して取り込むのかによって、費用がかかる場所と、自社に残る作業が変わります。
同じ「連携あり」の見積もりでも、自社の情報システム担当や基幹システムの保守会社に別の作業が発生するかどうかで、総額の見え方は大きく違ってきます。
取引先の協力が前提
同じミラサポplusの記事は、EDIは1社だけが導入しても効果が得られず、取引先の協力が必要だと述べています3。
BtoB ECにも同じ構図があります。
自社がECを用意しても、取引先がこれまでどおりFAXで注文を送ってくれば、受注担当者はFAXとECの両方を確認することになり、作業はむしろ増えるかもしれません。
取引先の購買担当者にとっては、注文の送り先が変わり、ログインや入力の手順を覚える手間が生じます。
発注書を自社のシステムから出している取引先なら、ECの画面に打ち直すことが向こう側の二度手間になる場合もあります。
連携の費用を考える前に、どの取引先がECで注文してくれそうかを確かめるのは、そのためです。
相手がそろわないうちに自動連携まで作り込むと、使われない連携の費用だけが毎月残ります。
連携方式を決める順番
連携の方式は、次の順で決めると見積もりに落とし込みやすくなります。
まず、ECで注文してくれる取引先と、その注文の量を見込みます。
次に、受けた注文が今どの画面や帳票に転記されているかを洗い出します。
そのうえで、どの転記をどの方式でなくすかを決め、方式に応じて見積もりを取ります。
二つ目の洗い出しが要になります。
たとえば、FAXを見て受注システムへ入力し、さらに在庫表を更新し、出荷指示書を作っているなら、転記は3か所です。
ECとCSVで連携して受注システムへの入力がなくなっても、在庫表の更新が手作業のままなら、そこでの入力と確認は残ります。
どの転記を減らし、どれを当面残すかを決めると連携の範囲が決まり、見積もりどうしの比較もしやすくなります。
最初からすべてを自動でつなぐ必要はありません。
CSVで取り込むところから始め、注文が十分にECへ移ってから自動連携を検討する進め方もあります。
その場合は、CSVの取り込みを誰がどの頻度で行うかという作業が残ることを、運用の見込みに入れておきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- ECで注文してくれる取引先と注文の量を見込む
- 受けた注文が今どこへ転記されているか洗い出す
- どの転記をどの方式でなくすかを決める
- 方式に応じて見積もりを取る
補助金は誰が使えるのか:発注側として導入する場合の条件
電子取引類型の対象
費用を抑える手段として、補助金を考える方も多いでしょう。
2026年度のデジタル化・AI導入補助金のインボイス枠(電子取引類型)は、中小企業・小規模事業者等と受発注取引を行う事業者が対象で、大企業も含まれます1。
導入するITツールは受発注の機能を持ち、発注側が受注側に無償でアカウントを発行できるクラウド型であることが条件です1。
補助率は中小企業・小規模事業者等で2/3以内、その他の事業者等で1/2以内、補助額は350万円以下とされています1。
受注側は使えるのか
条件を読むと、この枠が想定しているのは、発注する側がツールを導入し、受注する側を無償で招く形です。
製造業が自社の製品を売るためにECを用意し、取引先から注文を受け取る場合、自社は受注側にあたります。
この形がそのまま電子取引類型の対象になるとは、事務局のページの記載からは言えません。
一方、同じ製造業でも、材料や部品を仕入先へ発注する場面では、自社が発注側です。
仕入先とのやり取りを受発注ツールに移し、仕入先に無償のアカウントを発行する形なら、この枠の検討対象になり得ます。
補助金を使えるかどうかは、会社の業種ではなく、そのツールで自社がどちらの立場に立つかで分かれるということです。
取引先からの注文を受けるためのECを検討しているなら、稟議では補助金を前提にしない総額を示しておくほうが安全です。
補助を見込んだ金額で承認を取り、後で対象外と分かると、予算そのものを組み直すことになるからです。
確認先
補助の対象になる経費の範囲や申請の手続きは、事務局のページだけでは分からない部分があり、申請する年度の公募要領で確かめる必要があります。
要件は年度ごとに見直されることがあるため、前年度の情報や他社の申請例をそのまま当てはめないことも大切です。
仕入先への発注を電子化する計画が別にあるなら、受注用のECとは分けて、発注側としての導入をこの枠で検討する余地があります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 電子取引類型の条件
- 受発注の機能を持つクラウド型のツール
- 発注側が受注側へ無償でアカウントを発行
- 補助率は中小企業・小規模事業者等2/3以内、その他の事業者等1/2以内、補助額は350万円以下
- 発注側として導入する場合
- 仕入先へ無償のアカウントを発行する形なら検討対象になり得る
- 受注側としてECを用意する場合
- 対象になるとは事務局のページの記載から言えない
- 稟議は補助を前提にしない総額で示す
見積もりを同じ条件でそろえて比べる:契約期間と運用工数の見方
比較表の行と列のそろえ方
見積もりが2社、3社と集まると、書式も費目の名前もばらばらで、横に並べにくくなります。
そこで、月額と別料金を見分けたときの費目を、比較表の共通の行として使います。
行は本体月額、初期費用、従量の条件、オプション、保守、連携方式、運用で残る作業、契約期間とし、列に見積もりの提供元を並べます。
各欄には、まず金額より先に「含む」「別料金」「条件付き」「未回答」のどれかを書き込みます。
金額の小さい見積もりほど未回答の欄が多い、ということがあり得るからです。
未回答の欄は、後から増えるかもしれない部分なので、比較の前に問い合わせて埋めておきます。
比べる前提もそろえます。
ECで受ける取引先の数、注文件数、取引先別価格の有無、連携の方式を、すべての提供元に同じ条件で伝えて見積もってもらいます。
ある提供元には5社分、別の提供元には全取引先分で見積もってもらうと、金額の差が製品の違いなのか、範囲の違いなのか区別できません。
契約期間の違いを月あたりに直す
契約期間も、提供元や費目によって違います。
たとえば前に挙げたPrimoのデータ分析オプションは、契約が6カ月からとされています4。
本体とオプションで最低契約期間が違えば、途中でやめたときに払い続ける期間も違ってきます。
初期費用が高く月額が低い見積もりと、初期費用が低く月額が高い見積もりは、比べる期間を決めないと優劣がつきません。
そこで、すべての見積もりについて、同じ期間で「初期費用+月額×月数+見込みのオプション」を計算し、それを月数で割って月あたりに直します。
期間は、自社が少なくとも使い続けるつもりの年数や、社内で設備投資を評価するときの期間に合わせると、稟議の書き方とも整合します。
解約するときに違約金や残りの期間の支払いがあるかも、同じ行で確かめておきます。
運用工数は自社の実測で置く
稟議でもう一つ問われるのは、「入れたらどれだけ楽になるのか」です。
ここは一般的な数字を借りるより、自社の今の作業を測るほうが説得力があります。
たとえば2週間ほど、FAXと電話で受けた注文の件数と、1件ごとの転記、内容の確認、取引先への問い合わせにかかった時間を記録します。
そのうえで、ECに移った後に何が減り、何が残るかを分けて書きます。
取引先が自分で入力した注文なら、受注システムへの打ち直しと、手書きの読み違いの確認は減ります。
一方で、取引先の登録やログインの問い合わせへの対応、FAXと並行して受け続ける注文の処理、CSVの取り込みといった新しい作業が加わります。
減る時間から増える時間を引いたものが、稟議に書ける運用面の見込みです。
効果を見込みすぎない
ミラサポplusの記事では、中小企業共通EDIの実証事業で、受発注業務の作業時間が減ったという結果が紹介されています3。
ただし、これはEDIの実証事業の結果で、BtoB ECを導入したときの効果を示すものではなく、自社にそのまま当てはまる保証もありません。
そして同じ記事が述べるとおり、効果には取引先の協力が要ります3。
効果は、取引先のうちどれだけがECで注文してくれるかで大きく変わります。
稟議では、移る割合を控えめに置いた場合と、計画どおりに移った場合の両方を並べておくと、決裁者は下振れしたときの姿も確かめられます。
取引先の移行が進まなかったときに、費用だけが残るのか、従量課金なら費用も小さく済むのかは、先に選んだ料金の型で変わります。
| 確認する項目 | 見積A | 見積B | 見積C |
|---|---|---|---|
| 本体月額に含む範囲 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 初期費用 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 従量の条件 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| オプション | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 保守 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 連携方式と作業分担 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 運用で残る作業 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
| 契約期間 | 確認欄 | 確認欄 | 確認欄 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先の数、注文件数、取引先別価格の有無、連携の方式を全提供元に同じ条件で伝える
- 各欄に「含む」「別料金」「条件付き」「未回答」を書き込む
- 未回答の欄を問い合わせて埋める
- 同じ期間で初期費用と月額を合計し、月あたりに直す
小さく始めて広げる:対象取引先の絞り方と見積依頼時の確認項目
最初の対象の選び方
取引先の協力が要る以上、最初からすべての取引先をECに移そうとすると、協力が得られない相手の分だけFAXが残り、二重の受付が長く続きます。
そこで、最初は対象を数社に絞る進め方を提案します。
選ぶ目安は、注文の件数が多いこと、定型品が中心で価格表どおりに注文が来ること、ECへの切り替えに協力してもらえそうなことの三つです。
件数が多い取引先なら、移ったときに減る転記がはっきり見えます。
定型品が中心なら、見積もりやロット調整の仕組みを作り込まずに始められ、最初の見積もりの範囲を小さくできます。
協力が得られる取引先なら、使いにくい点を率直に教えてもらえるので、広げる前に画面や手順を直せます。
この選び方は資料が示す慣行ではなく、取引先の同意が取れていることと、自社の受注の型を把握していることを前提にした提案です。
見積依頼で聞くこと
対象を絞ったら、その範囲で見積もりを依頼します。
依頼のときに聞いておきたいのは次の六つです。
- 本体月額に含まれる機能と範囲(取引先別価格や権限設定を含むか)
- 従量課金の条件(何に連動し、料率や上限はどうなっているか)
- 別料金になる項目と、それが発生する時期
- 基幹システムとの連携方式と、自社側に必要な作業
- 契約期間と最低利用期間(本体とオプションで違うか)
- 解約の条件と、解約時の支払い
受注の三つの型の割合と、取引先別単価の有無を添えて伝えると、提供元ごとの答えが同じ前提にそろいます。
広げる判断
数社で始めた後は、対象の取引先からの注文のうちどれだけがECに移ったか、FAXや電話で届く注文がどれだけ残ったか、どの転記が残っているかを見ていきます。
移った割合が高く、取引先からの問い合わせも落ち着いているなら、次の取引先へ広げる段階です。
広げるときは、費用も見直します。
従量課金なら注文が増えた分だけ月額が上がり、固定料金でもプランの切り替えが要るかもしれません。
見積もりや仕様確認を挟む取引先、ロットや納期の調整が多い取引先へ広げるなら、そのための設定や機能を、改めて同じ比較表の行に足して確かめます。
最初の稟議で「広げたときの月額」を並べておけば、このときの説明は、前提がどう変わったかを示すだけで済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の件数が多い
- 移ったときに減る転記がはっきり見える
- 定型品が中心で価格表どおりに注文が来る
- 見積もりやロット調整の仕組みを作り込まずに始められる
- 最初の見積もりの範囲を小さくできる
- 切り替えに協力してもらえそう
- 使いにくい点を教えてもらえる
- 広げる前に画面や手順を直せる
取引先別の価格や見積の扱い、連携の範囲が、標準の月額に入るのか別料金になるのかは、製品ごとの仕様を知らないと自社だけでは判断しにくい部分です。
自社の受注の型と取引先の条件を伝えると、本体月額に含まれる範囲と、オプションや追加作業になる項目を分けて確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 月額の見方 | 本体月額・オプション月額・従量分・初期費用を分けて書く |
|---|---|
| 稟議の数字 | 一つの相場ではなく、条件を書いた範囲で示す |
| 要件の書き出し | 受注を定型品・見積を挟む注文・ロットや納期の調整の三つに分ける |
| 連携 | 費用より先に、取引先が移るかと、どの転記を減らすかを決める |
| 補助金 | 電子取引類型は発注側の導入が前提。受注用ECは補助なしの総額で示す |
| 見積比較 | 同じ行・同じ条件・同じ期間にそろえ、未回答の欄から確かめる |
| 進め方 | 件数が多く定型的で協力が得られる数社から始め、結果を見て広げる |
小さく始めて広げる計画では、広げたときに従量分やプランの切り替えで月額がどう変わるかまで、最初の稟議で示しておく必要があります。 最初に対象とする取引先と、広げた後の取引先数の両方の条件で、料金の型と契約期間を含めた見積もりの前提を確かめられます。
よくある質問
月額が安いサービスを選んでも、あとから費用が増えることはありますか
あります。
本体月額とは別にオプションの月額がかかる製品があり、従量課金なら注文が増えるほど月額も増えます。
見積もりで要件を書き出していなかった設定や連携が、導入の途中で追加作業として出てくることもあります。
見積書の各行が月額に含まれるのか、別料金なのか、いつ請求されるのかを確かめておくと、増える余地を事前に把握できます。
受注側の製造業は、インボイス枠の補助金を使えますか
2026年度のインボイス枠(電子取引類型)は、発注側がクラウド型の受発注ツールを導入し、受注側に無償でアカウントを発行する形を条件にしています。
自社の製品を売るためのECを受注側として用意する場合、そのまま対象になるとは言えません。
仕入先へ発注する場面で自社が発注側になるなら、検討の余地があります。
対象経費や要件は申請年度の公募要領で確かめてください。
FAXで受注している取引先が、ECを使ってくれない場合はどうすればよいですか
すべての取引先を一度に移そうとせず、注文が多く定型的で、協力が得られそうな数社から始める方法があります。
取引先にとっては注文の送り先が変わり、入力の手間も生じるため、無理に切り替えるとFAXとECの二重受付が長引きます。
移らない取引先の分はFAXが残る前提で運用の作業を見込み、稟議の効果も控えめに置いておくと安全です。
基幹システムと連携しないで始めても問題ありませんか
始めること自体はできますが、ECで受けた注文を基幹システムへ手で打ち直す作業が残ります。
FAXのときと場所が変わるだけにならないよう、今どこへ転記しているかを洗い出し、まずCSVで取り込むなど、どの転記を減らすかを決めてから始めるのが現実的です。
注文が十分ECに移ってから自動連携を検討する進め方もあります。
見積依頼では、何を伝えると比較しやすくなりますか
ECで受ける取引先の数、注文件数、取引先別単価の有無、受注の型(定型品・見積を挟む注文・ロットや納期の調整が要る注文)の割合、連携の方式を、すべての提供元に同じ条件で伝えます。
機能の名前より、今の業務で何をしているかを書くほうが、必要な設定の範囲が正しく見積もられます。
従量課金と固定料金は、どちらを選ぶべきですか
ECに移す注文の量と、その増え方で変わります。
導入初期に注文が少ないなら従量課金は負担を抑えやすく、注文が増えると月額も増えます。
固定料金は予算を立てやすい反面、利用が少ないうちは割高に感じることがあります。
今の注文量で計算した月額と、取引先を広げたときの月額を並べて比べると判断しやすくなります。
- 1 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構(デジタル化・AI導入補助金事務局)「デジタル化・AI導入補助金 インボイス枠(電子取引類型)」(2026年度)
- 2 出典:東京商工会議所「中小企業のデジタルシフト・DX実態調査 集計結果」(2025年)
- 3 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)
- 4 出典:フライトソリューションズ「Primo向けデータ分析オプション提供開始のプレスリリース」(2026年)
- 5 出典:株式会社イーシー・ライダー「EC-Rider B2B 新プラン提供開始のプレスリリース」(2016年)