◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- オンライン受発注で減るのは手入力・転記、その照合、過去の取引の検索で、取引先の移行、紙や電話の注文、在庫と納期の調整は残る。
- 公的な実証の51.4%は、取引先と双方で電子データ連携した中小企業の平均で、1社だけの導入では効果が得られないとされる。
- 削減幅は、移ってもらえる取引先の注文件数、注文の形式、既存システムとのつながりで変わり、経路別の件数×一件あたりの分数で自社の見込みを立てられる。
- 休んだ日に止まらないようにするには、代行者の権限と判断を書いた手順書を用意し、代行者が一度通しで処理できるかで確かめる。
- 補助金はソフトウェアの機能要件と最新の公募回の締切を公募要領で確かめ、削減の見込みとは分けて考える。
目次

一人で抱える受発注のうち、オンライン化で減る作業と減らない作業
電話の注文をメモに取り、FAXの注文書を見ながらExcelへ打ち直し、納期の問い合わせには過去のメールを探して答える。
これを一人で回していると、担当者が休んだ日に受発注が止まります。
オンライン受発注で減らせるのは、手入力・転記と、取引履歴を探す時間です。
公的な実証では中小企業の業務時間が平均51.4%減りました。
ただし、これは取引先と双方で電子化した場合の値で、1社だけの導入では効果が得られないとされています1。
自社の作業時間と取引先の利用見込みを測ってから、導入・段階導入・見送りを選びます。
減る作業:手入力・転記・履歴検索
受発注の一件を最初から追うと、同じ内容を何度も書き写していることが見えてきます。
電話で受けた注文をメモに取り、Excelの受注台帳に打ち込みます。
在庫を確かめてから出荷の指示を出し、月末には請求書へまた同じ品番と数量を書きます。
FAXやメールで届いた注文でも、紙や添付ファイルから台帳へ移す作業は変わりません。
一人で担当していると、この書き写しと、書き写しに誤りがないかを見直す時間が、注文の件数に比例して積み上がります。
オンライン受発注は、取引先が注文の内容を画面に入力し、その内容がデータのまま届く仕組みです。
受け取る側が紙を見て打ち直す工程がなくなるため、最初の入力と、その入力を元の注文書と見比べる照合が減ります。
中小企業庁のミラサポplusは、受発注情報の電子データ連携による効果として、2点を挙げています。
紙の帳票をデータで一元管理することで手入力による人為的なミスがなくなる点と、過去と現在の取引データを検索しやすくなる点です1。
検索の時間は見落とされがちです。
取引先から「先月と同じものを同じ数で」と電話が来たときに、紙の注文書の束やメールの受信箱をさかのぼって前回の内容を探す場面を思い浮かべてください。
取引データが一か所にまとまっていれば、取引先名や品番から前回の注文をたどりやすくなります。
納期の問い合わせや請求額の確認でも、探す場所が一つになることで、応対の途中で電話を保留にする時間が短くなります。
減りにくい作業:取引先の移行・例外注文・在庫と納期の調整
一方で、オンラインにしても担当者の手元に残る作業があります。
先の資料は減る作業を説明していますが、残る作業には触れていません。
ここからは、業務の流れから見た整理です。
一つ目は、取引先に使い始めてもらうまでの作業です。
まず、どの取引先に案内するかを決めます。
次に、ログインの方法や注文の入れ方を伝えます。
使い始めのうちは、「入力したが届いているか」「間違えて送ったので直したい」といった問い合わせにも答えることになります。
導入する会社の担当者が一人なら、この案内と問い合わせ対応もその一人に集まります。
二つ目は、電話やFAXのまま届く注文です。
すべての取引先が同時に移るとは限らないため、移行の途中では、画面で届く注文と紙で届く注文の両方を見ることになります。
紙の注文を新しい仕組みに打ち込む運用にすれば、転記の作業は残ったまま、書き写す先が変わるだけです。
二つの経路を照らし合わせる手間が、一時的に増えることもあります。
三つ目は、判断を伴う注文です。
在庫が足りないときに分けて納めるか、急ぎの依頼を他の注文より先に出すか、仕様の変更を受けられるか。
注文の届き方を変えても、こうした調整の判断は残り、取引先への回答も担当者が行います。
在庫や納期の情報が受発注の画面とつながっていなければ、在庫表を開いて確かめる作業もそのままです。
冒頭の「転記と確認、問い合わせ対応」に当てはめてみます。
転記、転記の誤りを探す確認、過去の注文を探す問い合わせ対応は、減らせる側にあります。
取引先の移行、紙や電話の注文、在庫と納期の調整は、残る側にあります。
自分の一日がどちらに偏っているかで、オンライン化から得られる時間は大きく変わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先がオンラインで注文を入力
- 手入力・転記が減る
- 転記の照合が減る
- 取引履歴を検索しやすくなる
- 取引先が電話・FAXで注文
- 受けた注文の入力が残る
- 二つの経路を照らし合わせる手間が出る
- 在庫不足・急ぎ・仕様変更の注文
- 在庫と納期の調整が残る
- 取引先への回答が残る
時間削減の目安「約5割」は何の数字か:前提と読み方
実証プロジェクトの対象と平均値
オンライン受発注の効果として「業務時間が約5割減る」という説明を目にすることがあります。
公的な資料で確認できる数字は、中小企業庁が平成28年度補正で行った受発注データ連携の実証で、中小企業の業務時間が平均51.4%削減されたというものです1。
実証プロジェクトは12件です。
自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界と、北海道、東京、静岡、愛知、大阪の5地域で、ITベンダーの協力を得て行われました1。
この数字を自社に当てはめる前に、何を測った値かを押さえておく必要があります。
ミラサポplusの記事には、測定の方法、期間、範囲に含めた業務、作業ごとの内訳が書かれていません。
受発注に関わる業務全体の時間なのか、入力や照合といった一部の作業の時間なのかは、この記事からは読み取れません。
また、対象は中小企業共通EDIなどの電子データ連携の実証です。
EDIとは、企業間で受発注などの取引情報を決まった形式のデータでやり取りする仕組みのことです。
特定のオンライン受発注製品の効果を測った値ではありません。
そのため、51.4%は「自社でも半分になる」という見込みとしてではなく、手掛かりとして読むのが妥当です。
データで受け渡すことで、業務時間が平均で約半分減った実証がある、という手掛かりです。
前の節で見たように、一日の大半が電話の応対や在庫の調整で埋まっている担当者の場合、データ化で置き換わる部分はもともと小さく、同じ割合では減りません。
反対に、FAXの注文書を台帳へ打ち直す作業や過去の注文を探す作業が中心なら、置き換わる部分は大きくなります。
同じ51.4%を見ても、自分の作業の内訳によって意味が変わるということです。
1社だけの導入では効果が出にくい理由
ミラサポplusの記事は、1社だけで導入しても効果が得られないことを強調しています。
そのうえで、導入するかどうかは取引先の状況を踏まえて判断するよう述べています1。
51.4%は、取引先と双方でデータをやり取りした実証の値です。
理由は、受発注が相手のいる業務だからです。
たとえば自社が注文を受ける側で、オンラインの注文画面を用意したとします。
それでも取引先がこれまでどおりFAXで注文書を送ってくれば、担当者はそのFAXを見て画面に打ち込むことになります。
入力する場所が台帳から新しい仕組みに変わるだけで、打ち直しも照合も残ります。
自社が発注する側の場合も同じです。
仕入先が注文データを受け取れなければ、送ったあとに電話で届いたかを確かめる手間は消えません。
つまり「オンライン受発注を入れるか」という問いは、「どの取引先と、どの注文をデータでやり取りできるか」という問いに置き換えると答えやすくなります。
自社の仕組みを整えることと、取引先に移ってもらうことは、別々に見積もる必要があります。
| 項目 | 業務時間の削減率(%) |
|---|---|
| 中小企業の平均 | 51.4 |
削減幅が変わる条件:取引先の利用、注文の件数と形式、既存システム連携
取引先のオンライン利用率
削減幅を最も左右するのは、取引先のうちどれだけがオンラインで注文をやり取りするかです。
ここで数えたいのは、取引先の社数ではなく注文の件数です。
取引先の数が多くても、注文が一部の取引先に偏っている会社なら、その数社が移るかどうかで結果がほぼ決まります。
逆に、少量の注文が多くの取引先から少しずつ届く会社では、一社ずつ案内しても、減る時間はゆっくりとしか増えません。
見込みを立てるときは、主な取引先ごとに次の2点を聞いておくと判断しやすくなります。
注文を入れる担当者が普段パソコンやスマートフォンで入力できる環境にあるか、相手の社内ですでに決まった発注の仕組みを使っていないか、です。
共通EDIの実証の説明では、発注する側は契約によって自社の独自システムを使い続けられるとされています1。
自社が注文を受ける側で、相手が自前の発注システムを持つ企業の場合は、相手の仕組みに合わせる形になることもあります。
自社で画面を用意すれば移ってもらえるとは限りません。
取引先が移る理由も考えておきたいところです。
相手にとっては、電話一本で済んでいた注文が画面入力に変わるのは、手間が増えることでもあります。
注文の控えや状況を自分で確かめられるかなど、相手側にとっての利点は製品によって違います。
取引先に何を伝えられるかを、製品を選ぶ段階で確かめておくと、案内のときに説明しやすくなります。
注文の件数と形式
同じ取引先でも、注文の形式によってデータ化の効き方は変わります。
品番と数量と納期で言い切れる注文や、ほぼ同じ品目が繰り返される注文は、画面での入力に置き換えやすい注文です。
受け取る側の打ち直しも、まるごとなくなります。
件数が多ければ、一件ごとに減る時間が小さくても、合計は大きくなります。
反対に、図面や仕様の相談を伴う注文、毎回の内容が違う注文、価格をその都度決める注文は、入力欄に収まりにくい注文です。
電話やメールでのやり取りが残ります。
件数が少なく一件ごとの相談が長い仕事では、オンライン化で減るのは最後の確定の入力くらいで、時間の大部分を占める相談は変わりません。
同じ会社の中でも、定番品の補充は画面で、特注品は電話で、というように注文の種類で分けて考えるほうが、見積もりが実態に近づきます。
基幹・会計システムとの連携の有無
見落としやすいのが、注文が届いたあとの流れです。
オンラインで受けた注文は、出荷の指示や請求書の作成、会計の記帳に使います。
このとき受発注の仕組みとそれらのシステムがつながっていなければ、誰かが受注データを書き出し、別のシステムへ入れ直すことになります。
入口の打ち直しはなくなっても、出口でもう一度転記が残る形です。
一人担当の場合、この出口の転記も同じ人の仕事です。
入口の転記は注文ごとに少しずつ発生しますが、請求や記帳への転記は締めの時期にまとまって発生します。
そのため、日々の入力が減っても、月末の作業はあまり変わらないという結果になりえます。
つながり方は、受発注の仕組みと既存のシステムの組み合わせで変わります。
データをファイルで受け渡して取り込めるのか、取り込むときに品番や取引先の番号を合わせ直す必要があるのかで、残る手間は違います。
製品を比べる際には、受注データを既存のどのシステムのどの項目へ入れたいのかを具体的に示しましょう。
そのうえで、取り込みの方法と、手作業で合わせる部分が残るかを聞くと、比べやすくなります。
自分の作業時間を測る手順
ここまでの条件を自社に当てはめるには、いまの作業時間を経路ごと、作業ごとに分けて測るのが近道です。
特別な計測は要りません。
件数と一件あたりの分数が分かれば、どこが減りうるかを見積もれます。
①月末の請求までを含む一巡りの期間、届いた注文を電話・FAX・メールなど経路別に件数で記録します。
②経路ごとに数件を選び、受付、入力、照合、在庫や納期の確認、取引先への回答、請求への転記に、それぞれ何分かかったかを書き留めます。
③経路ごとに「件数×一件あたりの分数」を作業別に足し上げ、受発注にかかる時間の合計を出します。
④取引先ごとに、オンラインへ移ってもらえそうか、難しそうかの印を付けます。
⑤移ってもらえそうな取引先の注文について、受付の聞き取り、入力、照合の分数を差し引きます。
⑥既存のシステムとつながらない見込みなら、請求への転記の分数は差し引かずに残します。
こうして出た差が、オンライン化で取り戻せそうな時間の見積もりです。
在庫や納期の確認と取引先への回答の分数は、判断が必要な限り残る前提で置いておきます。
見積もりが51.4%と大きく違っていても、自社の注文の形式や取引先の事情を反映した数字のほうが、判断の材料として役に立ちます。
測った記録は、導入後に効果を確かめるときの比較の基準にもなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 電話の注文
- 受付の聞き取り
- 入力
- 在庫や納期の確認
- 取引先への回答
- 請求への転記
- FAXの注文
- 入力
- 照合
- 在庫や納期の確認
- 取引先への回答
- 請求への転記
- メールの注文
- 入力
- 照合
- 取引先への回答
- 請求への転記
導入時と導入後の負担、費用の見方と補助制度
導入前後の負担項目
時間が減るのは取引先が移ったあとで、その前には準備の作業が増えます。
一人で担当している場合、通常の受発注を回しながら準備を進めることになります。
どの時期にどれだけの作業が乗るかを先に並べておくと、計画が立てやすくなります。
導入前には、取引先と品目の一覧を整え、単価や納品先などの登録内容を決め、仕組みの初期設定をします。
台帳の品番の書き方が取引先ごとに違う、同じ品目が別名で登録されている、といった状態なら、まずこの整理から始めることになります。
導入直後は、取引先への案内と使い方の問い合わせ対応に加えて、紙で届く注文との並行運用が続きます。
移行が進んだあとも、品目や価格の変更に合わせた登録内容の更新と、例外の注文への対応は日常の作業として残ります。
繁忙期に準備を重ねると、普段の受発注が遅れる心配が出てきます。
注文の少ない時期に登録内容を整え、取引先への案内は数社ずつ進めるほうが、問い合わせが一度に集中しにくくなります。
案内の順番は、前の節で印を付けた「移ってもらえそうな取引先」のうち、注文件数の多いところから始めると、早い段階で効果を確かめやすくなります。
費用の見積もり項目
費用について、共通EDIの実証の説明では、注文を受ける側は標準に対応したプロバイダーと業務アプリを使うだけでよく、大きな費用はかからないとされています1。
プロバイダーとは、データのやり取りを仲介する事業者のことです。
ただし、これは共通EDIの仕組みについての説明で、個別のオンライン受発注製品の料金を示したものではありません。
製品の料金体系は提供元ごとに異なるため、相場として一つの金額を置くことはできません。
見積もりを比べるときは、金額そのものより、どの項目に費用が発生するかを揃えておくと、判断がぶれにくくなります。
確認しておきたい項目は次のとおりです。
・初期費用と、月額や利用量に応じた費用
・取引先の側に費用が発生するか、発生するなら誰が負担するか
・既存の基幹・会計システムとつなぐための設定や開発の費用
・登録内容の整理や取引先への案内にかかる担当者自身の時間
最後の担当者の時間は請求書に載りませんが、一人担当の場合は導入の可否を左右します。
前の節で見積もった「取り戻せそうな時間」と、準備と移行にかかる時間、毎月の費用を並べてみましょう。
どのくらいの期間で準備の負担を取り戻せるかの目安が見えてきます。
取引先の側に費用が発生する場合は、その説明も案内の手間に加わります。
補助金の機能要件と確認先
費用を抑える手段として、中小企業基盤整備機構が案内している「デジタル化・AI導入補助金2026」のインボイス枠(インボイス対応類型)があります。
この枠では、補助の対象となるソフトウェアに「会計」「受発注」「決済」の機能要件が設けられています2。
ただし、案内のページには「1機能以上」という記述と、脚注の「2機能以上」という記述の両方があり、どの区分にどちらが当てはまるかはページ上で読み取れません。
受発注の機能だけを持つソフトウェアが対象になるかは、公募要領で確かめる必要があります。
補助率は、ソフトウェア等について中小企業で3/4以内、小規模事業者で4/5以内とされています。
補助額のうち50万円以下の部分は3/4(小規模事業者は4/5)、50万円を超える部分は2/3です2。
パソコンなどのハードウェアは1/2以内で、ハードウェアだけの申請はできません2。
申請の時期にも注意が要ります。
第6次の締切は2026年10月30日17時です。
第7回の公募要領は2026年10月に更新されていますが、第7回の日程はページに載っていません2。
この記事をお読みの時点では、第6次の締切を過ぎている可能性が高いため、最新の公募回と締切は案内ページと公募要領で確かめてください。
補助は導入費用の負担を軽くするものです。
補助の対象になったことが、自社での時間削減を約束するわけではありません。
削減の見込みは、取引先の移行と自社の作業の内訳から立てることになります。

一人運用でも止まらないための権限・手順・引き継ぎの整え方
代行者の権限
一人担当で最も困るのは、休んだ日に注文の状況が誰にも分からなくなることです。
取引先から「昨日送った注文は受け付けてもらえたか」と電話が来ても、担当者の机にある注文書や担当者のメールを見られなければ、他の人は答えられません。
取引データが一か所にまとまり、過去と現在の取引を検索しやすくなるという点1は、代わりの人が状況を確かめるための土台になります。
ただし、データがまとまっていることと、代わりの人がそれを見られることは別の話です。
担当者の画面やパソコンの中でしか開けない状態なら、紙の注文書が机の引き出しにあるのと変わりません。
そこで、代わりを務める人を少なくとも一人決め、その人に何を任せるかを先に決めておくことを勧めます。
たとえば、注文の閲覧と受付の確定、納期の回答までは任せ、単価の変更や取引先の登録は担当者が戻ってから行う、といった線引きです。
共有のパスワードを使い回すより、代行者が自分の名前で使える利用者を用意しておくほうが、誰がどの注文を処理したかを後から追えます。
こうした権限の分け方ができるかどうかは製品によって違うため、選ぶ段階で確かめておきたい項目の一つです。
手順書と通し練習
権限を渡しても、代行者が普段の流れを知らなければ処理は止まります。
手順書に書いておきたいのは、操作方法の説明よりも、担当者が頭の中で判断していることです。
新しい注文を一日のどの時点で確認するか、在庫が足りない注文や急ぎの依頼は誰に相談するか、電話やFAXで届いた注文をどう扱うか、取引先からの問い合わせにどこまで答えてよいか。
これらが書かれていれば、代行者が休暇中の担当者に電話で確かめる回数が減ります。
手順書ができたら、代行者に実際の注文を一件、受付から取引先への確認の連絡まで、通しで処理してもらいます。
担当者は横で見ていて、代行者が手を止めた箇所と担当者に聞いた事柄を書き出し、その内容で手順書と権限を直します。
代行者が担当者に聞かずに一度通しで処理できるかどうかが、準備が整ったかを確かめる目安になります。
品目や取引先が変わると手順も古くなるため、長い休暇の前などに改めて通しで処理してもらうと、ずれに気付けます。
こうした準備をしても、何も起きないと約束できるわけではありません。
判断の難しい注文が来たときに担当者の復帰を待つか上長が判断するかを手順書に書いておけば、代行者が一人で抱え込まずに済みます。
オンライン受発注を入れない場合でも、受注台帳を共有の場所に置き、代行者が開ける状態にしておけば、同じ準備の多くは進められます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 代行者が実際の注文を受付から確認の連絡まで通しで処理する
- 手を止めた箇所と担当者に聞いた事柄を書き出す
- 手順書と権限を直す
- 品目や取引先の変更で手順が古くなる
自社の状況別:導入する・段階的に始める・見送るの選び方
導入するのが合う状況
ここまでの条件を重ねると、進め方は三つに分かれます。
どれを選ぶかは、次の組み合わせで決まります。
取引先の移行の見込み、いまの作業時間の内訳、既存のシステムとのつながり、準備にかけられる時間です。
どこからが「多い」「大きい」かは会社ごとに違うため、ここでは条件がそろっているかどうかで考えます。
導入に踏み切りやすいのは、次の条件がそろう場合です。
注文件数の多い主な取引先がオンラインでの注文に前向きで、注文の多くが品番と数量で言い切れる定型のもので、測った作業時間のうち入力・照合・検索の割合が大きい。
注文データを出荷や請求へ渡す方法にも見通しがあれば、入口と出口の両方で転記が減ります。
公的な実証の51.4%も、取引先と双方でデータをやり取りした場合の値でした1。
この状況は、その前提に近いと言えます。
段階的に始めるのが合う状況
前向きな取引先が一部にとどまる、既存システムとのつなぎ方がまだ決まらない、準備に充てられる時間が限られる。
こうした場合は、範囲を絞って始める方法があります。
注文件数の多い取引先や定番品の補充など、データ化しやすい注文から始め、他の注文は当面これまでの経路で受けます。
段階的に始めるときは、導入前に測った作業時間を、移行したあとにもう一度同じ方法で測ります。
実際にどの作業が減り、どこに並行運用の手間が出たかが分かります。
その結果を見て、次に案内する取引先や、既存システムとつなぐかどうかを決めていけば、準備の負担が一人の担当者に一度に集中するのも避けられます。
二つの経路が並ぶ期間が長引くほど照合の手間も続くため、どの取引先をいつまでに移すかの目処は持っておきたいところです。
見送って先に整えるのが合う状況
取引先の多くが電話やFAXを続けたいと考えている、注文の多くが都度の相談で決まる、作業時間の大半が在庫や納期の調整と取引先への回答で占められている。
こうした状況では、オンライン受発注を入れても、紙の注文を新しい仕組みへ打ち込む作業が残り、減る時間は限られます。
1社だけの導入では効果が得られないという指摘1が、最も当てはまる場面です。
見送る場合でも、休めないという悩みには手を打てます。
受注台帳と過去の注文書を共有の場所にまとめて代行者が開けるようにし、代行の手順を書いて一度通しで処理してもらうことは、仕組みを入れなくても始められます。
取引先の状況は変わるため、主な取引先に年に一度ほど注文の方法を聞き直し、条件がそろった時点で改めて検討するのも一つの進め方です。
▼ 図の内容を文字で読む
- 導入する
- 注文件数の多い主な取引先が前向き
- 注文の多くが品番と数量で言い切れる定型
- 入力・照合・検索の割合が大きい
- 段階的に始める
- 前向きな取引先が一部にとどまる
- 既存システムとのつなぎ方が未定
- 準備に充てられる時間が限られる
- 見送って先に整える
- 取引先の多くが電話やFAXを続けたい
- 注文の多くが都度の相談で決まる
- 在庫や納期の調整と回答が作業の大半
減る作業と残る作業の境目は、注文の経路、取引先の事情、既存システムの組み合わせで会社ごとに違います。日々の受発注を回しながら一人で測り、判断するのは負担が大きくなります。
相談では、いまの受発注の経路と作業の流れを一緒にたどり、どの注文から電子化すると転記が減りそうか、どこに手作業が残りそうかを整理できます。無料相談で要件を整理する
取引先に移行を打診するときに聞いておくこと
相手の入力環境から注文の中身、移行の時期へと、話を広げていく順に並べた
- 注文を入れる担当者が、パソコンやスマートフォンで入力できる環境にあるか
- 社内ですでに使っている発注の仕組みがあり、それに合わせる必要があるか
- 繰り返しの定型注文と、都度相談して決める注文が、それぞれどの程度あるか
- 電話やFAXを残したい理由は何か
- いつごろから切り替えられそうか、切り替えに社内の手続きが要るか
主な取引先の多くが入力の手段や移行の時期を答えられない段階なら、段階的に始めるか見送る側で考える
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 減る作業 | 手入力・転記、転記の照合、過去の取引の検索 |
| 残る作業 | 取引先への案内と問い合わせ、紙・電話の注文、在庫と納期の調整 |
| 51.4%の読み方 | 取引先と双方でデータ連携した実証の中小企業平均。自社の見込みではない |
| 効果を左右する条件 | 移る取引先の注文件数、注文の形式、既存システムとのつながり |
| 自社の見積もり | 経路別の件数×一件あたりの分数から、移る注文の入力・照合分を差し引く |
| 費用と補助 | 費用の項目をそろえて比べる。補助の要件と締切は最新の公募要領で確認 |
| 不在時の備え | 代行者の権限、判断を書いた手順書、通しでの処理 |

導入を決めたあとも、取引先への案内の順番、既存システムとのつなぎ方、補助の公募時期など、一人で抱えやすい判断が続きます。 相談では、段階的に始める場合に案内する取引先の順番と、測った作業時間をもとにした見直しの進め方を確かめられます。
よくある質問
取引先が電話やFAXのままの場合、オンライン受発注にしても時間は減りますか。
その取引先の注文については、受けた内容を打ち込む作業が残ります。
仕組みに入力しておけば取引の履歴は一か所にまとまり、後から探しやすくはなりますが、入力と照合の時間はほとんど変わりません。
公的な実証でも、1社だけの導入では効果が得られないと強調されています1。
時間が減るのは、オンラインに移った取引先の注文の分です。
自分の受発注の作業時間はどう測ればよいですか。
月末の請求までを含む一巡りの期間、届いた注文を経路別に件数で記録し、経路ごとに数件について受付、入力、照合、在庫や納期の確認、回答、請求への転記の分数を書き留めます。
「件数×一件あたりの分数」で合計を出し、オンラインに移ってもらえそうな取引先の注文から入力と照合の分を差し引くと、取り戻せそうな時間の見積もりになります。
担当者が休んだ日に注文が止まらないようにするには、何を決めておけばよいですか。
代わりを務める人と、その人に任せる範囲(注文の閲覧、受付の確定、納期の回答など)を決めます。
手順書には操作方法より、注文を確認する時点、在庫不足や急ぎの注文の相談先、問い合わせにどこまで答えてよいかといった判断を書きます。
そのうえで代行者に実際の注文を一件通しで処理してもらい、担当者に聞かずに処理できるかを確かめます。
オンライン受発注の導入に使える補助金はありますか。いつまでに申請すればよいですか。
中小企業基盤整備機構の「デジタル化・AI導入補助金2026」のインボイス枠では、ソフトウェアに「会計」「受発注」「決済」の機能要件があります2。
必要な機能の数はページ上の記述から確定できないため、公募要領で確かめてください。
第6次の締切は2026年10月30日17時で、第7回の日程はページに載っていません2。
最新の公募回と締切を案内ページで確認する必要があります。
基幹・会計システムと連携しない場合、再入力はどれだけ残りますか。
受注データを出荷の指示、請求書、会計の記帳へ移す転記が残ります。
どれだけ残るかは会社ごとに違うため、作業時間を測るときに「請求への転記」を別に記録しておくと、連携しない場合に残る時間がそのまま分かります。
製品を比べる際は、データを取り込めるか、品番や取引先の番号を手で合わせ直す部分が残るかを聞いておきます。
- 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年公開・2026年更新)
- 2 出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「デジタル化・AI導入補助金2026 インボイス枠(インボイス対応類型)」(2026年度)