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手書き注文書からの移行は併用期間を日数で決めない|注文の種類ごとに切替と終了条件を定める

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 手書き注文書からの移行では、併用期間を日数で先に決めず、取引先・経路ごとに切替の順番と終了条件を決める
  • 手書きで届いた注文も自社でシステムに入力して台帳を一本にすれば、取引先の切替を待たずに併用を始められる
  • 手書きを終える判断は、紙の原本と受注データの突き合わせの一致や、入力と確認にかかる時間で行い、満たせなければその取引先だけ延ばす
  • 6〜8週間は社内システムの並行稼働の目安で、取引先ごとの調整期間とは別に見積もる
  • FAX・電話・急ぎの注文は受け方とシステムへ入れる時期を決め、紙の注文書は法人税法上原則7年間保存する

Businesswoman pointing at paperwork on a desk in an office setting, highlighting key data.
▽ 写真の出典元

手書き注文が残ったままシステムを入れるとき、併用はどう組むか

システムを入れると決めたのに、取引先から届く手書きの注文書は急にはゼロになりません。
紙とシステムへの二重入力が増えそうで、手書きをいつやめるかも決められない。
こうした場面では、併用期間を日数で先に決めないほうが進めやすくなります。
手書きで届いた注文も自社でシステムへ入力して台帳を一本にすれば、取引先の切替を待たずに始められます。
そのうえで取引先や経路ごとに切替の順番と終了条件を置き、新旧の突き合わせが一致し、業務時間が許容内に収まったかで終わりを判断します。
残るFAX・電話・急ぎの注文は、受け方と保存の扱いを先に決めておきます。

取引先を待たず始められる入力一本化

手書き注文書からの移行で併用を組むとき、最初に決めるのは期間ではありません。
紙の注文と新しい方式の注文が、社内のどこで一つにまとまるかです。
手書きの注文書やFAXで届いた注文を、受注側の担当者が受け取った段階でシステムへ入力し、受注の記録をシステムの台帳だけに残す。
この記事では、この形を入力一本化と呼びます。
取引先の送り方は今までと変わらなくても、社内で在庫を引き当てたり出荷を指示したりするときに見る記録は一つになります。

併用で負担が膨らむのは、紙の受注簿とシステムの両方に同じ注文を書き、どちらが正しいかを毎回見比べる状態です。
入力一本化では、紙は「受け取った原本」として保管するだけになり、出荷や請求の作業はシステムの台帳から進めます。
紙の側に処理済みかどうかを書き込む作業は残りますが、受注簿を二冊つける必要はなくなります。

この形を土台に置く理由は、取引先の協力を待たずに始められることにあります。
食品の小売・卸売の受注担当者を対象にした調査では、ペーパーレス化をしていない企業が挙げた理由として「アナログな方法に慣れている」が最も多くなっていました3。
回答しているのは受注側の企業自身で、取引先の意向を尋ねたものではありません。
それでも、自社の現場ですら慣れた方法を変えにくいのであれば、注文を送る取引先にも同じ事情があると見ておくほうが計画を立てやすくなります。
なお、この調査はベンダーによるインターネット調査で、対象は食品業です。
他の業種や規模の会社にそのまま当てはまるとは限りません。

一方で、入力の手間は受注側に集まります。
取引先が紙のまま送ってくる限り、入力と確認は自社の仕事として残るため、その工程をどう組むかが併用中の負担を左右します。

段階移行と一斉切替を分ける条件

入力一本化が社内の記録を整える方法だとすれば、段階移行と一斉切替は、取引先の送り方そのものを変える方法です。
ここでいう新しい方式は、Webの受注画面、メールで受け取るデータ、EDI(企業間で受発注データを決まった形式でやり取りする仕組み)など、取引先が自分で注文データを作って送る方式を指します。
段階移行は、取引先や注文経路ごとに順番に切り替えてもらう進め方です。
一斉切替は、期日を決めて全取引先に新しい方式への切替を求める進め方です。

一斉切替は、期日がはっきりする分、併用が長引きにくいように見えます。
ただ、実際には取引先ごとに事情が違い、その調整は個別に残ります。
ピップグループがEDIの通信手順を移行した事例では、取引先1社ごとに日程の調整が必要で、移行が特定の時期に集中すると間に合わない取引先が出ることが報じられています5。
これは2016年の記事で、手書きの注文書ではなく、すでに電子化された取引の通信手段を替える話です。
それでも、送り方を変えてもらうたびに相手側の準備と日程合わせが要るという点は、手書きからの切替にも共通します。

そのため一斉切替が成り立つのは、取引先の数が少なく、全社と事前に個別の調整を済ませられる場合に限られると考えたほうが無理がありません。
取引先が多い場合や、相手の事務体制がまちまちな場合は、協力が得られたところから順に移す段階移行のほうが、期日に間に合わない取引先を抱え込まずに済みます。
どちらを選んでも、まだ切り替わっていない取引先の注文は、入力一本化で受け止めることになります。

三方式の比較(負担・リスク・協力度)

三つの方式は優劣で並べるものではなく、取引先に求める協力の大きさと、受注側に残る入力の負担の間で釣り合いを取るための選択肢です。
入力一本化は取引先に何も求めない代わりに、紙が届く限り入力の手間が続きます。
段階移行は協力してくれた取引先の分だけ入力が減ります。
一斉切替は合意が取れれば入力が一度に減りますが、間に合わない取引先が出たときの受け皿が要ります。

判断が分かれるのは、自社の受注のうちどれだけを少数の取引先が占めているかです。
たとえば注文の多くが一部の取引先から来ている場合、その数社に段階移行で切り替えてもらうだけで、入力の量は大きく変わります。
反対に、小口の注文が多くの取引先から少しずつ届く場合は、一社ずつ切替を頼む手間に比べて減る入力が少なく、入力一本化の工程を整えるほうが先に効いてきます。
どの組み合わせが合うかは自社の注文の内訳で変わるので、方式を先に選ぶより、内訳を見てから順番を組むほうが外れにくくなります。

入力一本化で、経路の違う注文を受注台帳一つに集める(模式図)
手書き・FAX、電話、新しい方式の注文が受注側の入力や取り込みを経てシステムの受注台帳に集まり、紙の原本は保管に回る図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 届く注文
    • 手書き・FAXの注文書
    • 電話の注文
    • 新しい方式の注文
  2. 受注側の入力
    • 受付番号を付けて紙の原本を保管
    • 聞き取りメモをもとに入力
    • 取引先のデータを取り込み
  3. システムの受注台帳
    • 引当・出荷指示・請求はここから進める

併用中に二重入力・転記ミス・取り違えはどの工程で起きるか

受け取り・入力・確認の3工程で見る

入力一本化を土台にすると、ミスが起きやすい場所は「紙を受け取ってシステムに入れるまで」に集まります。
この流れを受け取り・入力・確認の三つの工程に分けると、どこで何が起きるかが整理しやすくなります。

受け取りの工程では、FAX機の受信トレイ、郵便で届いた注文書、電話を受けた人の手元のメモと、注文の置き場が分かれがちです。
どれが入力済みでどれが未処理かが紙の上で分からないと、同じ注文を二度入力したり、一枚を見落としたりします。
入力の工程では、手書きの数字や品番の読み違い、似た商品の取り違え、数量の単位(ケースか個か)の取り違えが起こります。
確認の工程では、読めない字や在庫の不足を取引先に問い合わせている間に、注文の変更が別の経路で届くことがあります。

受注担当者への調査では、FAX・メール・電話で受注している担当者(n=90、複数回答)の60%が、注文書の手入力に手間がかかると答えています3。
同じ調査では、注文確認の連絡の手間、注文変更への対応の遅れ、業務の属人化も上位に挙がり、自由回答にはFAXによる受発注漏れが寄せられていました3。
ここから分かるのは、担当者が手間や課題をどこに感じているかであり、入力ミスがどれだけの割合で起きているかではありません。
それでも、挙がった課題が受け取り・入力・確認のそれぞれに散らばっていることは、一つの工程だけを直しても併用中の負担は残ることを示しています。

入力ルールの置き方

工程ごとの取り違えを減らすには、担当者の注意力に頼るより、紙とデータを対応づける決まりを置くほうが、人による差が出にくくなります。
決まりは工程に合わせて置きます。

  • 受け取り:届いた注文書に受付番号を書き、システムの受注番号と対応づける。
    未処理と処理済みの置き場を分ける
  • 入力:読めない字や判断に迷う品番は推測で入力せず、確認待ちの状態としてシステムに残し、取引先に問い合わせる
  • 確認:変更や取消は新しい注文として入れず、元の注文に紐づけて履歴を残す
  • 読み合わせ:品番・数量・納期は、入力した人とは別の人が紙と画面を見比べる

受付番号があれば、システムの受注一覧と紙の束を突き合わせたとき、入力漏れも二重入力も番号の欠けや重なりとして見つけられます。
確認待ちの状態をシステムに残しておくと、問い合わせ中の注文が担当者の机の上だけに置かれて忘れられることを防ぎやすくなります。
こうした決まりで減るのは、紙とデータのどちらが正しいかを後から探す手間です。
読み違いそのものがなくなるわけではないので、読み合わせの工程は併用中ずっと残ると考えておきます。

読み合わせを誰が担うかは、注文の件数と締めの時刻で変わります。
一人で受注を回している職場では、入力した直後ではなく、時間を置いてから自分で見直すだけでも、入力中の思い込みに気づく機会が増えます。

OCRを使うときは実物で試す

入力の手間を減らす手段として、OCR(紙の文字を読み取ってデータにする技術)、なかでもAIで読み取りを補うAI-OCRを検討する会社もあります。
PFUの解説では、AI-OCRの精度は学習データで大きく左右されるため、導入前に実際のFAX注文書で試すことが大切だとしています6。
この解説はベンダーが自社製品について書いたもので、活字で書かれたFAX注文書を前提にしており、手書きの注文書には触れていません。

手書きの注文書は、書く人によって数字の癖も記入欄の使い方も違います。
OCRを使うなら、資料にある読み取り率の数字ではなく、自社に届いた手書きの注文書を取引先ごとに何枚か読ませ、どの欄で読み違いが出るかを確かめるのが近道です。
読み取りがうまくいっても、減るのは打鍵の手間で、読み取った内容を人が確認する工程は残ります。
前の項の読み合わせは、OCRの結果を見る工程に置き換わると考えておき、確認を省く前提で入力の体制を減らさないほうが安全です。

手書き注文を台帳に入れるまでの3工程と、工程ごとの取り違えと決まり
受け取りでは二重入力・見落とし、入力では数字・品番・単位の読み違い、確認では問い合わせ中の変更の行き違いが起き、それぞれに決まりを置く流れの図1受け取り2入力3確認

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 受け取り
    • 起きやすいこと:二重入力・見落とし
    • 置く決まり:受付番号を書き、未処理と処理済みの置き場を分ける
  2. 入力
    • 起きやすいこと:数字・品番・単位の読み違い
    • 置く決まり:読めない字は推測せず確認待ちで残す
  3. 確認
    • 起きやすいこと:問い合わせ中の変更の行き違い
    • 置く決まり:変更は元の注文に紐づけて履歴を残す

どの注文から先に移し、手書きを終える条件は何で決めるか

切替順の決め方(取引先・経路・頻度)

入力一本化で社内の記録がそろったら、次は取引先に送り方を替えてもらう順番を決めます。
材料は、取引先ごとの注文経路、注文の頻度、注文の中身の三つです。
紙を郵送やFAXで送ってくるのか、電話で伝えてくるのか、すでにメールで送ってくるのか。
毎日のように注文があるのか、月に数回なのか。
決まった品目を決まった数量で頼むのか、毎回内容が変わり変更も多いのか。
これを取引先ごとに一覧にすると、どこから切り替えると入力が大きく減るかが見えてきます。

最初の取引先の選び方には、二つの考え方があります。
一つは、注文が多く内容も定型的な取引先から始める考え方で、切り替わったときに減る入力が大きくなります。
もう一つは、注文は少なくても新しい方式に前向きな取引先で試す考え方で、操作の案内や不具合の洗い出しを小さな範囲で済ませられます。
前者は効果が早く出る一方で、つまずいたときの影響も大きくなります。
後者は効果が小さい代わりに、次の取引先へ案内するときの説明が固まります。

どちらから始めても、切替の時期を一時期に集めないことが大切です。
先に触れたEDI移行の事例のように、取引先ごとに日程を合わせる必要があり、時期が重なると間に合わない相手が出ます5。
受注側でも、新しい方式についての問い合わせ対応と紙の入力が同じ週に重なると、担当者の手が回らなくなります。

一致で決める終了条件

手書きを終える判断を日数ではなく条件で置くとき、型として参考になるのが、販売管理システムを入れ替えるときの切替基準です。
ripla社の解説では、新旧のシステムを並行して動かしたうえで、売掛金残高が一致していること、月次売上に新旧の差がないこと、日次の受注・出荷処理にかかる業務時間が旧方式と比べて決めた範囲に収まっていること、請求書の出力が一致していることを切替の基準とし、満たせなければ切替を延期するとしています4。

この基準は社内のシステム同士でデータを移す場面のもので、手書きの注文との併用や、取引先に送り方を替えてもらう場面は扱っていません。
基準の値も同記事が示す一例で、どの会社にも当てはまる標準ではありません。
借りられるのは、「期日が来たら終える」ではなく「突き合わせが一致したら終える」という判断の形です。

手書き併用に読み替えるなら、取引先ごと、または経路ごとに、次のような条件が考えられます。
紙の原本とシステムの受注データを締めの単位で突き合わせ、件数・数量・金額が一致していること。
その取引先の月次の受注額が、紙の控えと一致していること。
受注入力と確認にかかる時間が、現場で回せる範囲に収まっていること。
その取引先への請求書や納品書が、紙で受けていたころと同じ内容で出ていること。
加えて、新しい方式に切り替えた取引先については、問い合わせや差し戻しが続いていないことも判断材料になります。
これらは上の基準をもとにした編集部の提案で、効果を実際に測ったものではありません。

未達のときの延期

条件を満たせなかったときは、併用を全体で延ばすのではなく、満たせなかった取引先や経路だけを延ばします。
ripla社の解説にある「未達なら延期」という考え方は、期日を守ることより記録の一致を優先するためのものです4。
手書き併用に置き換えると、たとえば突き合わせで数量の食い違いが続いた取引先は、紙での受け付けを続けたまま原因を調べ、次の締めでもう一度判断します。

延期を決めるときに残しておきたいのは、どの条件を満たせなかったか、その原因が自社の入力にあるのか、取引先側の送り方にあるのかという記録です。
原因が自社の入力にあれば入力ルールを見直し、取引先側の操作にあれば案内を変えます。
原因が分からないまま期限だけを延ばすと、次の判断の場でも同じ迷いが繰り返されます。
判断する人と判断の時期も、終了条件と一緒に決めておきます。

確かめること 社内システム移行での基準 手書き併用での読み替え案
記録の一致 売掛金残高が新旧で一致 紙の原本と受注データの件数・数量・金額が締めで一致
売上の一致 月次売上に新旧の差異がない その取引先の月次の受注額が紙の控えと一致
業務時間 日次の受注・出荷処理の時間が旧方式比で許容範囲 受注入力と確認の時間が現場で回せる範囲
帳票の一致 請求書の出力が一致 請求書・納品書が紙で受けていたころと同じ内容で出る
移行の切替基準(一例)と、手書き併用の終了条件への読み替え案(編集部の提案)
記録・売上・業務時間・帳票の4つの確かめる点ごとに、販売管理システム移行の基準と手書き併用での読み替え案を並べて比べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 記録の一致
    • 移行の基準:売掛金残高が新旧で一致
    • 読み替え案:紙の原本と受注データの件数・数量・金額が締めで一致
  • 売上の一致
    • 移行の基準:月次売上に新旧の差がない
    • 読み替え案:その取引先の月次の受注額が紙の控えと一致
  • 業務時間
    • 移行の基準:日次の受注・出荷処理の時間が許容範囲
    • 読み替え案:受注入力と確認の時間が現場で回せる範囲
  • 帳票の一致
    • 移行の基準:請求書の出力が一致
    • 読み替え案:請求書・納品書が紙で受けていたころと同じ内容で出る

併用期間は何で決まり、延びすぎると何が残るか

確認できた2つの時間軸

ここまで期間を日数で示さずに進めてきましたが、目安になる数字がまったくないわけではありません。
ただし手がかりになる数字は、手書き併用の期間そのものを示すものではなく、性質の違う二つの時間軸に分かれます。

一つは、社内で新旧のシステムを並行して動かす検証の期間です。
先のripla社の解説は、販売管理システムのデータ移行では6〜8週間の並行稼働期間を設けることが多く、月次の締めを複数回またいで確かめるのが安全だとしています4。
これは社内の二つのシステムに同じ取引を入れて結果を比べる期間で、取引先が手書きをやめるまでの期間ではありません。

もう一つは、取引先ごとに送り方を替えてもらう調整の期間です。
前述のEDI移行の事例では、取引先1社ごとに日程の調整が必要だとされています5。
こちらは相手の都合で決まる時間で、取引先の数だけ積み重なります。
二つは定義が違うため、足し合わせて「併用は何週間」と見積もることはできません。
社内の検証期間と、取引先ごとの調整期間は、別々に見積もることになります。

日数でなく条件で示す理由

併用全体の終わりは、最後まで切り替わらない取引先の都合で決まります。
先に日数で終わりを決めると、期日が来たときに切り替わっていない取引先に対して、手書きの受け付けを打ち切るか、期日を延ばすかの二択を迫られます。
打ち切れば取引そのものに影響が出かねず、延ばせば期日は意味を失います。

条件で終わりを置くと、取引先ごとに終わる時期がずれることを前提に進められます。
切り替わった取引先から順に手書きの受け付けを終え、残った取引先は例外として扱いを決める、という形です。
ただ、終わりの日を決めないことは、予定を立てないことではありません。
月次の締めごとなど見直しの時期をあらかじめ置き、そのたびに条件を満たした取引先と残った取引先を確かめておくと、併用がいつのまにか続いている状態を避けやすくなります。

長期化で残る負担

併用が長引いたときに重くなるのは、入力そのものより、紙とデータの二つを管理し続けることです。
紙の原本の置き場、受付番号とシステムの対応、例外として受けている取引先の一覧と、管理するものが併用の間ずっと二重になります。

先の調査で挙がっていた注文確認の連絡の手間、変更への対応の遅れ、属人化は、紙で受ける注文が残っている限り続く負担と見ることができます3。
なかでも属人化は長引くほど深まりやすく、「この取引先は紙で来る」「この字はこの品番」という知識が特定の担当者にだけたまっていきます。
その担当者が休んだり異動したりすると、紙の注文だけが処理できなくなります。

見直しの時期には、残っている手書き注文の件数と、その処理にかかっている手間を確かめます。
件数が少なく手間も小さければ、例外として受け方を固定して続けるのも一つの判断です。
件数が減らない場合は、取引先に切替の話をもう一度持ちかけるか、自社の入力工程を増強するかを選ぶことになります。

20代前半の日本人男性が夜のオフィスでの作業をしている場面

手書きをやめてもらう連絡と、やめられない取引先・緊急注文の例外

取引先への案内の組み立て

取引先に送り方を替えてもらう案内は、全社に同じ文面を一斉に送るより、取引先ごとに組み立てるほうが話が進みやすくなります。
取引先ごとに日程の調整が要るという事例の通り、相手の事務の体制や注文の頻度によって、切替に必要な準備が違うためです5。

案内に入れておきたいのは、次の点です。

  • 何を変えてほしいのか(紙やFAXから、どの方式へ替えるのか)
  • 取引先側で増える作業と、減る作業
  • 切替を始める時期と、その間も従来の方法で注文を受け付けること
  • 操作で困ったときの問い合わせ先

取引先にとって送り方を替えることは、こちらの都合で手間が増える話に聞こえがちです。
新しい方式で取引先の側に何が変わるのか、たとえば注文の履歴を見返せるかどうか、受付の確認が届くかどうかを具体的に伝えられるかで、受け止め方は変わります。
ただし、どれが当てはまるかは導入する方式の仕様によるため、実際に確かめた範囲だけを伝えます。
文面の作り方は取引先との関係で変わり、決まった型があるわけではありません。

FAX・電話・緊急注文の例外

切替が進んでも、手書きの注文がすべて消えるとは限りません。
残りやすいのは、FAX、電話、そして急ぎの注文です。
これらを例外として扱うなら、例外のまま放っておくのではなく、受け方と記録の残し方を決めておきます。

FAXの注文は、紙で届く点で手書きの注文書と同じです。
受け取ったら受付番号を付けてシステムに入力するという、入力一本化の流れにそのまま乗せられます。
電話の注文は、紙の原本がない点が違います。
聞き取ったメモが原本の代わりになるため、品番・数量・納期を書く欄を決めた用紙を使い、電話口で復唱し、受けた人の名前と時刻を残してからシステムに入力します。

急ぎの注文を手書きや電話で受けるのは、併用を終えた後も残しやすい例外です。
残す場合は、どんなときに急ぎとして受けるか、誰が受けてよいか、受けた後いつまでにシステムへ正式な注文として入れるかを決めておきます。
この最後の点が抜けると、急ぎの注文だけが台帳の外で処理され、請求や在庫の数字が合わなくなります。
例外の件数を見直しの時期に数えておくと、急ぎのはずの注文が日常の注文になっていないかにも気づけます。

注文書の保存期間

紙の注文書をどれだけ保存するかは、併用中も併用後も避けて通れない問題です。
受注担当者への調査でも、約3割が注文書の管理(保管義務)を煩雑だと答えています3。

法人税法では、帳簿書類はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存することになっています1。
対象の書類には注文書・契約書・領収書が例示され、自社で作った書類の写しも含まれます1。
欠損金が生じた事業年度など、より長い保存が求められる例外もあります1。
システムに入力したからといって紙の注文書の保存が要らなくなるわけではなく、受け取った注文書も、自社で作って渡した書類の控えも、保存の対象になりえます。

一方、取引先が新しい方式で注文データを送ってくるようになると、保存の考え方が変わります。
国税庁の電子帳簿保存法の概要では、注文書などの取引情報を電磁的方式でやり取りする電子取引について、一定の要件の下で電磁的記録を保存する義務があるとされ、EDIやインターネットを通じた取引も対象に含まれています2。
つまり併用中は、紙で届いた注文と、データで届いた注文とで、保存の扱いが分かれます。

迷いやすいのは、紙で受け取った注文書をスキャンしてシステムに取り込んだ後、紙を捨ててよいかどうかです。
この扱いには電子帳簿保存法上の要件が関わるため、紙を廃棄する運用に変える前に、国税庁の資料や顧問の税理士に確かめてから決めます。
決まるまでは受付番号の順に紙の原本を保管しておけば、システムの受注データと照らし合わせることもできます。

残る注文 原本になるもの 受けるときの決まり システムへ入れる時期
FAX 受信した紙 受付番号を付けて置き場を一つにする 受け取りの都度
電話 決まった用紙の聞き取りメモ 品番・数量・納期を復唱し受けた人と時刻を残す メモを残した後
急ぎの注文 手書きのメモや注文書 受けてよい場合と受ける人を限る 決めた期限までに正式な注文として
併用後も残りやすい3種類の注文の受け方と、台帳へそろえる時期(模式図)
FAX、電話、急ぎの注文について、原本になるもの、受けるときの決まり、システムへ入れる時期を分けて示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • FAX
    • 原本:受信した紙
    • 決まり:受付番号を付けて置き場を一つにする
    • 入れる時期:受け取りの都度
  • 電話
    • 原本:決まった用紙の聞き取りメモ
    • 決まり:品番・数量・納期を復唱し、受けた人と時刻を残す
    • 入れる時期:メモを残した後
  • 急ぎの注文
    • 原本:手書きのメモや注文書
    • 決まり:受けてよい場合と受ける人を限る
    • 入れる時期:決めた期限までに正式な注文として

取引先ごとの経路や注文の頻度を並べて、どこから切り替え、どの条件で手書きを終えるかを決めるには、自社に届いている注文の実物と内訳を見ながら考える必要があるため。

現在の注文経路と取引先の内訳をもとに、入力一本化で始める範囲と、取引先ごとの切替順・終了条件の置き方を一緒に確かめられます。無料相談で要件を整理する

手書き注文書からの移行で併用を組む三つの方式

取引先に求める協力の大きさと、受注側に残る入力の負担で三つの方式を並べた。

  • 入力一本化:取引先の送り方は変えず、受注側が受け取った注文をすべてシステムへ入力する。取引先の協力はほぼ要らないが、紙が届く限り入力と確認の負担は自社に残る
  • 段階移行:協力が得られた取引先や経路から順に新しい方式へ切り替えてもらう。切り替わった分だけ入力が減り、取引先ごとの日程調整を分散できる
  • 一斉切替:期日を決めて全取引先に切替を求める。合意が取れれば入力が一度に減るが、間に合わない取引先が出たときの受け皿と個別調整が要る

入力一本化を土台に置き、協力が得られた取引先から段階移行に進める。一斉切替は取引先が少なく、全社と事前に個別調整を済ませられる場合に向く。

要点の整理

軸 基準
併用の土台 手書きで届いた注文も自社でシステムに入力し、受注台帳を一本にする
切替の順番 取引先ごとの経路・頻度・注文の中身で決め、切替の時期を一時期に集めない
終了の判断 日数ではなく、紙の原本と受注データの一致、業務時間、帳票の一致で判断する
未達のとき 満たせなかった取引先・経路だけを延ばし、原因と次の判断時期を記録する
期間の見積もり 社内の検証期間と取引先ごとの調整期間は別々に見積もり、足し合わせない
残る例外 FAX・電話・急ぎの注文は受け方とシステムへ入れる時期を決める
保存 紙の注文書は法人税法上原則7年間。データで届く電子取引は電磁的記録の保存義務がある
30代前半の日本人男性が提案書の説明をしている場面

例外として残る注文の受け方や見直しの時期は、取引先との関係と自社の運用で答えが変わり、一般的な考え方だけでは決めきれないため。 残る手書き・FAX・電話・急ぎの注文をどう受けてシステムにそろえるか、見直しの時期をどこに置くかを、自社の状況に沿って整理できます。

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よくある質問

FAXや電話で来る注文は、手書きと同じ扱いでよいですか。

FAXは紙で届く点で手書きの注文書と同じなので、受付番号を付けてシステムに入力する流れにそのまま乗せられます。
電話は紙の原本がないため、品番・数量・納期を書く欄を決めた用紙にメモを取り、復唱して受けた人と時刻を残してから入力します。
入力した後は、どの経路の注文もシステムの台帳だけで扱います。

緊急注文だけ手書きを残してもよいですか。

残すこと自体は運用上の判断として成り立ちます。
その場合は、どんなときに急ぎとして受けるか、誰が受けてよいか、いつまでにシステムへ正式な注文として入れるかを決めておきます。
事後の入力が抜けると請求や在庫の数字が合わなくなるため、見直しの時期に例外の件数を数え、急ぎの注文が常態化していないかも確かめます。

取引先に切替を断られたら、併用はいつまで続けますか。

期日で打ち切るより、その取引先を例外として扱い、受注側の入力一本化で受け止め続けるほうが取引への影響を抑えられます。
そのうえで月次の締めなど見直しの時期を決め、残っている手書き注文の件数と処理の手間を確かめます。
件数が少なければ受け方を固定して続け、減らなければ切替の話をもう一度持ちかけるか、入力工程を増強するかを選びます。

紙の注文書は、システムに入力した後も保存が要りますか。

法人税法では、注文書を含む帳簿書類は確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間の保存が必要で、欠損金が生じた事業年度などにはより長い例外があります。
システムに入力しただけで紙の保存が不要になるわけではありません。
スキャン後に紙を廃棄してよいかは電子帳簿保存法上の要件が関わるため、国税庁の資料や顧問の税理士に確かめてから決めます。

併用中の入力担当は何人で見ればよいですか。

適切な人数は、手書きで届く注文の件数や締めの時刻で変わるため、一律には決められません。
人数より先に決めたいのは、入力と確認を同じ人だけに頼らないことです。
品番・数量・納期の読み合わせを入力者とは別の人が行えるか、一人の職場なら時間を置いて見直せるかで体制を考え、属人化しないよう受付番号や確認待ちの記録をシステムに残します。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
  2. 2 出典:国税庁「電子帳簿保存法の概要」(現行制度)
  3. 3 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
  4. 4 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ」(2026年)
  5. 5 出典:日経BP「ISDN移行のハードルは業界によって様々、EDIなどは早期対応が必要」(2016年)
  6. 6 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)

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  1. Businesswoman pointing at paperwork on a desk in an office setting, highlighting key data./Photo by Pavel Danilyuk on Pexels

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※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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