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締め請求の処理を取引先別の締め日で回す方法|マスタ設計・例外・保存の確認点

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 取引先ごとの締め日・請求対象期間・判定基準・発行期限・支払期日・送付方法を1枚の取引先マスタにまとめ、毎月その表から請求対象を決める
  • 締め日翌日の到着、締め後の返品・値引き、休日の締め日は、取引先との合意と自社の会計処理の方針で決めてマスタに書き、迷った結論を書き戻す
  • インボイスのまとめ記載は課税期間の範囲内なので、締め日が期末とずれる取引先は期末の月に記載を区切る
  • 手作業を続けるか切り替えるかは、訂正の原因が転記に偏るか、マスタの更新漏れに偏るかを数えて判断する
  • 電子で送った請求書はデータのまま検索できる形で保存し、法人の原則7年と取適法の2年の長い方に合わせる

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▽ 写真の出典元

締め日が混在すると毎月何が起きるか:まず「請求対象の決め方」を一枚の表にする

20日締めの取引先と月末締めの取引先が混ざると、月末のたびに「この納品はどちらの請求に入るのか」「A社の請求書はいつまでに出すのか」を思い出しながら処理することになります。
条件が担当者の記憶にしかなければ、確かめる手段もありません。
締め請求の処理を安定させるには、取引先別の締め日・請求対象期間・発行日・支払期日・送付方法を1枚の取引先マスタにまとめ、毎月その表から請求対象を決めることが中心になります。
例外の線引き、インボイスの記載、請求書の保存も、この表を起点に整理できます。

20日締めと月末締めが並ぶと迷う場面

仮に、取引先Aが20日締め、取引先Bが月末締めだとします。
3月21日にAへ納品した分は、Aの3月20日締めには入らず、4月20日締めの請求に回ります。
同じ3月21日にBへ納品した分は、Bの3月末締めの請求に入ります。
同じ日に出荷していても、請求書に載る月は取引先によって変わります。

迷いが集中するのは、20日から月末までの期間です。
Aの請求書を作っている最中にも、Bへの納品は続いています。
Aの集計に21日以降の納品を含めてしまう、Bの集計で前月の残りを拾い忘れる、といった取り違えはこの重なりの中で入り込みます。
Aとは「締め後5営業日以内に発行」、Bとは「翌月10日までに郵送」のように発行の約束まで違えば、締め日の確認と発行期限の確認がそれぞれ必要になります。

こうした条件が、取引開始時のメールや過去の請求書の控え、担当者の記憶に散らばっているとどうなるでしょうか。
担当者が慣れているうちは回っていても、取引先が増えた月や担当が交代した月に、どの条件が正しいのかを確かめる手段がなくなります。
毎月必要なのは「今月はどの取引先の、どの期間分を、いつまでに請求するか」という一覧です。
それを毎回記憶から組み立てるのではなく、表から読み取れる状態にしておくことが出発点になります。

締め→集計→請求書作成→送付の順に並べる

毎月の処理は、取引先ごとの条件表を起点に、次の順で進めると流れが一本になります。
これは外部の標準手順ではなく、取り違えが起きやすい箇所を表の参照に置き換えるための編集部の提案です。

  1. 締め日の確認:取引先マスタから、今月締め日を迎える取引先と、それぞれの請求対象期間を一覧にする
  2. 集計:受注・納品の記録から、対象期間に入る取引を取引先ごとに抜き出す。
    期間の境目にある取引は、マスタに書いた判定基準(納品日か検収日かなど)で振り分ける
  3. 請求書作成:抜き出した取引を税率ごとに区分し、記載事項をそろえて請求書にする
  4. 送付と保存:マスタに書いた送付方法で送り、送った請求書の控えを決めた保存先に残す
  5. 記録:判定に迷った取引や条件の変更があれば、マスタに書き戻す

要は、1番目の「今月誰に請求するか」を記憶ではなく表から始めることです。
20日締めと月末締めが混ざる会社では、この流れが月に2回まわります。
15日締めの取引先が加われば3回です。
締め日の数だけ同じ手順を繰り返すことになるので、手順そのものは毎回同じにしておき、取引先ごとの違いは表の中身だけに閉じ込めます。

5番目の記録を手順に入れているのは、例外の判断を翌月以降に引き継ぐためです。
ある月に「20日に出荷して21日に着いた分はどちらか」と迷って決めた結論がマスタに残っていなければ、翌月にまた同じ迷いが起きます。
ただし、流れの細部は取引条件や会計処理の方針によって変わるため、実際の契約内容と照らして調整する前提です。

締め請求の1サイクル(模式図)。書き戻した判断が次の締め日の確認で使われる
締め日の確認、集計、請求書作成、送付と保存、記録が円環状に並び、記録から次の締め日の確認へ戻る図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 締め日の確認
  2. 集計
  3. 請求書作成
  4. 送付と保存
  5. 記録

取引先マスタに持たせる項目:締め日・対象期間・発行日・支払期日・送付方法

最低限そろえる項目

前の節で起点にした表の中身を、ここで決めます。
取引先ごとに1行を使い、次の項目を列として持たせます。

  • 締め日:20日、末日など。
    月末締めは「31日」ではなく「末日」と書く
  • 請求対象期間:始期と終期(例:前月21日〜当月20日)
  • 締め日の判定基準:納品日・検収日など、どの日付で期間に振り分けるか
  • 返品・値引きの扱い:送った請求書を差し替えるのか、次回の請求で差し引くのか
  • 請求書の発行期限:締め後何日以内か、または毎月何日までか
  • 支払期日:取引先と合意した条件
  • 送付方法:郵送、メール、取引先が指定する受付方法など
  • 保存先:送った請求書の控えを置く場所とファイル名の規則
  • 条件の適用開始日:条件が変わった場合に、いつの取引から新しい条件を使うか

締め日と請求対象期間を別の列にしているのは、「20日締め」という言葉だけでは、期間の始まりが前月21日であることが表に書かれないからです。
担当者には当たり前でも、引き継いだ人や、月末締めの取引先しか扱ったことのない人には読み取れません。
月末締めを「末日」と書くのも同じ理由で、2月や30日で終わる月に「31日」と書かれた表を見て迷わないようにするためです。

判定基準と返品・値引きの扱いは、次の節で扱う例外の判断を、あらかじめ表に置いておくための列です。
適用開始日は、取引先の締め日が途中で変わったときに、変更前の取引を古い条件で、変更後の取引を新しい条件で振り分けるために使います。
送付方法の列は保存とつながっています。
メールなどの電子データで送る取引先の分は、送った請求書をデータのまま保存する対象になるため、保存先の列と合わせて決めておくと、後の作業が表の一か所で済みます。

支払期日の設計で受領日起算の制約を見る

支払期日は、取引先との合意で決まる項目です。
マスタには合意した条件をそのまま写しますが、取引の種類によっては法律上の上限があります。
公正取引委員会は取適法の委託事業者の義務として、支払期日を給付の受領日(役務提供委託では役務の提供日)から60日以内で、合意のうえできる限り短い期間に定めることを挙げています2。
検査をするかどうかは問われません2。

請求書を出す側が受注者であれば、この義務を負うのは発注する取引先です。
同じく委託事業者の義務として、発注時に当事者名・給付の内容・代金額・支払期日などを記載した書面または電磁的記録を直ちに交付することも挙げられています2。
対象取引であれば、マスタの支払期日はこの発注の書面にある条件から写しておくと、どこに根拠があるかを後からたどれます。
反対に、自社が外注先へ発注して代金を支払う側でもあるなら、自社がこの制約の中で支払期日を決める立場になります。

締め請求で気をつけたいのは、納品日から支払日までの日数が、納品した日によって変わることです。
たとえば20日締め・翌月末払いの取引で3月20日に納品すると、締めは3月20日、支払いは4月30日で、納品から41日後です。
同じ条件で3月21日に納品すると、締めは4月20日、支払いは5月31日になり、71日後になります。
締め日の直後に納めた分ほど、支払いまでが長くなります。

このような締め単位の支払条件が、受領日から60日以内という上限とどう関係するかは、公正取引委員会の概要の説明だけでは判断できません。
対象取引に当たる場合は、運用基準などで確かめるか、取引先と条件を確認する必要があります。
マスタに支払期日の条件だけでなく、取適法の対象取引かどうかの欄を設けておくと、確認が要る取引先を表の上で見分けられます。

マスタの列と、それぞれが決める判断(模式図)
締め日と請求対象期間、判定基準と返品・値引きの扱い、支払期日、送付方法と保存先の4つの列が、それぞれ支える判断につながる図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 締め日・請求対象期間
    • 集計でどの取引を抜き出すかが決まる
    • 期間の始まりが表に残る
  • 判定基準・返品・値引きの扱い
    • 境目の取引の振り分け先が決まる
    • 差し替えか次回の差し引きかが分かる
  • 支払期日・取適法の対象取引かどうか
    • 受領日から60日以内の確認が要る取引先を見分けられる
  • 送付方法・保存先
    • 電子で送った請求書をデータのまま保存する対象かが決まる
    • 置き場所とファイル名の規則がそろう

締め日後の納品・返品・値引き・休日にあたる締め日は、どちらの請求に入れるか

判定基準をマスタに書く

締め日の境目で迷う取引を、迷った月にその場で決めていると、月ごとに判断がぶれます。
例外そのものはなくせないので、どの日付で判定するかを取引先ごとに先に決め、マスタに書いておく方が安定します。

代表的なのは、締め日に出荷して翌日に届いた取引です。
20日締めの取引先Aへ3月20日に出荷し、21日に届いたとします。
出荷日で見れば3月20日締めの分、納品日で見れば4月20日締めの分です。
Aが受け取った後に検品してから受け入れる運用なら、検収日を基準にする考え方もあり、その場合はさらに後ろにずれることがあります。
どの日付を使うかは取引先との合意と自社の会計処理の方針で決める事項で、取引先によって答えが異なることがあります。

締め後に見つかった返品や値引きも同じです。
すでに送った請求書を差し替えるのか、次回の請求で差し引くのかによって、取引先の受け入れ側の処理も変わります。
どちらにするかを取引先と決め、マスタの「返品・値引きの扱い」の列に書いておけば、発生のたびに先方へ問い合わせ直す手間が減ります。
次回の請求で差し引く場合は、元の取引の税率が分かるように記録しておくと、後の節で触れる税率ごとの区分を崩さずに済みます。

締め日が土日祝にあたる場合は、二つのことを分けて考えると整理しやすくなります。
一つは請求対象期間で、締め日が休日でも期間そのものは変えないのか、前営業日で区切るのか。
もう一つは発行日で、休日の前に前倒しで出すのか、翌営業日に出すのか。
どちらも取引先との取り決めで決まる部分なので、取引開始時や条件を見直す機会に先方の希望を聞き、マスタに書いておきます。

こうして判定基準を表に置くと、毎月の判断は「迷ったら決める」から「表を見て振り分ける」に変わります。
表に書いていない新しい種類の例外が出たときだけ判断し、その結論を書き戻せば、同じ迷いを繰り返さずに済みます。

課税期間をまたぐ請求の分け方

取引先との合意だけでは決められないのが、課税期間との関係です。
課税期間は、消費税を計算する単位となる期間のことです。
国税庁の説明では、適格請求書(インボイス)の記載事項に取引年月日が含まれ、一定期間の取引をまとめて記載する方法は課税期間の範囲内で認められています1。
締め請求は複数日の取引を1枚にまとめる仕組みなので、このまとめの範囲が課税期間を越えないようにする必要があります。

たとえば自社の課税期間の末日が3月31日で、20日締めの取引先Aがあるとします。
Aの4月20日締めの請求は3月21日から4月20日までなので、課税期間の末日をまたぎます。
この場合、3月21日〜31日の分と4月1日〜20日の分は、課税期間の末日で区切って記載することになります。
区切った記載をどのような書式にするかは、国税庁の説明や顧問の税理士に確かめながら、取引先の受け入れ方と合わせて決めます。

このとき影響を受けるのは、締め日が課税期間の末日とずれている取引先だけです。
課税期間が月末で終わる会社なら、月末締めの取引先Bの請求は期末で自然に区切られ、期間をまたぎません。
一方で20日締めや15日締めの取引先は、期末を含む月だけ分けて記載する必要が出ます。
マスタの締め日の列を見れば、期末の月にどの取引先の請求を分ける必要があるかを前もって洗い出せます。

境目の取引や返品の振り分けは取引先との合意で決めるものでしたが、課税期間での区切りは制度上の制約です。
判定基準を取引先と決めるときにも、期末の月の扱いだけは合意で動かせない前提として置いておきます。

場面 迷う点 扱いを決める根拠
締め日に出荷し翌日に到着 出荷日・納品日・検収日のどれで振り分けるか 取引先との合意と自社の会計処理の方針
締め後に返品・値引きが判明 送った請求書を差し替えるか次回の請求で差し引くか 取引先との合意と自社の会計処理の方針
締め日が土日祝 対象期間を動かすか、発行日だけを前後させるか 取引先との取り決め
請求対象期間が課税期間の末日をまたぐ まとめて記載できる範囲 制度(まとめ記載は課税期間の範囲内)
例外の扱いを決める根拠の違い(模式図)
出荷・納品・検収の振り分けと返品・値引きは合意と会計処理の方針、休日の締め日は取引先との取り決め、課税期間をまたぐ請求は制度で決まることを分けた図出荷・納品・検収の振り分けと返品・値引きは合意と会計処理の方針、休日の締め日は取引先との取り決め、課税期間をまたぐ請求は制度で決まることを分けた図取引先との合意と会計処理の方針で決める出荷日・納品日・検収日のどれで振り分けるか返品・値引きを差し替えにするか次回の差し引きにするか取引先との取り決めで決める休日にあたる締め日の請求対象期間と発行日制度で決まる課税期間をまたぐ請求は、まとめて記載できるのが課税期間の範囲内

▼ 図の内容を文字で読む
  • 取引先との合意と会計処理の方針で決める
    • 出荷日・納品日・検収日のどれで振り分けるか
    • 返品・値引きを差し替えにするか次回の差し引きにするか
  • 取引先との取り決めで決める
    • 休日にあたる締め日の請求対象期間と発行日
  • 制度で決まる
    • 課税期間をまたぐ請求は、まとめて記載できるのが課税期間の範囲内

請求書に書く内容と税率・まとめ請求の注意:インボイスの記載事項

6項目の記載事項

前の節で決めた期間の区切りを、請求書の書式に落とします。
適格請求書発行事業者として取引先へ交付する請求書には、次の6項目が必要です1。

  1. 作成者の氏名または名称と登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率
  5. 税率ごとに区分した消費税額等
  6. 交付を受ける事業者の氏名または名称

締め請求で書き方が問われるのは、取引年月日です。
1件ごとの日付を並べるほか、「4月1日〜4月20日分」のように対象期間をまとめて書く方法が使えますが、まとめられるのは課税期間の範囲内です1。
前の節で期末の月に記載を分けたのは、この欄に書く期間が課税期間を越えないようにするためでした。

6項目のうち、作成者の名称と登録番号は自社で決まっているので、請求書のひな形に固定しておけます。
交付を受ける事業者の名称と取引年月日(対象期間)は、取引先マスタの列から引けます。
取引内容と税率ごとの金額・消費税額等は、毎月の集計から入ります。
どの項目がどこから来るかを分けておくと、請求書を作るたびに手で埋める範囲が集計結果だけに絞られます。

なお、小売業・飲食店業・タクシー業などは、適用税率と税率ごとの消費税額等のどちらか一方を記載すればよい扱いがあります1。
自社がこれらの業種に当たるかどうかで、ひな形に必要な欄が変わります。

税率ごとの区分

締め請求は複数日の取引を1枚にまとめるため、軽減税率の対象品と標準税率の品が、1か月の中で同じ請求に並ぶことがあります。
1件ずつ見れば税率が1つの取引ばかりでも、まとめた結果として複数の税率を扱う請求書になるわけです。

国税庁の説明では、税率ごとに請求書を分ける方法と、同じ請求書の中で税率ごとに区分する方法のどちらも認められています1。
どちらの方法も認められているので、選び方は取引先の支払処理との相性で決められます。
取引先が税率ごとに別の伝票で処理しているなら分ける方が合い、1枚にまとめて受け取りたい取引先なら区分して記載する方が合います。
選んだ方法もマスタの列に書いておけば、担当が替わっても同じ形で出せます。

集計の段階で、取引ごとの税率を記録から落とさないことも必要です。
締め後の返品や値引きを次回の請求で差し引くとき、元の取引の税率が分からなくなっていると、差し引く金額をどの税率の区分に入れるかを決められません。
返品・値引きの扱いをマスタに書いておくのは、取引先とのやり取りを減らすためだけでなく、この区分を保つためでもあります。

請求書の記載事項の入力元(模式図)
作成者の名称と登録番号はひな形、交付を受ける事業者の名称と取引年月日は取引先マスタ、取引内容と税率ごとの金額は毎月の集計から入ることを分けた図作成者の名称と登録番号はひな形、交付を受ける事業者の名称と取引年月日は取引先マスタ、取引内容と税率ごとの金額は毎月の集計から入ることを分けた図ひな形に固定作成者の名称と登録番号取引先マスタの列から引く交付を受ける事業者の名称取引年月日(対象期間)毎月の集計から入る取引内容税率ごとの金額・消費税額等

▼ 図の内容を文字で読む
  • ひな形に固定
    • 作成者の名称と登録番号
  • 取引先マスタの列から引く
    • 交付を受ける事業者の名称
    • 取引年月日(対象期間)
  • 毎月の集計から入る
    • 取引内容
    • 税率ごとの金額・消費税額等

Excelで回せる範囲と、システムへ切り替える判断軸

切り替えを考える4つの軸

ここまでの手順とマスタは、表計算ソフトでも組めます。
Excelで回している場合、毎月の作業はおおむね、納品記録から取引先ごとに対象期間の取引を抜き出し、請求書のひな形へ写し、PDFにして送り、控えを保存する流れになります。
手作業が集まるのは、抜き出しと写す部分です。
締め日の数が増えるほどこの作業は月に何度も発生し、そのたびに範囲指定の誤りや転記の漏れが入り込む余地が生まれます。

何社を超えたら切り替える、という決まった基準はなく、取引先数だけで判断すると自社の事情を見落とします。
代わりに、次の4つの軸で今の運用を見ます。

  1. マスタの更新漏れ:取引先の条件が変わったのに、表が古いまま請求した例があるか
  2. 例外処理の件数:判定基準で振り分けられず、手で調整した取引が毎月どれくらいあるか
  3. 担当交代への耐性:担当者以外が、表と手順だけで同じ請求書を作れるか
  4. 電子送付と保存:電子で送った請求書を、検索できる形で手作業のまま保存し続けられているか

4つの軸は、どれもシステムを入れれば解決するものではありません。
1番目の更新漏れは、マスタを誰がいつ直すかが決まっていない限り、表計算ソフトでもシステムでも同じように起きます。
2番目の例外処理は、判定基準をマスタに書けていれば件数が減る余地があり、ツールより先に基準の整備で手が打てます。
締め日ごとの集計ができる仕組みを使う場合に減るのは、主にマスタの条件に沿った期間の抜き出しと、請求書への転記の部分です。
マスタの中身が正しいかどうかと、表にない例外の判断は、仕組みを変えても人の確認として残ります。

4番目の保存も、専用のシステムがなければ満たせないわけではありません。
財務省の広報誌は、電子取引データの検索要件を、規則的なファイル名とフォルダの検索機能、または表計算ソフトで作った索引簿でも満たせると説明しています4。
問題になるのは要件を満たす方法があるかどうかより、送るたびにファイル名を付け、索引簿に1行足す作業を、締め日のたびに漏れなく続けられるかどうかです。

自社で数えて確かめる

判断の材料は、自社の数字を数えることで手に入ります。
たとえば直近3か月の請求について、次の件数や状況を書き出してみます。

  • 再発行・訂正した請求書の件数と、その原因(期間の取り違え、転記の誤り、条件の更新漏れなど)
  • 判定基準で振り分けられず、手で調整した取引の件数
  • 締め日ごとに、集計から送付までにかかった作業時間
  • 担当者以外が手順を再現できたかどうか(試したことがなければ未確認として扱う)
  • 電子で送った請求書のうち、ファイル名の規則と索引簿の記入が済んでいるものの割合

数えた結果は、原因の偏りで読みます。
訂正の原因が転記や範囲指定の誤りに集中しているなら、抜き出しと転記を人の手から外す仕組みへの切り替えが効きやすい場面です。
原因が条件の更新漏れや判定基準の未整備に集中しているなら、先にマスタの運用を直す方が先決で、ツールを替えても同じ誤りが残る可能性があります。
作業時間が締め日の直後に偏り、発行期限に間に合わない月がある場合も、転記の負担を疑う材料になります。

ここで挙げた4つの軸と数え方は、編集部が判断の手がかりとして整理したものです。
件数の多い少ないは、取引先数や取引の性質によって受け止め方が変わるため、ある件数を超えたら切り替えるという線は引けません。
同じ数え方を数か月続けて、増えているか減っているかを見る方が、自社の判断には役立ちます。

Close-up of financial documents with calculator and pen, ideal for business management themes.
▽ 写真の出典元

請求書・取引データの保存:電子で送った請求書の残し方と保存期間

検索要件と簡易な満たし方

最後に、送った請求書をどう残すかです。
電子取引データの保存は令和6年1月から、申告所得税と法人税の帳簿書類を保存する義務があるすべての人が対象になっています4。
対象には自社が送ったデータも含まれ、メールで送った請求書のPDFを印刷して紙で保管するだけでは認められません4。
一方、紙でやり取りした請求書をデータにする必要まではありません4。

ここでマスタの送付方法の列が効いてきます。
郵送の取引先と電子で送る取引先が混ざっていれば、保存の方法も取引先ごとに違ってきます。
電子で送る取引先の分は、送ったデータそのものを保存する対象です。

電子取引データには、日付・金額・取引先で検索できること、日付と金額は範囲を指定して検索できること、2つ以上の項目を組み合わせて検索できること、という検索要件があります4。
専用のシステムがなくても、ファイル名を「日付_取引先名_金額」のように規則的に付けてフォルダの検索機能で探す方法や、表計算ソフトで索引簿を作る方法で満たせます4。
締め請求なら、請求書を送った直後の手順にファイル名の付け方と索引簿への記入を組み込んでおくと、締め日の数だけ検索できる記録が積み上がっていきます。

基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、データのダウンロードの求めに応じられれば、検索要件は不要とされています4。
保存そのものが不要になるわけではなく、求められたデータはすべて提出できる状態にしておく必要があります4。
このほか、税務署長が相当な理由があると認める場合の猶予措置もあります4。

7年と2年の保存期間

保存期間は、ひとつの制度だけでは決まりません。
法人の場合、帳簿と、取引に関して作成・受領した書類は、確定申告書の提出期限の翌日から原則7年間保存します3。
青色欠損金が生じた事業年度などは10年です3。
国税庁の説明では注文書・契約書・領収書などが例に挙げられ、請求書という名称は明記されていませんが、送った請求書の控えも取引に関して作成した書類として、この期間を前提に置いておくのが安全です。

取適法の対象取引で委託事業者に当たる場合は、受託取引の内容や代金額などを記載した書類または電磁的記録を作成し、2年間保存する義務もあります2。
この2年は取適法上の義務で、法人税法上の7年とは別の制度です。
2年を過ぎた書類を税務上も処分してよいという意味にはなりません。

期間の違う制度が重なるので、保存の設計は長い方に合わせ、そのあいだ検索できる形で残すと整理がつきます。
マスタの保存先の列には、置き場所とファイル名の規則に加え、何年度分まで残すかを書いておくと、処分の時期を誰が見ても判断できます。
なお、ここで挙げた7年は法人の場合の期間です。
個人事業者の保存期間は別に定められているため、法人の数字をそのまま当てはめないようにします。

締め日ごとの請求が月に何回まわっても、送付方法と保存先がマスタに書いてあれば、保存の手順は毎回同じ形で繰り返せます。
締め日の管理と保存の管理を別々の表に分けず、同じ取引先マスタで扱うのはそのためです。

制度 対象 定めている内容
法人税法上の保存期間 法人の帳簿と取引に関して作成・受領した書類 確定申告書の提出期限の翌日から原則7年(青色欠損金等の事業年度は10年)
取適法の書類保存 委託事業者が作成する受託取引の内容・代金額などの書類・電磁的記録 2年間の保存
電子取引データの保存 帳簿書類の保存義務がある人が電子で送受信したデータ(自社が送ったものを含む) データのまま保存し、日付・金額・取引先で検索できるようにする

取引先ごとの締め日や判定基準は、契約内容と自社の会計処理の方針の両方に関わるため、担当者だけでは線引きを決めきれないことがあります。

今の取引先条件を並べながら、取引先マスタの列と毎月の手順に落とし込めるか、期末の月に記載を分ける必要がある取引先がどこかを確かめられます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

軸 基準
請求対象の決め方 取引先マスタの締め日・請求対象期間・判定基準から毎月決める
境目の取引・返品・休日締め 取引先との合意と自社の会計処理の方針で決め、マスタに書く
インボイスのまとめ記載 課税期間の範囲内。期末をまたぐ請求は期末で区切る
支払期日 取適法の対象取引は受領日から60日以内(委託事業者の義務)
切り替えの判断 訂正の原因が転記に偏るか、マスタの更新漏れに偏るかを数えて見る
保存 電子で送った請求書はデータのまま検索できる形で。法人は原則7年、取適法は2年
A professional organizing paperwork at an office desk with a leather briefcase.
▽ 写真の出典元

手作業を続けるか仕組みを変えるかは、訂正の原因と保存の手順を合わせて見ないと決めにくい判断です。 数えた訂正件数や作業時間をもとに、マスタの運用の見直しで足りるのか、転記を減らす仕組みが要るのかを確かめられます。

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よくある質問

締め日が土日祝にあたる場合、請求書の発行日はどう決めればよいですか。

取引先との取り決めで決める事項です。
考えるべきことは、請求対象期間を動かすかどうかと、発行日を前倒しにするか翌営業日にするかの二つです。
取引先の希望を聞いて取引先マスタに書いておけば、休日にあたる月ごとに迷わずに済みます。

締め後に返品・値引きが出たとき、請求書をどう直せばよいですか。

送った請求書を差し替えるか、次回の請求で差し引くかを取引先と決めておくのが基本です。
どちらを選ぶ場合も、元の取引の税率が分かるように記録を残しておくと、税率ごとの区分を崩さずに処理できます。
決めた扱いは取引先マスタの列に書き、発生のたびに判断し直さないようにします。

月の途中で取引先の締め日が変わったとき、マスタと請求対象をどう切り替えればよいですか。

取引先マスタに条件の適用開始日を書き、変更前の取引は旧条件、変更後の取引は新条件で振り分けます。
切り替えの月は、旧条件の最後の締め日の翌日から新条件の最初の締め日まで、期間に漏れや重なりがないかを取引先と確かめておく必要があります。
たとえば20日締めから月末締めに変わる場合、20日締めの最後の請求の翌日から月末までの分をどの請求に入れるかを、先に合意しておきます。

自社が取適法の対象取引かどうかは、どう確かめればよいですか。

公正取引委員会は、支払期日を受領日から60日以内に定めることや、取引書類を2年間保存することなどを、委託事業者の義務として説明しています2。
自社の取引がこの対象に当たるかは、取引の内容や当事者によって決まります。
公正取引委員会の資料で対象となる取引の範囲を確かめ、判断に迷う場合は専門家に相談してください。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:国税庁「タックスアンサー No.6625 適格請求書等の記載事項」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(2026年)
  3. 3 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(2026年)
  4. 4 出典:財務省「ファイナンス」令和6年8月号 電子帳簿等保存制度の特集(2024年)

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  1. A businessman analyzing financial documents with important data and figures on a desk, ideal for business analytics and accounting themes./Photo by RDNE Stock project on Pexels
  2. Close-up of financial documents with calculator and pen, ideal for business management themes./Photo by Pixabay on Pexels
  3. A professional organizing paperwork at an office desk with a leather briefcase./Photo by cottonbro studio on Pexels

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◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
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