◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- FAX-OCRで減るのは人の打ち込みで、読み取り結果の確認・修正と読めない字の問い合わせは残る。
- FAXは送受信時の圧縮で画質が劣化しやすく、OCR後の確認が必要になる理由になる。
- 公開されている精度の数字は対象・時点・数え方が違い、自社のFAXでの精度は保証しないため、自社のFAXで測り直す。
- 費用は、OCRの費用と確認・修正に残る人件費の合計を、手入力の人件費と比べる。
- 実際に届いたFAXを手入力とOCRの両方で処理し、1枚あたりの処理時間、項目ごとの修正率、確認後に残る誤りで判断する。
目次

FAXの転記が負担なとき、OCRで減るものと人の作業として残るもの
取引先から届いたFAXの注文書を見ながら、品番や数量を受注システムへ打ち込み、合っているかを見直す。
この転記に毎日時間を取られ、FAX-OCRに替えれば楽になるのかを社内で説明しなければならない。
FAX-OCRで減るのは主に打ち込みの作業で、読み取り結果の確認と修正は残ります。
FAXは送受信の途中で画像が圧縮され、文字や罫線がぼやけやすいためです1。
効果は書類の定型度、受信画像の質、確認する範囲で変わります。
公開された精度の数字をそのまま当てはめず、自社のFAXを少量で試して、修正率と1枚あたりの処理時間で判断するのが確実です。
手入力の手間は受注現場でどれくらい挙がっているか
FAXで届いた注文書を転記するとき、担当者は取引先名、品番、数量、単価、納期を一つずつ読み、受注システムや表計算の該当欄へ打ち込みます。
打ち終えたら原本と見比べ、かすれて読めない字があれば取引先へ電話で確かめることもあります。
1枚ごとの作業は短くても、毎日届く枚数が重なれば、転記だけで担当者の手が長く止まります。
この負担は、受注の現場で広く挙がっています。
食品の小売・卸売業で受注を担当する106人に2023年3月に行ったインターネット調査では、FAX・Eメール・電話で受注している90人のうち60%が、注文書の「手入力」に手間がかかると答えました2。
ただし、この数字は複数回答で、FAXだけでなくメールや電話で受けた注文の入力も含みます。
業種も食品に限られるため、FAX転記の負担そのものを測った値ではありません。
それでも、人が注文書を読んで打ち込む作業が手間として意識されやすいことは読み取れます。
手入力の負担を分けてみると、中身は一つではありません。
字を読み取る、キーボードで打つ、原本と見直す、読めない箇所を問い合わせる、という四つの作業が重なっています。
FAX-OCRを検討するときに大切なのは、このうちどれが機械に置き換わり、どれが人の手に残るのかを先に見分けることです。
FAXならではの画質劣化が確認作業を増やす
OCR(光学文字認識)は、画像の中の文字を読み取って、文字データに変える技術です。
FAX-OCRは、受信したFAXの画像にこの技術を使い、注文書の内容をデータにします。
うまく働けば、担当者が一文字ずつ打ち込む作業は、機械が読み取った結果を確かめる作業に置き換わります。
ところが、FAXは紙を直接スキャンした画像よりも読み取りの条件が悪くなりがちです。
OCR製品を提供するPFUは、FAXは送受信のときに画像が圧縮されて画質が劣化し、文字や罫線がぼやけて認識精度が下がりやすく、認識結果の校正・修正の手間が発生すると説明しています1。
これは提供元としての説明で、あらゆるFAX-OCRで同じ程度に起きると測ったものではありません。
それでも、FAXを受け取る側が画質を選べない以上、読み取り結果を人が確かめる工程を前提に考える理由になります。
画質の劣化が厄介なのは、誤りがデータの中に紛れ込む点です。
たとえば、ぼやけた「8」が「3」と読まれた場合、紙を見ながら打つ人なら手を止めて見直せることがあります。
しかし読み取り結果としては、正しい「3」と同じ一つの数字に見えます。
数量や単価の一桁違いは、そのまま出荷や請求の誤りへつながるため、誤りがどこにあり得るかを見ながら確認する必要が残ります。
減るのは打ち込み、残るのは確認と修正
ここまでを受注の流れに置き直すと、FAX-OCRが替えるのは「文字をデータにする」工程です。
手入力では人が読んで打ち込んでいた部分を、機械の読み取りが担います。
一方で、読み取り結果を原本と照らして確認し、誤りを直す工程は残ります。
読めない字を取引先に問い合わせる作業も、人にもOCRにも読めない字である限り、なくなりません。
OCRを使うと、手入力にはなかった作業も加わります。
受信したFAXを読み取りにかける画像として用意する作業、読み取りがうまくいかなかったFAXを手入力に回す判断、読み取り結果を受注システムへ取り込む操作です。
これらの重さは製品と社内の仕組みで変わるため、打ち込みの時間が減った分がそのまま浮くとは限りません。
つまり、手入力とFAX-OCRの比較は「打ち込みがなくなるか」ではなく、「打ち込みの時間が減った分と、確認・修正や前後の作業に移った時間の差」で考えることになります。
この差を見るには、手間・精度・費用を同じ物差しで並べる必要があります。
手入力とFAX-OCRを、手間・精度・費用の同じ軸で比べる
精度の数字は「何を測ったか」で読む
OCRの検討で最初に目に入るのは、認識率や正読率といった精度の数字です。
PFUは、PFU基準帳票を用いたFAX注文書について、従来OCRでの認識率が80%だったのに対し、AI-OCRでは98%だったと示しています1。
AI-OCRは、機械学習を使って文字を認識するOCRを指す呼び方です。
ただ、この数字の検証条件として示されているのは「PFU基準帳票」であることまでで、何枚のFAXで試したのか、どの程度の画質だったのか、認識率を文字単位で数えたのか項目単位で数えたのかは示されていません。
別の数字もあります。
NTTデータが6つの自治体と行った検証では、各団体が実際に使っている73種類の帳票に、雑字やくせ字、悪筆を含む手書きのサンプルを作って読み取り、正読率は約93%でした3。
こちらは自治体の手書き帳票で、FAXではありません。
正読率をどう数えたかや、自治体ごとの内訳も示されていません。
この二つの数字は、対象も時期も定義も違います。
平均を取ったり、どちらが上かを比べたりすることはできません。
二つを並べて言えるのは、精度が帳票の種類、画質、文字の書き方によって変わるので、数字は「何を、どんな条件で測ったか」と一緒に読む必要がある、ということです。
自社のFAXでどれだけ読めるかは、どちらの数字からも保証されません。
数え方の違いが判断にどう響くかは、仮の計算で確かめられます。
仮に認識率が項目単位で98%だとすると、1枚に50項目ある注文書では、平均して1項目ほどの誤りが含まれる計算になります。
文字単位の98%なら、1枚に数百文字ある注文書では、誤る文字の数はさらに増えます。
しかも、その誤りがどこにあるかは読み取り結果だけでは分かりません。
精度が高いほど直す量は減りますが、どの項目を確かめるかという工程そのものは残る、という前の節の話がここにつながります。
費用は構造と前提で比べる
費用の比べ方も、精度と同じく条件をそろえることが要になります。
OCRの料金は製品ごとに仕組みが違うため、一つの製品の金額を相場として扱うことはできません。
ここでは金額ではなく、費用がどんな項目でできているかを見ていきます。
例として、PFUが2025年に発売したDynaEye 11 Entry AI-OCRは、初年度のライセンスと2年目以降の継続ライセンスに分かれ、どちらも使用権とサポートを含み、処理量の上限は「なし」とされています4。
この条件の製品では、処理する枚数が増えても料金は変わらないため、枚数が多いほど1枚あたりの費用は下がります。
ただし、これはこの製品の発売時の条件で、他の製品も同じとは限りません。
読み取った枚数に応じて料金が変わる製品であれば、枚数が増えるほど費用も増えます。
そのため、OCR側の費用を見積もるときは、次の項目に分けて提供元へ確かめると比べやすくなります。
・導入時にかかる費用
・継続して毎年・毎月かかる費用
・読み取る枚数や項目数に応じてかかる費用があるか
・取引先ごとの様式に合わせた設定を、誰がどれだけの手間で行うか
手入力の側にも費用があります。
担当者の作業時間です。
月に届く枚数、1枚あたりの入力時間、見直しにかかる時間を掛け合わせると、転記に使っている時間が分かり、そこに人件費の単価を掛ければ金額にできます。
手入力でどれだけ誤りが起きているかについては、業務を問わず当てはまる公的な数字は見当たりません。
誤り率は、自社の実績から測る項目として扱うのが現実的です。
OCRに替えても、確認・修正の時間は人件費として残ります。
比べるべきは「OCRの費用」と「手入力の人件費」ではなく、「OCRの費用と、確認・修正に残る人件費の合計」と「手入力の人件費」です。
この並べ方をしないと、OCRの効果を大きく見積もりすぎることになります。
3方式の比較表
ここまでの軸で、手入力、定型帳票向けのOCR、AI-OCRを並べると、次のようになります。
定型帳票向けのOCRは、帳票の様式ごとに読み取る位置をあらかじめ設定して使う方式を指します。
表の精度欄は提供元の検証の値で、PFUが「従来OCR」と比べた数字をそのまま載せています。
表のうち判断が分かれやすいのは、最後の「向く書類」の行です。
この行は公開資料が直接示すものではなく、各方式の仕組みから考えた目安です。
どの方式が自社に合うかは、届くFAXの様式の数、手書きの割合、受信画像の質によって変わります。
次の節では、自社のFAXをこの三つに照らして、どこから試すかを考えます。
| 数値 | 何を読んだか | 時点と主体 | この数字から言えないこと |
|---|---|---|---|
| 従来OCR 80% | PFU基準帳票を用いたFAX注文書 | 2025年・提供元の検証 | 自社FAXでの精度、サンプル数、認識率の数え方 |
| AI-OCR 98% | PFU基準帳票を用いたFAX注文書 | 2025年・提供元の検証 | 自社FAXでの精度、サンプル数、認識率の数え方 |
| 約93% | 6自治体の実使用帳票73種の手書きサンプル | 2019年・提供元と自治体の検証 | FAXでの精度、正読率の数え方、自治体別の内訳 |
| 比べる軸 | 手入力 | 定型帳票向けOCR | AI-OCR |
|---|---|---|---|
| 作業の中身 | 人が読んで打ち込み、見直す | 様式ごとに読み取る位置を設定し、読み取り結果を確認する | 機械学習で文字を認識し、読み取り結果を確認する |
| 精度の根拠と条件 | 自社の実績で測る | 提供元の検証で従来OCRは80%(PFU基準帳票のFAX注文書) | 提供元の検証で98%(PFU基準帳票のFAX注文書) |
| 確認・修正の残り方 | 打ち込みと見直しを人が行う | 読み取り結果の確認・修正が残る。様式の違いで設定と修正が増えうる | 読み取り結果の確認・修正が残る。FAXの画質劣化の影響を受ける |
| 費用の構造 | 担当者の作業時間(枚数×入力・確認時間) | 製品ごとの初期・継続・枚数に応じた費用と、様式の設定作業 | 製品ごとの初期・継続・枚数に応じた費用。例としてPFUのEntry AI-OCRは初年度と継続のライセンスで処理量上限なし |
| 向く書類 | 枚数が少ない、読みにくい手書きが多い | 取引先が少なく様式が固定 | 取引先ごとに様式が違う注文書を試す場合 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 機械の読み取りが担う
- 文字をデータにする
- 人の手に残る
- 読み取り結果を原本と照らして確認・修正する
- 読めない字を取引先に問い合わせる
- OCRで加わる
- 受信したFAXを読み取る画像として用意する
- 読み取れなかったFAXを手入力に回す判断
- 読み取り結果を受注システムへ取り込む操作
自社のFAXでは手入力とOCRのどちらが向くのか
取引先ごとにレイアウトが違う注文書
多くの取引先から注文を受けていると、届く注文書の様式はばらばらになりがちです。
A社の注文書は品番が左端にあり、B社は表の右側に数量欄がある、という具合です。
受け取る側は送ってくる取引先に様式をそろえてもらうことが難しいため、様式の違いを前提に方式を考える必要があります。
様式ごとに読み取る位置を設定する方式では、取引先が増えるたびに設定の作業も増えます。
取引先が数十社あれば、設定とその後の調整が導入の大きな負担になり得ます。
この場合は、様式ごとの設定に頼らずに項目を読み取れることをうたうAI型の製品から試す、というのが一つの考え方です。
ただし、様式の違いにどこまで対応できるかは製品によって違うため、実際に取引先ごとのFAXで試して確かめる必要があります。
様式が固定で少数の取引先
反対に、注文の大半が少数の取引先から決まった様式で届くなら、事情は変わります。
様式の数が限られていれば設定の手間も限られるため、定型帳票向けの方式でも足りる場合があります。
取引先と相談して、自社が用意した注文書の様式で送ってもらえる関係であれば、なおさら様式は安定します。
枚数がもともと少ない場合や、手書きの注文書が多い場合は、手入力のままにする判断もあり得ます。
自治体の手書き帳票での検証では約93%の正読率が得られていますが、これはFAXではない帳票での結果です3。
FAXで届く手書きの注文書は、手書きの読みにくさに画質の劣化が重なるため、試してみるまで読み取りの程度は分かりません。
確認・修正の量が手入力と変わらないほど多ければ、OCRに替えても手間は減りません。
画質を上げる受信データの使い方
どの方式を選ぶ場合でも、読み取りにかける画像の質は受け取る側で改善できる余地があります。
PFUは、FAXのOCRで精度を上げるポイントとして、FAXに対応したAI-OCRを使うこと、紙をスキャンせずに複合機の受信データを使うこと、傾きや拡大縮小を補正すること、の三つを挙げています1。
これは提供元の見解で、自社の環境でどれだけ効くかは試してみないと分かりません。
二つ目の点は、いまの運用を見直すきっかけになります。
受信したFAXをいったん紙に印刷し、それをスキャナーで読み込んでからOCRにかけると、送受信での劣化に、印刷とスキャンでの劣化が重なります。
複合機が受信したFAXを画像データとして保存したり、フォルダやメールへ転送したりできる設定があれば、そのデータを直接使うほうが劣化の重なりを避けられます。
まず社内の複合機に、受信FAXをデータのまま取り出す設定があるかを確かめておくと、試験の準備が進めやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 公開された数字(参考値)
- FAX注文書:従来OCR 80%、AI-OCR 98%(2025年)
- 自治体の手書き帳票:約93%(2019年、FAXではない)
- 数字から言えないこと
- 自社のFAXでの精度
- サンプルの枚数と画質
- 項目単位か文字単位かという数え方
- 数字の読み方
- 何を、どんな条件で測ったかと一緒に読む
読み取り結果の確認・修正と、システムへの取り込みをどう運用するか
確認する項目を絞る考え方
読み取り結果の確認が残ることは、提供元も認めています1。
問題は、それをどこまで人がやるかです。
すべての項目を一文字ずつ原本と照らすと、打ち込みの時間は減っても、確認の時間が手入力の見直しより長くなることがあります。
反対に確認を省きすぎると、誤った数量や単価がそのまま受注データに入ります。
そこで、誤ったときの影響の大きさで項目を分けて、確認の濃さを変えるという設計が考えられます。
数量、単価、金額、品番、納期、届け先は、誤ると出荷や請求の誤りに直結するため、全件を原本と照らします。
備考欄や先方の担当者名のように、誤っても業務への影響が小さい項目は、製品が読み取りの確からしさ(信頼度)を示す機能を持っていれば、信頼度が低いと示されたものだけを見る、あるいは抜き取りで確かめる、といった扱いができます。
どの項目を全件確認に入れるかは、自社でその項目を誤ったときに何が起きるかで決まります。
確認の体制を考えるときには、NTTデータの検証で述べられている点も参考になります。
ミスが許されない業務では2名体制で入力している場合があり、その一部にAI-OCRを活用することも検討できる、という指摘です3。
これは自治体業務についての指摘ですが、受注の転記でも、2人が別々に入力して突き合わせている職場はあるかもしれません。
その場合、1人分の入力を読み取り結果に置き換え、もう1人が原本と照らす形にすれば、打ち込みは1人分減り、照らし合わせの仕組みは保てます。
これは考え方の一例で、実際に誤りがどれだけ減るかは試験で確かめる必要があります。
出力形式と取り込み先の確認
確認を終えた読み取り結果は、受注システムや表計算へ渡して初めて転記の代わりになります。
ここでつまずくと、読み取り結果を画面で見ながら受注システムへ打ち直す、という二重の作業が生まれます。
打ち込みを減らすために導入したのに、打ち込みが残る形です。
避けるには、OCR製品がどんな形式で結果を出せるかと、受注システムがどんな形式なら取り込めるかを、導入前に突き合わせておく必要があります。
PFUは2025年の発売ニュースリリースで、後続のシステムに合わせた出力形式へ自動で変換する出力データ変換の機能を挙げています4。
ただし、この記載は製品群全体の機能強化としての説明で、Entry AI-OCR単体でどの形式に出力できるかまでは示されていません。
どの製品でも、具体的な出力形式は提供元の仕様で確かめることになります。
確かめておきたいのは、たとえば次の点です。
・読み取り結果をCSVのような区切り形式など、受注システムが受け付ける形式で出せるか
・取り込みは担当者がファイルを読み込ませる操作か、自動で受け渡されるか
・品番や取引先名の表記が、受注システム側の登録内容と一致する形で出せるか
三つ目は見落とされがちです。
注文書には取引先独自の品番や略称が書かれていることがあり、読み取りが正しくても、受注システムの商品と結び付けるには変換が必要になる場合があります。
手入力では担当者が頭の中で行っていたこの読み替えを、どこで誰が担うのかを決めておかないと、取り込みの段階で手作業が戻ってきます。
取引情報を扱う際の確認点
注文書には、取引先名、商品、数量、単価といった取引の情報が載っています。
OCRをクラウドのサービスとして使う場合、FAXの画像や読み取り結果が社外のサーバーで処理されることになります。
導入の前に、画像や結果がどこで処理・保存されるのか、どれだけの期間残るのか、誰がアクセスできるのかを提供元に確かめておくと、社内で説明するときの材料になります。
取引先との契約で取引情報の扱いに決まりがある場合は、その条件とも照らし合わせておきます。
| 項目の例 | 誤ったときの影響 | 確認の考え方 |
|---|---|---|
| 数量・単価・金額 | 出荷数や請求額の誤りにつながる | 全件を原本と照らす |
| 品番・商品名 | 違う商品の出荷につながる | 全件を原本と照らす |
| 納期・届け先 | 配送の遅れや誤配につながる | 全件を原本と照らす |
| 備考・先方の担当者名 | 業務への影響が小さい場合がある | 信頼度の低いものや抜き取りで確かめる |
▼ 図の内容を文字で読む
- OCR側の費用の項目
- 導入時にかかる費用
- 継続して毎年・毎月かかる費用
- 読み取る枚数や項目数に応じてかかる費用
- 取引先ごとの様式に合わせた設定
- 手入力側の費用
- 月に届く枚数×1枚あたりの入力時間と見直しにかかる時間
- 転記に使う時間に人件費の単価を掛ける
- 比べ方
- OCRの費用と、確認・修正に残る人件費の合計
- 手入力の人件費
小さく試して、どの数字で効果ありと判断するか
試験に使うFAXの選び方
ここまで見てきたとおり、精度も確認の手間も、自社のFAXで測らない限り分かりません。
公開されている数字と自社の結果が違っても、それはどちらかが誤っているからではなく、帳票、画質、数え方が違うためです。
判断は自社の数字で行います。
試験には、実際に届いたFAXを使います。
取引先ごとに数十枚ずつ集めると、様式の違いによる読み取りの差が見えやすくなります。
読みやすいFAXだけを選ぶと、試験の結果は実際の運用より良く出ます。
かすれたもの、傾いて届いたもの、手書きの書き込みがあるものも、普段届く割合に近い形で混ぜておきます。
同じFAXを、手入力とOCRの両方で処理するのが比較の要です。
手入力の側は、いつもどおりの手順で入力と見直しを行い、その時間を記録します。
OCRの側は、画像の用意から確認・修正、取り込みまでを通して記録します。
同じFAXで比べれば、様式や画質の違いが両方に同じように効くため、差が方式の違いとして読めます。
測る3つの数字
試験で記録したいのは、次の三つの数字です。
・1枚あたりの処理時間:画像の用意から確認・修正、取り込みまでを含めた時間
・項目ごとの修正率:読み取り結果のうち、人が直した項目の割合を、数量や品番などの項目別に数えたもの
・誤りの残り方:確認を終えた後にも残っていた誤りが、どの項目に、どれだけあったか
1枚あたりの処理時間は、確認・修正を含めて測ることが大切です。
読み取りそのものが数秒で終わっても、確認に手入力と同じだけ時間がかかれば、効果はありません。
前の節で見た「打ち込みが減った分と、確認・修正に移った分の差」を、ここで実際の時間として確かめます。
項目ごとの修正率は、確認の範囲を決める手掛かりになります。
たとえば品番の修正は多いのに数量はほとんど直していない、という結果が出れば、確認の重点をどこに置くかが見えてきます。
取引先ごとに修正率を分けて見れば、特定の様式だけ読み取りが悪いのか、全体にばらつくのかも分かります。
誤りの残り方は、確認の設計がうまく働いているかを示します。
確認を終えた後の受注データを原本ともう一度照らし、残った誤りを数えます。
同じことを手入力の側でも行えば、手入力でどれだけの誤りが見直しをすり抜けていたかも、自社の数字として初めて分かります。
継続・見送りの決め方
三つの数字がそろったら、まず1枚あたりの処理時間の差に月の枚数を掛け、月にどれだけの時間が浮くかを出します。
その時間を人件費に直し、前の節で整理したOCRの費用の項目と比べます。
処理量に上限のないライセンスであれば枚数が多いほど有利になり、枚数に応じて課金される製品であれば枚数が増えても1枚あたりの費用は下がりにくい、という違いもこの計算で表に出ます。
時間が浮いても、確認後に残る誤りが手入力より増えていれば、そのまま導入するのは慎重に考えたほうがよい結果です。
残った誤りがどの項目に集まっているかを見て、その項目を全件確認に加えたうえで、処理時間を計算し直します。
確認を厚くしても時間の差が残るなら、効果があると判断できます。
結果が全体として微妙でも、取引先ごとに見ると判断が分かれることがあります。
様式が整った取引先のFAXはOCRで、手書きの多い取引先や読み取りの悪い様式は手入力で、と分けて運用すれば、効果の出るところだけに絞れます。
どこまでOCRに任せるかを取引先単位で決めておくと、社内に説明するときも、どのFAXで何がどれだけ減るのかを具体的な数字で示せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先ごとにレイアウトが違う
- 様式ごとの設定に頼らず項目を読み取れるAI型の製品から試す
- 様式が固定で少数の取引先
- 定型帳票向けの方式でも足りる場合がある
- 枚数が少ない・手書きが多い
- 手入力のままにする判断もあり得る
届くFAXの様式の数や手書きの割合、受注システムへの取り込み方によって、どの方式から試すか、どこまで確認するかが変わり、公開資料だけでは決めにくいためです。
現在の転記の手順と届くFAXの傾向を整理し、試験でどのFAXを使い、何を測るかを決める手掛かりを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 減る作業 | 人の打ち込み。確認・修正と読めない字の問い合わせは残る |
|---|---|
| 精度の数字 | 対象・時点・数え方を確かめ、自社のFAXで測り直す |
| 方式の選び方 | 様式の数と固定度、手書きの割合、受信画像の質で試す方式を決める |
| 画像の用意 | 紙を印刷して再スキャンするより、複合機の受信データを使う |
| 確認の範囲 | 数量・単価・品番など誤りの影響が大きい項目は全件照合 |
| 取り込み | OCRの出力形式と受注システムの取り込み形式、品番の読み替えを事前に突き合わせる |
| 判断の数字 | 1枚あたり処理時間、項目ごとの修正率、確認後に残る誤り |
▼ 図の内容を文字で読む
- 全件を原本と照らす
- 数量・単価・金額
- 品番
- 納期・届け先
- 信頼度の低いものや抜き取りで確かめる
- 備考欄
- 先方の担当者名
- 分ける決め手
- 自社でその項目を誤ったときに何が起きるか
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引先ごとに実際に届いたFAXを集める
- いつもどおりの手順で手入力し、時間を記録する
- 画像の用意から確認・修正、取り込みまでOCRで通して記録する
- 同じFAXの結果を比べる
試験の数字が出ても、確認の範囲や取引先ごとの使い分けをどう決めるかで、社内への説明の仕方が変わるためです。 測った処理時間と修正率をもとに、継続・見送りや取引先ごとの運用をどう組み立てるかを確かめられます。
よくある質問
FAXを一度スキャンし直してからOCRにかけてもよいですか。
読み取りにかけること自体はできますが、精度の面では不利になりやすい方法です。
受信したFAXを印刷してスキャンし直すと、送受信での劣化に印刷とスキャンでの劣化が重なります。
PFUは精度を上げるポイントの一つとして、紙をスキャンせずに複合機の受信データを使うことを挙げています1。
複合機に受信FAXをデータのまま保存・転送する設定があれば、そちらを使うほうが劣化を抑えられます。
取引先ごとに様式が違う注文書でも読み取れますか。
製品によって対応の仕方が違います。
様式ごとに読み取る位置を設定する方式では、取引先が増えるほど設定の手間が増えます。
様式ごとの設定に頼らずに読み取れることをうたう製品もありますが、どこまで対応できるかは、実際に取引先ごとのFAXで試して確かめるのが確実です。
手書きのFAXでもOCRは使えますか。
使える可能性はありますが、試すまで程度は分かりません。
自治体の手書き帳票73種を読み取った検証では約93%の正読率が得られていますが、これはFAXではない帳票での結果です3。
FAXの手書きは画質の劣化も重なるため、試験に手書きのFAXを普段の割合で含め、修正率を確かめてから判断します。
OCRの確認作業は誰がどの項目まで行えばよいですか。
これまで転記を担ってきた人が確認に回ると、取引先の書き方の癖や品番の読み替えを知っているため、誤りに気付きやすくなります。
数量、単価、金額、品番、納期、届け先のように、誤ると出荷や請求に響く項目は全件を原本と照らします。
影響の小さい項目は、信頼度の低いものや抜き取りで確かめる、といった分け方が考えられます。
試験で項目ごとの修正率を測ると、確認の範囲を決める根拠になります。
月に何枚くらいから費用が合う可能性がありますか。
何枚以上なら合う、という一律の境目はありません。
1枚あたりの処理時間が手入力からどれだけ減るか(確認・修正を含む)に月の枚数を掛けて浮く時間を出し、人件費に直したものを、OCRの費用と比べて試算します。
処理量に上限のないライセンスか、枚数に応じて料金が変わる製品かによって、枚数が増えたときの費用の動き方が変わるため、費用の項目は提供元に確かめておきます。
読み取った結果を既存の受注システムへ取り込む方法にはどんなものがありますか。
OCR製品が出せる形式と、受注システムが受け付ける形式を突き合わせて決めます。
PFUは後続のシステムに合わせた出力形式へ自動で変換する機能を挙げていますが4、具体的にどの形式に出せるかは製品ごとに仕様で確かめる必要があります。
あわせて、担当者がファイルを読み込ませる操作か自動の受け渡しか、取引先独自の品番を受注システムの商品にどう結び付けるかも決めておくと、取り込みの段階で手作業が戻るのを防げます。
- 1 出典:株式会社ピーエフユー「FAX注文書はOCRできる?精度を向上させる3つのポイント」(2025年)
- 2 出典:株式会社ハンモック「食品業の受注業務に関する実態調査」(2023年)
- 3 出典:株式会社NTTデータ「町田市、郡山市、市川市、つくば市、横浜市、福岡市におけるAI-OCR実用性の検証結果について」(2019年)
- 4 出典:株式会社ピーエフユー「DynaEye 11 Entry AI-OCR 発売ニュースリリース」(2025年)
画像の出典元
- Close-up of a businesswoman holding a pen, analyzing a graph report at a desk./Photo by RDNE Stock project on Pexels