まずは卸売ECを小規模でスタートしたい方へ。リーズナブルなSaaS(ASP)版『EC-Rider Primo(プリモ)』誕生! 詳しくはこちら

取引先別の指定単価(指値)を新システムへ移行する手順|項目整理から取込・単価照合まで

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 指定単価は取引先・商品・単価・税扱い・適用期間・数量条件・種別に分解してから、新システムの持ち方と突き合わせる
  • 期間の持ち方や参照の優先順位は製品ごとに違い、取り込んだ値が正しくても別のマスタの単価が引用されることがある
  • 移行対象は現行有効分と将来適用分を基本とし、過去の日付の伝票を扱う運用があるときに履歴を検討する
  • 並行稼働では締めまで通して同条件の伝票を照合し、差異は取込値・引用元・伝票設定・税計算の順に切り分ける
  • 切替後は新システムの単価マスタを唯一の正とし、承認してから反映日を登録する

A minimalist desk setup featuring a notebook and a chart for planning or analysis.
▽ 写真の出典元

ずれの出どころは、旧データを項目に分解すると見えてくる

取引先ごとの指定単価(指値)が、旧システムの単価マスタ、担当者ごとのExcel、メールで届いた特売の連絡に分かれていて、新システムに何をどこまで入れればよいか決めきれない。
導入後に請求や受注の単価がずれやすいのは、新旧で適用期間、数量条件、参照の優先順位の持ち方が違う箇所です。
まず指定単価を取引先・商品・単価・税扱い・適用期間・数量条件・種別に分解し、新システムの単価の持ち方と突き合わせます。
そのうえでCSVの整形と取込、取込前の点検、並行稼働での請求照合へ進めば、切替を判断する材料が揃います。

指定単価を構成する項目の分解

取引先別の指定単価は、画面の上では「A社にはこの商品をこの値段で」という一つの数字に見えます。
けれども伝票や請求で実際に使われるときには、その数字に、税込か税抜か、いつから適用するか、何個以上の注文に限るか、通常の単価か特売か、といった条件が付いています。
旧システムやExcelでは、こうした条件が独立した列になっておらず、シート名やセルのメモ、担当者の記憶で補われていることがあります。

そこで移行の最初の作業として、手元の指定単価を次の項目に分け、一つの条件の組み合わせを1行として書き出す整理をおすすめします。

  • 取引先(取引先コード)
  • 商品(商品コード)
  • 単価
  • 税扱い(税込か税抜か)
  • 適用期間(開始日、終了日があれば終了日)
  • 数量条件(何個以上でこの単価、といった段階)
  • 種別(通常・特売など)

これは特定の製品の仕様ではなく、どの新システムと突き合わせるときにも使える棚卸しの枠です。
製品によって持てる項目は違うため、旧データの側を先にこの粒度まで分けておくと、新システムの仕様を見たときに「この列は受け側のどこに入るか」「受け側に入れる場所がない列はどれか」を一つずつ確かめられます。
取引先と商品は、名前ではなくコードで持つことを前提にします。
名前で照合すると、表記揺れや社名変更で同じ取引先が別の行として扱われてしまうためです。

仮の例で考えてみます。
架空の取引先A社について、旧Excelの「A社」シートに商品ごとの単価が並び、ある商品のセルにだけ「月末まで特売」というメモが付いていたとします。
分解すると、この商品にはA社向けの通常単価の行と、種別を特売、適用期間を今月末までとした特売単価の行の2行が必要になります。
メモのままでは取込用のファイルに載らず、取込の担当者がメモを見落とせば、特売単価が通常単価として登録され、月末を過ぎても使われ続けるおそれがあります。
分解は手間のかかる作業ですが、こうした見えない条件をファイルの列として表に出すことが目的です。

構造が合わないと何が起きるか

分解しておく理由は、新旧のシステムで単価マスタの構造が一致するとは限らないからです。
移行支援を手掛ける事業者は、特別単価や期間限定の割引単価、ロット別の段階単価といった取引先別の単価は、新旧で単価マスタの構造が合わないことがあり、変換ロジックの個別開発が必要になる場合があると述べています1。
これは販売管理システムの移行全般についての見解で、どの製品の組み合わせでも起きるという意味ではありません。

構造が合わないときに厄介なのは、ずれが取込の時点では表に出にくいことです。
たとえば旧システムでは通常単価と期間限定の特売単価を別々のマスタに持っていたのに、新システムでは一つの単価に開始日を付けて管理する形だったとします。
特売の行をそのまま入れると、特売の開始日以降はずっと特売単価が使われ続けるかもしれません。
取込は正常に終わり、伝票を起こしたときや、請求後に取引先から指摘を受けたときに初めて気付く、という順番になります。

分解した項目ごとに見ると、合わないときに起きるずれの形はそれぞれ違います。
適用期間の終了日を入れる場所がなければ期間限定の単価が残り、税扱いの区分が伝わらなければ税込の単価が税抜として計算されます。
数量条件が入らなければ段階単価が一律の単価になり、種別の優先の向きが違えば期間が重なったときに引用される単価が変わります。
取引先・商品のコードが名寄せ前のままなら、単価が別の取引先や存在しない商品に付きます。

反対に、分解した表があれば、受け側に入れる場所がない項目を取込より前に洗い出せます。
洗い出した項目を新システムの別の機能で表すのか、運用で補うのか、変換の作業を別途見積もるのかは、その段階で決められます。
伝票を起こしてから気付くのと、取込の前に気付くのとでは、直す範囲が大きく違います。

指定単価の項目ごとに見た、持ち方が合わないときのずれ(模式図)
適用期間と種別、税扱い、数量条件、取引先・商品のコードの四つについて、受け側と持ち方が合わないときに起きる単価のずれを並べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 適用期間・種別
    • 終了日を入れる場所がなく、期間限定の単価が残る
    • 優先の向きが違えば、期間が重なったときに引用される単価が変わる
  • 税扱い
    • 税込の単価が税抜として計算される
  • 数量条件
    • 段階単価が入らず、一律の単価になる
  • 取引先・商品のコード
    • 名寄せ前のコードのため、別の取引先や存在しない商品に単価が付く

受け側の仕様を確かめる:期間・優先順位・数量別の持ち方

期間の持ち方の違い

分解した項目を、今度は新システムの単価の持ち方に当てていきます。
ここでは、ヘルプやFAQで単価の仕組みが説明されている3つの製品を例に、どこに違いが出るかを見ます。
3製品に限った比較であり、ほかの製品や各製品の最新版の仕様まで同じとは限りません。

スマイルワークスでは、得意先ごとの商品単価を、商品、販売単価、使用開始日で設定し、販売単価には税込みかどうかのチェックが付きます3。
適用期間は使用開始日で表し、使用開始日の情報は登録後に変更できません3。

懐刀の得意先別契約単価は、単価計算区分が「0-契約単価」の得意先を対象に、通常・特売・特々売という取引種別ごとに有効期間を設定し、その中に商品ごとの契約単価を持つ仕組みです4。
設定した単価は、受注や売上を入力するときの先方売単価の初期値になります4。

同じ「A社向け、今月末までの特売単価」でも、受け側によって入れ方が変わります。
懐刀のように種別と有効期間を持つ受け側なら、種別を特売にした行として、期間ごと表せます。
使用開始日で期間を表す受け側では、特売が終わった後にどの単価へ戻すのかを、受け側の仕組みに沿って表す必要があります。
旧データの終了日の列をどこへ入れるかは、ここで決まります。
終了日を入れる場所が見当たらないとき、終了後の単価を別の行として用意するのか、別の機能で表すのかは、新システムの資料やサポートで確かめておく事柄です。

参照の優先順位

期間の次に確かめたいのが、一つの伝票に複数の単価が当てはまるとき、どれが使われるかです。
PCAの商魂シリーズについてのFAQ(2022年更新)では、単価を設定するマスターが複数あり、数量別単価マスターを使っていない場合は、得意先別期間単価、期間単価、得意先別単価、商品単価の順で引用されると説明されています2。
数量別単価マスターに登録がある場合は、得意先別数量別期間単価から商品単価までの8段階になります2。
さらに、伝票入力画面の単価設定が「前回売価」になっていると、期間単価の次に前回売価が優先して引用されます2。

この順番に沿って読むと、移行で起こり得るずれの形が見えてきます。
たとえばA社向けの指定単価を得意先別単価として取り込んでも、受け側に全取引先向けの期間単価が登録されていれば、その期間中は期間単価のほうが先に引用されます。
取り込んだ値は正しいのに、伝票には別の単価が出る、という状態です。
また、マスタだけでなく伝票入力側の設定でも順位が変わるため、単価データを点検するだけでは見つからないずれがあることも分かります。

懐刀では、取引種別ごとの期間が重なった場合、特々売、特売、通常の順に優先されます4。
旧システムで特売が終わったら通常に戻すために、特売の終了日を細かく入れていた運用は、受け側では優先順位に任せられる部分があるかもしれません。
一方で、旧システムと優先の向きが違えば、同じデータを入れても引用される単価が変わります。

期間単価や種別の優先ルールは、製品ごとに違います。
旧システムで実際に使われていた単価が、新システムの順位のもとでも意図どおり引用されるかどうかは、取込の前に受け側の仕様で確かめておく必要があります。
旧システムで「なぜこの単価が出ていたのか」を説明できない取引先があれば、そこが最初に確かめる候補になります。

数量別単価の確認

数量に応じて単価が変わる段階単価は、受け側の資料を個別に確かめたい項目です。
PCAの商魂シリーズには数量別単価マスターがあり、引用の優先順位の中に組み込まれています2。
一方、スマイルワークスの得意先ごとの単価設定のページと、懐刀の得意先別契約単価のページには、数量別単価についての記載がありません34。
記載がないことは対応していないことと同じではないため、別の機能や別のページで扱われていないかを確かめます。

旧側に段階単価があり、受け側で同じ形に入れられない場合は、新旧の単価マスタの構造が合わない典型的な場面になります1。
変換の仕組みを別途作るのか、段階を運用で扱うのかを決める前に、分解表の数量条件の列で、段階単価を使っている取引先と商品の範囲を数えておくと、検討の材料が具体的になります。
対象が一部の取引先に限られるのか、主要な取引の多くにかかわるのかで、取るべき手段が変わるからです。

3製品で確かめられた違いを、同じ観点で並べると次のとおりです。

観点 PCA商魂シリーズ 懐刀 スマイルワークス
期間の持ち方 得意先別期間単価・期間単価のマスターがある 取引種別ごとに有効期間を設定 使用開始日で設定し、登録後は変更できない
数量別単価 数量別単価マスターがある 当該ページでは未確認 当該ページでは未確認
優先順位 得意先別期間単価→期間単価→得意先別単価→商品単価(数量別単価なしの場合)。前回売価の設定で順位が変わる 期間が重なると特々売→特売→通常の順 当該ページでは未確認
税扱い 当該FAQでは未確認 当該ページでは未確認 単価ごとに税込みのチェックがある
CSV取込の記載 当該FAQでは未確認 当該ページでは未確認 CSV出力→追加・修正→マスタインポートで取込
単価が引用される順位の違い(一つの製品のFAQの例)
数量別単価を使わない場合の4段階、数量別単価がある場合の8段階、伝票入力側が前回売価の場合の順位の変化を並べた図数量別単価を使わない場合の4段階、数量別単価がある場合の8段階、伝票入力側が前回売価の場合の順位の変化を並べた図数量別単価マスターを使っていない場合1番目 得意先別期間単価2番目 期間単価3番目 得意先別単価4番目 商品単価数量別単価マスターに登録がある場合得意先別数量別期間単価から商品単価までの8段階伝票入力画面の単価設定が前回売価の場合期間単価の次に前回売価が優先して引用されるマスタを点検しただけでは見つからないずれが出る

▼ 図の内容を文字で読む
  • 数量別単価マスターを使っていない場合
    • 1番目 得意先別期間単価
    • 2番目 期間単価
    • 3番目 得意先別単価
    • 4番目 商品単価
  • 数量別単価マスターに登録がある場合
    • 得意先別数量別期間単価から商品単価までの8段階
  • 伝票入力画面の単価設定が前回売価の場合
    • 期間単価の次に前回売価が優先して引用される
    • マスタを点検しただけでは見つからないずれが出る

CSVで出して取り込む:流れと作成時の注意

出力→修正→取込の流れ

受け側の持ち方が分かったら、実際にデータを出し入れする段階に進みます。
スマイルワークスのヘルプでは、得意先商品単価設定のCSVを出力し、追加や修正を加え、変更しない行を削除してから、マスタインポートの「得意先商品単価設定」から取り込む手順が示されています3。

受け側が出力したCSVを土台にする利点は、列の並びや見出しを自分で作らずに済むことです。
旧システムから出したファイルは旧システムの列構成のままなので、そのまま受け側に渡すことはできません。
そこで、旧システムの出力、前の段階で作った分解表、受け側の取込用CSVの三つについて、列どうしの対応を書いた表を1枚作っておくと、どの列をどう変換したかを後から追えます。
たとえば旧システムの特売フラグと適用終了日が、受け側では種別の列になるのか、別の行になるのかを、この対応表に書き残します。

変更しない行を削除する一手にも意味があります。
変更しない行を残したまま取り込んだときにどう扱われるかは、このヘルプの説明だけでは分かりません。
取り込むファイルを追加と修正の行だけに絞っておけば、何を入れたかが明確になり、取込後の照合でも確かめる対象を絞り込めます。
導入直後で受け側に単価がまだ登録されていない場合は、画面から1件だけ登録して出力し、その書式に合わせて行を足していく進め方も考えられます。

CSV取込の書式や手順は製品ごとに異なります。
懐刀の得意先別契約単価のページには一括登録やCSV取込の記載がなく4、PCAのFAQは引用の優先順位についての説明です2。
どちらも、取込の方法は各製品の取込仕様の資料で確かめることになります。

CSV作成時の注意

CSVそのものの作り方には、製品をまたいで共通する注意があります。
弥生の見積・納品・請求書ソフトの取込ガイドでは、拡張子を.csvにし、1レコードを1行、半角カンマ区切りとし、全行で項目の順番を揃え、必須項目を入力し、カンマを含む値は二重引用符で囲むよう求めています5。
これは請求書ソフトの取込についての説明で、単価マスタ専用の仕様ではありませんが、指定単価のCSVでつまずきやすい箇所と重なります。

指定単価の表に当てはめると、気を付けたい場面がいくつか出てきます。
商品名や規格に半角カンマが入っている場合、引用符で囲まないと列がずれ、単価が隣の列に入ってしまいます。
表計算ソフトで桁区切りのカンマ付きで表示している単価も、保存の仕方によっては区切り文字と混ざるおそれがあります。
Excelの複数のシートを一つのCSVにまとめるときは、シートごとに列の順番が違っていないかを見ます。
シートによって税区分の列があったりなかったりすれば、全行で項目の順番を揃えるという前提が崩れます。

表計算ソフトでCSVを開き直すと、先頭にゼロが付いた取引先コードや商品コードが数値として扱われ、ゼロが消えてしまうことがあります。
コードが変わると単価が別の取引先や存在しない商品に付くため、取込の直前のファイルはテキストとして開いて確かめると安心です。
このほか、文字コード、一度に取り込める件数、エラーの行があったときに全体が止まるのか該当行だけが飛ばされるのかは、製品ごとに確かめる項目です。

移行対象は現行有効分か、履歴まで持つか

現行有効分+将来適用分

取込の段取りが見えてきたところで、どの期間の単価を移すかを決めます。
基本の考え方としておすすめするのは、切替日に有効な単価(現行有効分)と、切替日以降に適用が決まっている単価(将来適用分)を移行の対象にすることです。
切替後に新システムで起こす伝票が使うのは、この二つだからです。

将来適用分は見落とされやすい行です。
来月から単価を改定するという通知を受けて、旧システムに先付けで登録していた場合、切替日時点で有効な単価だけを抜き出すと、その改定分が抜け落ちます。
分解表の適用期間の列で、開始日が切替日より後の行を別に数えておくと、抜けに気付けます。

受け側が使用開始日で期間を表す場合は、現行有効分の開始日をいつにするかも決めておきます。
スマイルワークスのように使用開始日を登録後に変更できない製品では3、旧システムでの本来の適用開始日を入れるのか、切替日に揃えるのかを取込前に決めておかないと、後から直すのに手間がかかります。
新システムで切替日より前の日付の伝票を起こさないのであれば、考え方の上では、どちらを選んでも切替後の伝票に当たる単価は変わりません。
過去の日付の伝票を起こす可能性があるなら、その日付に当てはまる単価が必要になるため、次の履歴の判断と一緒に考えます。

履歴を持つ場合の条件

過去の単価まで移すかどうかは、新システムで過去の日付の取引を扱うかどうかで決まります。
たとえば、切替日前に出荷した分の返品や訂正を新システムで処理する、締め前の伝票を新システムで入力し直す、旧伝票を新システムで再計算する、といった運用があるなら、その日付に有効だった単価が新側にも要ります。
受け側が使用開始日や有効期間によって過去の日付にも単価を当てられる仕組みかどうかも、あわせて確かめます。

履歴を入れると、それだけ期間の重なりや優先順位の組み合わせが増えます。
懐刀のように期間の重なりを種別の優先順位で解決する受け側では4、過去の特売と現在の通常単価の期間が意図せず重なっていないかを、取込前に見ておく必要があります。
過去の単価を使う運用がなければ、移行対象は現行有効分と将来適用分にとどめ、過去分は旧システムからの出力ファイルを参照用に保管する形にしても、切替後の伝票の単価には影響しません。

保管する場合は、旧システムから出したままのファイルと分解表を、手を加えない状態で残しておきます。
切替後に取引先から以前の単価について問い合わせを受けたとき、変換前の値までたどれるからです。

切替日を境にした指定単価の区分と、移行での扱い
過去分、現行有効分、将来適用分の三つに分け、それぞれ移行するか保管するかを並べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 過去分(切替日より前に終わった単価)
    • 過去の日付の伝票を新システムで扱う運用がなければ移行しない
    • 旧システムの出力ファイルと分解表を変換前の状態で保管する
  • 現行有効分(切替日に有効な単価)
    • 移行の基本の対象
    • 使用開始日を旧の開始日にするか切替日に揃えるかを取込前に決める
  • 将来適用分(切替日以降に始まる単価)
    • 移行の基本の対象
    • 先付けで登録していた改定の抜けに注意する

取込前の点検:重複・欠落・単位や税扱いの不一致

コードの名寄せ

移行の対象が決まったら、取り込む前にデータを点検します。
移行支援の事業者は、取引先や商品などのマスタの名寄せ・クレンジングを先に行い、伝票などの取引データは段階的に移すのが安全だとしています1。
指定単価は取引先と商品の組み合わせに付くデータなので、点検も取引先と商品のコードが固まった後に行うと、同じ確認を二度せずに済みます。

名寄せとは、同じ取引先や商品が別々のコードや表記で登録されているものを、一つにまとめる作業です。
旧システムで社名変更の前後に別のコードが振られていたり、Excelでは取引先名だけで管理していたりすると、同じ取引先の単価が2か所に分かれて存在します。
名寄せで取引先のコードを新しいものに統一したら、指定単価の表のコードも、旧コードと新コードの対応表を使って置き換えます。

置き換えた後は、単価の表にあるすべての取引先コードと商品コードが、新システムのマスタに存在するかを照らし合わせます。
ここで見つかる欠落には、取引がなくなって移行対象から外した取引先の単価のように取り込まなくてよいものもあれば、商品マスタの登録漏れのように先に直さなければならないものもあります。
どちらなのかを1件ずつ判断し、取り込まない行は理由を書き残しておきます。

重複・期間の重なり

コードが揃ったら、取引先、商品、種別、適用期間の順に並べ替え、同じ組み合わせに複数の行がないかを見ます。
Excelの複数のシートや担当者ごとのファイルをまとめたときに出てきやすいのが、同じ取引先と商品に違う単価の行が二つある状態です。
片方が古い単価のまま残っていただけという場合もあれば、片方が特売の単価だったという場合もあります。
どちらを正とするかは、契約書や直近の請求で確かめて決めます。

期間が重なっている行は、すぐに誤りとは限りません。
懐刀のように、期間が重なったときに種別の優先順位で単価が決まる受け側なら4、通常単価の期間の中に特売の期間が重なっているのは想定どおりの形です。
一方、同じ種別どうしで期間が重なっている行をどう扱うかは、このページの説明からは分かりません。
受け側の優先順位で解消できる重なりだけを残し、それ以外は1行にまとめるか期間を区切り直しておくと、どの単価が引用されるかを予測しやすくなります。

単価が空欄の行や、適用開始日が入っていない行も、ここで拾っておきます。
空欄の単価がゼロとして取り込まれるのか、エラーになるのかは製品によって違い得るため、取り込む前に埋めるか外すかを決めておきます。

税込税抜と単位

税扱いのずれは、単価の数字だけを見ていると気付きにくい点です。
スマイルワークスでは得意先ごとの単価に税込み(内税)かどうかのチェックがあり、単価ごとに税扱いを持てます3。
旧データで一部の取引先だけ税込の単価で契約しているのに、表に税区分の列がなければ、取込のときにすべて同じ税扱いとして入ってしまうおそれがあります。
分解表の税扱いの列を空欄のまま残さず、取引先ごとの契約を見て埋めておきます。

受け側が税扱いを単価ごとではなく、取引先ごとや全体の設定で持つ場合は、旧データの税込単価を税抜に直すかどうかの判断が必要になります。
換算すると端数が生じることがあるため、取引先と合意している金額が税込と税抜のどちらなのかを基準にします。
換算した行には印を付けておくと、並行稼働の照合で差異が出たときにすぐたどれます。

値引きの持ち方も揃えておきたい点です。
スマイルワークスでは、値引きはマイナス値で入力します3。
旧システムで単価から一定額を引く値引きを別の行で持っていた場合、新側で単価に織り込むのか、マイナス値の行にするのかで、請求書の見え方が変わります。
単位も同じで、旧ではケース単位、新では1個単位で単価を持つといった違いがあれば、換算してから取り込みます。

40代後半の日本人女性が動作の検証をしている場面

並行稼働で請求を照合し、切替を判断する

並行稼働の期間

取り込んだ単価が正しく使われるかどうかは、実際に伝票を起こしてみないと分かりません。
そこで、旧システムと新システムを一定期間並べて動かし、同じ取引を両方で処理して結果を比べる並行稼働を行います。
移行支援の事業者は、販売管理システムの移行では6〜8週間の並行稼働期間を設けることが多いと述べています1。
これは一社の見解で、規格や業界の基準ではなく、取引の量や締めの回数によって適した長さは変わります。

指定単価の照合に限って言えば、期間の長さそのものより、確かめたい条件がその期間中に一通り現れるかが大切です。
特売の開始と終了、単価改定の適用開始、月末の締めと請求書の作成が期間中に含まれていれば、期間の境目から請求金額まで確かめられます。
請求単価のずれは、締めて請求書になったところで初めて合計として見えることがあるため、少なくとも一度は新旧で締めまで通しておくことをおすすめします。

突合の観点

照合では、同じ取引先、商品、数量、日付で新旧それぞれに伝票を起こし、単価、金額、税額を突き合わせます。
全件を比べられなくても、ずれが出やすい条件を意識して選ぶと、限られた期間で多くの組み合わせを確かめられます。

  • 特売や期間限定の単価がある取引先と商品
  • 特売の開始日や終了日をまたぐ日付の伝票
  • 段階単価の境目にあたる数量の伝票
  • 税込の単価で契約している取引先
  • 名寄せでコードを付け替えた取引先と商品
  • 税抜に換算した行

差異が出たときは、取り込んだ値だけを疑わないようにします。
PCAのFAQにある優先順位から読み取れるように、同じ取引先と商品でも、複数のマスタに単価があれば、どの単価が引用されるかは優先順位で変わります2。
そのため、切り分けは次の順で進めると、原因を取り違えにくくなります。

  1. 取り込んだ単価の値と税扱いが、分解表の該当行と一致しているか
  2. その伝票で、どのマスタの単価が引用されたか
  3. 伝票入力側の設定(前回売価など)で、引用元が変わっていないか
  4. 税計算や端数処理の設定が、新旧で同じか

差額の大きさだけで原因を決めつけないことも大切です。
差額が税額に近いからといって税扱いの誤りとは限らず、特売と通常の単価の差がたまたま近い値だった、ということもあり得ます。
伝票の明細、引用元のマスタ、分解表の該当行を並べて確かめます。

切替の判断基準

旧システムの利用を止めて新システムに切り替えてよいかは、あらかじめ基準を決めておくと迷いが減ります。
一つの考え方として、照合した伝票で単価の差異がないこと、差異があった場合はその理由を説明でき、修正済みか、取引先と合意したうえで運用として受け入れられることを、切替の条件にする方法があります。

差異ゼロを目指すのは自然ですが、新旧で仕様が違う以上、説明のつく差異が残ることもあります。
たとえば端数処理の方法が違えば、単価は同じでも請求金額に差が出ます。
大切なのは、残る差異が、なぜ出るのか分かっていて請求で問題にならないものか、原因がまだ分からないものかを区別することです。
原因の分からない差異が残っているうちは、切替後に請求書を訂正して再発行する手間を考えると、締めをもう一度見送って照合を続ける判断にも理由があります。

判断には、照合を担当した人だけでなく、請求を確定させる経理の担当者や、取引先との窓口になる営業の担当者にも加わってもらうと、残った差異が取引先からどう見えるかまで含めて決められます。

並行稼働での単価照合の繰り返し
同じ条件で新旧の伝票を起こし、突き合わせ、原因を切り分け、データや設定を直して、再び同じ条件で伝票を起こす一巡の図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 同じ条件で新旧の伝票を起こす
  2. 単価・金額・税額を突き合わせる
  3. 差異の原因を切り分ける
  4. 単価データや設定を直す

切替後の更新ルール:誰が正とし、誰が承認し、いつ反映するか

更新元と承認

切替が済むと、次にやってくるのは単価の改定です。
移行のときに丁寧に整えても、改定のたびにExcelと新システムの両方を更新する運用が残れば、どちらが正しいのか分からない状態に戻ってしまいます。
そこで、指定単価の正は新システムの単価マスタ一つとし、Excelで一覧を見たいときは新システムから出力した写しを使う、と決めておくことをおすすめします。

あわせて、改定の連絡を誰が受け、誰が登録し、誰が承認し、いつから反映するかを決めます。
取引先から改定の連絡を受けるのは営業、登録するのは受発注の事務、内容を承認するのは管理者、というように役割を分けると、連絡の受け手が自分で登録して誰も内容を見ないまま反映される、という状態を避けられます。
反映日は、受け側の使用開始日や有効期間の開始日として登録する日付そのものです。
改定日を取引先とのやり取りで確定させてから登録する順番にしておくと、日付の誤りを減らせます。

承認は、登録の前に置くことが大切です。
スマイルワークスのように使用開始日を登録後に変更できない製品では3、誤った日付で登録すると、そのまま書き換えることはできません。
どう直すのかは製品の手順で確かめる必要があり、その間に誤った単価で伝票が起きる可能性もあります。
新システムに承認の機能があるかどうかは製品によるため、ない場合は改定内容を記した申請表を回して承認を得てから登録する、といった運用で補えます。

例外単価を増やさない

もう一つ、切替後に気を付けたいのが、例外の単価が少しずつ増えていくことです。
PCAの商魂シリーズのように単価が複数のマスタの優先順位で引用される仕組みでは2、得意先別単価のほかに期間単価を重ね、さらに伝票入力側の設定を変えると、ある伝票でなぜその単価が出たのかを読み解くのに手間がかかります。
移行時の照合で一度整えた状態が、例外を足すたびに崩れていきます。

例外の単価を作るときは、種別と適用期間を必ず付け、期間が終わった後に残らないようにします。
その場限りの値引きを単価マスタに登録する前に、伝票の値引きで扱えないかを検討するのも一つの方法です。
そのうえで定期的に単価の一覧を出力し、期限が過ぎた単価や、同じ取引先と商品で重なっている単価がないかを見直します。
移行の前に作った分解表の項目は、この見直しにもそのまま使えます。

こうしたルールは、単価のずれを完全になくす保証ではありません。
ただ、どこを見れば正しい単価が分かるか、誰が確かめたかがはっきりしていれば、ずれに気付いたときにたどる場所が一つに絞られ、Excelと新システムを見比べる確認は要らなくなります。

旧データのどの列が新システムのどこに入るか、どの単価が優先順位で上書きされそうかは、製品の仕様と自社の取引条件の両方を見ないと判断しにくい部分です。

手元の指定単価の表をもとに、受け側に入れる場所がない項目や、期間・種別の重なりで引用が変わりそうな箇所を一緒に洗い出せます。無料相談で要件を整理する

新システムの取込仕様で確かめておく項目

取込の準備から取込後の照合まで、作業で必要になる順に並べた。

  • 取り込めるファイル形式と文字コード
  • 必須項目と列の順番
  • 一度に取り込める件数と、エラーの行があったときの扱い(全体が止まるか、該当行だけか)
  • 既に登録された行と同じ取引先・商品・開始日の行を取り込んだときの扱い
  • 期間の持ち方(使用開始日だけか、有効期間か)と、登録後に日付を変えられるか
  • 税込・税抜の区分を単価ごとに持てるか
  • 数量別単価を持てるか
  • 複数の単価が当てはまるときの優先順位と、伝票入力側の設定で順位が変わるか
50代後半の日本人男性が小会議室での打ち合わせをしている場面

これらの答えによって、CSVの整形と取込前の点検で手を入れる範囲が変わります。

要点の整理

項目分解 取引先・商品・単価・税扱い・適用期間・数量条件・種別に分けて棚卸しする
受け側の仕様 期間の持ち方、優先順位、数量別単価、税扱いを新システムの資料で確かめる
CSVの出し入れ 受け側の出力を土台にし、旧出力・分解表・取込用の列の対応を書き残す
移行対象 現行有効分と将来適用分が基本。過去の日付の伝票を扱うなら履歴も検討
取込前点検 名寄せ後のコードで、欠落・重複・期間の重なり・税扱い・単位を見る
切替判断 締めを含めて同条件の伝票を照合し、差異がないか理由を説明できるかで決める
切替後 正とするマスタを一つにし、承認してから反映日を登録する

並行稼働の照合は、どの取引先・商品・日付を選ぶかで、見つけられるずれが変わります。 特売の境目や税込契約、名寄せした取引先など、自社の取引で照合に含めるべき条件と、差異が出たときの切り分けの順を整理できます。

BtoB通販システムのご相談

貴社の商習慣に合わせたご提案をいたします。

無料相談はこちら

よくある質問

指定単価のExcelに取引先ごとの特売や期間限定がまざっている場合、どう分けて取り込むか

特売や期間限定の単価は、通常単価とは別の行として起こし、種別と適用期間の列を付けます。
セルのメモやシート名で表していた条件も、列に移しておきます。
受け側が懐刀のように取引種別ごとに有効期間を持つ仕組みなら、種別を特売にした行として入れられます4。
使用開始日で期間を表す仕組みなら、特売の終了後にどの単価へ戻すかを、受け側の仕様に沿って表す必要があります3。

旧システムが数量別単価を持ち、新システムが持たない場合の対処は

まず、新システムのヘルプのうち単価設定のページに記載がないだけで、別の機能として用意されていないかを確かめます。
受け側で同じ形に入れられないと分かった場合、新旧の単価マスタの構造が合わない場面にあたり、変換の仕組みを個別に作る必要が出ることもあります1。
変換を作るか、段階を運用で扱うかは、段階単価を使っている取引先と商品の範囲を数えてから判断すると、検討の材料が具体的になります。

使用開始日を誤って登録した場合、どう直すか

直し方は製品によって違います。
スマイルワークスのように使用開始日を登録後に変更できない製品では3、日付だけを書き換えることはできないため、製品の手順に沿って直す方法を確かめます。
あわせて、誤った日付の単価がすでに伝票に使われていないかを照合し、使われていれば伝票の訂正も必要です。
再発を防ぐには、登録の前に改定日と内容の承認を得る順番にしておきます。

単価が税込と税抜で混在している場合、取込前にどう揃えるか

まず、分解表に税扱いの列を設け、取引先ごとの契約を見て税込か税抜かを埋めます。
受け側が単価ごとに税込のチェックを持てるなら、その列を対応させて取り込めます3。
取引先単位や全体の設定で税扱いを持つ受け側なら換算が必要になり、端数が生じることがあるため、取引先と合意している金額を基準にし、換算した行に印を付けておきます。

取込後の単価照合で、差異が出たときの切り分けはどう進めるか

取り込んだ値と分解表の一致、その伝票で引用されたマスタ、伝票入力側の設定、税計算や端数処理の設定の順に確かめます。
同じ取引先と商品でも、複数のマスタに単価があれば、引用される単価は優先順位で変わるためです2。
差額の大きさだけで原因を決めず、伝票の明細と引用元を並べて判断します。

切替後に急な単価改定が来た場合の更新手順は

急ぎの場合も、改定日と単価を取引先とのやり取りで確定させ、承認を得てから、新システムの単価マスタに改定日を開始日として登録する順番は変えないことをおすすめします。
Excelを先に直して後から新システムに入れる運用にすると、正とする場所が二つに戻ってしまいます。
登録後は、改定日以降の最初の伝票で単価が意図どおり引用されているかを確かめます。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:株式会社ripla「販売管理システムのデータ移行を成功させる5ステップ(note)」(2026年)
  2. 2 出典:ピーシーエー株式会社「商品の単価を設定するマスターが幾つかありますが、伝票入力時にはどのような優先順位で引用されますか(FAQ No.285)」(2022年)
  3. 3 出典:スマイルワークス「得意先ごとに商品の単価を設定する(ヘルプセンター)」(2026年)
  4. 4 出典:株式会社サン・ユー・システム「得意先別契約単価(懐刀 マニュアル)」(2026年)
  5. 5 出典:弥生株式会社「CSVインポート(やよいの見積・納品・請求書)」(2026年)

画像の出典元

  1. A minimalist desk setup featuring a notebook and a chart for planning or analysis./Photo by Tirachard Kumtanom on Pexels

Photos provided by Pexels

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

監修確認日:

記事内容に関するお問い合わせ:お問い合わせフォーム

BtoB EC(受発注)サイト構築システム「EC-Rider B2B Ⅱ」への
各種お問い合わせ

ページTOPへ戻る
無料相談を予約 お見積
平日10:00~18:00
page
top