◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 発注アプリで減るかどうかは、入力、承認・集計、送信、確認・修正のどの工程に時間が残っているかと、仕入先の受け方で決まる
- 公的な実証の平均51.4%削減は、発注側と受注側が共通EDI標準で注文データをやり取りした場合の値で、発注アプリ単体の効果ではない
- 仕入先がFAXや電話で受ける場合、拠点の入力と本部の集計は減らせても、送信と確認・修正は残りやすい
- 多拠点で時間が積み上がるのは本部の集計・確認と待ち時間で、待ち時間は入力締め時刻などのルールで手当てする
- 1〜2週間の工程別記録と、受け方の違う仕入先を含む少数拠点の試行を比べて、自社での効果を判断する
目次

閉店後の発注作業は工程に分けると、どこに時間が残っているのか
閉店後に拠点ごとの発注入力が残り、本部は締め時間までに集計と確認を終えて、仕入先ごとにFAXやメールで送る。
この作業が毎晩続くと、発注アプリで本当に時間が短縮されるのかを見極めたくなります。
時間が減るかどうかは、アプリそのものより、どの工程に時間が残っているかと、仕入先がどの形で注文を受けるかで決まります。
公的な実証で受発注の時間が平均51.4%減った例は、発注側と受注側が同じ規格でデータをやり取りした場合の値で、アプリ単体の効果ではありません1。
工程ごとに今の時間を測り、仕入先の受け方別に少数の拠点で試せば、自社での効果を判断できます。
入力・承認と集計・仕入先への送信・確認と修正の4工程
閉店後の発注に毎晩どれだけ時間がかかっているかを聞かれると、「全部終わるまで1時間ほど」のように、ひとまとまりの時間で捉えがちです。
しかし、その時間の中には性質の違う作業が混ざっています。
発注アプリで減るのはそのうちの一部で、どこが減るかは作業の種類によって変わります。
拠点から仕入先へ注文が届くまでの流れは、次の4つの工程に分けると見通しがよくなります。
- 入力:拠点の担当者が在庫や翌日の見込みを見て品目と数量を決め、発注書や画面に書き込む
- 承認・集計:本部が各拠点の発注を受け取り、数量に無理がないかを見て、仕入先ごとにまとめる
- 仕入先への送信:まとめた注文を、仕入先が受け付ける方法(FAX、メール、電話、電子データなど)で送る
- 確認・修正:注文が届いたか、数量や品目に誤りがないかを確かめ、不備があれば拠点に差し戻して直す
この分け方は時間を測りやすくするための実務上の整理で、決まった区分があるわけではありません。
承認と集計を担当者が分けている場合は、さらに細かく分けてかまいません。
時間が膨らみやすいのは、最後の確認・修正から入力へ戻る往復です。
たとえば本部が集計中に、ある拠点の数量が普段の10倍になっていることに気づいたとします。
拠点に問い合わせても担当者がすでに退勤していれば、その注文は翌朝まで確定できず、仕入先の締め時間に間に合うかどうかも分からなくなります。
こうした差し戻しは1件ごとの作業は短くても、連絡を待つ時間を含めると夜の作業全体を引き延ばします。
もう一つ見落としやすいのが待ち時間です。
本部は、最後の拠点の入力が届くまで集計を締められません。
本部の担当者が閉店後に費やしている時間は、手を動かしている時間と、拠点からの入力を待っている時間の合計です。
アプリで縮められるのは主に前者で、待ち時間は拠点ごとの締め時間や社内のルールに左右されます。
この二つを分けて捉えないと、アプリを入れたのに帰る時間が変わらない、という結果になりかねません。
工程ごとに見ると、アプリの効き方の違いも見えてきます。
入力は、前回の注文を呼び出せるかや品目の選びやすさで変わります。
集計は、全拠点が同じ画面・同じ品目表で入力するようになれば、紙や表計算の注文を手で寄せ集める作業が要らなくなります。
一方、送信と確認・修正は、仕入先がどの形で注文を受けるかに強く左右されます。
この違いが、次に見る公的な削減率の読み方にも関わってきます。
まず自社で測る項目
工程に分けたら、それぞれにどれだけ時間がかかっているかを数字で押さえます。
見るべき項目は次のとおりです。
- 工程ごとの作業時間(入力、承認・集計、送信、確認・修正のそれぞれに何分かかったか)
- 待ち時間(本部が拠点の入力を待っていた時間、仕入先からの返答を待っていた時間)
- 仕入先ごとの送信手段と、手段別の仕入先数
- 差し戻しや問い合わせの件数と、その理由
- 拠点と仕入先それぞれの締め時間と、実際に間に合ったかどうか
このうち送信手段の内訳は、アプリで減らせる範囲の上限を決める材料になります。
仕入先の大半がFAXで受けているなら、送信と確認の工程はアプリを入れてもあまり変わらない可能性があるためです。
理由は次の節以降で説明します。
差し戻しの理由も、件数と同じくらい役に立ちます。
品目名の書き間違いや、ケースとバラの単位の取り違えが原因なら、登録済みの品目から選ぶ入力方式にすることで減らせる余地があります。
一方、仕入先の欠品や数量変更が原因なら、入力の仕方を変えても減りません。
原因によって、アプリで解決できるものとそうでないものが分かれます。
記録は、拠点の担当者と本部の担当者がそれぞれ付けるのが基本です。
同じ夜の発注でも、拠点から見えるのは入力と修正の時間で、本部から見えるのは待ちと集計と送信の時間です。
どちらか一方の記録だけでは、時間がどこに残っているかが半分しか分かりません。
何日間記録し、どう試行と比べるかは、最後の節でまとめて扱います。
▼ 図の内容を文字で読む
- 入力(拠点の担当者)
- 在庫や見込みから品目・数量を決める
- 承認・集計(本部)
- 数量に無理がないかを見る
- 仕入先ごとにまとめる
- 仕入先への送信(本部)
- FAX・メール・電話・電子データで送る
- 確認・修正(本部と拠点)
- 届いたか、誤りがないかを確かめる
- 不備は拠点へ差し戻して入力し直す
時間短縮の数値は何の実証で出たのか:51.4%の対象と読み方
12プロジェクト・6業界の実証の中身
受発注の時間短縮について公的に示された数値として、中小企業庁の情報サイト「ミラサポplus」が2020年に公開した記事にある、受発注業務時間の平均51.4%削減があります1。
これは2016年度補正事業として行われた実証の結果で、対象は自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界・12プロジェクトです1。
飲食店や小売店の閉店後の発注に絞った実証ではありません。
実証で使われたのは「中小企業共通EDI標準」です。
EDIは、注文書などを決まった形式の電子データにして企業間でやり取りする仕組みのことで、共通EDI標準はその中小企業向けの共通規格です。
発注側と受注側の双方が、この標準に対応したサービスの提供事業者(プロバイダー)を介して、統一された形式のデータで注文情報をやり取りします1。
受注側は、対応したプロバイダーや業務アプリを利用するだけで済む設計になっています1。
つまり51.4%は、注文が発注側から受注側へデータのまま渡り、受け取った側で打ち直す必要がない状態をつくったときに、中小企業の受発注業務時間が平均でどれだけ減ったかを示す値です。
資料では、効果が出た背景として、既存の業務フローを変更しやすく、データ連携に取り組みやすかったことが挙げられています1。
仕組みを入れたことに加えて、それに合わせて仕事の流れを組み替えられたことが削減につながった、という読み方になります。
この数値をそのまま自社に当てはめられない理由
閉店後の発注にこの数値を当てはめようとすると、条件が三つの点で食い違います。
- 注文の受け手:実証では受注側も同じ規格に乗っていた。
自社の仕入先はFAXや電話で受けているかもしれない - 対象の範囲:企業間の受発注の実証で、拠点から本部への社内の取りまとめや、店舗の閉店後の作業に限って測ったものではない
- 業務フロー:既存のフローを変えやすい条件があった。
自社で締め時間や承認の手順を変えられるかは別の問題
特に一つ目の違いは大きく効きます。
実証で削られたのは、企業と企業の間で起きていた転記や確認の手間です。
仕入先がFAXで受けて手で入力し直す状態が続くなら、その部分の手間は残ります。
発注アプリを入れて拠点と本部の作業が整っても、仕入先との境目で同じ削減が起きるとは言えません。
また、51.4%は特定の製品の効果ではなく、12プロジェクトにおける中小企業の平均です。
製品の紹介資料などで似た削減率を見かけたときは、それがどの仕組みの、どの範囲の作業を測った値なのかを確かめると、自社との距離が分かります。
この数値の位置づけとしては、仕入先も含めて同じ仕組みに乗り、仕事の流れも組み替えられた場合に、ここまで減った例がある、という目安が妥当です。
「今1時間かかっているから30分になる」といった自社の見込みの計算には使えません。
それでも、削減がどこで生まれたかを教えてくれる点で、この実証は役に立ちます。
時間が大きく減るのは、企業間でデータが打ち直されずに渡るところでした。
そこで次に、自社の仕入先がどの形で注文を受けているかを見ていきます。
| 観点 | 実証で削減が出た条件 | 閉店後に拠点から発注する場合に確かめること |
|---|---|---|
| 注文の受け手 | 受注側も共通規格に対応したプロバイダー・業務アプリを利用 | 仕入先がデータで受けられるか、FAX・メール・電話か |
| 対象の範囲 | 6業界・12プロジェクトの企業間の受発注 | 拠点の入力と本部の取りまとめも含めて測るか |
| 業務フロー | 既存の業務フローを変更しやすかった | 締め時間や承認の手順を変えられるか |
| 数値の性格 | 中小企業の受発注業務時間の平均51.4%減 | 自社の値は工程別の記録と試行で測る |
▼ 図の内容を文字で読む
- 注文の受け手
- 実証:受注側も同じ規格に乗っていた
- 自社:仕入先がFAXや電話で受けているかを確かめる
- 対象の範囲
- 実証:6業界・12プロジェクトの企業間の受発注
- 自社:拠点の入力と本部の取りまとめも含めて測る
- 業務フロー
- 実証:既存の業務フローを変更しやすかった
- 自社:締め時間や承認の手順を変えられるかを確かめる
仕入先の受け方が混在すると、効果はどこで頭打ちになるのか
データで渡せる先とFAX・メールの先の分け方
最初の節で記録した送信手段の内訳をもとに、仕入先を受け方で分けます。
分け方の目安は次のとおりです。
- データで受けられる先:注文を電子データで受け取り、自社の仕組みに取り込める
- FAX・メールで受ける先:アプリで作った注文を、FAXや添付ファイルなどの形にして送る
- 電話で受ける先:担当者が口頭で注文を伝える
データで受けられる先とつながれば、発注側の送信の手間と、仕入先側で注文を打ち直す手間の両方が減る可能性があります。
打ち直しがなくなれば、その転記で起きる数量違いや品目違いも起きにくくなり、確認・修正の工程も軽くなります。
公的な実証で大きな削減が出たのは、この形でした。
FAX・メールで受ける先では、事情が変わります。
拠点と本部の側では、全拠点の注文が同じ形式でそろうので、入力や集計の手間は減らせる余地があります。
送信も、アプリから仕入先ごとの注文書をまとめて出せるなら手作業は軽くなりますが、これは製品によって違います。
ただし仕入先は届いたFAXやメールを見て自社の仕組みに入力し直すので、そこで誤りが起きれば、問い合わせや訂正は発注側の確認・修正の工程として戻ってきます。
発注側で減るのは、送り出すまでの部分にとどまりやすいということです。
電話で受ける先は、アプリで注文をまとめても、最後に誰かが仕入先ごとに電話をかける作業が毎晩残ります。
伝えた内容をアプリの記録と合わせておく手間が加わることもあります。
たとえば仕入先が10社あり、そのうち8社がFAXで受けているとします。
この場合、アプリで縮められるのは主に拠点の入力と本部の集計で、8社分の送信と送信後の確認はほぼそのまま残ると考えておくのが安全です。
効果が頭打ちになるのは、こうした仕入先との境目です。
反対に、本部の集計に最も時間を取られていて、送信と確認はそれほどでもないなら、仕入先の多くがFAXでも時間短縮の余地は十分にあります。
最初に工程別の時間を測る意味はここにあります。
仕入先にデータで受けてもらう方向へ寄せることもできますが、それには仕入先の了解と、仕入先側の受け方の変更が必要です。
共通EDI標準では受注側の負担を軽くする設計がとられているものの1、取引先がそれに応じるかどうかは個別の調整になります。
この調整の手間は、導入の負担として後の節でもう一度扱います。
共通EDI標準が求める項目
「データで渡せる」は、注文を電子的に送れるという意味だけではありません。
受け取った側が、それぞれの項目を同じ意味で読み取り、自社の仕組みに取り込めることまでを含みます。
共通EDI標準では、業務アプリに最低限13項目、プロバイダーには注文メッセージの全135項目への対応が求められています1。
項目の意味を双方でそろえているからこそ、打ち直しなしで注文が渡ります。
ここで区別しておきたいのは、データを出せることと、相手がそのデータを処理できることの違いです。
発注アプリが注文をファイルとして書き出せても、仕入先の仕組みがその形式を取り込めなければ、仕入先側では結局打ち直しが起きます。
市販の発注アプリが共通EDI標準に対応しているとは限らず、対応の有無は各製品の提供者に確かめる必要があります。
提供者に聞くときは、次のように仕入先との境目に絞ると答えが比べやすくなります。
- 共通EDI標準や、仕入先が使っているEDIに対応しているか
- データで受けられない仕入先には、どの形(FAX、メールの添付など)で注文を送れるか
- 仕入先にデータで受けてもらう場合、仕入先側で何の手続きや契約が要るか
▼ 図の内容を文字で読む
- データで受ける仕入先
- 打ち直しが要らず、転記による数量違いや品目違いも起きにくい
- 送信と確認・修正も軽くなる可能性がある
- FAX・メールで受ける仕入先
- 仕入先側で入力し直すため、誤りが確認・修正として戻る
- 発注側で減るのは入力と集計が中心
- 電話で受ける仕入先
- 仕入先ごとに電話をかける作業が毎晩残る
- 伝えた内容を記録と合わせる手間が加わることもある
多拠点では、拠点の入力と本部の取りまとめのどちらに時間が残るのか
拠点側の作業と本部側の作業
拠点が増えたとき、時間の増え方は拠点と本部で違います。
拠点の担当者はそれぞれ自分の拠点の分を入力するので、拠点が5から10に増えても、一人ひとりの入力時間は大きくは変わりません。
一方、本部は全拠点の注文を受け取り、確認し、仕入先ごとにまとめるので、拠点が増えるほど作業も待ち時間も増えます。
多拠点で時間が積み上がりやすいのは、本部の取りまとめの側です。
本部の作業の中でも、アプリで減らしやすいものと減りにくいものがあります。
拠点によって紙の発注書、表計算のファイル、メールの本文と形式がばらばらなら、本部はそれを読み取って一つの表へ写す作業に時間を取られています。
全拠点が同じ画面・同じ品目表で入力するようになれば、この転記は要らなくなります。
これに対し、数量が妥当かどうかを判断する承認は、人の判断として残ります。
アプリにできるのは、過去の発注や他の拠点と見比べやすくして、判断を早める手助けまでです。
拠点ごとの締め時間の違いも、本部の時間を左右します。
早い拠点は閉店後すぐに入力を終えても、遅い拠点の入力が届くまで本部は集計を締められません。
この待ち時間はアプリを入れただけでは縮まらず、社内の入力締め時刻を決めるなど、ルールの側で手当てする必要があります。
拠点の側では、入力と修正に時間が残ります。
品目が数百あり、目当ての品目を探すのに手間取る画面だと、慣れるまでは手書きより遅くなることもありえます。
前回と同じ注文を呼び出して数量だけ直せるような入力方法なら、毎晩の入力は短くなる余地があります。
修正は、本部からの差し戻しがどれだけ来るかで決まるため、入力時に単位や品目を選び間違えにくい作りかどうかが効いてきます。
機能を確かめる観点
製品を比べるとき、機能一覧の項目数を見比べても、閉店後の時間が減るかどうかは分かりません。
機能ごとに、4つの工程のどこに効くのかを対応させて確かめるほうが判断に直結します。
- 入力:前回と同じ品目・数量を呼び出せるか(定型発注)、拠点ごとの過去の発注を見られるか(履歴)
- 承認・集計:入力できる人と承認できる人を分けられるか(権限)、本部が確定するまで仕入先へ送られない流れを作れるか(承認)、拠点の注文を仕入先ごとにまとめられるか(集計)
- 仕入先への送信:仕入先ごとに、データ・FAX・メールなど送る形を選べるか
- 確認・修正:送信後の変更や取消を、誰がいつ行ったか残せるか
ここに挙げたのは確認の観点です。
どの製品にどの機能があるかは、提供者の製品資料や試用で確かめる必要があります。
導入を決める管理者と、毎晩操作する拠点の担当者とでは、確かめるべき点が違います。
管理者が見たいのは承認・集計・送信の流れと、仕入先の受け方への対応です。
拠点の担当者にとって大事なのは、閉店後の疲れた時間帯に、実際の品目数で迷わず入力できるかです。
試用の際は、本部の担当者が画面を見るだけで済ませず、拠点の担当者に自店の品目表で入力してもらうと、入力の工程に残る時間が見えてきます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 拠点の担当者
- 自分の拠点の分だけを入力する
- 入力と、差し戻しによる修正に時間が残る
- 本部の担当者
- 全拠点の注文を受け取り、確認し、仕入先ごとにまとめる
- 最後の拠点の入力が届くまで集計を締められない
- 拠点が増えたとき
- 一人ひとりの入力時間は大きくは変わらない
- 本部の作業と待ち時間は拠点が増えるほど増える
アプリを入れても残る作業と、導入で増える負担
初期登録と運用ルール
アプリを使い始める前に、品目、仕入先、拠点の情報を登録する作業が発生します。
品目には名称だけでなく、単位や発注単位(ケース単位か、バラ単位か)をそろえて登録しておかないと、入力時の取り違えが残ります。
仕入先には受け方と締め時間を、拠点には担当者と権限を設定します。
この作業は主に本部が担い、毎晩の発注時間とは別に、導入時の作業として時間を見積もっておく必要があります。
操作に慣れる期間の負担もあります。
閉店後の発注を担う人が日によって替わる拠点では、全員が操作を覚えるまでに時間がかかります。
慣れるまで紙とアプリを並行して使うと、その期間は作業が一時的に二重になります。
運用ルールの整備も欠かせません。
誰が何時までに入力するか、本部は何を基準に承認するか、入力が遅れた拠点をどう扱うか、品目表にない品物を頼みたいときはどうするか、といった取り決めです。
公的な実証でも、削減効果の背景として既存の業務フローを変更しやすかったことが挙げられていました1。
アプリを入れても、紙の承認印を残すなど従来の手順を並行して続ければ、時間はほとんど減りません。
現行のルールをどこまで変えられるかが、負担と効果の両方を左右します。
欠品・変更・取消の例外
注文を送った後に、仕入先から欠品の連絡が来る、拠点から数量を変えたいと言われる、注文自体を取り消す、といった例外は導入後も起きます。
代わりの品を頼むか、別の仕入先に回すかといった判断は人が行うもので、アプリが肩代わりするものではありません。
アプリで変わりうるのは、その例外の記録と連絡の手間です。
仕入先からの欠品連絡が電話やFAXで届き、アプリの外でやり取りされると、アプリ上の注文と実際の注文がずれます。
誰かが後でそのずれを突き合わせて直すことになり、確認・修正の工程に時間が戻ってきます。
変更や取消をアプリ上で記録でき、拠点にもそれが伝わる流れになっていれば、このすり合わせは軽くなります。
ただし仕入先からの連絡がアプリを通らない限り、記録への反映は手作業で残ります。
もう一つ、仕入先にデータで注文を受けてもらうための調整も、導入で増える負担です。
仕入先への説明、受け方の変更の合意、切り替え前の試しの送信といったやり取りが、本部の担当者に発生します。
すべての仕入先を一度に切り替えようとするとこの負担が膨らむため、効果を見ながら少しずつ広げるほうが現実的です。

導入前に何を測り、どこから試せば効果を自社で判断できるか
現状の測り方
ここまで見てきたように、公的な削減率は自社の見込みには使えず、効果は工程と仕入先の受け方で変わります。
そのため判断の材料は、自社の現状を測ることから作るしかありません。
最初の節で挙げた項目を、1〜2週間ほど記録します。
1週間あれば曜日による違いが一通り入り、2週間あれば週末前の多い日や、たまたま少なかった日の影響が均されます。
記録用の表には、次の列を用意しておくと後で比べやすくなります。
- 日付、拠点、記録した人
- 工程(入力、承認・集計、送信、確認・修正)
- 開始と終了の時刻
- 待ち時間(拠点の入力待ち、仕入先の返答待ち)
- 仕入先と送信手段
- 差し戻しや問い合わせの件数と理由
- 締め時間に間に合ったかどうか
記録は、思い出して書くのではなく、その場で時刻を書き留めるほうが正確です。
本部の集計については、最後の拠点の入力が届いた時刻も残しておくと、作業時間と待ち時間を分けられます。
拠点ごとに締め時間が違う場合は、どの拠点の入力を待っていたかも書いておくと、ルールで縮められる待ち時間がどれだけあるかが見えてきます。
少数の拠点・仕入先での試行と評価項目
現状の記録がそろったら、少数の拠点と仕入先で試します。
拠点は1〜2か所で、品目が多く入力に時間がかかっている拠点と、標準的な拠点を一つずつ選ぶと、入力の工程の違いが比べやすくなります。
仕入先は、データで受けられる先とFAX・メールで受ける先から、それぞれ1〜2社を選びます。
受け方の違う仕入先を並べて試すことで、仕入先との境目で効果がどこまで出るかを自社のデータで確かめられます。
試行期間も現状の記録と同じくらいの長さにし、同じ列の表で記録します。
評価は次の項目で行います。
- 工程ごとの時間の差(入力、承認・集計、送信、確認・修正)
- 差し戻しや問い合わせの件数の差
- 締め時間に間に合ったかどうか
- 試行のためにかかった登録や操作習得の時間(毎晩の時間とは分けて記録)
結果は合計時間だけでなく、工程ごとに読みます。
入力が減っても確認・修正が変わらないなら、時間が残っているのは仕入先との境目で、FAXで受ける仕入先が多いほど全体の効果は頭打ちになります。
集計が大きく減ったなら、拠点が多いほど本部側の効果は大きくなる見込みが立ちます。
データで受ける仕入先とFAXで受ける仕入先の間に差が出たなら、仕入先にデータでの受け取りを相談する価値があるかを考える材料になります。
待ち時間が変わらないなら、アプリより先に入力締め時刻などのルールを見直すべきだと分かります。
参考までに、東京商工会議所が2024年10〜11月に主に東京23区内の中小企業へ行った調査(回答1,218社)では、デジタルシフトで得られた効果として「業務効率化(コスト削減、時間短縮、ミス防止等)」を挙げた企業が81.0%で最も多くなっています2。
ただしこれは効果として挙げた企業の割合で、時間がどれだけ短くなったかを示すものではありません。
発注業務に限った回答でもないため、自社でどの程度の時間短縮になるかは、工程別の記録と試行の結果から判断することになります。
時間がどの工程に残り、仕入先の受け方でどこまで効果が届くかは、拠点と本部の作業を並べてみないと見えにくく、社内だけで整理すると見落としが出やすいためです。
現在の発注の流れをもとに、工程別の記録の取り方や、どの拠点・仕入先から試すと判断しやすいかを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 時間の内訳 | 入力、承認・集計、送信、確認・修正の工程と、待ち時間を分けて見る |
| 51.4%の読み方 | 仕入先も同じ規格で受けた企業間の実証の平均。自社の見込みの計算には使わない |
| 仕入先の受け方 | データで受ける先は送信後の確認まで減る余地、FAX・メール・電話の先は送信と確認が残りやすい |
| 多拠点の時間 | 拠点数に応じて増えるのは本部の集計・確認と待ち時間 |
| 残る作業 | 例外の判断、仕入先との調整、初期登録と運用ルールの整備 |
| 判断の方法 | 1〜2週間の工程別記録と、受け方の違う仕入先での少数拠点の試行を比べる |

試行の結果を工程別に読み、仕入先にデータでの受け取りを相談するか、社内ルールを先に見直すかを決める段階では、受発注全体の流れを踏まえた整理が役に立つためです。 記録した工程別の時間をもとに、次にどの工程と仕入先へ手を付けるかの優先順位を確かめられます。
よくある質問
仕入先がFAXしか受け付けない場合、発注アプリを入れる意味はありますか?
拠点の入力と本部の集計に時間がかかっているなら、意味はあります。
全拠点が同じ形式で入力すれば、本部が紙や表計算の注文を一つにまとめ直す手間を減らせる余地があるためです。
一方、仕入先がFAXを見て入力し直す部分は変わらないため、送信後の確認・修正は残ります。
時間の大半が送信と確認に使われている場合は、効果が小さくなります。
アプリから仕入先ごとにFAX用の注文書を出せるかどうかは、製品の提供者に確かめてください。
拠点ごとに締め時間が違う場合、本部の取りまとめ時間は減りますか?
手を動かす集計の時間は減らせる余地がありますが、最後の拠点の入力を待つ時間はアプリだけでは縮まりません。
待ち時間を減らすには、社内の入力締め時刻を決めるなど、ルールの見直しが必要です。
現状の記録で、どの拠点の入力をどれだけ待っているかを残しておくと、ルールで縮められる部分が分かります。
現状の発注時間は、何を何日間記録すれば比較に使えますか?
1〜2週間を目安に、入力、承認・集計、送信、確認・修正の工程ごとの時間、待ち時間、仕入先ごとの送信手段、差し戻しの件数と理由、締め時間に間に合ったかを記録します。
1週間あれば曜日の違いが一通り入ります。
拠点の担当者と本部の担当者がそれぞれ記録し、その場で時刻を書き留めると比べやすくなります。
導入を決める管理者と操作する拠点担当者で、確認すべき点は何が違いますか?
管理者は、承認・集計・送信の流れと、仕入先の受け方への対応を中心に確かめます。
拠点の担当者は、閉店後の時間帯に、実際の品目数で迷わず入力できるかを確かめます。
試用では、拠点の担当者に自店の品目表で入力してもらうと、入力の工程に残る時間が見えます。
欠品や取消などの例外対応は、アプリ導入後も手作業で残りますか?
代わりの品を頼むかどうかといった判断は、導入後も人が行います。
変わりうるのは記録と連絡の手間で、変更や取消をアプリ上で記録して拠点に伝えられれば、注文と実態のずれを後から突き合わせる作業は軽くなります。
ただし仕入先からの連絡が電話やFAXで届く限り、その内容をアプリに反映する作業は手作業で残ります。