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オンライン受発注でミスはどこまで減る?国の実証の削減率と自社効果の試算の仕方

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • オンライン受発注で減るのは、注文データをそのまま取り込める工程の聞き取り・転記ミスと、その訂正・確認の工数です。取引先の入力誤りや倉庫作業の誤りは残ります。
  • 国の実証の平均51.4%は、中小企業の受発注業務時間の削減率で、ミス件数の減少率ではありません。自社の見込みの上限の目安として扱います。
  • 効果は、聞き取り・転記に由来するミスと受注処理の時間に分けて試算し、オンラインで取り込める注文の割合(件数ベース)で割り引きます。
  • 回収は初期費用÷(月あたりの効果−月額費用)で見ます。基幹システムとの連携、並行運用、取引先の負担も費用として扱います。
  • 取引先が一部しか移らないときは、注文件数とミスが多く移行に前向きな先から移し、移行先とそれ以外を比べてから広げます。

40代後半の日本人男性が立ち会議をしている場面

FAX・電話の受注で、ミスはどこで生まれ、オンライン化で何が変わるのか

電話で聞いた品番をメモし、FAXの注文書を見ながら受注画面へ打ち込み、出荷指示や請求でもう一度写す。
この流れでは、聞き間違いや転記漏れが起きるたびに、確認の電話、訂正、再出荷に時間を取られます。
オンライン受発注で減らせるのは、取引先が入力した注文データをそのまま取り込める工程の手入力ミスと、その訂正にかかる工数です。
国の実証では、中小企業の受発注業務時間が平均51.4%減りました1。
ただし、これはミス件数の減少率ではありません。
自社のミス件数と一件あたりの対応時間から効果を試算し、取引先がどれだけ移行するかで割り引いて判断します。

聞き取り・転記・単価数量・出荷指示・請求のどこで起きるか

受注側の仕事を、注文が届いてから請求までの流れで追うと、ミスが生まれる場所はいくつかに分かれます。
電話の注文では、品番、数量、納期を聞き取ってメモに書く段階で聞き間違いが起きます。
FAXの注文では、手書きの数字の読み違いや、かすれた文字の読み違いが加わります。
メールやExcelで届く注文も、受注画面へ打ち直すなら同じ転記の作業が残ります。

次の段階は、メモやFAXを見ながら受注画面へ入力する転記です。
行を一つ飛ばす、桁を打ち違える、似た品番を選ぶといった誤りは、ここで生まれます。
単価や数量の誤りもこの段階に集まりがちです。
取引先ごとに違う単価を取り違えたり、ケース単位の注文をバラの数で入れたりすると、金額まで狂います。

出荷指示と請求で起きることは、受注データを引き継ぐかどうかで変わります。
受注画面のデータから出荷指示書や請求書を作れるなら、この段階で新たな転記は起きません。
ただし、上流の誤りはそのまま引き継がれます。
出荷指示書を手で書き直したり、請求のために経理システムへ打ち直したりしているなら、写すたびにミスの機会が増えます。
中小企業庁のミラサポplusも、電話やFAXによる受発注では経理システムへ手入力で転記する必要があり、ミスや書類紛失のリスクがあると説明しています1。

厄介なのは、ミスが生まれる場所と見つかる場所が離れていることです。
受注入力で数量を一桁間違えても、入力した時点では気づかれないことがあります。
その誤りは、出荷の現場で在庫が足りない、取引先に届いた量が違う、請求額が合わないといった形で後から表に出ます。
見つかる段階が後ろになるほど、訂正の範囲は出荷のやり直しや請求書の再発行、取引先への説明へ広がり、一件のミスにかかる時間が膨らみます。

減るミスと、残るミス

オンライン受発注では、取引先が画面に品番や数量を入力し、その注文が受注側にデータとして届きます。
受注側が注文を聞き取ったり読み取ったりして打ち込む作業がなくなります。
そのため、その注文については、聞き間違い、読み違い、転記漏れ、桁の打ち違いが起きなくなります。
ミラサポplusも、企業間でデータを連携すれば、手入力による人為的ミスがなくなると述べています1。

ただし、減る範囲は、注文データがそのまま取り込まれる工程に限られます。
オンラインで受けた注文を印刷して基幹システムへ打ち直しているなら、転記は場所を変えて残ります。
減るミスの範囲は、社内側のつながり方で変わります。
具体的には、受注データを出荷指示や請求までつなげられるか、基幹システムへの取り込みが手作業かどうかで決まります。

一方で、オンライン化しても残るミスがあります。

  • 取引先が品番を選び間違える、数量を打ち間違えるといった、発注側の入力の誤り
  • 注文を送った後に電話で変更が入り、受注側が手で直す場面
  • 受注データが正しくても、倉庫でのピッキングや梱包で起きる取り違え
  • 取引先別の単価や商品情報を、受注側が登録する段階で誤っている場合

最初の項目は、入力する人が受注側から取引先へ移るだけです。
誤りの機会そのものがなくなるわけではありません。
ただし、誤った注文でも取引先自身が入力した内容がそのまま記録に残ります。
そのため、言った・言わないの行き違いを確かめる手間は軽くなります。
反対に、登録した単価や商品情報が誤っていれば、その誤りはすべての注文に同じように入り込みます。

オンライン化で減るのは、注文の内容を写すことに由来するミスです。
商品選定の誤りや現場作業の誤りには、別の対策が必要です。
この二つを分けておくと、効果の見込みを過大にせずにすみます。
工程ごとにどれだけ減るかを示した公的な数値はないため、自社の記録で見ていくことになります。

受注入力のミスが出荷や請求の段階で表に出る関係(模式図)
聞き取り・転記で生まれたミスが、出荷の段階では在庫不足や出荷のやり直しとして、請求の段階では請求額の不一致や再発行として表に出ることを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 聞き取り・転記で生まれるミス
    • 品番・数量の聞き間違い
    • FAXの読み違い
    • 桁の打ち違い・行の飛ばし
  • 出荷の段階で見つかる
    • 在庫が足りない
    • 届いた量が違う
    • 出荷のやり直し
  • 請求の段階で見つかる
    • 請求額が合わない
    • 請求書の再発行
    • 取引先への説明

国の実証事業の「平均51.4%削減」は何の数字か

業務時間の削減率で、ミス件数ではない

オンライン受発注の効果として目にしやすいのが、国の実証事業で示された「平均51.4%」という数字です。
ミラサポplusによると、受発注データの連携を試した実証プロジェクトで、中小企業は受発注の業務時間を平均51.4%削減しました1。
ここで減ったのは業務にかかる時間であり、ミスの件数ではありません。

受発注の業務時間には、注文を入力する時間のほか、内容を照合する時間、取引先に確認の電話をかける時間、誤りを訂正する時間も含まれます。
前の節で見た転記ミスが減れば、訂正や確認の時間も減ります。
そのため、ミスの減少が業務時間の短縮に寄与している可能性はあります。
しかし内訳は示されていないため、「ミスが半分に減る」と読み替える根拠にはなりません。

上司に説明するときは、二つの話を分けて伝えると誤解されにくくなります。
一つは、国の実証でデータ連携により中小企業の受発注業務時間が平均51.4%減ったという、公表された事実です。
もう一つは、自社のミスがどれだけ減るかを自社の記録から見積もるという、試算の話です。
前者を後者の代わりにすると、導入後に数字が合わなかったとき、どこで見込みを誤ったのかを説明できなくなります。

12プロジェクト・6業界という対象

数字の対象も確かめておきます。
この実証は、中小企業共通EDI規格に対応した12のプロジェクトで行われました1。
対象は自動車、水インフラ、農林水産、輸出、卸・小売、サービスの6業界と、5つの地域です1。
EDIは、企業間で注文書や請求書などの取引データを決まった形式でやり取りする仕組みです。
中小企業共通EDIは、業界や取引先をまたいで使うことを目指した共通の取り決めです。

したがって、51.4%は特定の受発注システムを入れた効果ではありません。
実証に参加した企業の平均です。
業界ごとの削減率は示されていないため、自社の業界で同じ程度になるかは分かりません。
導入費用や取引先の参加率も、この数字には含まれていません。
参加企業がデータ連携に取り組むために集まった企業である点も、自社と比べるときに意識しておきたいところです。

自社に当てはめるときの割り引き方

では、この数字を自社にどう当てはめればよいのでしょうか。
手掛かりになるのは、実証で中小企業の削減率が大企業より高かった理由です。
ミラサポplusは、中小企業のほうがプロジェクトの限られた期間でも既存の業務フローを変えやすく、データ連携に取り組みやすかったことを要因に挙げています1。

裏を返すと、効果は「データを受け取れるようになったか」だけで決まるわけではありません。
「それに合わせて社内の流れを変えたか」にも左右されます。
オンラインで受けた注文を従来どおり紙に出して確認し、FAXの注文と同じように処理していれば、転記がなくなっても照合や確認の時間はあまり変わりません。
受注データを出荷指示や請求までそのまま流し、確認の手順もオンラインの注文に合わせて組み直したときに、業務時間の短縮は大きくなると考えられます。

そこで、51.4%は自社の見込みの上限の目安として扱い、そこから割り引いて置くことを提案します。
割り引く要素は主に二つあります。
一つは、オンラインで取り込める注文が全体のどれだけになるかです。
もう一つは、社内の流れをどこまで変えられるかです。
基幹システムへの取り込みや出荷指示が手作業のまま残るなら、その分だけ見込みを下げます。
具体的な掛け方は、次の試算で扱います。

観点 実証の51.4%が示すもの 自社の試算に必要なもの
測ったもの 中小企業の受発注業務時間の平均削減率 ミス件数と一件あたりの対応時間
対象 中小企業共通EDI規格に対応した実証12プロジェクト 自社と自社の取引先
業界 6業界の平均(業界別の値は示されていない) 自社の業界と商品
含まれないもの ミス件数・導入費用・取引先の参加率 自社の記録・見積・移行の見込みで埋める
実証の平均51.4%が示すものと、自社で補う数字の違い
51.4%は実証12プロジェクト・6業界の中小企業の受発注業務時間の平均削減率で、ミス件数や導入費用、取引先の参加率は含まれず、自社の記録と見積と移行の見込みで補うことを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 51.4%が示すもの
    • 中小企業の受発注業務時間の平均削減率
    • 実証12プロジェクト・6業界の平均
  • 51.4%に含まれないもの
    • ミス件数の削減率
    • 導入費用
    • 取引先の参加率
    • 業界ごとの削減率
  • 自社で補うもの
    • 自社のミス件数と一件あたりの対応時間
    • 自社の記録・見積・移行の見込み

自社のミス件数と処理時間から削減効果を試算する

ミス件数の数え方

試算の出発点は、自社でいま起きているミスの件数です。
件数を集計していなくても、手掛かりになる記録はたいてい社内のどこかに残っています。

  • 受注の訂正や取消の伝票、赤伝票
  • 返品・再配送・追加配送の記録
  • 請求書の再発行や請求額の訂正
  • 取引先からの問い合わせや苦情の記録

これらを数え直せば、過去の件数はおおよそつかめます。
ただ、そのミスがどの工程で生まれたかまでは分からないことが多いはずです。
オンライン化で減るのは聞き取りと転記に由来するミスなので、原因の工程が分からないと、試算に入れる件数を決められません。
そのため、導入を検討している段階から、ミスが起きるたびに次の項目を書き留めておくと、試算の精度が上がります。

  • 日付と取引先
  • 注文の経路(電話・FAX・メール・Excelなど)
  • ミスが生まれた工程(聞き取り・転記・単価数量・出荷指示・請求・現場作業・取引先の誤り)
  • ミスが見つかった工程
  • 訂正・確認・再出荷にかかった時間と担当者
  • 再配送費や値引きなど、実際に出たお金

生まれた工程と見つかった工程を分けて書くのは、前の節で見たように、転記ミスの多くが出荷や請求の段階で見つかるためです。
見つかった場所だけで分類すると、出荷のミスが多いように見えても、実際の原因は受注入力にあったということが起こります。
注文の経路を書いておけば、電話とFAXのどちらでミスが多いか、どの取引先にミスが集中しているかも後から分かります。
これは、最後の節で扱う移行の順番を決める材料にもなります。

ミスの記録とあわせて、ミスのない通常の注文を処理する時間も見ておくと、効果を広く捉えられます。
実証の51.4%は業務時間全体の削減率でした。
そのため、ミスの訂正だけでなく、毎日の入力や確認にかかる時間が減る分も効果になりえます。
担当者が受注入力に使っている時間を、注文の経路ごとにおおまかに書き出しておけば十分です。

試算式と仮例

記録した数字は、ミスに由来する部分と、毎日の受注処理の時間に由来する部分に分けて、効果に直します。
以下の式は、記事として提案する考え方の一例です。
実績の数値ではありません。

ミスに由来する効果(月あたり)=(聞き取り・転記に由来するミスの件数 × 一件あたりの訂正・確認・再出荷の時間 × 人件費の時間単価 + 同じミスによる再配送費や値引きなどの直接の損失)× オンラインで取り込める注文の割合

ここでのポイントは、件数を記録したミス全体ではなく、聞き取りと転記に由来するものに絞ることです。
取引先の入力誤りや倉庫での取り違えは、オンライン化しても減りません。
全体の件数を使うと、効果を過大に見積もることになります。
オンラインで取り込める注文の割合は、取引先の数ではなく注文の件数で見ます。
ミスがどの取引先に集中しているかが分かっていれば、その取引先が移るかどうかで割合を置き換えると、より実態に近くなります。

受注処理の時間に由来する効果(月あたり)= 受注処理にかかる月間の時間 × オンラインで取り込める注文の割合 × 時間の削減見込み × 人件費の時間単価

時間の削減見込みには、実証の51.4%1を上限の目安として、それより低い値を置きます。
前の節で見たとおり、この値は業務フローを変えやすかった中小企業の平均です。
受注データを出荷指示や請求へつながないまま使う場合には、この値に届きにくいと考えるのが自然です。
なお、ミスの訂正時間を受注処理の時間にも含めると、二つの式で同じ時間を重ねて数えてしまいます。
ミス対応の時間は、受注処理の時間から外して記録しておきます。

仮の状況として、記録してみるとミスの大半がFAXの手書き注文の読み違いと転記に集中しており、そのFAXの注文の多くを数社の取引先が出していた場合を考えてみます。
この場合、その数社がオンラインに移れば、ミスに由来する効果の大部分が見込めます。
反対に、ミスの多くが倉庫でのピッキングや取引先の品番の選び間違いで生まれていたなら、オンライン受発注を入れても、ミスに由来する効果は小さくなります。
そのときの効果は、主に受注処理の時間の側に出ます。
同じ導入でも、どちらの状況かで上司への説明の中心が変わります。
記録で原因の工程を分けておく意味は、ここにあります。

一件あたりの損失額や対応時間には、世間の相場を当てはめたくなるかもしれません。
しかし、こうした値は業種や商品、取引先との関係で大きく違います。
自社の記録の値を使うほうが、上司への説明に耐えます。

月あたりの効果を、ミスに由来する部分と受注処理の時間に由来する部分に分ける試算の考え方(模式図)
月あたりの効果を、ミスに由来する効果と受注処理の時間に由来する効果に分け、それぞれを件数・時間・時間単価・損失・取り込める注文の割合などに分解した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 月あたりの効果
    • ミスに由来する効果
    • 受注処理の時間に由来する効果
  • ミスに由来する効果の要素
    • 聞き取り・転記に由来するミスの件数
    • 一件あたりの訂正・確認・再出荷の時間
    • 人件費の時間単価
    • 再配送費や値引きなどの直接の損失
    • オンラインで取り込める注文の割合
  • 受注処理の時間に由来する効果の要素
    • 受注処理にかかる月間の時間
    • オンラインで取り込める注文の割合
    • 時間の削減見込み(実証の51.4%を上限の目安)
    • 人件費の時間単価

導入費用・運用負担・取引先の移行負担と回収の見方

費用項目の整理

試算した効果と比べる費用は、見積書の金額だけではありません。
費用には、受注側で発生するものと、取引先の側で発生するものがあります。
取引先の負担は受注側に請求されなくても、移行の進み方に影響します。

  • 初期費用:システムの設定、商品情報や取引先別の単価の登録
  • 月額費用:利用料や保守
  • 基幹システムとの連携:受注データを在庫・出荷・会計へ取り込むための開発や設定
  • 取引先への案内と説明:操作方法の説明、問い合わせへの対応、移行のお願い
  • 並行運用の負担:電話・FAXの注文を受け続ける間、二つの経路を確認する手間

金額は受発注の規模や連携の範囲で大きく変わるため、自社で取った見積で埋めます。
見落としやすいのは、基幹システムとの連携と並行運用です。
連携を見送れば、初期の出費は抑えられます。
ただし、前の節で見たとおり、オンラインの注文を基幹システムへ打ち直す転記が残り、ミスに由来する効果の一部が消えます。
並行運用は見積書に載らない社内の手間で、移行が終わるまで続きます。

取引先の負担も、効果の前提として見ておく必要があります。
オンライン受発注は、取引先が画面から注文するか、データで送ってくれて初めて成り立ちます。
取引先の担当者は、慣れた電話やFAXをやめて、新しい操作を覚えることになります。
自社の購買システムで発注データを作っている取引先なら、その内容をこちらの画面へ打ち直す二重入力が生まれることもあります。
こうした負担は取引先が移行をためらう理由になりえるため、移行の見込みを高く置きすぎないようにします。

回収の見方

回収は、月あたりの効果から月額費用を引いた差額で、初期費用を何か月で取り戻せるかを見ます。
回収の目安(月数)= 初期費用 ÷(月あたりの効果 − 月額費用)
差額がゼロ以下なら、この試算の範囲では回収できないということです。

注意したいのは、月あたりの効果が導入直後から満額出るわけではないことです。
取引先の移行は少しずつ進み、その間は並行運用の手間もかかります。
移行の割合が低い間は、効果も小さくなります。
移行の進み方を何段階かに分け、それぞれの割合で効果を置き直すと、回収までの見通しが現実に近づきます。

上司への説明では、見込みを一つに決めず、低め・中間・高めの三通りで回収の目安を示すと、判断材料として扱いやすくなります。
高めの見込みでも、時間の削減見込みは実証の51.4%を超えない値にします。
低めの見込みでは、移行する取引先を確実に移りそうな先だけに絞ります。
三通りのどれでも回収できるなら、判断は単純です。
低めの見込みで回収できないなら、どの取引先が移るかが結論を左右します。
その場合は、次の節で扱うように移行の順番を決め、移行した分の効果を確かめながら進める方法があります。

件数や時間に直しにくい効果もあります。
書類の紛失がなくなることや、注文の内容が記録として残り、言った・言わないの確認が減ることです。
ミラサポplusも、手入力の転記を介する受発注のリスクとして、ミスとあわせて書類紛失を挙げています1。
こうした効果は試算の金額に無理に足さず、数字とは別に添えるほうが、試算の信頼を損ないません。

30代後半の日本人男性がオンライン会議への参加をしている場面

取引先が一部しか移行しない場合の効果と、段階導入の進め方

効果の目減りの考え方

多くの受注側にとって、取引先のすべてが一度にオンラインへ移ることは想定しにくいでしょう。
電話やFAXの注文が残る間、効果はオンラインで受けた注文の分に限られます。
電話やFAXで受けた注文は、これまでどおり聞き取りと転記を経るため、そこで起きるミスは変わりません。

効果の目減りの大きさは、取引先の数ではなく、移った注文の件数と、その注文にどれだけミスが含まれていたかで決まります。
取引先の多くが移っても、残った少数の取引先がFAXで大量に注文し、ミスもそこに集中していれば、効果は小さいままです。
逆に、移った取引先がわずかでも、その取引先がミスの多い注文をまとめて出していた先なら、効果は大きくなります。
前の節の式で、取り込める注文の割合を件数で置いたのはこのためです。

二つの経路を抱える手間も、効果を目減りさせます。
オンラインの注文と電話・FAXの注文で確認の手順や締めの時刻が違うと、受注担当者は両方を見比べながら処理することになります。
電話やFAXで受けた注文を受注側がオンラインの画面へ代わりに入力し、社内の処理を一本にそろえる方法もあります。
ただし、その入力自体は手作業なので、聞き取りと転記のミスは残ります。
この方法で減るのは出荷指示や請求への転記の分です。
受注入力のミスは減らないため、分けて見積もります。

先に移す取引先の選び方と測り方

移行の順番は、三つの条件の重なりで決めると、効果を確かめやすくなります。

  • 注文の件数が多い取引先
  • 記録で聞き取り・転記のミスが多かった取引先
  • オンラインでの注文に前向きな取引先

最初の二つの条件は、ミスの記録を取引先ごとに集計すれば見えてきます。
三つ目の条件は、取引先の担当者に聞いてみないと分かりません。
注文方法を変える余地があるか、自社の購買システムとの二重入力が生じないかを確かめます。
件数もミスも多いのに移行が難しい取引先は後回しにし、まず移れる先で効果を確かめるほうが、社内への説明もしやすくなります。

効果を測るときは、移った取引先とそれ以外の取引先で、同じ期間のミス件数と処理時間を比べます。
ミスは件数そのものではなく、注文件数あたりの割合で比べると、注文の多い時期と少ない時期の違いに左右されにくくなります。
導入前から使っている記録の項目をそのまま続ければ、比べる物差しも変わりません。
移った直後は、取引先も受注側も操作に慣れておらず、一時的に問い合わせが増えることもあります。
その期間は分けて見ておくと、判断を誤りにくくなります。

比べた結果、移った取引先で聞き取り・転記のミスと処理時間が下がっていれば、その実測値で試算の見込みを置き直し、次の取引先へ広げます。
下がっていなければ、受注データが社内のどこかで打ち直されていないか、確認の手順が以前のまま残っていないかを見直します。
移行、測定、見直しを繰り返すうちに、上司への説明も「見込み」から「自社で確かめた数字」へ置き換わっていきます。

段階導入で、移行・測定・見直しを繰り返して取引先へ広げる流れ(模式図)
移す取引先を選び、移行し、移行先とそれ以外を比べ、試算の見込みを置き直して次の取引先へ広げ、再び取引先の選定に戻る繰り返しを示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  1. 移す取引先を選ぶ
  2. オンラインでの注文へ移行する
  3. 移行先とそれ以外でミスと処理時間を比べる
  4. 試算の見込みを置き直す
  5. 次の取引先へ広げる

受注の流れのどこで聞き取りと転記が起きているかは、注文の経路ごとに社内の入力先を並べてみないと見えにくく、試算に入れる注文の範囲もそこで決まるためです。

いまの注文経路と社内での転記の箇所を一緒に整理し、オンライン化で減らせる工程と残る工程の見当を確かめられます。無料相談で要件を整理する

上司への説明で、試算の数字を出どころ別に並べる

試算に入れる数字を、事実・記録・見積・仮定という根拠の種類で分けて並べた。

  • 公表された実証の値:中小企業の受発注業務時間の平均削減率51.4%(実証12プロジェクト・6業界)
  • 自社の記録から数えた値:聞き取り・転記に由来するミス件数、一件あたりの対応時間、直接の損失、受注処理の時間
  • 見積で埋める値:初期費用、月額費用、基幹システムとの連携
  • 置いた仮定:オンラインで取り込める注文の割合、時間の削減見込み

仮定の値を低めに変えても回収できるかどうかで、一斉導入か段階導入かの判断が分かれる。

要点の整理

軸 基準
減るミス 注文データをそのまま取り込める工程の聞き取り・転記のミスと、その訂正・確認の工数
残るミス 取引先の入力誤り、注文後の口頭変更、倉庫作業の誤り、登録した単価・商品情報の誤り
51.4%の扱い 中小企業の受発注業務時間の平均削減率。ミス件数ではないため、上限の目安にする
試算 聞き取り・転記由来のミスと受注処理の時間を分け、取り込める注文の割合(件数ベース)で割り引く
回収 初期費用÷(月あたりの効果−月額費用)を、低め・中間・高めの三通りで示す
段階導入 注文件数とミスが多く、移行に前向きな取引先から移し、移行先とそれ以外を比べる
40代後半の日本人女性が踊り場での書類確認をしている場面

移行する取引先の順番と回収の見込みは、取引先ごとの注文件数やミスの偏り、基幹システムへの取り込み方で変わり、記録を集めた後でも社内だけでは判断しにくいためです。 記録した数字をもとに、試算の式に入れる値と、最初に移す取引先の候補を一緒に確かめられます。

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よくある質問

ミス件数を数えていない場合、まず何を記録すれば試算できるか

ミスが起きるたびに、注文の経路、ミスが生まれた工程、ミスが見つかった工程、対応にかかった時間、再配送費などの実際の出費を書き留めることから始めます。
過去の件数は、訂正伝票や返品・再配送の記録、請求書の再発行を数え直せばおおよそつかめます。
ただし、過去の記録からは原因の工程が分からないことが多いです。
オンライン化で減る聞き取り・転記由来のミスを数えるには、新しく記録を取るほうが確実です。

取引先の一部がFAXのままでも導入する意味はあるか

移る取引先が、注文件数やミスの多い先であれば意味はあります。
効果は、移った注文の件数とそこに含まれていたミスで決まります。
そのため、移る取引先の数が少なくても、FAXで大量に注文していた先が移れば効果が出ます。
反対に、残る取引先にミスが集中しているなら効果は限られ、電話・FAXとの並行運用の手間も続きます。
どちらに当たるかは、取引先ごとのミスの記録と、各取引先が移行できるかどうかを確かめたうえで判断します。

実証の削減率は発注側と受注側のどちらにも当てはまるか

51.4%は、受発注データ連携の実証12プロジェクトにおける中小企業の受発注業務時間の平均削減率として示されています1。
発注側と受注側の内訳は示されていません。
そのため、受注側だけ、あるいは発注側だけの見込みとしてそのまま使うことはできません。
どちらの立場でも、上限の目安として扱うのが無難です。
発注側の効果は、受注側の画面へ注文を入力することが、自社の購買システムとの二重入力にならないかどうかで変わります。

オンライン受発注でも防げない誤発注にはどんなものがあるか

取引先が品番を選び間違える、数量や単位を打ち間違えるといった、発注側の入力そのものの誤りは残ります。
注文後に電話で変更が入り、受注側が手で直す場面も、転記の機会として残ります。
また、受注側が登録した取引先別の単価や商品情報が誤っていれば、その誤りはオンラインの注文すべてに入り込みます。
オンライン化で変わるのは、取引先が入力した内容がそのまま記録に残り、誰がどう注文したかを確かめやすくなる点です。
普段と大きく違う数量の注文に受注側が気づいて確認する手順は、引き続き役に立ちます。

導入前後の効果は何をどの期間で測ればよいか

測るのは、聞き取り・転記に由来するミスの件数と、受注処理にかかる時間です。
ミスは注文件数あたりの割合にすると、注文の多い時期と少ない時期を比べやすくなります。
期間は導入前と導入後で同じ長さにそろえ、繁忙期と閑散期をまたいで比べないようにします。
移行した直後は操作に慣れる期間なので、その分は分けて見ます。
そのうえで、移った取引先とそれ以外の取引先を同じ期間で比べると、季節や注文量の変動の影響を受けにくくなります。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

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  1. 1 出典:中小企業庁(ミラサポplus)「企業間のデータ連携で、受発注の業務コストを削減する!」(2020年)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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