◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 法律名・用語・条番号の置き換えは表記の作業で、実質の変更(従業員基準、手形払の禁止、振込手数料の負担禁止、一方的な代金決定の禁止)とは分けて考える。
- 従業員基準は資本金基準が適用されない場合に使い、製造委託等は300人、情報成果物作成・役務提供委託は100人を線として、委託をした時点の人数で判断する。
- 発注内容は書面または電磁的方法で発注後直ちに明示し、電磁的方法で送った場合は、書面の交付を求められたら遅滞なく交付する。
- 支払期日は受領日から60日以内に定める。支払方法を手形から変えるときに、一方的に単価を下げない。
- 施行日をまたぐ取引は発注日で切り分ける。契約書は、名称より中身が新しいルールに合っているかで改める順番を決める。
目次

下請法が取適法になった。受発注システムの帳票は直す必要があるのか
受発注システムの注文書や支払通知書に「下請代金支払遅延等防止法」「下請事業者」という語が残っていて、どこまで直すべきか迷っている場面です。
法律の名称と用語(委託事業者・中小受託事業者など)の置き換えは表記の話で、文字列を整えれば済みます。
手間がかかるのは、名称と同時に入った実質の変更です。
従業員基準の追加、手形払の禁止、協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止、発注内容の明示(第4条)、一括決済方式や電子記録債権を使う場合の追加の明示は、令和8年(2026年)1月1日以降の発注に適用されています4。
表記より先に、支払方法と明示の中身を確かめるのが近道です。
名称と用語はこう変わった
下請法は取適法に改称されました2。
正式な題名は「下請代金支払遅延等防止法」から「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」に変わっています3。
題名の変更と、発注内容の明示について定める公正取引委員会規則(第四条の明示に関する規則)は、どちらも令和8年(2026年)1月1日の改正法施行日から施行されました6。
法律の中で使われる言葉も入れ替わりました3。
- 親事業者 → 委託事業者
- 下請事業者 → 中小受託事業者
- 下請代金 → 製造委託等代金
- 下請中小企業振興法 → 受託中小企業振興法
この対照は、埼玉県が公正取引委員会と中小企業庁の資料をもとに整理したものです3。
下請法から取適法、下請振興法から振興法への改称は、公正取引委員会の特設ページでも示されています2。
画面や帳票に載せる語を決めるときは、公正取引委員会の資料の表記と照らし合わせてください。
そうすれば、部署ごとに略称がばらつくのを防げます。
受発注システムで影響が出そうな箇所を考えてみます。
たとえば、注文書の欄外にある「本書は下請代金支払遅延等防止法第3条に基づく書面です」という注記、取引先マスタの「下請区分」という区分名、支払通知書の「下請代金」という見出しのような箇所です。
語の置き換えだけなら、ここは文字列の修正で済みます。
ただ、条番号を引用している注記は、言葉と一緒に条番号も変わる点に注意が要ります。
旧法で「3条書面」と呼ばれていた発注時の書面は新法では「4条明示」になり、取引の記録である「5条書類」は「7条記録」になりました4。
注記の法律名だけを直して「第3条」を残すと、別の条文を指す文になってしまいます。
名称以外に変わった実質(従業員基準・手形払等の禁止・協議)
名称と同じ日に、取引のルールそのものも変わっています。
公正取引委員会が挙げている取適法の主な改正点は次のとおりです2。
- 協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止
- 手形払の禁止
- 電子記録債権・ファクタリングの制限
- 振込手数料を中小受託事業者に負担させることの禁止
- 従業員基準の追加(対象となる取引の範囲が広がる)
- 特定運送委託の追加
- 執行の強化
これらは画面の文字ではなく、取引条件と、それを計算・記録する仕組みに関わります。
受発注システムの側から見ると、たとえば支払方法の区分に「手形」が選べる形で残っていないか、支払額の計算で振込手数料を差し引いていないか、単価を改めたときに取引先と協議した経過をたどれるか、といった点です。
どれも、帳票の見出しを直しても変わりません。
従業員基準の追加は、これまで対象外として扱っていた取引先が対象に入ることを意味します。
そのため、取引先マスタの対象区分そのものを見直すことになります。
名称の修正だけを済ませると、注文書の見た目は新しくなっても、支払条件は旧来のまま残ります。
どこまで直すかは、まず自社の取引が取適法の対象に入るかどうかで変わります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 名称と用語の変更
- 画面・帳票の見出し
- 注記の法律名と条番号
- 手形払の禁止・振込手数料の負担禁止
- 支払方法の区分
- 支払額の計算
- 協議を適切に行わない一方的な代金決定の禁止
- 単価を改めたときの協議の経過
- 従業員基準の追加
- 取引先マスタの対象区分
自社の取引は取適法の対象か。資本金基準と従業員基準を確かめる
従業員基準の読み方(300人・100人)
取適法の対象かどうかは、取引の種類と、発注する側・受ける側の規模の組み合わせで決まります。
これまでの資本金による基準(資本金基準)に加えて、従業員数による基準(従業員基準)が設けられました。
従業員基準が使われるのは、資本金基準が適用されない場合です4。
資本金の区分で対象に入る取引は、これまでどおり資本金で判断します。
資本金の区分では外れる取引でも、従業員数で見ると対象に入ることがあります。
従業員基準の数字は、取引の種類で異なります。
製造委託等(物品の製造・修理、特定運送委託など)では、常時使用する従業員が300人を超える委託事業者が、300人以下の中小受託事業者に委託する取引が対象です2。
情報成果物作成・役務提供委託では、100人を超える委託事業者が、100人以下の中小受託事業者に委託する取引が対象です3。
資本金の区分の金額は、公正取引委員会の資料で取引類型ごとに確かめてください。
同じ取引先との間でも、取引ごとに線が変わることがあります。
たとえば、従業員が250人の部品メーカーに、部品の加工と、その部品の図面データの作成を発注している場合を考えてみます。
加工は製造委託等なので、自社の従業員が300人を超えていれば対象に入ります。
図面データの作成は情報成果物作成なので、基準は100人です。
相手が250人なら、100人以下という条件に当てはまりません。
このとき従業員基準では、図面データの作成は対象になりません(資本金基準で対象に入る場合は別です)。
取引先単位で「対象・対象外」を一つに決めるのではなく、取引の種類ごとに見る必要があるのはこのためです。
判定の時点と取引先マスタに持たせる確認項目
従業員基準は、製造委託等をした時点の「常時使用する従業員の数」で判断します4。
取引先を登録したときに一度判定して終わり、とはなりません。
自社と取引先のどちらかの人数が基準の線をまたげば、同じ取引先への発注でも、ある時点から扱いが変わります。
受発注システムで判定を支えるなら、取引先マスタに取引類型、資本金、従業員数、それを確認した日を持たせる方法があります。
これは制度が求める形式ではなく、編集部の提案です。
項目があれば、発注のたびに担当者が取引先の規模を調べ直す手間が減り、担当者ごとに判断が分かれることも防げます。
一方で、マスタに数字を入れただけで判定が自動で行われるわけではありません。
人数は取引先からの申告や公開情報に頼るので、確認日から時間がたてば古くなります。
年に一度など更新の機会を決めておき、基準の線に近い取引先から確かめると、確認の範囲を絞れます。
個別の取引が対象に入るかどうか判断がつかないときは、公正取引委員会や中小企業庁の相談窓口で事実関係を伝えて確認するのが確実です。
| 観点 | 製造委託等 | 情報成果物作成・役務提供委託 |
|---|---|---|
| 含まれる取引の例 | 物品の製造・修理、特定運送委託など | 情報成果物の作成、役務の提供の委託 |
| 委託事業者の従業員数 | 300人超 | 100人超 |
| 中小受託事業者の従業員数 | 300人以下 | 100人以下 |
| 使う場面 | 資本金基準が適用されない場合 | 資本金基準が適用されない場合 |
| 判断の時点 | 委託をした時点の常時使用する従業員の数 | 委託をした時点の常時使用する従業員の数 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 取引の種類を確かめる
- 製造委託等
- 情報成果物作成・役務提供委託
- 資本金基準で判断する
- 資本金の区分で対象に入る取引はこれまでどおり
- 資本金基準が適用されない場合は従業員基準で判断する
- 製造委託等は委託事業者300人超・中小受託事業者300人以下
- 情報成果物作成・役務提供委託は100人超・100人以下
- 委託をした時点の人数で見る
- 常時使用する従業員の数
帳票・画面・通知方法を仕分ける:表記だけで済むもの/記載事項と運用の見直しが要るもの
第4条の明示と電磁的方法・書面交付の求め
対象の取引が分かったら、次は受発注システムから出る注文書・発注データの中身を見ます。
第4条第1項は、委託事業者が製造委託等をしたときに、直ちに、給付の内容、製造委託等代金の額、支払期日、支払方法などを、書面または電磁的方法で明示するよう定めています1。
ここでいう電磁的方法とは、電子メール、EDI、受発注システム上での送信など、紙以外で内容を伝える方法を指します。
発注の明示は、紙の注文書でもシステム上の発注データでも構いません。
そのうえで、何をいつ伝えるかが問われます。
「直ちに」は「すぐに」という意味だと公正取引委員会は説明しています。
発注から契約書の締結までに日数がかかる場合は、契約書とは別に、発注後すぐに明示する必要があります5。
システムの運用に当てはめると、発注を確定してから明示を送るまでに、上長承認の待ちや週一回のまとめ送信などの間隔がないかが見直しの対象です。
画面上は発注済みなのに取引先にはまだ何も届いていない、という状態が続く設計なら、送信の時機を改める必要があります。
発注の時点で決まらない事項もあります。
内容を定められないことに正当な理由がある事項は、定まった後に直ちに明示します1。
公正取引委員会のQ&Aでは、単価が未定のままEDIで発注し、単価欄を「0円」と表記する場合について説明しています。
実際の単価を意味しないことを明示し、未定の理由と、定める予定の期日を明示すれば問題ないとされています5。
単価欄が空欄や0のまま送られる設計なら、未定の理由と予定期日を載せる欄か注記を用意しておかないと、明示が欠けた状態になります。
EDIで品番や条件を記号やコードで送っている場合も、Q&Aに答えがあります。
記号が何を意味するか(パターンコードの情報)をあらかじめ書面または電磁的方法で中小受託事業者に明示しておけば、記号による明示ができます5。
コード表を取引開始時に渡したきりで、その後コードを追加・変更している場合は、取引先の手元の対照表が最新かどうかが問題になります。
電磁的方法で明示したあとに、中小受託事業者から書面の交付を求められることがあります。
その場合、委託事業者は遅滞なく書面を交付しなければなりません。
ただし、中小受託事業者の保護に支障がない場合として規則で定める場合は除かれます1。
電磁的方法を使う前に取引先の承諾を得る必要があるかについては、条文に定めが見当たりません。
細目は公正取引委員会規則に委ねられているので、規則の該当箇所で確かめてください6。
システムの側では、電子で送った発注内容を紙に出せる経路(印刷用の様式や郵送の手順)を残しておくことと、書面を求めた取引先を記録しておくことが、条文から導ける備えです。
支払期日・手形払・一括決済方式の見直し
発注の明示に支払期日と支払方法が含まれる以上、帳票の見直しは支払条件の見直しにつながります。
第3条は、製造委託等代金の支払期日を、給付を受領した日から起算して60日の期間内で定めるよう求めています1。
支払期日を定めなかった場合は受領日が、60日を超えて定めた場合は受領日から60日を経過した日の前日が、支払期日とみなされます1。
受発注システムの支払条件マスタでは、締め日と支払日の組み合わせで期日を計算していることが多いはずです。
たとえば「月末締め・翌々月末払」の条件で月初めに納品を受けると、受領日から数えて60日を大きく超えます。
条件の名前は同じでも、受領日のずれ方で期日が60日を超える取引が出ないかは、マスタの設定値と実際の受領日を突き合わせて確かめることになります。
支払方法では、手形払が禁止されました2。
電子記録債権やファクタリングにも制限が加わっています2。
公正取引委員会は、令和8年1月1日以降に発注した対象取引で一括決済方式または電子記録債権を使う場合、新たな事項の明示と記録が必要になると案内しています4。
追加される事項の具体的な項目は公正取引委員会の資料で確かめ、発注データや注文書にその欄があるかを照らしてください。
支払方法の区分に「手形」が残っていれば、選べないようにするか、区分自体を外すことが見直しの中心になります。
支払方法を変えるときに、代金の扱いで注意すべき点があります。
手形払から現金払に変えるときや、振込手数料の負担を変えるときに、従前の単価から割引料や手数料に当たる額を一方的に差し引いて代金を定めると、買いたたき、または協議に応じない一方的な代金決定の禁止に当たるおそれがあります4。
個別の取引で該当するかどうかは、事実関係によって判断されます。
システムの作業では、支払方法の切り替えと単価マスタの一括変更を同じ作業として行うと、協議を経ない引き下げに見える変更が起きやすくなります。
単価の改定は支払方法の変更と分けて扱い、取引先と協議した経過を残してから反映する手順にしておくと、後から経緯を説明できます。
表記だけで整えるもの
ここまでを除いた残りが、表記だけで済む部分です。
- 画面や帳票の見出し(「下請代金」「親事業者」など)
- 注文書・支払通知書の注記に書かれた法律名と条番号
- 取引先マスタの区分名やメールのテンプレートの文言
条文や公正取引委員会のQ&Aからは、旧名称が帳票に残っていること自体を直す義務は読み取れません。
それでも、受け取った取引先の担当者が旧法の書面と受け止めないように、表記を整えておく価値はあります。
一方で、表記の修正は目に見えて進むので、見出しが新しくなっただけで対応が済んだように見えてしまう心配もあります。
支払期日・支払方法・明示の時機の確認を先に終え、表記の置き換えはその間に並行して進めると、作業の順番を取り違えずに済みます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 発注を確定する
- 上長承認の待ちや週一回のまとめ送信の間隔がないかを見直す
- 直ちに明示する
- 給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法など
- 紙の注文書でも発注データでもよい
- 未定の事項は定まった後に直ちに明示する
- 単価が未定なら未定の理由と予定期日を載せる
- 書面の交付を求められたら遅滞なく交付する
- 紙に出せる経路を残す
- 書面を求めた取引先を記録する
取引基本契約書・発注書ひな形の旧名称は、結び直しが要るのか
施行日前後の取引は発注日で切り分ける
帳票の次に気になるのが、取引先と交わしている取引基本契約書です。
契約書に「下請代金支払遅延等防止法」と書かれていると、施行日前に結んだ契約もすべて結び直すべきなのかと考えてしまいます。
ここで手掛かりになるのが改正法の附則です。
附則第2条第2項は、改正後の第4条・第5条・第6条第2項・第10条を施行後にした製造委託等に適用し、施行前にした製造委託等には従前の例によると定めています1。
公正取引委員会も、令和8年1月1日以降に発注する取引に取適法の規定が適用されると案内しています4。
基準になるのは、基本契約を結んだ日ではなく、個々の発注をした日です。
たとえば、2025年に結んだ基本契約のもとで2025年12月に発注し、2026年1月に納品を受けた取引は、施行前の発注として従前の例で扱います。
同じ基本契約のもとでも、2026年1月以降に出した発注は新しい法律のもとでの取引です。
受発注システムに発注日が記録されていれば、施行日をまたぐ継続取引も発注日で一件ずつ切り分けられます。
反対に、納品日や検収日しか残っていない取引があると、どちらの扱いかを判別できません。
その場合は、発注時のメールや承認記録をたどることになります。
自動更新の契約で明示を出し直す必要があるか
年間契約を自動更新している取引について、公正取引委員会のQ&Aは、契約書の中で4条明示すべき事項の内容に変更がなければ、更新のたびに改めて明示する必要はないとしています5。
ただし、これは明示事項を契約書で網羅している場合の話です。
旧法名の表記がどう扱われるかには触れていません。
見落としやすいのは、「明示事項に変更がなければ」という条件です。
契約書の支払方法が手形払になっていたり、支払期日が受領日から60日を超える条件になっていたりすれば、新しい法律のもとでは条件そのものを改める必要があります。
そうなると明示事項の内容も変わるので、自動更新に任せて済ませることはできません。
名称の古さよりも、契約書の中身が今のルールに合っているかどうかで、出し直しの要否が決まります。
覚書で足りるかを決める条件(提案)
旧法名が残る契約書を直ちに結び直さなければならない、という義務は、条文と公正取引委員会のQ&Aからは確認できません。
そこで、どう改めるかは次の考え方で判断することを提案します。
これは編集部の考え方であり、法律上の唯一の方法ではありません。
契約書の中に、手形払の約定、振込手数料を受注側の負担とする条項、受領日から60日を超える支払期日、単価の改定を一方の通知だけで決める条項などがある場合は、中身が新しいルールと食い違っています。
この場合は、次回の更新を待たずに、覚書や変更契約で該当する条項を改めることが検討の対象になります。
条項の改定は取引先と協議して決めることになるので、その経過を残しておくことも大切です。
中身は今のルールに合っていて、法律名や「親事業者」「下請事業者」といった語だけが古い場合は、急ぐ理由は小さくなります。
次回の更新時や、ひな形を改訂する機会にまとめて直す選択肢もあります。
取引先が多く、一件ずつ覚書を交わす負担が大きい会社では、この切り分けで、先に手を付ける契約を絞り込めます。
個別の契約の文言が法的に問題ないかの判断は、取引の事実関係によるので、迷う契約は法律の専門家や相談窓口に確認してください。
| 観点 | 施行日前にした発注 | 施行日以後にした発注 |
|---|---|---|
| 適用される規定 | 従前の例(旧法) | 改正後の第4条・第5条・第6条第2項・第10条など |
| 発注時の書面・記録の呼び方 | 3条書面・5条書類 | 4条明示・7条記録 |
| 基本契約の締結日 | 判断の基準にならない | 判断の基準にならない |
| 切り分けに使う日付 | 個々の発注をした日 | 個々の発注をした日 |
▼ 図の内容を文字で読む
- 施行日前にした発注
- 従前の例で扱う
- 3条書面・5条書類
- 施行日以後にした発注
- 改正後の第4条・第5条・第6条第2項・第10条を適用
- 4条明示・7条記録
- 切り分けに使う日付
- 基本契約を結んだ日ではなく個々の発注をした日
発注側と受注側は、何から着手するか。改修と契約見直しの順番
発注側の着手順
施行日の令和8年(2026年)1月1日はすでに過ぎており、それ以降の発注には取適法の規定が適用されています4。
今から着手する場合は、期限に向けて準備するのではなく、すでに新しいルールで扱うべき取引から確かめていく順になります。
発注側(委託事業者)の担当者には、次の順を提案します。
- 対象判定:取引類型ごとに、資本金基準と従業員基準で対象に入る取引先を洗い出す
- 支払条件:2026年1月以降の発注について、支払期日が受領日から60日以内か、手形払が残っていないか、振込手数料を差し引いていないかを確かめる
- 明示の中身と時機:第4条の明示事項がそろっているか、発注後すぐに届くか、書面の交付を求められたときに出せるかを確かめる
- 決済方式:一括決済方式や電子記録債権を使っている取引で、追加の明示・記録ができているかを確かめる
- 表記:画面・帳票・ひな形の法律名、用語、条番号を置き換える
1から3は互いにつながっています。
対象が決まらなければ確認する取引の範囲が定まりません。
支払条件を直せば、明示する支払期日と支払方法も変わります。
そのため、この三つは上から順に進めるのが手戻りの少ない進め方です。
4は一括決済方式や電子記録債権を使っている会社だけの作業です。
5は文字列の置き換えなので、1から4と並行して進められます。
契約書の見直しは、2の結果を見て、中身が食い違う契約から覚書や変更契約で改めていく流れになります。
改修の規模や必要な期間は、システムの作りと取引先の数で大きく変わります。
帳票の様式を利用者側で変えられる製品なら表記の置き換えは社内で済むこともありますが、支払条件の計算や送信の時機は設定の範囲で変えられるとは限りません。
どこまでが設定で、どこからが改修になるかは、利用しているシステムの提供元に確認することになります。
受注側が確認すること
受注側(中小受託事業者)の担当者は、発注を受け取る立場から確かめることになります。
- 受け取った注文書や発注データに、給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などがそろっているか
- 支払期日が、納品して受領された日から60日以内になっているか
- 支払方法が手形になっていないか、振込手数料が代金から差し引かれていないか
- 単価が「0円」や空欄の発注に、未定の理由と予定期日が示されているか
- EDIの記号やコードの意味を示した対照表が手元にあり、最新か

電子で受け取った発注内容を紙で持っておきたいときは、委託事業者に書面の交付を求められます1。
手形払から現金払への切り替えに合わせて単価の引き下げを示されたときは、協議を求められる場面です。
支払方法の変更を理由に一方的に代金を下げることは、買いたたきや一方的な代金決定の禁止に当たるおそれがあるからです4。
支払条件のマスタ、注文書の様式、送信の時機は、受発注システムの中で別々の設定や画面に分かれていることが多いものです。社内だけでは、どこまでが設定変更で済み、どこからが改修になるかを見分けにくい場面があります。
いま使っている帳票と支払条件の設定を並べ、表記の置き換えで済む箇所と、支払期日・支払方法・明示の送り方の見直しが要る箇所を一緒に仕分けられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 表記の置き換え | 法律名・用語・条番号(3条書面→4条明示、5条書類→7条記録)を整える。中身の確認と並行してよい |
|---|---|
| 対象判定 | 資本金基準が適用されない取引は従業員基準(製造委託等300人、情報成果物作成・役務提供委託100人)。委託時点の人数で判断 |
| 明示の中身と時機 | 給付の内容・代金の額・支払期日・支払方法等を発注後直ちに明示。電磁的方法なら書面交付の求めに備える |
| 支払条件 | 受領日から60日以内、手形払の禁止、振込手数料の負担禁止。支払方法の変更を理由に一方的に単価を下げない |
| 契約書 | 発注日で新旧を切り分ける。中身が新ルールと食い違う契約から改め、名称だけの修正は更新時でもよい(提案) |

施行日以降の発注にはすでに新しいルールが適用されているので、確認を後回しにするほど、見直す取引の件数が増えていきます。 取引先マスタに持たせる確認項目や、単価改定と支払方法の変更を分けて扱う手順を、自社の受発注の流れに当てはめてどう組むかを相談できます。法的な判断が要る点は、相談窓口や専門家に確認する事項として切り分けます。
よくある質問
取適法の対象かどうかは、資本金と従業員数のどちらで見ればよいのですか。
まず資本金基準で見ます。
資本金基準が適用されない場合に、従業員基準を使います4。
従業員基準は、製造委託等なら300人超の委託事業者から300人以下の中小受託事業者への委託2、情報成果物作成・役務提供委託なら100人超から100人以下への委託が対象です3。
人数は、委託をした時点の常時使用する従業員の数で判断します4。
電磁的方法で発注内容を明示したあと、取引先から紙の書面を求められたらどうしますか。
中小受託事業者から書面の交付を求められたら、遅滞なく書面を交付する必要があります1。
中小受託事業者の保護に支障がない場合として規則で定める場合は除かれるので、該当するかは規則で確かめてください1。
システムでは、電子で送った内容を印刷できる様式と、交付を求めた取引先の記録を用意しておくと対応しやすくなります。
手形払をやめて現金払にする場合、その分の割引料を差し引いて代金を下げてもよいですか。
従前の単価から割引料などに当たる額を一方的に引き下げて代金を定めると、買いたたき、または協議に応じない一方的な代金決定の禁止に当たるおそれがあります4。
単価を改める必要があるなら、支払方法の変更とは分けて取引先と協議し、その経過を残してください。
施行日をまたぐ継続取引の発注は、旧法と新法のどちらで扱いますか。
個々の発注をした日で判断します。
改正後の第4条などは施行後にした製造委託等に適用され、施行前の発注は従前の例によります1。
基本契約が施行日前に結ばれていても、2026年1月以降に出した発注は新しい法律のもとでの取引です。
受注側は、受け取った注文書が第4条の明示を満たしているかをどう確かめればよいですか。
給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法などがそろっているかを見ます1。
あわせて、支払期日が受領日から60日以内か1、単価未定の発注に理由と予定期日があるか5、EDIの記号の意味が事前に示されているか5も確かめてください。
欠けている事項があれば、委託事業者に明示を求めることになります。
- 1 出典:e-Gov法令検索「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」法律本文・改正法附則(2026年)
- 2 出典:公正取引委員会「取適法・振興法(特設ページ)」(2026年)
- 3 出典:埼玉県「中小受託取引適正化法(取適法)・受託中小企業振興法について(令和8年1月1日施行)」(2026年)
- 4 出典:公正取引委員会「取適法施行に当たり事業者の皆様に御留意いただきたい事項」(2026年)
- 5 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
- 6 出典:公正取引委員会「「第四条の明示に関する規則」等の整備について」(2025年)
画像の出典元
- Business professionals having a discussion at office desk, reviewing documents and strategies./Photo by Pavel Danilyuk on Pexels
- Detailed sepia close-up of a binder filled with documents, emphasizing texture./Photo by Joachim Schnürle on Pexels