◆監修・編集責任者
B2B EC-COLUMN
この記事のポイント
- 公的調査の割合(受注側企業の41.8%が「生産性が向上した」など)は実感の傾向であり、自社の効果は工程別に測った数字で示す
- 受付・入力・確認、納期回答、請求連携ごとに、処理時間・やり直し件数・問い合わせ件数・所要時間を割り当てて数える
- 導入前の記録がなければ、既存の記録から件数を取り、短期計測やWebに移っていない取引先との比較で作業時間の基準を作る
- 金額は残業代の減少と別の仕事へ回った時間に分け、時間単価・件数と期間・Web経由の比率・測り方などの前提を併記する
- 効果が小さいときは、Web経由の比率、Web注文に残る手作業、工程の途中の再入力の順に切り分け、同じ条件で測り直す
目次

Web受発注システムの効果を聞かれて答えられないのはなぜか:公的調査で言えることと言えないこと
Web受発注システムを入れた後や稟議の途中で「何が良くなったのか」と聞かれ、手間が減った実感はあっても数字で示せない。
公的調査で分かるのは、受注側企業の41.8%が「生産性が向上した」と答えたといった実感の割合までです1。
自社の時間やミスがどれだけ減ったかは、この割合からは分かりません。
効果は、受付・入力・確認・納期回答・請求連携の工程ごとに、処理時間・やり直し・問い合わせを数えて示します。
導入前の記録がなければ、いまの運用を短期間計測して基準にします。
金額にするときは、Web経由の注文比率などの前提を添えます。
受注側が感じた効果の上位
中小企業庁の『令和3年度取引条件改善状況調査』を竹田印刷株式会社が引用した解説によると、受発注システムを導入した受注側企業が得られた効果は次のとおりです1。
「生産性が向上した」は41.8%でした。
「業務の定型化・マニュアル化が可能になった」は39.9%、「残業時間を減らすことができた」は20.6%でした。
受注側とは、取引先から注文を受け、その内容を入力して出荷や請求につなげる側の企業です。
三つの項目は、当てはまる効果を選ぶ形の回答を集計したもので、上位5項目に含まれています。
数字を並べると、生産性の向上を挙げた割合は4割を超えています。
一方で、残業時間の削減を挙げた割合はその半分ほどにとどまっています。
同じ企業が両方を選んだのかどうかは、この引用からは分かりません。
それでも回答の割合で見る限り、「仕事が回しやすくなった」という実感と、労働時間が減ったという目に見える変化の間には開きがあります。
この開きは、後で削減時間を金額に置き換えるときにもう一度効いてきます。
この数字を社内説明に使うときは、範囲を取り違えないことが大切です。
引用ページには標本数や調査の実施時期の詳しい記載がありません。
また、これは中小企業庁の調査を事業者が引用した値で、公的な原典の表と照らして確かめた値ではありません。
対象は受注側企業の回答で、仕入先へ注文を出す発注側の効果は同じ形では示されていません。
発注側の立場で稟議を書く場合は、この割合を自社の効果の見込みとして使えないと考えておくのが安全です。
自己評価と実測値の違い
「生産性が向上した」という回答は、導入した企業の担当者や管理者がそう感じたという自己評価です。
注文1件の入力が何分短くなったのか、入力ミスが何件減ったのかといった測った値は、この割合に含まれていません。
経営者や稟議の決裁者が知りたいのは、多くの会社が効果を感じているかどうかより、自社で何がどれだけ変わったか、あるいは変わりそうかです。
同じ「生産性が向上した」でも、中身は会社によって違います。
たとえば、FAXで届いた注文を販売管理システムへ打ち直す作業がなくなった会社があるとします。
別の会社では、注文の受付は変わらず、在庫や納期の問い合わせ電話が減ったのかもしれません。
前者なら入力の時間、後者なら問い合わせの件数を数えれば変化が見えます。
どの工程で何が減ったかを分けて数えない限り、「良くなった」という実感は、聞く側にとって判断の材料になりません。
調査の割合は、稟議の背景説明として「受注側の企業では生産性の向上を実感した回答が多い」と添える使い方なら十分に役立ちます。
ただし、自社の効果を示す部分は、自社の注文で測った数字に置き換える必要があります。
そのためにまず決めるのが、注文の流れのどこで、何を数えるかです。
| 項目 | 回答した割合(%) |
|---|---|
| 生産性が向上した | 41.8 |
| 業務の定型化・マニュアル化が可能になった | 39.9 |
| 残業時間を減らすことができた | 20.6 |
注文の流れを工程に分けて、測る指標を決める
受付・入力・確認
受注側の担当者の仕事を、注文1件の動きで追ってみます。
取引先からFAXやメール、電話で注文が届きます。
担当者は品番・数量・納期・届け先を読み取り、販売管理システムへ入力します。
読みにくい手書きや、品番と品名が食い違う注文があれば、取引先へ電話して確かめます。
Web受発注システムに移ると、取引先が画面で品番や数量を選んで送ります。
そのため、受付から入力までの転記の多くは、取引先が入力した内容を確かめる作業に変わります。
この工程で数える指標は二つです。
一つは注文1件あたりの処理時間で、注文を受け取ってから入力と確認が終わるまでに担当者が手を動かした時間です。
もう一つは入力・転記のやり直し件数です。
入力後に数量や品番を訂正した件数と、取引先へ内容を確かめ直した件数を数えます。
処理時間だけを見ると、Web注文で入力が減った分は分かりますが、確認の手間が残っているかどうかは埋もれてしまいます。
やり直しを別に数えておけば、時間が減った理由と、まだ減っていない作業を分けて説明できます。
「業務の定型化・マニュアル化」の効果を数字で見たい場合は、担当者ごとの処理時間のばらつきが手がかりになります。
FAXの読み取りや取引先ごとの書式の違いに慣れた担当者だけが速く処理できる状態がまずあります。
そこから、誰が処理しても同じ程度の時間で終わる状態に近づけば、定型化が進んだと説明できます。
担当者の休みや異動のときに注文処理が止まらないかという点も、経営者にとっては見落とせない変化です。
納期回答・請求連携
注文を受けた後の工程では、取引先からの問い合わせと、次の工程へ渡すまでの時間を数えます。
納期や在庫の問い合わせは、電話やメールが来るたびに担当者が在庫を調べて回答する作業です。
Web上で取引先が在庫や納期の目安を見られる設定にしている場合は、この問い合わせ件数の変化が効果になります。
そうした表示の有無や範囲は製品と設定によって異なります。
自社の画面で取引先に何が見えているかを、前提として書き添えておきます。
受注から出荷指示までの所要時間は、注文が届いてから倉庫や出荷担当へ指示が出るまでの経過時間です。
担当者の作業時間とは別の指標で、入力待ちや確認待ちで注文が止まっている時間も含みます。
作業時間が少し減っただけでも、注文が担当者の手元で溜まらなくなれば、この所要時間は大きく変わることがあります。
取引先から見た変化に近い数字なので、営業部門や経営者への説明にも使いやすい指標です。
請求連携では、受注データを請求書の作成や売上の計上へ移すときに、もう一度入力している件数を数えます。
受注と請求の内容が合わずに突き合わせた件数も、あわせて数えます。
受付と入力が楽になっても、請求の段階で同じ注文を別のシステムへ打ち直していれば、転記の手間は工程の後ろへ移っただけです。
どこまでデータがつながっているかは、製品や設定によって異なります。
測る前に自社の流れを書き出し、手で移している箇所に印を付けておくと、数える場所がはっきりします。
ここまでの指標を調査の項目と並べてみます。
「生産性が向上した」は処理時間と所要時間、「定型化・マニュアル化」はやり直し件数と担当者ごとのばらつき、「残業時間の削減」は担当者の残業時間そのものに置き換えられます。
この対応は編集部の整理で、調査がこうした基準で効果を測ったわけではありません。
ただ、自社で数えた指標がどの実感に当たるのかを示しておくと、調査の割合を背景に置きつつ、自社の数字で中身を説明する組み立てがしやすくなります。
問い合わせ件数のように調査の項目に直接当たらない指標も、取引先との電話やメールが減ったという形で添えられます。
受注側と発注側で変わる指標
仕入先へ注文を出す発注側では、数える工程が変わります。
発注側の担当者は、必要な品目と数量を決めて注文を作り、社内の承認を経て仕入先へ送ります。
その後、納期の回答を受け、入荷と請求を照らし合わせます。
Web受発注システムを使う場合、注文書の作成やFAX送信の手間が減るだけでなく、承認の回し方や納期回答の受け取り方も変わることがあります。
発注側で数える指標は次の四つです。
- 注文の作成から仕入先への送信までの時間(承認待ちを含む)
- 送信後に数量や品番を訂正した件数
- 仕入先へ納期を確かめた問い合わせの件数
- 入荷や請求と注文内容が合わず、照らし合わせた件数
発注側の効果は、先に挙げた調査の割合では示されていないため、自社で数えた値だけが根拠になります。
受注側と発注側の両方の立場でシステムを使う会社では、二つの流れを混ぜて集計しないことが肝心です。
受注で減った時間と発注で減った時間は、担当者も工程も違います。
それぞれの指標で分けて示したほうが、どちらの効果が大きいのかを決裁者が判断しやすくなります。
▼ 図の内容を文字で読む
- 受付・入力・確認
- 注文1件あたりの処理時間
- 入力・転記のやり直し件数
- 納期回答
- 納期・在庫の問い合わせ件数
- 受注から出荷指示までの所要時間
- 請求連携
- 受注データを打ち直している件数
- 受注と請求が合わず突き合わせた件数
導入前の数字がないときの基準値の作り方
記録がある場合
効果を示すには、比べる相手となる基準値が要ります。
「導入前は測っていなかった」という場合でも、日々の業務の中に記録が残っていることは少なくありません。
FAXの受信記録やメールの受信日時、受注伝票の作成日時、訂正伝票、問い合わせを書き留めた記録や通話の履歴などです。
これらから取り出せるのは、主に件数と経過時間です。
受信件数からは注文経路ごとの件数が分かります。
訂正伝票からはやり直し件数、通話履歴や問い合わせ記録からは問い合わせの件数が分かります。
受信日時と伝票の作成日時の差を取れば、受付から入力までにかかった経過時間も追えます。
注意したいのは、経過時間は担当者の作業時間ではないことです。
注文が届いてから入力されるまでの間には、担当者が別の仕事をしていた時間や、取引先の回答を待っていた時間が含まれます。
記録から作業時間を割り出そうとすると、実際よりも大きな削減を示してしまいやすくなります。
件数と経過時間は記録から取り、1件あたりの作業時間は次に述べる短期計測で補うと、説明に無理が出ません。
記録がない場合の短期計測
記録がない場合は、いまの運用を短い期間だけ計測して基準にします。
稟議中でまだ導入していないなら、現在のFAXや電話、メールでの注文処理を測り、その値を導入前の基準とします。
担当者が注文ごとに処理の開始時刻と終了時刻を記録表に書き、やり直しや問い合わせが起きたら印を付けていく方法なら、新しい道具は要りません。
全部の注文を記録すると担当者の負担が増えます。
時間帯や取引先を決めて、一部の注文だけを記録しても構いません。
すでに導入していて導入前の数字がない場合は、まだWebに移っていない取引先の注文を比べる相手にする方法があります。
同じ期間に、Webで届いた注文とFAXや電話で届いた注文の両方を同じやり方で測れば、経路による1件あたりの違いが見えます。
ただし、Webに移った取引先と移っていない取引先では、注文の品目数や頻度が違うことがあります。
品目数の多い注文が片方に偏ると、経路の違いではなく注文の中身の違いを測ってしまいます。
注文1件ではなく明細1行あたりで比べるか、似た規模の取引先どうしで比べると偏りを抑えられます。
測定期間と対象取引先の絞り方
何日、何件測ればよいかは、注文の件数や繁閑の波によって変わるため、一律の目安はありません。
判断の手がかりになるのは、自社の注文の山がいつ来るかです。
月末の締めや特定の曜日に注文が集中するなら、その山を含む期間を測らないと、普段の作業時間を小さく見積もってしまいます。
導入前と導入後で比べる場合は、同じ時期、同じ曜日の並びを測ると、繁閑の差が効果に紛れ込みにくくなります。
対象の取引先は、注文件数の多さで分けて考えます。
注文件数が多い取引先は、短い期間でも十分な件数が集まり、Webへ移ったときの影響も全体の数字に大きく表れます。
件数の少ない取引先は一社ごとに測っても数が集まらないので、いくつかをまとめて一つのグループとして扱うほうが比べやすくなります。
これからWebへの移行を案内する予定の取引先を対象に含めておくと、移行前の値をそのまま基準として残せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 記録がある場合
- FAXやメールの受信記録、訂正伝票から件数と経過時間を取る
- 経過時間は作業時間ではないので、作業時間は短期計測で補う
- 記録がなく、まだ導入していない場合
- いまの注文処理を短期間計測して基準にする
- 開始・終了時刻を記録表に書き、やり直しと問い合わせに印を付ける
- 導入済みで導入前の数字がない場合
- Web注文とFAX・電話の注文を同じ期間に同じやり方で測る
- 品目数の偏りは、明細1行あたりや似た規模の取引先どうしで抑える
削減時間を稟議向けの金額にするときの置き方と、併記する前提
時間の換算
工程ごとの時間が測れたら、稟議では金額に置き換えて示すことが多いでしょう。
基本の形は、導入前と導入後の1件あたり処理時間の差に、対象期間の注文件数と担当者の時間単価を掛けるものです。
計算そのものは単純ですが、この金額をそのまま「削減できる費用」と書くと、後で説明に詰まることがあります。
削減時間が費用の削減になるのは、その時間が残業の減少として表れたか、別の仕事に使われた場合です。
処理が早く終わっても、担当者の勤務時間も人数も変わらなければ、給与として支払う額は減りません。
先の調査では、「残業時間を減らすことができた」と答えた受注側企業が20.6%で、生産性の向上を挙げた割合よりかなり低くなっていました1。
これは、時間の削減がすべて費用の削減につながるわけではないことの一つの目安になります。
ただし、この割合は残業が減らなかった理由まで示すものではないので、自社で確かめる必要があります。
そこで金額は、性質の違う二つに分けて示します。
一つは、残業時間の記録から確かめた、実際に減った残業代です。
もう一つは別の仕事へ回った時間で、新しい取引先への対応や在庫の見直しなど、何に使われたかを書き添えます。
後者は支払いが減る金額ではありませんが、同じ人数でより多くの注文や業務をこなせるようになった価値として説明できます。
やり直し件数の減少は、1件のやり直しにかかる手間を測っていれば時間に置き換えられます。
測っていない場合は、件数のまま示したほうが誤解を生みません。
併記する前提条件
金額の数字だけが稟議書に載ると、前提が変わったときに数字だけが独り歩きします。
次の五つを金額の近くに書いておくと、決裁者が数字の確からしさを自分で判断できます。
- 時間単価の置き方(給与から割り出したのか、残業の単価なのか)
- 対象にした注文の件数と期間
- その期間のWeb経由の注文比率
- 測定の方法(記録から取ったのか、短期計測で一部の注文を測ったのか)
- 計算に含めていない作業や費用
費用の側も、自社の見積もりで比べます。
システムの初期費用や月額費用は製品や契約の条件で大きく変わるため、他社の料金例を相場として置くと、比べる土台が揺らぎます。
取引先への案内や操作説明にかかる社内の手間も費用の側に含めておくと、効果と費用を同じ範囲で比べられます。
▼ 図の内容を文字で読む
- 実際に減った残業代
- 残業時間の記録から確かめる
- 支払いが減る金額として示す
- 別の仕事へ回った時間
- 新しい取引先への対応や在庫の見直しなど、使い道を書き添える
- 支払いは減らないが、同じ人数でこなせる量が増えた価値として示す
- やり直し件数の減少
- 1件の手間を測っていれば時間に置き換える
- 測っていなければ件数のまま示す
取引先のWeb利用が低いと効果はどう変わるか
見る指標
Web受発注システムの効果は、取引先がWebで注文してくれる分だけ生まれます。
受注側で言えば、FAXや電話で届く注文が残っている限り、その注文の受付と転記には以前と同じだけ時間がかかります。
Web経由の注文が全体の一部にとどまるうちは、1件あたりの処理が大きく短くなっても、全体の削減時間は小さく見えます。
効果の数字と並べて見ておきたいのは、次の三つです。
- Web経由の注文比率(全注文のうちWebで届いた件数の割合)
- 取引先別の利用状況(Webで注文している取引先と、まだしていない取引先の社数)
- Web注文の後に電話やFAXで確認が来た件数
三つめは見落とされがちです。
取引先の担当者が「注文が届いたか」「この内容で合っているか」を電話で確かめてくると、Webで受けた注文にも受付の手間が残ります。
受付経路がWebとFAX・電話の二つに分かれ、両方を見なければならない状態になると、担当者の手間がかえって増えたと感じられることもあります。
効果が小さく見えるとき、システムの問題なのか利用のされ方の問題なのかを分ける手がかりになるのが、この確認件数です。
経営者への説明では、1件あたりの効果とWeb経由の比率を掛け合わせた形で示すと、数字の意味が伝わりやすくなります。
1件あたりの効果は出ているが比率が低いのか、比率は高いのに1件あたりの効果が小さいのかで、次に手を打つ場所がまったく違うからです。
利用を増やす前に確認すること
比率を上げようとして、取引先へ一斉にWeb注文をお願いする前に、まだ使っていない取引先がなぜ使っていないのかを分けておくと、無駄な案内を減らせます。
注文の回数がもともと少なく、画面の操作を覚える手間に見合わないと感じている取引先もあるでしょう。
自社の購買の仕組みから注文書を出す流れが決まっていて、Webの画面に入力し直すのが二度手間になる取引先もあり得ます。
価格の交渉や急ぎの納期の相談など、電話で話したほうが早い注文が混ざっていることもあります。
発注側の立場なら、仕入先がWebで受けた注文をどう処理しているかによって、納期回答の速さが変わります。
理由によって、案内で解決できるものと、そうでないものがあります。
操作に慣れていないだけなら、案内や操作説明で変わる見込みがあります。
取引先側の仕組みや取引の性質による場合は、無理にWebへ寄せても確認の電話が増えるだけかもしれません。
注文件数の多い取引先のうち、案内で移る見込みのある先から順に働きかけ、移行の前後で同じ指標を測れば、比率の上昇が効果にどうつながったかを示せます。
▼ 図の内容を文字で読む
- Web経由の注文比率が低い
- FAX・電話の注文の受付と転記が以前と同じだけ残る
- Web注文の後に電話やFAXで確認が来る
- Web注文にも受付の手間が残る
- 受付経路がWebとFAX・電話に分かれる
- 全体の削減時間が小さく見える
- 1件あたりの処理が短くなっても全体では小さい
効果が想定を下回るときの原因の切り分け
切り分けの順序
測った結果が想定より小さかったとき、原因は一つとは限りません。
ここまでの指標を使い、次の順に見ていくと、どこから手を付ければよいかが絞れます。
- Web経由の注文比率が低くないか
- Web注文でも確認や修正の手作業が残っていないか
- 在庫確認や請求連携など、工程の途中で手作業に戻っていないか
比率から見るのは、比率が低いと他の指標の変化が全体の数字に表れにくいからです。
Webで届く注文が一部しかなければ、Web注文の処理がどれだけ速くなっても、全体の削減時間はわずかにしかなりません。
比率に問題がなければ、次にWeb注文だけを取り出して、やり直し件数と確認の問い合わせ件数を見ます。
Webで届いた注文なのに訂正や確認が多いなら、入力の仕組みや運用に原因がある可能性が高くなります。
1件あたりの手間も減っているのに全体の効果が小さい場合は、工程の後ろを見ます。
受注から出荷指示までの所要時間が縮んでいない、請求の段階で再入力が残っているといった状態なら、データがどこかで途切れ、手で移す作業が残っています。
この順で見ても、原因が一つに決まるとは限りません。
指標の動きは手がかりです。
実際の注文や伝票をいくつか取り出し、どこで手が止まっているかを担当者と一緒に追うと、数字の裏付けが取れます。
次の打ち手
原因の場所によって、打ち手は変わります。
比率が低いなら、前の節で見たように未利用の理由を分けたうえで、取引先への案内を見直します。
Web注文に確認や修正が残るなら、入力項目と承認の流れを見直します。
たとえば自由に書ける備考欄に納期や届け先の指示が書き込まれていると、担当者はそれを読み取って入力し直すことになり、FAXのときと同じ転記が残ります。
その指示を項目として選べるようにできるか、承認の段階が多すぎないかを確かめると、どの確認が減らせるのかが見えてきます。
工程の途中で止まっている場合は、連携の範囲を考え直します。
在庫や請求のシステムとどこまでデータをつなげられるかは、使っている製品や契約、既存のシステムによって異なります。
提供元に自社の流れを示して確かめることになります。
つなげられない部分が残るなら、その転記の時間を効果の計算から外さず、残っている手間として稟議や報告に書いておくほうが、後の判断を誤りません。

どの打ち手を選んでも、手を打った後は同じ指標を同じ条件で測り直します。
基準を取ったときと同じ時期や取引先で測れば、打ち手で何が変わったのかを前の数字と比べられます。
測る、切り分ける、手を打つ、測り直すという流れを繰り返すことで、「入れて何が良くなったのか」という問いに、その時点の数字で答え続けられるようになります。
工程ごとに何を数えるかは、自社の注文経路と記録の残り方によって変わり、一般的な指標の例だけでは決めきれないためです。
自社の受注・発注の流れを伝えると、どの工程から基準を取り、どの取引先を測定の対象にするかの見通しを確かめられます。無料相談で要件を整理する
要点の整理
| 軸 | 基準 |
|---|---|
| 調査の割合の扱い | 受注側の実感の傾向として背景に置き、自社の効果の証明には使わない |
| 何を数えるか | 受付・入力・確認、納期回答、請求連携ごとに処理時間・やり直し・問い合わせ・所要時間 |
| 基準がないとき | 記録から件数と経過時間、短期計測で作業時間、未移行の取引先と比較 |
| 金額にするとき | 残業代の減少と別の仕事へ回った時間を分け、単価・件数・期間・Web比率・測り方を併記 |
| 効果が小さいとき | Web比率、Web注文に残る手作業、途中工程の再入力の順に見て、同じ条件で測り直す |

測った数字を稟議向けの金額にまとめる段階では、前提の置き方と、効果が小さいときの原因の見方で判断が分かれやすいためです。 手元の測定結果をもとに、金額へ置き換える前提の置き方や、次に見直す工程の候補を整理できます。
よくある質問
導入前の数字がまったくないとき、最低限どの指標から測り始めればよいですか。
注文1件あたりの処理時間と、入力・転記のやり直し件数の二つから始めると進めやすくなります。
処理時間は受付と入力の手間の変化を、やり直し件数は確認や訂正の手間が残っているかを示します。
二つそろうと、時間が減った理由も説明できます。
問い合わせの記録や通話履歴が残っているなら、納期や在庫の問い合わせ件数を加えると、取引先とのやり取りの変化まで示せます。
発注側(仕入先へ注文を出す側)の効果は、受注側とどう測り方が違いますか。
発注側では、注文の作成から仕入先への送信までの時間(承認待ちを含む)、送信後の訂正件数、仕入先への納期確認の件数、入荷や請求との照合で食い違った件数を数えます。
受注側の調査で示された効果の割合は発注側には当てはまらないため、根拠は自社で測った値になります。
受注と発注の両方でシステムを使う場合は、二つの流れを分けて集計します。
測定期間は何か月あれば効果を説明できますか。
一律の月数はありません。
注文の山が月末の締めや繁忙期にあるなら、その山を含む期間を測る必要があります。
導入の前後で同じ時期を比べると、繁閑の差が紛れ込みにくくなります。
また、Web経由の注文比率は導入後に時間をかけて変わります。
一度の測定で結論を出すより、月ごとに比率と1件あたりの効果を並べて追うほうが、効果の説明として納得されやすくなります。
効果が数字に出ない場合、稟議や社内説明でどう伝えればよいですか。
全体の削減時間が小さくても、Web経由の注文比率とWeb注文1件あたりの効果を分けて示せば、どこまで効果が出ていて何が足りないのかを説明できます。
担当者ごとの処理時間のばらつきが縮んだ、問い合わせが減ったといった変化も、時間以外の効果として示せます。
残っている手作業は隠さず、原因と次の打ち手を添えて報告するほうが、追加の判断を得やすくなります。
取引先ごとにWeb利用の差がある場合、どの取引先から測ればよいですか。
注文件数が多い取引先から測ると、短い期間でも件数が集まり、全体への影響も読み取りやすくなります。
件数が多くWebで注文している取引先と、件数が多くまだFAXや電話で注文している取引先を組にして同じ期間に測ると、経路による違いを比べられます。
件数の少ない取引先は、いくつかをまとめて一つのグループとして扱います。
画像の出典元
- Colleagues discussing business reports during an office meeting./Photo by RDNE Stock project on Pexels