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取引先別の指値(指定単価)の設定の考え方|分け方・自動で止める範囲・変更管理

◆監修・編集責任者 小園 将隆 

B2B EC-COLUMN

この記事のポイント

  • 取引先別の指値は、合意した単価を適用開始の発注日とあわせて登録し、納品日で切り替えない
  • 見積書の単価は合意ではないため登録せず、価格責任者の承認を登録の起点にする
  • 指値と違う単価は発注段階で止めるか承認に回し、請求時に差額を差し引く処理にしない
  • 値上げ要請には据え置く場合も協議し、理由と経過を記録して指値の変更履歴とひもづける
  • 保存期間は取適法の2年と法人税法の7年(原則)を別の制度として確かめる

40代後半の日本人女性が町工場の資材棚の確認をしている場面

取引先ごとの指値が担当者の記憶頼みになったとき、まず何を決めておくのか

「A社は単価がいくら、B社は数量で変わる」と担当者が覚えている状態で発注を続けると、納品書や請求書の段階で価格が食い違います。
そのたびに、どちらの単価が正しいのかをさかのぼって確かめる手間がかかります。
取引先別の指値(指定単価)は、仕入先と合意した単価を、いつの発注から使うかまで含めて登録しておく仕組みです。
見積書が届いただけの単価は登録せず、指値を超える発注は発注段階で止めて人が確認します。
発注済みの代金を後から差し引くと、取適法の対象取引では減額として問題になり得ます。
そのため、変更履歴と協議の記録まで残す運用が要になります。

指値は発注時点の単価を確定させるもの

企業間取引でいう指値は、買い手が仕入価格を指定して発注すること、またはその指定単価を指します。
受発注・購買の仕組みに取引先別の指値を登録すると、発注画面で仕入先と品目を選んだ時点で単価が決まり、その単価が注文書や発注データに載ります。
つまり指値の役割は、納品や請求の段階で価格を調べ直すことではありません。
発注の時点で「この注文はこの単価」と確定させておくことにあります。

仮の例で考えます。
部品を外注している会社が、切削加工の仕入先A社とは部品Xを1個あたりの単価で合意し、樹脂成形の仕入先B社とは発注数量によって単価が変わる条件で合意しているとします。
この違いを発注担当者が覚えて入力している間は、担当者の交代や繁忙期に、古い単価や別の取引先の単価が入りやすくなります。
誤った単価のまま注文が出ると、A社から届く請求書の単価と社内の発注データが合いません。
経理担当者は、どちらが合意内容なのかを購買部門に問い合わせることになります。

発注時点で単価を確定させることには、制度上の理由もあります。
製造委託などの取引で、買い手が委託事業者、仕入先が中小受託事業者に当たる場合(以下、取適法の対象取引)、委託事業者は発注の際に直ちに発注内容を書面または電磁的方法で明示する義務を負います3。
具体的な記載事項は法律の第4条で定められています。
また、取引の内容を記載した書面または電磁的記録は、作成して2年間保存することとされています3。
受発注の仕組みに指値を登録しておけば、発注データそのものが単価を示す記録になり、後から「どの単価で頼んだか」を示せます。

取適法の対象になるかは、資本金などの要件と取引の内容で決まります。
この記事では要件の詳細までは扱わないため、自社の取引が該当するかは取引ごとに確かめる前提で読んでください。
対象外の取引でも、発注の時点で単価を記録に残しておけば、請求照合で単価を探し直す手間は同じように減ります。

設定担当と価格責任者を分けて考える

指値の運用でまず決めておきたいのは、単価を決める人と、単価を仕組みに登録する人の分担です。
仕入先と価格を交渉して合意する購買責任者と、マスタに単価を入力する設定担当が別の人という体制は珍しくありません。
この二人の間で「何をもって合意済みとするか」が共有されていないと、設定担当は交渉中のメールに書かれた単価を見て登録してしまいます。
その結果、まだ決まっていない単価で発注が出ます。

分担は、次の三つを言葉にしておくと迷いが減ります。

  • 価格責任者:仕入先と協議し、合意した単価・条件・適用開始の発注日を決めて承認する
  • 設定担当:承認された内容だけを、承認の記録とあわせて登録する
  • 発注担当:登録された指値で発注し、指値と違う単価が必要なときは自分で書き換えずに価格責任者へ回す

この分担があると、発注担当が現場の事情で単価を手で直したり、設定担当が交渉途中の数字を先に入れたりする余地が小さくなります。
「誰も決めていない単価」が発注に乗る経路が狭まるということです。
請求書を受け取る経理担当者も含めると、それぞれの役割のつながりは次のように整理できます。

指値をめぐる四つの役割の分担(模式図)
価格責任者は合意を承認し、設定担当は承認済みの内容だけを登録し、発注担当は登録された指値で発注し、経理担当は請求書を発注データと履歴で照合するという役割の分担を示した図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 価格責任者
    • 仕入先と協議して合意する
    • 単価と適用開始の発注日を承認する
  • 設定担当
    • 承認された内容だけを登録する
    • 承認の記録とあわせて登録する
  • 発注担当
    • 登録された指値で発注する
    • 違う単価が必要なときは価格責任者へ回す
  • 経理担当
    • 請求書を発注データの単価と照合する
    • 食い違いは変更履歴と承認の記録で確かめる

仕入先別に指値を分ける場合と、一律設定で足りる場合

分ける条件の例:合意内容が違う・品目や数量で単価が変わる

指値が発注時点の単価だと決まると、次に迷うのは、どこまでを仕入先別に持つかです。
判断の軸は三つあります。
仕入先との合意内容が他と違うか、品目や数量によって単価が変わるか、適用する期間が仕入先ごとに違うか、です。

先ほどの例でいえば、A社の部品Xは1個あたりの単価が合意されているので、「仕入先A社×部品X」の組み合わせで指値を一つ持てば足ります。
一方B社は数量で単価が変わる条件です。
「仕入先B社×品目」に加えて数量の区切りごとの単価を持たなければ、発注数量に応じた正しい単価が出ません。
同じ品目を複数の仕入先から買っていて、それぞれと別々に価格を合意しているなら、その品目は仕入先別に分ける対象です。
合意の期間が仕入先ごとに違う場合も、適用期間を個別に持つ必要があります。

取引先別の価格をどんな単位で持つかは、売り手側のBtoB ECでも問題になります。
工業用粘着テープなどを扱い、全国約3,000社の販売店と取引する日東電工CSシステムの導入事例では、顧客別の卸価格設定に加え、顧客ごとにロット数や販売金額を設定できる仕組みを使っていると述べられています5。
これは売り手が販売店ごとの卸価格を管理する例で、買い手の指値設定とは立場が逆です。
ただ、価格を取引先だけでなく数量や金額の単位でも持つ場面があるという点は、仕入側の設定単位を考えるうえでも参考になります。

一律で足りる条件と、個別設定が増えたときの更新負担

反対に、複数の仕入先と同じ条件で取引している品目や、仕入先ごとの価格合意がなく共通の価格表で発注している品目は、共通の設定で足ります。
どの仕入先からも同じ単価で合意している汎用品まで仕入先別に分けると、同じ数字を何か所にも登録することになります。

個別の設定を増やすほど、価格が変わるたびに直す箇所も増えます。
先の事例でも、ECサイトの運用でいちばん手間がかかるのは価格設定と情報の継続的な更新だと当事者が語っています5。
一社の発言なので一般的な傾向とまでは言えませんが、取引先別の価格を持つ運用では更新が負担になり得ることがうかがえます。
そこで、合意内容が本当に違うものだけを仕入先別に分け、それ以外は共通設定に寄せておく方法が考えられます(運用上の提案です)。
改定のたびに見直す件数を絞れるからです。

ここで区別しておきたいのは、「一律の設定にする」ことと「一律の比率で単価を決める」ことは別だという点です。
取適法の運用基準では、買いたたきに当たるかを、協議の有無、決定方法、差別的かどうか、通常の対価との乖離などを総合して判断するとしています2。
その例として、コスト上昇を反映せずに据え置くことや、一律に一定比率で引き下げることが挙げられています2。
登録の手間を減らすために共通設定を使うのは管理の工夫です。
しかし、仕入先ごとの事情を聞かずに全社の指値を同じ率で下げるような決め方は、取適法の対象取引では問題になるおそれがあります。

40代前半の日本人女性が整備工場の部品棚の確認をしている場面

仕入先との価格合意は、いつの発注から適用する単価として設定するのか

見積書だけでは合意にならない

分ける対象が決まると、次は「どの単価なら登録してよいか」です。
仕入先から新しい単価の見積書が届くと、設定担当としてはすぐ指値を更新したくなります。
しかし公正取引委員会のQ&Aは、見積書が提出されただけでは合意したことにはならないと示しています1。
見積書は仕入先側の提示であり、買い手と仕入先が協議して単価を改定したという事実とは別物だからです。

B社から新単価の見積書を受け取った仮の例で考えます。
設定担当が見積書の単価をその日のうちに指値へ反映すると、価格責任者がまだB社と条件を詰めている段階で、新単価の発注が出てしまいます。
B社が「見積書には数量などの前提条件があった」と考えていれば、発注データの単価とB社の認識が食い違い、請求の段階で差し戻しになります。
登録の起点を見積書ではなく、価格責任者が承認した合意の記録に置けば、この食い違いが生まれる経路を断てます。

適用開始日を発注日で持つ

合意が成立したら、その単価をいつから使うかを決めます。
Q&Aでは、新単価を適用できるのは協議によって単価改定が行われた時点以降に発注する分からであり、発注済みのものに新単価を適用すると遡及適用として問題になるとしています1。
運用基準も、単価引下げを発注済み分にさかのぼって適用することを代金の減額に含めています2。
どちらも取適法の対象取引についての見解で、主に単価を引き下げる場面を想定した説明です。

ここから、指値には適用開始日を持たせ、その基準を納品日や請求日ではなく発注日にしておくのが筋の通った設計だと考えられます(編集上の分析です)。
たとえば、A社の部品Xの単価を改定日以降の発注分から下げると合意した場合、改定日の前に発注し、改定日の後に納品される注文は旧単価のままです。
納品日で切り替える設定にしていると、この注文に新単価が当たってしまいます。
引下げであれば、発注済み分への遡及適用と同じ結果になります。
注文の状態ごとに当てはめると、次のようになります。

適用開始日と並べて終了日も持っておくと、合意期間が切れた指値で発注が出たときに気付けます(運用上の提案です)。
使っている仕組みに適用期間の項目があるかは製品によって違います。
項目が無い場合は、改定のたびに旧単価の行を消さずに新しい行を追加し、適用開始の発注日を備考に書くなど、旧単価と新単価が区別できる形で持つことになります。

設定の単位(取引先・品目・期間・数量)

ここまでを合わせると、一つの指値は「どの仕入先の」「どの品目を」「どの期間に発注した分について」「どの数量なら」いくらか、という組み合わせで持つことになります。
合意の内容もこの単位で書かれていると、登録の際に迷いません。
A社のように品目ごとの単価だけを合意したなら数量の項目は使わず、B社のように数量で単価が変わるなら、合意の記録にも数量の区切りが書かれているはずです。

合意の記録にない区切りを設定担当が推測で作ると、それは合意していない単価になります。
価格責任者が承認する際に、合意の記録と登録内容が同じ単位で並んでいるかを見比べる手順を入れておくと、登録漏れや区切りの取り違えに気付きやすくなります。

注文の状態 適用する単価 考え方
改定日より前に発注し、改定日より前に納品 旧単価 発注時に明示した単価のまま
改定日より前に発注し、改定日以降に納品 旧単価 納品日で切り替えると発注済み分に新単価が当たる
改定日以降に発注 新単価 合意の後の発注なので新単価を適用できる
見積書を受け取っただけの段階で発注 旧単価 見積書の提出だけでは合意にならない
適用開始日を発注日で持つときの単価の当て方(模式図)
改定日より前に発注した注文は納品が改定日以降でも旧単価、改定日以降に発注した注文は新単価、見積書を受け取っただけの段階は旧単価となることを比べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 改定日より前に発注した注文
    • 旧単価のまま
    • 納品が改定日以降でも、納品日で切り替えない
  • 改定日以降に発注した注文
    • 新単価を適用する
    • 合意の後の発注なので新単価を適用できる
  • 見積書を受け取っただけの段階
    • 旧単価のまま
    • 見積書の提出だけでは合意にならない

指値を超える・異なる価格が出たとき、自動で止めるか、警告にとどめるか

発注後に代金を差し引く扱いが問題になる理由

合意した単価を適用開始日つきで登録しても、指値と違う価格が出てくる場面は残ります。
急ぎの注文で発注担当が指値より高い単価を入力した、仕入先が別の単価で納品書を出してきた、といった場面です。
このとき「請求の段階で指値との差額を差し引けばよい」と考えると、取適法の対象取引では問題になり得ます。

運用基準は、代金の減額を、仕入先の責めに帰すべき理由がないのに代金を減ずることと定め、減額できるのは受領拒否や返品の要件を満たす場合に限られるとしています2。
さらにQ&Aは、歩引きや手数料などの名目であっても、発注時に決めた代金を発注後に減ずることは違反であり、事前に書面で合意していても問題になると示しています1。
つまり、いったん指値より高い単価で発注すると、その単価が発注時に決めた代金になります。
後から指値まで引き下げて支払う処理は、減額に当たるおそれがあります。

逆向きの食い違いもあります。
発注データの単価どおりに注文したのに、仕入先の請求書がそれより高い単価になっている場合です。
このとき照合の基準になるのは、発注時に明示した単価です。
ただ、差額の大きさだけでは原因は分かりません。
発注データ、合意の記録、指値の変更履歴を並べ、どの時点の単価が請求に使われたのかを確かめます。
改定日をまたいだ注文が混ざっているだけなのか、合意内容の認識が違うのかで、次の対応が変わるからです。

これらを組み合わせると、価格の食い違いは請求の段階で調整するより、発注の段階で止めて人が確認するほうが合理的だと言えます(編集上の分析です)。
請求時に差額が見つかった場合も、支払額を黙って減らすのではなく、仕入先と協議します。
単価を改める必要があれば、合意の後の発注から新しい単価で扱うのが安全な順序です。

止める・警告・承認の使い分け

とはいえ、指値と違う単価をすべて止めると、正当な理由がある発注まで滞ります。
止め方は、合意の有無、金額の影響、急ぎかどうかで分けて考えるのが現実的です。
どの程度の差なら承認や警告で済ませるかの閾値は、取引の金額規模や品目の性質で違うため、ここでは数値を示さず考え方だけを挙げます(運用上の提案です)。

指値より低い単価での発注も、止める対象に含めておくべきです。
仕入先と合意していない低い単価で発注すれば、協議を経ずに買い手が代金を決めたことになります。
買いたたきの判断では協議の有無や決定方法が考慮されるため2、取適法の対象取引ではこの論点につながりかねません。

承認に回した発注は、承認者と理由を発注データに残しておくと、請求照合の段階で役に立ちます。
経理担当者が「なぜこの注文だけ指値と違うのか」を、購買部門に問い合わせずに確かめられるからです。
実際に止める・承認・警告のどれを設定できるかは、使っている受発注・購買の仕組みによって違います。
設定できない扱いは、発注前の確認手順として運用で補うことになります。

扱い 向いている場面 人が確認すること
発注を止める 指値より高い・低い単価、または合意のない仕入先・品目への発注 価格責任者が合意の有無を確かめ、必要なら協議してから発注し直す
承認に回す 急ぎで指値と違う単価が必要な発注 承認者が理由と金額を確かめ、承認の記録を発注データに残す
警告にとどめる 単価は合意どおりだが、適用期限が近い指値や数量の区切りの境目にある発注 発注担当が期間と数量を見直してから発注する
指値と違う単価が出たときの止める・承認・警告の使い分け(模式図)
合意のない単価は発注を止め、急ぎで指値と違う単価が必要なものは承認に回し、単価は合意どおりでも見落としやすい発注は警告にとどめる、という三つの扱いを比べた図
▼ 図の内容を文字で読む
  • 発注を止める
    • 合意のない単価や仕入先・品目への発注に向く
    • 価格責任者が合意を確かめ、必要なら協議する
  • 承認に回す
    • 急ぎで指値と違う単価が必要な発注に向く
    • 承認者が理由と金額を確かめ、記録を残す
  • 警告にとどめる
    • 単価は合意どおりで、適用期限が近いなどの発注に向く
    • 発注担当が期間と数量を見直す

仕入先から価格協議を求められたとき、指値を据え置いてよいか

据え置きも一方的な決定に含まれる

指値をきちんと固定して運用するほど、仕入先からの値上げ要請への向き合い方が問われます。
登録した指値は仕組みの上では動かないので、要請を受けても誰も動かなければ、結果として価格は据え置かれたままになるからです。

運用基準は、受注者が協議を求めたのに協議に応じず一方的に代金を決めることには、引上げや引下げだけでなく据え置きも含まれるとしています2。
例として、協議の求めを無視すること、回答を引き延ばすこと、合理的な範囲を超える情報の提出を協議の条件にすることが挙げられています2。
B社が原材料の値上がりを理由に単価の見直しを求めてきた仮の例で考えると、購買部門が「指値は期首に決めたので変えられない」と返すだけでは、この据え置きに当たるおそれがあります。
仕組みの上で指値が固定されていることは、協議に応じない理由になりません。

これは取適法の対象取引で、仕入先が協議を求めた場合の規定です。
対象外の取引に同じ義務があるとは言えません。
それでも、見直しの申し入れを受け付ける窓口が決まっていないと、要請が担当者の手元で止まり、価格の根拠を社内で説明する場面でも経緯をたどれなくなります。

理由の説明と記録の残し方

要請を受け入れられない場合もあります。
その場合について、Q&Aは理由や根拠を十分に説明する必要があるとし、自ら妥当と考える上昇分だけを反映して代金を決めると問題になるおそれがあると示しています1。
また、協議の求めや経過は、書面や電子メールなど形に残る方法で記録することが望ましいとしています1。

これを指値の運用に組み込むと、要請の受付から指値の更新までが一続きの流れになります。
運用上の提案として、次の順序が考えられます。

  1. 値上げ・値下げの要請を受け付ける窓口を価格責任者に決め、受付日と要請内容を記録する
  2. 社内で回答期限を決めて管理し、協議の日時と双方の説明を記録に残す
  3. 合意できた場合は、新単価と適用開始の発注日を価格責任者が承認する
  4. 設定担当が承認内容を指値に登録し、協議の記録とひもづける
  5. 合意できない場合は、理由と根拠を説明した記録を残し、指値は変えない

回答期限の具体的な日数は資料に示されていないため、自社の発注の周期や取引の性質に合わせて決めることになります。
大切なのは、要請が担当者の受信箱に埋もれず、誰が・いつまでに・何を答えるかを記録の上で追える状態にしておくことです。
そうしておけば、指値が据え置かれている理由を後から問われたときにも、協議の経過で説明できます。

指値の変更・履歴・権限を、請求照合まで残す運用にする

登録者と承認者の分離

ここまでで、合意した単価だけを登録すること、適用開始日を発注日で持つこと、協議の経過を記録に残すことが必要だと見てきました。
最後に、それらを変更履歴と権限、保存の仕組みとしてまとめます。

指値を変更できる人を広く取ると、誰がいつ単価を変えたのかが分からなくなり、請求の食い違いをさかのぼって調べる手掛かりが失われます。
そこで、指値を登録・変更する人と、その内容を承認する人を分けておくのが基本になります(運用上の提案です)。
最初に整理した分担に当てはめれば、設定担当が登録し、価格責任者が承認する形です。
小さな組織で一人が両方を兼ねざるを得ない場合でも、変更のたびに承認の記録を残しておけば、後から別の人が経緯をたどれます。

変更理由と協議記録の保存

変更履歴には、変更前と変更後の単価、変更した人と承認した人、適用開始の発注日、そして根拠になった合意の記録を残します。
変更理由を入力しないと保存できない設定にしておけば、「なぜこの単価になったのか」が履歴だけで分かります(運用上の提案です)。
Q&Aが望ましいとしている協議経過の記録1もこの履歴とひもづけておくと、履歴から合意の記録まで一度にたどれます。

請求照合の場面に戻ると、A社の請求書の単価が発注データと違っていた場合、経理担当者は該当する注文の発注日を見て、その日に有効だった指値と前後の変更履歴を確認します。
改定日をまたいだ注文なら、どちらの単価が当たるかは発注日で判断できます。
承認に回した注文なら、承認の記録に理由が書かれています。
こうした手掛かりが仕組みの中にそろっていれば、購買部門への問い合わせや、メールをさかのぼって探す手間が減ります。
照合を自動で行う機能があるかは仕組みによって違うため、手作業で照合する場合も同じ順序でたどれるよう、履歴の項目をそろえておくのが現実的です。

指値の見直しは、思い付いたときに行うのではなく、期首、仕入先からの協議の申し入れ、合意期間の満了など、あらかじめ決めた契機で行います。
そうすると、更新漏れと場当たり的な変更の両方を減らせます。
協議から照合、次の見直しまでの一巡は、次のように表せます。

保存期間の確認

記録をどれだけ残すかは、二つの制度を分けて考えます。
一つは取適法で、対象取引では取引の内容を記載した書面または電磁的記録を作成し、2年間保存することとされています3。
もう一つは法人税法で、注文書や契約書など取引に関して作成・受領した書類は、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存するのが原則です4。
青色申告で欠損金が生じた事業年度がある場合などは、10年間とされています4。

二つは目的も対象も違う別の制度なので、短い方の2年が過ぎたら記録を消してよいということにはなりません。
指値の変更履歴や協議の記録を、注文書・契約書と一体の発注の根拠として扱うのであれば、法人税法上の保存期間に合わせて設計しておく方法があります(運用上の考え方です)。
制度ごとに保存期限を分けて管理する手間を省けます。
どの記録がそれぞれの制度の保存対象になるかは書類の内容で変わるため、範囲は自社の経理・法務の担当者とすり合わせておくと確実です。

指値の見直しから請求照合までの一巡(模式図)
見直しの契機、協議と記録、承認と登録、指値での発注、請求照合を経て、再び見直しの契機へ戻る一巡を示した図1見直しの契機2協議と記録3承認と登録4指値での発注5請求照合

▼ 図の内容を文字で読む
  1. 見直しの契機
    • 期首、協議の申し入れ、合意期間の満了
  2. 協議と記録
    • 協議の日時と双方の説明を形に残す
  3. 承認と登録
    • 価格責任者が承認し、設定担当が記録とひもづけて登録する
  4. 指値での発注
    • 指値と違う単価は止めるか承認に回す
  5. 請求照合
    • 発注日時点の指値と変更履歴で確かめる

取引先別の価格をどの単位で持ち、どこまでを共通設定に寄せるかは、取引先と品目の数や今の発注の流れによって答えが変わり、考え方だけでは自社の設定に落とし込みにくい部分です。

いまの取引先・品目の構成に沿って、取引先別に価格を持つ単位と、改定のたびに更新する範囲をどこまで絞れるかを整理できます。無料相談で要件を整理する

要点の整理

登録してよい単価 価格責任者が承認した合意だけ。見積書の単価は入れない
適用開始の基準 発注日。改定日以降の発注分から新単価
仕入先別に分ける対象 合意内容・数量の区切り・期間が他と違うもの
指値と違う単価 発注段階で止めるか承認に回す。請求時に差し引かない
値上げ要請 据え置く場合も協議し、理由と経過を記録
保存期間 取適法2年と法人税法7年(原則)を別制度として確認
40代後半の日本人男性が自席での書類確認をしている場面

承認・変更履歴・請求照合をつなげるには、仕組みの設定と社内の分担を同時に見直す必要があり、担当者だけで全体の流れを組み立てるのは負担が大きくなりがちです。 取引先別の価格設定と更新の流れを、現在の受発注の運用と照らし合わせ、どこで確認や転記が発生しているかを確かめられます。

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よくある質問

設定担当と価格を決める責任者が別の場合、誰が何を承認すればよいですか。

価格責任者が、仕入先と合意した単価・数量などの条件・適用開始の発注日を承認します。
設定担当は、その承認の記録がある内容だけを登録し、交渉中の単価を自分の判断で入れないようにします。
指値と違う単価での発注は、価格責任者か、あらかじめ決めた承認者が理由を確かめて承認します。

仕入先が見積書で新単価を出してきたら、すぐに指値を更新してよいですか。

すぐには更新しません。
取適法の対象取引では、見積書が提出されただけでは合意したことにはならないと示されています1。
協議して合意し、価格責任者が承認してから、適用開始の発注日を付けて登録します。

指値を超える発注は、すべて自動で止めるべきですか。

合意のない単価での発注は止めて人が確認するのが基本ですが、すべてを一律に止めると正当な発注まで滞ります。
急ぎで指値と違う単価が必要な発注は承認に回し、単価は合意どおりでも適用期限が近いなど見落としやすいものは警告にとどめる、という分け方が考えられます。
どの扱いを設定できるかは仕組みによって違うため、できない部分は発注前の確認手順で補います。

合意前の暫定単価で発注が必要なときはどう扱えばよいですか。

暫定で入れた単価も、発注時に決めた代金として扱われると考えておくのが安全です。
取適法の対象取引では、名目を問わず発注後に代金を減ずることは問題になり、事前に書面で合意していても同様とされています1。
暫定単価での発注が避けられない場合は、発注前に精算の方法を含めて仕入先と協議し、公正取引委員会の資料や専門家に扱いを確かめたうえで進めてください。

取適法の対象かどうかは、何を見て確かめればよいですか。

取引の内容(製造委託などのどの類型に当たるか)と、自社と仕入先それぞれの資本金などの要件で決まります。
同じ仕入先でも取引の内容によって扱いが変わり得るため、公正取引委員会の概要資料や法令の要件を取引ごとに照らし合わせて確かめます。

取引先の数が多いとき、個別の指値を全部持たずに済ませる方法はありますか。

複数の仕入先と同じ条件で合意している品目は共通の設定にし、合意内容・数量の区切り・期間が他と違うものだけを仕入先別に持つ方法があります。
改定のたびに見直す件数を絞れます。
ただし、共通設定を理由に全仕入先の単価を同じ比率で一律に引き下げると、取適法の対象取引では買いたたきの例に当たるおそれがあります2。

◆監修・編集責任者

小園 将隆

株式会社フライトソリューションズ ECサービス部 マネージャー

BtoB通販のパッケージシステム「EC-Rider B2B Ⅱ」の導入支援をはじめ、製造業、卸売業をはじめとした法人向け通販サイト構築を多数手掛ける。卸売領域の専門知識をもとに、日本の商習慣に固有の課題をパッケージシステムの機能追加によって解決。BtoB流通の販路拡大を支援する。

> プロフィールの詳細を見る

  1. 1 出典:公正取引委員会「よくある質問コーナー(取適法)」(2026年)
  2. 2 出典:公正取引委員会「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律の運用基準」(2026年)
  3. 3 出典:公正取引委員会「委託事業者の義務(取適法の概要)」(2026年)
  4. 4 出典:国税庁「タックスアンサー No.5930 帳簿書類等の保存期間」(現行制度)
  5. 5 出典:株式会社フライトソリューションズ「EC-Rider B2B 導入事例(日東電工CSシステム株式会社様)」(事例掲載時点)

◆この記事について

独自調査以外の一次情報は、省庁・公的機関を中心とした信頼性の高い情報源から引用し、出典を明記しています。
年次更新される統計については、引用元の最新版を確認したうえで掲載しています。

※この記事は上記の監修・編集責任者がAIの協力を得て制作しています。

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